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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】癌のための治療方法及び診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220922BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220922BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20220922BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220922BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220922BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220922BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220922BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20220922BHJP
   A61K 45/06 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
A61K39/395 T
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/6886
C12Q1/04
A61P13/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/04
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/574 A
C07K16/28
A61K39/395 E
A61K45/00 101
A61K45/06
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2017561797
(86)(22)【出願日】2016-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2016034664
(87)【国際公開番号】W WO2016196298
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-05-27
(31)【優先権主張番号】62/168,669
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/301,599
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘッジ, プリティ
(72)【発明者】
【氏名】コワネッツ, マルチン
(72)【発明者】
【氏名】フィーネ, グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】マリアザサン, サンジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴン, リチャード
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/151006(WO,A1)
【文献】伊藤祐二郎ほか,CDDP治療抵抗性膀胱癌における新規NFkB阻害剤を用いた新規治療戦略の検討,日本泌尿器科学会雑誌,2011年,Vol.102, No.2,p.533 PP-775
【文献】井上啓史ほか,Cisplatin抵抗性膀胱移行上皮癌の骨転移に対する破骨細胞特異的阻害剤Minodronateの治療効果,日本泌尿器科学会雑誌,2004年,Vol.95, No.2,p.324 APP-039
【文献】岩動一将ほか,浸潤性膀胱癌に対するネオアジュバント療法についての検討,日本泌尿器科学会雑誌,2004年,Vol.95, No.2,p.373 OP2-091
【文献】橋本浩平ほか,筋層浸潤性膀胱癌に対するネオアジュバントGC療法の検討,日本泌尿器科学会雑誌,2015年01月,Vol.106, No.1,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/
A61K 38/
A61K 45/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱がんに罹患している患者を治療するための医薬であって、治療有効量のPD-L1結合アンタゴニストを含み、前記患者から得られた腫瘍試料が、前記腫瘍試料中の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されており、前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、医薬。
【請求項2】
前記医薬を投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも8カ月であり、前記医薬を投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも8.8カ月であってもよい、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記医薬を投与された患者の奏効率は、少なくとも12%であり、医薬を投与された患者の奏効率は、少なくとも21%であってもよく、さらに、医薬を投与された患者の奏効率は、18%であってもよい、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記医薬を投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも9カ月であり、前記医薬を投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも11カ月であってもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記医薬を投与された患者の奏効率は、少なくとも14%であり、前記医薬を投与された患者の奏効率は、少なくとも25%であってもよく、さらに、前記医薬を投与された患者の奏効率は、27%であってもよい、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定される、かつ/または
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ/または
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、該マイクロRNA(miRNA)の参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5p及びmiR100-5pの発現レベルは、該miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
患者から得られた腫瘍試料中のCD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されており、
患者から得られた腫瘍試料中の少なくともCXCL9及びCXCL10の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、1またはそれ以上のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害し、任意選択的にPD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1、B7-1、またはPD-1およびB7-1の両方への結合を阻害する、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
有効量の第2の治療剤との組合わせでの患者への投与のために製剤化されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項15】
第2の治療剤が、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
膀胱がんが、尿路上皮膀胱癌である、請求項1から15のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項17】
尿路上皮膀胱癌が、転移性尿路上皮膀胱癌である、請求項16に記載の医薬。
【請求項18】
尿路上皮膀胱癌が、局所進行性尿路上皮膀胱癌である、請求項16に記載の医薬。
【請求項19】
腫瘍試料が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料である、請求項1から18のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項20】
(i)PD-L1の発現レベルが、タンパク質の発現レベルであり、任意選択的にPD-L1のタンパク質の発現レベルが、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、及びウェスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して判定され、さらに任意選択的にPD-L1のタンパク質発現レベルが、抗PD-L1抗体を使用して検出される;または
(ii)PD-L1の発現レベルが、mRNA発現レベルであり、任意選択的にPD-L1のmRNA発現レベルが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNA配列決定、マイクロアレイ分析、インサイツハイブリダイゼーション、及び遺伝子発現の逐次分析法(SAGE)からなる群から選択される方法を使用して判定される
請求項1から19のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項21】
膀胱がんに罹患している患者が、PD-L1結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定するための、または膀胱がんに罹患している患者の、PD-L1結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測するための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、
前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、前記患者がPD-L1結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示し、前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、方法。
【請求項22】
膀胱がんに罹患している患者のための療法を選択することを補助するための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み
前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、前記患者のためのPD-L1結合アンタゴニストを含む療法選択され
前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、前記方法。
【請求項23】
前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも8カ月であり、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも8.8カ月であってもよい、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも12%であり、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも21%であってもよく、さらに、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、18%であってもよい、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも9カ月であり、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも11カ月であってもよい、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも14%であり、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも25%であってもよく、さらに、前記PD-L1結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、27%であってもよい、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の少なくとも10%を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定される、かつ/または
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ/または
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ
(b)患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、該miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項21から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5p及びmiR100-5pの発現レベルは、該miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者から得られた腫瘍試料中のCD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されており、
患者から得られた腫瘍試料中の少なくともCXCL9及びCXCL10の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されている、請求項21から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、1またはそれ以上の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害し、任意選択的にPD-L1結合アンタゴニストが、PD-L1の、PD-1、B7-1、またはPD-1およびB7-1の両方への結合を阻害する、請求項21から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
PD-L1結合アンタゴニストが、有効量の第2の治療剤との組合わせでの患者への投与のために製剤化されている、請求項21から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の治療剤が、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
膀胱がんが、尿路上皮膀胱癌である、請求項21から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
尿路上皮膀胱癌が、転移性尿路上皮膀胱癌腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
尿路上皮膀胱癌が、局所進行性尿路上皮膀胱癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍試料が、FFPE腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料である、請求項21から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
(i)PD-L1の発現レベルが、タンパク質発現レベルであり、任意選択的にPD-L1のタンパク質発現レベルが、IHC、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、及びウェスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して判定され、さらに任意選択的にPD-L1のタンパク質発現レベルが、抗PD-L1抗体を使用して検出される;または
(ii)PD-L1の発現レベルが、mRNA発現レベルであり、任意選択的にPD-L1のmRNA発現レベルが、qPCR、RT-qPCR、RNA配列決定、マイクロアレイ分析、インサイツハイブリダイゼーション、及びSAGEからなる群から選択される方法を使用して判定される、請求項21から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
膀胱がんに罹患している患者の治療における使用のための医薬品の製造における、有効量のPD-L1結合アンタゴニストの使用であって、前記患者から得られた腫瘍試料が、前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されており、前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、使用。
【請求項43】
膀胱がんに罹患している患者の治療方法における使用のための有効量のPD-L1結合アンタゴニストを含む組成物であって、前記患者から得られた腫瘍試料が、前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されており、
前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、組成物。
【請求項44】
膀胱がんに罹患している患者が、PD-L1結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定するための、または膀胱がんに罹患している患者の、PD-L1結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測するためのキットであって、前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定するための手段を含み、
前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、前記患者がPD-L1結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示し、
前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、キット。
【請求項45】
膀胱がんに罹患している患者のための療法を選択するためのキットであって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定するための手段を含み、
PD-L1結合アンタゴニストを含む療法が、前記腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、前記患者のために選択され、
前記患者から得られた前記腫瘍試料は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍であると判定されており、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体であり、抗体は、アテゾリズマブである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2016年5月20日に作成された該ASCIIコピーは、50474-116WO3_Sequence_Listing_5_20_16_ST25という名称であり、23,626バイトのサイズである。
【0002】
癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))などの病態のための治療方法及び診断方法、及び組成物、ならびにPD-L1軸結合アンタゴニストを使用する方法が本明細書に提供される。具体的には、本明細書は、患者選択及び診断のためのバイオマーカー、治療方法、製品、診断キット、及び検出方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
癌は、依然としてヒトの健康に対する最も致命的な脅威のうちの1つである。癌または悪性腫瘍は転移し、制御されていない様子で急速に成長し、時を得た検出及び治療を極めて困難にする。米国において、癌は、毎年約130万人の新たな患者に影響を及ぼし、心疾患に続く第2の主な死亡原因であり、死亡の約4件に1件を占める。固形腫瘍は、そのような死亡の大部分に関与する。膀胱癌は、世界で5番目に一般的な悪性腫瘍であり、1年当たり40万件近くの症例が新たに診断され、約15万件の関連死が報告されている。とりわけ、転移性尿路上皮膀胱癌は予後不良と関連付けられ、主要な対処されていない医療ニーズを代表し、現在まで有効な治療法がほとんどない。
【0004】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、慢性感染、妊娠、組織同種移植片、自己免疫疾患、及び癌における免疫系応答の抑制に関係があるとされているタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、及び単球の表面上に発現される、プログラム死1(PD-1)として知られる阻害受容体に結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1は、別の受容体、B7-1との相互作用によっても、T細胞機能を負に制御する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/B7-1複合体の形成は、T細胞受容体のシグナル伝達を負に制御し、その後、T細胞活性化の下方制御、及び抗腫瘍免疫活性の抑制をもたらす。
【0005】
癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))の治療における著しい前進にかかわらず、改善された療法及び診断方法が未だに求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、癌、例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌)のための治療方法及び診断方法、ならびに組成物を提供する。
【0007】
第1の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料中の約1%以上(例えば、約1%、約2%、約3%、または約4%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%~65%以上(例えば、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約65%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも約8カ月である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも約8.8カ月である。他の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも約7~約11カ月である。別の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、約10%~約35%(例えば、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約35%)である。なお別の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、約13%~約24%である。他の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約12%である。他の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約21%である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約18%である。
【0008】
いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、または約9%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも約9カ月である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の全生存期間の中央値は、少なくとも約11カ月である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の無増悪生存期間の中央値は、少なくとも約4カ月である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の無増悪生存期間の中央値は、少なくとも約3~約6カ月である。別の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、約10%~約45%である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、約35%~約45%である。なお別の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、約18%~約37%である。他の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約14%である。他の実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約25%である。いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを投与された患者の奏効率は、少なくとも約27%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上(例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、または約60%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍であると判定されている。
【0010】
第2の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍であると判定されている。
【0011】
第1及び第2の態様のいくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定され、かつ患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて減少したと判定されている。他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、マイクロRNA(miRNA)の参照レベルと比べて増加したと判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5p及びmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている。なお他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中のCD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料中の少なくともCXCL9及びCXCL10の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて増加したと判定されている。他の実施形態では、ルミナルサブタイプ腫瘍は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍である。
【0012】
第3の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0013】
第4の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0014】
第5の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することと、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することと、を含む。
【0015】
第3、第4、及び第5の態様のいくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の少なくとも約10%を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0016】
第6の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、ルミナルサブタイプ腫瘍は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0017】
第7の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、ルミナルサブタイプ腫瘍は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0018】
第8の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者のための療法を選択する方法を特徴とし、該方法は、患者から得られた腫瘍試料から腫瘍のサブタイプを判定することと、腫瘍がルミナルサブタイプ腫瘍であるという判定に基づいて、患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することと、を含む。
【0019】
第3から第8の態様のいくつかの実施形態では、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することをさらに含む。
【0020】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。他の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。なお他の実施形態にでは、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。他の実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。他の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。なお他の実施形態にでは、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。他の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。なお他の実施形態では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。他の実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮膀胱癌(UBC)である。いくつかの実施形態では、UBCは、転移性尿路上皮膀胱癌である。他の実施形態では、UBCは、局所進行性尿路上皮膀胱癌である。いくつかの実施形態では、患者は、白金ベースの化学療法剤での治療後に前進している(すなわち、患者の疾患(例えば、UBC)が、白金ベースの化学療法剤での事前治療後に進行している)。なお他の実施形態では、腫瘍試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料である。他の実施形態では、PD-L1の発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、及びウェスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを使用して判定される。他の実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を使用して検出される。なお他の実施形態では、PD-L1の発現レベルは、mRNA発現レベルである。いくつかの実施形態では、PD-L1のmRNA発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNA配列決定、マイクロアレイ分析、インサイツハイブリダイゼーション、及び遺伝子発現の逐次分析法(SAGE)からなる群から選択される方法を使用して判定される。
【0021】
第9の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者の治療における使用のためのPD-L1アンタゴニスを特徴とし、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0022】
第10の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者の治療における使用のための医薬品の製造における有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストの使用を特徴とし、患者から得られた腫瘍試料は、前腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0023】
第11の態様において、本発明は、膀胱癌に罹患している患者の治療における使用のための有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む組成物を特徴とし、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】UBCにおける、示されるICスコアでのPD-L1発現の有病率を示す表である。結果は、進行中の第Ia相臨床試験でプレスクリーニングされた患者からの保管用腫瘍組織の染色に基づく(実施例2を参照されたい)。
図1B】ウサギモノクローナル抗PD-L1抗体を使用して免疫組織化学によって評価された、腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現を示す画像である。PD-L1染色は、濃褐色で示される。
図2】ICにおけるPD-L1発現が、アテゾリズマブ(MPDL3280A)での治療に対するUBC患者の応答に関連付けられることを示す表である。示されるICスコアを有する患者について、奏効率(ORR)、完全奏功(CR)、及び部分奏功(PR)が示される。RECIST v1.1による、ベースラインで測定可能な疾患を有する有効性評価可能な患者。4人のIC2/3患者及び7人のIC0/1患者は、紛失されたか、または評価不可能であった。
図3】アテゾリズマブ(MPDL3280A)での治療に対するUBC患者の応答を示すグラフである。患者のICスコアが示されている。SLD、標的病変の最長径。ベースライン後の腫瘍評価を有しない7人の患者は、含まれなかった。アステリスクは、データ締切日までに全てが確認されなかった9人のCR患者を示し、そのうちの7人は、リンパ節標的病変に起因して100%未満の低減を有した。全てのリンパ節は、RECIST v1.1による通常の大きさに戻った。SLDの変化>100%。
図4】アテゾリズマブ(MPDL3280A)で治療されたUBC患者における治療期間及び奏功期間を示すグラフである。中断の及び進行中奏功状態についてのマーカーは、タイミングを暗示するものではない。
図5A】ICにおけるPD-L1発現と、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で治療されたUBC患者における生存期間との関連性を示す表である。グラフは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で治療されたIC2/3及びIC0/1UBC患者について、中央値及び1年無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を示す。
図5B】アテゾリズマブ(MPDL3280A)で治療されたIC2/3及びIC0/1UBC患者について、OSを示すグラフである。
図6】末梢血単核細胞(PBMC)中の免疫ブロッカー遺伝子シグネチャ(CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、PD1)またはCTLA4の発現レベルと、アテゾリズマブでのUBC患者の治療中の応答との間の関連性を示す一連のグラフである。C、サイクル;D、日数。
図7】第II相試験の全体的な設計の概略図である。PD-L1試験において評価可能な腫瘍組織は、中央研究所によって予見評価された。患者及び研究者には、PD-L1 IHC状態が伏せられた。
図8】第II相試験に参加しているコホートの概要である。除外された群には、再スクリーニングされた患者が含まれる。治療群は、311人の患者で構成され、有効性評価可能群は、310人の患者で構成される。1人の患者は、その腫瘍試料が由来する部位が不詳であったため、治療群から除去された。
