(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】連続除染・滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20220922BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20220922BHJP
A61L 2/08 20060101ALI20220922BHJP
B65B 55/24 20060101ALI20220922BHJP
B65B 55/08 20060101ALI20220922BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L2/18 102
A61L2/20 106
A61L2/08 108
B65B55/24
B65B55/08 B
B65B55/04 M
(21)【出願番号】P 2022021805
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2022-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】緒方 嘉貴
(72)【発明者】
【氏名】益留 純
(72)【発明者】
【氏名】二村 はるか
(72)【発明者】
【氏名】北野 司
(72)【発明者】
【氏名】郭 志強
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029859(JP,A)
【文献】特開2020-168181(JP,A)
【文献】特開平10-218128(JP,A)
【文献】特開2007-076714(JP,A)
【文献】特開2016-220747(JP,A)
【文献】特開2004-236806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
A61L 2/20
A61L 2/08
B65B 55/24
B65B 55/08
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌作業室に連設されて、気体透過性を有する上面シール部を備えた収納体の外装部を除染・滅菌して、当該収納体を前記無菌作業室の内部に搬送する連続除染・滅菌装置において、
第1搬送手段により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する除染室と、
第2搬送手段により搬送しながら、除染後の前記収納体の外装部に残留する前記除染剤を除去するエアレーション室と、
第3搬送手段により前記収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器から電子線を照射して滅菌する滅菌室とを有し、
前記第1搬送手段は、吸着機能による封止手段を備え、当該封止手段が有する前記収納体の上面シール部の形状に合わせた複数の吸着面
に開口する複数の吸引口からの吸引により、前記収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送することを特徴とする連続除染・滅菌装置。
【請求項2】
無菌作業室に連設されて、気体透過性を有する上面シール部を備えた収納体の外装部を除染・滅菌して、当該収納体を前記無菌作業室の内部に搬送する連続除染・滅菌装置において、
第1搬送手段により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する除染室と、
第2搬送手段により搬送しながら、除染後の前記収納体の外装部に残留する前記除染剤を除去するエアレーション室と、
第3搬送手段により前記収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器から電子線を照射して滅菌する滅菌室とを有
し、
前記第1搬送手段は、押圧機能による封止手段を備え、前記除染室の上部にあって前記収納体の上面シール部を封止する封止部材と、前記除染室の下部にあって前記収納体の底面から押圧する押圧部材とを備え、前記封止部材と前記押圧部材とによって前記収納体を上下方から挟持した状態で搬送することを特徴とする連続除染・滅菌装置。
【請求項3】
前記除染室は、前記除染剤を除染用ミストに変換して当該除染室の内部に供給するミスト供給手段と、盤面から超音波による音響流を発生させる超音波振動盤を具備したミスト分散手段とを備え、
当該除染室の内部に供給された前記除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させることにより、前記第1搬送手段で搬送される前記収納体の底面及び側面外装部を除染することを特徴とする
請求項1又は2に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の連続除染・滅菌装置において、
外部環境から搬入された前記収納体は、前記除染室の前記第1搬送手段から前記エアレーション室の前記第2搬送手段に受け渡され、当該第2搬送手段から前記滅菌室の前記第3搬送手段に受け渡されることにより、除染・エアレーション後に滅菌されることを特徴とする連続除染・滅菌装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の連続除染・滅菌装置において、
外部環境から搬入された前記収納体は、前記除染室の前記第1搬送手段から前記滅菌室の前記第3搬送手段に受け渡され、当該第3搬送手段から前記エアレーション室の前記第2搬送手段に受け渡されることにより、除染・滅菌後にエアレーションされることを特徴とする連続除染・滅菌装置。
【請求項6】
前記除染室の前記第1搬送手段及び前記エアレーション室の前記第2搬送手段は、連動した一体の第4搬送手段であって、
前記除染室及び前記エアレーション室の内部において、前記第4搬送手段により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部の除染・エアレーションを行うことを特徴とする
請求項4に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項7】
前記除染室の前記第4搬送手段は、吸着機能による封止手段を備え、
前記封止手段
が有する前記収納体の上面シール部の形状に合わせた複数の吸着面に開口する複数の吸引口からの吸引により、前記収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送することを特徴とする請求項6に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項8】
前記除染室の前記第4搬送手段は、押圧機能による封止手段を備え、
前記封止手段は、前記除染室の上部にあって前記収納体の上面シール部を封止する封止部材と、前記除染室の下部にあって前記収納体の底面から押圧する押圧部材とを備え、
前記封止部材と前記押圧部材とによって前記収納体を上下方から挟持した状態で搬送することを特徴とする
請求項6に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項9】
前記押圧部材は、前記収納体の底面の少なくとも1カ所を点接触で上方に押圧することを特徴とする
請求項2又は8に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記収納体の底面をスプリングの反発作用により上方に押圧することを特徴とする
請求項2又は8に記載の連続除染・滅菌装置。
【請求項11】
前記封止部材は、除染剤分解触媒を担持して前記収納体の上面シール部を封止することを特徴とする
請求項9又は10に記載の連続除染・滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌済みの物品を収納したパッケージの外装面を除染・滅菌して、この除染・滅菌後のパッケージを無菌環境の作業室に搬送する連続除染・滅菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、利便性の観点から前もって医薬品を充填したプレフィルドシリンジやバイアルなどの使用が盛んであり、近年その生産が増えている。これらのシリンジやバイアルなどに医薬品を充填する作業は、無菌環境下の充填作業室(アイソレーターなどの無菌作業室)で行われる。この作業に使用するシリンジやバイアルなどは、1つ1つが小さなものであり、また、処理される数量も多く必要とされる。そこで、これらのシリンジやバイアルなどは、それぞれの製造段階でγ線照射、電子線照射、EOG(エチレンオキサイドガス)などで滅菌され所定個数をまとめてパッケージに収納した状態で無菌作業室に搬入される。
【0003】
