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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 35/00 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
F16H35/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018046842
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158039
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507418692
【氏名又は名称】トヨフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】近野 一郎
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-210145(JP,A)
【文献】米国特許第03718051(US,A)
【文献】特開昭60-057042(JP,A)
【文献】実開昭58-099542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する方向に回転駆動シャフトと回転従動シャフトを設けたハウジング内に無端循環経路を設け、この無端循環経路内を転動する複数の駆動力伝達子を用いて前記回転駆動シャフトから前記回転従動シャフトへ回転駆動力を伝達する駆動装置であって、前記回転駆動シャフトにはその一部を前記無端循環経路に臨ませて前記駆動力伝達子を前記回転従動シャフトに向けて連続的に送り出すスプロケットを設け、前記回転従動シャフトには前記無端循環経路内にその一部を臨ませて前記スプロケットから前記無端循環経路を介して送られてきた駆動力伝達子によって回転を促され同時に前記無端循環経路を介して前記回転駆動シャフトのスプロケットに向けて送り出すスプロケットロータを設け、前記スプロケットロータの外周面には、前記駆動力伝達子を嵌合させる断面半円形状の駆動力伝達子嵌合溝が軸方向へスパイラル状に設けられていることを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、前記回転駆動シャフトの側にスプロケットロータを取り付けたことを特徴とする、駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動装置において、前記回転駆動シャフトの側にスプロケットロータを取り付け、前記回転従動シャフトの側にスプロケットを取り付けたことを特徴とする、駆動装置。
【請求項4】
前記スプロケットにはその外周面に前記駆動力伝達子を嵌合させる球面ディンプル形状の駆動力伝達子嵌合穴が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記スプロケットにはその外周面に前記駆動力伝達子を嵌合させる底面が平面状の駆動力伝達子嵌合穴が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記スプロケットロータの外周面には、前記駆動力伝達子を嵌合させる半円形状の駆動力伝達子嵌合溝が軸方向へ設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記無端循環経路は、前記スプロケットと前記スプロケットロータが嵌まり込む部分を除いて前記ハウジング内に設置されたチューブで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記無端循環経路は、前記スプロケットと前記スプロケットロータが嵌まり込む部分を除いて前記ハウジング内に形成された連通路であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記無端循環経路は、前記スプロケットロータと前記スプロケットロータの間で直線的に形成されることを特徴とする、請求項2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動シャフトの回転を無端循環経路内に配設される一連の駆動力伝達子によって回転従動シャフトへ伝達する駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転駆動シャフトから回転従動シャフトへと回転力を伝達する伝動装置としては、ベルト、ロープ、チェーン、ギア、空気や液体等の作動流体、磁力等を用いるものが一般的である。
【0003】
また、特許文献1,2,3等に掲載されているように、無端循環経路内を移動する一連の駆動力伝達子を用いた伝動装置も公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-174206号公報
【文献】特開2004-218651号公報
【文献】特表2005-509810号公報
【文献】特開平5-187440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の伝動装置には、次のような問題がある。