図9A】アテゾリズマブ(MPDL3280A)への部分奏功または完全奏功を示すIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
図9B】アテゾリズマブ(MPDL3280A)に対して不変であるIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
図9C】アテゾリズマブ(MPDL3280A)に対して進行性疾患を有するIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
図9D】IC0、IC1、及びIC2/3患者の全生存期間を示すグラフである。
図10A】アテゾリズマブで治療に応答を有するIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。緑色の破線=PR/CR(n=8)。
図10B】アテゾリズマブで治療される不変を有するIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。青色の破線=SD(n=25)。
図10C】アテゾリズマブで治療される進行性疾患を有するIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。赤色の線=PD(n=52)。
図10D】アテゾリズマブで治療に応答を有するIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。緑色の破線=PR/CR(n=11)。
図10E】アテゾリズマブで治療される不変を有するIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。青色の破線=SD(n=18)。
図10F】アテゾリズマブで治療される進行性疾患を有するIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。赤色の線=PD(n=61)。
図11A】進行後にアテゾリズマブで治療されるIC0患者における最善の応答による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=2)、黒色の線=-30超、及び20以下(n=8)、薄灰色の線=20超(n=17)。
図11B】進行後にアテゾリズマブで治療されるIC1患者における最善の応答による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=8)、黒色の線=-30超、及び20以下(n=10)、薄灰色の線=20超(n=14)。
図11C】進行後にアテゾリズマブで治療されるIC2/3患者における最善の応答による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=10)、黒色の線=-30超、及び20以下(n=15)、薄灰色の線=20超(n=11)。
図12A】PD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)と、CD8エフェクターセット中の遺伝子(例えば、CXCL9及びCXCL10)との間の関連性を示すグラフである。
図12B】PD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)と、CD8エフェクターセット中の遺伝子(例えば、CXCL9及びCXCL10)との間の関連性を示すグラフである。
図12C】CD8浸潤とPD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)との間の関連性を示すグラフである。
図12D】CD8浸潤と応答との間の関連性を示すグラフである。
図12E】腫瘍浸潤免疫細胞(IC)腫瘍サブタイプ上のPD-L1免疫組織化学発現間の関連性を示すグラフである。
図12F】腫瘍サブタイプを有する腫瘍細胞(TC)上のPD-L1免疫組織化学発現間の関連性を示すグラフである。
図12G】腫瘍サブタイプと応答との間の関連性を示すグラフである。
図13A】完全なCD8 Tエフェクター遺伝子セット(例えば、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、TBX21)と、PD-L1免疫組織化学IC状態との関連性を示すグラフである。
図13B】完全なCD8 Tエフェクター遺伝子セット(例えば、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、TBX21)と患者応答との関連性を示すグラフである。
図14】推定される分子サブタイプ、応答、IC及びTCスコア、ならびに2つの遺伝子セット(i)TCGAサブタイプを割り当てるために使用される遺伝子、及び(ii)CD8 Tエフェクター活性に一般に関連付けられる遺伝子の遺伝子発現の間の関係を示すヒートマップである。
図15】応答(CR/PR対SD/PD)を、1つ以上のバイオマーカー(PD-L1 IHC ICスコア(IC0/1対IC2/3)及びTCGA遺伝子発現サブタイプ)上に当てはめたロジスティック回帰の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.序文
本発明は、癌、例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌、UBC)のための治療方法及び診断方法、ならびに組成物を提供する。本発明は、患者から得られた試料中の本発明のバイオマーカー、例えば、PD-L1及び/または腫瘍サブタイプの発現レベルの判定が、癌に罹患している患者の治療おいて、癌に罹患している患者の診断のため、癌を有する患者が、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ(MPDL3280A))を含む抗癌療法での治療に応答する可能性が高いかどうかを判定するため、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を含む抗癌療法の治療有効性を最適化するため、かつ/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を含む抗癌療法のための患者選択のために有用であるという発見に少なくとも部分的に基づく。
【0026】
II.定義
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
【0027】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」を言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0028】
「腫瘍サブタイプ」または「腫瘍試料サブタイプ」という用語は、腫瘍または癌の内因性分子特性(例えば、DNA、RNA、及び/またはタンパク質発現レベル(例えば、ゲノムプロファイル))を指す。腫瘍または癌(例えば、尿路上皮膀胱癌(UBC腫瘍))の特定のサブタイプは、病理組織学的基準またはサブタイプ関連分子特性(例えば、1つまたはバイオマーカー(例えば、特定の遺伝子、RNA(例えば、mRNA、マイクロRNA)、または該遺伝子によってコードされるタンパク質)の発現)によって判定することができる(例えば、Cancer Genome Atlas Research Network Nature 507:315-22,2014、Jiang et al.Bioinformatics 23:306-13,2007、Dong et al.Nat.Med.8:793-800,2002を参照されたい)。
【0029】
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合)を含む。
【0030】
免疫機能不全の文脈における「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低減した状態を指す。この用語には、抗原認識が生じ得るが、その後の免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」及び/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「機能障害性」という用語は、抗原認識への不応性または不応答性、具体的には、抗原認識を下流T細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)、及び/または標的細胞死滅に翻訳する能力の障害も含む。
【0032】
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全または不十分なシグナル(例えば、Ras活性化の不在下での細胞内Ca2+の増加)に起因する抗原刺激に対する無応答の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激との関連においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。無応答状態はしばしば、インターロイキン2の存在により覆され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0033】
「消耗」という用語は、多くの慢性感染及び癌発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは不十分なシグナル伝達ではなく、持続的シグナル伝達に起因するという点で、アネルギーとは区別される。これは、エフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、及び機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なる転写状態によって定義される。消耗は、感染及び腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)及び細胞内因性の負の制御性(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方に起因し得る。
【0034】
「T細胞機能を増強する」とは、持続したもしくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導するか、引き起こすか、もしくは刺激すること、または消耗されたもしくは不活性のT細胞を更新もしくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例としては、介入前のかかるレベルと比べた、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、または腫瘍クリアランス)の増加が挙げられる。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、または200%の増強である。この増強を測定する様式は、当業者に既知である。
【0035】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識かつ攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮、及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0036】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。腫瘍免疫原性の増強の例として、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介してTリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。さらに別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるアテゾリズマブ(MPDL3280A)である。さらに別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(ドルバルマブ(druvalumab))である。さらに別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」は、PD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びこれらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介してTリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるCT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるPDR001である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるREGN2810である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるBGB-108である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるAMP-224である。
【0039】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチド変異型、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体の断片(これらは、本明細書でさらに定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の源からなど、多様な源から単離されるか、または組換え法または合成法によって調製されたものであり得る。
【0040】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」は、対応する、自然界に由来するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0041】
「PD-L1ポリペプチド変異型」またはその変化形は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般的には活性PD-L1ポリペプチドが、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。かかるPD-L1ポリペプチド変異型には、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチド変異型は、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD-L1変異型ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意で、PD-L1変異型ポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0042】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼにより、または合成反応によりポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。したがって、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドとしては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、RNAもしくはDNA、またはRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。かかる領域内の鎖は、同じ分子由来であり得るか、または異なる分子由来であり得る。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重らせん領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、cDNAを含む。
【0043】
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立て前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば標識との複合により、合成後にさらに修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上を類似体と置換する「キャップ」、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)などを含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が含まれる。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により置換されるか、標準保護基により保護されるか、もしくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製してもよく、または固体もしくは半固体支持体に複合されてもよい。5′及び3′末端OHをリン酸化するか、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分と置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環糖の類似体、α-アノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸類似体、及びメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該分野において一般的に既知であるリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含むことができる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替連結基に置き換えられてもよい。これらの代替連結基には、限定されないが、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれ、各RまたはR’は、独立してHであるか、または置換もしくは非置換アルキル(1~20C)(任意にエーテル(-O-)結合を含む)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される1つ以上の異なる種類の修飾及び/または同じ種類の複数の修飾を含有してもよい。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく完全にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
【0045】
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズすることができ、一般に遊離3’-OH基を提供することにより相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0046】
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
【0047】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が中に導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらは、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一ではないが、変異を含み得る。元来形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及び中に導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0049】
「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0050】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0051】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から識別及び分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の研究的、診断的、及び/または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって判定される、抗体の95重量%超、及びいくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離抗体には、組換え細胞内でインサイツの抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないためである。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0052】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0053】
任意の哺乳類種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0054】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0055】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0056】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接近して一緒に保持され、他方の鎖由来のHVRと共に、抗抗の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and Wu,Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0058】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、その代わりに、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造ループとの折衷物であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで用いられている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々の残基を、以下に記載する。
【0059】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)、及び89-97または89-96(L3)、ならびにVHにおいて、26-35(H1)、50-65または49-65(H2)、及び93-102、94-102、または95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0060】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0061】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入断片(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0062】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメインにおける残基(大体、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0063】
「全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的に無傷な形態にある抗体を指す。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0064】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0065】
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生され、残りが「Fc」断片であり、その名前は、容易に結晶化するその能力を反映している。ペプシン処理は、F(ab’)断片を生成し、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0066】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0067】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加だけFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0068】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvの概説について、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0069】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上のこれらの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディについても、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。
【0070】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの主要なクラスの抗体IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0071】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するようにさらに改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
【0072】
「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物におけるヒト抗体またはヒト様抗体の産生技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)))を含む多様な技術によって作製され得る。
【0073】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、所望の生物学的活性を呈する限り、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種由来の抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体、ならびにかかる抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体としては、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
【0074】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する、抗体のアミノ酸配列、または他のヒト抗体コード配列に対応する、アミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0075】
「ヒト化」抗体は、非ヒト超可変領域(HVR)由来のアミノ酸残基及びヒトフレームワーク領域(FR)由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、そのFRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0076】
「抗PD-L1抗体」及び「PD-L1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-L1に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗PD-L1抗体の、無関係の非PD-L1タンパク質への結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-L1への結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、異なる種由来のPD-L1の間で保存されているPD-L1のエピトープに結合する。
【0077】
「抗PD-1抗体」及び「PD-1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-1に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、抗PD-1抗体の、無関係の非PD-1タンパク質への結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-1への結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、異なる種由来のPD-1の間で保存されているPD-1のエピトープに結合する。
【0078】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0079】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載のものを含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的な」という用語は、生物学的分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0081】
「親和性成熟」抗体は、かかる改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の改変を有し、かかる変化によって抗原に対する抗体の親和性を改善する、抗体を指す。
【0082】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体の、その抗原への結合を50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体の、その抗原への結合を50%以上遮断する参照抗体を指す。
【0083】
「免疫複合体」は、細胞毒性剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種性分子(複数可)に複合体化される抗体である。
【0084】
本明細書に使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位ではない(すなわち、「異種である」)所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的に、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから取得され得る。Ig融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2、及びCH3、またはヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の産生については、米国特許第5,428,130号を参照されたい。例えば、本明細書における治療に有用な医薬品としての有用なイムノアドヘシンには、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合される、PD-L1もしくはPD-L2の細胞外ドメイン(ECD)もしくはPD-1結合部分、またはPD-1の細胞外またはPD-L1もしくはPD-L2結合部分、例えば、それぞれPD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、及びPD-1 ECD-Fcを含む、ポリペプチドが含まれる。細胞表面受容体のIg FcとECDとのイムノアドヘシンの組み合わせは、可溶性受容体と称されることがある。
【0085】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、一緒に共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを指し、ここで、これらの部分のそれぞれは、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であり得る。この特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性であり得る。これらの2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、またはペプチドリンカーを介して連結され得るが、互いのリーディングフレーム内にある。
【0086】
本明細書に識別されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを判定する目的のためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、アライメントを測定するための適切なパラメータを判定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)においてユーザ文書と共に申請されており、これは、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,California.を通して公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用する場合はコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変動しない。
【0087】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される。
100×画分X/Y
式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。別途具体的に示されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性値%は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0088】
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出方法を含む。
【0089】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、試料中で検出され得る指標、例えば、予測指標、診断指標、及び/または予後指標、例えば、PD-L1、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-cadhherin、ERBB2、またはESR2を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、癌)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーとしては、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/もしくはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数改変(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、ならびに/または糖脂質ベースの分子マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
個体への臨床的利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生体試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者に既知であり、かつ本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療への応答を判定することができる。
【0091】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、互換的に使用され、一般に、生体試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」とは、一般に、情報(例えば、遺伝子コード情報及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在しかつそこで機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらにはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に由来するか、または例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳される遺伝子を含み、RNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されない遺伝子(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)も含む。
