(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
H04N1/04 106Z
H04N1/12 Z
(21)【出願番号】P 2017238404
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】北西 貴大
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-220115(JP,A)
【文献】特開2006-094515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04- 1/207
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿束から原稿を1枚ずつ分離して給送する分離給送手段と、
給送される原稿を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路を搬送中の原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段が対向する基準部材を読み取って得た画像データに基づいて画像の異常検知を行う異常検知手段と、を備え、
順次給送される原稿に対する一連の画像読み取りを行うバッチ読取から画像読み取りの待機状態となった後に次のバッチ読取に移行する時には、前記画像読取手段が前記待機状態前のバッチ読取の後、前記待機状態となる前に、前記基準部材を読み取って得た画像データに基づいて画像の異常検知を行い、前記次のバッチ読取を行う前に前記異常検知
を行った結果
、前記画像読取手段による前記原稿の画像の読み取りにおいて異常が発生している可能性があることを検知した場合は、その旨をユーザ
に対して通知を行う
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
順次給送される原稿に対する一連の画像読み取りを行うバッチ読取から連続して次のバッチ読取に移行する時には、前記画像読取手段が前記次のバッチ読取に先立って前記基準部材を読み直して得た画像データに基づいて画像の異常検知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取手段は、前記基準部材を複数箇所読取って得た画像データに基づいて、画像の異常検知を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取手段が前記基準部材を読み取って得た画像データに基づいてシェーディング補正を行うシェーディング補正手段を更に備え、
前記待機状態後のバッチ読取を行う前に、前記待機状態前のバッチ読取で前記基準部材を読み取って得た画像データに基づいて、前記シェーディング補正を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像読み取りの待機状態は、装置本体に対する電源供給が停止された状態、又は、次の画像読取指示が所定時間無く次の画像読取指示を待つスリープ状態を含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スキャナや複写機、ファクシミリ装置等の画像読取装置は、自動紙送り機構(ADF:Auto Document Feeder)を備えた物が広く流通している。これらの画像読取装置の構成として、CIS(Contact Image Sensor)等といった画像読取ユニット上に原稿を搬送させ、ライン単位で画像データを取得することにより、原稿の画像データを出力しているものが挙げられる。
【0003】
上記構成の画像読取装置の場合、画像読取ユニット上に紙粉やテープ等の異物が混入した際、画像読取ユニットに対し副走査方向に「スジ」状の異物画像が出力される可能性がある。
【0004】
これらのスジ模様を発見するために、先行技術では画像の読取開始時と読取終了時に読取ユニットのゴミの付着を確認する構成(読取異常の検出)を挙げている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の画像読取装置では、画像読取の指示を受けてから実際に原稿の読み取りを開始するまでに、読取異常検知を実行する時間分のタイムラグが発生し、ユーザビリティの低下を引き起こしかねない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる画像読取装置は、
原稿束から原稿を1枚ずつ分離して給送する分離給送手段と、
給送される原稿を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路を搬送中の原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段が対向する基準部材を読み取って得た画像データに基づいて画像の異常検知を行う異常検知手段と、を備え、
順次給送される原稿に対する一連の画像読み取りを行うバッチ読取から画像読み取りの待機状態となった後に次のバッチ読取に移行する時には、前記画像読取手段が前記待機状態前のバッチ読取の後、前記待機状態となる前に、前記基準部材を読み取って得た画像データに基づいて画像の異常検知を行い、前記次のバッチ読取を行う前に前記異常検知を行った結果、前記画像読取手段による前記原稿の画像の読み取りにおいて異常が発生している可能性があることを検知した場合は、その旨をユーザに対して通知を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バッチ処理前の異常検知を素早く行うことで、ユーザビリティを向上した画像読取装置を実現できる。
