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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ボールバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
F16K5/06 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018065813
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173946
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 太
(72)【発明者】
【氏名】根岸 央樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-127864(JP,U)
【文献】特開2019-148317(JP,A)
【文献】特開2019-44929(JP,A)
【文献】実開平5-10461(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体貫通孔が設けられた弁本体と、
前記弁本体に取り付けられて前記弁本体貫通孔と連通するカバー部材貫通孔が設けられたカバー部材と、
前記弁本体に対して回動可能に軸支され、前記弁本体の前記弁本体貫通孔と前記カバー部材の前記カバー部材貫通孔とにより形成された流路と連通可能に設けられたボール弁体貫通孔を有するボール弁体と、
前記ボール弁体と前記弁本体との間に設けられた前記流路と前記ボール弁体との間を封止するための環状のシール部材とを備え、
前記シール部材は、前記ボール弁体貫通孔が前記シール部材の開口部に連通しない状態において、前記ボール弁体に接触する環状のボール弁体接触部を有しており、
前記ボール弁体は、前記ボール弁体貫通孔が前記シール部材の開口部に連通しない状態において、前記ボール弁体接触部に接触する環状の部分である閉鎖時接触部と、前記ボール弁体貫通孔の少なくとも一部が前記シール部材の開口部に連通した状態において、前記シール部材の前記ボール弁体接触部に対向する環状の部分である開放時対向部と、前記閉鎖時接触部よりも内部側に凹んでいる凹み部とを有しており、
前記ボール弁体において、前記凹み部は、前記開放時対向部の、前記閉鎖時接触部から遠ざかる側の一部の範囲を含むように形成されており、かつ、前記開放時対向部の全体を含むようには形成されていないことを特徴とするボールバルブ。
【請求項2】
前記ボール弁体は、下流側開口部および上流側開口部を有し、
前記凹み部は、前記ボール弁体において、前記閉鎖時接触部よりも前記ボール弁体貫通孔の前記下流側開口部または前記上流側開口部のいずれか一方の側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のボールバルブ。
【請求項3】
前記凹み部は、前記ボール弁体において、回動する前記ボール弁体における前記シール部材の該シール部材の軸線方向の投影部分の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のボールバルブ。
【請求項4】
前記閉鎖時接触部は球面の一部であり、前記凹み部の少なくとも一部は他の球面の一部であり、前記凹み部の前記少なくとも一部の径は、前記閉鎖時接触部の径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のボールバルブ。
【請求項5】
前記凹み部は、前記凹み部ではない部分に接続するつなぎ部を少なくとも1つ有しており、前記つなぎ部は、前記凹み部ではない部分に滑らかに接続することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のボールバルブ。
【請求項6】
前記つなぎ部の少なくとも一部は、前記ボール弁体において、回動する前記ボール弁体における前記シール部材の該シール部材の軸線方向の投影部分の範囲内に位置していることを特徴とする請求項5記載のボールバルブ。
【請求項7】
前記ボール弁体は、互いに背向する下流側平坦面および上流側平坦面を有し、
前記下流側平坦面および前記上流側平坦面は、前記ボール弁体貫通孔が前記シール部材の開口部に連通しない状態において、前記流路に面するようになっており、
前記下流側平坦面および前記上流側平坦面の間において、前記開放時対向部の、前記下流側平坦面側の一部には、前記凹み部が形成されていないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のボールバルブ。
【請求項8】
前記開放時対向部が前記シール部材と環状に接触している時、前記凹み部は、前記開放時対向部の前記凹み部ではない部分よりも弱く前記ボール弁体に押し付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のボールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガス供給会社のスマートメータに設けられるガス流入用のボールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガス等の気体や水等の液体(以下、流体という。)の流路の開閉にボールバルブが用いられている。このようなボールバルブにおいては、流路からの流体の漏洩を防止するために、弁本体と弁本体の内部に回動自在に設けられたボール弁体との間に環状のシール部材が設けられている。シール部材はボール弁体に接触して弁本体とボール弁体との間を封止している。ボールバルブの閉鎖状態において、ボール弁体が流路を閉じ、シール部材により流路からの流体の漏洩が防止されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-42720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来のボールバルブには、流体の漏洩防止のためにシール部材が設けられており、シール部材がボール弁体の球面状の表面に接触してボール弁体と流路との間が塞がれるようになっている。