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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】配線回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/26 20060101AFI20220922BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220922BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20220922BHJP
   C25D 5/36 20060101ALI20220922BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20220922BHJP
   C25D 3/48 20060101ALI20220922BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C25D5/26 Q
C25D7/00 J
C25D5/10
C25D5/36
C25D5/50
C25D3/48
H05K3/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018008755
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2018119211
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017009187
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 悠
(72)【発明者】
【氏名】田辺 浩之
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-010572(JP,B1)
【文献】特開平04-276093(JP,A)
【文献】特開2014-229330(JP,A)
【文献】特開2011-099128(JP,A)
【文献】特開2009-140789(JP,A)
【文献】米国特許第02905601(US,A)
【文献】米国特許第06312580(US,B1)
【文献】国際公開第2012/053431(WO,A1)
【文献】特開2014-058485(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101748427(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00-7/12
H05K 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス端子を有するステンレス支持層を備える配線回路基板の製造方法であり、
不動態膜が表面に形成されたステンレス支持層を用意する第1工程、および、
第1金めっき層を前記ステンレス端子の表面に形成する第2工程を備え、
前記第2工程では、
前記ステンレス支持層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第1金めっき液に浸漬するとともに、
前記不動態膜を除去しつつ、前記第1金めっき層が前記ステンレス端子の表面に形成されるように、前記ステンレス支持層に給電し、
前記配線回路基板は、さらに、前記ステンレス支持層により支持され、導体端子を有する導体層を備え、
第3金めっき層を前記導体端子の表面に形成する第4工程を備え、
前記第4工程では、
前記導体層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第3金めっき液に浸漬するとともに、
前記第3金めっき層が前記導体端子の表面に形成されるように、前記導体層に給電し、
前記第2工程における電流密度の、前記第4工程における電流密度に対する比が、2以上であることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程の後に、第2金めっき層を前記第1金めっき層の表面に形成する第3工程をさらに備え、
前記第3工程では、
前記ステンレス支持層を、酸を含有せず、金化合物を含有する第2金めっき液に浸漬するとともに、
前記第2金めっき層が前記第1金めっき層の表面に形成されるように前記ステンレス支持層に給電し、
前記第2金めっき液における金化合物の含有割合が、前記第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて、高いことを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
記第2工程および前記第4工程を、共通のめっき浴で、実施することを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程の後に、前記第1金めっき層を加熱する加熱工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程の後に、前記第1金めっき層および前記第2金めっき層を加熱する加熱工程をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス基板に、電気接続用の端子を形成し、かかる端子に、金めっきにより金めっき層を形成する方法が知られている。
【0003】
例えば、ステンレス基板の所望部位を塩酸系めっき液に浸漬し、該浸漬部位に第1金めっき層を形成する、ステンレス基板への金めっきパターンの形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の方法では、ステンレス基板と第1金めっき層との密着性を向上している。
【0005】
また、特許文献1の方法では、ステンレス基板に、導体層を別途設け、かかる導体層に導体端子を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-34702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステンレス基板の表面には、不動態膜が存在するため、上記した密着性の向上の観点から、かかる不動態膜を除去する必要がある。
【0008】
特許文献1の方法では、上記した不動態膜を、ステンレス基板の塩酸系めっき液への浸漬によって、除去するとともに、ステンレス基板における端子に金めっき層を形成している。
【0009】
しかるに、塩酸系めっき浴を用いて、導体端子に金めっき層を形成して、ステンレス基板の端子における金めっき層の形成、および、導体端子における金めっき層の形成を、共通のめっき浴を使用することが試案される。しかし、このような試案では、塩酸系めっき液によって、導体端子が腐食するという不具合がある。
【0010】
一方、ステンレス基板の端子における金めっき層の形成に用いた塩酸系めっき浴と別のめっき浴を用意し、かかるめっき浴を用いて導体端子に金めっき層を形成しようとすれば、設備数が増大し、製造工程が複雑になるという不具合がある。
