特許 7144967 電柱切断機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-09-21

(45)【発行日】2022-09-30

(54)【発明の名称】電柱切断機

(51)【国際特許分類】

   B28D 1/04 20060101AFI20220922BHJP

   B28D 7/04 20060101ALI20220922BHJP

   B28D 1/24 20060101ALI20220922BHJP

   H02G 1/02 20060101ALI20220922BHJP

【ＦＩ】

B28D1/04 B

B28D7/04

B28D1/24

H02G1/02

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2018091158

(22)【出願日】2018-05-10

(65)【公開番号】P2019195951

(43)【公開日】2019-11-14

【審査請求日】2021-05-07

(73)【特許権者】

【識別番号】513288414

【氏名又は名称】株式会社ミヤ・テクノサポート

(74)【代理人】

【識別番号】100091465

【弁理士】

【氏名又は名称】石井 久夫

(72)【発明者】

【氏名】宮下 克

【審査官】石田 宏之

(56)【参考文献】

【文献】実開昭６３－０７９１１９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開昭６１－１８８０１６（ＪＰ，Ａ）

【文献】登録実用新案第３１８１３１９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開昭６０－００６３０６（ＪＰ，Ａ）

【文献】登録実用新案第３１６５５６４（ＪＰ，Ｕ）

【文献】米国特許出願公開第２００６／０１３７１８９（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ２８Ｄ １／０４

Ｂ２８Ｄ ７／０４

Ｂ２８Ｄ １／２４

Ｈ０２Ｇ １／０２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

カッター刃（１２）が回転されながら電柱に押付けられることによって電柱を切断するカッター工具（１０）と、
縦断面コ字状のベース（１５）を有し、該ベース（１５）には上記カッター工具（１０）の取付け部が設けられ、上記ベース（１５）の一側部には一対のリンクアーム（１６）の一端部が相互に間隔をあけかつ板面平行となるように取付けピン（１６Ｅ）によって回転自在に取付けられ、該リンクアーム（１６）は複数の板状リンク片（１６Ａ）が連結ピン（１５Ｂ）によって回転可能にアーム状に連結して構成されたホルダー（１４）と、
回転軸にローラベアリング（１６Ｃ）を介してローラ（１６Ｄ）が回転自在に支持されることによって構成され、上記回転軸両端がリンクアーム（１６）の間に回転自在に支持される一方、上記ローラベアリング（１６Ｃ）の上方及び下方が上記リンクアーム（１６）の板状リンク片（１６Ａ）の端部によって覆われる複数のガイドローラと、
上記ベース（１５）の他側部に取付けピンによって回動自在に取付けられ、先端が上記リンクアーム（１６）の取付けピン（１６Ｂ）又は上記ガイドローラの回転軸に引っ掛け得るフック状をなし、先端を上記取付けピン（１６Ｂ）又は回転軸に引っ掛けた状態にロックする機構を有し、上記リンクアームを電柱の抱持状態に保持する保持具と、
上記リンクアーム（１６）の上側に位置して上記ベース（１５）に取付けられ、上記カッター刃（１２）の切断縁を残して覆うとともに切断の粉塵を電柱から離れる方向に排気するための排気口（１３Ａ）が形成されたカバー（１３）と、
を備えたことを特徴とする電柱切断機。

【請求項2】

上記リンクアーム（１６Ａ）の取付けピン（１６Ｂ）がガイドローラの回転軸の機能を兼用している請求項１記載の電柱切断機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は電柱切断機に関し、特に作業の煩雑さを招来することなく、カッター工具で正確に電柱を切断できるようにした電柱切断機に関する。

【背景技術】

【0002】

電柱を交換し移設する場合、設置済みの電柱を撤去する必要がある。従来、クレーンで電柱を引き抜く方法が採用されていたが、家屋が密集した場所では引き抜き工法は採用し難いことから、電柱を切断して撤去する方法が採用される傾向にある。