【0006】
まず、ベルト、ロープ又はチェーンを用いるものは、駆動用及び従動用のプーリーやスプロケットを同一平面上に位置させることができる場合にしか適用できないので、適用範囲が限定される。
【0007】
また、ベルト又はロープを用いるものは、これら自身の伸びにより駆動ロスが発生する。同様に、作動流体を用いるものも、作動流体の圧縮、膨張等によって駆動ロスが発生する。
【0008】
ギアを用いるものは、回転駆動シャフトと回転従動シャフトとの距離や軸角度によっては歯車の製作が困難となり、装置への組み込みも難しくなる。したがって、この場合も適用範囲が限定される。
【0009】
さらに、駆動力伝達手段として無端循環経路内に連続して配設した駆動力伝達子(鋼球)を用い駆動力を伝達する装置は特許文献4により公知であるが、回転駆動力を往復動作に駆動変換するものであり、駆動力伝達手段として無端循環経路内に連続して配設した駆動力伝達子(鋼球)を用い、互いに交差する方向に向けた回転駆動シャフトと回転従動シャフトの間で、回転駆動シャフトの回転駆動力を回転従動シャフトへ回転駆動力として伝達するものは、知られていない。このような駆動力伝達装置を用いると、回転駆動シャフトに対して交差する方向に配置された回転従動シャフトに対して駆動力を伝達する場合のような従来公知の上記駆動力伝達手段では対応し難い場合に対応できる利点がある。
【0010】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、駆動ロスが少なく、従来技術では対応し難い互いに交差して離間配置された回転駆動シャフトと回転従動シャフトの間に回転駆動力を伝達できる駆動装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明係る駆動装置は、互いに交差する方向に回転駆動シャフトと回転従動シャフトを設けたハウジング内に無端循環経路を設け、この無端循環経路内を転動する複数の駆動力伝達子を用いて前記回転駆動シャフトから前記回転従動シャフトへ回転駆動力を伝達する駆動装置であって、前記回転駆動シャフトにはその一部を前記無端循環経路に臨ませて前記駆動力伝達子を前記回転従動シャフトに向けて連続的に送り出すスプロケットを設け、前記回転従動シャフトには前記無端循環経路内にその一部を臨ませて前記スプロケットから前記無端循環経路を介して送られてきた駆動力伝達子によって回転を促され同時に前記無端循環経路を介して前記回転駆動シャフトのスプロケットに向けて送り出すスプロケットロータを設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の本発明係る駆動装置は、請求項1に記載の駆動装置において、前記回転駆動シャフトの側にスプロケットロータを取り付けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の本発明係る駆動装置は、請求項1に記載の駆動装置において、前記回転駆動シャフトの側にスプロケットロータを取り付け、前記回転従動シャフトの側にスプロケットを取り付けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の本発明に係る駆動装置は、前記スプロケットにその外周面に,前記駆動力伝達子を嵌合させる球面ディンプルの駆動力伝達子嵌合穴が設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項5の本発明に係る駆動装置は、前記スプロケットにその外周面に、前記駆動力伝達子を嵌合させる底面が平面的な駆動力伝達子嵌合穴が設けられることを特徴とする。
【0016】
請求項6の本発明に係る駆動装置は、前記スプロケットロータの外周面に、前記駆動力伝達子を嵌合させる断面半円形状の溝部が軸方向へスパイラル状に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項7の本発明に係る駆動装置は、前記スプロケットロータの外周面に、前記駆動力伝達子を嵌合させる半円形状の溝部が軸方向に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項8の本発明に係る駆動装置は、前記無端循環経路が、前記スプロケットと前記スプロケットロータが嵌まり込む部分を除いて前記ハウジング内に設置されたチューブで形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項9の本発明に係る駆動装置は、前記無端循環経路が、前記スプロケットと前記スプロケットロータが嵌まり込む部分を除いて前記ハウジング内に形成された連通路であることを特徴とする。
【0020】
請求項10の本発明に係る駆動装置は、前記無端循環経路が、前記スプロケットと前記スプロケットロータの間で直線的に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の本発明によれば、回転駆動シャフトの回転によってスプロケットが回転すると、駆動側駆動力伝達子嵌合部によって駆動力伝達子に駆動力が付与され、無端循環経路内に配設された一連の駆動力伝達子が押されて無端循環経路に沿って移動する。このとき、従動側駆動力伝達子嵌合部を介してスプロケットロータが回転駆動され、回転従動シャフトが回転駆動される。このようにして、一連の駆動力伝達子によって回転駆動シャフトから回転従動シャフトへと回転駆動力が伝達される。