このため、ボール弁体の回動の際に、ボール弁体はシール部材の接触面上を摺動するので、ボール弁体とシール部材との間に摺動抵抗が発生する。特に、ボール弁体の回動開始時に大きな摺動抵抗が発生する。ボール弁体の回動時に大きな摺動抵抗が発生した場合、シール部材が破損したり、シール部材やボール弁体の姿勢が安定しなくなるおそれがある。このため、従来のボールバルブに対しては、ボール弁体とシール部材との間に発生する摺動抵抗を低減させることができる構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボール弁体とシール部材との間に発生する摺動抵抗を低減させることができるボールバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るボールバルブは、弁本体貫通孔が設けられた弁本体と、前記弁本体に取り付けられて前記弁本体貫通孔と連通するカバー部材貫通孔が設けられたカバー部材と、前記弁本体に対して回動可能に軸支され、前記弁本体の前記弁本体貫通孔と前記カバー部材の前記カバー部材貫通孔とにより形成された流路と連通可能に設けられたボール弁体貫通孔を有するボール弁体と、前記ボール弁体と前記弁本体との間に設けられた前記流路と前記ボール弁体との間を封止するための環状のシール部材とを備え、前記シール部材は、前記ボール弁体貫通孔が前記シール部材の開口部に連通しない状態において、前記ボール弁体に接触する環状のボール弁体接触部を有しており、前記ボール弁体は、前記ボール弁体貫通孔が前記シール部材の開口部に連通しない状態において、前記ボール弁体接触部に接触する環状の部分である閉鎖時接触部と、前記ボール弁体貫通孔の少なくとも一部が前記シール部材の開口部に連通した状態において、前記シール部材の前記ボール弁体接触部に対向する環状の部分である開放時対向部と、前記閉鎖時接触部よりも内部側に凹んでいる凹み部とを有しており、前記ボール弁体において、前記凹み部は、少なくとも前記開放時対向部の少なくとも一部の範囲に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るボールバルブにおいて、前記凹み部は、前記ボール弁体において、前記閉鎖時接触部よりも前記ボール弁体貫通孔の前記一方の開口の側に形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係るボールバルブにおいて、前記凹み部は、前記ボール弁体において、回動する前記ボール弁体における前記シール部材の該シール部材の軸線方向の投影部分の少なくとも一部に形成されている。
【0009】
本発明の一態様に係るボールバルブにおいて、前記閉鎖時接触部は球面の一部であり、前記凹み部の少なくとも一部は他の球面の一部であり、前記凹み部の前記少なくとも一部の径は、前記閉鎖時接触部の径よりも小さい。
【0010】
本発明の一態様に係るボールバルブにおいて、前記凹み部は、前記凹み部ではない部分に接続するつなぎ部を少なくとも1つ有しており、前記つなぎ部は、前記凹み部ではない部分に滑らかに接続する。
【0011】
本発明の一態様に係るボールバルブにおいて、前記つなぎ部の少なくとも一部は、前記ボール弁体において、回動する前記ボール弁体における前記シール部材の該シール部材の軸線方向の投影部分の範囲内に位置している。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るボールバルブによれば、ボール弁体とシール部材との間に発生する摺動抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るボールバルブの外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るボールバルブの流路が連通された状態を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るボールバルブの流路が閉鎖された状態を概略的に示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るボールバルブにおけるボール弁体の斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るボールバルブにおけるボール弁体の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るボールバルブにおけるボール弁体の正面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るボールバルブの弁本体の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図8図7に示す弁本体の断面図である。
図9図7に示す弁本体の上面図である。
図10】本発明の実施の形態に係るボールバルブのカバー部材の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図11図10に示すカバー部材の断面図である。
図12】本発明の実施の形態に係るボールバルブのシール部材の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図13図12に示すシール部材の断面図である。
図14図4~6に示すボール弁体における凹み部のつなぎ部を拡大して示すボール弁体の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、ボールバルブ1の外観構成を概略的に示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1の流路2が連通された状態を概略的に示す断面図であり、図3は、ボールバルブ1の流路2が閉鎖された状態を概略的に示す断面図である。また、図4~6は、図1に示すボールバルブ1におけるボール弁体30の斜視図である。以下、説明の便宜上、流路2が延びる方向(図1における矢印ab方向)を流路方向とし、矢印a方向を下流側、矢印b方向を上流側とする。また、流路方向に直交する方向(図1における矢印cd方向)を幅方向とし、矢印c方向を手前側、矢印d方向を奥側とする。さらに、流路方向及び幅方向に直交する方向(図1において矢印ef方向)を軸線X1方向とし、矢印e方向を左側、矢印f方向を右側とする。