【0092】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、癌)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはそのレベルの増加を指す。
【0093】
「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低減した発現」、「低減した発現レベル」、または「低減したレベル」とは、疾患もしくは障害(例えば、癌)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカーの低減した発現または低減したレベルを指す。いくつかの実施形態では、低減した発現とは、発現がほとんどまたは全くないことである。
【0094】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、全ての細胞型中に典型的に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」とは、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、かつ全ての細胞型中に典型的に同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
【0095】
本明細書で使用される「増幅」とは、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーによって導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
【0096】
「多重PCR」という用語は、単一の反応で2つ以上のDNA配列を増幅させる目的で、1超のプライマーセットを使用して単一の源(例えば、個体)から得られた核酸上で行われる単一のPCR反応を指す。
【0097】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」技法とは、一般に、核酸、RNA、及び/またはDNAの微量の特定の小片が、例えば、米国特許第4,683,195に記載されるように増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーが設計され得るように、目的の領域の末端またはそれ以降からの配列情報が利用可能でなければならず、これらのプライマーの配列は、増幅される鋳型の反対側の鎖と同一また同様である。これらの2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、及び全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージ配列、またはプラスミド配列などを増幅することができる。概して、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)及びErlich,ed.,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用される場合、PCRは、プライマーとしての既知の核酸(DNAまたはRNA)の使用を含む、核酸試験試料を増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であると見なされるが、唯一の例ではなく、核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
【0098】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」とは、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定されるPCRの形態を指す。この技法は、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(1):35-42(2004)、及びMa et al.,Cancer Cell 5:607-616(2004)などの様々な出版物に記載されている。
【0099】
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則配置を指す。
【0100】
「診断」という用語は、分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、癌)の識別または分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプの癌の識別を指し得る。「診断」は、例えば病理組織的基準によるか、または分子特徴による癌の特定のサブタイプの分類も指し得る(例えば、バイオマーカーのうちの1つまたはその組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によりコードされるタンパク質))。
【0101】
「診断を援助する」という用語は、疾患または障害(例えば、癌)の特定のタイプの症状または状態の存在または性質に関して臨床的判定を行う助けとなる方法を指すために本明細書で使用される。例えば、疾患または状態(例えば、癌)の診断を援助する方法は、個体由来の生物学的試料中のある特定のバイオマーカー(例えば、PD-L1)を測定することを含み得る。
【0102】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特性に基づいて、特徴付けかつ/または識別される細胞及び/または他の分子実体を含有する、目的の対象及び/または個体から得られるか、またはそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変化形は、特徴付けられる細胞及び/または分子実体を含有することが予期されるか、または含有することが既知である、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料としては、組織試料、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
「組織試料」または「細胞試料」とは、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料源は、新鮮な、凍結、及び/もしくは保存された器官、組織試料、生検、及び/もしくは吸引液由来の固形組織、または任意の血液成分、例えば、血漿;体液、例えば、脳脊髄液、羊水、腹水、もしくは間質液;対象の妊娠または発育中の任意の時点の細胞であり得る。組織試料は、初代または培養された細胞または細胞株でもあり得る。任意に、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍試料」は、腫瘍または他の癌性組織から得られた組織試料である。腫瘍試料は、混合した細胞型(例えば、腫瘍細胞及び非腫瘍細胞、癌性細胞及び非癌性細胞)の集団を含有し得る。組織試料は、自然界の組織とは自然には混合されない化合物、例えば、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養剤、抗生物質などを含有し得る。
【0104】
「腫瘍浸潤免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはこれらの試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、例えばTリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0105】
本明細書で使用される場合、「腫瘍細胞」は、腫瘍またはその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野で既知であり、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば間質細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞と区別され得る。
【0106】
本明細書で使用される「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常な及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康及び/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象または個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から得られる。さらに別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常な及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。さらに別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から得られる。
【0107】
本明細書の目的に関して、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分または小片、例えば、組織試料(例えば、腫瘍試料)から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の複数の切片が取られて分析に供され得ることが理解されるが、但し、組織試料の同じ切片が、形態及び分子レベルの両方で分析されるか、またはポリペプチド(例えば、免疫組織化学法による)及び/もしくはポリヌクレオチド(例えば、インサイツハイブリダイゼーションによる)に関して分析され得ることが理解されることを条件とする。
【0108】
「相関する」または「相関すること」とは、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの性能及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを行う際に第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用することができ、かつ/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルが行われるべきかを判定することができる。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定することができる。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを判定することができる。
【0109】
「個体応答」または「応答」は、(1)減速または完全阻止を含む、疾患進行(例えば、癌進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢器官及び/もしくは組織への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(4)メタタシスの阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(5)疾患もしくは障害(例えば、癌)に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、(6)全生存期間及び無増悪生存期間を含む生存期間の長さの増加もしくは延長、ならびに/または(7)治療後の所定の時点における低下した死亡率を限定することなく含む、個体への有益性を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
【0110】
医薬品での治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」及び類似の単語は、癌などの疾患もしくは障害の危険性があるか、またはそれに罹患している患者に付与される臨床的または治療的有益性を指す。一実施形態では、かかる利点は、生存期間の延長(全生存期間及び/または無増悪生存期間を含む)、客観的応答(完全奏効もしくは部分奏効を含む)をもたらすこと、または癌の兆候または症状の改善のうちのいずれか1つ以上を含み得る。一実施形態では、バイオマーカー(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現、例えば、IHCを使用して判定されるもの)は、バイオマーカーを発現しない患者と比べて、医薬品での治療(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体を含む治療)に応答性である可能性が増加していると予測される患者を識別するために使用される。一実施形態では、バイオマーカー(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現、例えば、IHCを使用して判定されるもの)は、同じレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比べて、医薬品(例えば、抗PD-L1抗体)での治療に対して応答性である可能性が増加していると予測される患者を識別するために使用される。一実施形態では、バイオマーカーの存在は、バイオマーカーの存在を有しない患者と比べて、医薬品での治療に応答する可能性がより高い患者を識別するために使用される。別の実施形態では、バイオマーカーの存在は、患者が、バイオマーカーの存在を有しない患者に対して、医薬品での治療から有益性を被る可能性が増加していることを判定するために使用される。
【0111】
「奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態では、「奏効率(ORR)」は、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0112】
「完全奏効」または「CR」により、治療に応じた、癌の全ての徴候の消滅(例えば、全ての標的病巣の消滅)が意図される。これは、必ずしも癌が治癒されたことを意味しない。
【0113】
「持続的応答」とは、治療の中止後の腫瘍成長の低減への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、医薬投与期の開始時のサイズと比較して同じサイズのままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続奏効は、治療期間と少なくとも同じか、治療期間の長さの少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、もしくは3.0倍か、またはそれ以上の期間を有する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「癌再発を低減または阻害すること」とは、腫瘍もしくは癌の再発、または腫瘍もしくは癌の進行を低減または阻害することを意味する。本明細書に開示されるように、癌再発及び/または癌進行には、癌転移が含まれるが、これに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」は、治療に応じた、1つ以上の腫瘍もしくは病巣のサイズ、または身体内の癌の範囲の低下を指す。例えば、いくつかの実施形態において、PRは、ベースラインSLDを参照として、標的病巣の最長径の合計(SLD)における少なくとも30%の低下を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「安定疾患」または「SD」は、治療開始以来の最小のSLDを参照として、PRと言えるほどの十分な標的病巣の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」は、治療開始以来記録された最小のSLD、または1つ以上の新たな病変の存在を参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
【0118】
「生存期間」という用語は、患者が生存していることを指し、全生存期間、ならびに無増悪生存期間を含む。
【0119】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中及び治療後の時間の長さを指し、その間、治療されている疾患(例えば、癌)は悪化しない。無進行生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を経験した時間量、ならびに患者が安定疾患を経験した時間量を含んでもよい。
【0120】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後に生きている可能性が高い、群における個体の割合を指す。
【0121】
「生存延長」による意味は、治療されていない患者に対して(すなわち、医薬品で治療されていない患者に対して)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者に対して、かつ/または抗腫瘍剤で治療された患者に対して、治療された患者における全生存期間または無増悪生存期間が増加することである。
【0122】
本明細書で使用される場合、「実質的に同じ」という用語は、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間の差異を生物学的及び/または統計学的に有意性がほとんどないか、または全くないと見なすような、2つの数値間の十分に程度の高い類似性を意味する。該2つの値の間の差異は、参照/比較値の関数として、例えば、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/または約10%未満である。
【0123】
「実質的に異なる」という語句は、本明細書で使用される場合、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間の差異を統計学的に有意性があると見なすような、2つの数値間の十分に程度の高い差異を意味する。該2つの値の間の差異は、参照/比較分子に対する値の関数として、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/または約50%超である。
【0124】
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的に複合または融合され、それが複合または融合する試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位標識または蛍光標識)であり得るか、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識化の例には、蛍光標識化された二次抗体を使用した一次抗体の検出、及び蛍光標識化されたストレプトアビジンを用いて検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識化が含まれる。
【0125】
「治療有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を治療または予防するための治療剤の量を指す。癌の場合、治療有効量の治療剤は、癌細胞の数を低減、原発腫瘍サイズを低減、末梢器官への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長のある程度の阻害、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が既存の癌細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。癌治療に関して、インビボでの有効度は、例えば生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(例えば、CR及びPR)、奏効期間、及び/または生活の質を評価することにより測定され得る。
【0126】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から恩恵を受けることになる任意の状態である。
【0127】
「癌」及び「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性癌及び悪性癌が含まれる。「早期癌」または「早期腫瘍」とは、侵襲性もしくは転移性でないか、または0期、1期、もしくは2期癌として分類される癌を意味する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン細胞腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかる癌のより具体的な例としては、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌(例えば、移行上皮細胞または尿路上皮癌、筋層非浸潤性膀胱癌、筋層浸潤性膀胱癌、及び転移性膀胱癌)及び非尿路上皮膀胱癌)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮系扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝臓癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌または腎臓(renal)癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉腫、精巣癌、食道癌、胆管の腫瘍、ならびに頭頸部癌及び多発性骨髄腫が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、トリプルネガティブ転移性乳癌であり、これには、局所再発性または転移性疾患(局所再発性疾患は、治療意図での摘出を受けることができない)を伴う、任意の組織学的に確認されたトリプルネガティブ(ER-、PR-、HER2-)乳腺癌が含まれる。いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌である。特定の実施形態では、膀胱癌は、尿路上皮膀胱癌である。
【0128】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性または良性にかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるように相互排他的ではない。
【0129】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0130】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、薬学的製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のため、または臨床病理過程中のいずれかに実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗PD-L1抗体及び/または抗PD-1抗体)は、疾患の発達を遅らせるか、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0132】
「抗癌療法」という用語は、癌の治療において有用な療法を指す。抗癌療法剤の例としては、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療するための他の薬剤、例えば、抗CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ))COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、他の生物活性及び有機化学剤などのうちの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組み合わせも、本発明に含まれる。
【0133】
本明細書で使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射活性アイソトープ(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射活性アイソトープ)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアミシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、ミトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば、核酸分解酵素、抗生物質、及び細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素(その断片及び/または変異型を含む)、ならびに下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗癌剤を含むことを意図する。他の細胞毒性剤が下に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0134】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(とりわけクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンω1I(例えば、Nicolaou et al.,.Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい);ダイネミシンAを含む、ダイネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質クロモフォア)などの抗生物質、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖錯体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセルを含むタキサン(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(商標)クレモホールを含有しない、アルブミン操作されたパクリタキセルのナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及びリポプラチンなどの白金または白金ベースの化学療法剤及び白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略語)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボビンと組み合わせてオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの略語)などの上記のうちの2つ以上の組み合わせが含まれる。追加の化学療法剤には、例えばマイタンシノイド(例えば、DM1)、ならびにオーリスタチンMMAE及びMMAFなどの抗体薬物複合体として有用な細胞毒性剤が含まれる。
【0135】
「化学療法剤」には、癌の成長を促進し得るホルモン作用を制御、低減、遮断、または阻害するために作用する「抗ホルモン薬剤」または「内分泌治療剤」も含まれ、しばしば全身性または体全体の治療の形態にある。それら自体がホルモンであってもよい。例には、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御薬(ERD);卵巣を抑制するかまたは活動停止させるように機能する薬剤、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン、及びトリプテレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミド、及びビカルタミドなどの他の抗アンドロゲン薬;ならびに、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎内のエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤が含まれる。加えて、化学療法剤のかかる定義には、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、またはACTONEL(登録商標)リセドロネートなどのビスホスホネート;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び表皮成長因子受容体(EGFR)などの異所(abherant)細胞増殖に関係があるとされるシグナル伝達系路における遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ジトシル酸ラパチニブ(別名、GW572016、ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0136】
化学療法剤としては、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体-薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も挙げられる。本発明の化合物との併用で薬剤として治療可能性を有するさらなるヒト化モノクローナル抗体としては、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組換え全長IgG1 λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が挙げられる。
【0137】
化学療法剤としては、EGFRに結合するか、または他の様式でそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も挙げられ、これは「EGFRアンタゴニスト」とも称される。かかる薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号(Mendelsohn et al.)を参照されたい)、ならびにそれらの変異型、例えば、キメラ化225(C225またはセツキシマブ、ERBUTIX(登録商標))及び再成形ヒト225(H225)(WO96/40210(Imclone Systems Inc.)を参照されたい)、IMC-11F8、完全ヒトEGFR標的抗体(Imclone);II型変異EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載のEGFRに結合するヒト化抗体及びキメラ抗体;ならびにEGFRに結合するヒト抗体、例えば、ABX-EGFまたはパニツムマブ(WO98/50433(Abgenix/Amgen)を参照されたい);EMD55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer 32A:636-640(1996));EGFR結合においてEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対して指向されたヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3、及びE7.6.3として既知であり、かつUS6,235,883に記載の完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);ならびにmAb806またはヒト化mAb806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性薬に複合され得、それにより免疫複合体を生成することができる(例えば、EP659,439A2、Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公報、WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載される化合物などの小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals))、PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、二塩酸塩、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca)、BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール)、(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド)、EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU 5271、Pfizer)、及び二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2-メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
【0138】
化学療法剤としては、前段落に記載のEGFR標的薬物を含む「チロシンキナーゼ阻害剤」;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;CP-724,714、ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤(Pfizer及びOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));または以下の特許公報:米国特許第5,804,396号、WO1999/09016(American Cyanamid)、WO1998/43960(American Cyanamid)、WO1997/38983(Warner Lambert)、WO1999/06378(Warner Lambert)、WO1999/06396(Warner Lambert)、WO1996/30347(Pfizer,Inc)、WO1996/33978(Zeneca)、WO1996/3397(Zeneca)、及びWO1996/33980(Zeneca)のいずれかに記載のものも挙げられる。
【0139】
化学療法剤としては、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにこれらの薬学的に許容される塩も挙げられる。
【0140】
化学療法剤としては、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバリン酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、プロピオン酸アクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾン-17-プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン及び酢酸フルプレドニデン;免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAIDs)、例えばフェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)及びそのD体形態(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);抗リウマチ薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノシクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断剤、例えばエタネルセプト(ENBREL(登録商標)インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セトリズマブペゴール(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、インターロイキン1(IL-1)遮断剤、例えばアナキンラ(KINERET(登録商標))、T細胞共刺激遮断剤、例えばアバタセプト(ORENCIA(登録商標))、インターロイキン6(IL-6)遮断剤、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断剤、例えばレブリキズマブ;インターフェロンアルファ(IFN)遮断剤、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断剤、例えばrhuMAb Beta7;IgE経路遮断剤、例えば抗M1プライム;分泌ホモ三量体LTa3及び膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断剤、例えば抗リンホトキシンアルファ(LTa);種々の調査剤、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH3、及びファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルチシン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));ならびに上皮成長因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標));ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0141】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較すると腫瘍細胞に対して細胞毒性が低く、酵素によってより活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)、及びStella et al.“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞毒性遊離薬物へと変換され得る。本発明において使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞毒性薬の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0142】