【0011】
本発明の目的は、簡易な設備で、第1金めっき層をステンレス端子に、簡便に形成することのできる配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(1)は、ステンレス端子を有するステンレス支持層を備える配線回路基板の製造方法であり、不動態膜が表面に形成されたステンレス支持層を用意する第1工程、および、第1金めっき層を前記ステンレス端子の表面に形成する第2工程を備え、前記第2工程では、前記ステンレス支持層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第1金めっき液に浸漬するとともに、前記不動態膜を除去しつつ、前記第1金めっき層が前記ステンレス端子の表面に形成されるように、前記ステンレス支持層に給電することを特徴とする、配線回路基板の製造方法を含む。
【0013】
この製造方法によれば、第2工程では、ステンレス支持層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第1金めっき液に浸漬するので、第2工程において、ステンレス支持層に給電すると、不動態膜を確実に除去しつつ、第1金めっき層をステンレス端子の表面に形成することができる。
【0014】
また、第1金めっき液が強酸を含有しないことから、第1金めっき液を用いれば、導体端子に金めっき層を、導体端子の腐食を抑制しながら、形成することができる。そのため、簡易な設備で、第1金めっき層をステンレス端子に、簡便に形成することができる。
【0015】
本発明(2)は、前記第2工程の後に、第2金めっき層を前記第1金めっき層の表面に形成する第3工程をさらに備え、前記第3工程では、前記ステンレス支持層を、酸を含有せず、金化合物を含有する第2金めっき液に浸漬するとともに、前記第2金めっき層が前記第1金めっき層の表面に形成されるように、前記ステンレス支持層に給電し、前記第2金めっき液における金化合物の含有割合が、前記第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて、高い、(1)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0016】
この製造方法によれば、第3工程の第2金めっき液における金化合物の含有割合が、第2工程の第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて、高いので、厚い第2めっき層を効率よく短時間で形成することができる。
【0017】
本発明(3)は、前記配線回路基板は、さらに、前記ステンレス支持層により支持され、導体端子を有する導体層を備え、第3金めっき層を前記導体端子の表面に形成する第4工程を備え、前記第4工程では、前記導体層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第3金めっき液に浸漬するとともに、前記第3金めっき層が前記導体端子の表面に形成されるように、前記導体層に給電し、前記第2工程における電流密度の、前記第4工程における電流密度に対する比が、2以上である、(1)または(2)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0018】
この製造方法において、第2工程における電流密度の、第4工程における電流密度に対する比が、2以上である。つまり、第2工程における電流密度を、第4工程における電流密度より高くできるため、第2工程において、不動態膜をより一層確実に除去することができる。その結果、ステンレス端子に対する密着性を有する第1金めっき層を備える配線回路基板を製造することができる。
【0019】
本発明(4)は、前記配線回路基板は、さらに、前記ステンレス支持層により支持され、導体端子を有する導体層を備え、前記第2工程の後に、第3金めっき層を前記導体端子の表面に形成する第4工程を備え、前記第4工程では、前記導体層を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第3金めっき液に浸漬するとともに、前記第3金めっき層が前記導体端子の表面に形成されるように、前記導体層に給電し、前記第2工程および前記第4工程を、共通のめっき浴で、実施する、(1)~(3)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0020】
この製造方法によれば、第2工程および第4工程を、共通のめっき浴で、実施するので、製造装置および製造工程を簡単にすることができる。
【0021】
本発明(5)は、前記第2工程の後に、前記第1金めっき層を加熱する加熱工程をさらに備える、(1)~(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0022】
この製造方法によれば、加熱工程において、第1金めっき層を加熱するので、ステンレス端子に対する密着性を有する第1金めっき層を備える配線回路基板を製造することができる。
【0023】
本発明(6)は、前記第3工程の後に、前記第1金めっき層および前記第2金めっき層を加熱する加熱工程をさらに備える、(2)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0024】
この製造方法によれば、加熱工程において、第1金めっき層および第2金めっき層を加熱するので、ステンレス端子に対する密着性を有する第1金めっき層および第2金めっき層を備える配線回路基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ステンレス端子に対する優れた密着性を有する第1金めっき層を備える配線回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1A図1Cは、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態である回路付サスペンション基板の製造方法の一部工程図であり、図1Aが、回路付サスペンション基板を用意する第1工程、図1Bが、第1金めっき層を形成する第2工程、図1Cが、第2金めっき層を形成する第3工程を示す。
図2図2D図2Fは、図1Cに引き続き、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態である回路付サスペンション基板の製造方法の一部工程図であり、図2Dが、第3金めっき層を用意する第4工程、図2Eが、第4金めっき層を形成する第5工程、図2Fが、第2めっきレジストを除去するを示す。
図3図3は、図1A図2Fに示す回路付サスペンション基板の製造方法のフローチャートを示す。
図4図4は、回路付サスペンション基板の製造方法で用いられるめっき装置の概略図を示す。
図5図5は、回路付サスペンション基板の製造方法の変形例(第3工程を実施しない態様)のフローチャートを示す。