【0022】
請求項1の本発明によれば、一連の駆動力伝達子が無端循環経路内を駆動されることで回転駆動シャフトから回転従動シャフトへと回転が伝達されるので、回転駆動シャフトと回転従動シャフトの位置関係がどのような場合であっても適用でき、適用範囲が広い。また、駆動力伝達子によって回転駆動力が伝達されるので、フリクションが少なくて済み、駆動ロスを抑制することができる。
【0023】
ところで、請求項1の本発明において、駆動側駆動力伝達子嵌合部と従動側駆動力伝達子嵌合部は、これらをスプロケットとスプロケットロータのそれぞれの軸線を中心とする円周上に連続的に配設し、これに対応して、駆動側駆動力伝達子案内溝と従動側駆動力伝達子案内溝も、スプロケットとスプロケットロータのそれぞれの軸線を中心とする円周上に配設するのが好ましい。このようにすれば、スプロケットの回転力が駆動側駆動力伝達子嵌合部を介して駆動力伝達子に効率的に伝達され、且つ、一連の駆動力伝達子の移動力が従動側駆動力伝達子嵌合部を介してスプロケットロータに効率的に伝達されるからである。
【0024】
次に、請求項2の本発明に係る駆動装置は、回転駆動シャフトと回転従動シャフトの双方にスプロケットロータを用いたことから、両者のスプロケットロータの径を同じくすると、連絡路をより摩擦の少ない直線的かつ平行なものに構成できるものである。
【0025】
次に、請求項3の本発明に係る駆動装置は、回転駆動シャフトの側にスプロケットロータを用い、回転従動シャフトの側にスプロケットを用いたものである。
【0026】
次に、請求項4の本発明に係る駆動装置は、球状に形成した駆動力伝達子とフィットし易くなるものである。
【0027】
請求項5の本発明によれば、このように構成しても本発明の目的を達成できるものである。
【0028】
請求項6の本発明に係る駆動装置は、このように構成しても、本願発明の目的を達成で
きるものである。
【0029】
請求項7の本発明に係る駆動装置は、駆動力伝達子案内溝が前記駆動力伝達子の移動方向に沿って形成されるため、駆動力伝達子の移動がよりスムーズになるものである。
【0030】
請求項8の本発明によれば、無端循環経路の構成する専用のチューブがハウジング内に設けられることから、ハウジングの材料の選択範囲が広がり、製造コストを下げることができるものである。
【0031】
請求項9の本発明によれば、無端循環経路の形成が容易であるという利点がある。
【0032】
請求項10の本発明によれば、このように構成しても、本発明の目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1に係る駆動装置の、内部を透視した全体斜視図である。
図2図1の内部構造のみを示す斜視図である。
図3図1の駆動装置のA矢視図である。
図4図2の駆動装置のA矢視図である。
図5図1の駆動装置のB矢視図である。
図6図2の駆動装置のB矢視図である。
図7図1の駆動装置のC矢視である。
図8図2の駆動装置のC矢視図である。
図9】本発明の実施例2に係る駆動装置の変形例を示す説明図である。
図10】本発明の実施例3に係る駆動装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
図面によれば、図1図8において、この実施例1に係る駆動装置10は、互いに交差する方向に回転駆動シャフト11と回転従動シャフト12を設けたハウジング13内に無端循環経路20を設け、この無端循環経路20内を転動する複数の駆動力伝達子18,18,18・・・を用いて回転駆動シャフト11から回転従動シャフト12へ回転駆動力を伝達する駆動装置10であって、回転駆動シャフト11にはその一部を無端循環経路20に臨ませて駆動力伝達子18,18,18・・を回転従動シャフト12に向けて連続的に送り出すスプロケット15を設け、回転従動シャフト12には無端循環経路20内にその一部を臨ませて前記スプロケット15から無端循環経路20を介して送られてきた駆動力伝達子18,18,18・・・によって回転を促され同時に無端循環経路20を介して回転駆動シャフト11のスプロケット15に向けて送り出すスプロケットロータ16を設けたものである。以下詳述する。
【0036】
すなわち、本発明に係る駆動装置10は、回転駆動シャフト11と、回転従動シャフト12と、ハウジング13と、無端循環経路20と、この無端循環経路20内に充填された、例えば鋼球から成る多数の駆動力伝達子18,18,18・・・を備える。ハウジング13は、回転駆動シャフト11と回転従動シャフト12とを回転可能に保持している。回転駆動シャフト11と回転従動シャフト12は所定距離離れて互いに直交状態で交差している。なお、駆動力伝達子としては、鋼球のほかにローラや円盤を用いることもできる。
【0037】
