(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】下葺材、及びこれを備えた屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 12/00 20060101AFI20220922BHJP
E04D 5/12 20060101ALI20220922BHJP
E04D 1/12 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E04D12/00 U
E04D5/12 B
E04D1/12 C
(21)【出願番号】P 2017230182
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 襟子
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-154518(JP,U)
【文献】特開2002-242392(JP,A)
【文献】実開昭62-094219(JP,U)
【文献】特開平08-218566(JP,A)
【文献】実開昭58-089515(JP,U)
【文献】実開昭59-186319(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 12/00
E04D 5/12
E04D 1/12、3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材の固着具用穴に対応する箇所に位置する凸部と、
前記屋根材の横方向の位置を示すマークとが設けられ、
前記マークは
、前記屋根材の横方向の端の位置に対応
し、施工状態で軒棟方向に延びて前記屋根材を支持する
、前記凸部の平面視形状とは別の平面視形状をした突条である下葺材。
【請求項2】
請求項1に記載の下葺材において、
千鳥状に葺かれた複数の屋根材の下葺材である下葺材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の下葺材と、
前記下葺材の上に前記マークによって位置決めされて葺かれた複数の屋根材とを備えた屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下葺材、及びこれを備えた屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平板屋根材が野地板の表面に軒側から棟側に向かって順に重ね葺きされた屋根構造が開示されている。この屋根構造における平板屋根材には、軒側に隣接する平板屋根材よりもわずかに棟側に位置する箇所に固定用孔が形成されている。平板屋根材を野地板に固定するための固定具は、前記固定用孔を通して野地板に打ち込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した屋根構造では、屋根材上の雨水が、当該屋根材と一段棟側の屋根材との間を逆流して裏側に流れ、この後、当該屋根材の棟側の縁部に沿って雨水が横走りし、前記固定具が打ち込まれた部分から浸入するおそれがある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、屋根材を固定するための固着具が打ち込まれた部分から雨水が浸入することを抑制できる下葺材、及びこれを備えた屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明に係る一態様の下葺材は、屋根材の固着具用穴に対応する箇所に位置する凸部と、前記屋根材の横方向の位置を示すマークとが設けられることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る一態様の屋根構造は、前記下葺材と、前記下葺材の上に前記マークによって位置決めされて葺かれた複数の屋根材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る一態様の下葺材及び屋根構造は、屋根材を固定するための固着具が打ち込まれた部分から雨水が浸入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態の屋根構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に示す実施形態は、屋根材の施工に用いられる下葺材、及びこれを備えた屋根構造に関する。
【0011】
図1及び