例えば、ユーザに出力画像の確認を行わせることなく、事前に画像読取装置内への異物混入による出力画像への影響を確認できるようにし、画像読取装置が画像読取開始指示を受けてから、実際に画像読取を開始するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置の概略図。
【
図2】
図1の画像読取装置の制御ユニットのブロック図。
【
図3】本実施形態において読取異常検知に使用する画像読取ユニット70a(及び70b)と、白色基準板72a及び黒色基準板72bの構成についての図。
【
図4】読取異常検知を実行した際に所得した画像データについての図。
【
図5】読取異常検知についてのフローチャートを示す図。
【
図6】読取異常検知結が異常であることを取得した場合、画像読取装置がユーザに対し読取異常検知結果を通知する際の例に関する図。
【
図7】読取異常検知結が異常であることを取得した場合、画像読取装置がユーザに対し読取異常検知結果を通知する際の例に関する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの概略図である。
【0011】
<装置の構成>
画像読取装置Aは、載置台1に積載された一又は複数の原稿(原稿束)から搬送媒体(原稿)Sを1つずつ装置内に経路RTにて搬送してその画像を読み取り、排出トレイ2に排出する装置である。読み取る搬送媒体Sは、例えば、OA紙、チェック、小切手、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。搬送媒体Sには、また、パスポートなどの冊子も含まれる。
【0012】
経路RTに沿って搬送媒体Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の搬送媒体Sを搬送方向D1に一つずつ順次給送するための分離給送手段を構成する。
【0013】
送りローラ11には、モータ等の駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(経路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの送りローラ11への駆動力を断続する。
【0014】
駆動部3と送りローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、搬送媒体Sの逆送の場合に駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0015】
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、搬送媒体Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向)に回転駆動される。
【0016】
分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11と当接している際は送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つを残して2つ以上の搬送媒体Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0017】
なお、本実施形態では分離ローラ12と送りローラ11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、経路RTに搬送媒体Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラ12のような構成の代わりに、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作業を持たせるようにしてもよい。
【0018】
第1搬送部10の搬送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをその下流側へ搬送するための搬送手段を構成する。駆動ローラ21にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。
【0019】
従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0020】
このような第2搬送部30よりも搬送方向下流側にある第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。
【0021】
駆動ローラ31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れまわる。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0022】
ここで、本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット(画像読取手段)70a及び70bによって搬送中の搬送媒体Sについて画像読み取りを行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は搬送媒体Sを定速で搬送する。これにより、読取中の搬送媒体Sは、第2搬送部20及び第3搬送部30によって一定速度で搬送されるため、画像読取ユニット70a及び70bによる安定した画像読取を実施できる。
【0023】
第2搬送部20及び第3搬送部30の搬送速度は、常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行搬送媒体Sに後続搬送媒体Sが追いついてしまう事態を回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度を、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。
【0024】
