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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】排ガス浄化再生装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/22 20060101AFI20220922BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220922BHJP
   F01N 3/34 20060101ALI20220922BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
F01N3/22 301F
F01N3/24 T ZAB
F01N3/34 301R
F01N3/22 301G
F02B37/16 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018066050
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173741
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 崇紀
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202017105126(DE,U1)
【文献】特開2010-159672(JP,A)
【文献】特開2016-113950(JP,A)
【文献】特開2010-013974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0083700(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015223495(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38,9/00-11/00
F02B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流路に設けられたコンプレッサの上流側と下流側とを連通させるエアバイパス流路と、
前記エアバイパス流路を開閉するエアバイパスバルブと、
前記エアバイパス流路から分岐し、排気ガス浄化部を有する排気流路と連通する分岐流路と、
前記分岐流路を開閉する分岐バルブと、
前記エアバイパスバルブの駆動状態に基づいて、前記分岐バルブの開度を制御する制御部と、
前記吸気流路のうち、前記コンプレッサの下流側と前記エアバイパス流路との接続箇所より下流側に配置されるインテークマニホールドと、
を備え
前記エアバイパスバルブは、前記吸気流路から前記エアバイパス流路に流入する圧縮空気の圧力が、前記インテークマニホールド内の圧力よりも大きくなるときに開状態となるバルブである排ガス浄化再生装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記エアバイパスバルブが開状態である場合に、前記分岐バルブを開状態に制御し、
前記エアバイパスバルブが閉状態である場合に、前記分岐バルブを閉状態に制御する
請求項1に記載の排ガス浄化再生装置。
【請求項3】
前記制御部は、エンジン負荷に応じて決定される空燃比に応じて、前記分岐バルブの開度を制御する
請求項1または2に記載の排ガス浄化再生装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記空燃比が理論空燃比またはリッチであり、前記エアバイパスバルブが開状態である場合に、前記分岐バルブを開状態に制御し、
前記空燃比がリーン、または、前記エアバイパスバルブが閉状態である場合に、前記分岐バルブを閉状態に制御する
請求項3に記載の排ガス浄化再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気流路に設けられる排気ガス浄化部(例えば、触媒)の温度が目標温度以下である場合、過給機を駆動させ、吸気流路からEGR流路を介して排気流路に空気を供給し、排気ガス浄化部の温度を高める排ガス浄化再生装置について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-332925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、吸気流路からEGR流路を介して排気流路に空気を供給するために、吸気圧を排気圧よりも高くする必要があり、過給機のコンプレッサを回転駆動させる電動機を設ける必要があった。したがって、特許文献1では、排気ガス浄化部を再生させる排ガス浄化再生装置の構成が複雑になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で、排気ガス浄化部を再生可能な排ガス浄化再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による排ガス浄化再生装置は、吸気流路に設けられたコンプレッサの上流側と下流側とを連通させるエアバイパス流路と、前記エアバイパス流路を開閉するエアバイパスバルブと、前記エアバイパス流路から分岐し、排気ガス浄化部を有する排気流路と連通する分岐流路と、前記分岐流路を開閉する分岐バルブと、前記エアバイパスバルブの駆動状態に基づいて、前記分岐バルブの開度を制御する制御部と、前記吸気流路のうち、前記コンプレッサの下流側と前記エアバイパス流路との接続箇所より下流側に配置されるインテークマニホールドと、を備え、前記エアバイパスバルブは、前記吸気流路から前記エアバイパス流路に流入する圧縮空気の圧力が、前記インテークマニホールド内の圧力よりも大きくなるときに開状態となるバルブである
