(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】半導体構造体および半導体構造体を形成する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20220922BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20220922BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220922BHJP
H01L 29/66 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L27/04 B
H01M10/0585
H01L29/66 Z
(21)【出願番号】P 2020526553
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2018059035
(87)【国際公開番号】W WO2019106475
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユンセオ
(72)【発明者】
【氏名】デソーザ、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴェンドラ
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0289290(US,A1)
【文献】特開2003-060090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0032236(US,A1)
【文献】特開2015-167227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01M 10/0585
H01L 29/66
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース/ドレイン領域間に位置づけられた少なくとも1つのチャンネル領域を含む半導体基板と、
前記半導体基板の前記チャンネル領域上に配置されたゲート誘電体材料と、
前記ゲート誘電体材料上に配置されたバッテリ・スタックであり、前記バッテリ・スタックが、前記ゲート誘電体材料上に配置されたカソード集電体と、前記カソード集電体上に配置されたカソード材料と、前記カソード材料上に配置された第1のイオン拡散障壁材料と、前記第1のイオン拡散障壁材料上に配置された電解質と、前記電解質上に配置された第2のイオン拡散障壁材料と、前記第2のイオン拡散障壁材料上に配置されたアノード領域と、前記アノード領域上に配置されたアノード集電体とを含む、前記バッテリ・スタックと
を含む半導体構造体。
【請求項2】
前記ゲート誘電体材料が、前記バッテリ・スタックの側壁縁部に垂直に位置合わせされた側壁縁部を有する、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項3】
前記第1および第2のイオン拡散障壁材料が、1E-6cm
2/s未満のイオン拡散係数を有する、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項4】
前記第1および第2のイオン拡散障壁材料が、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、酸化マグネシウム、またはそれらの多層スタックを含む、請求項3に記載の
半導体構造体。
【請求項5】
前記第1および第2のイオン拡散障壁材料が、完全に酸化アルミニウム(Al
2O
3)から構成される、請求項3に記載の
半導体構造体。
【請求項6】
前記
半導体基板がバルク半導体基板である、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項7】
前記
半導体基板が、半導体-オン-絶縁体基板の最上部半導体材料層である、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項8】
前記ゲート誘電体材料および前記バッテリ・スタックの一部が、前記ソース/ドレイン領域の上に延びる、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項9】
前記ゲート誘電体材料が高kゲート誘電体材料を含む、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項10】
前記高kゲート誘電体材料が、HfO
2、ZrO
2、La
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SrTiO
3、LaAlO
3、Y
2O
3、HfO
xN
y、ZrO
xN
y、La
2O
xN
y、Al
2O