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度と、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度とを同一条件とした場合でも、駆動部3を制御して後続搬送媒体Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行搬送媒体Sと後続搬送媒体Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
【0025】
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される重送検出センサ40は、静電気等で紙などの搬送媒体S同士が密着し、第1搬送部10を通過してきた場合(つまり重なって搬送される重送状態の場合)に、これを検出するための検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)の一例である。
【0026】
重送検出センサ40としては、種々のものが利用可能であるが本実施形態の場合には超音波センサであり、超音波の発信部41とその受信部42とを備え、紙等の搬送媒体Sが重送されている場合と1つずつ搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送を検出する。
【0027】
このような重送検出センサ40よりも搬送方向下流側に配置される媒体検出センサ50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された上流側の検出センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)としての一例であり、第1搬送部10により搬送(給送)される搬送媒体Sの位置、詳細には、媒体検出センサ50の検出位置に搬送媒体Sの端部が到達又は通過したか否かを検出する。
【0028】
媒体検出センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。
【0029】
本実施形態の場合、搬送媒体Sの先端が媒体検出センサ50で検出されると、搬送媒体Sが重送検出センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の媒体検出センサ50は重送検出センサ40の近傍においてその下流側に設けられている。なお、この媒体検出センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、搬送媒体Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。
【0030】
媒体検出センサ50とは別の媒体検出センサ60は画像読取ユニット70a及び70bよりも上流側で、第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検出センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される搬送媒体Sの位置を検出する。
【0031】
媒体検出センサ60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、媒体検出センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。なお、本実施形態では、第2搬送部20の搬送方向上流側と下流側のそれぞれに媒体検出センサ50、60を配置したが、何れか一方だけでもよい。
【0032】
媒体検出センサ60よりも下流側にある画像読取ユニット70a及び70bは、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。
【0033】
本実施形態の場合、画像読取ユニット70a及び70bは経路RTの両側に配置されており、搬送中の搬送媒体Sの表裏面を読み取る。経路RTの片側にのみ一つ配置して、搬送媒体Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、画像読取ユニット70a及び70bを経路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、経路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0035】
図2を参照して制御部8について説明する。
図2は画像読取装置Aの制御部8のブロック図である。
【0036】
制御部8はCPU81、記憶部82、操作部83、通信部84及びインターフェース部85を備える。CPU81は記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置A全体の制御を行う。記憶部82は例えばRAM、ROM等から構成される。操作部83は、例えば、スイッチやタッチパネル等で構成され、操作者からの操作を受け付ける。
【0037】
通信部84は、外部装置との情報通信を行うインターフェースである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USBインターフェースやSCSIインターフェースを挙げることができる。また、このような有線通信のインターフェースの他、通信部84は無線通信のインターフェースとしてもよく、有線通信、無線通信の双方のインターフェースを備えていてもよい。
【0038】
インターフェース部85はアクチュエータ86やセンサ87とのデータの入出力を行うI/Oインターフェースである。アクチュエータ86には、駆動部3、駆動部4、伝達部5等が含まれる。センサ87には、重送検出センサ40、媒体検出センサ50及び60、画像読取ユニット70a及び70b等が含まれる。
【0039】