このパッケージには、例えば、下記特許文献1に提案され或いは従来技術として記載される医療用器具パッケージなどがある。これらのパッケージは、一般に、剥き開きパッケージ(peel-open package)とよばれ、内部に収納されるシリンジやバイアルなどの物品の形状に合わせて成形されたプラスチック製タブと気体透過可能な上面シールとを備えている。この上面シールには、一般に高密度ポリエチレン極細繊維からなる不織布、タイベック(商標)が使用され、このタイベック(商標)が有する微細孔を通してプラスチック製タブ内部への気体の透過は可能であるが、微生物の侵入は阻止される。
【0004】
このように構成されたパッケージは、更にその外部を包装袋で包装されて流通、運搬される。しかし、流通や運搬の際、或いは、無菌作業室に搬入するためにその包装袋から取り出される際に、プラスチック製タブ及び上面シールの外装面が汚染される。従って、この汚染された外装面を除染或いは滅菌しなければ無菌作業室に搬入することはできない。そこで、無菌作業室に連設された除染装置或いは滅菌装置によりプラスチック製タブ及び上面シールの外装面を除染或いは滅菌してから無菌作業室に搬送し、無菌作業室内でプラスチック製タブから上面シールを剥き開き、内部の滅菌されたシリンジやバイアルに対して充填作業が行われる。
【0005】
これらの除染装置、滅菌装置には、EOG(エチレンオキサイドガス)、過酸化水素低温ガス、オゾンガス、プラズマ、γ線照射、紫外線照射或いは電子線照射など種々の方法が目的に合わせて採用されている。これらの中で、最も一般的な方法の一つに過酸化水素低温ガスによる除染方法がある。
【0006】
過酸化水素低温ガスによる方法では、要求されるレベルの除染効果を得ることができるが、パッケージの全体を除染するにはある程度の処理時間を要し、また、過酸化水素低温ガスがタイベック(商標)からなる上面シールを通してプラスチック製タブ内部に侵入した場合には、内部で凝縮した過酸化水素の除去に時間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、プレフィルドシリンジの製造のように、単位時間当たりに数多くの物品を処理する必要がある除染装置或いは滅菌装置においては、短時間処理で除染、滅菌効果の高い方法が望まれる。そこで、下記非特許文献1には、一般的な過酸化水素低温ガスなどによる装置に比べ、高い滅菌効果が得られ、しかも、生産性が高く残留物質のない安全な装置として、小型の電子線照射装置(小型電子加速器)を組み込んだ滅菌装置が紹介されている。
【0008】
この滅菌装置は、プレフィルドシリンジを収納したパッケージの処理に実際に稼働するもので、予め滅菌処理されたシリンジが入ったパッケージは、その外装面を電子線で滅菌されて無菌作業室にコンベアで搬送される。この装置は、それぞれ120度の角度で配置された3台の小型電子加速器で3方向からパッケージの全面を照射する。
【0009】
なお、この装置においては、医療用器具パッケージの外装面全体を滅菌するために、それぞれ120度の角度で配置された3台の小型電子加速器が同時に稼働する。この小型電子加速器は、1台当りの価格が高価であり、また、その使用積算時間による使用限界(寿命)がある。従って、3台同時に稼働することにより、装置の初期費用とメンテナンス費用が高くなるという問題があった。
【0010】
また、小型電子加速器の使用限界(寿命)が3台毎に不規則に到来すると、その都度、交換に相当の時間を必要として滅菌の作業性が大幅に低下するだけでなく、滅菌効果の信頼性と安全性が阻害されるという問題があった。この問題に対処して、所定使用時間で3台同時に交換することが考えられるが、この場合にはメンテナンス費用が更に高くなるという問題があった。
【0011】
そこで、これらの問題に対処して、本発明者らは、以前に下記特許文献2の連続除染、滅菌装置及び方法を提案した。この連続除染、滅菌装置は、パッケージの外装面を除染、滅菌して当該パッケージを無菌作業室に搬送するに際し、除染用ガスが侵入する可能性のあるパッケージの上面シール部のみを1台の小型電子加速器で滅菌する。一方、除染用ガスが侵入することのないパッケージの底面及び側面外装部は、過酸化水素ガスなどの除染用ガスで効率的に除染するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第4237489号
【文献】特許第5603700号
【非特許文献】
【0013】
【文献】財団法人放射線利用振興協会、放射線利用技術データベース、データ番号:010306(作成:2007/10/03、関口正之)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記特許文献2の連続除染、滅菌装置は、1台の小型電子加速器と除染用ガスを併用することで装置の初期費用とメンテナンス費用を低く抑えることができる。しかし、上面シールからパッケージの内部への除染用ガスの侵入を防止するために、パッケージの底面及び側面外装部を収納する複数の特殊なチャンバーを使用する。よって、これらのチャンバーが除染室の内部を循環する複雑な機構が必要であった。
【0015】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージを無菌作業室に搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、1台の小型電子加速器と除染剤とを併用するにあたり、上面シールの封止に簡単かつ確実性の高い方法を見出すと共に、除染剤の使用方法に工夫を加えることにより本発明の完成に至った。
【0017】
即ち、本発明に係る連続除染・滅菌装置は、請求項1の記載によれば、
無菌作業室(170~470)に連設されて、気体透過性を有する上面シール部(P2)を備えた収納体(P)の外装部を除染・滅菌して、当該収納体を前記無菌作業室の内部に搬送する連続除染・滅菌装置(100~400)において、
第1搬送手段(30,60,70,80)により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する除染室(120~420)と、
第2搬送手段(30,15,70,80)により搬送しながら、除染後の前記収納体の外装部に残留する前記除染剤を除去するエアレーション室(130~430)と、
第3搬送手段(13)により前記収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器(50)から電子線を照射して滅菌する滅菌室(150~450)とを有し、
前記第1搬送手段は、吸着機能による封止手段を備え、当該封止手段が有する前記収納体の上面シール部の形状に合わせた複数の吸着面に開口する複数の吸引口からの吸引により、前記収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送することを特徴とする。
また、本発明に係る連続除染・滅菌装置は、請求項2の記載によれば、
無菌作業室に連設されて、気体透過性を有する上面シール部を備えた収納体の外装部を除染・滅菌して、当該収納体を前記無菌作業室の内部に搬送する連続除染・滅菌装置において、
第1搬送手段により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する除染室と、
第2搬送手段により搬送しながら、除染後の前記収納体の外装部に残留する前記除染剤を除去するエアレーション室と、
第3搬送手段により前記収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器から電子線を照射して滅菌する滅菌室とを有し、
前記第1搬送手段は、押圧機能による封止手段を備え、前記除染室の上部にあって前記収納体の上面シール部を封止する封止部材(70a,80a)と、前記除染室の下部にあって前記収納体の底面から押圧する押圧部材(70b,80b)とを備え、前記封止部材と前記押圧部材とによって前記収納体を上下方から挟持した状態で搬送することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記除染室は、前記除染剤を除染用ミストに変換して当該除染室の内部に供給するミスト供給手段(41)と、盤面から超音波による音響流を発生させる超音波振動盤を具備したミスト分散手段(42)とを備え、
当該除染室の内部に供給された前記除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させることにより、前記第1搬送手段で搬送される前記収納体の底面及び側面外装部を除染することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、
請求項1~3のいずれか1つに記載の連続除染・滅菌装置において、
外部環境から搬入された前記収納体は、前記除染室の前記第1搬送手段から前記エアレーション室の前記第2搬送手段に受け渡され、当該第2搬送手段から前記滅菌室の前記第3搬送手段に受け渡されることにより、除染・エアレーション後に滅菌されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、
請求項1~3のいずれか1つに記載の連続除染・滅菌装置において、