【0007】
前記制御部は、前記エアバイパスバルブが開状態である場合に、前記分岐バルブを開状態に制御し、前記エアバイパスバルブが閉状態である場合に、前記分岐バルブを閉状態に制御してもよい。
【0008】
前記制御部は、エンジン負荷に応じて決定される空燃比に応じて、前記分岐バルブの開度を制御してもよい。
【0009】
前記制御部は、前記空燃比が理論空燃比またはリッチであり、前記エアバイパスバルブが開状態である場合に、前記分岐バルブを開状態に制御し、前記空燃比がリーン、または、前記エアバイパスバルブが閉状態である場合に、前記分岐バルブを閉状態に制御してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、排気ガス浄化部を再生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のエンジンシステムの構成を示す概略図である。
図2】分岐バルブ制御部によるGPFの再生処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態のエンジンシステム100の構成を示す概略図である。なお、図1中、信号の流れを破線の矢印で示す。図1に示すように、エンジンシステム100は、エンジン102およびECU(Engine Control Unit)104が設けられている。ECU104は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータにより構成され、エンジン102全体を統括制御する。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0014】
エンジン102は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10と一体形成されたクランクケース12と、シリンダブロック10に連結されたシリンダヘッド14とが設けられている。
【0015】
シリンダブロック10には、複数のシリンダ16が形成されており、シリンダ16には、ピストン18が摺動自在にコネクティングロッド20に支持される。そして、シリンダヘッド14と、シリンダ16と、ピストン18の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室22として形成される。
【0016】
また、エンジン102には、クランクケース12によってクランク室24が形成されており、クランク室24内にクランクシャフト26が回転自在に支持される。クランクシャフト26には、コネクティングロッド20を介してピストン18が連結される。
【0017】
シリンダヘッド14には、吸気ポート28および排気ポート30が燃焼室22に連通するように形成される。
【0018】
吸気ポート28には、インテークマニホールド32を含む吸気流路34が接続される。吸気ポート28は、インテークマニホールド32に臨む吸気の上流側に1つの開口が形成されている。また、吸気ポート28は、燃焼室22に臨む下流側に2つの開口が形成されている。これにより、吸気ポート28は、上流から下流に向かう途中で流路が2つに分岐される。吸気ポート28は、吸気の上流側でインテークマニホールド32と連通し、吸気の下流側で各シリンダ16と連通する。インテークマニホールド32の集合部には、吸気流路34が連通される。
【0019】
吸気ポート28と燃焼室22との間には、吸気バルブ36の先端(傘)が位置している。吸気バルブ36の末端には、ロッカーアーム38を介して、吸気用カムシャフト40に固定されたカム42が当接されている。吸気バルブ36は、吸気用カムシャフト40の回転に伴って、吸気ポート28を燃焼室22に対して開閉する。
【0020】
排気ポート30には、エキゾーストマニホールド44を含む排気流路46が接続される。排気ポート30は、燃焼室22に臨む排気の上流側に2つの開口が形成されている。また、排気ポート30は、エキゾーストマニホールド44に臨む下流側に1つの開口が形成されている。これにより排気ポート30は、上流から下流に向かう途中で流路が1つに統合される。排気ポート30は、排気の上流側で各シリンダ16と連通し、排気の下流側でエキゾーストマニホールド44と連通する。エキゾーストマニホールド44の集合部には、排気流路46が連通される。
【0021】
排気ポート30と燃焼室22との間には、排気バルブ48の先端(傘)が位置している。排気バルブ48の末端には、ロッカーアーム50を介して、排気用カムシャフト52に固定されたカム54が当接されている。排気バルブ48は、排気用カムシャフト52の回転に伴って、排気ポート30を燃焼室22に対して開閉する。
【0022】
また、シリンダヘッド14には、先端が燃焼室22内に位置するようにインジェクタ56および点火プラグ58が設けられている。インジェクタ56は、燃焼室22に燃料を噴射する。点火プラグ58は、吸気ポート28を介して燃焼室22に流入した空気と、インジェクタ56から噴射された燃料との混合気を所定のタイミングで点火して燃焼させる。かかる燃焼により、ピストン18がシリンダ16内で往復運動を行う。そして、クランクシャフト26は、ピストン18の往復運動により、コネクティングロッド20を通じて回転運動を行う。
【0023】
吸気流路34には、上流側から順に、エアクリーナ60、インタークーラ62、スロットルバルブ64が設けられている。エアクリーナ60は、外気から吸入された空気に混合する異物を除去する。インタークーラ62は、後述する過給機80のコンプレッサ84によって圧縮された空気を冷却する。スロットルバルブ64は、アクセル(不図示)の開度に応じてアクチュエータ66により開閉駆動され、燃焼室22へ送出する空気量を調節する。