ハウジング13は、一例として、互いに同じ大きさと形状をした第1ハウジング片13aと第2ハウジング片13bの組合せで形成され、第1ハウジング片13aと第2ハウジング片13bとが図示してないネジによって合体固着されている。第1ハウジング片13aと第2ハウジング片13bとの分割線は、回転駆動がシャフト11側においてはその軸部に対し直角方向から分割され、回転従動シャフト12の側においては軸方向に分割されている。ハウジング13の上部側には回転駆動シャフト11が回転自在に保持され、ハウジング13の下部側には回転駆動シャフト11と直交状態で離間配置された回転従動シャフト12が回転自在に保持されている。
【0038】
回転駆動シャフト11が、相手方部材との結合用のスプライン軸として形成され、回転従動シャフト12が、相手方部材との結合用のネジ孔を有する筒体として形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0039】
ハウジング13内には、スプロケット15とスプロケットロータ16とが回転可能に保持されている。スプロケット15は、回転駆動シャフト11に対して同一軸線X上に一体に形成されており、回転駆動シャフト11と常に一体に回転する。スプロケットロータ16は、回転従動シャフト12に対して同一軸線Y上に一体に形成されており、回転従動シャフト12と常に一体に回転する。
【0040】
スプロケット15は、回転駆動シャフト11よりも大径の円盤体である。スプロケット15の外周面には、駆動側駆動力伝達子嵌合部17が連続的に形成される。この駆動側駆動力伝達子嵌合部17は、一例として、駆動用の駆動力伝達子18,18,18・・・に対応する球面の一部で形成される球面ディンプル状の駆動力伝達子嵌合穴17aの集合である。駆動側駆動力伝達子嵌合部17は、駆動力伝達子嵌合穴17aをスプロケット15の外周面上にその円周方向に並べることによって形成される。駆動側駆動力伝達子嵌合部17は、球面ディンプル状のもののほか、底面が平面状の駆動力伝達子嵌合穴の集合であってもよい。
【0041】
スプロケットロータ16は、回転従動シャフト12よりも大径の円盤体である。スプロケットロータ16の外周面には、従動側駆動力伝達子嵌合部19が連続的に形成される。この従動側駆動力伝達子嵌合部19は、一例として、駆動用の駆動力伝達子18,18,18・・・に対応する断面略半円形状を呈したところの軸方向へスパイラル状に設けられた複数の駆動力伝達子嵌合溝19bの集合である。
【0042】
駆動側駆動力伝達子嵌合部17と従動側駆動力伝達子嵌合部19に嵌合する駆動力伝達子18、18,18・・・は、例えば剛性を有する鋼球であり、駆動装置10の無端循環経路20内に連続して一連に配設される。この一連の駆動力伝達子18,18,18・・・がスプロケット15の回転によって押されることにより無端循環経路20内を移動することで、スプロケット15の回転がスプロケットロータ16へと伝達される。
【0043】
スプロケット15とスプロケットロータ16は、チェーンとチェーンスプロケットとの組み合わせで構成されるそれ自体周知の鎖伝動装置に倣って言えば、一連の駆動力伝達子との組み合わせで駆動力伝達子伝動装置を構成する駆動力伝達子スプロケットということができる。
【0044】
無端循環経路20は、駆動側駆動力伝達子嵌合穴17aに嵌合した駆動力伝達子18,18,18・・・を連続的に案内するために、ハウジング13の内面に駆動側駆動力伝達子案内溝21を有する。この駆動側駆動力伝達子案内溝21は、スプロケット15の外周面の略半分に亘って延在している。同様に、無端循環経路20は、従動側駆動力伝達子嵌合部19に嵌合した駆動力伝達子18、18,18・・・を案内するために、ハウジング13の内面に従動側駆動力伝達子案内溝22を有する。この従動側駆動力伝達子案内溝22は、スプロケットロータ16の外周面の略半分に亘って延在している。指示記号21a、21aと22a、22aは、駆動側駆動力伝達子案合溝21と従動側駆動力伝達子案合溝22の端部である。
【0045】
実施例1では、駆動側駆動力伝達子案内溝21、従動側駆動力伝達子案内溝22とも、断面形状が駆動力伝達子18,18,18・・・に対応する半球状の溝として形成されているが、これには限定されず、駆動力伝達子18、18、18・・・に対応する断面コ字状等の溝として形成することもできる。
【0046】
駆動側駆動力伝達子案内溝21と従動側駆動力伝達子案内溝22は、同じく無端循環経路20を形成する2本の連通路23、23によって連結される。その結果、2本の連通路23,23と駆動側駆動力伝達子案内溝21と従動側駆動力伝達子案内溝22とによって、一連の駆動力伝達子18,18,18・・・の循環用の無端循環経路20が形成される。この無端循環経路20内には、駆動力伝達子潤滑用のグリースが充填される。実施例では、両連通路23,23とも、内周面の形状が駆動力伝達子18,18,18・・・に対応する円形の連通路として形成されているが、これには限定されず、内周面の形状が駆動力伝達子18,18,18・・・に対応する多角形の連通路として形成することもできる。なお、各連通路23は、ハウジング片13a,13b同士の組合せによって形成されるものであっても良いし、剛性を有するチューブをハウジング13内に固定することによって形成されるものであっても良い。なお、指示記号23a,23aは連通路23,23の各端部である。
【0047】
