IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法 図1
  • 特許-リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法 図2
  • 特許-リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法 図3
  • 特許-リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法 図4
  • 特許-リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】リン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20220922BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220922BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220922BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20220922BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01B13/00 Z
H01M4/62 Z
H01M10/0562
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020093649
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021187704
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 純也
(72)【発明者】
【氏名】畠 透
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077563(JP,A)
【文献】特開2013-125750(JP,A)
【文献】特開2019-085275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
H01B 13/00
H01M 10/00
H01M 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
Li1+xGe2-x(PO (1)
(式中、0.0<x≦1.0であり、MはAl、Ga、Sc、Y、La、Fe、Cr、Ni、Mn、In及びCoから選ばれる1種又は2種以上の2価又は3価の金属元素を示す。)
で表されるナシコン(NASICON)構造を有するリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法であり、
Li源、M源、Ge源及びP源が、溶媒に溶解又は分散している原料混合液を調製する第一工程と、該原料混合液を加熱処理して、該原料混合液中の該溶媒の少なくとも一部を除去し、反応前駆体を調製する第二工程と、該反応前駆体を焼成する第三工程と、を有し、
該P源が亜リン酸であり、且つ、該第一工程の原料混合液は、少なくともGe源を、有機酸を用いて水溶媒、あるいは、水と親水性有機溶媒の混合溶媒に溶解させた液であること、
を特徴とするリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項2】
前記Ge源が、二酸化ゲルマニウムであることを特徴とする請求項1記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項3】
二酸化ゲルマニウムと、有機酸と、溶媒と、を含有するスラリーを加熱して、二酸化ゲルマニウムの溶解液を得る溶解工程を行い、次いで、該二酸化ゲルマニウムの溶解液に、前記Li源、前記M源及び前記P源を混合して、前記原料混合液を調製することにより、前記第一工程を行うことを特徴とする請求項2記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項4】
前記有機酸が、カルボン酸であることを特徴とする請求項3記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項5】
前記第三工程において、少なくとも、前記反応前駆体を600~1000℃で焼成することを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項6】
前記第三工程において、前記反応前駆体を、350~550℃で焼成する仮焼成を行った後、次いで、600~1000℃で焼成する本焼成を行うことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項7】
前記一般式(1)の式中のMがAlであり、前記M源がAl源であることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【請求項8】
