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  • 特許-咬みつき防止タオル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】咬みつき防止タオル
(51)【国際特許分類】
   A01K 25/00 20060101AFI20220922BHJP
   A01K 15/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A01K25/00
A01K15/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018568086
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018003009
(87)【国際公開番号】W WO2018150865
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2017043269
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】317002629
【氏名又は名称】金子 美樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 美樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0152875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0360732(US,A1)
【文献】特開2015-80472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178041(US,A1)
【文献】保定の仕方 松山ほうじょう動物クリニック,2011年03月30日,https://www.youtube.com/watch?v=gQZwVr4HsP0,令和 2年 5月20日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 25/00
A01K 15/02
A61D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の顎関節を拘束する咬みつき防止用具であって、前記咬みつき防止用具は動物の下顎を中心にして鼻梁で交差させ、さらに後頭部で接合させて頭部全体に8の字状に巻き付けられる長さと、動物の下顎全体を覆う幅を有するタオルの様式で織った布地を主体とし、前記布の両端に連結された動物の後頭部から頸を保持するベルトが動物の顎に準じた角度で布の幅方向に取り付けられ、前記ベルトに付加されたバックルを締結させ、顎関節から後頭部を締め上げる機能を持ち、さらに動物に装着させると鼻を除く頭部全体を覆う形態をとる咬みつき防止用具。
【請求項2】
上記タオルの様式で織った布地の幅方向の一端である上端にアクリルで織り上げられたテープで構成されたパットを有し、前記動物に装着させた際に、前記動物と前記タオルの様式で織った布地の間に滴型の空間を形成して、動物の鼻を布から出すことで動物を窒息から防ぐ機能を持つ請求項1に記載の咬みつき防止用具。
【請求項3】
上記動物の下顎全体を覆う幅と鼻を除いた頭部全体を覆う長さを有するタオルの様式で織った布地であり、前記布の長さ方向の中央には、一対のカバーが布の幅方向に配列され、顎調節用紐が前記一対のカバーの下を八の字状に通り、前記顎調節用紐で前記布を前記幅方向に緊緩可能とした請求項1または請求項2に記載の咬みつき防止用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、犬の顎関節を保定するのに、最適な咬みつき防止用具に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、犬は能力が高く主人に忠誠を尽くして働くので、大切に飼育される特別な動物であった。そのため、多様な使役犬が作出され、人類を支えて共存してきた。現代でも、訓練を受けた犬は、多岐にわたる分野で職業犬として活躍している。しかし、ほとんどの犬は、家庭犬として普及しており家族の一員として扱われ、伴侶動物としての役割を担うようになった。人間の生活様式が変化したため、犬の飼育様式も室内飼いが主流となり、衛生管理としてペット・サロンに定期的に通い、トリミングを受ける必要性が生じた。また、医学の進歩に伴う獣医療の発展により、大抵の怪我や病気が治療できるようになり、動物病院を受診する機会が増えた。伴侶動物の代表である犬と猫においては、高度医療が選択される場合もある。少なくとも、飼い主には犬の健康管理として、狂犬病及びフィラリアを中心とする感染症に対する予防医療を受けさせる義務がある。