xN
y、TiO
xN
y、SrTiO
xN
y、LaAlO
xN
y、Y
2O
xN
y、SiON、SiN
x、それらのケイ酸塩、またはそれらの合金を含み、xの値が、独立して、0.5から3であり、yの各値が、独立して、0から2である、請求項9に記載の
半導体構造体。
【請求項11】
前記カソード材料がリチウム化材料である、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項12】
前記電解質が、固体電解質、液体タイプ電解質、またはゲル・タイプ電解質を含む、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項13】
前記バッテリ・スタックが不揮発性である、請求項1に記載の
半導体構造体。
【請求項14】
半導体構造体を形成する方法であって、前記方法が、
半導体基板の表面にゲート誘電体材料およびバッテリ・スタックの材料スタックを生成することであり、前記バッテリ・スタックが、前記ゲート誘電体材料上に配置されたカソード集電体と、前記カソード集電体上に配置されたカソード材料と、前記カソード材料上に配置された第1のイオン拡散障壁材料と、前記第1のイオン拡散障壁材料上に配置された電解質と、前記電解質上に配置された第2のイオン拡散障壁材料と、前記第2のイオン拡散障壁材料の頂上に配置されたアノード集電体とを含む、前記生成することと、
前記
半導体基板中におよび前記材料スタックの両側にソース/ドレイン領域を形成することであり、前記ソース/ドレイン領域を前記形成することが、前記材料スタックの前記生成の前または後に実行され得る、前記形成することと
を含む、方法。
【請求項15】
前記第1および第2のイオン拡散障壁材料が、1E-6cm
2/s未満のリチウム拡散係数を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1および第2のイオン拡散障壁材料が、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、酸化マグネシウム、またはそれらの多層スタックを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ソース/ドレイン領域が、前記ゲート誘電体材料の形成の前に形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ソース/ドレイン領域が、前記材料スタックの形成の後に形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記アノード集電体の形成の前に前記第2のイオン拡散障壁材料上にアノード領域を堆積させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記材料スタックの前記生成の後に、前記第2のイオン拡散障壁材料と前記アノード集電体との間にアノード領域を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体技術に関する。より詳細には、本発明は、ゲート・バイアスを制御する不揮発性バッテリを含む半導体構造体に関し、その構造体は、ニューロモーフィック・コンピューティングで使うことができる。
【背景技術】
【0002】
ニューロモーフィック技術は、人間の脳のニューラル・ネットワーク・アーキテクチャを模倣することを目的とする。技術の起点は、1980年代後半に遡る。近年、ニューロモーフィック・エンジニアリングへの関心が高まっている。脳のようなチップの基礎をなす前提は、個々のニューロンの形態を複製し、人工ニューラル・システムを構築することである。最終の目標は、人間の脳の基本的な特性のうちのいくつかを複製したコンピュータを作り出すことである。
【0003】
人間の脳の神経科学的研究はまだ完成されていないが、脳-コンピュータ類似性を理解するための研究が続いている。神経科学は人間の脳の複雑さのすべてを完全にはまだ把握していないが、ニューロモーフィック・エンジニアは、現在までに知られている脳の特性のうちの3つ、すなわち、低いパワー消費量(人間の脳が使うエネルギーは少ないが、それにもかかわらず限りなく複雑である)、障害耐性(脳はニューロンを失っても依然として機能できるのに対し、マイクロプロセッサは1つのトランジスタを失うことによって影響を受ける可能性がある)、およびプログラムされる必要がないこと(コンピュータと異なり、脳は、環境からの信号に対して自発的に学習し反応することができる)を提供するコンピュータの設計を目指している。
【0004】