【0016】
図1~6に示すように、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1は、弁本体10と、弁本体10に取り付けられたカバー部材20と、弁本体10に対して回動可能に軸支されたボール弁体30と、環状のシール部材50とを備えている。弁本体10には、弁本体貫通孔10hが設けられている。カバー部材20には、カバー部材20が弁本体10に取り付けられて、弁本体貫通孔10hと連通するカバー部材貫通孔20hが設けられている。ボール弁体30には、弁本体10の弁本体貫通孔10hとカバー部材20のカバー部材貫通孔20hとにより形成された流路2と連通可能に設けられたボール弁体貫通孔31が設けられている。シール部材50は、ボール弁体30と弁本体10との間に設けられた流路2とボール弁体30との間を封止するための環状の部材である。シール部材50は、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない状態において、ボール弁体30に接触する環状のボール弁体接触部52を有している。ボール弁体30は、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない状態において、ボール弁体接触部52に接触する環状の部分である閉鎖時接触部32と、ボール弁体貫通孔31の少なくとも一部(下流側開口部31aの少なくとも一部)がシール部材50の開口部51に連通した状態において、シール部材50のボール弁体接触部52に対向する環状の部分である開放時対向部33と、閉鎖時接触部32よりも内部側に凹んでいる凹み部34とを有している。ボール弁体30において、凹み部34は、少なくとも開放時対向部33の少なくとも一部の範囲に形成されている。以下、ボールバルブ1の構成について具体的に説明する。なお、ボールバルブ1は、ボール弁体30を回動させるモータ40が一体に取り付けられた構造を有している。
【0017】
図7は、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1の弁本体10の外観構成を概略的に示す斜視図である。図8は、図7に示す弁本体10の断面図であり、図9は、図7に示す弁本体10の上面図である。図1~3及び図7~9に示すように、弁本体10は、例えば、概ね全体が円筒形状又は略円筒形状に形成されている。弁本体10は、内面が筒状又は略円筒状であればよく、外形は種々の形状であってもよい。また、弁本体10は、例えば、樹脂や金属等で形成されている。また、弁本体10には、下流側(矢印a方向)の部分に、幅方向(矢印cd方向)において外側に突出したボールバルブ側連結部17が設けられている。弁本体10は、ボールバルブ側連結部17を介してモータ40と連結される。
【0018】
上述のように弁本体10は、弁本体貫通孔10hを有しており、具体的には、図1~3及び図7~9に示すように、弁本体貫通孔10hは、流路方向(矢印ab方向)に延びて、上端面10a及び下端面10bとの間において弁本体10を貫通する孔である。弁本体貫通孔10hは、上端面10a及び下端面10bに、開口である上流側開口部11及び下流側開口部12を夫々形成している。上流側(矢印b方向)に設けられた上流側開口部11は、円形状又は略円形状に形成されている。また、下流側(矢印a方向)に設けられた下流側開口部12は、上流側開口部11よりも直径の大きい円形状又は略円形状に形成されている。上流側開口部11は、流体(例えばガス)の流入口である。下流側開口部12は、上流側開口部11から流入される流体のカバー部材20への流出口である。弁本体10は、弁本体貫通孔10hにおいて、上流側開口部11から下流側開口部12へ向かうに連れて次第に内径が拡がる凹球面状の曲面からなる内周曲面14aと、内周曲面14aの下流側(矢印a方向)の端部から同一内径のまま更に下流側(矢印a方向)へ直線上に延びる円環状の内周面14bとによって形成された弁室14を有している。弁室14は、ボール弁体30を収容した状態で回動自在に軸支するための空間である。
【0019】
弁本体10において弁室14を形成する内周面14bには、モータ40の出力軸であるモータ出力軸41を弁室14の内部にまで挿通する貫通孔である出力軸挿通孔15が設けられている。また、内周面14bには、出力軸挿通孔15と回動軸線X1方向(矢印ef方向)において対向する部分に有底円筒形状又は有底略円筒形状の所定の深さを有する凹状の部分である軸支持孔16が設けられている。出力軸挿通孔15及び軸支持孔16は、同軸又は略同軸に配設されており、回動軸線X1を中心軸としている。弁本体10において弁室14を形成する内周曲面14aは、ボール弁体30の外周面との間に僅かな隙間を有して対向している。
【0020】
図10は、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1のカバー部材20の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図11は、図10に示すカバー部材20の断面図である。図1~3,10及び11に示すように、カバー部材20は、概ね全体が円筒形状又は略円筒形状に形成されている。カバー部材20の材料は、例えば、樹脂や金属等である。上述のようにカバー部材20には、カバー部材貫通孔20hが設けられており、カバー部材貫通孔20hは、具体的には、流路方向(矢印ab方向)、すなわち、回動軸線X1方向(矢印ef方向)と垂直な方向に沿って延びてカバー部材20を貫通している。カバー部材貫通孔20hは、カバー部材20において、開口である上流側開口部21及び下流側開口部22を形成している。
【0021】