回転駆動シャフト11を回転させると、スプロケット15が回転するので、駆動側駆動力伝達子嵌合部17によって駆動力伝達子18,18,18・・・に駆動力が付与される。駆動側駆動力伝達子嵌合部17にて駆動力を得た駆動力伝達子18,18,18・・・は、連続的に連通路23内を押し出され、従動側駆動力伝達子嵌合部19に次々と嵌り込み、スプロケットロータ16を回転駆動させる。これにより、回転従動シャフト12が回転駆動される。回転駆動シャフト11から回転従動シャフト12への回転の伝達は、正逆双方向に可能である。
【0048】
本発明によれば、一連の駆動力伝達子18,18,18・・・が無端循環経路20内を駆動されることで回転駆動シャフト11から回転従動シャフト12へと回転が伝達されるので、回転駆動シャフト11と回転従動シャフト12の位置関係がどのような場合であっても適用でき、適用範囲が広い。また、駆動力伝達子18,18,18・・・によって回転駆動力が伝達されるので、フリクションが少なくて済み、駆動ロスを抑制することができる。
【0049】
また、実施例1の構成によれば、従動側駆動力伝達子案内溝22の両端部22a,22aが、スプロケットロータ16の軸線Y方向に離間して位置するので、図4からも明らかなように、連通路23にのみ急激な曲がり形状を持たせることなく無端循環経路20を形成することができる。よって、回転駆動シャフト11と回転従動シャフト12の位置関係にかかわらず、無端循環経路20を急激な曲がりのない全体として緩やかな曲がり形状にすることができる。これにより、回転駆動シャフト11から回転従動シャフト12への回転駆動力の伝達ロスを極力少なくできるとともに、連通路23,23の製作を容易に行うことができる。
【0050】
また、実施例1のものによれば、図4に示すように、従動側駆動力伝達子嵌合部19が、スプロケットロータ16の円周方向と交差する方向に延びる駆動力伝達子嵌合溝19bの並列的且つ連続的な集合によって形成されるので、スプロケットロータ16を汎用品として用いることができる。
【実施例2】
【0051】
図9は、さらにスプロケットロータの他の実施例を示す。図面によれば、この実施例2に係るスプロケットロータ30は、従動側駆動力伝達子嵌合部31を、スプロケットロータ30の軸線Y方向に延びる駆動力伝達子嵌合溝31aの並列的且つ連続的な集合によって形成することもできる。すなわち、従動側駆動力伝達子嵌合部31を構成する各駆動力伝達子嵌合溝31aが、スプロケットロータ30の円周方向に対して直交する態様である。この場合も、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0052】
図10は、本発明に係る駆動装置の他の実施例を示す。図10に簡略化して示すように、この実施例3に係る駆動装置35は、駆動側回転シャフトと従動側回転シャフトの双方に軸線X,Y方向の長さを有するスプロケットロータ36とスプロケットロータ37を用いたもので、各スプロケットロータ36とスプロケットロータ37の外周に上述した各実施例の駆動力伝達子嵌合部を設けるものである。このようにすれば、実施例1の連通路23の延在形状をより一層シンプルにでき、連通路23の直線化も可能となる。
【0053】
なお、本発明に係る駆動装置10や35は、従来のベルト、ロープ、チェーン、ギア、空気や流体等の作動流体による伝動方式と比較すると、駆動力伝達子が剛体のため、駆動ロスが少ないという利点がある。また、ベルト、ロープ、チェーン等で発生する伸びや、作動流体で発生する圧縮・膨張等の問題が生じないため、この点でも駆動ロスを抑制できる。
【0054】
さらに、ギアのように、回転駆動シャフトと回転従動シャフトとの位置関係(シャフト間の距離や軸角度)によっては歯車の製作が困難となる場合がある、等の問題もない。ギアの場合には歯車形状が制限されて製作が困難である場合でも、本発明の方式であれば、スプロケットとスプロケットロータのサイズを自由に変えることができ、装置への組み込みも容易となる。
【0055】
さらにまた、本発明の方式によれば、回転駆動シャフトと回転従動シャフトの位置関係を立体的に自由に設定できるほか、減速比などの組み合わせも自由であり、メンテナンスが不要であるか又は容易であり、スペース的にコンパクトである等、種々のメリットが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る駆動装置は、釣り糸等の巻き取り装置や、住宅窓用の開閉駆動機構のほか、産業機械、輸送機械等、様々な分野で利用可能である。とくに、回転駆動シャフト・回転従動シャフト間の急激な角度変更を狭いスペースで実現したい場合等、従来の伝動方式では対応しにくい状況にも好適に対応できる。よって、他分野への応用・展開の可能性が極めて大きい。
【符号の説明】
【0057】
10、35 駆動装置
11 回転駆動シャフト
12 回転従動シャフト
13 ハウジング
15 スプロケット
16、30、36、37 スプロケットロータ
17 駆動側駆動力伝達子嵌合部
17a 駆動力伝達子嵌合穴
18 駆動力伝達子
19、31 従動側駆動力伝達子嵌合部
19b 駆動力伝達子嵌合溝
20 無端循環経路
21 駆動側駆動力伝達子案内溝
22 従動側駆動力伝達子案内溝
23 連通路
31a 駆動力伝達子嵌合溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10