【0003】
しかし、犬にとって、見知らぬ場所に連れて行かれ様々な処置を受けるのは、ストレスが大きい。ペット・サロンまたは動物病院のスタッフは、他人に触らせない犬を扱うと、咬傷が絶えないのが問題である。犬の顎の力は強く、中型犬以上の犬に咬まれると、大怪我を負ってしまう。また、こうした過敏で攻撃的な犬には、サービスを受けさせられない現状が、飼い主の悩みである。
【0004】
従来の口輪は、気性が激しい犬に装着させるのが困難であった。そのため、咬む犬に処置を行う場合は、鎮静麻酔剤を犬に投与して、咬みつきを防止する方法に頼ってきた。犬に鎮静麻酔剤を注射し鎮静化を図るのが、一般的なペットのサービス業における対策となっている。
【0005】
従来からは、犬の咬みつきを防止するために、口輪が用いられてきた。口輪の種類として、特許文献1では、犬の口吻の大きさに、籠に取り付けられたベルトでサイズ調整が可能な口輪が発案され、開示されている。また、特許文献2では、犬の口吻に締結させたベルトに、犬の首輪とリードを連結させたカンを使用した、行動を制御する目的の口輪がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-9817号公報
【文献】特開2006-262733号公報
【0007】
咬む犬を捕まえて抱き上げるのは、度胸が必要で危険を伴う業務であった。保定者が、腕に防具を装着して犬に咬みつかせ、その隙に薬物を注射して鎮静化させ、犬を捕らえていた。しかし、人間が正面から立ち向かうと、犬にとっては、威嚇行為になってしまう。そのため、犬が防衛のために、咬もうとするという悪循環に陥っていた。犬に与えるストレスが大きいので、保定時に心不全を起こして、突然死してしまう事故も度々起こっている。また、鎮静麻酔剤の投与も、犬の体に負担をかけるので、事故死を招く危険性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現代において、適切な犬の飼養管理をするには、トリミング及び獣医療に関するサービスを受けさせる必要がある。トリマーまたは獣医師による処置を受け、他人に犬の体を触らせなければならない。この際に、咬傷事故を防ぐため、犬に咬みつき防止用具を装着させる必要性がある。また、素早く装着ができ、犬に対してストレスの少ない咬みつき防止用具を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明品である咬みつき防止用具の様態は、犬の下顎全体を覆う幅があり、鼻を除いた頭部全体を覆う長さを有する、タオルの様式で織った布地を主要な部分とする。また、タオルの様式で織った布地の中央には、個体に合わせた顎の長さに調節する紐と一対のカバーが付加されている構成とする。紐を用いて布を短縮させる技法としては、布地に複数のループを設置して、紐を通す方法がある。また、布地に複数の孔を開けて紐を通し、ギャザーを形成する方法もある。さらに、布の両端には、犬の顎から保定者の手までの距離を保つ、延長用のベルトが取り付けられている構成とする。当該ベルトで調節する保定者と犬との距離は、犬の顎から肩までの長さが目安になる。
【0010】
タオルの様式で織った布地の両端には、犬の後頭部から頸を保持するため、先端に締結部としてバックルを有する保持用ベルトが連結する構成とする。当該ベルトの布との連結部は、布の片方に直接ベルトを縫い付けて、もう一方の布はホック(スナップ・ボタン)を用いて留める形態をとる。もしくは、布の両方とも、ホックを用いてベルトを連結させ、着脱を可能な形態にすることも考えられる。また、締結部に用いるバックルは、ベルトの長さを無段階調整できるタイプを使用し、個体に合わせた犬の頸周りのサイズに対応できるようにする。当該保持用ベルトを布に取り付ける方向としては、布の左端にベルトを取り付ける場合は犬の右側の下顎に準じた角度(60度から70度)とし、右端にベルトを取り付ける場合は犬の左側の下顎に準じた角度(60度から70度)とすると、装着時に犬の頸方向に対して垂直になるので、犬の頭部に密着して装着する事ができる。