外部環境から搬入された前記収納体は、前記除染室の前記第1搬送手段から前記滅菌室の前記第3搬送手段に受け渡され、当該第3搬送手段から前記エアレーション室の前記第2搬送手段に受け渡されることにより、除染・滅菌後にエアレーションされることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項4に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記除染室の前記第1搬送手段及び前記エアレーション室の前記第2搬送手段は、連動した一体の第4搬送手段(30,70,80)であって、
前記除染室及び前記エアレーション室の内部において、前記第4搬送手段により前記収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部の除染・エアレーションを行うことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記除染室の前記第4搬送手段は、吸着機能による封止手段を備え、
前記封止手段が有する前記収納体の上面シール部の形状に合わせた複数の吸着面に開口する複数の吸引口からの吸引により、前記収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項6に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記除染室の前記第4搬送手段は、押圧機能による封止手段を備え、
前記封止手段は、前記除染室の上部にあって前記収納体の上面シール部を封止する封止部材(70a,80a)と、前記除染室の下部にあって前記収納体の底面から押圧する押圧部材(70b,80b)とを備え、
前記封止部材と前記押圧部材とによって前記収納体を上下方から挟持した状態で搬送することを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項2又は8に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記押圧部材は、前記収納体の底面の少なくとも1カ所を点接触で上方に押圧することを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項2又は8に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記押圧部材は、前記収納体の底面をスプリングの反発作用により上方に押圧することを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、請求項9又は10に記載の連続除染・滅菌装置であって、
前記封止部材は、除染剤分解触媒を担持して前記収納体の上面シール部を封止することを特徴とする。
【0030】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0031】
上記構成によれば、本発明に係る連続除染・滅菌装置は、除染室とエアレーション室と滅菌室とを有して無菌作業室に連設される。除染室においては、第1搬送手段により収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する。エアレーション室においては、第2搬送手段により搬送しながら、除染後の収納体の外装部に残留する除染剤を除去する。滅菌室においては、第3搬送手段により収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器から電子線を照射して滅菌する。
【0032】
このように、除染室においては、除染剤が侵入する可能性のある収納体の上面シール部を封止した状態で、除染剤が侵入することのない収納体の底面及び側面外装部を除染剤で効率的に除染する。一方、滅菌室においては、除染剤が侵入する可能性のある収納体の上面シール部のみを1台の小型電子加速器で滅菌する。このことにより、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することができる。
【0033】
また、上記構成によれば、除染室は、ミスト供給手段とミスト分散手段とを備えていてもよい。ミスト供給手段は、除染剤を除染用ミストに変換して当該除染室の内部に供給する。また、ミスト分散手段は、盤面から超音波による音響流を発生させる超音波振動盤を具備して、除染室の内部に供給された除染用ミストに音響放射圧による押圧を作用させて収納体の底面及び側面外装部を除染する。このことにより、除染効果が効率的となり上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0034】
また、上記構成によれば、外部環境から搬入された収納体は、除染室の第1搬送手段からエアレーション室の第2搬送手段に直接又は間接的に受け渡される。次に、第2搬送手段から滅菌室の第3搬送手段に直接又は間接的に受け渡される。よって、収納体は、除染され、エアレーションされた後に滅菌される。一方、別の構成によれば、外部環境から搬入された収納体は、除染室の第1搬送手段から滅菌室の第3搬送手段直接又は間接的に受け渡される。次に、第3搬送手段からエアレーション室の第2搬送手段に直接又は間接的に受け渡される。よって、収納体は、除染され、滅菌された後にエアレーションされる。このように、除染後の収納体の外装部に残留する除染剤の除去は、除染後直ぐに行ってもよく、除染後に滅菌された後に行ってもよい。
【0035】
また、上記構成によれば、除染室の第1搬送手段及びエアレーション室の第2搬送手段は、連動した一体の第4搬送手段であってもよい。この場合には、並列した除染室とエアレーション室の内部において、第4搬送手段により収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部の除染とエアレーションとを行うことができる。このことにより、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0036】
また、上記構成によれば、除染室の第1搬送手段及び除染室とエアレーション室の第4搬送手段は、吸着機能による封止手段を備えていてもよい。この封止手段は、収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送することができる。なお、この封止手段は、収納体の上面シール部の形状に合わせた複数の吸着面を有していることが好ましい。よって、収納体の上面シール部の封止と、収納体の底面及び側面外装部の除染とが効果的となる。このことにより、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0037】
また、上記構成によれば、除染室の第1搬送手段及び除染室とエアレーション室の第4搬送手段は、押圧機能による封止手段を備えていてもよい。ここで、封止手段は、除染室の上部にあって収納体の上面シール部を封止する封止部材と、除染室の下部にあって収納体を底面から押圧する押圧部材とを備えている。よって、収納体は、封止部材と押圧部材とによって上下方から挟持された状態で搬送される。
【0038】
また、上記構成によれば、押圧部材は、収納体の底面の少なくとも1カ所を点接触で上方に押圧するようにしてもよい。一方、別の構成によれば、押圧部材は、収納体の底面をスプリングの反発作用により上方に押圧するようにしてもよい。よって、封止部材と押圧部材とによって収納体を上下方から挟持した状態で搬送することができる。このとき、封止手段は、除染剤分解触媒を担持して収納体の上面シール部を封止するようにしてもよい。これらのことにより、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】各実施形態の除染・滅菌対象となる収納体(医療用器具パッケージ)を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
【
図3】
図2の第1実施形態で使用する搬送装置のバキュームコンベアであって、(A)ベルトの斜視図、(B)吸着面の拡大図である。
【
図4】第2実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
医薬品製造の作業室である無菌作業室においては、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションが要求される。また、無菌作業室で使用するプレフィルドシリンジやバイアルなどの資材には、GMP上では6LRD(Log Spore Reduction)以上の滅菌が求められる。
【0041】
これに対応して、本発明においては、「除染」を無菌性保証水準(SAL:Sterility Assurance Level)で、SAL≦10-6のレベルを保証することとする。このレベルを保証することのできる除染方法として、過酸化水素のガス・ミストによる方法を採用する。
【0042】
一方、本発明においては、「滅菌」をSAL≦10-12のレベルを保証することとする。このレベルを保証することのできる滅菌方法として、電子線照射を採用し必要線量を例えば、25kGyとする方法(ISO‐13409参照)とする。
【0043】