上流側(矢印b方向)に設けられた上流側開口部21は、円形状又は略円形状に形成されており、弁本体10の下流側開口部12から流入される流体の流入口である。この上流側開口部21は、例えば、弁本体10の上流側開口部11の直径と同一又は略同一の直径に形成されている。下流側開口部22は、上流側開口部21よりも直径の大きい円形状又は略円形状に形成されており、上流側開口部21から流入された流体の図示しない配管への流出口である。上流側開口部21及び下流側開口部22の内径は同じ大きさであってもよく、又は、上流側開口部21の方が下流側開口部22よりも大きな内径を有していてもよい。カバー部材20は、弁本体10の下流側開口部12から弁本体貫通孔10hにカバー部材20の一部が挿入されるように嵌め込まれ、カバー部材20の外周壁20aが弁本体10の内周面14bに接触した状態で固定される。この固定状態において、弁本体10の弁本体貫通孔10hと、カバー部材20のカバー部材貫通孔20hとが連通し、ボールバルブ1における流体の流路2が形成される。
【0022】
また、カバー部材20には、シール部材50を弁本体10に係止するように、上流側に向かって突出するシール部材係合凸部23が設けられている。シール部材係合凸部23は、弁本体10の弁本体貫通孔10hとの間でシール部材50を挟持するように形成されている。具体的には、シール部材係合凸部23は、カバー部材20の上流側端面20bから流路方向上流側(矢印b方向)に向かって突出した円環状又は略円環状の凸部である。ボールバルブ1において、シール部材50の外周側の端部がシール部材係合凸部23と弁本体10の内周面14bとの間に挟持されて、シール部材50が保持される。
【0023】
図12は、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1のシール部材50の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図13は、シール部材50の断面図である。上述したように、シール部材50は、ボール弁体30と弁本体10との間に設けられて、流路2とボール弁体30との間を封止するための環状に延びる部材であり、内部に開口部51を形成している。シール部材50の開口部51は、シール部材50の軸線X2方向に延びる空間を形成している。開口部51は、図2に示すように、ボール弁体貫通孔31の下側開口部31aを内部に収容可能となるようになっており、例えば、開口部51の直径はボール弁体貫通孔31の下流側開口部31aの直径よりも大きくなっている。シール部材50は、開口部51の開放方向の一方に凸に曲がっており、延び方向に面する断面における形状(断面形状)がU字状又は略U字状となっている。なお、シール部材50の断面形状は、U字状又は略U字状に限られない。図1~3に示すように、ボールバルブ1において、シール部材50は、ボール弁体30側(流路方向上流側(矢印b方向))に向かって凸に曲がっており、ボール弁体30の閉鎖状態において、ボール弁体30の外周面に環状の範囲において接触するようになっており、ボール弁体30と弁本体10の内周面14bとの間の隙間を封止するようになっている。シール部材50は、例えば、ゴムや樹脂やエラストマー等のから形成された弾性部材である。また、シール部材50は、上述のように、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない状態において、つまりボール弁体30の閉鎖状態において(図3参照)、ボール弁体30に接触する環状のボール弁体接触部52を有している(図12参照)。ボール弁体接触部52は、ボール弁体30の外側の表面である外表面30aの一部であり、例えば、ボール弁体30側に凸の凸曲面となっている。ボール弁体接触部52の具体的構造については後述する。
【0024】
ボール弁体30は、具体的には、図4~6に示すように、概ね球状又は略球状に形成されており、例えば樹脂や金属等から形成されている。ボール弁体30には、上述したように、ボール弁体30を貫通する孔であるボール弁体貫通孔31が設けられており、ボール弁体貫通孔31は、弁本体10の上流側開口部11と同一又は略同一の内径を有しており、また、カバー部材20の上流側開口部21と同一又は略同一の内径を有している。ボール弁体貫通孔31は、ボール弁体30の回動軸線X1方向(矢印ef方向)とは垂直な方向に延びており、ボールバルブ1において、流路方向(矢印ab方向)に延びて流路2(弁本体貫通孔10h及びカバー部材貫通孔20h)に連通可能となっている。ボール弁体貫通孔31は、上流側(矢印b方向)の上流側開口部31bと下流側(矢印a方向)の下流側開口部31aとを形成している。
【0025】
また、ボール弁体30は、弁本体10の弁室14に回動自在に軸支された状態において出力軸挿通孔15と対向するように平坦に形成された円形状又は略円形状の平坦面35aを有している(図2,3参照)。この平坦面35aには、回動軸線X1を中心又は略中心として、所定形状及び所定深さの嵌合凹部である出力軸嵌合凹部36が形成されている。出力軸嵌合凹部36は、回動軸線X1方向(矢印ef方向)においてモータ40のモータ出力軸41と連結される円柱形状又は略円柱形状の空間を形成する所定深さの凹部である。
【0026】
また、ボール弁体30は、軸支持孔16よりも直径の大きな円形状又は略円形状の平坦面35bを有している(図2,3参照)。ボール弁体30の平坦面35aと平坦面35bとは背向し、互いに平行又は略平行な面を形成している。軸部37は弁本体10に回動軸線X1周りに回動可能に軸支される突起である。具体的には、軸部37は、ボール弁体30の平坦面35bに設けられており、回動軸線X1を中心又は略中心として所定径及び所定高さの円柱形状又は略円柱形状の突起状の部分である。軸部37は、弁本体10の軸支持孔16に回動可能に軸支される軸支持部として機能する部分である。軸部37の直径は、軸支持孔16の直径よりも僅かに小さい。ボール弁体30の軸部37と弁本体10の軸支持孔16との間には、回動軸線X1方向(矢印ef方向)において所定の隙間を有しており、ボール弁体30は、回動軸線X1方向(矢印ef方向)において僅かに移動可能となっている。
【0027】