【0003】

例えば、複数のリンクの間にローラを介在させてホルダーを構成し、ホルダーをカッター工具に取付け、ホルダーを電柱に掛け廻して抱きつかせ、カッター工具を電柱廻りに回動させながら電柱を切断するようにした電柱切断機が提案されている（特許文献１）。

【0004】

また、工具のカッター刃の切断縁を残してカバーでカッター刃を覆う一方、カッター工具に一対のアームを回転自在に軸支し、一対のアームの先端部及び基部近傍にガイドローラを取付け、一対のアームを電柱に抱きつかせ、ガイドローラによってカッター工具を電柱廻りに案内しながら電柱を切断するようにした電柱切断機が提案されている（特許文献２）。

【0005】

さらに、２分割したガイドレールを電柱との間に間隔をあけた状態で電柱に抱きつかせて相互にボルト締結してリング状となし、このガイドレールにブロックを電柱回りに旋回可能に搭載し、ブロックにカッター工具を搭載してカッター工具を電柱回りに旋回させながら電柱を切断するようにした電柱切断機が提案されている（特許文献３）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】実用新案登録第３１６５５６４号公報

【文献】実用新案登録第３１８１３１９号公報

【文献】特開２００６－３１６６１０号公報

【発明の開示】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかし、特許文献１記載の電柱切断機では飛散するコンクリートの粉塵などが回転するローラ内に巻き込まれると、ホルダーを円滑に回転できず、切断作業を中断してしまうことがあった。

【0008】

また、特許文献２記載の電柱切断機では一対のアームの抱きつき力が低下すると、工具のカッター刃の位置がずれて切断口の終端と始端とが一致せず、作業者が手作業で打撃などを加えて切断しなければならないことがあった。

【0009】

また、特許文献３記載の電柱切断機では２分割したガイドレールを電柱に抱きつかせて手作業でボルト締結する必要があって作業が煩雑であった

【0010】

本発明はかかる問題点に鑑み、作業の煩雑さを招来することなく、カッター工具で正確に電柱を切断できるようにした電柱切断機を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0011】

そこで、本発明に係る電柱切断機は、カッター刃が回転されながら電柱に押付けられることによって電柱を切断するカッター工具と、縦断面コ字状のベースを有し、該ベースには上記カッター工具の取付け部が設けられ、上記ベースの一側部には一対のリンクアームの一端部が相互に間隔をあけかつ板面平行となるように取付けピンによって回転自在に取付けられ、該リンクアームは複数の板状リンク片が連結ピンによって回転可能にアーム状に連結して構成されたホルダーと、回転軸にローラベアリングを介してローラが回転自在に支持されることによって構成され、上記回転軸両端がリンクアームの間に回転自在に支持された複数のガイドローラと、上記ベースの他側部に取付けピンによって回動自在に取付けられ、先端が上記リンクアームの取付けピン又は上記ガイドローラの回転軸に引っ掛け得るフック状をなし、先端を上記取付けピン回転軸に引っ掛けた状態にロックする機構を有し、上記リンクアームを電柱の抱持状態に保持する保持具と、を備えたことを特徴とする。

【0012】

本発明の特徴の１つはリンクアームを電柱に抱きつかせ、保持具でリンクアームの他端部を引っ掛けてロックし、カッター工具を電柱にセットするようにした点にある。
これにより、リンクアームを電柱にぐるりと掛け廻し、先端フックを引っ掛けてロックすればよく、高所においてもカッター工具を簡単に電柱にセットでき、作業の煩雑さを招来することがない。

【0013】

本発明の第２の特徴は上下のリンクアームの間にガイドローラを設け、ガイドローラにローラベアリングを内蔵するようにした点にある。
これにより、カッター工具を電柱廻りに円滑に回動させて電柱を正確に切断して始端と終端を一致させることができ、作業者が手作業で打撃などを加えて切断する必要がない。