画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部8は、例えば画像読取装置Aが接続された外部パソコンから画像読み取りの開始指示を受信すると、第1乃至第3搬送部10乃至30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sはその最も下に位置する搬送媒体Sから1つずつ搬送される。
【0040】
搬送の途中で搬送媒体Sは重送検出センサ40により重送の有無が判定され、重送が無いと判定されると搬送が継続される。なお、重送があると判定された場合には、搬送を停止するか、第1搬送部10による後続搬送媒体Sの取り込みを停止して、重送状態にある搬送媒体Sをそのまま排出するようにしてもよい。
【0041】
制御部8は、媒体検出センサ60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sの、画像読取ユニット70a及び70bによる画像の読み取りを開始し、読み取った画像を一次記憶して順次外部パソコンへ送信する。画像が読み取られた搬送媒体Sは第3搬送部30により排出トレイ2に排出されてその搬送媒体Sの画像読取処理が終了する。
【0042】
<読取異常検知の構成>
図3は、本実施形態において読取異常検知に使用する画像読取ユニット70a(及び70b)と、基準部材となる白色基準板72a及び黒色基準板72bの構成についての図である。
【0043】
読取ユニット70aの経路RTにおける対向面には、白色基準板72a及び黒色基準板72bが基準部材として設けられている。白色基準板72aは白色部材、黒色基準板72bは黒色部材のものを採用しているが、後述する異物T1を検出できる構成であれば、基準板の色は白色及び黒色に限定されるものではない。また、経路RTにおける白色基準板72a及び黒色基準板72bの設置箇所についても、読取ユニット70aの対向面の位置であれば、読取ユニットに対し複数箇所に設けられる構成でもよい。
【0044】
画像読取装置Aは読取ユニット70aを使用し、白色基準板72aを読取ることにより、白色基準板72aの画像データを取得する。この際、白色基準板72aの配置は読取ユニット70aの対向位置であれば、例えば読取ユニット70b上等に配置されても良い。
【0045】
画像読取装置Aは白色基準板72aの画像データを取得した後、不図示のモータ(移動手段)を駆動させることにより、読取ユニット70aを黒色基準板72bの対向位置まで
図3における矢印方向へ移動させる。読取ユニット70aを黒色基準板72bの対向位置まで移動させた後、白色基準板72aの時と同様に黒色基準板72bの画像データを取得する。
【0046】
本実施形態では読取ユニット70aを黒色基準板72bの対向位置までモータを使用して駆動させる構成を取ったが、読取ユニット70aの対向位置に黒色基準板72bを配置させる構成であれば、例えば読取ユニット70aではなく、白色基準板72a及び黒色基準板72bを移動させて、読取ユニット70aの対向位置に黒色基準板72bを配置する構成を取っても良い。
【0047】
本実施形態において画像データとは、読取ユニット70a及び70bを使用し、搬送方向D1に対し主走査方向に画像読取を行って取得した、複数の画素データから構成される1ライン以上のラインデータのことである。
【0048】
読取異常検知を行う際、記憶部82に保持された画像データをCPU81が走査することにより、読取異常の発生要因である後述する異物T1の画像データを検出する。この際、画像データを外部機器(例えばコンピュータ)に転送し、外部機器にて画像データを保持、走査する構成を取っても良い。すなわち、CPU81は、画像データから読取異常を検知する異常検知手段を兼ねる。
【0049】
画像データを取得する際のライン数は1ライン以上であれば何ライン取得しても構わない。また、取得した画像データに加工を施す構成をとってもよい。例えば画像データの解像度を低解像度へ変換することにより、記憶部82に保持する画像データのサイズを削減する構成を取っても良い。
【0050】
また、画像データをカラーからグレーや、グレーから白黒などに変換することにより、記憶部82に保持する画像データのサイズを削減する構成をとってもよい。さらに複数箇所(複数ライン)で取得したラインデータに平均化処理を施して画像データを作成する構成をとっても構わない。
【0051】
<読取異常検知の方法>
図4は、本実施形態において読取異常検知を実行した際に所得した画像データについての図である。
【0052】
読取異常検知を行う際、本実施例では白色基準板72aの画像データを白黒形式に変換した白基準画像データ90をCPU81にて走査する。同様に黒色基準板72bの画像データを白黒形式に変換した黒基準画像データ92をCPU81にて走査する。
【0053】
取得した画像データを白黒形式の画像データへ変換する際、所定の閾値を用いた変換を使用する。具体的には、256段階で表されるグレー形式で取得した画像データの画素に対し、所定の閾値(例えば128)を超えているか否かにより、白か黒の画素への変換を行う。
【0054】
白基準画像データ90は白黒変換を行うことにより白色画像データに変換される。また黒基準データ92は白黒変換を行うことにより黒色画像データに変換される。ここで、白黒変換された白基準画像データ90と黒色基準画像データ92の両画像データを走査することにより、下記の異常の検出が可能である。
(1)白基準画像データ90(白画素)を走査する際:暗色系の異物T1により黒色画素に変換された暗色異常画像データ91の検出。
(2)黒基準画像データ92(黒画素)を走査する際:明色系の異物T1により白色画素に変換された明色異常画像データ93の検出。
【0055】
ここでいう異物T1とは、例えば、紙片やテープ、油脂汚れ等、画像読取装置Aが連続して搬送媒体Sの画像読取を行うことの妨げとなる物のことである。
【0056】