「成長阻害剤」は、本明細書で使用されるとき、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞(例えば、その成長がPD-L1発現に依存する細胞)の成長及び/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S相における細胞の割合を著しく低減するものであってよい。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM相遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばアントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止する薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤は、S期停止にも波及する。さらなる情報は、Murakamiらによる“The Molecular Basis of Cancer,”Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗癌薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
【0143】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力を制限するか、または細胞を完全に破壊するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。投与量及び治療期間を判定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療剤は、1回投与として与えられ、典型的な投与量は、1日当たり10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0144】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、交換可能に使用され、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。特定の実施形態において、本明細書の患者は、ヒトである。
【0145】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、対象(例えば、患者)への化合物(例えば、アンタゴニスト)または薬学的組成物(例えば、アンタゴニストを含む薬学的組成物)の投薬量の供与方法を意味する。投与は、非経口的、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所的治療が所望される場合は、病変内投与を含む任意の好適な手段によることができる。非経口的注入には、例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、任意の好適な経路により、例えば、投与が短時間であるか、または慢性的であるかに部分的に応じた、静脈内注射または皮下注射などの注射により、行うことができる。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0146】
「同時に」という用語は、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために本明細書で使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与の中止後に続くときの投薬レジメンを含む。
【0147】
「低減する」または「阻害する」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少を生じる能力を意味する。低減または阻害は、治療されている障害の症状、転移の存在またはサイズ、または原発腫瘍のサイズに対して言及し得る。
【0148】
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療剤製品のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0149】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0150】
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、癌)の治療のための医薬品、または本明細書に記載のバイオマーカー(例えば、PD-L1)を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージ、もしくは容器)またはキットである。特定の実施形態では、製造物またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして、推奨、流通、または販売される。
【0151】
「に基づく」という語句は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、例えば治療決定、添付文書上で提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針などを伝えるために使用されることを意味する。
【0152】
III.方法
A.PD-L1の発現レベルに基づく診断方法
癌(例えば、膀胱癌、例えば、尿路上皮膀胱癌(UBC))に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が本明細書に提供される。癌(例えば、UBC)に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測する方法も、本明細書に提供される。癌(例えば、UBC)に罹患している患者のための療法を選択する方法もさらに本明細書に提供される。前述の方法のいずれも、本明細書に提供されるバイオマーカーの発現レベル、例えば、腫瘍試料中、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1発現に基づいてもよい。方法はいずれも、腫瘍試料サブタイプの判定にさらに基づいてもよい。方法はいずれも、患者にPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することをさらに含んでもよい。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含んでもよい。
【0153】
本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法を提供し、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。例えば、いくつかの事例では、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0154】
本発明は、膀胱癌に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測する方法をさらに提供し、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。例えば、いくつかの事例では、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0155】
本発明はさらに、膀胱癌に罹患している患者のための療法を選択する方法も提供し、該方法は、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することと、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。例えば、いくつかの事例では、該方法は、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、該方法は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。
【0156】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞は、患者から得られた腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上)を網羅し得る。例えば、いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約1%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約10%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約15%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約20%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約25%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約30%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約35%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約40%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約50%以上を網羅し得る。
【0157】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)は、PD-L1の検出可能な発現レベルを発現し得る。
【0158】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することをさらに含む。PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載される任意のPD-L1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0159】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。なお他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0160】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。なお別の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0161】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0162】
前述の事例のいずれにおいても、膀胱癌は、尿路上皮膀胱癌であり得、これには筋層非浸潤性尿路上皮膀胱癌、筋層浸潤性尿路上皮膀胱癌、または転移性尿路上皮膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、尿路上皮膀胱癌は、転移性尿路上皮膀胱癌である。
【0163】
バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の好適な基準に基づいて、定性的かつ/または定量的に判定され得る。
【0164】
前述の方法のいずれにおいても、患者から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの事例では、試料は、組織試料である。いくつかの事例では、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例では、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。前述の事例のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0165】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、追加のバイオマーカーの存在及び/または発現レベルを判定することを含み得る。いくつかの事例では、追加のバイオマーカーは、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれるWO2014/151006に記載されるバイオマーカーである。いくつかの事例では、追加のバイオマーカーは、循環Ki-67+CD8+T細胞、インターフェロンガンマ、MCP-1または骨髄細胞関連遺伝子から選択される。いくつかの事例では、骨髄細胞関連遺伝子は、IL18、CCL2、及びIL1Bから選択される。
【0166】
試料中の本明細書に記載される様々なバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、その多くは当該技術分野で既知であり、当業者に理解されており、これには、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅型検出方法(例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなどを含む)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、及び/または遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つが含まれるが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.,eds.,1995,Current Protocols In Molecular Biology,Units 2(ノーザンブロット法)、4(サザンブロット法)、15(免疫ブロット法)、及び18(PCR分析)で見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイなどの多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0167】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、バイオマーカーのタンパク質発現レベルを判定することによって測定される。特定の事例では、該方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、生体試料を、本明細書に記載されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体(例えば、抗PD-L1抗体)と接触させることと、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの事例では、抗体を使用して、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療に適格な対象、例えば個体の選択のためのバイオマーカーを選択する。タンパク質発現レベルを測定する、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意の方法を使用してもよい。例えば、いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、放射免疫測定法、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞及び/または腫瘍細胞において判定される。
【0168】
特定の事例では、バイオマーカータンパク質(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であると示されている。これらの方法、アッセイ、及び/またはキットのいずれかのいくつかの事例では、バイオマーカーは、PD-L1である。1つの事例では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いて試料(例えば、患者から得られた腫瘍試料)のIHC分析を行うことと、(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを判定することとを含む方法を使用して判定される。いくつかの事例では、IHC染色強度は、参照と比較して判定される。いくつかの事例では、参照は、参照値である。いくつかの事例では、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料、非癌患者由来の組織試料、またはPD-L1陰性腫瘍試料)である。
【0169】
IHCは、形態的染色及び/またはインサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの追加の技法と組み合わせて実施されてもよい。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合が直接判定される。この直接アッセイは、さらなる抗体相互作用を伴わずに可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、複合していない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識に複合する場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
【0170】
IHCに使用される一次抗体及び/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されることになる。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリーに群分けされ得る:(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、1251、H、及び131I、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フェコシリスリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、または市販のフルオロフォア、例えば、SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7、ならびに/または上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない蛍光標識、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、これらのうちのいくつかの概説を提供する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ、例えば、米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0171】
酵素と基質との組み合わせの例としては、例えば、基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸を有するアルカリ性ホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの一般的概説に関して、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0172】
試験片は、例えば手動で、または自動化染色装置(例えば、VentanaベンチマークXTまたはベンチマークULTRA装置)を使用して調製され得る(例えば、以下の実施例1を参照されたい)。このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。次いで、例えば顕微鏡を使用してスライド評価が判定され、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準が利用され得る。1つの事例では、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は概して、(試料中に存在し得る間質または周辺組織と対照的に)腫瘍細胞(複数可)及び/または組織において判定または評価されることを理解されたい。いくつかの事例では、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において判定または評価することを含むことが理解される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在は、試料の0%超において、試料の少なくとも1%において、試料の少なくとも5%において、試料の少なくとも10%において、試料の少なくとも15%において、試料の少なくとも15%において、試料の少なくとも20%において、試料の少なくとも25%において、試料の少なくとも30%において、試料の少なくとも35%において、試料の少なくとも40%において、試料の少なくとも45%において、試料の少なくとも50%において、試料の少なくとも55%において、試料の少なくとも60%において、試料の少なくとも65%において、試料の少なくとも70%において、試料の少なくとも75%において、試料の少なくとも80%において、試料の少なくとも85%において、試料の少なくとも90%において、試料の少なくとも95%において、またはそれ以上でIHCによって検出される。試料は、本明細書に記載される基準のいずれか(例えば、表2を参照されたい)を使用して、例えば病理学者または自動化画像分析によってスコア化され得る。
【0173】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかのいくつかの事例では、PD-L1は、抗PD-L1診断用抗体(すなわち、一時抗体)を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、直接標識される。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、間接的に標識される。
【0174】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの事例では、PD-L1の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせにおいてIHCを使用して検出される。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるがこれらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの事例では、PD-L1に対する染色は、膜染色、細胞質染色、及びこれらの組み合わせとして検出される。他の事例では、PD-L1の不在は、試料において不在または染色がないこととして検出される。
【0175】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、核酸発現レベルであり得る。いくつかの事例では、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA-seq、多重qPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはインサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)を使用して判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの組み合わせにおいて判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞において判定される。
【0176】
細胞中のmRNAの評価方法は周知であり、該方法として、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技法など)、ならびに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)が挙げられる。加えて、かかる方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを判定する(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)ことを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が判定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成する。例えば、その発現がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法の臨床的利益の増加または低減と相関する様々な遺伝子の選択が、固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0177】
ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。ある特定の事例では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在及び/または発現レベル/量を判定するためのさらなる開示が本明細書に記載されている。
【0178】
ある特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または複数の試料の組み合わせである。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、基準試料が癌の初期診断中に得られる場合、かつ癌が転移性癌になったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0179】
特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1つ以上の健常な個体由来の複数の試料の組み合わせである。特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、癌)を有する1つ以上の個体由来の複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、癌)を有する1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0180】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を示す。特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較した、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0181】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法などの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
【0182】
B.腫瘍サブタイプの評価に基づく診断方法
独立して、または上記のA項で提示される前述の方法のうちのいずれかと組み合わせて使用され得る、腫瘍サブタイプの評価に基づいて、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が本明細書に提供される。例えば、本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法を提供し、該方法は、患者から得られた腫瘍の試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、ルミナルサブタイプ腫瘍は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかの判定に使用することができる。他の事例では、例えば、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16個)のレベルの増加及び/または減少は、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて使用して、癌(膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定することができる。これらの方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することをさらに含んでもよい。これらの方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することもさらに含んでもよい。
【0183】
腫瘍サブタイプの評価に基づいて、癌(例えば、膀胱癌((例えば、UBC))に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療への応答性を予測する方法は、独立して、または上記のA項に提示される前述の方法のいずれかと組み合わせて使用され得る。例えば、本発明は、膀胱癌に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを予測する方法を提供し、該方法は、患者から得られた腫瘍の試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、ルミナルサブタイプ腫瘍は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかの判定に使用することができる。他の事例では、例えば、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16個)のレベルの増加及び/または減少は、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて、癌(膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを予測することができる。方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することをさらに含んでもよい。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含んでもよい。
【0184】
腫瘍サブタイプの評価に基づいてPD-L1軸結合アンタゴニストを選択することを含む、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者のための療法を選択する方法は、独立して、または上記のA項に提示される前述の方法のいずれかと組み合わせて使用され得る。いくつかの事例では、該方法は、患者から得られた腫瘍の試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、腫瘍がルミナルサブタイプ腫瘍であるという判定に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストが選択される。いくつかの事例では、腫瘍がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストが選択される。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルを、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者のための適切の療法としてPD-L1軸結合アンタゴニストを選択することに使用することができる。他の事例では、例えば、バイオマーカーの参照レベルと比べた、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16個)のレベルの増加及び/または減少は、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて、癌(例えば、膀胱癌(例えば、UBC))に罹患している患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニストの選択を知らせることができる。方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することをさらに含んでもよい。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含んでもよい。
【0185】
前述の方法のいずれにおいても、表1に記載されるバイオマーカーは、表1に記載されるバイオマーカーの参照レベルと比べて、約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上)増加及び/または減少していると判定されている。例えば、いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約1%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約5%以上増加及び/または減少していると判定された。他の事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約10%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約15%以上増加及び/または減少していると判定された。なお他の事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約20%以上増加及び/または減少していると判定された。さらなる事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約25%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約30%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約35%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約40%以上増加及び/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカーのレベルは、約50%以上増加及び/または減少していると判定された。
【0186】
前述の事例のいずれにおいても、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍(例えば、UBCルミナルサブタイプ腫瘍)であると判定されている。いくつかの事例では、腫瘍は、ルミナルサブタイプII腫瘍であると判定されている。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のB群(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカー、及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のB群(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカー、及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカーのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、及び/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0187】
いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とKRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルの減少との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とGATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とERBB2及び/もしくはESR2のレベルの増加との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。
【0188】
いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカーのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、及び/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0189】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、ERBB2、FGFR3、KRT5、KRT14、EGFR、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)変化したと判定されている。