出力軸嵌合凹部36と軸部37とは、同軸又は略同軸に配設されており、回動軸線X1を中心軸線としている。また、ボール弁体30は、下流側開口部31a及び上流側開口部31bから回動軸線X1周りに90度又は約90度回転移動した位置に夫々形成された一対の円形状又は略円形状の平坦面である下流側平坦面38及び上流側平坦面39を有している。下流側平坦面38及び上流側平坦面39は互いに平行又は略平行であり、回動軸線X1方向(矢印ef方向)及びボール弁体貫通孔31の延び方向(軸線X3方向)に直交又は略直交する方向において互いに背向している。図3に示すように、ボール弁体30の閉鎖状態において、下流側平坦面38は下流側に位置し、上流側平坦面39は上流側に位置し、流路2方向に面するようになっている。また、下流側平坦面38の直径は、シール部材50の開口部51の直径よりも小さくなっており、ボール弁体30の閉鎖状態において、下流側平坦面38はシール部材50の開口部51の内部に入り込むようになっている。このため、ボール弁体30の閉鎖状態において、ボール弁体30は下流側平坦面38よりも上流側平坦面39側の部分においてシール部材50に接触するようになっている。
【0028】
また、ボール弁体30は、上述したように、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない閉鎖状態において、ボール弁体接触部52に接触する環状の閉鎖時接触部32と、ボール弁体貫通孔31の下流側開口部31aの少なくとも一部がシール部材50の開口部51に連通した開放状態において、シール部材50のボール弁体接触部52に対向する環状の開放時対向部33とを有している。また、ボール弁体30は、閉鎖時接触部32よりも内部側に凹んでいる凹み部34を有している。閉鎖時接触部32、開放時対向部33、及び凹み部34の構成の詳細については後述する。なお、閉鎖状態とは、上述のように、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない状態であり、図3に示すボール弁体貫通孔31が流路2に直交する方向に向いた状態のみならず、図3の状態からボール弁体30が回転して、下流側開口部31a又は上流側開口部31bがシール部材50の開口51内に入り、ボール弁体貫通孔31が下流側において流路2に連通する寸前までの状態も含む。また、閉鎖状態とは、この、下流側開口部31a又は上流側開口部31bがシール部材50の開口51内に入り、ボール弁体貫通孔31が下流側において流路2に連通する寸前までの状態の少なくとも1つの状態(ボール弁体30の姿勢)であってもよい。また、開放状態とは、上述のように、ボール弁体貫通孔31の下流側開口部31aの少なくとも一部がシール部材50の開口部51に連通した状態であり、図2に示すボール弁体貫通孔31が流路2方向に向いた状態のみならず、図2の状態からボール弁体30が回転して、下流側開口部31aがシール部材50の開口1内から外れ、シール部材50により弁本体10とボール弁体30との間が封止される寸前までの状態も含む。また、開放状態とは、この、下流側開口部31aがシール部材50の開口51内から外れ、シール部材50により弁本体10とボール弁体30との間が封止される寸前までの状態の少なくとも1つの状態(ボール弁体30の姿勢)であってもよい。下流側開口部31aの一部がシール部材50の開口51内から外れた状態を開放状態とする場合、開放時対向部33は、無端の環状ではなく、一部を欠く環状となる。本実施の形態においては、開放状態とは、下流側開口部31aがシール部材50の開口51内に収容されている状態である。
【0029】
また、モータ40は、例えば、ステッピングモータ、DC(direct current)モータ、ブラシレスDCモータ等である。図1~3に示すように、モータ40の本体の外周面には、幅方向(矢印cd方向)へ夫々突出したモータ側連結部43が設けられている。モータ側連結部43は、弁本体10のボールバルブ側連結部17に連結される部分であり、例えば、ネジやスナップフィット等により連結される。モータ40には、例えば、モータ40をコントロールするコントローラ等から図示しないリード線を介して駆動信号が供給され、この駆動信号に基づいてモータ出力軸41が回動駆動される。
【0030】
モータ40のモータ出力軸41は、弁本体10の出力軸挿通孔15に挿通され、モータ40は、モータ出力軸41を介してボール弁体30を回動駆動させることが可能となる。モータ出力軸41には、ボール弁体30の出力軸嵌合凹部33と嵌合する出力軸嵌合凸部42が設けられている。モータ40のモータ出力軸41とボール弁体30の出力軸嵌合凹部33との間には、回動軸線X1方向(矢印ef方向)において所定の隙間を有している。モータ40の出力軸嵌合凸部42とボール弁体30の出力軸嵌合凹部33の嵌合には、例えばDカットが用いられており、この場合、回動軸線X1方向(矢印ef方向)に沿って対向する位置に2つの平面が形成されることでD状のカット部分が形成された支柱からなる出力軸嵌合凸部42と、上述の2つの平面に対向する2つの平面が形成された出力軸嵌合凹部33が用いられている。但し、出力軸嵌合凹部33と出力軸嵌合凸部42との嵌合はDカットによるものに限られず、例えば、出力軸嵌合凸部42として周方向に沿って外側に歯状の溝が形成され、出力軸嵌合凹部33として出力軸嵌合凸部42に形成された歯状の溝と対向する内側に、互いに噛合する歯状の溝が形成されたスプラインやセレーションが用いられてもよい。
【0031】
モータ40の出力軸嵌合凸部42とボール弁体30の出力軸嵌合凹部33との嵌合は、モータ40の回動方向においては、モータ40のモータ出力軸41とボール弁体30とが一体に回動する一方、回動軸線X1方向(矢印ef方向)においては、モータ40のモータ出力軸41に対して、上述した隙間の分だけボール弁体30が僅かに移動可能となっている。モータ40のモータ出力軸41は、出力軸挿通孔15、軸支持孔16、出力軸嵌合凹部36、及び軸部37と同軸又は略同軸であり、回動軸線X1を中心軸線としている。
【0032】
なお、弁本体10の下流側開口部12とカバー部材20の外周面との間には、Oリング60が取り付けられており、弁本体10とカバー部材20との間の隙間を封止している。また、弁本体10の出力軸挿通孔15を形成している弁本体10の内周面とモータ40のモータ出力軸41の外周面との間にはOリング61が取り付けられており、弁本体10とモータ出力軸41との隙間を封止している。
【0033】
シール部材50は、図2,3,13に示すように、開口部51を画成する部分の一部又は全体において、ボール弁体30の外表面30aに接触するようになっており、開口部51を画成する部分に、環状のボール弁体接触部52を有している。ボール弁体接触部52は、上述したように、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない閉鎖状態において、ボール弁体30に接触する環状のボール弁体50の外表面30aの部分である。