以下、本発明に係る連続除染・滅菌装置の各実施形態を図面によって説明する。まず、以下に示す各実施形態に係る連続除染・滅菌装置において、除染・滅菌する収納体を説明する。
図1は、各実施形態の除染・滅菌対象となる収納体(医療用器具パッケージ)を示す斜視図である。
図1において、パッケージPは、ポリエチレン製のタブP1とタイベック(商標)製の上面シール部P2とを備えている。タブP1と上面シール部P2とは、ヒートシールにより密封されている。各実施形態においては、パッケージPの内部にプレフィルドシリンジの充填作業に使用される滅菌したシリンジを多数収納し、パッケージPが密封された状態で外表面を除染・滅菌される。
【0044】
《第1実施形態》
図2は、第1実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
図2において、連続除染・滅菌装置100は、内部でプレフィルドシリンジの充填作業を行う無菌作業室(アイソレーター170)に連設している。この連続除染・滅菌装置100は、ステンレス製金属板からなる壁部で構成された箱体からなり、その内部は、搬入用パスボックス110、除染室120、エアレーション室130、滅菌前パスボックス140、滅菌室150、及び、滅菌後パスボックス160に各壁部で区画されている。
【0045】
搬入用パスボックス110の前壁部には、開閉可能なシャッター111が設けられている。搬入用パスボックス110と除染室120との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター121が設けられている。除染室120とエアレーション室130との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター131が設けられている。エアレーション室130と滅菌前パスボックス140との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター141が設けられている。滅菌前パスボックス140と滅菌室150との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター151が設けられている。滅菌室150と滅菌後パスボックス160との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター161が設けられている。滅菌後パスボックス160と連接するアイソレーター170との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター171が設けられている。
【0046】
このように、第1実施形態に係る連続除染・滅菌装置100においては、パッケージPの底面及び側面外装部(タブP1の外装部)を除染する除染室120が最初に配置されている。次に、除染後のタブP1の外装部に残留する除染剤を除去するエアレーション室130が配置されている。次に、除染・エアレーション後のパッケージPの上面シール部P2を滅菌する滅菌室150が配置されている。
【0047】
なお、連続除染・滅菌装置100の各室及びアイソレーター170は、それぞれ外部環境と遮断された無菌状態を維持している。特に、充填作業が行われるアイソレーター170への菌の侵入を阻止するために、各室の内部空気圧を給気装置(図示せず)からの給気によって外部環境よりも高く調節する。また、アイソレーター170の空気圧が最も高く、順次、各室を経て搬入用パスボックス110に向けて空気圧を下げながら、無菌環境を維持している。
【0048】
搬入用パスボックス110の床面には、ローラーコンベア11とパッケージ昇降機21とが設けられている。また、搬入用パスボックス110の後部から除染室120、エアレーション室130、滅菌前パスボックス140に至る天井部には、パッケージPの上面シール部P2を吸着して滅菌室150の方向に搬送する搬送装置30(バキュームコンベア30;詳細は後述する)が設けられている。ローラーコンベア11は、シャッター111を開放して搬入されるパッケージPを除染室120の方向に搬送する。パッケージ昇降機21は、搬入用パスボックス110の後部においてパッケージPをローラーコンベア11から受け取って天井部のバキュームコンベア30に受け渡しする。
【0049】
バキュームコンベア30は、受け取ったパッケージPの上面シール部P2を吸着して捕捉し、パッケージPの底面及び側面外装部を開放した状態で除染室120及びエアレーション室130の内部を経て滅菌前パスボックス140まで搬送する。この間、パッケージPの底面及び側面外装部が除染室120で除染剤により除染され、残留した除染剤がエアレーション室130で除去される(詳細は後述する)。なお、バキュームコンベア30によるパッケージPの移動に合わせて、各室のシャッター121,131,141が開閉される。
【0050】
滅菌前パスボックス140には、バキュームコンベア30の末端とパッケージ昇降機22とが設けられている。パッケージ昇降機22は、バキュームコンベア30からパッケージPを受け取り、シャッター151を開放して滅菌室150のローラーコンベア12に受け渡しする。滅菌室150においては、パッケージPの上面シール部P2が電子線で滅菌される(詳細は後述する)。滅菌後のパッケージPは、滅菌室150のローラーコンベア12からシャッター161を開放して滅菌後パスボックス160のローラーコンベア13に受け渡される。続いて、パッケージPは、ローラーコンベア13からシャッター171を開放してアイソレーター170のローラーコンベア14に受け渡さる。このように、パッケージPは、除染・滅菌された状態でアイソレーター170に搬入される。
【0051】
次に、バキュームコンベア30について説明する。バキュームコンベア30は、輪状にした幅広のベルトが回転するベルトコンベア方式の搬送装置であって、搬入用パスボックス110の後部から除染室120、エアレーション室130、滅菌前パスボックス140に至る各室の天井部に一体的に設けられている。
図3は、第1実施形態で使用する搬送装置のバキュームコンベアであって、(A)ベルトの斜視図、(B)吸着面の拡大図である。
図3(A)において、バキュームコンベア30のベルト本体31には、その表面に複数の吸着面32が設けられている。これらの吸着面32の形状と大きさは、パッケージPの上面シール部P2の形状と大きさに対応する。
【0052】
また、
図3(B)において、ベルト本体31の各吸着面32には、複数の吸引口33が開口しており、吸着面32が吸引ポンプ(図示せず)の作動によりパッケージPを上面シール部P2の部分で吸着して捕捉する。なお、搬入用パスボックス110のパッケージ昇降機11からバキュームコンベア30へのパッケージPの受け渡しには、パッケージPの上面シール部P2を吸着面32に対応させるための位置調整機構(図示せず)が設けられている。
【0053】
次に、除染操作について説明する。バキュームコンベア30に捕捉されたパッケージPは、除染室120のシャッター121を開放して除染室120に搬送される。パッケージPは、上面シール部P2が吸着されているので底面及び側面外装部が解放された状態で捕捉されている。このことにより、パッケージPの底面及び側面外装部が除染剤により高度に除染される。一方、上面シール部P2は、バキュームコンベア30の吸着面32で完全に封止されているので、上面シール部P2からパッケージPの内部に除染剤が侵入することがない。
【0054】
除染剤には、一般に過酸化水素(ガス又はミスト)が広く採用されている。この過酸化水素は、強力な滅菌効果を有し、安価で入手しやすく、且つ、最終的には酸素と水に分解する環境に優しい除染剤として有効である。この過酸化水素による除染効果は、除染対象部位の表面に凝縮する過酸化水素水の凝縮膜によるものとされている。従って、本発明においては、従来の過酸化水素ガスを使用する除染と、近年の過酸化水素ミストを使用する除染のいずれを採用してもよい。
【0055】
なお、本第1実施形態においては、過酸化水素ミストによる除染を採用し、更に除染効率を向上させるために超音波振動盤によるミスト分散機構を採用した。これらの方法を採用することにより、パッケージPに対する適正量の除染剤の供給で除染効果の完璧を図ると共に、エアレーション操作の作業時間を短縮して除染作業(除染操作とエアレーション操作)の効率化を図ることができる。
【0056】
ここで、「ミスト」とは、広義に解釈するものであって、微細化して空気中に浮遊する除染剤の液滴の状態、除染剤のガスと液滴が混在した状態、除染剤がガスと液滴との間で凝縮と蒸発との相変化を繰り返している状態などを含むものとする。また、粒径に関しても、場合によって細かく区分されるミスト・フォグ・液滴などを含んで広義に解釈する。なお、本第1実施形態においては、ミスト分散機構の超音波振動の作用により、ミスト・フォグ・液滴などの3μm~10μm或いはそれ以上の液滴であっても、3μm以下の超微細粒子に均一化されて高度な除染効果を発揮するものと考えられる。
【0057】