【0190】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0191】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0192】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、及びERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、及びEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0193】
他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、該miRNAの参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)変化したと判定されている。他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている。他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5p及びmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。
【0194】
なお他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、及びTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中の少なくともCXCL9及びCXCL10の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。他の事例では、ルミナルサブタイプ腫瘍は、ルミナルクラスターIIサブタイプ腫瘍である。
【0195】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することをさらに含む。PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載される任意のPD-L1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0196】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。なお他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0197】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。なお別の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0198】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0199】
前述の事例のいずれにおいても、膀胱癌は、尿路上皮膀胱癌(UBC)であり得、これには筋層非浸潤性尿路上皮膀胱癌、筋層浸潤性尿路上皮膀胱癌、または転移性尿路上皮膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、尿路上皮膀胱癌は、転移性尿路上皮膀胱癌である。
【0200】
バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の好適な基準に基づいて、定性的かつ/または定量的に判定され得る。
【0201】
前述の方法のいずれにおいても、患者から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの事例では、試料は、組織試料である。いくつかの事例では、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例では、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。前述の事例のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0202】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、追加のバイオマーカーの存在及び/または発現レベルを判定することを含み得る。いくつかの事例では、追加のバイオマーカーは、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれるWO2014/151006に記載されるバイオマーカーである。いくつかの事例では、追加のバイオマーカーは、循環Ki-67+CD8+T細胞、インターフェロンガンマ、MCP-1または骨髄細胞関連遺伝子から選択される。いくつかの事例では、骨髄細胞関連遺伝子は、IL18、CCL2、及びIL1Bから選択される。
【0203】
試料中の本明細書に記載される様々なバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、その多くは当該技術分野で既知であり、当業者に理解されており、これには、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMAなどを含む)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、及び/または遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つが含まれるが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.,eds.,1995,Current Protocols In Molecular Biology,Units 2(ノーザンブロット法)、4(サザンブロット法)、15(免疫ブロット法)、及び18(PCR分析)で見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイなどの多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0204】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、バイオマーカーのタンパク質発現レベルを判定することによって測定される。特定の事例では、該方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、生体試料を、本明細書に記載されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体(例えば、抗PD-L1抗体)と接触させることと、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの事例では、抗体を使用して、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療に適格な対象(例えば個体の選択のためのバイオマーカー)を選択する。タンパク質発現レベルを測定する、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意の方法を使用してもよい。例えば、いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、放射免疫測定法、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞及び/または腫瘍細胞において判定される。
【0205】
特定の事例では、バイオマーカータンパク質(例えば、PD-L1)の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であると示されている。これらの方法、アッセイ、及び/またはキットのいずれかのいくつかの事例では、バイオマーカーは、PD-L1である。1つの事例では、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いて試料(例えば、患者から得られた腫瘍試料)のIHC分析を行うことと、(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを判定することとを含む方法を使用して判定される。いくつかの事例では、IHC染色強度は、参照と比較して判定される。いくつかの事例では、参照は、参照値である。いくつかの事例では、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料、非癌患者由来の組織試料、またはPD-L1陰性腫瘍試料)である。
【0206】
IHCは、形態的染色及び/またはインサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの追加の技法と組み合わせて実施されてもよい。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合が直接判定される。この直接アッセイは、さらなる抗体相互作用を伴わずに可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、複合していない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識に複合する場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
【0207】
IHCに使用される一次抗体及び/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識されることになる。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリーに群分けされ得る:(a)放射性同位体、例えば、35S、14C、1251、H、及び131I、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フェコシリスリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、または市販のフルオロフォア、例えば、SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7、ならびに/または上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない蛍光標識、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、これらのうちのいくつかの概説を提供する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ、例えば、米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0208】
酵素と基質との組み合わせの例としては、例えば、基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸を有するアルカリ性ホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの一般的概説に関して、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0209】
試験片は、例えば手動で、または自動化染色装置(例えば、VentanaベンチマークXTまたはベンチマークULTRA装置)を使用して調製され得る(例えば、以下の実施例1を参照されたい)。このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。次いで、例えば顕微鏡を使用してスライド評価が判定され、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準が利用され得る。1つの事例では、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は概して、(試料中に存在し得る間質または周辺組織と対照的に)腫瘍細胞(複数可)及び/または組織において判定または評価されることを理解されたい。いくつかの事例では、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において判定または評価することを含むことが理解される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の存在は、試料の0%超において、試料の少なくとも1%において、試料の少なくとも5%において、試料の少なくとも10%において、試料の少なくとも15%において、試料の少なくとも15%において、試料の少なくとも20%において、試料の少なくとも25%において、試料の少なくとも30%において、試料の少なくとも35%において、試料の少なくとも40%において、試料の少なくとも45%において、試料の少なくとも50%において、試料の少なくとも55%において、試料の少なくとも60%において、試料の少なくとも65%において、試料の少なくとも70%において、試料の少なくとも75%において、試料の少なくとも80%において、試料の少なくとも85%において、試料の少なくとも90%において、試料の少なくとも95%において、またはそれ以上でIHCによって検出される。試料は、本明細書に記載される基準のいずれか(例えば、表2を参照されたい)を使用して、例えば病理学者または自動化画像分析によってスコア化され得る。
【0210】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかのいくつかの事例では、PD-L1は、抗PD-L1診断用抗体を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、直接標識される。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、間接的に標識される。
【0211】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの事例では、PD-L1の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせにおいてIHCを使用して検出される。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるがこれらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの事例では、PD-L1に対する染色は、膜染色、細胞質染色、及びこれらの組み合わせとして検出される。他の事例では、PD-L1の不在は、試料において不在または染色がないこととして検出される。
【0212】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、核酸発現レベルであり得る。いくつかの事例では、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA-seq、多重qPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはインサイツハイブリダイゼーション(例えば、FISH)を使用して判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの組み合わせにおいて判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞において判定される。いくつかの事例では、バイオマーカー(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞において判定される。
【0213】
細胞中のmRNAの評価方法は周知であり、該方法として、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技法など)、ならびに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)が挙げられる。加えて、かかる方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを判定する(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)ことを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が判定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成する。例えば、その発現がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法の臨床的利益の増加または低減と相関する様々な遺伝子の選択が、固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0214】
ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。ある特定の事例では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在及び/または発現レベル/量を判定するためのさらなる開示が本明細書に記載されている。
【0215】
ある特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または複数の試料の組み合わせである。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、基準試料が癌の初期診断中に得られる場合、かつ癌が転移性癌になったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0216】
特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1つ以上の健常な個体由来の複数の試料の組み合わせである。特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、癌)を有する1つ以上の個体由来の複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、癌)を有する1つ以上の個体由来のプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0217】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を示す。特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較した、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0218】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法などの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカー(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
【0219】
C.治療方法
本発明は、癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))に罹患している患者を治療する方法を提供する。いくつかの事例では、本発明の方法は、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗癌療法剤を患者に投与することを含む。本明細書に記載される(例えば、以下のD項を参照されたい)か、当該技術分野で既知であるPD-L1軸結合アンタゴニストのいずれも、該方法に使用され得る。いくつかの事例では、該方法は、患者から得られた試料中(例えば、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞中)のPD-L1の存在及び/または発現レベルを判定することと、例えば、本明細書に記載される(例えば、A項、B項、または以下の実施例に記載されるもの)か、または当該技術分野で既知の方法を使用して、試料中のPD-L1の存在及び/または発現レベルに基づいて抗癌療法剤を患者に投与することとを伴う。
【0220】
本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されている。
【0221】
本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法をさらに提供し、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍であると判定されている。いくつかの事例では、腫瘍は、ルミナルサブタイプII腫瘍であると判定されている。
【0222】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞は、患者から得られた腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を網羅し得る。例えば、いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約1%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約10%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約15%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約20%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約25%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約30%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約35%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約40%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約50%以上を網羅し得る。
【0223】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)は、PD-L1の検出可能な発現レベルを発現し得る。
【0224】
本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定され、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。例えば、いくつかの事例では、腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、表1に列挙されるバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個)のレベルの変化を使用して、腫瘍サブタイプの判定を援助してもよい。いくつかの事例では、腫瘍試料(例えば、UBC腫瘍試料)は、ルミナルサブタイプ腫瘍(例えば、ルミナルサブタイプII腫瘍)である。本発明は、膀胱癌に罹患している患者を治療する方法を提供し、該方法は、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍(例えば、UBCルミナルサブタイプ腫瘍)であると判定されている。いくつかの事例では、腫瘍は、ルミナルサブタイプII腫瘍であると判定されている。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のB群(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカー、及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、表1のA群(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のB群(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のバイオマーカー、表1のC群(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)のバイオマーカー、及び表1のD群(例えば、ERBB2、ESR2)から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2つ)のバイオマーカーの発現レベルを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカーのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、及び/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0225】
いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とKRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルの減少との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とGATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とERBB2及び/もしくはESR2のレベルの増加との組み合わせを使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカーの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、及びCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、及び/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、及びEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、及びE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2及び/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカーのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、及び/またはmiRNAレベルである。
【0226】
前述の方法のいずれにおいても、PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載される任意のPD-L1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0227】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。なお他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0228】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。なお別の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0229】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの事例では、第2の治療剤は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストである。いくつかの事例では、第2の治療剤は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストである。
【0230】
前述の事例のいずれにおいても、尿路上皮膀胱癌は、例えば、筋層非浸潤性尿路上皮膀胱癌、筋層浸潤性尿路上皮膀胱癌、または転移性尿路上皮膀胱癌であり得る。
【0231】
さらなる態様において、本発明は、医薬品の製造または調製におけるPD-L1軸結合アンタゴニストの使用を提供する。1つの事例では、医薬品は、癌の治療のためのものである。さらなる事例では、医薬品は、癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))に罹患している患者に有効量の該医薬品を投与することを含む、癌の治療方法における使用のためのものである。1つのかかる事例では、該方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、以下に記載されるものを個体に投与することをさらに含む。
【0232】
本明細書に記載される方法に用いられる組成物(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト)は、例えば静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、髄腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、経皮的に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射により)、点眼により、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、を含む任意の好適な方法により投与され得る。本明細書に記載される方法に用いられる組成物はまた、全身または局所に投与することができる。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて多様であり得る。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。投薬は、任意の好適な経路により、例えば、投与が短時間であるか、または慢性的であるかに部分的に応じた、静脈内注射または皮下注射などの注射により、行うことができる。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0233】
本明細書に記載されるPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、及び/または小分子)(任意の追加の治療剤)は、良好な医療のための原則と一致する形で、製剤化、投薬、及び投与され得る。これに関連して考慮する要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に既知である他の要因が含まれる。PD-L1軸結合アンタゴニストは、その必要はないが、任意に、問題の障害を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤と共に製剤化されるか、それらと同時に投与される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するPD-L1軸結合アンタゴニストの量、障害または治療の種類、及び上で考察される他の要因に左右される。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%で、または経験的/臨床的に適切であると判定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0234】
癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))の予防または治療のため、本明細書に記載されるPD-L1軸結合アンタゴニストの適切な投薬量(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用されるとき)は、治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、PD-L1軸結合アンタゴニストが予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのかどうか、治療経験、患者の臨床歴及びPD-L1軸結合アンタゴニストへの応答、ならびに主治医の裁量に左右されることになる。PD-L1軸結合アンタゴニストは、一度に、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。1つの典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲に及び得る。病態に応じた数日間以上にわたる反復投与では、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されることになる。かかる用量は、例えば、毎週または3週間毎で(例えば、患者が、PD-L1軸結合アンタゴニストの用量を、例えば約2回~約20回、または例えば約6回受けるように)断続的に投与されてもよい。より高い初回負荷量、続いて1回以上のより低い用量が、投与されてもよい。しかしながら、他の投与量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易に監視される。
【0235】
例えば、一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト抗体は、1回またはそれ以上の投与によるかどうかにかかわらず、約0.01~約50mg/患者の体重kgの範囲であろう。いくつかの事例では、使用される抗体は、約0.01mg/kg~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約25mg/kg、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、または約0.01mg/kg~約1mg/kgであり、これらは例えば、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、または毎月に投与される。いくつかの事例では、抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投与量レジメンも有用であり得る。1つの事例では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、21日周期(3週間毎、q3w)の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体MPDL3280Aは、3週間毎(q3w)に、静脈内に1200mgで投与される。この用量は、注入などの、単回用量または複数回用量(例えば、2または3回用量)で投与され得る。併用治療において投与される本抗体の用量は、単剤治療と比較して減少し得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
【0236】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することをさらに伴う。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、化学療法または化学療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、放射線療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、標的療法または標的療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、免疫療法または免疫療法剤、例えばモノクローナル抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、第2の治療剤は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストである。いくつかの事例では、第2の治療剤は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストである。
【0237】
上記のかかる併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じかまたは別個の製剤中に含まれる)及びPD-L1軸結合アンタゴニストの投与が、追加の治療剤(複数可)の投与の前、それと同時、かつ/またはそれに続いて発生し得る、個別投与を包含する。1つの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストの投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1カ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に発生する。
【0238】