【0024】
排気流路46内には、三元触媒(Three-Way Catalyst)68とGPF(Gasoline Particulate Filter)70が設けられる。三元触媒68は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む。三元触媒68は、燃焼室22から排出された排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を除去する。
【0025】
GPF(排気ガス浄化部)70は、排気流路46内における三元触媒68の下流側に設けられる。GPF70は、燃焼室22から排気された排気ガス中の粒子状物質(煤)を捕捉(捕集)する。GPF70は、例えばウォールフロー型のフィルタである。GPF70は、内部に粒子状物質を堆積させることで、排気ガスから粒子状物質を除去することができる。本実施形態においてGPF70は、粒子状物質を捕捉する捕捉機能と、触媒機能(例えば、三元触媒68と同様の、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を除去する三元触媒)とを含む。GPF70は、捕捉した粒子状物質を燃焼(酸化)除去することで捕捉機能を再生させることができる。
【0026】
具体的に、GPF70に堆積した粒子状物質(炭素C)は、下記式(1)に示す反応(粒子状物質の酸化反応)を進行させることによってGPF70から除去され、GPF70が再生される。
C + O → CO …式(1)
【0027】
また、エンジン102には、過給機80が設けられる。過給機80は、タービン82と、コンプレッサ84と、タービン82およびコンプレッサ84を一体回転可能に接続するタービンシャフト86とを含んで構成される。タービン82は、排気流路46における三元触媒68の上流側に設けられ、燃焼室22から排出される排気ガスによって回転する。コンプレッサ84は、吸気流路34におけるエアクリーナ60と、インタークーラ62との間に設けられ、タービン82の回転に伴って回転し、エアクリーナ60で塵や埃などの不純物(ダスト)が除去された吸気を圧縮して下流に供給する。
【0028】
また、エンジン102には、GPF70の捕捉機能を再生させるための排ガス浄化再生装置200が設けられる。排ガス浄化再生装置200は、エアバイパス流路202と、エアバイパスバルブ204と、開閉バルブ205と、分岐流路206と、分岐バルブ208と、後述する分岐バルブ制御部124とを備える。
【0029】
エアバイパス流路202は、コンプレッサ84を迂回して、コンプレッサ84の上流側の吸気流路(以下、上流側吸気流路という)34aと、コンプレッサ84の下流側の吸気流路(以下、下流側吸気流路という)34bを連通する。エアバイパス流路202と上流側吸気流路34aとは、エアクリーナ60とコンプレッサ84との間で接続される。また、エアバイパス流路202と下流側吸気流路34bとは、コンプレッサ84とインタークーラ62との間で接続される。
【0030】
エアバイパス流路202には、エアバイパスバルブ204が介装される。エアバイパスバルブ204は、ダイアフラム式のバルブであり、エアバイパス流路202を開閉する。エアバイパスバルブ204は、下流側吸気流路34bからエアバイパス流路202に流入する圧縮空気の圧力が、インテークマニホールド32内の圧力よりも大きくなるときに開状態となる。また、エアバイパスバルブ204は、下流側吸気流路34bからエアバイパス流路202に流入する圧縮空気の圧力が、インテークマニホールド32内の圧力よりも小さくなるときに閉状態となる。例えば、エアバイパスバルブ204は、運転者がアクセルを放したときなど、インテークマニホールド32内の圧力が負圧となるときに開状態となり、下流側吸気流路34bの圧力が過剰となることを防止する。
【0031】
また、エアバイパス流路202には、開閉バルブ205が介装される。開閉バルブ205は、エアバイパスバルブ204よりも下流側(エアバイパスバルブ204に対し上流側吸気流路34a側)に配される。開閉バルブ205は、エアバイパス流路202を開閉可能に構成される。開閉バルブ205は、ECU104(分岐バルブ制御部)124から送信される信号に基づいて開状態または閉状態に制御される。
【0032】
分岐流路206は、エアバイパス流路202と排気流路46を連通する。分岐流路206とエアバイパス流路202とは、開閉バルブ205と、エアバイパスバルブ204との間で接続される。換言すれば、分岐流路206とエアバイパス流路202とは、エアバイパス流路202と上流側吸気流路34aの接続部(合流部)と、エアバイパスバルブ204との間で接続される。分岐流路206と排気流路46とは、三元触媒68とGPF70との間で接続される。
【0033】
分岐流路206には、分岐バルブ208が介装される。分岐バルブ208は、分岐流路206を開閉可能に構成される。分岐バルブ208は、ECU104(分岐バルブ制御部124)から送信される信号に基づいて開度が制御される。
【0034】
また、エンジンシステム100には、アクセル開度センサ90、クランク角センサ92、吸入空気量センサ94、差圧センサ96、温度センサ98が設けられる。アクセル開度センサ90は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。クランク角センサ92は、クランクシャフト26近傍に設けられており、クランクシャフト26が所定角度回転する毎にパルス信号を出力する。吸入空気量センサ94は、吸気流路34内におけるエアクリーナ60とスロットルバルブ64との間に設けられており、エンジン102に流入する吸入空気量を検出する。差圧センサ96は、排気流路46内におけるGPF70の上流側と下流側の圧力差を検出する。温度センサ98は、GPF70の温度を検出する。