図2において、除染室120は、その内部に除染装置40を配置している。除染装置40は、ミスト供給装置41とミスト分散装置42と制御装置(図示せず)とから構成されている。本第1実施形態においては、ミスト供給装置41として二流体スプレーノズル(図示せず)を使用した。二流体スプレーノズルは、コンプレッサー(図示せず)からの圧縮空気により外部貯留槽41aからの過酸化水素水をミスト化して、除染室120の側壁面に開口するミスト放出口(図示せず)から除染室120の内部に供給する。なお、本発明においては、ミスト供給装置に関しては二流体スプレーノズルに限るものではなく、ミスト発生機構及び出力等について特に限定するものではない。
【0058】
ミスト分散装置42は、4台の超音波振動盤を具備して、両側壁面に各2台ずつ震動面を除染室120の内部水平方向に向けて配置されている(奥側壁の2台のみ図示)。なお、各震動盤は、基盤と複数の送波器とを具備している。本第1実施形態においては、基盤としてスピーカー基盤を使用し、送波器として超音波スピーカーを使用した。また、各超音波スピーカーの送波方向を統一して配置している。なお、本第1実施形態においては、ミスト分散装置が具備する震動盤に関しては超音波スピーカーに限るものではなく、超音波の発生機構、周波数域及び出力等について特に限定するものではない。
【0059】
次に、上記構成に係る除染装置40を配置した除染室120の内部における過酸化水素ミストの挙動について説明する。超音波スピーカーが超音波振動すると、震動面から垂直方向に進行する指向性の強い音響流が二流体スプレーノズルから放出された過酸化水素ミストを取り込んで、音響放射圧による押圧を作用させる。この際に過酸化水素ミストは、音響流による超音波振動の作用により微細化された微細ミストとなり除染室120の内部に均一に分散される。
【0060】
この微細ミストは、粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、微細ミストは、高度に微細化されたミストであり、除染室120の内部を搬送されるパッケージPの底面及び側面外装部に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。従って、従来の過酸化水素ガスによる除染操作に比べ厚みムラのある凝縮膜を生じさせることがない。このように、過酸化水素の微細ミストは、超音波振動の作用を常に受けながらパッケージPの底面及び側面外装部で蒸発と凝縮とが繰り返され、効率的な除染が行われる。また、少量の除染剤で効率よく除染できるので、除染後のエアレーション操作の効率も向上する。
【0061】
次に、エアレーション操作について説明する。バキュームコンベア30に捕捉されたパッケージPは、エアレーション室130のシャッター131が開放して除染室120からエアレーション室130に搬送される。エアレーション室130において、パッケージPは、バキュームコンベア30に上面シール部P2を捕捉された状態で底面及び側面外装部に残留する過酸化水素の凝集膜を除去するためにエアレーションが行われる。エアレーション室130は、その内部に清浄空気を供給する給気装置(図示せず)と、内部から過酸化水素ガスを含有した空気を排気する排気装置(図示せず)とを有している。清浄空気の供給と排気については、通常のエアレーションと変わるものではない。しかし、本第1実施形態においては、上述のように、少量の除染剤で効率よく除染できるので、除染後のエアレーション操作の効率も向上する。
【0062】
次に、滅菌操作について説明する。バキュームコンベア30に捕捉されたパッケージPは、滅菌前パスボックス140のシャッター141を開放して滅菌前パスボックス140に搬送される。滅菌前パスボックス140では、パッケージ昇降機22がバキュームコンベア30の末端からパッケージPを受け取り、シャッター151を開放して滅菌室150のローラーコンベア12に受け渡しする。滅菌室150においては、パッケージPの上面シール部P2が電子線で滅菌される。滅菌後のパッケージPは、滅菌室150のローラーコンベア12からシャッター161を開放して滅菌後パスボックス160のローラーコンベア13に受け渡される。
【0063】
なお、本第1実施形態においては、滅菌前パスボックス140、滅菌室150、及び、滅菌後パスボックス160で滅菌領域を構成する。具体的には、滅菌室150は、滅菌前パスボックス140を前部予備室として、滅菌後パスボックス160を後部予備室として構成されている。その理由は、滅菌室150が備える電子加速器から照射される電子線及び二次的に発生するX線を安全に遮蔽して、隣接するエアレーション室130やアイソレーター170に漏洩しないようにするためである。
【0064】
従って、滅菌前パスボックス140から滅菌室150への経路、滅菌室150のローラーコンベア12の経路、及び、滅菌後パスボックス160のローラーコンベア13の経路を屈曲させるなどの設計を行うことが好ましい。また、滅菌室150の壁部及び前後のシャッター151,161は、X遮蔽性の良い壁面構造とすることが好ましい。また、滅菌前パスボックス140、滅菌室150、及び、滅菌後パスボックス160の各室には、下方から上方に流れる一方向流の清浄空気の流れを構成することが好ましい。未だ滅菌されていない上面シール部P2の汚染物質が除染後の底面及び側面外装部を汚染しないためである。
【0065】
また、滅菌室150は、1台の滅菌装置(電子加速器50)とローラーコンベア12とを備えている。電子加速器50は、滅菌室150の上部から照射面を下方に向けて設けられている。ローラーコンベア12は、電子加速器50の照射面に対して下方にあり、パッケージPを一定速度で搬送する。この搬送中に、電子加速器50から照射される電子線がパッケージPの上面シール部P2を滅菌する。なお、電子加速器50は、一般に小型或いは低エネルギー型といわれるものを使用すればよく、例えば、放射線源:40~200kV、3.5~5mAであってもよい。
【0066】
次に、滅菌後のパッケージPは、滅菌室150のローラーコンベア12からシャッター161を開放して滅菌後パスボックス160のローラーコンベア13に受け渡される。続いて、パッケージPは、ローラーコンベア13からシャッター171を開放してアイソレーター170のローラーコンベア14に受け渡さる。このようにして、パッケージPは、除染・滅菌された状態でアイソレーター170に搬入される。
【0067】
以上説明したように、本第1実施形態に係る連続除染・滅菌装置100では、まず、除染室120において、パッケージPの上面シール部P2を封止した状態で底面及び側面外装部、すなわち、タブP1の外装部が過酸化水素ミストにより除染される。続いて、エアレーション室130において、同様の状態でエアレーションされる。従って、タブP1の外装部のみが処理されるので、微細孔を有するタイベック(商標)で構成された上面シール部P2を通してパッケージPの内部に過酸化水素ガスが侵入することがない。
【0068】
続く滅菌室150では、パッケージPの上面シール部P2の外装部が電子線照射により滅菌される。上面シール部P2は、微細孔を有するタイベック(商標)で構成されており、また、その後の薬液充填工程においては、充填後の無菌保証に直接影響する部分であることから、高いレベルを保証する滅菌が電子線により行われる。この滅菌室150では、パッケージPの上面シール部P2の外装部のみに電子線照射すればよいので、稼働する電子加速器の台数は1台となり、装置の初期費用が安価であり、また、交換作業が簡単になりメンテナンス費用が安く抑えられる。また、この1台の電子加速器を使用限界(寿命)までフルに使用することができるので、メンテナンス費用が安く、更に、除染効果の信頼性と安全性を高く維持することができる。
【0069】
このように、本第1実施形態においては、パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージをアイソレーターに搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することができる。
【0070】
《第2実施形態》
図4は、第2実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
図4において、連続除染・滅菌装置200は、内部でプレフィルドシリンジの充填作業を行う無菌作業室(アイソレーター270)に連設している。この連続除染・滅菌装置200は、ステンレス製金属板からなる壁部で構成された箱体からなり、その内部は、搬入用パスボックス210、除染室220、滅菌前パスボックス240、滅菌室250、エアレーション室230、及び、滅菌後パスボックス260に各壁部で区画されている。
【0071】