理論に拘束されることを意図することなく、活性化共刺激分子を促進することまたは負の共刺激分子を阻害することによってT細胞刺激を増強することは、腫瘍細胞死を促進し得、それにより癌を治療するか、その進行を遅らせると考えられている。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、活性化共刺激分子には、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127が含まれ得る。いくつかの事例では、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、阻害性共刺激分子には、CTLA-4(別名、CD152)、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼが含まれ得る。いくつかの事例では、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストは、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0239】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CTLA-4(別名、CD152)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、イピリムマブ(別名、MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トレメリムマブ(別名、チシリムマブまたはCP-675,206)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、B7-H3(別名、CD276)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MGA271と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、TGF-ベータに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(別名、CAT-192)、フレソリムマブ(別名、GC1008)、またはLY2157299と併せて投与されてもよい。
【0240】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞毒性T細胞またはCTL)の養子移入を含む治療と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えばドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HERCREEMプロトコル(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照されたい)を含む治療と併せて投与されてもよい。
【0241】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD137(別名、TNFRSF9、4-1BB、またはILA)に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ウレルマブ(別名、BMS-663513)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD40に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CP-870893と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、OX40(別名、CD134)に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD27に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CDX-1127と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、IDOアンタゴニストと共にあるのは、1-メチル-D-トリプトファン(別名、1-D-MT)である。
【0242】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗体薬物複合体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、抗体薬物複合体は、メルタンシンまたはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗NaPi2b抗体-MMAE複合体(別名、DNIB0600AまたはRG7599)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トラスツズマブエムタンシン(別名、T-DM1、アド-トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、DMUC5754Aと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体薬物複合体、例えばMMAEと複合されたEDNBRに対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。
【0243】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗血管新生剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、VEGFに対して指向される抗体、例えばVEGF-Aと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ベバシズマブ(別名、AVASTIN(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アンジオポエチン2(別名、Ang2)に対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MEDI3617と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗腫瘍剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CSF-1R(別名、M-CSFRまたはCD115)を標的とする薬剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗CSF-1R(別名、IMC-CS4)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファまたはインターフェロンガンマと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Roferon-A(別名、組換えインターフェロンアルファ-2a)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GM-CSF(別名、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはLEUKINE(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-2(別名、アルデスロイキンまたはPROLEUKIN(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-12と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD20を標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(別名、GA101もしくはGAZYVA(登録商標))またはリツキシマブである。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GITRを標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。
【0244】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、癌ワクチンと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、癌ワクチンは、ペプチド癌ワクチンであり、これは、いくつかの事例では、個別化ペプチドワクチンである。いくつかの事例では、ペプチド癌ワクチンは、多価長ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチン(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci.104:14-21,2013を参照されたい)である。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アジュバントと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(別名、HILTONOL(登録商標))、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-1と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HMGB1と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-10アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-4アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-13アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HVEMアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、例えば、ICOS-Lの投与によってICOSアゴニストと併せて、またはICOSに対して指向されるアゴニスト抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CX3CL1を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CXCL9を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CXCL10を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CCL5を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、LFA-1またはICAM1アゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、セレクチンアゴニストと併せて投与されてもよい。
【0245】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、標的療法と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、B-Rafの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ベムラフェニブ(別名、ZELBORAF(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ダブラフェニブ(別名、TAFINLAR(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エルロチニブ(別名、TARCEVA(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MEKの阻害剤、例えばMEK1(別名、MAP2K1)またはMEK2(別名、MAP2K2)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、コビメチニブ(別名、GDC-0973またはXL-518)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トラメチニブ(別名、MEKINIST(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、K-Rasの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、c-Metの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、オナルツズマブ(別名、MetMAb)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Alkの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、AF802(別名、CH5424802またはアレクチニブ)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BKM120と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、イデラリシブ(別名、GS-1101またはCAL-101)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ペリホシン(別名、KRX-0401)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Aktの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MK2206と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GSK690693と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GDC-0941と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、mTORの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、シロリムス(別名、ラパマイシン)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、テムシロリムス(別名、CCI-779またはTORISEL(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エベロリムス(別名、RAD001)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、リダフォロリムス(別名、AP-23573、MK-8669、またはデフォロリムス)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、OSI-027と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、AZD8055と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、INK128と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、二重PI3K/mTOR阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、XL765と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GDC-0980と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BEZ235(別名、NVP-BEZ235)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BGT226と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GSK2126458と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PF-04691502と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PF-05212384(別名、PKI-587)と併せて投与されてもよい。
【0246】
D.本発明の方法での使用のためのPD-L1軸結合アンタゴニスト
治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含む、患者における癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))を治療するか、またはその進行を遅らせる方法が本明細書に提供される。癌(例えば、膀胱癌、(例えば、尿路上皮膀胱癌))に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が本明細書に提供される。癌(例えば、膀胱癌、(例えば、尿路上皮膀胱癌))に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療に対する応答性を予測する方法が本明細書に提供される。癌(例えば、膀胱癌(例えば、尿路上皮膀胱癌))に罹患している患者のための療法を選択する方法が本明細書に提供される。前述の方法のいずれも、本明細書に提供されるバイオマーカーの発現レベル、例えば、腫瘍試料中、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1発現に基づいてもよい。
【0247】
例えば、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。PD-1(プログラム死1)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。例示的なPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q15116に示される。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも称される。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示される。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当該技術分野において「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9BQ51に示される。いくつかの事例では、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、及びPD-L2である。
【0248】
いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/またはPD-L2である。別の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合リガンドへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/またはB7-1である。別の事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L2結合リガンドパートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0249】
いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、例えば以下で記載されるような抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。MDX-1106、別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。MK-3475、別名ペンブロリズマブまたはランブロリズマブは、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。CT-011、別名hBAT、hBAT-1、またはピディリズマブは、WO2009/101611に記載される抗PD-1抗体である。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)にPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシンである。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。AMP-224、別名B7-DCIgは、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0250】
いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」に対する代替的な名称としては、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びニボルマブが挙げられる。いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号946414-94-4)である。なおさらなる事例では、配列番号1からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号2からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。なおさらなる事例では、重鎖及び/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列
と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列
と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0251】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0252】
いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、例えば、以下に記載されるものである。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、及びMEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載される抗PD-L1である。MDX-1105、別名BMS-936559は、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。本発明の使用に有用な抗PD-L1抗体の例及びその作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634号、同第WO2007/005874号、同第WO2011/066389号、米国特許第8,217,149号及びUS2013/034559に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0253】
WO2010/077634A1及びUS8,217,149に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法に使用され得る。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列及び/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。なおさらなる事例では、重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0254】
1つの事例では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
さらに式中、Xは、DまたはGであり、Xは、SまたはLであり、Xは、TまたはSである。具体的な一態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tである。別の態様において、ポリペプチドは、以下の式に従うHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む:(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)。なお別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。さらなる一態様において、フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
【0255】
なおさらなる一態様において、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖とさらに組み合わせられ、
式中、Xは、DまたはVであり、Xは、VまたはIであり、Xは、SまたはNであり、Xは、AまたはFであり、Xは、VまたはLであり、Xは、FまたはTであり、X10は、YまたはAであり、X11は、Y、G、F、またはSであり、X12は、L、Y、F、またはWであり、X13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X14は、H、V、P、T、またはIであり、X15は、A、W、R、P、またはTである。なおさらなる態様において、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。
【0256】
なおさらなる一態様において、軽鎖は、以下の式に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む:(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
【0257】
別の事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供され、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含み、さらに、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含み、さらに、
式中、Xは、DまたはGであり、Xは、SまたはLであり、Xは、TまたはSであり、Xは、DまたはVであり、Xは、VまたはIであり、Xは、SまたはNであり、Xは、AまたはFであり、Xは、VまたはLであり、Xは、FまたはTであり、X10は、YまたはAであり、X11は、Y、G、F、またはSであり、X12は、L、Y、F、またはWであり、X13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X14は、H、V、P、T、またはIであり、X15は、A、W、R、P、またはTである。具体的な態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tである。別の態様において、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。なお別の態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tであり、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。
【0258】
さらなる一態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列由来である。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0259】
なおさらなる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様において、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる事例では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0260】
なお別の事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列をさらに含むか、または、
(b)軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列をさらに含む。
【0261】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0262】
別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なお別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列由来である。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0263】
なおさらなる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様において、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる事例では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0264】
別のさらなる事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0265】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なお別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。さらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSS(配列番号27)として記載される。
【0266】
なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列由来である。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0267】
なおさらなる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様において、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、原核細胞内での産生に起因する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる事例では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0268】
さらなる一態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なおさらなる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
【0269】
なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列由来である。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
【0270】
なおさらなる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様において、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる事例では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0271】
なお別の事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(c)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列をさらに含み、かつ/または、
(d)軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列をさらに含む。
【0272】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0273】
別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。なお別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列由来である。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として記載される。
【0274】
なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列由来である。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なおさらなる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。なおさらなる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。なおさらなる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なおさらなる態様において、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なおさらなる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。なおさらなる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なおさらなる事例では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0275】
なおさらなる事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)に対して少なくとも85%の配列同一性を有するか、または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0276】
いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖及び/または軽鎖のN末端の1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基は、欠失、置換、または修飾され得る。
【0277】
なおさらなる事例では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列
に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列
に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0278】
いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0279】
いくつかの事例では、単離された抗PD-L1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)の置換によって行われ得る。
【0280】
本明細書の事例のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるようなヒトPD-L1、またはその変異型に結合することができる。
【0281】
なおさらなる事例では、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸が提供される。いくつかの事例では、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターをさらに含む。なおさらなる具体的な態様において、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞内にある。なおさらなる具体的な態様において、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なおさらなる具体的な態様において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0282】
抗体またはその結合断片は、かかる抗体または断片を生成するのに好適な条件下で、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、発現に好適な形態にある前述の抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を培養することと、抗体または断片を回収することとを含むプロセスによって作製することができる。
【0283】
上記で列挙される事例のいずれかにおける使用のためのかかるPD-L1抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L2抗体)または本明細書に記載される他の抗体(例えば、PD-L1発現レベルの検出のための抗PD-L1抗体)が、以下の1~7項に記載される特徴のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせて有し得ることが明白に企図される。
【0284】
1.抗体親和性
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0285】