図6図6は、回路付サスペンション基板の製造方法の変形例(第2工程と第6工程とを順に実施する態様)のフローチャートを示す。
図7図7は、回路付サスペンション基板の製造方法の変形例(第3工程と第6工程とを順に実施する態様)のフローチャートを示す。
図8図8Aおよび図8Bは、回路付サスペンション基板の製造方法の変形例(導体端子に第3金めっき層および第4金めっき層を備えない第1の回路付サスペンション基板の製造方法)の一部工程図であり、図8Aが、第1金めっき層を形成する第2工程、図8Bが、第2金めっき層を形成する第3工程を示す。
図9図9Aおよび図9Bは、回路付サスペンション基板の製造方法の変形例(ステンレス端子に第1金めっき層および第2金めっき層を備えない第2の回路付サスペンション基板の製造方法)の一部工程図であり、図9Aが、第3金めっき層を用意する第4工程、図9Bが、第4金めっき層を形成する第5工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<一実施形態>
本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態である回路付サスペンション基板の製造方法は、図2Fに示すように、ステンレス支持層22および導体層24を備える回路付サスペンション基板21の製造方法である。
【0028】
具体的には、回路付サスペンション基板21は、ステンレス支持層22と、ベース絶縁層23と、導体層24と、カバー絶縁層(図示せず)とを厚み方向(上下方向)に順に備える。
【0029】
ステンレス支持層22は、回路付サスペンション基板21の最下層である。ステンレス支持層22は、厚み方向に直交する面方向に延びる略平板(シート)形状を有する。ステンレス支持層22は、回路付サスペンション基板21を支持する支持部材である。また、ステンレス支持層22は、支持本体部50と、開口部51と、ステンレス端子26とを有する。
【0030】
支持本体部50の外形形状は、回路付サスペンション基板21の外形形状と同一形状である。
【0031】
開口部51は、支持本体部50の内側に形成されており、ステンレス支持層22を厚み方向に貫通する。開口部51の周囲の支持本体部50は、底面視略枠形状を有する。
【0032】
ステンレス端子26は、開口部51内に配置されている。ステンレス端子26の外端縁(周端縁)は、支持本体部50の内端縁から面方向(厚み方向に直交する方向)内側に間隔に隔てて配置されている。これによって、ステンレス端子26は、支持本体部50と絶縁されている。
【0033】
ステンレス支持層22を形成するためのステンレス材としては、特に限定されず、例えば、SUS304などが挙げられる。
【0034】
ステンレス支持層22の厚みは、例えば、15μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0035】
支持本体部50の表面には、不動態膜25が形成されている。
【0036】
一方、ステンレス端子26の表面には、上記した不動態膜25が形成されておらず、後述する第1金めっき層31および第2金めっき層32(金めっき層35)が形成されている。
【0037】
ベース絶縁層23は、ステンレス支持層22の上面に配置されている。ベース絶縁層23は、面方向に延びる略平板(シート)形状を有する。ベース絶縁層23は、次に説明する導体層24に対応するパターンを有する。また、ベース絶縁層23の下面の一部は、上記した開口部51から下方に露出している。ベース絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。ベース絶縁層23の厚みは、用途および目的に応じて、適宜設定される。
【0038】
導体層24は、ベース絶縁層23の上面に配置されている。導体層24は、導体配線と、それに連続する導体端子28とを連続して有する。導体端子28の表面には、後述する第3金めっき層33および第4金めっき層34が形成されている。
【0039】
導体層24は、例えば、銅、ニッケル、それらの合金などの導体材料からなる。導体層24の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0040】
カバー絶縁層(図示せず)は、回路付サスペンション基板21の最上層である。カバー絶縁層(図示せず)は、導体端子28を露出し、導体配線(図示せず)を被覆するパターンを有する。
【0041】
そして、回路付サスペンション基板21の製造方法は、図3に示すように、第1工程1、第2工程2、第3工程3、第4工程4、第5工程5および加熱工程の一例としての第6工程6を備える。第1工程1、第2工程2、第3工程3、第4工程4、第5工程5および第6工程6は、順に実施される。
【0042】
[第1工程]
図1Aに示すように、第1工程1では、ステンレス支持層22と、ベース絶縁層23と、導体層24と、カバー絶縁層(図示せず)とを備える回路付サスペンション基板21を用意する。ステンレス支持層22は、支持本体部50と、開口部51と、ステンレス端子26とを有する。また、支持本体部50およびステンレス端子26の両方の表面には、不動態膜25が形成されている。
【0043】
不動態膜25は、ステンレス支持層22の下面および側面(外側面および内側面を含む)を被覆する。不動態膜25は、ステンレス支持層22を形成するステンレスが不動態化した薄膜である。また、不動態膜25は、例えば、酸化クロム、酸化ニッケル、それらの複合酸化物などの金属酸化物を含むことができる。
【0044】
不動態膜25の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0045】
不動態膜25は、ステンレス支持層22の表面において、後述する第1金めっき層31のステンレス支持層22に対する密着力を低下させる膜であり、本来不要な膜である。しかし、不動態膜25は、ステンレス支持層22の表面に不可避的に形成されている。
【0046】
回路付サスペンション基板21は、互いに間隔を隔てて複数配置された集合体シート30として用意される。
【0047】
[第2工程~第5工程]
第2工程2~第5工程5は、図4に示すめっき装置40を用いて、実施される。
【0048】
[めっき装置]
図4に示すように、めっき装置40は、第1ロール43、第1めっき槽41、第2めっき槽42および第2ロール44を、集合体シート30の搬送方向下流側に向かって順に備える。
【0049】
第1ロール43は、集合体シート30を操出可能に巻回する。
【0050】
第1めっき槽41は、第1ロール43の搬送方向下流側に配置される。第1めっき槽41には、第1金めっき液が収容されている。また、第1めっき槽41は、第1金めっき液を加熱可能に構成されている。
【0051】
第1金めっき液は、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する。
【0052】
強酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。
【0053】