したがって、人間の脳の特性を有するコンピュータを設計するには、ニューロモーフィック・コンピューティングの進歩が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニューロモーフィック・コンピューティングで使うことができる半導体構造体および半導体構造体を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ゲート・バイアスを制御する不揮発性バッテリを含む半導体構造体が提供される。不揮発性バッテリは、改善された出力電圧保持および向上した電圧分解能を有し、したがって、その構造体はニューロモーフィック・コンピューティングで使うことができる。「不揮発性バッテリ」とは、バッテリ様構造体に基づく多状態アナログ・メモリ・デバイスを意味する。
【0007】
本発明の1つの態様では、半導体構造体が提供される。本発明の1つの実施形態では、半導体構造体は、ソース/ドレイン領域間に位置づけられた少なくとも1つのチャンネル領域を含む半導体基板を含むことができる。ゲート誘電体材料が、半導体基板のチャンネル領域上に配置される。バッテリ・スタックが、ゲート誘電体材料上に配置される。本発明によれば、バッテリ・スタックは、ゲート誘電体材料上に配置されたカソード集電体と、カソード集電体上に配置されたカソード材料と、カソード材料上に配置された第1のイオン拡散障壁材料と、第1のイオン拡散障壁材料上に配置された電解質と、電解質上に配置された第2のイオン拡散障壁材料と、第2のイオン拡散障壁材料上に配置されたアノード領域と、アノード領域上に配置されたアノード集電体とを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、半導体構造体を形成する方法が提供される。本発明の1つの実施形態では、方法は、半導体基板の表面にゲート誘電体材料およびバッテリ・スタックの材料スタックを生成することを含むことができる。バッテリ・スタックは、ゲート誘電体材料上に配置されたカソード集電体と、カソード集電体上に配置されたカソード材料と、カソード材料上に配置された第1のイオン拡散障壁材料と、第1のイオン拡散障壁材料上に配置された電解質と、電解質上に配置された第2のイオン拡散障壁材料と、第2のイオン拡散障壁材料の頂上に配置されたアノード集電体とを含む。ソース/ドレイン領域は、半導体基板中におよび材料スタックの両側に形成することができる。ソース/ドレイン領域は、材料スタックの形成の前または後に形成することができる。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、アノード領域は、アノード集電体の形成の前に第2のイオン拡散障壁材料上に堆積される。本発明の他の実施形態では、アノード領域は、バッテリ・スタック形成の後に実行される充電/再充電プロセスの間に、第2のイオン拡散障壁材料とアノード集電体との間に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】半導体基板に配置されているゲート誘電体材料およびバッテリ・スタックの材料スタックを含む、本発明を具現化する半導体構造体の断面図である。
【
図2】スペーサ形成の後の
図1に示された構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態が、以下の説明および添付の図面を参照することによってより詳細に説明される。図面は、単に説明の目的のために提供され、そのため、正しい縮尺で描かれていないことに留意されたい。同様のおよび対応する要素が同様の参照番号によって参照されることにも留意されたい。
【0012】
以下の説明では、本発明の様々な実施形態についての理解を与えるために、特定の構造体、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技法などの多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、本発明の様々な実施形態は、これらの特定の詳細なしに実践できることが当業者によって理解されるであろう。他の場合には、よく知られている構造体または処理ステップは、本発明を不明瞭にしないために詳細には説明されていない。
【0013】
層、領域、または基板としての要素が、別の要素の「上に(on)」または「上方に(over)」あると言及される場合、それは、直接他の要素上にある場合があり、または介在要素がさらに存在する場合があることが理解されよう。対照的に、要素が、別の要素の「直接上に」または「直接上方に」あると言及される場合、介在要素は存在しない。要素が、別の要素の「真下に(beneath)」または「下に(under)」あると言及される場合、それは、直接他の要素の真下にまたは下にある場合があり、または介在要素が存在する場合があることも理解されよう。対照的に、要素が、別の要素の「直接真下に」または「直接下に」あると言及される場合、介在要素は存在しない。
【0014】
最初に
図1を参照すると、本発明を具現する半導体構造体が示される。