異物T1の色は不定である可能性が高いため、本実施形態のように読取ユニット70aにて取得する基準板(基準部材)の配色を複数の色に分けて、それぞれの基準板の画像データを取得する構成が有用となる。
【0057】
本実施形態における読取異常検知では、CPU81が、白黒変換が行われた白基準画像データ90及び黒基準画像データ92を構成する画素の数に対し、白基準画像データ90の際は黒色の画素数が、また黒基準画像データ92の際は白色の画素数が所定の閾値を超える場合、異物T1を検出したと判定する。この際、走査する画像データの形式は白黒画像に限定されるものではなく、例えばグレー画像やカラー画像を走査し、白黒画像の時と同様に閾値で異物T1を検出する構成を取っても良い。
【0058】
<読取異常検知フロー>
図5は、第一の実施形態における読取異常検知についてのフローチャートを示す図である。
【0059】
ステップS1001にて、画像読取装置Aは本実施例における読取異常検知に関する処理を開始させる。その後画像読取装置Aは処理をステップS1002へ移行させる。
【0060】
ステップS1002にて、画像読取装置AのCPU81は、上述した読取異常検知の方法にて記述した読取異常検知の方法を用いて読取異常検知を実行する。その後画像読取装置Aは処理をステップS1003へ移行させる。
【0061】
ステップS1003にて、画像読取装置AはステップS1002で取得した読取異常検知結果を記憶部82に保持する。この時、読取異常検知結果を保持する場所については記憶部82に限定されるわけでは無く、例えば読取異常検知結果を、通信部84を通じて外部機器(例えばコンピュータ)に転送し、外部機器にて読取異常検知結果を保持する構成を取っても良い。その後、画像読取装置Aは処理をステップS1004へ移行させる。このように読取異常検知結果を、次のバッチ読取に先立って記憶部82に保持させておくことにより、後述する待機状態への移行後のバッチ読取のときの異常検知において、待機状態前に取得した読取異常検知結果を活用することができる。
【0062】
ステップS1004にて、画像読取装置Aは待機状態へ移行する。ここでいう待機状態とは、後述する「待機状態からの復帰」が指示されるまで、画像読取装置Aが自身の状態を、画像読取を実行するプロセスへ遷移可能な状態にして待機していることである。主な待機状態としては、例えば、装置本体に対する電源供給が停止された状態、又は、次の画像読取指示が所定時間無くて次の画像読取指示を待つ状態(スリープ状態)を含む。
【0063】
ここで、前述した待機状態時、画像読取装置Aは待機状態からの復帰指示を受け付けるまで、消費電力を削減するために、読取ユニット70a及び読取ユニット70bへの電源供給を切断したり、モータ等の駆動部4への電源供給を切断する仕組みを取り入れたりしてもよい。待機状態へ移行後、画像読取装置Aは処理をステップS1005へ移行させる。
【0064】
ステップS1005にて、画像読取装置Aは待機状態からの復帰指示があるか否か判定する。ここでいう復帰指示とは、例えば通信部84を通じて接続された不図示の外部装置からの通信コマンドや、画像読取装置Aの筐体に設けられ操作部83による操作等が挙げられる。
【0065】
つまり、復帰指示としては、例えば、待機状態に移行した画像読取装置Aが待機状態から復帰するためのトリガーとなる指示であればよい。復帰指示がある場合、画像読取装置Aは処理をステップS1006へ移行させる。復帰指示がない場合、画像読取装置Aは処理をステップS1004へ戻し、自身の状態を待機状態へ移行させる。
【0066】
ステップS1006にて、画像読取装置Aは画像バッチ読取指示があるか否かを判定する。ここでいう画像バッチ読取指示とは、例えば通信部84を通じて接続された外部装置からの通信コマンドや、画像読取装置Aの筐体に設けられ操作部83による操作等により、画像読取装置Aに対し、画像バッチ読取を開始する旨を通知する指示のことである。
【0067】
また、本実施形態でいうところのバッチ読取とは、例えば、2枚以上の搬送媒体Sを1つの原稿群として1枚ずつ連続して画像読取を行い、読み取った画像データを1つの原稿群として取り扱う一連の読取処理のことをいう。画像バッチ読取指示をトリガーに画像読取装置Aは読取ユニット70a及び70bを使用し、搬送媒体Sの画像バッチ読取を開始する。
【0068】
画像バッチ読取指示がある場合、画像読取装置Aは処理をステップS1007へ移行させる。画像バッチ読取指示がない場合、画像読取装置Aは処理をステップS1004へ戻し、自身の状態を待機状態へ移行させる。
【0069】
ステップS1007に処理を移行させた画像読取装置AのCPU81は、ステップS1003にて保持した読取異常検知の結果が正常であったか異常であったかを判断する。ここでいう正常とは、上述の読取異常検知の方法にて記述した読取異常検知により、異物T1を検出しなかった状態のことである。また同様に異常とは、読取異常検知により、異物T1を検出した状態のことである。
【0070】
ステップS1002にて読取異常検知を実行し、ステップS1003にて読取異常検知の結果を保持しているため、ステップS1004の待機状態から本ステップまで、画像読取装置Aのユーザは読取異常検知に係るタイムラグを感じることなく、画像のバッチ読取を開始することができる。
【0071】
読取異常検知の結果が正常であった場合、画像読取装置Aは、処理をステップS1010へ移行させる。また読取異常検知の結果が異常であった場合、画像読取装置Aは処理をステップS1008へ移行させる。
【0072】
更に、画像読取装置AのCPU81は、読取異常検知の結果に従い、結果が正常であった場合はシェーディング処理を行い、結果が異常であった場合はシェーディング処理を行わない構成を取っても良い。これは、読取異常検知の結果が異常である場合、画像読取ユニット70a(及び70b)や基準板72a(及び72b)等の何処かに、画像読取を阻害するゴミや汚れが存在しているため、シェーディング補正値にゴミによる影響が反映される可能性が高いからである。