前記Al源がアルミナであることを特徴とする請求項7記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質として有用なリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池の安全性を高める1つの方法として、動作温度範囲が広く、大気中で安定な酸化物系固体電解質を用いる方法が検討されている。
【0003】
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型酸化物、NASICON型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等が検討されている。
【0004】
ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸塩系の酸化物は、大気中で安定であり、特に、リン酸ゲルマニウムリチウムのゲルマニウムの一部をAl元素で置換したリン酸アルミニウムゲルマニウムリチウム(LAGP)はリチウムイオン伝導性が高いことから、固体電解質として注目されている材料の一つである(例えば、特許文献1~3参照)。
【0005】
LAGPの製造方法として、例えば、炭酸リチウム、二酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム及びリン酸アンモニウムとを混合し、大気中で該混合物を焼成して固相反応によりLAGPを得る方法(例えば、特許文献1~3)が開示されている。また、下記特許文献4には、ゲルマニウム源として、GeOを用い、GeOをアンモニア等で水に溶解し、その溶液に水溶性のLi源、Al源及びP源とを含有させて得られる原料混合液から溶媒を除去し、次いで熱処理を行って非晶質のLAGPを得、次いで焼成を行ってLAGPを結晶化する方法等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-149298号公報、請求項1、0019~0020段落
【文献】特開2013-157195号公報、請求項1、0042段落
【文献】特開2009-140911号公報、請求項6、0044段落
【文献】特開2019-46559号公報、請求項1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~3の固相法では、ゲルマニウム源とリン源とが均一に混合された原料混合物を得ることが難しく、このため、X線回折的に単相のものを工業的に有利に得ることが難しいという問題がある。また、特許文献4の方法では、工程が煩雑となり易く、また、廃液や廃ガスの処理の問題が生じ易く工業的に有利でない。
【0008】
従って、本発明の目的は、工業的に有利な方法で、X線回折的に単相のリン酸ゲルマニウムリチウムを得ることができるリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、P源として亜リン酸を用いて、Li源、M源、Ge源及びP源が溶媒に溶解又は分散している原料混合液を調製し、次いで、原料混合液を加熱処理し、得られる反応前駆体を焼成することにより、容易にX線回折的に単相のリン酸ゲルマニウムリチウムが得られること。また、リン酸ゲルマニウムリチウムの製造において、P源として、リン酸を用いた場合には、焼成時に急激な体積膨張を伴うが、P源として亜リン酸を用いた場合には、焼成時の急激な体積膨張が無く、マイルドな焼成反応により単相のリン酸ゲルマニウムリチウムを得ることができること。更に、本発明の特に好ましい実施形態によれば、焼成条件により、焼成後のリン酸ゲルマニウムリチウムの坩堝への強固な付着を抑制することができ、回収も容易になることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明(1)は、下記一般式(1):
Li1+xGe2-x(PO (1)
(式中、0.0<x≦1.0であり、MはAl、Ga、Sc、Y、La、Fe、Cr、Ni、Mn、In及びCoから選ばれる1種又は2種以上の2価又は3価の金属元素を示す。)
で表されるナシコン(NASICON)構造を有するリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法であり、
Li源、M源、Ge源及びP源が、溶媒に溶解又は分散している原料混合液を調製する第一工程と、該原料混合液を加熱処理して、該原料混合液中の該溶媒の少なくとも一部を除去し、反応前駆体を調製する第二工程と、該反応前駆体を焼成する第三工程と、を有し、
該P源が亜リン酸であること、
を特徴とするリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、前記Ge源が、二酸化ゲルマニウムであることを特徴とする(1)のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(3)は、二酸化ゲルマニウムと、有機酸と、溶媒と、を含有するスラリーを加熱して、二酸化ゲルマニウムの溶解液を得る溶解工程を行い、次いで、該二酸化ゲルマニウムの溶解液に、前記Li源、前記M源及び前記P源を混合して、前記原料混合液を調製することにより、前記第一工程を行うことを特徴とする(2)のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(4)は、前記有機