図1に示された構造体は、半導体基板10に配置されているゲート誘電体材料14およびバッテリ・スタック16の材料スタックを含む。本発明のいくつかの実施形態では(および図示のように)、ゲート誘電体材料14は、バッテリ・スタック16の側壁縁部に垂直に位置合わせされた側壁縁部を有する。
【0015】
材料スタック(14/16)は、基板10中に形成されたソース/ドレイン領域12L、12R間に配置される。本発明のいくつかの実施形態では、材料スタック(14/16)の一部は、ソース/ドレイン領域12L、12Rの各々の上に延びることがある。単一の材料スタック(14/16)が説明および図示されているが、複数の材料スタック(14/16)が基板10上に形成される本発明の実施形態が意図されており、各材料スタックは、半導体基板10に存在する他のソース/ドレイン領域間に配置される。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、ソース/ドレイン領域12Lはソース領域とすることができ、一方、ソース/ドレイン領域12Rはドレイン領域とすることができる。本発明のさらなる別の実施形態では、ソース/ドレイン領域12Lはドレイン領域とすることができ、一方、ソース/ドレイン領域12Rはソース領域とすることができる。ソース/ドレイン領域12L、12R間および材料スタック(14/16)の真下に配置された基板10の領域は、本明細書ではチャンネル領域11と呼ばれることがある。
【0017】
基板10は、少なくとも1つの半導体材料から構成することができる。「半導体材料」という用語は、本明細書では、半導体の性質を有する材料を表すために使われる。基板10として使用することができる半導体材料の例には、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン・ゲルマニウム合金(SiGe)、炭化シリコン(SiC)、シリコン・ゲルマニウム・カーバイド(SiGeC)、III-V族化合物半導体、またはII-VI族化合物半導体が含まれる。III-V族化合物半導体は、元素周期表のIII族からの少なくとも1つの元素と、元素周期表のV族からの少なくとも1つの元素とを含む材料である。II-VI族化合物半導体は、元素周期表のII族からの少なくとも1つの元素と、元素周期表のVI族からの少なくとも1つの元素とを含む材料である。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、基板10を提供することができる半導体材料は、バルク半導体基板である。「バルク」とは、上述で定義されたように、半導体基板10が少なくとも1つの半導体材料から完全に構成されることを意味する。1つの例では、基板10は、シリコンから完全に構成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、基板10は、上述で定義されたように、少なくとも2つの異なる半導体材料を含む多層半導体材料スタックを含むことができる。1つの例では、多層半導体材料スタックは、任意の順序で、Siとシリコン・ゲルマニウム合金とのスタックを含むことができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、基板10は、半導体-オン-絶縁体(SOI)基板の最上部半導体材料層から構成される。SOI基板は、上記の半導体材料のうちの1つを含むハンドル基板(図示せず)と、最上部半導体材料層の下の埋込み酸化物などの絶縁体層(図示せず)とをさらに含むことになる。
【0020】
本発明のさらなる別の実施形態では、基板10は、最上部半導体材料層と、例えば二酸化シリコンなどの誘電体材料(図示せず)とから構成される。
【0021】
上記の本発明の実施形態のいずれにおいても、基板10を提供することができる半導体材料は、単結晶半導体材料とすることができる。基板10を提供することができる半導体材料は、よく知られている結晶方位のうちのいずれかを有することができる。例えば、基板10を提供することができる半導体材料の結晶方位は、{100}、{110}、または{111}とすることができる。特に記したものに加えて他の結晶学的方位を使うこともできる。
【0022】
基板10は、10μmから5mmの厚さを有することができる。前記の厚さ値よりも小さいまたは大きい他の厚さを基板10に使うこともできる。
【0023】
ソース/ドレイン領域12L、12Rは、基板10の上部の半導体材料部分に存在し、材料スタック(14/16)の両側に配置される。ソース/ドレイン領域12L、12Rは、p型またはn型ドーパントを含む。
【0024】