【0034】
また、ボール弁体30は、図3、4,5に示すように、下流側平坦面38を取り囲むように、環状の閉鎖時接触部32を有している。閉鎖時接触部32は、上述したように、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しない閉鎖状態において、ボール弁体接触部52に接触するボール弁体30の外表面30aの部分である。閉鎖時接触部32は、例えば、円環状又は略円環状の部分であり、下流側平坦面38と同心又は略同心に位置している。ボール弁体30の閉鎖状態において、ボール弁体30の閉鎖時接触部32が、シール部材50のボール弁体接触部52に全周に亘って接触して、ボール弁体30と弁本体10の内周面14bとの間を封止するように、シール部材50及びボール弁体30は形成されており、また、弁本体10において位置決めされている。
【0035】
また、ボール弁体30は、図2、4,6に示すように、下流側開口部31aを取り囲むように、環状の開放時対向部33を有している。開放時対向部33は、上述したように、ボール弁体貫通孔31の下流側開口部31aの少なくとも一部がシール部材50の開口部51に連通した開放状態において、ボール弁体接触部52に対向するボール弁体30の外表面30aの部分である。開放時対向部33は、ボール弁体30の開放状態において、ボール弁体接触部52に接触していてもよく、部分的にボール弁体接触部52に接触していてもよく、また、ボール弁体接触部52に接触しておらず、ボール弁体接触部52に対向して近接していてもよい。開放時対向部33のボール弁体接触部52へのこの対向の形態は、凹み部34の形成範囲に基づく。開放時対向部33は、例えば、円環状又は略円環状の部分であり、下流側開口部31aと同心又は略同心に位置している。ボール弁体30の開放状態において、ボール弁体30の開放時対向部33が、上述のようにシール部材50のボール弁体接触部52に対向するように、シール部材50及びボール弁体30、凹み部34は形成されており、また、弁本体10において位置決めされている。
【0036】
シール部材50のボール弁体接触部52は、ボール弁体30の閉鎖時接触部32と接触するシール部材50の部分と、ボール弁体30の開放時対向部33と対向するシール部材50の部分とを含む部分である。つまり、閉鎖時にボール弁体30がシール部材50に接触する部分と、開放時にボール弁体30がシール部材50に対向する部分とが一致する場合は、閉鎖時接触部32はボール弁体接触部52の全体に接触し、また、開放時対向部33はボール弁体接触部52の全体に接触する。一方、閉鎖時にボール弁体30がシール部材50に接触する部分と、開放時にボール弁体30がシール部材50に対向する部分とが一致しない場合は、閉鎖時接触部32はボール弁体接触部52の一部に接触し、また、開放時対向部33はボール弁体接触部52の一部に接触する。また、閉鎖時にボール弁体30がシール部材50に接触する部分に、開放時にボール弁体30がシール部材50に対向する部分が含まれる場合は、閉鎖時接触部32はボール弁体接触部52の全体に接触し、また、開放時対向部33はボール弁体接触部52の一部に接触する。一方、開放時にボール弁体30がシール部材50に接触する部分に、閉鎖時にボール弁体30がシール部材50に対向する部分が含まれる場合は、開放時対向部33はボール弁体接触部52の全体に接触し、また、閉鎖時接触部32はボール弁体接触部52の一部に接触する。
【0037】
図4~6において、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とは、下流側開口部31aと下流側平坦面38との間のボール弁体30の外表面30aにおいて重なっていないが、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とは、下流側開口部31aと下流側平坦面38との間のボール弁体30の外表面30aにおいて一部が重なっていてもよい。
【0038】
また、図4~6に示すように、ボール弁体30は、閉鎖時接触部32よりも内部側に凹んでいる部分である凹み部34を有している。具体的には、凹み部34は、閉鎖時接触部32が位置するボール弁体30の外表面30aよりもボール弁体30の内部側(中心側)に外表面30aから凹んだボール弁体30の部分である。凹み部34におけるボール弁体30の中心からの径は、閉鎖時接触部32におけるボール弁体30の中心からの径よりも小さくなっている。また、ボール弁体30において、凹み部34は、少なくとも開放時対向部33の少なくとも一部の範囲に形成されている。具体的には、凹み部34は、ボール弁体30において、閉鎖時接触部32よりもボール弁体30の回転方向においてボール弁体貫通孔31の下流側開口部31a側に形成されており、凹み部34は、閉鎖時接触部32には形成されていない。例えば、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とが重なっていない場合は、凹み部34は、開放時対向部33の全体を含んで形成されていてよく、または、開放時対向部33の一部を含んで形成されていてもよい。一方、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とが重なっている場合は、凹み部34は、開放時対向部33の全体を含んでおらず、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とが重なる部分よりもボール弁体30の回転方向において下流側開口部31a側に広がる開放時対向部33を含んで形成されていてよく、または、閉鎖時接触部32と開放時対向部33とが重なる部分よりもボール弁体30の回転方向において下流側開口部31a側に広がる開放時対向部33の一部を含んで形成されていてもよい。また、凹み部34は、閉鎖時接触部32の部分には形成されていない。
【0039】