酸が、カルボン酸であることを特徴とする(3)のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(5)は、前記第三工程において、少なくとも、前記反応前駆体を600~1000℃で焼成することを特徴とする(1)~(4)のいずれか記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(6)は、前記第三工程において、前記反応前駆体を、350~550℃で焼成する仮焼成を行った後、次いで、600~1000℃で焼成する本焼成を行うことを特徴とする(1)~(4)いずれか記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(7)は、前記一般式(1)の式中のMがAlであり、前記M源がAl源であることを特徴とする(1)~(6)いずれか記載のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(8)は、前記Al源がアルミナであることを特徴とする(7)のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、工業的に有利な方法で、X線回折的に単相のリン酸ゲルマニウムリチウムを得ることができるリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1及び比較例1の第三工程の仮焼成後の仮焼成品の状態を示す写真。
図2】実施例1及び比較例1の仮焼成品のX線回折図。
図3】実施例1及び比較例1で得られたLAGPのX線回折図。
図4】実施例4及び比較例2の仮焼成品のX線回折図。
図5】実施例5で得られたLAGPのSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法は、下記一般式(1):
Li1+xGe2-x(PO (1)
(式中、0.0<x≦1.0であり、MはAl、Ga、Sc、Y、La、Fe、Cr、Ni、Mn、In及びCoから選ばれる1種又は2種以上の2価又は3価の金属元素を示す。)
で表されるナシコン(NASICON)構造を有するリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法であり、
Li源、M源、Ge源及びP源が、溶媒に溶解又は分散している原料混合液を調製する第一工程と、該原料混合液を加熱処理して、該原料混合液中の該溶媒の少なくとも一部を除去し、反応前駆体を調製する第二工程と、該反応前駆体を焼成する第三工程と、を有し、
該P源が亜リン酸であること、
を特徴とするリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法である。
【0021】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法により得られるリン酸ゲルマニウムリチウムは、下記一般式(1):
Li1+xGe2-x(PO (1)
(式中、0.0<x≦1.0であり、MはAl、Ga、Sc、Y、La、Fe、Cr、Ni、Mn、In及びCoから選ばれる1種又は2種以上の2価又は3価の金属元素を示す。)
で表されるナシコン(NASICON)構造を有するリン酸ゲルマニウムリチウムである。
【0022】
一般式(1)の式中のxは、0.0<x≦1.0、好ましくは0.1≦x≦0.5、特に好ましくは0.2≦x≦0.4である。一般式(1)の式中のMは、例えば、リチウムイオン伝導率等の性能を向上させることを目的として含有させる金属元素である。Mは、2価又は3価の金属元素であり、Al、Ga、Sc、Y、La、Fe、Cr、Ni、Mn、In及びCoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示し、Alであることが特に好ましい。
【0023】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法に係る第一工程は、溶媒に、Li源、M源、Ge源及びP源を混合し攪拌して、Li源、M源、Ge源及びP源を、溶媒に溶解又は分散させることにより、原料混合液を調製する工程である。第一工程において、Li源、M源、Ge源及びP源を、溶媒に、混合し攪拌して、溶解又は分散させる方法は、特に制限されない。
【0024】
第一工程に係るLi源としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム、有機酸リチウム等が挙げられ、これらのうち、水酸化リチウムが水溶媒に溶解した状態で存在させることができ、また、工業的に入手が容易である観点から好ましい。
【0025】
第一工程に係るM源としては、例えば、M元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられる。特にM元素がAlである場合は、Al源は、アルミナ(Al)であることが、工業的に入手しやすく、反応性に優れ、また、残留する不純物の懸念が少ない等の観点から好ましい。
【0026】