「p型」という用語は、価電子の不足を作り出す真性半導体への不純物の添加を指す。シリコン含有半導体材料では、p型ドーパント、すなわち、不純物の例には、限定はしないが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムが含まれる。「n型ドーパント」という用語は、真性半導体に自由電子を与える不純物の添加を指す。シリコン含有半導体材料では、n型ドーパント、すなわち、不純物の例には、限定はしないが、アンチモン、ヒ素、およびリンが含まれる。ソース/ドレイン領域12L、12Rは、当業者によく知られている範囲内のドーパント濃度(p型またはn型)を有する。1つの例では、ソース/ドレイン領域12L、12Rは、1E18原子/cm3から1E20原子/cm3のドーパント濃度を有する。
【0025】
材料スタック(14/16)のゲート誘電体材料14は、誘電体酸化物、窒化物、または酸窒化物、あるいはその組合せを含むことができる。1つの例では、ゲート誘電体材料14は、二酸化シリコンよりも大きい誘電率を有する高k材料とすることができる。例示的な高k誘電体には、限定はしないが、HfO2、ZrO2、La2O3、Al2O3、TiO2、SrTiO3、LaAlO3、Y2O3、HfOxNy、ZrOxNy、La2OxNy、Al2OxNy、TiOxNy、SrTiOxNy、LaAlOxNy、Y2OxNy、SiON、SiNx、それらのケイ酸塩、およびそれらの合金が含まれる。xの各値は、独立して、0.5から3であり、yの各値は、独立して、0から2である。本発明のいくつかの実施形態では、様々なゲート誘電体材料、例えば、二酸化シリコンと高kゲート誘電体とから構成された多層ゲート誘電体構造体をゲート誘電体材料14として形成し使うことができる。
【0026】
ゲート誘電体材料14は、例えば、化学気相堆積(CVD)、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、スパッタリング、または原子層堆積を含む任意の堆積プロセスによって形成することができる。本発明の1つの実施形態では、ゲート誘電体材料14は、1nmから10nmの範囲の厚さを有することができる。前記の厚さ範囲よりも小さいまたは大きい他の厚さをゲート誘電体材料14に使用することもできる。
【0027】
ゲート誘電体材料14上に形成されるバッテリ材料スタック16は、下から上に、カソード集電体18、カソード材料20、第1のイオン拡散障壁材料22、電解質24、第2のイオン拡散障壁材料26、アノード領域28、およびアノード集電体30を含むことができる。カソード集電体18、カソード材料20、第1のイオン拡散障壁材料22、電解質24、第2のイオン拡散障壁材料26、アノード領域28、およびアノード集電体30は、上下に積み重ねられる。アノード領域28は、堆積されたアノード材料とすることができ、または充電/再充電プロセスの間に生じる蓄積領域とすることができる。
【0028】
カソード集電体18は、例えば、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および窒化チタン(TiN)などの任意の金属電極材料を含むことができる。1つの例では、カソード集電体18は、下から上に、チタン(Ti)、白金(Pt)、およびチタン(Ti)のスタックを含む。カソード集電体電極18は、例えば、化学気相堆積(CVD)、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)、蒸着、スパッタリング、またはめっきを含む堆積プロセスを利用して形成することができる。カソード集電体電極18は、5nmから20nmの厚さを有することができる。前記の厚さ値よりも小さいまたは大きい他の厚さをカソード集電体18に使うこともできる。
【0029】
カソード材料20は、バッテリで使用される任意の材料から構成することができる。本発明の1つの実施形態では、カソード材料20は、例えばリチウム・ベース混合酸化物などのリチウム化材料から構成される。使用することができるリチウム・ベース混合酸化物の例には、限定はしないが、リチウム・コバルト酸化物(LiCoO2)、リチウム・ニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウム・マンガン酸化物(LiMn2O4)、リチウム・コバルト・マンガン酸化物(LiCoMnO4)、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト酸化物(LiNixMnyCozO2)、リチウム・バナジウム五酸化物(LiV2O5)、またはリチウム鉄リン酸塩(LiFePO4)が含まれる。
【0030】
カソード材料20は、スパッタリング・プロセスを利用して形成することができる。本発明の1つの実施形態では、スパッタリングは、任意の前駆体原料物質または前駆体原料物質の組合せの使用を含むことができる。1つの例では、リチウム前駆体原料物質およびコバルト前駆体原料物質が、リチウム・コバルト混合酸化物を形成する際に使用される。スパッタリングは、不活性ガスと酸素の混合物中で実行することができる。本発明のそのような実施形態では、不活性ガス/酸素混合物の酸素含有量は0.1原子百分率から70原子百分率とすることができ、混合物の残りは不活性ガスを含む。使うことができる不活性ガスの例には、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0031】