凹み部34は、例えば、図4~6に示すように、球面又は略球面の一部である凹み部底面34aを有している。凹み部底面34aが沿う球面は、閉鎖時接触部32が沿う球面と中心点が同じ又は略同じであり、凹み部底面34aが沿う球面の径は、閉鎖時接触部32が沿う球面の径よりも小さくなっている。凹み部底面34aが沿う球面は、閉鎖時接触部32が沿う球面と中心点が異なっていてもよい。また、凹み部34は、図4~6に示すように、凹み部底部34aとボール弁体30の凹み部34に隣接する外表面30aとを滑らかに接続する部分であるつなぎ部34bを有している。つなぎ部34bの少なくとも一部は、回動するボール弁体30におけるシール部材50の軸線X2方向の投影部分の範囲内に位置している。より具体的には、つなぎ部34bの少なくとも一部は、回動するボール弁体30におけるシール部材50のボール弁体接触部52の軸線X2方向の投影部分の範囲(以下、シール部材投影範囲、ともいう。)内に位置している。
【0040】
凹み部34は、例えば、図4,6に示すように、下流側開口部31aの周りに近接して設けられており、軸部37よりもボール弁体30の回転方向において下流側平坦面38側の部分が欠けている球帯状に延びている。また、凹み部34は、ボール弁体貫通孔31の延び方向(ボール弁体貫通孔31aの軸線X3方向)において、下流側開口部31aと、軸部37よりも下流側開口部31a側の位置との間に延びている。凹み部34において凹み部底面34aは、軸部37よりもボール弁体30の回転方向に下流側平坦面38側の部分が欠けている球帯面であり、ボール弁体貫通孔31の軸線Y3周り方向の一対の端部に端縁34cが夫々形成されている。端縁34cは、円弧を描いており、軸線X3周りに軸部37よりも下流側平坦面38側に位置している。また、ボール弁体貫通孔31の軸線X3方向における上流側開口部31b側の凹み部34の端縁には、図6に示すように、凹み部底面34aとボール弁体30の外表面30aとの間に延びる段差面34dが形成されている。また、凹み部34においてつなぎ部34bは、凹み部底面34aの端縁34cと、凹み部34にボール弁体貫通孔31の軸線X3周りに方向において接するボール弁体30の外表面30aとの間に延びている曲面である。凹み部底面34aにおいて一対の端縁34cは、下流側平坦面38に対して、ボール弁体貫通孔31の軸線X3周りに対称又は略対称の位置に設けられており、同様に、つなぎ部34bは、下流側平坦面38に対して、ボール弁体貫通孔31の軸線X3周りに対称又は略対称の位置に設けられている。
【0041】
より具体的には、図6に示すように、凹み部底面34aの端縁34cは、ボール弁体貫通孔31の軸線X3を含む平面上に位置しており、図6に示すように、ボール弁体30をボール弁体貫通孔31の軸線X3方向に見た場合、端縁34cは直線に見える。また、つなぎ部34bは、端縁34cの描く円弧が立体的に平行移動して形成された曲面である。より具体的には、図14に示すように、下流側開口部31aの径は一定であるため、凹み部底面34aにおける下流側開口部31aの部分と、ボール弁体30の外表面30aにおける下流側開口部31aの部分とは、ボール弁体貫通孔31の軸線X3方向における高さが異なっている。凹み部底面34aにおける下流側開口部31aの部分は、ボール弁体30の外表面30aにおける下流側開口部31aの部分よりも、軸線X3方向において内部側に位置している。また、つなぎ部34bにおける下流側開口部31aの部分は、凹み部底面34aにおける下流側開口部31aの部分と、ボール弁体30の外表面30aにおける下流側開口部31aの部分とを滑らかにつないでいる。つなぎ面34bは、このつなぎ部34bにおける下流側開口部31aの部分に沿って、凹み部底部34aの端縁34c(端縁34cが描く線)を平行移動して形成した曲面である。このように、つなぎ面34bは、凹み部底部34aとボール弁体30の外表面30aとを滑らかに接続している。
【0042】
ボール弁体30の開放状態において、凹み部34は、シール部材50のボール弁体接触部52に対向しており、本実施の形態においては、凹み部34はボール弁体接触部52に環状に接触している。なお、上述したように、ボール弁体30の開放状態において、凹み部34はボール弁体接触部52に接触していなくてもよい。ボール弁体30の開放状態においてシール部材50がボール弁体30に環状に接触しておらず、ボール弁体30と弁本体10の内周面14bとの間が封止されていなくても、流路2における弁本体10とカバー部材20との間の隙間はOリング60によって封止されており、流路2から流体が漏れることはない。シール部材50が凹み部34に接する場合、シール部材50の姿勢を安定させることができる。
【0043】
次いで、上述した構成を有するボールバルブ1の動作について説明する。図3に示すような、ボール弁体貫通孔31がシール部材50の開口部51に連通しないボール弁体30の閉鎖状態において、シール部材50のボール弁体接触部52はボール弁体30の閉鎖時接触部32と環状に接触している。これにより、ボール弁体30と弁本体10の内周面14bとの間がシール部材50によって封止され、弁本体10の上流側開口部11から流入してくる流体がシール部材50を超えて下流側に流出することが防止されている。一方、図2に示すような、ボール弁体貫通孔31下流側開口部31aがシール部材50の開口部51に収容されたボール弁体30の開放状態において、ボールバルブ1の流路2(弁本体貫通孔10h及びカバー部材貫通孔20h)とボール弁体貫通孔31とは連通し、弁本体10の上流側開口部11からカバー部材20の下流側開口部22に向かって流体を流すことができる。モータ40によりボール弁体30が回動され、ボール弁体30は開放状態と閉鎖状態との間を動く。
【0044】