弱酸は、第1金めっき液のpHを調整する作用を有する。弱酸としては、特に限定されず、例えば、有機酸が挙げられる。弱酸の第1金めっき液における含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0054】
金化合物は、第1金めっき層31を形成するために用いられる金前駆体であって、第1金めっき液に溶解されている。金化合物としては、例えば、四塩化金酸、四塩化金酸塩、三塩化金、シアン化金、シアン化金カリウム(KAu(CN))、三塩化ジエチルアミン金酸、エチレンジアミン金錯体などが挙げられる。金化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、シアン化金カリウムが挙げられる。金化合物の第1金めっき液における含有割合は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、また、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下である。また、第1金めっき液における金の含有割合は、例えば、0.1g/L以上、好ましくは、0.5g/L以上であり、また、例えば、5g/L以下、好ましくは、1.5g/L以下である。
【0055】
第1金めっき液は、さらに、有機酸塩を含有することもできる。有機酸塩は、第1金めっき液の電導度を調整する作用を有する。有機酸塩は、特に限定されない。有機酸塩の第1金めっき液における含有割合は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0056】
水の割合は、上記した成分の含有割合の残部である。
【0057】
第1金めっき液のpHは、例えば、3.0以上、好ましくは、3.5以上であり、また、例えば、5.0以下、好ましくは、4.0以下である。
【0058】
第1金めっき液の温度は、特に限定されず、例えば、常温より高く、具体的には、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、45℃以上であり、また、例えば、70℃以下、好ましくは、60℃以下、より好ましくは、55℃以下である。
【0059】
第1めっき槽41には、第1電極(図示せず)が、第1金めっき液に浸漬されるように、配置されている。第1電極は、第1整流器(図示せず)に接続されている。
【0060】
第2めっき槽42は、第1めっき槽41の搬送方向下流側に配置されている。第2めっき槽42には、第2金めっき液が収容されている。また、第2めっき槽42は、第2金めっき液を加熱可能に構成されている。
【0061】
第2金めっき液は、酸を含有せず、金化合物を含有する。
【0062】
酸としては、第1金めっき液で挙げた強酸、弱酸が挙げられる。
【0063】
金化合物としては、第1金めっき液に含有される金化合物と同一の金化合物が挙げられる。好ましくは、シアン化金カリウムが挙げられる。
【0064】
金化合物の第2金めっき液における含有割合は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、1.5質量%以下である。第2金めっき液における金化合物の含有割合は、第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて高く、具体的には、第2金めっき液における金化合物の含有割合の、第1金めっき液における金化合物の含有割合に対する比は、例えば、1超過、好ましくは、3以上、より、好ましくは、5以上、さらに好ましくは、7.0以上であり、また、例えば、50以下である。
【0065】
第2金めっき液における金化合物の含有割合は、第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて高いと、第2金めっき層32を効率よく形成することができる。
【0066】
第2金めっき液における金の含有割合は、例えば、0.5g/L以上、好ましくは、5g/L以上であり、また、例えば、50g/L以下、好ましくは、10g/L以下である。第2金めっき液における金の含有割合は、第1金めっき液における金の含有割合に比べて高く、具体的には、第2金めっき液における金の含有割合の、第1金めっき液における金の含有割合に対する比は、例えば、1超過、好ましくは、3以上、より、好ましくは、5以上、さらに好ましくは、7.0以上であり、また、例えば、50以下である。
【0067】
第2金めっき液における金の含有割合は、第1金めっき液における金の含有割合に比べて高いと、第2金めっき層32を効率よく形成することができる。
【0068】
第2金めっき液は、さらに、有機酸塩、無機酸塩、結晶調整剤などの添加剤を含有することができる。
【0069】
有機酸塩は、第2金めっき液の電導度を調整する作用を有する。有機酸塩は、特に限定されない。有機酸塩の第2金めっき液における含有割合は、例えば、1質量%以上、例えば、40質量%以下である。
【0070】
無機酸塩は、第2金めっき液の電導度を調整する作用を有する。無機酸塩は、特に限定されないが、その水溶液は、中性(pH6~8)を示すものが挙げられる。無機酸塩の第2金めっき液における含有割合は、例えば、0.1質量%以上、例えば、10質量%以下である。
【0071】
結晶調整剤は、第3工程3において、第2金めっき層32の円滑な析出を促す助剤である。結晶調整剤としては、例えば、タリウム、鉛、ビスマスなどの金属の塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩など)などが挙げられる。
【0072】
添加剤は、適宜、単独使用または併用することができる。結晶調整剤の第2金めっき液における含有割合は、金属の含有割合として、例えば、0.0001質量%以上、また、例えば、0.02質量%以下、好ましくは、0.005質量%以下である。
【0073】
水の割合は、上記した成分の含有割合の残部である。
【0074】
第2金めっき液のpHは、例えば、5.0以上、好ましくは、6.0以上であり、また、例えば、9.0以下、好ましくは、7.5以下である。
【0075】
第2金めっき液の温度は、特に限定されず、例えば、常温より高く、具体的には、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下である。また、第2金めっき液を温度を、第1金めっき液の温度より高く設定することもでき、具体的には、例えば、5℃以上、好ましくは、10℃以上、高くすることができる。
【0076】
第2めっき槽42には、第2電極(図示せず)が、第2金めっき液に浸漬されるように、配置されている。第2電極は、第2整流器(図示せず)に接続されている。
【0077】
第2ロール44は、第2めっき槽42の搬送方向下流側に配置されている。第2ロール44は、集合体シート30を巻取可能に巻回する。
【0078】
[第2工程]
第2工程2の前に、まず、集合体シート30を、めっき装置40における第1ロール43に巻回する。
【0079】
続いて、図1Bに示すように、第2工程2を実施する。
【0080】