第一工程に係るGe源としては、例えば、硫酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、硝酸ゲルマニウム、ゲルマニウム酸カリウム、二酸化ゲルマニウム等が挙げられ、二酸化ゲルマニウムが、特に工業的に入手しやすく、反応性に優れ、また、残留する不純物の懸念が少ない等の観点から好ましい。
【0027】
第一工程に係るP源は、亜リン酸である。亜リン酸は、工業的に入手できるものであれば、特に制限はない。亜リン酸は水溶液であってもよい。
【0028】
また、Li源、M源、Ge源及びP源の製造履歴は問わないが、高純度のリン酸ゲルマニウムリチウムを製造するために、可及的に不純物含有量が少ないものであることが好ましい。また、Li源、M源、Ge源のうち、溶媒に不溶なものは、反応前駆体の反応性を高めるため、レーザー回折法により求められる平均粒子径が10μm以下であること好ましく、0.1~5μmであることが特に好ましい。
【0029】
第一工程に係る溶媒は、水溶媒、あるいは、水と親水性有機溶媒の混合溶媒であってもよい。親水性有機溶媒としては、原料に対して不活性なものであれば特に制限されず、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、メチルエチルケトン等が挙げられる。水と親水性有機溶媒の混合溶媒の場合、水と親水性有機溶媒の混合比は適宜選択される。
【0030】
原料混合液中の亜リン酸濃度は、P原子換算で1.4~1.8モル/L、好ましくは1.5~1.7モル/Lである。また、一般式(1)の組成となるように、原料混合液中のLi源、M源及びGe源の含有量を調整することにより、Li源中のLi原子、M源中のM原子、Ge源中のGe原子及びP源中のP原子のモル比を、適宜調整することが好ましい。
【0031】
原料混合液において、Li源、M源、Ge源及びP源は、溶媒に溶解又は分散している。原料混合液は、スラリー状のものであっても、各原料が溶媒に溶解した溶液状のものであってもよい。
【0032】
原料混合液がスラリー状である場合、原料混合液中の固形分の濃度は、好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~60質量%である。原料混合液中の固形分の濃度が上記範囲にあることより、反応効率が高くなり、スラリーの粘度が高くなり過ぎない。
【0033】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法において、Ge源として二酸化ゲルマニウムを用いる場合は、第一工程において、水溶媒又は水系溶媒に二酸化ゲルマニウムを溶解させて、Ge源が溶媒に溶解した溶解液を用いることが、反応性がいっそう優れた反応前駆体を得ることができる観点から、特に好ましい。
【0034】
第一工程において、Ge源が水溶媒に溶解した溶解液を用いる方法としては、二酸化ゲルマニウムを水溶媒又は水系溶媒に溶解させて、二酸化ゲルマニウムの溶解液を得る溶解工程を行い、次いで、二酸化ゲルマニウム水溶液に、Li源、M源及びP源を混合して、原料混合液を調製することにより、第一工程を行う方法が挙げられる。
【0035】
二酸化ゲルマニウムを水溶媒に溶解する方法として、アンモニア水を用いる方法(特開2019-46559号公報)があるが、廃水や廃ガスの処理の問題がある。それに対して、有機酸は後述する第三工程の焼成により反応系からCOガスとして除去されるため、溶解工程では、水溶媒又は水系溶媒に二酸化ゲルマニウムを溶解させるのに、有機酸を用いる方法が好ましい。本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法において、溶解工程により得られる二酸化ゲルマニウムが水溶媒又は水系溶媒に溶解した溶解液を用いることが、廃水や廃ガスの処理の問題が生じ難く、また、このGe源が水溶媒に溶解した溶解液を用いると、Ge源の反応性をいっそう高めた反応前駆体を得ることができる観点から特に好ましい。
【0036】
第一工程において、Ge源が水溶媒又は水系溶媒に溶解した溶解液を用いる方法としては、二酸化ゲルマニウムと、有機酸と、溶媒と、を含有するスラリーを加熱して、二酸化ゲルマニウムの溶解液を得る溶解工程を行い、次いで、二酸化ゲルマニウムの溶解液に、Li源、M源及びP源を混合して、原料混合液を調製することにより、第一工程を行う方法が挙げられる。
【0037】
溶解工程に係る有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のカルボン酸が挙がられ、これらは1種単独であっても又は2種以上の併用であってもよい。これらの中、シュウ酸が水溶媒への溶解度性に優れ、二酸化ゲルマニウムを溶解性させる能力が高く、また、後述する第三工程の焼成で容易に分解し、反応系から除去が容易である観点で好ましい。
【0038】
有機酸の添加量は、二酸化ゲルマニウムに対する有機酸中のC原子のモル比(C/GeO)で4~8、好ましくは5~7であることが、迅速に二酸化ゲルマニウムを水溶媒に溶解することができ、また、経済性の観点から好ましい。
【0039】
溶解工程に係る溶媒は、水溶媒、あるいは、水と親水性有機溶媒の混合溶媒(水系溶媒とも記載する。)であってもよい。親水性有機溶媒としては、原料に対して不活性なものであれば特に制限されず、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、メチルエチルケトンなどが挙げられる。水系溶媒(水と親水性有機溶媒の混合溶媒)の場合、水と親水性有機溶媒の混合比は適宜選択される。