【0011】
タオルの様式で織った布地の両端には、ベルトが取り付けられ、布の長さを延長する構成とする。当該ベルトは、タオルの様式で織った布地の両端に複数の孔を開けて通す、もしくは、ホックで留めるなど、取り外しが可能な形態をとる。または、ベルトの両端を布に直接、縫い付ける形態も考えられる。
【0012】
タオルの様式で織った布地を犬の顎に巻き付けた際に、布の中央の左右が上下に重なってできる接合部は、一対の面ファスナで構成され、鼻梁から額に位置する形態をとる。
【0013】
タオルの様式で織った布地の上端には緊縛用の紐を設置し、布の中央には複数のフックを付加した構成をとるものとする。当該紐をフックに交互にかけて、犬の顎全体を締め上げることで、顎関節を確実に保定する。
【0014】
タオルの様式で織った布地の上端である犬の鼻に接する部分には、窒息を防ぐため、弾力のある素材を用いたパットを取り付ける。これにより、使用した際に、空間を作り布から鼻を出す形態をとる。
【0015】
保定者は、本発明品であるタオルの様式で織った布地に付加された両端のベルトを、左右の手で握り込み、Uの字状にする。犬を後肢で立たせ、壁に前肢をつかせて姿勢を固定させる。犬の背面から、タオルの様式で織った布地をひっかけるようにして、顎に通す。両腕を交差させて、布で犬の顎を締め上げて、後頭部でベルトを締結させる。これにより、犬の鼻を除いた頭部全体が、布で覆われた状態になる。
本発明品は、犬の視界を遮るので、動体視力の働きを抑える事ができる。犬の顎から保定者の手までの長さがあるタオルの様式で織った布地を用いるので、保定者が咬まれる危険性が少ない。手技により、素早く犬の顎関節の動きを封じる事ができる。
【0016】
本発明品であるタオルの様式で織った布地を犬の顎に巻き付けた際は、鼻梁から額で接着されるように、一対の面ファスナを付着させるものとする。また、面ファスナの形状を台形もしくは三角形にして、角度を深くすることで、個体に合わせた口吻の太さに調節できるようにする。これにより、接着する面積が広くなり、顎が短く口吻の太い犬種(ブルドック)にも、対応ができるようにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明品には、以下のような効果と利点がある。
(1)タオルの様式で織った布地の幅を自在に調整して、犬の顎を中心とした頭部に巻き付ける事で、多様な犬種の顎の形態に対応できる。また、個体に合わせたサイズにも、調整が可能である。
(2)タオルの様式で織った布地の両端にベルトを取り付け、延長する事で犬と距離が保て、保定者が咬まれる危険性が少ない。
(3)長さのあるタオルの様式で織った布地を用いた手技により、素早く犬の顎関節の動きを封じる事ができる。
(4)犬の背面から保定するので、犬が攻撃的にならない。保定者が犬と対決しないので、お互いにストレスが少ない。鎮静麻酔剤を投与せずに済むので、犬の体に負担をかけない。
(5)タオルの様式で織った布地で、犬の鼻を除いた頭部全体を覆うため、目隠しをする効果がある。犬は動体視力が働かなくなり、周囲の動きに対する興奮が抑えられる。これにより、爪切りを始めとする犬の体の手入れや、医療処置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明品である咬みつき防止タオルの全体図である。
図2】本発明品である咬みつき防止タオルの使用方法を示した図である。
図3】本発明品である咬みつき防止タオルを犬に装着させた図である。
【発明を実地するための形態】
【0019】
図1は、本発明品である咬みつき防止用具である。咬みつき防止用具1は、犬の下顎全体を覆う幅があり、鼻を除く頭部全体を覆う長さのあるタオルの様式で織った布地2を主要部分とする。タオルの様式で織った布地2の素材は、綿または麻との混合が適する。タオルの様式で織った布地の左右に、一対の面ファスナ8(8:布の表面、8’:布の裏面)を取り付け、布を上下に折り重ねた際に、接着する構成とする。また、タオルの様式で織った布地2の中央には、複数のフック3を取り付け、装着時に顎緊縛用紐4を交互にかけて締め上げ、顎全体を保定する構成とする。この紐4には、左右にコード・ストッパー5を取り付け、緊縛した紐の長さを保持する構成としても良い。紐4の素材は、強度のあるナイロンが適する。