カソード材料20は、20nmから200nmの厚さを有することができる。前記の厚さ値よりも小さいまたは大きい他の厚さをカソード材料20に使うこともできる。カソード材料20が厚いと、バッテリ電荷を蓄積するための区域、すなわち、体積が多くなるのでバッテリ容量を増強することができる。
【0032】
第1のイオン拡散障壁材料22は、低いイオン拡散係数を有する材料から構成される。「低いイオン拡散係数」とは、イオン拡散係数が1E-6cm2/秒以下であることを意味する。1つの例において、リチウム・イオンでは、第1のイオン拡散障壁材料22の拡散係数は、1E-13cm2/秒から1E-10cm2/秒である。低いイオン拡散係数を有する材料の例証となる例には、限定はしないが、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、または酸化マグネシウムが含まれる。本発明の1つの実施形態では、第1のイオン拡散障壁材料22は、低いイオン拡散係数を有する単一の材料から構成することができる。本発明の別の実施形態では、第1のイオン拡散障壁材料22は、低いイオン拡散係数の材料の多層スタックから構成することができる。
【0033】
第1のイオン拡散障壁材料22は、例えば、化学気相堆積(CVD)、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、スパッタリング、または原子層堆積(ALD)を含む任意の堆積プロセスによって形成することができる。本出願の1つの実施形態では、第1のイオン拡散障壁材料22は、1nmから10nmの範囲の厚さを有することができる。前記の厚さ範囲よりも小さいまたは大きい他の厚さを第1のイオン拡散障壁材料22に使用することもできる。
【0034】
電解質24は、任意の従来の電解質材料を含むことができる。電解質24は、液体電解質、固体電解質、またはゲル・タイプ電解質とすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、ポリマー・ベース材料または無機材料から構成された固体電解質を使用することができる。本発明の他の実施形態では、リチウム・イオンの伝導を可能にする材料を含む固体電解質を使用することができる。そのような材料は、電気的に絶縁性であるが、イオン導電性であり得る。固体電解質として使用することができる材料の例には、限定はしないが、窒化リン酸リチウム(LiPON)または窒化リン酸ケイ素リチウム(LiSiPON)が含まれる。
【0035】
固体電解質層が使用される本発明の実施形態では、固体電解質は、スパッタリング、溶液堆積、またはめっきなどの堆積プロセスを利用して形成することができる。本発明の1つの実施形態では、固体電解質は、任意の従来の前駆体原料物質を利用するスパッタリングによって形成される。スパッタリングは、少なくとも窒素含有雰囲気の存在下で実行することができる。使用することができる窒素含有雰囲気の例には、限定はしないが、N2、NH3、NH4、NO、またはNHxが含まれ、ここで、xは0と1との間にある。前記の窒素含有雰囲気の混合物を使用することもできる。本発明のいくつかの実施形態では、窒素含有雰囲気は、そのままで、すなわち、希釈せずに使われる。本発明の他の実施形態では、窒素含有雰囲気は、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、およびそれらの混合物などの不活性ガスで希釈することができる。使用される窒素含有雰囲気内の窒素(N2)の含有量は、一般に、10%から100%であり、雰囲気内の窒素含有量は、50%から100%がより一般的である。
【0036】
液体電解質が使われる場合に使われるセパレータは、セルロース、セロファン、ポリ酢酸ビニル(PVA)、PVA/セルロース・ブレンド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはPEとPPの混合物から構成された可撓性多孔質材料、ゲル、またはシートのうちの1つまたは複数を含むことができる。セパレータはまた、無機絶縁性ナノ/マイクロ粒子から構成することができる。セパレータは、上部電解質領域および下部電解質領域を設けるために電解質24内のどこかに位置づけられることになる。
【0037】
電解質24は、3nmから500nmの厚さを有することができる。前記の厚さ範囲よりも小さいまたは大きい他の厚さを電解質24に使用することもできる。
【0038】