【0040】
溶解工程に係る二酸化ゲルマニウムの添加量は、溶媒100質量部に対して二酸化ゲルマニウムが10~40質量部、好ましくは20~30質量部であることが反応効率とスラリーの粘度上昇を防止する観点から好ましい。
【0041】
溶解工程における加熱温度は、40~90℃、好ましくは50~80℃であることが、溶解速度を高める観点から好ましい。また、溶解工程における加熱時間は、溶解工程において臨界的ではないが、好ましくは1時間以上、特に好ましくは1~3時間であることが、満足の行く諸物性を有する二酸化ゲルマニウムが水溶媒に溶解した溶解液を得ることができる点で好ましい。
【0042】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法に係る第一工程において、溶解工程を行った場合、溶解工程を行った後、溶解工程で得られる「二酸化ゲルマニウムが水溶媒又は水系溶媒に溶解した溶解液」に、所定量のLi源、M源及びP源を添加し攪拌等を行うことにより、原料混合液を調製することができる。
【0043】
なお、溶解工程で得られる二酸化ゲルマニウムが水溶媒又は水系溶媒に溶解した溶解液に、Li源、M源及びP源を添加する温度は、特に制限はなく、室温であってもよい。また、溶解工程において、該溶解液の冷却を行わずそのままの温度を維持した状態でLi源、M源及びP源を添加してもよく、あるいは、後述する第二工程の加熱処理の温度まで該溶解液を昇温した後、あるいは、昇温過程でLi源、M源及びP源を添加してもよい。
【0044】
第二工程は、第一工程で得られる原料混合液を加熱処理して、原料混合液中の溶媒の少なくも一部を除去して、反応前駆体を調製する工程である。
【0045】
第二工程では、第一工程で得られる原料混合液を加熱処理して、原料混合液中の溶媒の少なくとも一部を除去して、ペースト状の反応前駆体を得る。なお、本発明において、ペースト状とは、粘稠な状態であることを言う。従って、本発明では、第二工程において、反応前駆体中の全ての溶媒を除去する必要はない。通常は、反応前駆体中の溶媒の含有量は30質量%以下、好ましくは20質量%以下であれば、満足の行く諸物性のペースト状の反応前駆体を得ることができる。
【0046】
第二工程係る加熱処理における加熱温度は、溶媒を除去できる温度であれば特に制限はないが、通常は100~150℃、好ましくは110~140℃であることが、効率的に水溶媒を除去する観点から好ましい。第二工程における加熱処理での加熱時間は、特に制限はなく、原料混合液がペースト状となるまで行えばよい。原料混合液の原料濃度や加熱処理における加熱の温度によっても異なるが、例えば、原料混合液の原料濃度が40~60質量%で、加熱処理における加熱温度が120~130℃である場合は、加熱時間は、1時間以上、好ましくは1~4時間であることにより、満足の行く諸物性のペースト状の反応前駆体を得ることができる点で好ましい。
【0047】
第三工程は、第二工程で得られた反応前駆体を焼成して、リン酸ゲルマニウムリチウムを得る工程である。
【0048】
第三工程では、少なくとも、反応前駆体を、600~1000℃、好ましくは650~850℃で焼成することが 単相の前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムを得易くなる点で好ましい。この理由は、焼成温度が上記温度より低いと、前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの合成が不十分となる傾向があり、また、上記温度を超えると、前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの粒子成長が進み、微粒子が得難くなる傾向があるからである。
【0049】
第三工程において、反応前駆体を焼成する焼成時間は、特に制限されず、X線回折的に前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムが生成するのに十分な時間焼成を行う。第三工程においては、多くの場合、反応前駆体を、600~1000℃、好ましくは650~850℃で焼成する時間が、3時間以上、好ましくは3~10時間であることにより、満足の行く諸物性の焼成品を得ることができる。また、第三工程において、反応前駆体を焼成する焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0050】
第三工程では、焼成を1回行ってもよいし、所望により複数回行ってもよい。或いは、第三工程では、粉体特性を均一にする目的で、一度焼成したものを粉砕し、次いで再度、焼成を行ってもよい。
【0051】
また、本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法では、第三工程の焼成時にリン酸ゲルマニウムリチウムが坩堝に付着し、目的物を回収することが難しくなる場合がある。本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法では、第三工程において、反応前駆体を、低温で焼成した後、次いで、高温で焼成することにより、焼成時にリン酸ゲルマニウムリチウムが坩堝に付着するのを抑制し、容易に目的とするリン酸ゲルマニウムリチウムを坩堝等から回収することができるため、工業的に有利となる。