搬入用パスボックス210の前壁部には、開閉可能なシャッター211が設けられている。搬入用パスボックス210と除染室220との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター221が設けられている。除染室220と滅菌前パスボックス240との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター241が設けられている。滅菌前パスボックス240と滅菌室250との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター251が設けられている。滅菌室250と滅菌後パスボックス260との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター261が設けられている。滅菌後パスボックス260とエアレーション室230との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター231が設けられている。エアレーション室230と連接するアイソレーター270との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター271が設けられている。
【0072】
このように、第2実施形態に係る連続除染・滅菌装置200においては、パッケージPの底面及び側面外装部(タブP1の外装部)を除染する除染室220が最初に配置されている。次に、除染後のパッケージPの上面シール部P2を滅菌する滅菌室250が配置されている。次に、除染後のタブP1の外装部に残留する除染剤を除去するエアレーション室230が配置されている。
【0073】
なお、連続除染・滅菌装置200の各室及びアイソレーター270は、それぞれ外部環境と遮断された無菌状態を維持している。特に、充填作業が行われるアイソレーター270への菌の侵入を阻止するために、各室の内部空気圧を給気装置(図示せず)からの給気によって外部環境よりも高く調節する。また、アイソレーター270の空気圧が最も高く、順次、各室を経て搬入用パスボックス210に向けて空気圧を下げながら、無菌環境を維持している。
【0074】
搬入用パスボックス210の床面には、ローラーコンベア11とパッケージ昇降機21とが設けられている。また、搬入用パスボックス210の後部から除染室220、滅菌前パスボックス240に至る天井部には、パッケージPの上面シール部P2を吸着して滅菌室250の方向に搬送する搬送装置60(バキュームコンベア60)が設けられている。ローラーコンベア11は、シャッター211を開放して搬入されるパッケージPを除染室220の方向に搬送する。パッケージ昇降機21は、搬入用パスボックス210の後部においてパッケージPをローラーコンベア11から受け取って天井部のバキュームコンベア60に受け渡しする。
【0075】
バキュームコンベア60は、受け取ったパッケージPの上面シール部P2を吸着して捕捉し、パッケージPの底面及び側面外装部を開放した状態で除染室220の内部を経て滅菌前パスボックス240まで搬送する。この間、パッケージPの底面及び側面外装部が除染室220で除染剤により除染される。なお、バキュームコンベア60によるパッケージPの移動に合わせて、各室のシャッター221,241が開閉される。
【0076】
滅菌前パスボックス240には、バキュームコンベア60の末端とパッケージ昇降機22とが設けられている。パッケージ昇降機22は、バキュームコンベア60からパッケージPを受け取り、シャッター251を開放して滅菌室250のローラーコンベア12に受け渡しする。滅菌室250においては、パッケージPの上面シール部P2が電子線で滅菌される。滅菌後のパッケージPは、滅菌室250のローラーコンベア12からシャッター261を開放して滅菌後パスボックス260のローラーコンベア13に受け渡される。
【0077】
続いて、パッケージPは、ローラーコンベア13からシャッター231を開放してエアレーション室230のローラーコンベア15に受け渡される。エアレーション室230においては、パッケージPをローラーコンベア15で搬送しながら底面及び側面外装部に残留する除染剤を除去するエアレーションが行われる。続いて、パッケージPは、ローラーコンベア15からシャッター271を開放してアイソレーター270のローラーコンベア14に受け渡さる。このようにして、パッケージPは、除染・滅菌された状態でアイソレーター270に搬入される。
【0078】
本第2実施形態において、除染操作とエアレーション操作と滅菌操作の各操作は、基本的には上記第1実施形態と同様である。しかし、本第2実施形態の除染・滅菌操作の順序が上記第1実施形態と異なっている。具体的には、上記第1実施形態の除染・滅菌操作は、「除染→エアレーション→滅菌」の順序で行われる。これに対して、本第2実施形態の除染・滅菌操作は、「除染→滅菌→エアレーション」の順序で行われる。よって、本第2実施形態においては、滅菌操作の際にパッケージPのタブP1の外装部に除染剤の凝縮膜が残留している。また、エアレーション操作の際にパッケージPの上面シール部P2が封止されていない。
【0079】
そこで、滅菌操作において、滅菌前パスボックス240、滅菌室250、及び、滅菌後パスボックス260の各室には、上方から下方に流れる一方向流の清浄空気の流れを構成することが好ましい。このことにより、タブP1の外装部に残留した凝縮膜から気化した過酸化水素ガスが上面シール部P2からパッケージPの内部に侵入することがない。一方、タブP1の外装部には除染剤の凝縮膜が残留しているので、未だ滅菌されていない上面シール部P2の汚染物質が除染後の底面及び側面外装部を汚染することがない。
【0080】
また、エアレーション操作においても、エアレーション室230には、上方から下方に流れる一方向流の清浄空気の流れを構成することが好ましい。このことにより、タブP1の外装部に残留した凝縮膜から気化した過酸化水素ガスが上面シール部P2からパッケージPの内部に侵入することがない。
【0081】
このように、本第2実施形態においては、パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージをアイソレーターに搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することができる。
【0082】
《第3実施形態》
図5は、第3実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
図5において、連続除染・滅菌装置300は、内部でプレフィルドシリンジの充填作業を行う無菌作業室(アイソレーター370)に連設している。この連続除染・滅菌装置300は、ステンレス製金属板からなる壁部で構成された箱体からなり、その内部は、搬入用パスボックス310、除染室320、エアレーション室330、滅菌前パスボックス340、滅菌室350、及び、滅菌後パスボックス360に各壁部で区画されている。
【0083】
搬入用パスボックス310の前壁部には、開閉可能なシャッター311が設けられている。搬入用パスボックス310と除染室320との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター321が設けられている。除染室320とエアレーション室330との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター331が設けられている。エアレーション室330と滅菌前パスボックス340との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター341が設けられている。滅菌前パスボックス340と滅菌室350との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター351が設けられている。滅菌室350と滅菌後パスボックス360との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター361が設けられている。滅菌後パスボックス360と連接するアイソレーター370との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター371が設けられている。
【0084】
このように、第3実施形態に係る連続除染・滅菌装置300においては、パッケージPの底面及び側面外装部(タブP1の外装部)を除染する除染室320が最初に配置されている。次に、除染後のタブP1の外装部に残留する除染剤を除去するエアレーション室330が配置されている。次に、除染・エアレーション後のパッケージPの上面シール部P2を滅菌する滅菌室350が配置されている。
【0085】
なお、連続除染・滅菌装置300の各室及びアイソレーター370は、それぞれ外部環境と遮断された無菌状態を維持している。特に、充填作業が行われるアイソレーター370への菌の侵入を阻止するために、各室の内部空気圧を給気装置(図示せず)からの給気によって外部環境よりも高く調節する。また、アイソレーター370の空気圧が最も高く、順次、各室を経て搬入用パスボックス310に向けて空気圧を下げながら、無菌環境を維持している。
【0086】
搬入用パスボックス310の床面には、ローラーコンベア11とパッケージ昇降機21とが設けられている。また、搬入用パスボックス310の後部から除染室320、エアレーション室330、滅菌前パスボックス340に至る天井部には、パッケージPの上面シール部P2を封止して滅菌室350の方向に搬送する搬送装置70(上部コンベア70a及び下部コンベア70b;詳細は後述する)が設けられている。ローラーコンベア11は、シャッター311を開放して搬入されるパッケージPを除染室320の方向に搬送する。パッケージ昇降機21は、搬入用パスボックス310の後部においてパッケージPをローラーコンベア11から受け取って天井部の搬送装置70に受け渡しする。