第2工程2は、ストライク金めっきである。図1Aおよび図1Bに示すように、第2工程2では、ステンレス端子26の表面に形成に形成された不動態膜25を除去しながら、ステンレス端子26の表面に第1金めっき層31を形成する。
【0081】
具体的には、第2工程2を実施するに際し、まず、第1めっきレジスト27を、回路付サスペンション基板21に配置する。第1めっきレジスト27は、ステンレス端子26およびその近傍を露出し、導体層24を被覆するパターンで、回路付サスペンション基板21に配置する。
【0082】
そして、図4に示すように、第2工程2では、集合体シート30を第1ロール43から第1めっき槽41に向けて連続して繰り出す(搬送する)。これにより、ステンレス端子26(ステンレス支持層22)を第1金めっき液に浸漬する。なお、第2工程2では、ステンレス支持層22は、第1めっき槽41において、第1整流器と電気的に接続される給電ロールなどの給電部材(図示せず)などに接触する。
【0083】
第2工程2では、集合体シート30は、第1金めっき液中において、第1電極に対向配置される。
【0084】
そして、第1整流器(図示せず)によって、ステンレス端子26および第1電極(図示せず)の間に電圧が印加される。すると、ステンレス端子26がカソードとなり、第1電極がアノードとなる。なお、上記した電圧の印加は、ステンレス支持層22および第1電極(図示せず)への給電により実施する。
【0085】
第2工程2におけるステンレス端子26における電流密度は、不動態膜25を確実に除去する観点から、比較的高く、例えば、通常のストライク金めっきのステンレス端子26における電流密度より高い。ステンレス端子26における電流密度は、具体的には、例えば、1A/dm以上、好ましくは、2A/dm以上、より好ましくは、3A/dm以上であり、また、例えば、1000A/dm以下である。
【0086】
ステンレス端子26における電流密度は、ステンレス端子26の単位面積当たりの電流量であって、印加電流を、ステンレス端子26の表面積(露出面積)で除した値(印加電流[A]/ステンレス端子26の表面積[dm])である。
【0087】
第2工程2の印加時間は、例えば、10秒以上、また、例えば、100秒以下である。印加時間は、第1めっき槽41の大きさ(搬送方向における長さ)、および、搬送速度によって設定される。
【0088】
すると、図1Bに示すように、不動態膜25が除去されつつ、第1金めっき層31がステンレス端子26の表面に形成される。
【0089】
第1金めっき層31の厚みは、ステンレス端子26に通常設けられる金めっき層の厚みに比べて薄い。具体的には、第1金めっき層31の厚みは、例えば、例えば、20nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
【0090】
[第3工程]
図1Cに示すように、第3工程3では、第2金めっき層32を第1金めっき層31の表面に形成する。
【0091】
第3工程3は、ソフト金めっきである。第3工程3では、第1金めっき層31の厚みに比べて厚い厚みを有する第2金めっき層32を、第1金めっき層31の表面に形成する。
【0092】
図4に示すように、第3工程では、第1めっきレジスト27が配置され、第1金めっき層31(図1B参照)が形成された集合体シート30を第1めっき槽41から第2めっき槽42に搬送する。これにより、第1金めっき層31(が形成されたステンレス端子26)を第2金めっき液に浸漬する。なお、第3工程3では、導体層24は、第2めっき槽42において、第2整流器と電気的に接続される給電ロールなどの給電部材(図示せず)などに接触する。
【0093】
第3工程3では、集合体シート30は、第2金めっき液中において、第2電極に対向配置される。
【0094】
そして、第2整流器(図示せず)によって、第1金めっき層31および第2電極の間に電圧が印加される。すると、第1金めっき層31がカソードとなり、第2電極がアノードとなる。なお、上記した電圧の印加は、ステンレス支持層22および第2電極(図示せず)への給電により実施する。
【0095】
第3工程3の第1金めっき層31における電流密度は、第2工程2のステンレス端子26における電流密度に対して低く、具体的には、例えば、200A/dm以下、好ましくは、10A/dm以下、より好ましくは、1.0A/dm以下であり、また、例えば、0.1A/dm以上である。第2工程2のステンレス端子26における電流密度の、第3工程3の第1金めっき層31における電流密度に対する比(第2工程2のステンレス端子26における電流密度/第3工程3の第1金めっき層31における電流密度)は、例えば、1超過、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上であり、また、例えば、100以下である。
【0096】
第1金めっき層31における電流密度は、第1金めっき層31の単位面積当たりの電流量であって、印加電流を、第1金めっき層31の表面積(露出面積)で除した値(印加電流[A]/第1金めっき層31の表面積[dm])である。
【0097】
第3工程3の印加時間は、例えば、30秒以上であり、また、例えば、600秒以下である。印加時間は、第1めっき槽41の大きさ(搬送方向における長さ)、および、搬送速度によって設定される。
【0098】
これにより、第2金めっき層32が第1金めっき層31の表面に形成される。第2金めっき層32の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、5000nm以下、好ましくは、3000nm以下である。第2金めっき層32の厚みの、第1金めっき層31の厚みに対する比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.4以上であり、また、例えば、50以下、好ましくは、10以下である。
【0099】
また、第1金めっき層31および第2金めっき層32は、金めっき層35を形成する。金めっき層35は、第1金めっき層31および第2金めっき層32のみからなる。図1C図2Fにおいて、第1金めっき層31および第2金めっき層32の間に境界線が描画されているが、金めっき層35は、実質的に単一の層からなる。金めっき層35の厚みは、第1金めっき層31の厚みおよび第2金めっき層32の厚みの合計であり、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
【0100】
その後、図示しないが、第1めっきレジスト27を除去する。
【0101】
その後、回路付サスペンション基板21を第2ロール44に巻き取る。
【0102】
[第4工程および第5工程]
図2Dに示すように、第4工程4において、第3金めっき層33を導体端子28の表面に形成し、その後、図2Eに示すように、第5工程5において、第4金めっき層34を第3金めっき層33の形成する。
【0103】
図4に示すように、第4工程4および第5工程5は、第2工程2および第3工程3で用いためっき装置40を再度用いる。つまり、めっき装置40を共用する。
【0104】