【0052】
このような第三工程としては、反応前駆体を、350~550℃で焼成する仮焼成を行った後、次いで、600~1000℃で焼成する本焼成を行う第三工程(以下、第三工程の第一形態とも記載する。)が挙げられる。
【0053】
第三工程の第一形態における仮焼成の焼成温度は、350~550℃、好ましくは400~550℃、特に好ましくは450~550℃であることが、ペースト状の反応前駆体を固形物にでき、且つ、容器に強固に固着せず、剥離性を保てるという観点から好ましい。また、第三工程の第一形態における仮焼成の焼成時間は、特に制限されず、3時間以上、好ましくは3~10時間であることが、満足の行く諸物性の仮焼成品を得ることができる点で好ましい。第三工程の第一形態における仮焼成の焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0054】
そして、第三工程の第一形態における仮焼成において、仮焼成品に含まれる化合物は、反応が複雑で不明であるが、少なくとも仮焼成品をX線回析分析したときに、何らかの結晶物の回折ピークが観察される。X線回析分析で検出される結晶物としては、仮焼成の温度により異なるが、第三工程の第一形態において、好ましい仮焼成の温度範囲で仮焼成を行った場合は、前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの他に、GeP、リチウム-M-リンの複合酸化物(例えば、LiMP等)等の結晶物が含有される。
【0055】
仮焼成後は、室温まで冷却し、得られる仮焼成品を粉砕処理或いは解砕処理することが、各成分を均一にし、その後の焼成により目的物としてX線回折的に単相のものが得られ易いという点で好ましい。
【0056】
粉砕処理及び解砕処理の方法は、特に制限はなく、常法の方法を用いることができる。粉砕処理及び解砕処理は、乾式であっても、湿式の処理であってもよい。湿式粉砕装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル等が挙げられる。乾式粉砕装置としては、例えば、ジェットミル、ピンミル、ロールミル、ボールミル、ビーズミル等の公知の粉砕或いは解砕装置が挙げられる。また、実験室レベルでは、家庭用ミキサーや乳鉢等での粉砕処理或いは解砕処理でも十分である。
【0057】
次いで、第三工程の第一形態では、仮焼成後に本焼成を行う。第三工程の第一形態に係る本焼成では、仮焼成品を、600~1000℃、好ましくは650~850℃で本焼成することが 単相の前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムを得易くなる点で好ましい。この理由は、本焼成のおける焼成温度が、上記範囲より低いと、前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの合成が不十分となる傾向があり、また、上記範囲を超えると、前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの粒子成長が進み、微粒子を得難くなる傾向があるからである。
【0058】
また、第三工程の第一形態における本焼成の焼成時間は、特に制限されず、単相の前記一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムが得られるまで、十分に行う必要がある。第三工程の第一形態における本焼成では、多くの場合、600~1000℃、好ましくは650~850℃で、焼成時間は、3時間以上、好ましくは3~10時間である。第三工程の第一形態における本焼成の焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0059】
第三工程の第一形態では、仮焼成及び本焼成を1回行ってもよいし、所望により複数回行ってもよい。あるいは、第三工程の第一形態では、粉体特性を均一にする目的で、一度本焼成したものを粉砕し、次いで再度、本焼成を行ってもよい。
【0060】
第三工程において、焼成後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕、解砕、分級等を行い、目的とする一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムを得る。
【0061】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法は、P源として亜リン酸を用いることを一つの特徴とする。P源としてリン酸を用いた場合は、加熱によりリン酸は容易に脱水縮合し易く、各原料との反応よりも優先的に脱水縮合するため、例えば、P源としてリン酸を用いて調製された反応前駆体を、例えば210℃或いは500℃で熱処理するとほぼ非晶質のものが得られる(図2図4参照)。これに対してP源として亜リン酸を用いて調製された反応前駆体を、例えば210℃或いは500℃で熱処理すると結晶物の回折ピークが観察される(図2図4参照)。このことは、本発明者らは、P源として亜リン酸を用いた場合は、リン同士の脱水縮合よりも一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムの生成反応が優先的に進むためと考えている。