【0087】
搬送装置70は、受け取ったパッケージPの上面シール部P2を上部コンベア70aで封止し、パッケージPの底面及び側面外装部を下部コンベア70bで上方に押圧した状態で除染室320及びエアレーション室330の内部を経て滅菌前パスボックス340まで搬送する。この間、パッケージPの底面及び側面外装部が除染室320で除染剤により除染され、残留した除染剤がエアレーション室330で除去される。なお、搬送装置70によるパッケージPの移動に合わせて、各室のシャッター321,331,341が開閉される。
【0088】
滅菌前パスボックス340には、搬送装置70の末端とパッケージ昇降機22とが設けられている。パッケージ昇降機22は、搬送装置70からパッケージPを受け取り、シャッター351を開放して滅菌室350のローラーコンベア12に受け渡しする。滅菌室350においては、パッケージPの上面シール部P2が電子線で滅菌される。滅菌後のパッケージPは、滅菌室350のローラーコンベア12からシャッター361を開放して滅菌後パスボックス360のローラーコンベア13に受け渡される。続いて、パッケージPは、ローラーコンベア13からシャッター371を開放してアイソレーター370のローラーコンベア14に受け渡さる。このように、パッケージPは、除染・滅菌された状態でアイソレーター370に搬入される。
【0089】
次に、搬送装置70について説明する。搬送装置70は、上部コンベア70aと下部コンベア70bとから構成されている。上部コンベア70aは、上記第1実施形態のバキュームコンベア30(
図3参照)と類似の機構を有しており、輪状にした幅広のベルトが回転するベルトコンベア方式の上側搬送装置であって、パッケージPの上面シール部P2を封止する封止部材として作用する。この上部コンベア70aは、搬入用パスボックス310の後部から除染室320、エアレーション室330、滅菌前パスボックス340に至る各室の天井部に一体的に設けられている。
【0090】
なお、本第3実施形態においては、上記第1実施形態のバキュームコンベア30のベルト本体31に設けられていた複数の吸着面32(
図3参照)に替えて、上部コンベア70aのベルト本体71aの表面に複数の封止面が設けられている。これらの封止面の形状と大きさは、パッケージPの上面シール部P2の形状と大きさに対応する。これら各封止面は、パッケージPの上面シール部P2を被覆して除染室320の内部の除染環境から封止する機能を有する。また、各封止面のパッド材の構成はどのようなものであってもよいが、除染剤分解触媒を担持するようにしてもよい。なお、搬入用パスボックス310のパッケージ昇降機11から上部コンベア70aへのパッケージPの受け渡しには、パッケージPの上面シール部P2を封止面に対応させるための位置調整機構(図示せず)が設けられている。
【0091】
一方、下部コンベア70bは、上部コンベア70aと連動するベルトコンベア方式の下側搬送装置であって、パッケージPの底面外装部(タブP1の底面外装部)を上方の上部コンベア70aの方向に押し上げる押圧部材として作用する。この下部コンベア70bは、除染室320からエアレーション室330に至る各室の床面に一体的に設けられている。下部コンベア70bのベルト本体71bには、その表面に複数の支持材72bが設けられている。これらの支持材72bは、1本の針状の支柱であってベルト本体71bのベルト面から垂直方向に設けられている。
【0092】
このような構成において、搬送装置70は、上部コンベア70aの各封止面72aと下部コンベア70bの各支持材72bとが個々に対応して、パッケージPを上下方から挟持した状態で連動して搬送する。このことにより、除染操作及びエアレーション操作において、パッケージPの上面シール部P2が上部コンベア70aの封止面72aで完全に封止されているので、上面シール部P2からパッケージPの内部に除染剤が侵入することがない。また、パッケージPの底面外装部が支持材72bで1カ所を点接触で上方に押圧されているので、底面外装部の除染が阻害されることはない。なお、本第3実施形態において、除染操作とエアレーション操作と滅菌操作の各操作は、基本的には上記第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0093】
このように、本第3実施形態においては、パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージをアイソレーターに搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することができる。
【0094】
《第4実施形態》
図7は、第4実施形態に係る連続除染・滅菌装置の概要を示す横方向から見た断面図である。
図7において、連続除染・滅菌装置400は、内部でプレフィルドシリンジの充填作業を行う無菌作業室(アイソレーター470)に連設している。この連続除染・滅菌装置400は、ステンレス製金属板からなる壁部で構成された箱体からなり、その内部は、搬入用パスボックス410、除染室420、エアレーション室430、滅菌前パスボックス440、滅菌室450、及び、滅菌後パスボックス460に各壁部で区画されている。
【0095】
搬入用パスボックス410の前壁部には、開閉可能なシャッター411が設けられている。搬入用パスボックス410と除染室420との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター421が設けられている。除染室420とエアレーション室430との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター431が設けられている。エアレーション室430と滅菌前パスボックス440との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター441が設けられている。滅菌前パスボックス440と滅菌室450との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター451が設けられている。滅菌室450と滅菌後パスボックス460との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター461が設けられている。滅菌後パスボックス460と連接するアイソレーター470との間の共通の壁部には、開閉可能なシャッター471が設けられている。
【0096】
このように、第4実施形態に係る連続除染・滅菌装置400においては、パッケージPの底面及び側面外装部(タブP1の外装部)を除染する除染室420が最初に配置されている。次に、除染後のタブP1の外装部に残留する除染剤を除去するエアレーション室430が配置されている。次に、除染・エアレーション後のパッケージPの上面シール部P2を滅菌する滅菌室450が配置されている。
【0097】
なお、連続除染・滅菌装置400の各室及びアイソレーター470は、それぞれ外部環境と遮断された無菌状態を維持している。特に、充填作業が行われるアイソレーター470への菌の侵入を阻止するために、各室の内部空気圧を給気装置(図示せず)からの給気によって外部環境よりも高く調節する。また、アイソレーター470の空気圧が最も高く、順次、各室を経て搬入用パスボックス410に向けて空気圧を下げながら、無菌環境を維持している。
【0098】
搬入用パスボックス410の床面には、ローラーコンベア11とパッケージ昇降機21とが設けられている。また、搬入用パスボックス410の後部から除染室420、エアレーション室430、滅菌前パスボックス440に至る天井部には、パッケージPの上面シール部P2を封止して滅菌室450の方向に搬送する搬送装置80(上部コンベア80a及び下部コンベア80b;詳細は後述する)が設けられている。ローラーコンベア11は、シャッター411を開放して搬入されるパッケージPを除染室420の方向に搬送する。パッケージ昇降機21は、搬入用パスボックス410の後部においてパッケージPをローラーコンベア11から受け取って天井部の搬送装置80に受け渡しする。
【0099】
搬送装置80は、受け取ったパッケージPの上面シール部P2を上部コンベア80aで封止し、パッケージPの底面及び側面外装部を下部コンベア80bで上方に押圧した状態で除染室420及びエアレーション室430の内部を経て滅菌前パスボックス440まで搬送する。この間、パッケージPの底面及び側面外装部が除染室420で除染剤により除染され、残留した除染剤がエアレーション室430で除去される。なお、搬送装置80によるパッケージPの移動に合わせて、各室のシャッター421,431,441が開閉される。
【0100】