図2に、本実施形態の下葺材3を用いて屋根材4が葺かれた屋根構造1を示す。本実施形態の屋根構造1は、住宅家屋に採用されており、屋根下地2と、屋根下地2上に敷かれた複数の下葺材3と、複数の下葺材3を介して屋根下地2上に設置された複数の屋根材4とを備えている。なお、以下では、屋根の傾斜方向を軒棟方向といい、軒棟方向と直交する水平方向を横方向という。
【0012】
屋根下地2は、例えば、垂木上に固定された野地板で構成される。屋根下地2の上面には、軒棟方向及び横方向に並んだ複数の下葺材3が、敷かれている。
【0013】
図3A及び
図3Bに示すように、下葺材3には、屋根材4の固着具用穴40(
図1参照)に対応する凸部31と、屋根材4の横方向の位置を示すマーク32とが設けられている。
【0014】
本実施形態の下葺材3は、本体部30と、複数の凸部31と、複数のマーク32とを備えている。本体部30は、屋根下地2の上面に沿うシート状に形成されており、横方向に延びた矩形状に形成されている。本体部30は、周知のアスファルトルーフィング(アスファルトフェルト及び改質アスファルトルーフィングを含む)と同様の構成を有し、紙又は不織布等の基材と、この基材に含浸されたアスファルト(改質アスファルトを含む)とを含む。なお、上記下葺材3は、例えば、アスファルトにロール金型で凹凸を成形する、または、凹凸が形成された不織布をアスファルト上に貼り合せる、などの方法で作製される。
【0015】
複数の凸部31は、横方向(本体部30の長手方向)に間隔をあけて並んでいる。凸部31は、本体部30と一体に形成されており、アスファルト(改質アスファルトを含む)から形成されている。
【0016】
凸部31は、本体部30から上方に突出しており、軒棟方向(本体部30の幅方向)に延びている。各凸部31の長手方向(軒棟方向)と直交する断面形状は互いに同じであり、横方向に延びた矩形状である。
【0017】
複数のマーク32は、横方向に間隔をあけて並んでいる。マーク32は、横方向において隣り合う凸部31の間に位置している。各マーク32は、本体部30と一体に形成されており、アスファルト(改質アスファルトを含む)から形成されている。
【0018】
本実施形態のマーク32は、本体部30から上方に突出した突出部分であり、本体部30において屋根材4の横方向の端に対応する位置に形成されている。
【0019】
本実施形態のマーク32は、軒棟方向に延びた突条である。各マーク32の長手方向(軒棟方向)と直交する断面形状は、横方向に延びた矩形状である。マーク32の上面の高さ(本体部30から突出したマーク32の突出寸法)は、凸部31の上面の高さ(本体部30から突出した凸部31の突出寸法)と同じ又は凸部31の上面の高さよりも低い。
【0020】
マーク32の幅は、凸部31の幅よりも小さい。このため、屋根材4を施工する作業者は、マーク32を見ることで、マーク32が屋根材4の横方向の端を載せる位置を示すものであることを容易に認識できる。
【0021】
下葺材3の表面には、上方に開口した凹溝33が、横方向に複数形成されている。下葺材3は、凸部31と凸部31の間に形成された第1凹溝331と、マーク32と凸部31の間に形成された第2凹溝332との2種類の凹溝33を備えている。
【0022】
第1凹溝331は、横方向の両側の面の各々が、凸部31の側面で構成されており、底面が本体部30の上面で構成されている。第2凹溝332は、横方向の両側の面のうちの一方の面がマーク32の側面で構成され、他方の面が凸部31の側面で構成されている。また、第2凹溝332の底面は、本体部30の上面で構成されている。
【0023】
本実施形態の各凸部31及び各マーク32は、本体部30の棟側端部を除いた部分において軒棟方向に亘って形成されている。
図1に示すように、屋根下地2上において軒棟方向に並ぶ下葺材3は、軒側の下葺材3の本体部30の棟側端部の上に、棟側の下葺材3の本体部30の軒側端部が重なるように敷かれる。このため、軒側の下葺材3の各凸部31は、棟側の下葺材3の対応する凸部31と連続し、軒側の下葺材3の各マーク32は、棟側の下葺材3の対応するマーク32と連続する。
【0024】
屋根下地2上において軒棟方向に隣接した下葺材3は、軒側の下葺材3の各凹溝33が、棟側の下葺材3の対応する凹溝33に通じる。そして、複数の下葺材3のうち、屋根の軒側の端部に位置する下葺材3は、各凹溝33の軒側端部が、屋根の軒側に開放される。このため、各下葺材3の凹溝33に流れ込んだ雨水は、
図1の点線の矢印に示すように凹溝33に沿って流下した後、屋根の軒側に排出される。
【0025】
複数の屋根材4は、複数の下葺材3の上に葺かれる。本実施形態の各屋根材4は、平板状のスレート瓦で構成された横葺き屋根材であって、セメント系成形材料を成形し、養生硬化することで製造される。
【0026】