【0035】
これら各センサ90~98は、ECU104に接続されており、検出値を示す信号をECU104に出力する。
【0036】
ECU104は、各センサ90~98から出力された信号を取得してエンジン102を制御する。ECU104は、エンジン102を制御する際、信号取得部110、目標値導出部112、空気量決定部114、噴射量決定部116、スロットル開度決定部118、点火時期決定部120、駆動制御部122、分岐バルブ制御部124として機能する。
【0037】
信号取得部110は、各センサ90~98が検出した値を示す信号を取得する。目標値導出部112は、クランク角センサ92から取得したクランク角を示す信号に基づいて現時点のエンジン回転数を導出する。また、目標値導出部112は、導出したエンジン回転数、および、アクセル開度センサ90から取得したアクセル開度を示す信号に基づき、予め記憶されたマップを参照して目標トルクおよび目標エンジン回転数を導出する。
【0038】
空気量決定部114は、目標値導出部112により導出された目標エンジン回転数および目標トルクに基づいて、各シリンダ16に供給する目標空気量を決定する。スロットル開度決定部118は、空気量決定部114により決定された各シリンダ16の目標空気量の合計量を導出し、合計量の空気を外部から吸気するための目標スロットル開度を決定する。
【0039】
噴射量決定部116は、空気量決定部114により決定された各シリンダ16の目標空気量に基づいて、各シリンダ16に供給する燃料の目標噴射量を決定する。また、噴射量決定部116は、決定した目標噴射量の燃料をエンジン102の吸気行程あるいは圧縮行程でインジェクタ56から噴射させるために、クランク角センサ92により検出されるクランク角を示す信号に基づいて、各インジェクタ56の目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。
【0040】
点火時期決定部120は、目標値導出部112により導出された目標エンジン回転数、および、クランク角センサ92により検出されるクランク角を示す信号に基づいて、各シリンダ16での点火プラグ58の目標点火時期を決定する。
【0041】
駆動制御部122は、スロットル開度決定部118により決定された目標スロットル開度でスロットルバルブ64が開口するようにアクチュエータ66を駆動させる。また、駆動制御部122は、噴射量決定部116により決定された目標噴射時期および目標噴射期間でインジェクタ56を駆動することで、インジェクタ56から目標噴射量の燃料を噴射させる。また、駆動制御部122は、点火時期決定部120により決定された目標点火時期で点火プラグ58を点火させる。
【0042】
分岐バルブ制御部124は、排ガス浄化再生装置200の分岐バルブ208の開度を制御する。分岐バルブ制御部124は、基本状態として分岐バルブ208を閉状態に制御する。分岐バルブ制御部124は、後述するGPF70の再生処理を実行する場合、分岐バルブ208を閉状態から開状態に制御する。
【0043】
また、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を開状態または閉状態に制御する。分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208の開閉状態に応じて開閉バルブ205の開閉状態を制御する。具体的に、分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を開状態に制御している間、開閉バルブ205を閉状態に制御する。また、分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を閉状態に制御している間、開閉バルブ205を開状態に制御する。分岐バルブ制御部124の詳細については、後述する。
【0044】
本実施形態のエンジン102はガソリンエンジンであり、噴射量決定部116は、エンジン負荷の状況に応じて空燃比を決定している。噴射量決定部116は、基本的に理論空燃比(ストイキ)となるように燃料の目標噴射量を決定する。また、噴射量決定部116は、発進時や加速時等のパワーが必要なとき(高負荷時)に、出力空燃比(リッチ)となるように燃料の目標噴射量を決定する。また、噴射量決定部116は、低負荷時において燃費を抑制するために、経済空燃比(リーン)となるように燃料の目標噴射量を決定する。
【0045】
ここで、理論空燃比または出力空燃比での運転では、排気ガスに含まれる酸素が低濃度となるため、GPF70の再生処理が促進されない。再生処理が促進されないと、GPF70に粒子状物質が堆積してしまい、GPF70が目詰まりを起こして、圧力損失が大きくなってしまう。そうすると、燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0046】
そこで、本実施形態のエンジン102は、理論空燃比または出力空燃比での運転時において、GPF70の再生処理を促進させるべく、排ガス浄化再生装置200を備えている。排ガス浄化再生装置200(分岐バルブ制御部124)は、以下で説明する所定の開始条件を満たした場合に、GPF70に空気を供給することで、排気ガス中の酸素濃度を増加させてGPF70の再生処理を実行する。
【0047】