1つの事例では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。1つの事例では、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて実施される。例えば、抗体に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最低濃度の(125I)標識抗原と平衡させ、次いで、抗Fab抗体をコーティングしたプレートで結合した抗体を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレートを、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(約23℃)で遮断する。非吸着プレート(Nunc#269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的のFabの段階希釈(Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、平衡が達成されたことを確実にするために、このインキュベーションをより長い時間(例えば、約65時間)にわたって継続してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間にわたる)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、PBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))を用いてプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上でプレートを10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0286】
別の事例によると、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用したアッセイは、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。1つの事例では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて抗原を5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入に続いて、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。反応速度測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBS中におよそ25μL/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10-1-1を超える場合、オンレートは、ストップフローを備える分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備える8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光器で測定される増加する抗原濃度の存在下で、PBS中の20nM抗-抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用して判定することができる。
【0287】
2.抗体断片
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたい。WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0288】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。
【0289】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。特定の事例では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0290】
抗体断片は、本明細書に記載されるような無傷抗体のタンパク質分解、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができる。
【0291】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、そのクラスまたはサブクラスが、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0292】
特定の事例では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒト化してヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはその一部)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの事例では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0293】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトについて記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「表面再構成」について記載)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)にさらに記載されている。
【0294】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0295】
4.ヒト抗体
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0296】
ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト可変領域を有する無傷ヒト抗体または無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくはその動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術を記載する)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標)技術を記載する)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する)、ならびに米国特許出願公開第US2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する)も参照されたい。かかる動物によって生成される無傷抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0297】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について記載されてきた。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されたヒト抗体については、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):937-2005(27)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,185(927):91-2005(3)にも記載されている。
【0298】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載される。
【0299】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体)は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための多様な方法が当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)にさらに記載されている。
【0300】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに組換えられ、その後、これは、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J.12:725-734(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫付与を伴うことなく、広範な非自己抗原及び自己抗原に対する単一源の抗体を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞由来の再編成されていないV遺伝子断片をクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変的なCDR3領域をコードし、インビトロでの再編成を達成することによってナイーブライブラリを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0301】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0302】
6.多重特異性抗体
上記の態様のいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位への結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の事例では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。特定の事例では、結合特異性の一方は、PD-L1へのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の事例では、二重特異性抗体は、PD-L1の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、PD-L1を発現する細胞に細胞毒性剤を局所化することもできる。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0303】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、静電ステアリング効果を操作して抗体Fcヘテロ二量体分子を作製すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい)、一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに三重特異性抗体を調製すること(例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるように)によって作製され得る。
【0304】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0305】
本明細書の抗体または断片には、PD-L1ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も含まれる。
【0306】
7.抗体変異型
特定の事例では、本発明の抗体(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体)のアミノ酸配列変異型が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせて最終構築物を得ることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特性、例えば、抗原結合性を保有することを条件とする。
【0307】
I.置換、挿入、及び欠失変異型
特定の事例では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換型変異誘発の目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表2の「好ましい置換」という見出しの下に示される。より実質的な変化は、表2の「例示的な置換」という見出しの下に示され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善された抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)もしくは補体依存性細胞毒性(CDC)についてスクリーニングされ得る。
【0308】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0309】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を伴うことになる。
【0310】
置換変異型の1つの種類は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される得られた変異型(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加及び/または免疫原性の低減)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換変異型は、親和性成熟抗体であり、これは、例えば本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異し、変異型抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0311】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR内に行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原と接触する残基において行われてもよく、結果として生じる変異型VHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの事例では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を識別する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に識別され得る。とりわけCDR-H3及びCDR-L3が標的とされることが多い。
【0312】
特定の事例では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR内で行われてもよい。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上述の変異型VH及びVL配列の特定の事例では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、または3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0313】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の識別のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、Cunningham and Wells(1989) Science,244:1081-1085に記載されている。この方法において、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)の残基または基が識別され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響されたかどうかを判定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を識別するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異型をスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを判定することができる。
【0314】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さを有するアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異型には、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が含まれる。
【0315】
II.グリコシル化変異型
特定の事例では、本発明の抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させることができる。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を作り出すかまたは除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成することができる。
【0316】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を改変してもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの事例では、特定の特性が改善された抗体変異型を作製するために、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0317】
1つの事例では、Fc領域に結合した(直接的にまたは間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異型が提供される。例えば、かかる抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって判定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸、上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0157108号及び同第US2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異型に関する出版物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号、及びWO2004/056312A1,Adams et al.,特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0318】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異型がさらに提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異型の例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型もまた提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異型は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0319】
III.Fc領域変異型
特定の事例では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され得、それによりFc領域変異型を生成され得る。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0320】
特定の事例では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより抗体のインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異型を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(ゆえに、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3中の要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい))。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性を、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合することができず、それによりCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163,1996、Cragg et al.Blood.101:1045-1052,2003、及びCragg et al.,Blood.103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の判定は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うこともできる(例えば、Petkova et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0321】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。かかるFc変異体としては、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上での置換を有するFc変異体、例えば、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0322】
FcRへの結合が改善または低減された特定の抗体変異型が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。)
【0323】
特定の事例では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0324】
いくつかの事例では、改変はFc領域内で行われ、これは、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、改変された(すなわち、改善または低減のいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす。
【0325】
半減期の延長及び母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合の改善を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))については、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換をそこに有するFc領域を含む。かかるFc変異型は、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0326】
Fc領域変異型の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0327】
IV.システイン操作された抗体変異型
特定の事例では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMab」を作製することが望ましい場合がある。特定の事例では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基がそれにより抗体の利用しやすい部位に位置付けられ、それを使用し、抗体を他の部分、例えば薬物部分またはリンカー-薬物部分に複合して、本明細書にさらに記載される免疫複合体を作製することができる。特定の事例では、以下の残基のうちの任意の1つ以上を、システインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0328】
V.抗体誘導体
特定の事例では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じかまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が規定の条件下で療法に使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない、検討事項に基づいて判定され得る。
【0329】
別の事例では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。1つの事例では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞を死滅させる温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むがこれらに限定されない、任意の波長のものであり得る。
【0330】
VI.免疫複合体
本発明は、化学療法剤もしくは薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞毒性剤と複合された、本明細書の抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)を含む免疫複合体も提供する。
【0331】
1つの事例では、免疫複合体は、抗体が、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、及び同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むがこれらに限定されない1つ以上の薬物と複合されている抗体薬物複合体(ADC)である。
【0332】
別の事例では、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合された、本明細書に記載される抗体を含む。
【0333】
別の事例では、免疫複合体は、放射性原子に複合され、放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。多様な放射性同位体が、放射性複合体の産生のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。抗体及び細胞毒性剤の複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0334】
本明細書の免疫複合体またはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、スルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬で調製されたかかる複合体を明白に企図するが、これらに限定されない。
【0335】
V.薬学的製剤
本発明に従って使用されるPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、MPDL3280A))の治療用製剤は、所望の純度を有するアンタゴニストを、凍結乾燥した製剤または水溶液の形態にある任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、保管のために調製される。製剤に関する一般情報については、例えば、Gilman et al.(eds.)The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990、A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990、Avis et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993、Lieberman et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990、Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990、及びWalters(ed.)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekker,2002を参照されたい。
【0336】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に対して非毒性であり、これには、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0337】
本明細書の製剤は、1つ超の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる医薬品の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在するアンタゴニストの量及び種類、ならびに対象の臨床的パラメータに依存する。
【0338】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及び名のカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0339】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0340】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されてなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0341】
上記の製品のうちのいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニストの代わりに、またはそれに加えて本明細書に記載される免疫複合体を含み得ることを理解されたい。
【0342】
VI.診断用キット及び製品
疾患または障害(例えば、膀胱癌を含む癌)を有する個体または患者からの試料中のバイオマーカー(例えば、例えば腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベル)の存在を判定するための1つ以上の試薬を含む診断用キットが本発明に提供される。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカーの存在は、個体がPD-L1軸結合アンタゴニストで治療された際の有効性のより高い可能性を示す。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカーの不在は、疾患を有する個体がPD-L1軸結合アンタゴニストが治療された際の有効性のより低い可能性を示す。任意で、キットには、個体が試料中のバイオマーカーを発現した場合に、キットを使用して、疾患または障害を治療するための医薬品(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A)を選択するための指示書がさらに含まれ得る。別の事例では、指示書は、個体が試料中のバイオマーカーを発現しない場合に、キットを使用して、PD-L1軸結合アンタゴニスト以外の医薬品を選択するためのものである。
【0343】
薬学的に許容される担体中のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)が、バイオマーカーの発現に基づいて疾患または障害(例えば、癌)を有する患者を治療するものであることを示す添付文書を同封して含む製品もまた本明細書に提供される。治療方法には、本明細書に開示される治療方法のいずれかが含まれる。本発明はまた、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)を含む薬学的組成物、及び該薬学的組成物が、バイオマーカー(例えば、腫瘍細胞及び/または腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1発現レベル)に基づいて疾患または障害を有する患者を治療するものであることを示す添付文書をパッケージ中に組み合わせることを含む、製品を製造する方法にも関する。
【0344】
製品に、例えば、容器と、及び容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書とを含んでもよい。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。容器は、癌の医薬品を活性薬剤として含む組成物を保持または収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)。
【0345】
製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸干渉食塩水、リンガー溶液、及び/またはデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0346】
本発明の製品はまた、例えば添付文書の形態で、組成物が、本明細書のバイオマーカー(複数可)の発現レベルに基づいて癌を治療するために使用されることを示す情報も含む。添付文書またはラベルは、例えば、紙面または電子媒体上、例えば磁気記録媒体(例えば、フロッピーディスク)、CD-ROM、汎用シリアルバス(USB)フラッシュドライブなどの任意の形態を取ってもよい。ラベルまたは添付文書はまた、キットまたは製品中の薬学的組成物及び投与剤形に関する他の情報も含み得る。
【実施例
【0347】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0348】
実施例1:腫瘍試料中のPD-L1発現の免疫組織化学的(IHC)分析
免疫組織化学(IHC):ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を脱パラフィン化した後に抗原を回収し、遮断し、一次抗PD-L1抗体と共にインキュベートした。二次抗体とのインキュベーション及び酵素着色後、切片を対比染色し、一連のアルコール及びキシレンで脱水した後、カバースリップした。以下のプロトコルをIHCに使用した。Ventana Benchmark XTまたはBenchmark Ultraシステムを使用して、以下の試薬及び物質を使用したPD-L1 IHC染色を行った。
一次抗体:抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体
検体型:腫瘍試料のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片
エピトープ回収条件:細胞条件付け、標準1(CC1、Ventana、カタログ番号950-124)
一次抗体条件:1/100、6.5μg/mL、36℃で16分間
希釈剤:抗体希釈緩衝液(担体タンパク質及びBRIJ(商標)-35を含有するトリス緩衝生理食塩水)
陰性対照:6.5μg/mLのナイーブウサギIgG(細胞シグナル伝達)または希釈剤のみ
検出:Optiviewまたはultraview Universal DAB検出キット(Ventana)、及び増幅キット(該当する場合)を製造業者(Ventana)の指示に従って使用した。
対比染色:VentanaヘマトキシリンII(カタログ番号790-2208)/ブルーイング試薬(カタログ番号760-2037)(それぞれ、4分間)
Ventanaベンチマークプロトコルは、以下の通りであった:
1.パラフィン(選択)
2.脱パラフィン化(選択)
3.細胞条件付け(選択)
4.調節剤番号1(選択)
5.標準のCC1(選択)
6.Abインキュベーション温度(選択)
7.36C Ab Inc.(選択)
8.滴定(選択)
9.自動分注(一次抗体)、及びインキュベート(16分間)
10.対比染色(選択)
11.一滴の(ヘマトキシリンII)(対比染色)の適用、カバースリップの適用、インキュベート(4分間)
12.対比染色後(選択)
13.一滴の(ブルーイング試薬)(対比染色後)の適用、カバースリップの適用、インキュベート(4分間)
14.スライドを石鹸水で洗浄して油を除去する
15.スライドを水ですすぐ
16.スライドを95%エタノール、100%エタノール、さらにキシレンで脱水する(Leica自動染色機プログラム番号9)
17.スリップで覆う
【0349】
実施例2:腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現とPD-L1軸結合アンタゴニストでの治療への応答との間の関連性
尿路上皮膀胱癌(UBC)腫瘍内の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現と、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療からの利益との間の関連性を評価した。研究したUBC患者は、UBC患者のコホートを含む進行中の第Ia相研究に参加していた(安全性評価可能なUBC集団=92)。主要な適格条件には、固形癌治療効果判定法(RECIST)v1.1に基づく測定可能な疾患、及び0または1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)活動指標(PS)が含まれた。UBCコホートは、元々、IC2/3のPD-L1 ICスコアを有する患者を登録したが、その後、全ての参加希望者を含むよう拡大され、主にPD-L1 IC0/1の患者を採用した。PD-L1 ICスコアは、表3に示されるようにスコア化された。アテゾリズマブ(MPDL3280A)を、3週間毎(q3w)に15mg/kgで、または1200mgの一定用量で静脈内(IV)に投与した。
【0350】