滅菌前パスボックス440には、搬送装置80の末端とパッケージ昇降機22とが設けられている。パッケージ昇降機22は、搬送装置80からパッケージPを受け取り、シャッター451を開放して滅菌室450のローラーコンベア12に受け渡しする。滅菌室450においては、パッケージPの上面シール部P2が電子線で滅菌される。滅菌後のパッケージPは、滅菌室450のローラーコンベア12からシャッター461を開放して滅菌後パスボックス460のローラーコンベア13に受け渡される。続いて、パッケージPは、ローラーコンベア13からシャッター471を開放してアイソレーター470のローラーコンベア14に受け渡さる。このように、パッケージPは、除染・滅菌された状態でアイソレーター470に搬入される。
【0101】
次に、搬送装置80について説明する。搬送装置80は、上部コンベア80aと下部コンベア80bとから構成されている。上部コンベア80aは、上記第3実施形態の上部コンベア70aと同様の機構を有しており、輪状にした幅広のベルトが回転するベルトコンベア方式の上側搬送装置であって、パッケージPの上面シール部P2を封止する封止部材として作用する。この上部コンベア80aは、搬入用パスボックス410の後部から除染室420、エアレーション室430、滅菌前パスボックス440に至る各室の天井部に一体的に設けられている。
【0102】
なお、上部コンベア80aは、上記第3実施形態と同様に、ベルト本体81aの表面に複数の封止面が設けられている。これらの封止面の形状と大きさは、パッケージPの上面シール部P2の形状と大きさに対応する。これら各封止面は、パッケージPの上面シール部P2を被覆して除染室420の内部の除染環境から封止する機能を有する。また、各封止面のパッド材の構成はどのようなものであってもよいが、除染剤分解触媒を担持するようにしてもよい。なお、搬入用パスボックス410のパッケージ昇降機11から上部コンベア80aへのパッケージPの受け渡しには、パッケージPの上面シール部P2を封止面に対応させるための位置調整機構(図示せず)が設けられている。
【0103】
なお、上部コンベア80aのベルト本体81aの表面には、上記第3実施形態とは異なり複数の突起82aが設けられている。この突起82aは、ベルト本体81aの封止面がパッケージPの上面シール部P2を封止した状態で、ベルト本体81aの回転(進行方向への移動)に伴って、封止した状態のパッケージPを進行方向に押し送りする機能を有する。
【0104】
一方、下部コンベア80bは、上記第3実施形態とは異なり、上部コンベア80aと連動するベルトコンベア方式のものではない。
図4において、下部コンベア80bは、除染室420からエアレーション室430に至る各室の床面に固定された基台81bと、基台81bの上面に一端を固定した複数のスプリング82bと、複数のスプリング81bの他端に載設したフリーホイールコンベア83bとで構成されている。この下部コンベア80bは、複数のスプリング82bの反発作用によりパッケージPの底面外装部(タブP1の底面外装部)を上方の上部コンベア80aの方向に押し上げる押圧部材として作用する。
【0105】
この下部コンベア80bは、除染室420からエアレーション室430に至る各室の床面に設けられている。下部コンベア80bは、上部コンベア80aと連動するものではないが、パッケージPが上部コンベア80aのベルト本体81aに設けられた突起82aの動きに伴って進行方向に移動する際には、パッケージPの底面外装部がフリーホイールコンベア83bの各ロールが回転して、これらのロール間をパッケージPの底面外装部が移動する。
【0106】
このような構成において、搬送装置80は、上部コンベア80aの各封止面82aと下部コンベア80bのフリーホイールコンベア83bとがパッケージPを上下方から押圧した状態で搬送する。このことにより、除染操作及びエアレーション操作において、パッケージPの上面シール部P2が上部コンベア80aの封止面で完全に封止されているので、上面シール部P2からパッケージPの内部に除染剤が侵入することがない。また、パッケージPの底面外装部が回転するフリーホイールコンベア83bで上方に押圧されているので、底面外装部の除染が阻害されることはない。なお、本第4実施形態において、除染操作とエアレーション操作と滅菌操作の各操作は、基本的には上記第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0107】
このように、本第4実施形態においては、パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージをアイソレーターに搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供することができる。
【0108】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記第1及び第2実施形態においては、搬送装置としてバキュームコンベアを採用し、そのベルト本体にパッケージPの上面シール部P2の形状に合わせた複数の吸着面でパッケージPの上面シール部P2を吸着して搬送した。しかし、これに限るものではなく、ベルト本体の全面に吸着機能を持たせるようにしてもよい。
(2)上記第3実施形態においては、下部コンベアに設けた支持材(1本の針状の支柱)の点接触によりパッケージPの底面外装部を上方に押圧した。しかし、これに限るものではなく、複数本の支柱でパッケージPの底面外装部を上方に押圧するようにしてもよい。
(3)上記各実施形態においては、滅菌前パスボックス、滅菌室、及び、滅菌後パスボックスにより滅菌領域を構成した。しかし、これに限るものではなく、X線の遮蔽を考慮して滅菌室1室のみで滅菌領域を構成するようにしてもよい。
(4)上記各実施形態においては、搬送装置としてパッケージPの底面外装部を担持して搬送するローラーコンベアを多く採用した。しかし、これに限るものではなく、ローラーコンベア以外の担持搬送装置や、パッケージPの側面外装部を挟持して搬送する挟持搬送装置を採用してもよい。
(5)上記各実施形態においては、ローラーコンベアやパッケージ昇降機による各室の受け渡しについて特に限定するものではない。例えば、プッシャーなどの押し出し機、或いはその他の受け渡し手段を採用してもよい。
(6)上記各実施形態においては、ミスト供給装置として二流体スプレーノズルを使用した。しかし、これに限るものではなく、超音波加湿器(ネブライザー)や一流体スプレーノズルなどを使用するようにしてもよい。
(7)上記各実施形態においては、ミスト循環分散装置の震動盤としてスピーカー基盤に複数の超音波スピーカーを配置したものを使用した。しかし、これに限るものではなく、震動盤として一定面積を有するステンレス板にランジュバン型震動子を固定した震動盤やその他の超音波振動する盤面を有するものであればどのような震動盤を使用するようにしてもよい。
(8)上記各実施形態においては、除染剤として過酸化水素水(H2O2水溶液)を使用した。しかし、これに限るものではなく、除染剤として使用される液体状の除染剤であればどのようなものを使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0109】
100~400…連続除染・滅菌装置、110~410…搬入用パスボックス、
120~420…除染室、130~430…エアレーション室、
140~440…滅菌前パスボックス、150~450…滅菌室、
160~460…滅菌後パスボックス、170~470…アイソレーター、
111~411,121~421,131~431,141~441,151~451,161~461,171~471…シャッター、
11~15…ローラーコンベア、21,22…パッケージ昇降機、
30,60,70,80…搬送装置、30,60…バキュームコンベア、
70a,80a…上部コンベア、70b,80b…下部コンベア、
31,71a,71b,81a…ベルト本体、
32…吸着面、33…吸引口、40…除染装置、41…ミスト供給装置、
41a…外部貯留槽、42…ミスト分散装置、50…電子加速器、
72a…封止面、72b…支持材、82a…突起、
81b…基台、82b…スプリング、83b…フリーホイールコンベア、
P…パッケージ、P1…タブ、P2…上面シール部。
【要約】
【課題】パッケージの外装面を除染・滅菌して当該パッケージを無菌作業室に搬送するに際し、高い除染・滅菌効果と高い生産性を有しており、シンプルな構造で除染・滅菌効果の信頼性と安全性を高く維持することができる連続除染・滅菌装置を提供する。
【解決手段】除染室は、第1搬送手段により収納体の上面シール部を封止した状態で搬送しながら、当該収納体の底面及び側面外装部を除染剤で除染する。エアレーション室は、第2搬送手段により搬送しながら、除染後の収納体の外装部に残留する除染剤を除去する。滅菌室は、第3搬送手段により収納体の底面又は側面外装部を担持した状態で搬送しながら、当該収納体の上面シール部を電子加速器から電子線を照射して滅菌する。また、第1搬送手段は、吸着機能による封止手段を備えて、収納体の上面シール部を封止するように吸着して捕捉し、当該収納体の底面及び側面外装部を開放した状態で搬送する。
【選択図】
図2