第2のイオン拡散障壁材料26は、同様に、上述で定義されたように、低いイオン拡散係数を有する材料から構成される。1つの例において、リチウム・イオンでは、第2のイオン拡散障壁材料26の拡散係数は、1E-12cm2/秒から1E-7cm2/秒である。低いイオン拡散係数を有する材料の例には、限定はしないが、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、または酸化マグネシウムが含まれる。第2のイオン拡散障壁材料26は、第1のイオン拡散障壁材料22と同じまたは異なる材料から構成することができる。本発明の1つの実施形態では、第2のイオン拡散障壁材料26は、低いイオン拡散係数を有する単一の材料から構成することができる。本発明の別の実施形態では、第2のイオン拡散障壁材料26は、低いイオン拡散係数の材料の多層スタックから構成することができる。
【0039】
第2のイオン拡散障壁材料26は、例えば、化学気相堆積(CVD)、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、スパッタリング、または原子層堆積(ALD)を含む任意の堆積プロセスによって形成することができる。本発明の1つの実施形態では、第2のイオン拡散障壁材料26は、1nmから10nmの範囲の厚さを有することができる。前記の厚さ範囲よりも小さいまたは大きい他の厚さを第2のイオン拡散障壁材料26に使用することもできる。
【0040】
アノード領域28は、バッテリで見いだされる任意の従来のアノード材料を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、アノード領域28は、リチウム金属、例えばLixSiなどのリチウム・ベース合金、または例えばリチウム・チタン酸化物(Li2TiO3)などのリチウム・ベース混合酸化物から構成される。アノード領域28はまた、シリコン、銅、グラファイト、または無定形炭素から構成されてもよい。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、アノード領域28は、充電/再充電プロセスの実行の前に形成される。本発明のそのような実施形態では、アノード領域28は、例えば化学気相堆積(CVD)、プラズマ促進化学気相堆積(PECVD)、蒸着、スパッタリング、またはめっきなどの堆積プロセスを利用して形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、アノード領域28は、引き続き実行される充電/再充電プロセスの間に形成されるリチウム蓄積領域である。リチウム蓄積領域は、連続的な領域または不連続な領域とすることができる。
【0042】
アノード集電体30(アノード側電極)は、例えば、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、または窒化チタン(TiN)などの任意の金属電極材料を含むことができる。1つの例では、アノード集電体30は、下から上に、ニッケル(Ni)および銅(Cu)のスタックを含む。アノード集電体30は、例えば、化学気相堆積(CVD)、スパッタリング、またはめっきなどの堆積プロセスを利用して形成することができる。アノード集電体30は、20nmから200nmの厚さを有することができる。
【0043】
図1に示された構造体は、最初に基板10を用意することによって形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ソース/ドレイン領域12L、12Rは、この時点で形成することができる。本発明のそのような実施形態では、犠牲ゲート構造体が、チャンネル領域11の上に形成されてもよく、その後、ソース/ドレイン領域12L、12Rが、例えば、イオン注入または気相ドーピングなどの従来の技法によって形成されてもよい。ソース/ドレイン領域12L、12Rの形成の後、犠牲ゲート構造体は除去され、次いで、ゲート誘電体材料14、カソード集電体18、カソード材料20、第1のイオン拡散障壁材料22、電解質24、第2のイオン拡散障壁材料26、オプションとしてアノード領域28、およびアノード集電体30の材料層が、材料層の各々に対して上記の技法のうちの1つを利用して、基板10上に連続的に形成される。アノード領域28は、後で、引き続き実行される充電/再充電プロセスの間に形成されてもよい。次いで、パターニング・プロセスを使って、材料層の各々をパターニングし、それにより、
図1に示された材料スタック(14/16)を生成することができる。本発明の1つの実施形態では、パターニング・プロセスは、リソグラフィおよびエッチングを含むことができる。エッチング・ステップは、1つまたは複数の異方性エッチング・プロセスを含むことができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、