ウサギモノクローナル抗PD-L1一次抗体を使用してIHCを実施することによってUBC腫瘍微小環境中のPD-L1の発現レベルを評価した(実施例1を参照されたい)。このアッセイは、腫瘍浸潤免疫細胞及び腫瘍細胞(TC)の両方におけるPD-L1発現レベルの検出のために最適化される。図1Bは、第Ia相研究でプレスクリーニングされた患者からの保管用腫瘍組織における異なるICスコアカットオフでのPD-L1発現の有病率を示す。図1Cは、PD-L1 IHCによって評価されたICにおけるPD-L1発現を示すUBC腫瘍切片の例を示す。IHCアッセイは、高感度であり、PD-L1発現に特異的であった。
【0351】
全てのPD-L1下位群においてアテゾリズマブ(MPDL3280A)での治療への応答が認められ、より高い奏効率(ORR)は、ICにおけるより高いPD-L1発現と関連付けられた(図2)。例えば、IC2/3及びIC0/1患者においてORRはそれぞれ、50%及び17%であった(図2)。IC2/3患者のうちの20%は完全奏功(CR)を有し、30%は部分奏効(PR)を有した(図2)。応答者には、ベースラインで内臓転移を有した患者も含まれた:32人のIC2/3患者において38%のORR(95%信頼区間(CI)、21~56)、及び36人のIC0/1患者において14%(95%CI、5~30)のORR。ベースライン後評価を行った患者80人中、44人(55%)は、腫瘍負荷の低減を経験した(図3)。アテゾリズマブに応答する患者における循環性炎症マーカー(CRP)及び腫瘍マーカー(CEA、CA-19-9)の減少も認められた。
【0352】
アテゾリズマブ(MPDL3280A)で治療されたUBC患者の治療期間及び奏功期間が図4に示される。奏功する時間の中央値は、62日間であった(IC2/3患者、1カ月以上~10カ月以上の範囲;IC0/1患者、1カ月以上~7カ月以上の範囲)。奏功した患者30人中、20人は、データカットオフの時点(2014年12月2日)で進行中奏功を有した。奏功期間(DOR)の中央値は、データカットオフ時には達成されなかった。
【0353】
ICにおけるPD-L1発現は、アテゾリズマブ治療からの利益に予測的であると思われた(図5A及び5B)。無増悪生存期間(mPFS)及び1年PFS率の中央値は、より高いPD-L1発現を有するアテゾリズマブで治療された患者においてより高かった(図5A)。1年全生存(OS)率について同じ関連性が認められ、全生存期間(OS)の中央値は、データカットオフ時には達成されなかった(図5A及び図5B)。IC2/3及びIC0/1患者について、1年OS率はそれぞれ、57%及び38%であった(図5A)。
【0354】
要約すると、アテゾリズマブ(MPDL3280A)は、有望な生存期間及び臨床的に有意な奏功と共に、重度に前処置された転移性UBCコホートにおいて見込みのある臨床活動を提示した。ICにおけるPD-L1発現は、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(MPDL3280A)などのPD-L1軸結合アンタゴニストへの応答のための予測バイオマーカーであると思われた。
【0355】
実施例3:療法における免疫ブロッカーシグネチャ及びCTLA4発現レベルとUBC患者のアテゾリズマブへの応答との関連性を試験する第Ia相研究
アテゾリジマブ(atezolizimab)での治療への応答と、治療中の「免疫ブロッカー」シグネチャ(遺伝子CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、及びPD1を含む)の発現との間の関連性を、UBC患者のコホートを含む第Ia相臨床研究の過程で評価した。
【0356】
図6に示されるように、治療の第3サイクル、第1日目までのT細胞による免疫ブロッカーシグネチャならびにCTLA4のmRNA発現の増加(カスタムNanostringアッセイによって判定される)は、UBC患者におけるアテゾリズマブへの応答に関連付けられた。したがって、CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、及びPD1の発現レベルは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブを含むPD-L1軸結合アンタゴニストでの治療に対するUBC患者の応答のための潜在的なバイオマーカーを表す。
【0357】
実施例4:患者におけるアテゾリズマブ及びTCGAサブタイプと、局所進行性及び転移性癌腫との関連性を試験する第II相研究の概要
研究監督及び実施
この研究は、各参加現場での独立した審査委員会によって承認され、ヘルシンキ宣言の規定及び臨床試験実施基準ガイドラインに完全に適合して実施された。最初の患者が参加した後、6カ月毎に、独立したデータ監視委員会が入手可能な安全性に関するデータを審査した。
【0358】
研究設計及び治療
図7に概説されるように、これは、第2相の網羅的、多施設共同、シングルアームの2コホート試験であった。1つのコホートは、転移状況にある治療未経験の患者であり、シスプラチン不適格であると見なされる患者で構成された。第2のコホートは、手術不可能な局所進行性または転移性尿路上皮癌を有する患者であり、その疾患が、白金ベースの化学療法経験後に進行し、21日周期の第1日目に投与される静脈内アテゾリズマブを1200mgの固定用量で受けた患者で構成された。投与中断は許可されたが、用量低減は許容されなかった。患者は、同意プロセスの一環として、偽増悪の可能性を知らされており、研究医師と進行後の治療について検討するよう勧められた。型にはまらない応答の特定を可能にするため、患者は、臨床的利益のための予め指定された基準を満たした場合には、進行性疾患についてのRECIST v1.1基準の後にアテゾリズマブ治療を継続することが許容された。
【0359】
この研究の一次有効性エンドポイントは、2つの異なる方法に基づく奏効率(ORR)であった:RECISTバージョン1.1での独立した審査機関(IRF)による評価、及び免疫療法で認められる不規則な応答速度論をよりよく評価するための修正されたRECIST基準での研究者による評価(Eisehauer et al.Eur.J.Cancer.45:228-47,2009、Nishino et al.Eur.J.Radiol.84:1259-68,2015を参照されたい)。RECIST v1.1が、免疫療法剤からの応答の固有のパターンの利益を十分に捕捉するのに不適切であるという高まった認識に起因して、二重エンドポイントが選択された(Chiou et al.J.Clin.Oncol.33:3541-3,2015を参照されたい)。二次有効性エンドポイントには、RECIST v1.1での独立した審査及び修正されたRECISTでの研究者による評価の両方による奏功期間及び無増悪生存期間、全生存期間、12カ月生存期間、ならびに安全性が含まれた。診査分析には、遺伝子発現プロファイリング及びCD8+T細胞浸潤と臨床成績との間の関連性が含まれた。
【0360】
患者
患者は、組織学的または細胞学的に記録された局所進行性(T4b、任意のN;または任意のT、N2-3)または転移性(M1、IV期)の尿路上皮癌(腎盂、尿管、膀胱、尿道を含む)を有する場合、研究への参加に適格であった。適格な患者は、0または1のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)活動指標、RECIST v1.1によって定義される測定可能な疾患、適切な血液学的機能及び終末器官機能を有し、かつ自己免疫疾患または有効感染を有しなかった。研究への参加前に十分な生存腫瘍量を有するホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍検体が必要とされた。
【0361】
研究評価
測定可能かつ評価可能な病変を、治療前に評価し、記録した。患者は、第1周期、第1日目に続く最初の12カ月間にわたり、9週間毎に腫瘍評価を経た。12カ月の後、12週間毎に腫瘍評価を行った。National Cancer Instituteの有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)、バージョン4.0に従って安全性評価を行った。診査用バイオマーカー評価のために保管用腫瘍組織の試料、ならびに血清及び血漿試料を収集した。
【0362】
PD-L1免疫組織化学
患者の腫瘍試料を、診断用抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体SP142を使用して免疫組織化学によってPD-L1発現について予見的かつ中心的に評価した(Powles et al.Nature 515:558-62,2014を参照されたい)。PD-L1腫瘍浸潤免疫細胞(IC)状態は、PD-L1陽性ICの割合によって定義された:IC0(1%未満)、IC1(1%以上、5%未満)、及びIC2/3(5%以上)。カルメット・ゲラン桿菌(BCG)炎症反応は、PD-L1 IC状態の評価から除外した。免疫組織化学による腫瘍細胞上のPD-L1発現及びCD8+浸潤の分析も行った(Herbst et al.Nature 515:563-7,2014、Ferlay et al.Int.J.Cancer 136:E359-86,2012を参照されたい)。
【0363】
保管用パラフィン包埋組織からプレスクリーニング生検を収集した。患者は、研究への参加前に組織を中央研究所に送ることが求められた。試料は、スクリーニングの際に処理された。ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織を、SP142を使用して免疫組織化学によってPD-L1のために予見的に染色した。マクロファージ、樹状細胞、及びリンパ球を含む腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1発現について試料をスコア化した。検体は、1%未満、1%以上5%未満、5%以上10%未満、または10%以上の腫瘍浸潤免疫細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学IC0、1、2、または3としてスコア化された。異なる時点または試料からの複数の検体を含む患者のPD-L1スコアは、最も高いスコアに基づいた。このアッセイは、IC1及びIC2カットオフでの臨床試験における試験的使用のために検証された。腫瘍細胞(TC)上のPD-L1発現の診査分析を実施した。検体は、1%未満、1%以上5%未満、5%以上50%未満、または50%以上の腫瘍細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学TC0、TC1、TC2、またはTC3としてスコア化された。
【0364】
診査用バイオマーカー分析
遺伝子発現レベルを、Illumina TruSeq RNA Access RNA-seqによって定量化した(Wu et al.Bioinformatics 26:873-81,2010、Law et al.Genome Biol.15:R29,2014、Ritchie et al.Nucleic Acids Res.43:e47,2015を参照されたい)。TCGAに続いて分子サブタイプを割り当て(例えば、それぞれその全体が参照により組み込まれている、Cancer Genome Atlas Research Network Nature 507:315-22,2014及びJiang et al.Bioinformatics 23:306-13,2007を参照されたい)、FFPE組織のためのRNA Access RNA-seqプラットフォームの使用に適合するようにいくつかの改変を含んだ。
【0365】
RNA-SEQライブラリ調製
Torre et al.(2012)Cancer J Clin.65:87-108に前述されるように、FFPE腫瘍試料のスライドからRNAを単離した。Illumina TruSeq RNA Access Kitを使用してRNA-Seqを行った。製造業者のプロトコルに従って、ライブラリ及びハイブリッド捕捉を行った。簡潔には、RiboGreen(商標)によって定量化したおよそ100ngのRNAを入力として使用した。Bioanalyzer上の資料を泳動することによって品質を評価して、DV200(200bpより大きいRNA断片の%)値を判定した。ランダムプライマーを使用して全RNAから第1鎖cDNA合成をプライミングし、続いてdUTPを用いた第2鎖cDNA合成によってストランド情報を保存した。二本鎖cDNAは、末端修復、Aテール付加、及び試料バーコーディングのためのインデックスシーケンスを含むIllumina特異アダプターのライゲーションを経た。得られたライブラリをPCR増幅し、定量化して、収率及びサイズ分布を判定した。全てのライブラリを正規化し、4つのライブラリを単一のハイブリダイゼーション/捕捉反応にプールした。プールされたライブラリを、ゲノムのコード領域に対応するビオチン化したオリゴのカクテルと共にインキュベートした。ストレプトアビジン複合ビーズを使用してハイブリダイズされたビオチン化オリゴプローブを介して標的ライブラリ分子を捕捉した。2回のハイブリダイゼーション/捕捉反応の後、Illumina HiSeq上でのペアエンド2×50配列決定の前に、濃縮されたライブラリ分子を2回目のPCR増幅に供した。
【0366】
アライメント、正規化、及び遺伝子発現定量化
品質のため、かつrRNA異物を除去するためにリードをフィルタリングし、次いで、以下のオプションを伴ってGSNAP(バージョン2013-10-10)を使用してゲノム(GRCh38)にアラインした:
-M2 -n10 -B2 -i1 -N1 -w200000 -E1 --ペアマックス-rna=200000 --クリップ重複(Morales et al.J.Urol.116:180-3,1976を参照されたい)。試料毎に平均で5470万個の一致して、かつ独自にアラインしたリード対を得た。正規化の目的のため、DE Seqアルゴリズムを使用してサイズ係数を算出した(vo der Maase et al.J Clin.Oncol.23:4602-8,2005を参照されたい)。次いで、voomアルゴリズムを使用してリードカウントを変換し、これは、視覚化に好適な対数変換された結果を提供する。カウントデータの変換に加えて、voomはまた、観察毎の重量を提供し、これにより、PD-L1 IHC ICまたは応答と比べて、差次的発現試験へのlimma経験的ベイズフレームワークの適用が可能となる(De Santis et al.J Clin.Oncol.30:191-9,2012、Bellmunt et al.J.Clin.Oncol.27:4454-61,2009を参照されたい)。
【0367】
サブタイプ割り当て
分子サブタイプは、TCGAによって示され、Dong et al.(2002)Nat Med.8:793-800に記載される膀胱内の分子サブタイプに基づいた。遺伝子毎のシグナル動作における新鮮材料のための標準ポリ(A)RNA-seqとFFPE材料のためのRNA Access RNA-seqとの間の重大な差異に起因して、我々のデータにTCGA分類子を直接適用することはできなかった。代わりに、我々の試料を、TCGAの図3に対応する以下の遺伝子の発現に従ってクラスタリングした:FGFR3、CDKN2A、KRT5、KRT14、EGFR、GATA3、FOXA1、及びERBB2(Dong et al.Nat.Med.8:793-800,2002を参照されたい)。miR-99a-5p及びmiR-100-5pと同様に、TCGAはCDKN2AがFGFR3と反相関することを見出したため、TCGAのmiR-99a-5p及びmiR-100-5pの代替としてCDKN2Aを使用した。Dong et al.(2002)Nat Med.8:793-80におけるTCGA図1を参照されたい。次いで、各集団の遺伝子発現パターンをTCGAによって報告されるパターンと一致させることによって、患者の集団を簡便な様式でTCGA分子サブタイプに割り当てることができる。TCGA I、II、III、またはIVデータと一致しない混合した発現動作を有する1つの外集団(n=18)は、未分類のままとなり、下流分析から省略された。
【0368】
統計分析
有効性分析は、治療意図(ITT)集団に基づいた。ベースラインのRECIST v1.1に基づく測定可能な疾患を有した治療意図患者として定義された奏功評価可能集団において奏効率を判定し、奏功を達成した患者のサブセットにおいて奏功期間分析を行った。奏効率の一次エンドポイントについて、階層的固定配列試験手順を使用して、治療アームと、3つの予め指定された集団の10%の歴史的対照との間の奏効率を比較した:[i]IC2/3のPD-L1 IHCスコアを有する奏功評価可能患者、[ii]IC1/2/3のPD-L1 IHCスコアを有する奏功評価可能患者、及び[iii]全ての奏功評価可能患者。これらの3つの集団における仮説試験を、最後の患者が参加してから最小24週間の追跡調査を誘因とする同じαレベルでの全体的なI型エラーを制御しながら、RECIST v1.1に従いIRFによって評価された奏効率及び修正されたRECIST基準に従い研究者によって評価された応答率に基づき、0.05の特定の両側性αレベルで各試験を順次行った。任意の量の研究薬物を受けた参加患者として定義される全ての治療された患者に安全性分析を行った。PD-L1 IC後の追加のバイオマーカー分析は、診査用のみであり、予め指定されなかった。バイオマーカー評価可能集団は、入手可能な関連遺伝子発現データを有する奏功評価可能集団に基づいた。
【0369】
実施例5:患者におけるアテゾリズマブ及びTCGAサブタイプと、局所進行性及び転移性癌腫との関連性を試験する第II相研究の結果
患者の特徴
図7及び8に示されるように、合計で486人の患者をスクリーニングし、315人の患者がコホート2における研究に参加した。310人の患者が、少なくとも1用量のアテゾリズマブを受け、有効性及び安全性について評価可能であった。データカットオフの時点で、202人の患者(65%)が治療を中断(193人の患者が死亡し、患者による撤回に起因して8人、及び他の理由に起因して1人)及び9人の患者が研究を中止された)、最後に参加した患者から最小9.9カ月の追跡調査の後に118人の患者(35%)が研究に残った。
【0370】
表4は、患者のベースラインの特徴を要約している。患者の41%は、転移性疾患のための2つ以上の全身レジメンを以前に受けてきた。多くの患者は、有害予後危険因子を有し、これには研究開始時の内臓及び/または肝臓転移(それぞれ78%及び31%)、ならびに10g/dL以下のベースラインヘモグロビン(22%)が含まれた。
【0371】
PD-L1免疫組織化学分析のための組織は、外科切除検体(n=215)、一次病変(n=23)または転移部位(n=41)からの生検、膀胱腫瘍試料の経尿道切除(TURBT)(n=29)、及び不詳の病変からの生検(n=2)で構成された。PD-L1 IC2/3有病率は、一次病変または転移部位に対して、切除及びTURBT検体においてより高かった(それぞれ17%及び8%に対して39%及び34%)。患者は、PD-L1 IC群間で均等に分布された:IC0(33%)、IC1(35%)、及びIC2/3(32%)。ベースライン特徴は、IC2/3群、IC1/2/3群、及び治療意図集団の間でバランスがとれていた(表4)。
【0372】
有効性
24週間の予め計画された一次分析は、アテゾリズマブでの治療が、10%の歴史的対照と比較して、予め指定されたIC群(IC2/3、27%(95%CI 19~37)、p<0.0001);IC1/2/3、18%(95%CI 13~24)、p=0.0004;及び全ての患者、15%(95%CI、11~20)、p=0.0058)のそれぞれについて著しく改善されたRECIST v1.1奏効率(ORR)をもたらすことを示した(表5)。応答の持続性を評価するために、本明細書に記載される有効性の最新の分析を後に実施した(表6)。独立した放射線学的審査(RECIST v1.1)により、有効性の最新の分析は、IC2/3群において26%(95%CI、18~36)のORRを示し、これには完全奏功(CR)を達成した11%の患者が含まれる。IC1/2/3群において、ORRは18%(95%CI、13~24)であり、13人の患者(6%)においてCRが認められた。全ての評価可能な患者について、奏効率は15%(95%CI、11~19)であり、15人の患者(5%)において完全奏功が認められた。研究者により評価された奏効率(修正されたRECISTに基づく)は、RECIST v1.1の結果と同様であった(表6)。11.7カ月の追跡調査の中央値を伴って、奏功期間の中央値は、PD-L1免疫組織化学群のいずれにおいても未達成であった(範囲、2.0、13.7カ月、打切り値)(IC2/3群のデータは、図9A~9Cに示され、IC0及びIC1群は、図10A~10Fに示される)。データカットオフの時点で、奏功患者45人中、38人(84%)において進行中奏功が認められた。奏功する時間の中央値は、2.1カ月であった(95%CI、2.0~2.2)。PD-L1 IC状態のORR及びBellmuntリスクスコアの多変量ロジスティック回帰モデルから、Bellmuntリスクスコアを制御した場合、RECIST v1.1に従うIRFによる確認された応答者を有するオッズ比は、IC0群に対して比較したIC2/3群について4.12(95%CI:1.71、9.90)であり、IC0群に対して比較したIC1群について1.30(95%CI:0.49、3.47)である。ロジスティック回帰結果は、下位群分析と一致している。
【0373】
完全奏功を示す患者の臨床因子に関する診査サブセット分析は、ベースラインでの内臓転移(例えば、リンパ節のみの疾患)の不在が、最も高い完全奏功率(CRR)と関連付けられたことを示す(例えば、内臓転移の存在(あり/なし):あり(n=243)、1.2%(95%CI 0.26~3.57)に対し、なし(n=67)について17.9%(95%CI、9.61~29.20。原発性腫瘍部位とCRRとの関連性の分析も実施した(例えば、膀胱(n=230)、6.5%(95CI、3.70~10.53);腎臓/骨盤(n=42)、0%(95%CI、0.00~8.41);尿管(n=23)、0%(95%CI、0.00~14.82);尿道(n=5)、0%(95%CI、0.00~52.18)、及びその他(n=10)、0%(95%CI、0.00、30.85))。さらに、活動指標とCRRとの関連性を試験した(例えば、1のECOG PS(n=193)について2.6%(95%CI、0.85~5.94)と比較した、0のECOG PS(n=117)、8.5%(95%CI、4.17~15.16))。最後に、IC PD-L1状態とCRRとの関連性を分析した(例えば、全ての患者(n=310)4.8%(2.73~7.86)と比較したIC2/3(n=100)11%(95%CI、5.62~18.83)と比較したIC1(n=107)1.9%(95%CI、0.23~6.59)と比較したIC0(n=103)1.9%(95%CI、0.24~6.84))。
【0374】
転移性組織検体と比較した原発組織検体によるIRF RECIST v.1.1に基づくORRの分析は、解剖学的部位にかかわらず、PD-L1 IHC状態と臨床応答との関連性に支持的であった。一次分析における311人の患者のうち、233人が疾患の原発部位から得られた腫瘍検体に基づくPD-L1発現について評価された一方、78人は疾患の転移部位から得られた腫瘍検体におけるPD-L1発現について評価された。疾患の原発部位からの組織に基づいてPD-L1発現について評価された患者のうち、IRF RECIST v1.1に基づくORRは、IC2/3、IC1/2/3、及び参加希望者集団についてそれぞれ、26%(95%CI 16~37)、18%(95%CI 12~25)、及び16%(95%CI 11~21)であった。疾患の転移部位からの組織に基づいてPD-L1発現について評価された患者のうち、IRF RECIST v1.1に基づくORRは、IC2/3、IC1/2/3、及び参加希望者集団についてそれぞれ、32%(95%CI 14~55)、20%(95%CI 10~35)、及び14%(95%CI 7~24)であった。
奏効評価可能集団:全ての治療された患者は、研究者によって評価されたRECIST v1.1に基づきベースラインで測定可能な疾患を有した。
P値は、H:ORR=10%対H:ORR≠10%であり、10%ORRは歴史的対照である、α=0.05。
【0375】
偽増悪の発生を説明するため、患者はIRF RECIST v1.1進行後の治療を認められた。121人の患者が、7.8週間の中央値にわたって進行後に治療され、これらのうち、21人(17%)が、図11Bに示されるそれらのベースラインスキャンから少なくとも30%の標的病変の低減を後に経験した。RECIST進行後に治療された患者のおよそ27%が、疾患の安定を示した。
【0376】
認められた持続性応答には、上気道疾患を有する患者及び予後不良特性を有する患者が含まれた。患者における肝臓転移の存在が、肝臓転移を有しない患者と比較してより低い奏効率(19%と比較して5%、表7)をもたらした一方、これらの奏功は、データカットオフの時点で達成されなかった奏功期間にわたって持続性であった。内臓転移を有する患者(内臓転移を有しない患者について31%に対して10%)及びECOG PS 1の患者(ECOG PS 0の患者について25%に対して8%)において、同様の傾向が認められた。奏功期間の中央値は、分析された下位群のいずれにおいても未達成であった。
【0377】
およそ11.7カ月(範囲、0.2~15.2、は打切り値を意味する)の生存期間追跡調査中央値を有し、無増悪生存期間(PFS)(RECIST v1.1)の中央値は、全ての患者にわたって2.1カ月(95%CI、2.1~2.1)であり、全てのIC群にわたって同様であった。修正されたRECIST基準に従い研究者によって評価されたPFS中央値は、IC1/2/3群における2.9カ月(95%CI、2.1~4.1)及び全ての患者における2.7カ月(95%CI、2.1~3.9)と比較して、IC2/3群において4.0カ月(95%CI、2.6~5.9)であった。
【0378】
生存期間中央値は、IC2/3群について11.4カ月(95%CI、9.0~予測不可能)、IC1/2/3群において8.8カ月(95%CI、7.1~10.6)、及び患者のコホート全体について7.9カ月(95%CI、6.6~9.3)であった(図9D)。目印となる12カ月全生存率は、IC2/3群において48%(95%CI、38~58)、IC1/2/3群において39%(95%CI、32~46)、及び治療意図群において36%(95%CI、30~41)であった。転移状況で以前に1つのみの治療を受け、アジュバント/ネオアジュバント治療経験を有しない患者(n=124)において、生存期間中央値は、IC2/3群について予測不可能であり(95%CI、9.3~予測不可能)、IC1/2/3群において10.3カ月(95%CI、7.5~12.7)、及び二次治療集団全体について9.0カ月(95%CI、7.1~10.9)であった。
【0379】
安全性
治療期間中央値は、12週間であった(範囲、0~66)。全ての原因による任意のグレードの有害次事象が、患者の97%において報告され、患者の55%は、グレード3~4の事象を経験した(表9を参照されたい)。患者の69%が任意のグレードの治療関連有害事象(AE)を有し、患者の16%がグレード3~4関連事象を有した。患者の11%において治療関連の重大な有害事象が認められた。治療関連死は研究において報告されなかった。治療関連有害事象の大多数は、それ自体は低度から中程度であり、疲労(30%)、悪心(14%)、食欲減退(12%)掻痒(10%)、発熱(9%)、下痢(8%)、発疹(7%)、及び関節痛(7%)が最も一般的な任意のグレードの事象であった(表8;全ての原因による有害事象について表9を参照されたい)。グレード3~4の治療関連有害事象の発生率は低く、最も一般的には疲労が2%で生じた(表8)。発熱性好中球減少症の報告はなかった。
【0380】
患者の7%は、任意のグレードの免疫媒介性有害事象を有し、肺臓炎(2%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(1%)、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加(1%)、及び発疹(1%)が最も一般的な有害事象であった。5%は、グレード3~4の免疫媒介性有害事象(全ての原因)を有した。免疫媒介性腎毒性は認められなかった。患者の30%は、用量中断につながる有害事象を有した。患者の4%は、治療撤回につながる有害事象を経験した。患者の22%(69/310)は、ステロイド使用を要する有害事象を有した。
【0381】
診査用バイオマーカー
腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のPD-L1免疫組織化学発現は、CD8 Tエフェクターセット(Teff)における遺伝子の発現に関連付けられた(図12A)。Teffセット内の遺伝子の中で、アテゾリズマブへの応答は、2つのインターフェロン-γ誘導性Tヘルパー1(T1)型ケモカインであるCXCL9(P=0.0057)及びCXCL10(P=0.0079)に最も密接に関連付けられた(図12B)。より顕著ではないが同様の傾向は、セット内の他の遺伝子に関しても見られた(図13A)。T細胞移動ケモカイン発現の増加と一貫して、腫瘍CD8+ T細胞浸潤もPD-L1 IC(図12C、P<0.001)及びアテゾリズマブへの応答(図12D、P=0.027)の両方に関連付けられた。
【0382】
遺伝子発現分析(n=195)を使用して、TCGAによって定義されるルミナル(n=73)及び基底(n=122)サブタイプに患者を分類した(図14)。PD-L1 IC有病率は、ルミナルサブタイプに対して基底サブタイプにおいて高度に豊富であり(23%に対して60%、P<0.001、図12E)、IC2/3発現は、乳頭様ルミナルクラスターIにおいて15%、クラスターIIにおいて34%、扁平上皮様基底クラスターIIIにおいて68%、及び基底クラスターIVサブタイプにおいて50%であった。対照的に、PD-L1腫瘍細胞TC2/3発現は、ほとんど排他的に基底サブタイプに見られ(ルミナルにおける4%に対して基底において39%、P<0.001、図12F)、ORRと相関しなかった。PD-L1 IC2/3発現と一貫して、CD8 Tエフェクター遺伝子発現は、ルミナルクラスターII及び基底クラスターIII/IVにおいて上昇し、ルミナルクラスターIにおいて上昇しなかった(図14)。アテゾリズマブへの応答は、全てのTCGAサブタイプにおいて生じたが、予期せずルミナルクラスターIIサブタイプにおいて他のサブタイプにおけるよりも著しく高く、34%の奏効率を示した(P=0.0017、図12G)。
【0383】
考察
30年前のメトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、及びシスプラチン化学療法での組み合わせ治療の開発以来、尿路上皮癌を有する患者のための治療成績における主要な改善はなかった(Sternberg et al.J.Urol.133:403-7,1985を参照されたい)。この大規模なシングルアーム第2相研究の結果は、単独療法アテゾリズマブが、進行性尿路上皮癌を有する患者であって、その腫瘍が白金ベースの化学療法中またはその後に進行した患者における持続的な抗腫瘍応答を誘発したことを示す。この試験は、重度に前処置された患者を含み、とりわけ、奏功期間中央値は、11.7カ月の追跡調査中央値にかかわらず未達成であった。臨床的に関連する治療関連有害事象の低い発生率は、しばしば複数の併存症及び/または腎機能障害を有するこの患者集団において、アテゾリズマブを広く適用可能にする。この持続的有効性及び認容性は、現在利用可能な二次化学療法で認められる結果と比較して顕著である(Bellmunt et al J.Clin.Oncol.27:4454-61,2009、Choueiri et al.J.Clin.Oncol.30:507-12,2012、Bambury et al.Oncologist 20:508-15,2015を参照されたい)。
【0384】
三次または四次以降で治療された患者のおよそ42%を含んだコホート全体における12カ月OS率は、IC2/3群において48%(95%CI、38~58)、IC1/2/3群において39%(95%CI、32~46)、及びITT集団において36%(95%CI、30~41)であった。これらのOS結果は、二次化学療法または生物製剤を受けた646人の患者を評価した10の第2相試験のプールされた分析からの目印となる20%(95%CI、17~24)の12カ月生存率と比較して遜色ない(Agarwal et al.Clin.Genitourin.Cancer 12:130-7,2014を参照されたい)。
【0385】
このデータセットにおいて確認された有害危険因子と関連付けられないと思われるが、文献における矛盾する報告があり、現在、PD-L1 IC発現の予後値は不明である(Boorjian et al.Clin.Cancer Res.14:4800-8,2008、Bellmunt et al.Ann.Oncol.26:812-7;2015を参照されたい)。したがって、この患者集団における生存期間の改善が、アテゾリズマブ治療に関連する可能性が高いと考えられる。それでもなお、Ventana SP142免疫組織化学アッセイの予後値及び予測値を適切に評価し、どの患者が臨床的利益を得るかをよりよく理解するために、進行中のランダム化研究(NCT02302807)の結果が必要とされる。
【0386】
アテゾリズマブへの応答は、従来のRECISTならびに不規則な応答速度論の両方に関連付けられ、追加的に進行後に治療された患者の17%は、RECIST v1.1進行後に標的病変の縮小を有した。無増悪生存期間中央値は、RECIST v1.1では、免疫組織化学サブセットにわたって同様であったが、癌免疫療法において認められ得る非古典的な応答を説明するために修正されたRECIST基準を利用した場合には増加した。この研究において、他の疾患における他の免疫チェックポイント剤と同様に、PFSとOSとの間の分離が認められ、これは、免疫療法での治療の利益をよりよく捕捉するためにRECIST v1.1の修正が必要とされることをさらに示す。
【0387】
この研究では、SP142を使用した予見的PD-L1試験のためのスクリーニングの間に腫瘍検体を提出することが求められた。予め指定された分析において、免疫細胞上のPD-L1免疫組織化学発現のより高いレベルは、アテゾリズマブへのより高い奏功率及びより長い全生存期間に関連付けられた。対照的に、腫瘍細胞上のPD-L1発現の頻度は低く、奏効との関連性は示さず、これは、免疫チェックポイント阻害剤に臨床的利益を付与するための適応免疫の重要性へのさらなる支持を与えた。
【0388】
同様に、免疫活性化遺伝子サブセット(例えば、CXCL9及びCD8A)及び他の免疫チェックポイント遺伝子(PD-L1、CTLA-4、及びTIGIT、データは示されない)と、TCではなくICのPD-L1発現との関連性は、IC PD-L1発現が、尿路上皮癌腫瘍における適応免疫制御及び既存(であるが抑制されている)の免疫応答の存在を表すことを示す(Herbst et al.Nature 515:563-7,2014を参照されたい)。他の負の制御因子(例えば、TIGIT)の存在は、組み合わせ免疫療法アプローチが応答をさらに向上させ得ることをさらに示す。
【0389】
興味深いことに、TCGA分析によって識別された分子サブタイプは、アテゾリズマブへの応答にも関連付けられ、これは、PD-L1発現に加えて、根本的な免疫生物学においてサブタイプが異なることを示した。全てのTCGAサブタイプにわたって奏功が認められた一方で、活性Tエフェクター細胞の存在に関連付けられる転写シグネチャを特徴とするルミナルクラスターIIサブタイプにおいて著しくより高い奏効率が認められた。対照的に、ルミナルクラスターIは、CD8+エフェクター遺伝子の低い発現、より低いPD-L1 IC/TC発現、及びアテゾリズマブへのより低い応答に関連付けられ、これは、しばしば既存の免疫活性を欠く環境と一致する。基底クラスターIII及びIVも、PD-L1 IC発現及びCD8+エフェクター遺伝子の増加に関連付けられた。しかしながら、ルミナルクラスターIIとは異なり、基底III/IVは、高いPD-L1 TC発現も呈した。ルミナルクラスターIIと比較した基底サブタイプにおける奏効率の低減は、PD-L1/PD-1経路の阻害によって有効なT細胞活性を妨げる他の免疫抑制因子が基底サブタイプ内に存在することを強く示す。ルミナル対基底サブタイプの免疫環境の差異は、さらなる合理的な組み合わせ治療戦略または連続治療戦略を発展させるために根本的な免疫生物学をさらに理解する必要性を強調する。
【0390】
PD-L1 IC状態はアテゾリズマブ応答に明白に関連付けられるが、PD-L1 IC染色に基づくモデルへのTCGA遺伝子発現サブタイプの組み込みは、応答との関連性を著しく向上させた(図15)。したがって、疾患サブタイプは、免疫細胞におけるPD-L1発現によって既に提供される情報を単に繰り返すだけではなく、むしろ独立した相補的な情報を提供する。
【0391】
他の実施形態
前述の発明が明確な理解のために例証及び例によって多少詳しく説明されているが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
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図9B
図9C
図9D
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図14
図15
【配列表】
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