複数の屋根材4は、複数の下葺材3の上に千鳥状に重ね葺きされる。すなわち、複数の屋根材4は、横方向に隣接する屋根材4の突付け部分と、これら屋根材4の一段棟側に位置して横方向に隣接する屋根材4の突付け部分とが、横方向においてずれた状態で葺かれる。具体的には、一段棟側の屋根材4は、それらの突付け部分が、その軒側の屋根材4における横方向の端から、その横方向の寸法の1/2あるいは1/4の位置に合わせるように設けられている。
【0027】
各屋根材4は、横方向に長い略矩形状に形成されている。具体的に各屋根材4は、矩形の棟側の2か所の角がカットされたような六角形の板状に形成されている。複数の屋根材4は、横方向に隣接した屋根材4の軒側の端縁同士及び棟側の端縁同士が軒棟方向において揃うように葺かれる。
【0028】
屋根材4は、横方向の両端の各々が、下葺材3の対応するマーク32の幅方向の中央部と重なる位置に配置された状態で、4つの凸部31の上に載せられる。
【0029】
屋根材4は、軒側に位置する曝露部41と、棟側に位置する非曝露部42とで構成されている。曝露部41は、屋根材4において、棟側に隣接する屋根材4によって覆われず表面が露出する部分である。非曝露部42は、屋根材4において、棟側に隣接する屋根材4で覆われて表面が露出しない部分である。
【0030】
屋根材4の非曝露部42には、横方向に並んだ複数の固着具用穴40が形成されている。固着具用穴40は、屋根材4を厚み方向に貫通している。
【0031】
本実施形態の固着具用穴40は、屋根材4の横方向の両側部分の各々に横方向に間隔をあけて一対ずつ形成されている。屋根材4の横方向の中心に近い位置に形成された2つの固着具用穴40の横方向の間隔は、各対の2つの固着具用穴40の横方向の間隔よりも長い。
【0032】
屋根材4は、各固着具用穴40が軒側に隣接する屋根材4の棟側端の僅かに棟側に位置するように配置される。このため、各固着具用穴40に打ち込まれた固着具10は、軒側の屋根材4を貫通せずに下葺材3を介して屋根下地2に打ち込まれる。
【0033】
下葺材3のマーク32の上面の高さが、凸部31の上面の高さと同じである場合、屋根材3は、4つの凸部31に加えて、3つのマーク32の上にも載せられる。また、マーク32の上面の高さが凸部31の上面の高さよりも低い場合、屋根材4は4つの凸部31にのみ載せられ、マーク32の上には載せられない。
【0034】
屋根材4の各固着具用穴40は、下葺材3の対応する凸部31と重なる位置に配置される。また、屋根材4の横方向の両端及び中央部の各々は、下葺材3の対応するマーク32と重なる位置に配置される。
【0035】
本実施形態では、軒棟方向に隣接する屋根材4のうちの棟側の屋根材4の横方向の端と、軒側の屋根材4の横方向の中央部とが、共通するマーク32の上方に位置する。このため、例えば、棟側の屋根材4の横方向の端部が踏まれる等して、軒側の屋根材4の横方向の中央部に下向きの力が加わったとき、この軒側の屋根材4の横方向の中央部が、突出部分で構成されたマーク32により支持される。
【0036】
屋根材4の各固着具用穴40には、釘等の固着具10が通され、各固着具10は、下葺材3の対応する凸部31を貫通して屋根下地2に打ち込まれる。これにより、屋根材4は屋根下地2に固定される。屋根材4に通された固着具10は、当該屋根材4の棟側に隣接する屋根材4によって覆われる。
【0037】
複数の下葺材3及び複数の屋根材4は、作業者により例えば以下に示すように施工される。まず、屋根下地2に複数の下葺材3を敷く。次に最も軒側に配置される複数の屋根材4を下葺材3の上に載せる。このとき、屋根材4の横方向の端を対応するマーク32に位置合わせることで、屋根材4を下葺材3に対して横方向の所定位置に配置する。
【0038】
次に、上記のように下葺材3の上に載せた複数の屋根材4の各々の各固着具用穴40に、固着具10を挿入し、各固着具10を下葺材3の対応する凸部31を通して屋根下地2に打ち込む。これにより、最も軒側に配置される複数の屋根材4が、下葺材3を介して屋根下地2に固定される。
【0039】
次に上述した複数の屋根材4の一段棟側の複数の屋根材4を下葺材3の上に施工する。このとき、各屋根材4は、軒側の部分を軒側の屋根材4の非曝露部42の上に載せ、棟側の端部を下葺材3の上に載せる。また、このとき、屋根材4の横方向の端を対応するマーク32に位置合わせることで、屋根材4を下葺材3に対して横方向の所定位置に配置する。
【0040】
次に、上記のように複数の屋根材4の一段棟側に葺かれた複数の屋根材4の各々を、軒側の屋根材4と同様に、複数の固着具10を用いて屋根下地2に固定し、以後、上記と同様の作業を軒側から棟側に向かって繰り返し行うことで、軒から棟に亘って複数の屋根材4を千鳥状に重ね葺きする。