上述のように、ボールバルブ1のボール弁体30において、凹み部34は、ボール弁体30の開放時対向部33の全体に形成されておらず、図6に示すように、下流側平坦面38と上流側平坦面39との間において軸部37よりも下流側平坦面38側の開放時対向部33の部分には凹み部34は形成されていない。このため、ボール弁体30の開放状態において、シール部材50の凹み部34に接触する部分は、シール部材50の凹み部34ではない部分(ボール弁体30の外表面30a)に接触する部分よりも弱くボール弁体30に押し付けられている。ボール弁体30が開放状態から閉鎖方向に回動される際、モータ40は、ボール弁体30とシール部材50との間の接触により発生する静止摩擦力に抗してボール弁体30を回動させなければならない。従来の凹み部34を有しないボールバルブにおいては、ボール弁体が開放状態から閉鎖方向に回動される際、ボール弁体のシール部材との接触部のボール弁体の軸部よりも上流側平坦面側の部分がシール部材に押しけられる方向に動くため、この部分に他の部分よりも大きな静止摩擦力が発生することになる。これに対して、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1においては、このボール弁体30が開放状態から閉鎖方向に回動される際に他の部分よりも大きな静止摩擦力が発生する部分に、つまり、ボール弁体30開放時対向部33の軸部37よりも上流側平坦面39側の部分(以下、押し付け部分ともいう。)に、ボール弁体30の外表面30aよりも内部側に凹んだ凹み部34が形成されているので、押し付け部分はシール部材50に従来のように強く押し付けられることはなく、この押し付け部分に従来のように大きな最大静止摩擦力部分が発生することはない。このため、ボールバルブ1においては、ボール弁体30の開放状態からの回動時にシール部材50から受ける摺動抵抗を低減することができ、ボール弁体30が回動時にシール部材50から受ける摺動抵抗を低減することができる。
【0045】
また、ボール弁体30においては、図6に示すように、凹み部34が開放時対向部33の上述の押し付け部分よりもボール弁体貫通孔31の軸線X3に向かって延びており、下流側開口部31aまで至っている。このため、ボール弁体30の回動時にシール部材50から受ける摺動抵抗をより広い範囲で低減することができる。
【0046】
また、回動するボール弁体30におけるシール部材50の軸線X2方向の投影部分の範囲内(シール部材投影範囲内)において、上述のボール弁体30においてはシール部材50が摺動するボール弁体30において、凹み部底面34aとボール弁体30の外表面30aとは、つなぎ部34bによって滑らかに接続されている。このため、ボール弁体30がシール部材50に対して摺動しても、シール部材50はベール弁体50に滑らかに接触し、ボール弁体30の回動時におけるシール部材50の姿勢を安定させることができる。このため、ボール弁体30が閉鎖状態になる際のシール部材50の姿勢を望ましい姿勢に維持することができ、ボール弁体30が閉鎖状態におけるシール部材50のシール性能を安定して維持することができる。
【0047】
閉鎖時においては、凹み部34よりも外周側に出っ張った閉鎖時接触部32において、言い換えると、凹み部34よりも径方向において高い位置にある閉鎖時接触部32において、シール部材接触部52は弁本体30に接触する。このため、閉鎖時においてシール部材50は開放時に比べてより深くボール弁体30に押し付けられ、閉鎖時におけるシール部材50の封止性を高めることができる。このように、ボールバルブ1は、閉鎖時におけるシール部材50の高い封止性を維持しつつ、シール部材50に加わる摺動抵抗を低減させることができる。
【0048】
上述のように、本発明の実施の形態に係るボールバルブ1によれば、ボール弁体30とシール部材50との間に発生する摺動抵抗を低減させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0050】
例えば、凹み部34は、下流側開口部31aの周りに球帯状に設けられているとしたが、凹み部34は、他の形状で(又は範囲に)設けられていてもよい。凹み部34は、回動するボール弁体30におけるシール部材50のボール弁体接触部52の軸線X2方向の投影部分の範囲内(シール部材投影範囲)の一部又は全部に広がっていてもよい。但し、凹み部34は、閉鎖時接触部32には形成されていない。また、凹み部34は、シール部材投影範囲を超えて、閉鎖時接触部32を除いたボール弁体30の外表面30aに広がっていてもよい。
【0051】
また、凹み部34のつなぎ部34bは、凹み部底面34aの端縁34cが立体的に平行移動して形成された曲面としたが、つなぎ部34bの形状は他の形状であってもよく、例えば、他の曲面や平面、曲面と平面の組み合わせであってもよい。また、つなぎ部34bは、回動するボール弁体30におけるシール部材50のボール弁体接触部52の軸線X2方向の投影部分の範囲ではない凹み部34の端縁に設けられていてもよい。例えば、凹み部34において、段差面34dが形成されている端縁にもつなぎ部34bが形成されていてもよい。この場合、凹み部34は段差面34cを有さない。また、凹み部34は、つなぎ部34bを有していなくてもよい。
【0052】
また、シール部材50の断面形状は、U字状又は略U字状に形成されているとしたが、シール部材50の断面形状は他の形状であってもよい。例えば、シール部材50の断面形状は、V字状又は略V字状に形成されていてもよく、J字又は略J字状に形成されていてもよく、他の曲線状、直線状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ボールバルブ、2…流路、10…弁本体、10a…上端面、10b…下端面、10h…弁本体貫通孔、11…上流側開口部、12…下流側開口部、14…弁室、14a…内周曲面、14b…内周面、15…出力軸挿通孔、16…軸支持孔、17…ボールバルブ側連結部、20…カバー部材、20h…カバー部材貫通孔、20a…外周壁、20b…上流側端面、21…上流側開口部、22…下流側開口部、23…シール部材係合凸部、30…ボール弁体、30a…外表面、31…ボール弁体貫通孔、31a…下流側開口部、31b…上流側開口部、32…閉鎖時接触部、33…開放時対向部、34…凹み部、34a…凹み部底面、34b…つなぎ部、34c…端縁、34d…段差面、35a,35b…平坦面、36…出力軸嵌合凹部、37…軸部、38…下流側平坦面、39…上流側平坦面、40…モータ、41…モータ出力軸、42…出力軸嵌合凸部、43…モータ側連結部、50…シール部材、50a…凹部、51…開口部、52…ボール弁体接触部、53…内側片、54…外曲面、55…嵌合凹部、56…接触部、60,61…Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14