第4工程4を実施する前に、図2Dに示すように、第2めっきレジスト29を、導体端子28およびその近傍を露出し、第1金めっき層31および第2金めっき層32を含むステンレス支持層22を被覆するパターンで、回路付サスペンション基板21に配置する。
【0105】
第4工程4は、ストライク金めっきである。第4工程4における動作および第1金めっき液は、第2工程2におけるそれらと同一である。具体的には、第4工程4では、集合体シート30を第1ロール43から第1めっき槽41に向けて連続して繰り出す(搬送する)。これにより、導体端子28を第1金めっき液に浸漬する。つまり、第2工程2および第4工程4は、共通の第1めっき槽41で実施する。また、第4工程4における動作は、第2工程2におけるそれと同一である。また、第2工程2および第4工程4は、共通の第1めっき槽41で実施する。
【0106】
但し、第4工程4における電流密度は、通常のストライク金めっきの電流密度である。
【0107】
第4工程4の導体端子28における電流密度は、通常のストライク金めっきの導体端子28における電流密度であって、例えば、0.3A/dm以上、また、例えば、20A/dm以下である。導体端子28における電流密度は、導体端子28の単位面積当たりの電流量であって、印加電流を、導体端子28の表面積(露出面積)で除した値(印加電流[A]/導体端子28の表面積[dm])である。
【0108】
第2工程2のステンレス端子26における電流密度の、第4工程4の導体端子28における電流密度に対する比(第2工程2のステンレス端子26における電流密度/第4工程4の導体端子28における電流密度)は、例えば、2以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、15以上、さらに好ましくは、30以上であり、また、例えば、1000以下である。上記した比が上記した下限以上であれば、第4工程4における電流密度が過度に高いことに起因する導体材料の第1金めっき液への流出を抑制できる一方、第2工程2において、不動態膜25をより確実に除去することができる。
【0109】
第4工程4によって、導体端子28の表面に第3金めっき層33を形成する。同時に、導体端子28の表面に付着していた異物(ごみなどを含む)が除去される。
【0110】
第3金めっき層33の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上であり、また、例えば、5000nm以下、好ましくは、3000nm以下である。
【0111】
第5工程5は、ソフト金めっきである。第5工程5における動作および第2金めっき液は、第3工程3におけるそれらと同一である。第3工程3および第5工程5は、共通の第2めっき槽42で実施する。
【0112】
第5工程5における動作は、第3工程3におけるそれと同一である。第3工程3および第5工程5は、共通の第2めっき槽42で実施する。
【0113】
第5工程5の第3金めっき層33における電流密度は、通常のストライク金めっきの第3金めっき層33における電流密度であって、例えば、0.1A/dm以上であり、また、例えば、20A/dm以下である。第3金めっき層33における電流密度は、第3金めっき層33の単位面積当たりの電流量であって、印加電流を、第3金めっき層33の表面積(露出面積)で除した値(印加電流[A]/第3金めっき層33の表面積[dm])である。
【0114】
これによって、第3金めっき層33および第4金めっき層34を、導体端子28の表面に順に形成する。
【0115】
第4金めっき層34の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.3μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、1μm以下である。
【0116】
その後、図2Fに示すように、第2めっきレジスト29を除去する。
【0117】
これにより、第1金めっき層31および第2金めっき層32(金めっき層35)が表面に順に形成されたステンレス端子26と、第3金めっき層33および第4金めっき層34が表面に順に形成された導体端子28とを備える回路付サスペンション基板21を得る。
【0118】
[第6工程]
第6工程6では、回路付サスペンション基板21を加熱する。具体的には、第1金めっき層31、第2金めっき層32、第3金めっき層33および第4金めっき層34を加熱する。
【0119】
詳しくは、集合体シート30を、加熱炉を通過するように、搬送する。
【0120】
加熱温度は、例えば、180℃以上、好ましくは、200℃以上であり、また、例えば、350℃以下、好ましくは、300℃以下である。
【0121】
加熱時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、3時間以下、好ましくは、2時間以下である。
【0122】
回路付サスペンション基板21の加熱によって、第1金めっき層31および第2金めっき層32のステンレス端子26に対する密着性が向上する。同時に、第3金めっき層33および第4金めっき層34の導体端子28に対する密着性が向上する。
【0123】
[作用効果]
そして、この製造方法によれば、第2工程2では、ステンレス支持層22を、強酸を含有せず、弱酸および金化合物を含有する第1金めっき液に浸漬するので、第2工程2において、ステンレス支持層22に給電すると、不動態膜25を確実に除去しつつ、第1金めっき層をステンレス端子26の表面に形成することができる。
【0124】
また、第1金めっき液が強酸を含有しないことから、第4工程において、第1金めっき液を用いれば、導体端子28に第3金めっき層33を、導体端子28の腐食を抑制しながら、形成することができる。さらに、第2工程2および第4工程4を、共通のめっき液、すなわち、同じ第1めっき槽41で、実施できるので、めっき装置40および製造工程を簡単にすることができる。そのため、簡易な設備で、第1金めっき層31をステンレス端子26に、簡便に形成することができる。
【0125】
また、この製造方法によれば、第3工程3の第2金めっき液における金化合物の含有割合が、第2工程2の第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて、高いので、厚い第2金めっき層32を効率よく短時間で形成することができる。
【0126】
また、この製造方法において、第2工程2における電流密度の、第4工程における電流密度に対する比が、2以上であれば、第2工程2における電流密度を、第4工程における電流密度より高くできるため、第2工程2において、不動態膜25をより一層確実に除去することができる。その結果、ステンレス端子26に対する密着性を有する第1金めっき層31を備える回路付サスペンション基板21を製造することができる。
【0127】
また、この製造方法によれば、第2工程2および第4工程4を、共通のめっき浴、すなわち、同じ第1めっき槽41で、実施するので、めっき装置40および製造工程を簡単にすることができる。
【0128】