【0041】
本実施形態の屋根構造1では、屋根材4上の雨水が、屋根材4と当該屋根材4の一段棟側の屋根材4との間から下葺材3に流れたとしても、この雨水は下葺材3の凹溝33に流れ込みやすい。また、このように凹溝33に流れ込んだ雨水は、凹溝33に沿って下葺材3上を流下した後、屋根の軒側に排出される。すなわち、この場合、下葺材3上に流れた雨水は、凸部31が堰となり、下葺材3において固着具10が打ち込まれた部分に至り難い。したがって、雨水が、下葺材3において固着具10が打ち込まれた部分から、屋根下地2側に浸入し難い。
【0042】
本実施形態の下葺材3及び屋根構造1は、適宜設計変更可能である。例えば、下葺材3の凸部31及びマーク32の各々は、軒棟方向に延びた形状に限られず、平面視円形状や矩形状等であってもよい。また、凸部31の断面形状及びマーク32の断面形状の各々も、矩形状に限られない。また、凸部31及びマーク32は、本体部30とは別部材であってもよい。
【0043】
また、マーク32は本体部30から突出した突出部分でなくてもよく、例えば、本体部30の表面に設けられた刻印、印刷あるいは塗装等であってもよい。
【0044】
また、マーク32は、屋根材4の横方向の中間部を載せる位置を示してもよい。この場合、例えば、屋根材4には横方向の位置を特定するための表示等が設けられ、下葺材3のマーク32は、この屋根材4の表示等に対応する位置に設けられる。
【0045】
また、本実施形態の固着具用穴40は、屋根材4を厚み方向に貫通した孔であるが、屋根材4の表面側に開口した非貫通の穴であってもよい。この場合、屋根材4は、固着具用穴40に打ち込まれることで、屋根材4を貫通した固着具10により、屋根下地2に固定される。
【0046】
また、下葺材3はアスファルト以外の材料から形成されてもよく、例えば合成樹脂製であってもよい。
【0047】
また、本実施形態の下葺材3は、複数の屋根材4が千鳥状に重ね葺きされた屋根構造1に用いられているが、軒棟方向に隣接する屋根材4の横方向の位置が揃うように重ね葺きされる屋根構造1に用いられてもよい。
【0048】
また、下葺材3は、例えば、ステープル等の固着具により、屋根下地2に固定されてもよい。また、下葺材3は、屋根下地2に固定される粘着層を有してもよい。
【0049】
以上説明した本実施形態の下葺材3は、以下に示す特徴を有する。下葺材3に、屋根材4の固着具用穴40に対応する箇所に位置する凸部31と、屋根材4の横方向の位置を示すマーク32とが設けられる。以下、この特徴を有する下葺材3を第1の態様の下葺材3という。
【0050】
第1の態様の下葺材3は、軒棟方向に隣接する屋根材4の間から、雨水が下葺材3に流れたとしても、この雨水は凸部31で堰き止められて、固着具10が打ち込まれた部分に至り難い。このため、下葺材3において固着具10が打ち込まれた部分から雨水が浸入することが抑制される。また、屋根材4を施工するときには、マーク32を確認することで、屋根材4を固着具用穴40が凸部31と重なる横方向の所定位置に容易に配置することができ、屋根材4の施工が容易になる。
【0051】
また、本実施形態の下葺材3は、第1の態様の下葺材3が有する特徴に加えて、以下に示す付加的な特徴を有する。千鳥状に葺かれた複数の屋根材4の下葺材3であり、マーク32は屋根材4の横方向の端の位置に設けられた突出部分である。以下、この下葺材3を第2の態様の下葺材3という。
【0052】
第2の態様の下葺材3は、例えば、屋根材4の横方向の端部が踏まれて、当該屋根材4の軒側の屋根材4に下向きの力が加わったとき、この軒側の屋根材4を突出部分で構成されたマーク32により支持することができる。このため、屋根材4の変形を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態の屋根構造1は、以下に示す特徴を有する。屋根構造1は、第1又は第2の態様の下葺材3と、下葺材3の上にマーク32によって位置決めされて葺かれた複数の屋根材4とを備える。以下、この特徴を有する屋根構造1を第1の態様の屋根構造1という。
【0054】
第1の態様の屋根構造1では、下葺材3における固着具10が打ち込まれた部分から雨水が浸入することが抑制される。また、屋根材4を施工するときには、マーク32を確認することで、屋根材4を固着具用穴40が凸部31と重なる横方向の所定位置に容易に配置することができ、屋根材4を容易に施工することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 屋根構造
3 下葺材
31 凸部
32 マーク
4 屋根材
40 固着具用穴