分岐バルブ制御部124は、まず、GPF70の温度、および、排気流路46におけるGPF70の上流側の圧力と下流側の圧力との差(以下、単に圧力差という)に基づいて、GPF70の再生処理の開始条件を満たしているか否か判定する。具体的に、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であるか否か判定する。また、分岐バルブ制御部124は、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上であるか否か判定する。そして、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であり、かつ、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上である場合に、GPF70の再生処理の開始条件を満たしていると判定し、GPF70の再生処理を実行(開始)する。
【0048】
ここで、所定温度とは、GPF70の再生処理時の温度上昇によりGPF70が破損してしまうことを回避することができる温度である。GPF70の再生処理時には、GPF70に空気が供給されるが、GPF70に空気が供給されると、上記式(1)に示す反応(粒子状物質の酸化反応)により、GPF70の温度が上昇する。GPF70の温度が所定温度以上まで上昇すると、GPF70が破損するおそれがある。そのため、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であるか否か判定し、GPF70の温度が所定温度未満である場合にGPF70の再生処理を実行する。
【0049】
また、所定圧力とは、GPF70に捕捉される粒子状物質の堆積量が所定量以上であるとみなせる圧力である。ここで、GPF70に捕捉される粒子状物質の堆積量が所定量未満となると、GPF70が粒子状物質を捕捉する捕捉率が低下し、GPF70から排出される粒子状物質の量が増加してしまう。そのため、分岐バルブ制御部124は、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上であるか否か判定し、GPF70の圧力差が所定圧力以上(すなわち、堆積量が所定量以上)である場合にGPF70の再生処理を実行する。
【0050】
つぎに、分岐バルブ制御部124は、上記GPF70の再生処理の開始条件を満たしている場合、理論空燃比または出力空燃比での運転時においてのみ、GPF70の再生処理を実行(開始)する。具体的に、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であり、GPF70の圧力差が所定圧力以上であり、かつ、理論空燃比または出力空燃比での運転時である場合に、GPF70の再生処理を実行する。理論空燃比または出力空燃比での運転時にGPF70の再生処理を実行することで、排気ガス中の酸素濃度を増加させることができ、GPF70の再生処理を効果的に行うことができる。
【0051】
対して、分岐バルブ制御部124は、上記GPF70の再生処理の開始条件を満たしていても、経済空燃比での運転時である場合は、GPF70の再生処理を実行しない。つまり、分岐バルブ制御部124は、上記GPF70の再生処理の開始条件を満たしていても、経済空燃比での運転時である場合は、常に分岐バルブ208を閉状態に制御し、開閉バルブ205を開状態に制御する。これは、経済空燃比での運転では、理論空燃比または出力空燃比に比べ、排気ガスに含まれる酸素が高濃度となるため、分岐バルブ208を開状態に制御してGPF70に空気を供給しても、GPF70の再生処理を効果的に行うことができないからである。
【0052】
分岐バルブ制御部124は、上記GPF70の再生処理の開始条件を満たし、かつ、理論空燃比または出力空燃比での運転時である場合、エアバイパスバルブ204の駆動状態に基づいて、分岐バルブ208の開度を制御する。分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204と連動して分岐バルブ208の駆動を制御する。例えば、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態となり、下流側吸気流路34bを流通する圧縮空気がエアバイパス流路202を介して上流側吸気流路34aに還流するとき、分岐バルブ208を開状態に制御する。このとき、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を閉状態に制御する。これにより、エアバイパス流路202を流通する圧縮空気は、分岐流路206を介して排気流路46(三元触媒68とGPF70との間の排気流路46)に供給される。
【0053】
ここで、エアバイパスバルブ204が開状態となったときのエアバイパス流路202内の圧力は、三元触媒68とGPF70との間の排気流路46内の圧力よりも高い圧力となっている。そのため、エアバイパス流路202内を流通する圧縮空気は、分岐流路206を介して三元触媒68とGPF70との間の排気流路46に流入することができる。三元触媒68とGPF70との間の排気流路46に流入した圧縮空気は、三元触媒68より下流側に配されるGPF70に供給される。GPF70に供給された圧縮空気(酸素)は、GPF70に捕捉された粒子状物質を燃焼(酸化)させ、GPF70から粒子状物質を除去する。GPF70から粒子状物質が除去されることで、GPF70は、粒子状物質を捕捉する捕捉機能を再生させることができる。
【0054】