【0062】
更に、P源として亜リン酸を用いたときは、P源としてリン酸を用いたときに比べて、反応前駆体を熱処理した時に熱処理品の体積膨張が抑制される。これはP源としてリン酸を用いた場合は、熱処理により脱水反応が進行して粘性液体であるポリリン酸が生成するため、水溶媒や脱水縮合で発生する水蒸気や原料の分解や反応に伴うガスがポリリン酸の高粘性液体内に閉じ込められ発泡状態となり、急激な体積膨張が起こるものと考えられる。
【0063】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法により得られる一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムは、X線回折的に単相である。更に本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法により得られる一般式(1)で表されるリン酸ゲルマニウムリチウムは、レーザー回折法により求められる平均粒子径が、好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは1~5μmであり、BET比表面積が、好ましくは1~15m/g、特に好ましくは2~10m/gであることが、粉体特性に優れ、取り扱いも容易となる観点から好ましい。
【0064】
本発明のリン酸ゲルマニウムリチウムの製造方法により得られるリン酸ゲルマニウムリチウムは、二次電池の固体電解質或いは正極、負極材料として好適に利用される。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<Al源の調製>
アルミナをボールミルにより、湿式粉砕処理を行い、実施例で用いるアルミナスラリーを調製した。
調製したアルミナスラリーは、固形分の濃度が8質量%であり、レーザー回折法により求められる固形分の平均粒子径は1.3μmであった。
【0066】
<ナシコン(NASICON)構造を有するLi1.3Al0.3Ge1.7(PO(以下、「LAGP」と呼ぶ)の調整>
(実施例1)
<第一工程>
テフロン(登録商標)ライニングの500mlビーカーに純水100gを入れ、二酸化ゲルマニウム(GeO)30gを入れ攪拌した。
次いで、攪拌しながらシュウ酸2水和物104.15gを入れ、ヒーターで60℃まで加熱した。加熱後、60分後に二酸化ゲルマニウムが溶解して透明な溶液となった。
次いで、この60℃に維持された透明な溶液に、前記で調製したアルミナスラリー32.1g、亜リン酸39.85g及び水酸化リチウム1水和物8.84gの順に添加した。
<第二工程>
原料を添加後、そのままヒーター出力を上げて加熱を続け、液温が120℃になるまで濃縮し、ペースト状の反応前駆体175gを得た。なお、液温が120℃になるまで3時間を要した。ペースト状の反応前駆体の溶媒の含有量を乾燥減量法により測定した結果13質量%であった。
<第三工程>
耐熱性容器に、得られたペースト状の反応前駆体10gを仕込み、電気炉中で、大気雰囲気、210℃、4時間、仮焼成を行った。
仮焼成後、室温まで自然冷却し仮焼成品を回収した。なお、仮焼成品に体積膨張は見られなかった(図1参照)。また、回収は耐熱性容器を反転し、薬さじで掻き出すことで容易に仮焼成品を回収することができた。
次いで、回収した仮焼成品に乳鉢で粉砕処理を行って、粉砕処理品を得た。得られた粉砕処理品のX線回析図を図2に示す。仮焼成品に、結晶質のものが含有されていることを確認した。
次いで、得られた粉砕処理品5gをアルミナ坩堝に入れ、電気炉中で、大気雰囲気、800℃、4時間、本焼成を行って本焼成品を得た。本焼成後、アルミナ坩堝への全体的な固着が観察されたので、スパチュラで削り落とすことで本焼成品を全量回収し、乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、GeP等の異相の存在は確認されず、単相のLAGPであることが確認された(図3参照)。
【0067】
(実施例2)
第三工程の仮焼成の温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして本焼成品を得た。
なお、仮焼成品に体積膨張は見られなかった。仮焼成後の回収は耐熱性容器を反転し、薬さじで掻き出すことで容易に仮焼成品を回収することができた。
また、本焼成後、アルミナ坩堝への全体的な固着が観察されたので、スパチュラで削り落とすことで本焼成品の全量を回収し、乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、GeP等の異相の存在は確認されず、単相のLAGPであることが確認された。
【0068】
(実施例3)
第三工程の仮焼成の温度を400℃とした以外は、実施例1と同様にして本焼成品を得た。
なお、仮焼成品に体積膨張は見られなかった。仮焼成後の回収は耐熱性容器を反転し、薬さじで掻き出すことで容易に仮焼成品を回収することができた。