【0020】
タオルの様式で織った布地2の両端には、犬の後頭部から頸を保持するためのベルト6を有する。当該保持用ベルト6には、布との連結部としてスナップ・ボタン13を有し、先端に締結部としてバックル12を有する。また、タオルの様式で織った布地2の両端には、布の幅方向に布の長さを延長するベルト7を有する。
【0021】
タオルの様式で織った布地2の中央には、一対のカバー10の下を通る紐9を設置する。当該紐9を巾着式に締めあげる事で、装着した犬の個体に合わせた顎の長さに調節する。紐9は、左右にコード・ストッパー5を有し、締め上げた長さを保持できる構成とする。
また、タオルの様式で織った布地2の上端には、パット11を設置する。これにより、装着時に空間ができるので、布から鼻を出して窒息を防ぐ機能を有する。パット11は、紐4のカバーにもなり、紐4が下を通る構成とする。パット11の素材は、アクリルでショルダー・テープが適する。
【0022】
図2は、本発明品であるタオルの様式で織った布地(図1)の使用方法を示す図である。以下に、当該タオルの様式で織った布地を、犬に装着させる方法を記述する。
保定者は、犬にリードとハーネスを装着させてリードを短く持ち、犬の上半身を吊り上げる。犬を後肢で立たせて、壁に前肢をつかせ、姿勢を固定させる。保定者が犬の背面に立ち、両手にタオルの様式で織った布地の左右についたベルトを握り込み、Uの字状にする。タオルの様式で織った布地を犬の顎にひっかけるようにして通し、左右の腕を交差させて、顎に巻き付ける。タオルの様式で織った布地は、顎を一周しており、犬の鼻梁から額における布が上下に重なった部分は、面ファスナ8によって接着される。さらに、タオルの様式で織った布地を犬の後頭部で交差させ、保持用ベルトで締結する。これにより、タオルの様式で織った布地が犬の頭部全体に一周以上、巻かれた状態になり、顎と頭部が8の字状に締め上げられる。
【0023】
図3は、本発明品である咬みつき防止用具を、犬に装着させた状態を示す図である。タオルの様式で織った布地が、犬の鼻を除く頭部全体を覆い、鼻梁において面ファスナ8で接着された状態を示している。さらに、顎全体をフック3にひっかけられた紐4によって、締め上げられて保定され、ベルト6によって後頭部から頸にかけて締結された状態になる。タオルの様式で織った布地は、犬の顎と頭部を8の字状にして締め上げられる長さがあり、下顎全体を覆う幅のある物である。布を8の字状に結紮する様式は、犬が下額にかける力を後頭部でも抑え込むので、拘束力が強い。また、犬の鼻に接する部分の布には、パットを取り付けて装着時に空間を作り、鼻を布から出す形態をとる。犬は、布で目が覆われるので、周囲の動きに対して、過敏に反応しなくなる。興奮が抑えられ、様々な処置が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明品によれば、保定者が犬に咬まれる危険性が少なく、素早く犬の顎関節を保定する事ができる。鎮静麻酔剤を投与せずに済むので、犬の体への負担がなく、経費もかからない。保定者が犬と対決しないので、咬傷事故が減り、安全な保定方法である。また、目隠しがされるため、犬が周囲の動きに対して過敏に反応しなくなる。これにより、ペット・サロンにおける犬の体の手入れ、及び動物病院における医療処置が容易になり、飼養管理の向上に寄与する。
【0025】
本発明品は、犬ばかりではなく、他の動物にも応用が可能である。幅が自在に調節できるタオルの様式で織った布地を、動物の顎を中心にして頭部に巻き付けるので、形態やサイズを問わない。従って、あらゆる動物に対応できる。野生動物の生態観測や動物園での利用が予想される。
【符号の説明】
【0026】
1:咬みつき防止用具 2:タオルの様式で織った布地 3:フック
4:顎緊縛用紐 5:コード・ストッパー(5:コード・ストッパーA 5’:コード・ストッパーB) 6:保持用ベルト 7:延長用ベルト 8:面ファスナ(8:布の表面 8’:布の裏面) 9:顎調節用紐 10:カバー 11:パット 12:バックル(12:カンA 12’:カンB) 13:スナップ・ボタン
図1
図2
図3