また、この製造方法によれば、第6工程6において、第1金めっき層31を加熱するので、ステンレス端子26に対する密着性を有する第1金めっき層31を備える回路付サスペンション基板21を製造することができる。
【0129】
さらに、この製造方法によれば、第6工程6において、第1金めっき層31および第2金めっき層32を加熱するので、ステンレス端子26に対する密着性を有する第1金めっき層31および第2金めっき層を備える回路付サスペンション基板21を製造することができる。
【0130】
<変形例>
変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0131】
導体層24に、ステンレス端子26と電気的に接続される導通部(図示せず)を、ベース絶縁層23の絶縁開口部(図示せず)に設け、第2工程2および第3工程3において、導体層24から、導通部を介して、ステンレス端子26に給電することができる。また、第4工程4および第5工程5において、ステンレス端子26から、導通部を介して、導体端子28に給電することもできる。
【0132】
また、この回路付サスペンション基板21の製造方法は、洗浄工程および乾燥工程を備えることができる。洗浄工程および乾燥工程は、例えば、図3において図示しないが、各工程の間に挿入される。
【0133】
図3に示すように、一実施形態では、回路付サスペンション基板21の製造方法は、第3工程3を備える。しかし、この製造方法は、図5に示すように、第3工程3を備えず、第2工程2および第4工程4を連続して実施することができる。
【0134】
この場合には、第2工程2によって、第1金めっき層31のみからなる金めっき層35を形成する。この変形例の第2工程2における印加時間は、一実施形態の第2工程2における印加時間に比べて長い。
【0135】
好ましくは、図3に示すように、回路付サスペンション基板21は、第3工程3を備える。
【0136】
第3工程では、第1金めっき液における金化合物の含有割合に比べて高い金化合物の含有割合を有する第2金めっき液を用いるので、厚い第2金めっき層32を短時間で形成し、ひいては、厚い金めっき層35を短時間で形成することができる。
【0137】
一実施形態では、図3に示すように、第6工程6を、第5工程5の後に実施している。
【0138】
しかし、第6工程6を、図6に示すように、第2工程2の後に実施することができ、また、図7に示すように、第3工程3の後に実施することもできる。
【0139】
図6に示す変形例では、第6工程6は、第2工程2の後で、第3工程3の前に実施される。第6工程6において、第1金めっき層31を加熱する。そのため、ステンレス端子26に対する密着性を有する第1金めっき層31を備える回路付サスペンション基板21を製造することができる。
【0140】
さらに、図7に示す変形例では、第6工程6は、第3工程3の後で、第4工程4の前に実施される。第6工程6において、第1金めっき層31および第3金めっき層33を加熱する。そのため、ステンレス端子26に対する密着性を有する第1金めっき層31および第2金めっき層を備える回路付サスペンション基板21を製造することができる。
【0141】
上記した一実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、第6工程6を、2回実施することができ、例えば、図3および図6が参照されるように、第2工程2の直後、および、第5工程5の直後に実施することができる。また、図3および図7が参照されるように、第3工程3の直後、および、第5工程5の直後に実施することもできる。
【0142】
また、図1A図2Fにおいて図示しないが、ステンレス支持層22の上面、具体的には、ステンレス支持層22においてベース絶縁層23と接触する面にも、不動態膜25が形成されていてもよい。
【0143】
一実施形態では、図1A図2Fおよび図4に示すように、同一種類の回路付サスペンション基板21に、第1金めっき層31と、第3金めっき層33とを、共通の第1めっき槽41で形成している。
【0144】
しかし、この変形例では、例えば、図8Aに示すように、第1の回路付サスペンション基板21Aに第1金めっき層31を第1金めっき浴を用いて形成し、別途、図9Aに示すように、第1の回路付サスペンション基板21Aとは異なる種類の第2の回路付サスペンション基板21Bに、第3金めっき層33を第1金めっき浴を用いて形成することができる。
【0145】
なお、図8Aおよび図8Bにおいて、第1めっきレジスト27を省略し、図9Aおよび図9Bにおいて、第2めっきレジスト29を省略している。
【0146】
図8Aおよび図8Bに示すように、第1の回路付サスペンション基板21Aは、例えば、導体端子28に第3金めっき層33および第4金めっき層34を形成することなく、製品として出荷される。つまり、第1の回路付サスペンション基板21Aの製造方法は、第4工程4および第5工程5を備えず、第1金めっき層31を形成する第2工程2(図8A参照)および第2金めっき層32を形成する第3工程3(図8B参照)を備える。
【0147】
一方、図9Aおよび図9Bに示すように、第2の回路付サスペンション基板21Bは、ステンレス端子26に第1金めっき層31および第2金めっき層32を形成せず、ステンレス端子26に不動態膜25を残存させたまま、製品として出荷される。つまり、第2の回路付サスペンション基板21Bの製造方法は、第2工程2および第3工程3を備えず、第3金めっき層33を形成する第4工程4(図9A参照)および第4金めっき層34を形成する第5工程5(図9B参照)を備える。
【0148】
この変形例によっても上記と同様の作用効果を奏することができる。さらに、設備数の低減が図られためっき装置40によって第1の回路付サスペンション基板21Aおよび第2の回路付サスペンション基板21Bのそれぞれを製造することができる。
【0149】
また、一実施形態では、本発明の配線回路基板の例示として回路付サスペンション基板21を例示しているが、これに限定されない。例えば、本発明の配線回路基板を、ステンレス支持層22を補強層として備えるフレキシブル配線回路基板など、他の配線回路基板にも適用することができる。
【0150】
上記した各変形例は、上記した一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0151】
さらに、上記した各変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例
【0152】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0153】
実施例1
図3に示すように、第1工程1、第2工程2、第3工程3、第4工程4、第5工程5および第6工程6を順に備える製造方法によって、回路付サスペンション基板21を製造した。
【0154】
具体的には、第1工程1では、図1Aに示すように、ステンレス端子26を有するステンレス支持層22と、ステンレス支持層22の上面に配置されるベース絶縁層23と、ベース絶縁層23の上面に配置され、導体端子28を有する導体層24と、ベース絶縁層23の上面に、導体端子28を露出するカバー絶縁層とを備える回路付サスペンション基板21を用意した。