図1に示された構造体は、最初に基板10を用意することによって形成することができる。ゲート誘電体材料14、カソード集電体18、カソード材料20、第1のイオン拡散障壁材料22、電解質24、第2のイオン拡散障壁材料26、オプションとしてアノード領域28、およびアノード集電体30の材料層が、材料層の各々に対して上記の技法のうちの1つを利用して、基板10上に連続的に形成される。アノード領域28は、引き続き実行される充電/再充電プロセスの間に形成されてもよい。次いで、パターニング・プロセスを使って、材料層の各々をパターニングし、それにより、
図1に示された材料スタック(14/16)を生成することができる。本発明の1つの実施形態では、パターニング・プロセスは、リソグラフィおよびエッチングを含むことができる。エッチング・ステップは、1つまたは複数の異方性エッチング・プロセスを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、ソース/ドレイン領域12L、12Rは、この時点に、注入マスクとして材料スタック(14/16)を使って形成することができる。本発明のそのような実施形態では、ソース/ドレイン領域12L、12Rは、例えば、イオン注入または気相ドーピングなどの従来の技法で形成することができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、
図1に示された材料スタック(14/16)を生成する際に、リフトオフ法を使うことができる。使用されるとき、リフトオフ・プロセスは、パターニングされた犠牲材料を基板10上に形成することを含む。次に、材料スタック(14/16)の様々な層が形成され、アノード領域はリフトオフの前または後に形成することができる。次いで、リフトオフ・プロセスを実行して、パターニングされた犠牲材料と、パターニングされた犠牲材料上に形成された材料とを基板から除去する。本発明のいくつかの実施形態では、ゲート誘電体材料14が最初に形成され、次いで、パターニングされた犠牲材層が形成され、続いて、バッテリ・スタック16の様々な層が形成され、その後、リフトオフが実行される。ソース/ドレイン領域12L、13Rは、リフトオフ・プロセスの実行の前または後に形成することができる。
【0046】
材料スタック(14/16)を形成するために使われる方法にもかかわらず、材料スタック(14/16)は、30nmから800nmの高さと、10nmから10000nmの幅を有することができる。他の幅および高さが、材料スタック(14/16)に対して可能である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、
図2に示されるように、スペーサ32が、
図1に示された材料スタック(12/14)の少なくとも側壁に沿って形成されてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、スペーサ32は、バッテリ・スタック16の最上部表面の上に延びることができる。スペーサ32は、任意の空気または水分不浸透性材料あるいはその両方、あるいはそのような材料の多層スタックから構成することができる。本出願で使用することができる空気または水分不浸透性材料あるいはその両方の例には、限定はしないが、パリレン、フッ素重合体、窒化シリコン、または二酸化シリコン、あるいはその組合せが含まれる。スペーサ32は、最初に、空気または水分不浸透性材料あるいはその両方を堆積させ、その後、空気または水分不浸透性材料あるいはその両方をパターニングすることによって形成することができる。本発明の1つの実施形態では、パターニングは、リソグラフィおよびエッチングによって実行することができる。
【0048】
図1または
図2に示されたバッテリ・スタック16は、充電/再充電を施してもよい。充電/再充電方法は、当業者によく知られている従来の充電技法を利用して実行することができる。例えば、充電/再充電方法は、バッテリ・スタック16を外部電源に接続し、バッテリに電流または電圧を供給することによって実行することができる。そのような充電/再充電方法では、最大電圧に到達するまで、一定電流が使われる。
【0049】
バッテリ・スタック16から構成された不揮発性バッテリは、改善された出力電圧保持および向上した電圧分解能を有し、したがって、その構造体はニューロモーフィック・コンピューティングで使うことができる。改善された出力電圧保持および向上した電圧分解能は、第1および第2のイオン拡散障壁材料22、26を含まないが、しかしなお、バッテリ・スタック16の他の構成要素(すなわち、カソード集電体18、カソード材料20、電解質24、アノード領域28、およびアノード集電体30)を含むバッテリ・スタックと比較されている。
【0050】
本発明が、その好ましい実施形態に関して特に図示および説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の前述および他の変更を行うことができることが当業者には理解されよう。それゆえに、本発明は、説明および図示された正確な形態および詳細に限定されるのではなく、添付の特許請求範囲の範囲に含まれることが意図される。