また、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が閉状態となるとき、分岐バルブ208を閉状態に制御する。このとき、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を開状態に制御する。これにより、三元触媒68とGPF70との間の排気流路46からエアバイパス流路202に空気が流入(逆流)することを防止することができる。
【0055】
なお、本実施形態のエンジン102は、下流側吸気流路34bからエアバイパス流路202に流入する圧縮空気の圧力、および、インテークマニホールド32内の圧力を検出する不図示の圧力センサを有する。分岐バルブ制御部124は、不図示のセンサから出力される信号に基づいて、エアバイパスバルブ204の駆動状態(開状態または閉状態)を判定(推定)する。これにより、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204の駆動状態に基づいて、分岐バルブ208の開度を制御することができる。また、分岐バルブ制御部124は、吸入空気量センサ94から出力される信号(吸入空気量)に基づいて分岐バルブ208の開度を制御してもよい。これにより、分岐流路206を介してGPF70に供給される空気量を最適に制御することができる。
【0056】
本実施形態によれば、エアバイパスバルブ204が開かれたときに、エアバイパス流路202内を流通する空気(酸素)が分岐流路206を介してGPF70に供給される。そのため、分岐流路206を介してGPF70に空気を供給する際に、分岐流路206の流入側(吸気側)の圧力を排出側(排気側)の圧力よりも高くする構成を別途設ける必要がなくなる。したがって、本実施形態の排ガス浄化再生装置200は、簡易な構成で、GPF70の再生処理を実行することができる。ここで、吸気流路34から分岐流路206を介して排気流路46に空気を供給する場合、吸気流路34の吸気圧を排気流路46の排気圧よりも高くする必要があり、無駄にコンプレッサ84を回転駆動させなくてはならない。一方、本実施形態の分岐流路206は、エアバイパス流路202を介して下流側吸気流路34bから上流側吸気流路34aに還流させる圧縮空気(余剰な圧縮空気)をGPF70に供給しているため、無駄にコンプレッサ84を回転駆動させなくてよい。
【0057】
図2は、分岐バルブ制御部124によるGPF70の再生処理のフローチャートを示す図である。
【0058】
まず、分岐バルブ制御部124は、温度センサ98から出力される信号に基づいて、現在のGPF70の温度を導出する。また、分岐バルブ制御部124は、差圧センサ96から出力される信号に基づいて、現在のGPF70の上流側と下流側の圧力差を導出する。そして、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であり、かつ、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上であるか否か判定する。(ステップS102)。分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度未満であり、かつ、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上である場合(ステップS102においてYES)、ステップS104に進む。一方、分岐バルブ制御部124は、GPF70の温度が所定温度以上、または、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力未満である場合(ステップS102においてNO)、GPF70の再生処理を終了する(GPF70の再生処理は行わない)。なお、GPF70の再生処理を行わない場合、インテークマニホールド32内の圧力等に応じてエアバイパスバルブ204の開閉を行い、吸気流路34でサージが発生することを防止する。サージの発生を防止するためにエアバイパスバルブ204を開弁するときは、開閉バルブ205も開弁される。
【0059】
ステップS102においてYESである場合、分岐バルブ制御部124は、理論空燃比または出力空燃比での運転が行われているか否か判定する(ステップS104)。分岐バルブ制御部124は、理論空燃比または出力空燃比での運転が行われている場合(ステップS104においてYES)、ステップS106に進む。一方、分岐バルブ制御部124は、理論空燃比または出力空燃比での運転が行われていない、すなわち、経済空燃比での運転が行われている場合(ステップS104においてNO)、ステップS102に戻り、ステップS102の判定を再度行う。
【0060】
ステップS104においてYESである場合、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態であるか否か判定する(ステップS106)。分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態であると判定した場合(ステップS106のおいてYES)、ステップS108に進む。一方、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態でない、すなわち、閉状態であると判定した場合(ステップS106においてNO)、ステップS110に進む。
【0061】
ステップS106においてYESである場合、分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を開状態に制御する(ステップS108)。このとき、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を閉状態に制御する。分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を開状態に制御した後、エアバイパスバルブ204が開状態から閉状態に変化したか否か(すなわち、エアバイパスバルブ204が閉状態であるか否か)判定する(ステップS112)。