【0155】
ステンレス支持層22(ステンレス端子26)は、SUS304からなり、その厚みは、25μmであった。ステンレス支持層22の表面には、厚み5nmの不動態膜25が形成されていた。
【0156】
ベース絶縁層23は、ポリイミドからなり、その厚みが、10μmであった。
【0157】
導体層24(導体端子28)は、銅からなり、その厚みが、20μmであった。
【0158】
カバー絶縁層は、ポリイミドからなっていた。
【0159】
また、上記した回路付サスペンション基板21が複数整列配置された集合体シート30を用意した。
【0160】
次いで、図1Bに示すように、第1めっきレジスト27を、ステンレス端子26およびその近傍を露出し、導体層24を被覆するように、回路付サスペンション基板21に配置した。
【0161】
別途、図4に示すように、第1ロール43、第1めっき槽41、第2めっき槽42および第2ロール44を、集合体シート30の搬送方向に向かって順に備えるめっき装置40を用意した。
【0162】
第1めっき槽41には、以下の組成および温度を有する第1金めっき液が、第1電極を浸漬するように、満たされている。
<第1金めっき液>
シアン化金カリウム(KAu(CN)) 0.15質量%
(金濃度1g/L)
有機酸 9~11質量%
有機酸塩 7~9質量%
pH 3.5~4.0
温度 50℃
第2めっき槽42には、以下の組成および温度を有する第2金めっき液が、第2電極を浸漬するように、満たされている。
<第2金めっき液>
シアン化金カリウム(KAu(CN)) 1.17質量%
(金濃度8g/L)
有機酸塩 10~15質量%
無機酸塩 2~3質量%
硫酸タリウム 0.001質量%
pH 6.5
温度 65℃
そして、上記した集合体シート30をめっき装置40に設置した。具体的には、集合体シート30を第1ロール43に巻回した。
【0163】
次いで、ストライク金めっきである第2工程2を実施した。
【0164】
具体的には、図4に示すように、第2工程2では、集合体シート30を第1ロール43から第1めっき槽41に向けて連続して繰り出した(搬送した)。これにより、ステンレス端子26(ステンレス支持層22)を第1金めっき液に浸漬した。
【0165】
そして、第2工程2では、第1整流器によって、ステンレス端子26および第1電極の間に電圧を印加した。ステンレス端子26における電流密度は、20A/dmであった。印加時間は、25秒であった。
【0166】
すると、図1Bに示すように、不動態膜25が除去されつつ、第1金めっき層31がステンレス端子26の表面に形成された。第1金めっき層31の厚みは、150nmであった。
【0167】
次いで、ソフト金めっきである第3工程3を実施した。
【0168】
具体的には、図4に示すように、第3工程3では、第1金めっき層31が形成された集合体シート30を、第2めっき槽42に向けて連続して繰り出した(搬送した)。これにより、第1金めっき層31を第2金めっき液に浸漬した。
【0169】
そして、第3工程3では、第2整流器によって、第1金めっき層31および第2電極の間に電圧を印加した。ステンレス端子26(第1金めっき層31)における電流密度は、0.3A/dmであった。印加時間は、300秒であった。
【0170】
図1Cに示すように、これにより、第2金めっき層32が第1金めっき層31の表面に形成された。第2金めっき層32の厚みは、70nmであった。
【0171】
その後、第1めっきレジスト27を除去した。
【0172】
その後、図2Dに示すように、第2めっきレジスト29を、導体端子28およびその近傍を露出し、ステンレス端子26(およびその表面に形成された第1金めっき層31および第2金めっき層32)を含むステンレス支持層22を被覆するように、配置した。
【0173】
その後、図4に示すように、第2めっきレジスト29が配置された集合体シート30を第2ロール44で巻き取った。
【0174】
その後、集合体シート30の導体端子28に対して、ストライク金めっきを、上記と同一のめっき装置40を用いて、施した。集合体シート30を巻き取った第2ロール44を、ステンレス端子26に対するストライク金めっきで用いためっき装置40と同じめっき装置の第1ロール43として、第1めっき槽41の上流側に配置した。
【0175】
具体的には、ストライク金めっきである第4工程4では、図4に示すように、集合体シート30を第1ロール43から第1めっき槽41(第2工程2と共通の第1めっき槽41)に向けて連続して繰り出した(搬送した)。これにより、導体端子28を第1金めっき液に浸漬した。
【0176】
第4工程4では、第1整流器によって、導体端子28および第1電極の間に電圧を印加した。導体端子28における電流密度は、1A/dmであった。印加時間は、25秒であった。
【0177】
すると、図2Dに示すように、導体端子28の表面に付着する異物(ごみなどを含む)が除去されながら、第3金めっき層33が導体端子28の表面に形成された。第3金めっき層33の厚みは、100nmであった。
【0178】
次いで、ソフト金めっきである第5工程5を実施した。
【0179】
図4に示すように、具体的には、第5工程5では、第3金めっき層33が形成された集合体シート30を、第2めっき槽42(第3工程3と共通の第2めっき槽42)に向けて連続して繰り出した(搬送した)。これにより、第3金めっき層33を第2金めっき液に浸漬した。
【0180】
そして、ソフト金めっきである第5工程5では、第2整流器によって、第3金めっき層33および第2電極の間に電圧を印加した。第3金めっき層33における電流密度は、1.7A/dmであった。印加時間は、300秒であった。
【0181】
図2Eに示すように、これにより、第4金めっき層34が第3金めっき層33の表面に形成された。第4金めっき層34の厚みは、400nmであった。
【0182】
図2Fに示すように、その後、第2めっきレジスト29を除去した。
【0183】
集合体シート30を第2ロール44で巻き取った。
【0184】
図4に示すように、これにより、不動態膜25が除去され、第1金めっき層31および第2金めっき層32が順に形成されたステンレス端子26と、第3金めっき層33および第4金めっき層34が順に形成された導体端子28とを備える回路付サスペンション基板21を得た。
【0185】
その後、第6工程6を実施した。具体的には、集合体シート30を、真空下雰囲気下で加熱した。加熱温度は、200℃、加熱時間は、1時間であった。
【符号の説明】
【0186】
1 第1工程
2 第2工程
3 第3工程
4 第4工程
5 第5工程
6 第6工程
21 回路付サスペンション基板
24 導体層
25 不動態膜
26 ステンレス端子
28 導体端子
31 第1金めっき層
32 第2金めっき層
33 第3金めっき層
34 第4金めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9