また、本焼成後、アルミナ坩堝へ部分的な固着が観察されたので、固着した部分をスパチュラで削り落とすことで本焼成品を全量回収し、乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、GeP等の異相の存在は確認されず、単相のLAGPであることが確認された。
【0069】
(実施例4)
第三工程の仮焼成の温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして本焼成品を得た。
仮焼成後の回収は耐熱性容器を反転することで容易に仮焼成品を回収することができた。
なお、仮焼成品に体積膨張は見られなかった。また、回収した仮焼成品を乳鉢で粉砕処理を行って、粉砕処理品を得た。得られた粉砕処理品のX線回析図を図4に示す。仮焼成品には、結晶質のものとしてLATP以外に、GeP、LiAlPの回折ピークが確認された。
また、本焼成後の回収はアルミナ坩堝を反転し、薬さじで掻き出すことで容易に内容物を全量回収することができた。次いで乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、GeP等の異相の存在は確認されず、単相のLAGPであることが確認された。
【0070】
(実施例5)
第三工程の仮焼成の温度を500℃とし、本焼成の温度を700℃とした以外は、実施例1と同様にして本焼成品を得た。
なお、仮焼成品に体積膨張は見られなかった。仮焼成後の回収は耐熱性容器を反転し、薬さじで掻き出すことで容易に仮焼成品を回収することができた。
また、本焼成後の回収はアルミナ坩堝を反転することで容易に内容物を回収することができた。次いで乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、GeP等の異相の存在は確認されず、単相のLAGPであることが確認された。
【0071】
(比較例1)
<第一工程>
テフロン(登録商標)ライニングの500mlビーカーに純水100gを入れ、二酸化ゲルマニウム(GeO)30gを入れ攪拌した。
次いで、攪拌しながらシュウ酸2水和物104.15gを入れ、ヒーターで60℃まで加熱した。加熱後、60分後に二酸化ゲルマニウムが溶解して透明な溶液となった。
次いで、この透明な溶液に、前記で調製したアルミナスラリー32.1g、85%リン酸65.45g及び水酸化リチウム1水和物8.84gの順に添加した。
<第二工程>
原料添加後、そのままヒーター出力を上げて加熱を続け、液温が120℃になるまで濃縮し、ペースト状の反応前駆体200gを得た。なお、液温が120℃になるまで3時間を要した。ペースト状の反応前駆体の溶媒の含有量を乾燥減量法により測定したところ17質量%であった。
<第三工程>
耐熱性容器に、得られたペースト状の反応前駆体10gを仕込み、電気炉中で、大気雰囲気、210℃、4時間、仮焼成を行った。
仮焼成後、室温まで自然冷却して仮焼成品を回収した。なお、仮焼成品に体積膨張が見られた(図1参照)。回収は耐熱性容器を反転することで容易に仮焼成品を回収することができた。
次いで、回収した仮焼成品を乳鉢で粉砕処理を行って、粉砕処理品を得た。得られた粉砕処理品のX線回折図を図2に示す。仮焼成品は、非晶質のものであった。
次いで、得られた粉砕処理品5gをアルミナ坩堝に入れ、電気炉中で、大気雰囲気、800℃、4時間、本焼成を行って本焼成品を得た。
また、本焼成後の回収はアルミナ坩堝を反転することで容易に内容物を全量回収することができた。次いで乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、LAGP以外にGePの回析ピークが確認された(図3参照)。
【0072】
(比較例2)
比較例1において、仮焼成の温度を500℃とした以外は、比較例1と同様にして本焼成品を得た。
仮焼成後、室温まで自然冷却して仮焼成品を回収した。なお、仮焼成品に体積膨張が見られた。回収は耐熱性容器を反転することで容易に仮焼成品を回収することができた。
次いで、回収した仮焼成品を乳鉢で粉砕処理を行って、粉砕処理品を得た。得られた粉砕処理品のX線回折図を図4に示す。仮焼成品は、ほぼ非晶質のものであった。
次いで、得られた粉砕処理品5gをアルミナ坩堝に入れ、電気炉中で、大気雰囲気、800℃、4時間、本焼成を行って本焼成品を得た。
また、本焼成後の回収はアルミナ坩堝を反転することで容易に内容物を全量回収することができた。次いで乳鉢で粉砕することで本焼成品を得た。
得られた本焼成品をX線回折分析した結果、LAGP以外にGePの回析ピークが確認された。
【0073】
【表1】
【0074】
<物性評価>
実施例4及び実施例5で得られたLAGPについて、ジェットミル粉砕後の平均粒子径とBET比表面積を測定した。
なお、平均粒子径は下記のようにして求めた。
また、実施例5で得られたLAGPのSEM写真を図5に示す。
(平均粒子径の測定)
粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル製 MT3300)にて水を分散媒として測定した粒度分布におけるD50値を平均粒子径とした。
【0075】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5