【0062】
分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が閉状態でないと判定した場合(ステップS112においてNO)、エアバイパスバルブ204が閉状態となるまで、ステップS112の判定を繰り返し行う。すなわち、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態を維持している間、分岐バルブ208を開状態に制御する。一方、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が閉状態であると判定した場合(ステップS112においてYES)、分岐バルブ208を閉状態に制御する(ステップS114)。このとき、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を開状態に制御する。分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を閉状態に制御した後、ステップS102に戻り、ステップS102の判定を再度行う。
【0063】
一方、ステップS106においてNOである場合、分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を閉状態に制御する(ステップS110)。このとき、分岐バルブ制御部124は、開閉バルブ205を開状態に制御する。分岐バルブ制御部124は、分岐バルブ208を閉状態に制御した後、ステップS102に戻り、ステップS102の判定を再度行う。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
上記実施形態では、エアバイパスバルブ204は、下流側吸気流路34bからエアバイパス流路202に流入する圧縮空気の圧力、および、インテークマニホールド32内の圧力に応じて、エアバイパス流路202を開閉する例を示した。しかし、これに限定されず、エアバイパスバルブ204は、ECU104(分岐バルブ制御部124)によって制御される電子制御バルブであってもよい。この場合、ECU104(分岐バルブ制御部124)は、電子制御バルブの開閉に応じて分岐バルブ208の開閉を制御することができる。
【0066】
また、開閉バルブ205および分岐バルブ208の代わりに、分岐流路206とエアバイパス流路202との接続部(合流部)において、三方弁を設けてもよい。分岐流路206とエアバイパス流路202との接続部に三方弁を設けることで、GPF70の再生処理時に、エアバイパス流路202を流通する圧縮空気をGPF70に供給することができる。具体的に、分岐バルブ制御部124は、エアバイパス流路202と上流側吸気流路34aとの連通を遮断させ、エアバイパス流路202と分岐流路206とを連通させるように、三方弁を制御する。
【0067】
また、分岐バルブ制御部124は、エアバイパス流路202と分岐流路206との連通を遮断させ、エアバイパス流路202と上流側吸気流路34aとを連通させるように、三方弁を制御することができる。これにより、エアバイパス流路202を流通する圧縮空気は、上流側吸気流路34aに還流される。
【0068】
また、分岐バルブ制御部124は、GPF70の再生処理時において、タービン82の仕事量を増加させるようにしてもよい。タービン82の仕事量を増加させることで、コンプレッサ84の仕事量も増加するため、エアバイパス流路202を流通する圧縮空気量を増加させることができる。その結果、GPF70に供給される空気(酸素)の量を増加させることができ、GPF70の再生処理をより効果的に行うことができる。
【0069】
また、上記実施形態では、分岐バルブ制御部124は、エンジン負荷の状況に応じて決定される空燃比が、理論空燃比または出力空燃比であるときに、GPF70の再生処理を実行する例について説明した。しかし、これに限定されず、分岐バルブ制御部124は、空燃比に関わらず、GPF70の温度が所定温度未満であり、かつ、GPF70の上流側と下流側の圧力差が所定圧力以上である場合に、GPF70の再生処理を実行してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204の駆動状態(開状態または閉状態)に連動して分岐バルブ208の開度を制御する例について説明した。しかし、これに限定されず、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204の駆動状態と連動せずに分岐バルブ208の開度を制御してもよい。例えば、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態となったとき、分岐バルブ208を開状態に制御する。そして、分岐バルブ制御部124は、エアバイパスバルブ204が開状態となったときから所定時間後、エアバイパスバルブ204が開状態であっても、分岐バルブ208を閉状態とするように制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、排ガス浄化再生装置に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
34 吸気流路
46 排気流路
70 GPF(排気ガス浄化部)
84 コンプレッサ
124 分岐バルブ制御部
200 排ガス浄化再生装置
202 エアバイパス流路
204 エアバイパスバルブ
206 分岐流路
208 分岐バルブ
図1
図2