【0073】
ステップS1008にて、画像読取装置AのCPU81は、読取異常検知の結果が異常であった旨を通知する。本実施形態における通知の内容は、後述する
図6や
図7のように、読取異常検知の結果が異常であった旨を画像読取装置Aのユーザへ通知するものである。
【0074】
画像読取装置A(CPU81)が読取異常検知の結果を通知する手段については通信部84により、外部機器へ通知する方法や、画像読取装置Aに設けられた不図示のLCD(Liqued Crystal Display)等の表示部へ読取異常検知の結果を文字列として表示する方法、更に読取異常検知の結果を、画像読取装置Aに設けられた不図示のスピーカー部によりブザー音等発生させて通知する方法等が挙げられる。
【0075】
つまり本ステップでは、読取異常検知の結果、及び画像読取装置Aが正常な画像を出力できない可能性があるという旨を、画像読取装置Aのユーザに通知する処理を行う。本ステップ終了後、画像読取装置Aは処理をステップS1009へ移行させる。
【0076】
ステップS1009にて、画像読取装置Aは読取異常検知結果が異常であったことを受けて、ユーザから画像バッチ読取を中止する指示があるか否かを判定する。画像バッチ読取を中止する指示は、例えば通信部84を通じて接続された外部装置からの通信コマンドや、画像読取装置Aの筐体に設けられ操作部83による操作により通知する方法が挙げられる。
【0077】
画像バッチ読取を中止する指示がある場合、画像読取装置Aは処理をステップS1002へ移行させる。画像バッチ読取を中止する指示がない場合、画像読取装置Aは処理をステップS1010へ移行させる。
【0078】
ステップS1010にて、画像読取装置Aは上述した構成にて記述した方法により、搬送媒体Sの画像バッチ読取処理を開始させる。搬送媒体Sの画像バッチ読取開始後、画像読取装置Aは処理をステップS1011へ移行させる。
【0079】
ステップS1011にて、画像読取装置Aは全連続搬送媒体Sの画像読取が終了したか否かの判定を行う。本ステップにて、画像の読取が終了していないと判定された場合、画像読取装置Aは処理をステップS1010へ移行させる。画像の読取が終了したと判定された場合、画像読取装置Aは処理をステップS1002へ移行し、読取異常検知を実行する。ここで実行された読取異常検知の結果は、次のバッチの画像読取時に反映されることになる。
【0080】
<読取異常検知結果の通知方法>
図6及び
図7は読取異常検知結果が異常であることを取得した場合、画像読取装置Aがユーザに対し読取異常検知結果を通知する際の例に関する図である。
【0081】
本実施形態の例において画像読取装置Aは、以下の情報を画像読取装置Aのユーザに対し通知する。
(A)現在の読取ユニット、及び搬送路等の状態
(B)読取異常検知結果に対する対処方法
ここで、画像読取装置Aのユーザに対する情報通知方法に関しては、上述した読取異常検知フローのステップS1009にて記述した方法を使用する。本実施形態の図ではLCDを使用し、画像読取装置Aのユーザに前述した(A)及び(B)の情報を文字列として通知している。
【0082】
上述した(A)の例として、
図6では「読取ユニットが汚れているため、異常画像が出力される可能性があります。」という文字列を通知している。
図7では「画像読取途中に、異物が筐体内に侵入した可能性があります。」という文字列を通知している。上述した(B)の実施例として、
図6及び
図7では「カバーを開けて読取ユニットを清掃してください。」という文字列を通知している。
【0083】
図6は、画像読取装置Aが上記読取異常検知フローのステップS1006にて前述した「バッチ読取」を開始する前に、ユーザに対して通知する情報の例である。
【0084】
図7は、画像読取装置Aが上記読取異常検知フローのステップS1006にて前述した「バッチ読取」が終了した後に、ユーザに対して通知する情報の例である。
【0085】
以上のように、本実施形態では、バッチ読取の前後によって通知する情報を切り替えることにより、ユーザに対して適切な処置を促し、ユーザビリティの低下を防ぐことができる。
【0086】
(他の実施形態)
以上、本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではない。
上述した一実施形態では、待機状態前のバッチ読取で基準部材を読み取って得た画像データに基づいて次のバッチ読取時の読取異常を行う場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、1つのバッチ読取後に待機状態へ移行した後、次のバッチ読取を開始する前の任意のタイミングにて基準部材を先立って読み取って画像データを取得し、当該画像データを次のバッチ開始後の異常判定の基準として使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
A:画像読取装置S:搬送媒体RT:経路D1:搬送方向T1:異物1:載置台10:第一搬送部11:送りローラ12:分離ローラ12a:トルクリミッタ2:排出トレイ20:第二搬送部21:駆動ローラ22:従動ローラ3:モータ駆動部30:搬送部31:駆動ローラ32:従動ローラ4:駆動部40:重送検出センサ41:発信部42:受信部5:伝達部50:媒体検出センサ51:発光部52:受光部60:媒体検出センサ61:発光部62:受光部70a:画像読取ユニット70b:画像読取ユニット71:レンズアレー72a:白色基準板72b:黒色基準板8:制御部81:CPU82:記憶部83:操作部84:通信部85:アクチュエータ86:インターフェース部87:センサ90:白基準データ91:暗色異常画像データ92:黒基準データ93:明色異常画像データ