【0014】

本発明の第３の特徴は保持具の先端フックをリンクアームの取付けピン又はガイドローラの回転軸に引っ掛けて抱きつかせるようにした点にある。
電柱には大径の電柱から、小径の電柱まである。電柱切断機は径毎の専用の電柱切断機としてもよいが、コスト高になる。本発明では保持具の先端フックを引っ掛ける取付けピン又は回転軸を選択することによって径の異なる電柱に対応できることとなる。

【0015】

リンクアームの取付けピンとガイドローラの回転軸とは別体としてもよいが、取付けピンに回転軸の機能を併用させることもできる。

【0016】

また、カッター工具は電動カッター工具でもよいが、雨天での電柱切断作業を考慮すると、エアー駆動されるエアーカッター工具や流体圧、例えば圧油で駆動させる流体カッター工具を採用することもできる。

【0017】

さらに、ガイドローラのローラベアリングはコンクリートの粉塵などの巻き込みを少なくする上で、ローラベアリングの両端を蓋で閉鎖した構造とするのがよい。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】本発明に係る電柱切断機の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。

【図2】上記実施形態におけるホルダー、ガイドローラ及び保持具を示す概略斜視図である。

【図3】上記実施形態においてホルダーと保持具の関係を示す概略斜視図である。

【図4】上記実施形態におけるカッター工具を示す概略斜視図である。

【図5】上記実施形態におけるリンクアームの構造を示す側面図である。

【図6】上記実施形態における保持具の構造を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図１ないし図６は本発明の電柱切断機の好ましい実施形態を示す。図において、カッター工具１０は連結ノズル１０Ａに図示しないがエアーコンプレッサーから延びるホースが接続されるとともに、取付け軸１１の廻りにカッター刃、例えばダイヤモンドカッター１２が取付けられている。

【0020】

このカッター刃１２はカバー１３によってカッター刃１２の切断縁を残して覆われ、カバー１３にはハンドル１９が取付けられ、又カバー１３には排気口１３Ａが形成され、切断の粉塵を電柱から離れる方向に排気するようになっている。なお、排気はフィルターを備えた吸引装置によって吸引するようにしてもよい。

【0021】

このカッター工具１０には取付けピン（図示せず）が設けられ、取付けピンはホルダー１４の取付け穴（取付け部）１５Ａに嵌め込まれてカッター工具１０はホルダー１４に取付けられるようになっている。

【0022】

ホルダー１４のベース１５は縦断面コ字状をなし、ベース１５の一側部には上下のリンクアーム１６の一端部が相互に間隔をあけかつ板面平行となるように取付けピン１６Ｅによって回転自在に取付けられ、このリンクアーム１６は複数の板状リンク片１６Ａの両端部が回転軸（連結ピン）１６Ｂによって回転可能にアーム状に連結して構成され、リンクアーム１６の各回転軸１６Ｂにはローラベアリング１６Ｃを介してローラ１６Ｄが回転自在に支持されている。

【0023】

ホルダー１４のベース１５の他端側には取付けピン１８が取付けられ、取付けピン１８には保持具１７のロッド１７Ａがスライド可能に挿通されてナット１７Ｂによって抜け止めされている。この保持具１７のロッド１７Ａの他端側には先端がフック形状となったリンク片１７Ｃが取付けられ、フック状リンク片１７Ｃはガイドローラ１６Ｄの回転軸１６Ｂに引っ掛けられており、ナット１７Ｂは螺進させることによって先端フックを回転軸１６Ｂに引っ掛けた状態にロックする機構を構成している。

【0024】

電柱を切断する場合、切断箇所にリンクアーム１６を掛け廻してフック状リンク片１７Ｂをリンクアーム１６が電柱の外面にピッタリと接触する位置の回転軸１６Ｂに引っ掛け、ナット１７Ｂを螺進させて保持具１７のロッド１７Ａを引っ張ってフック状リンク片１７Ｂを回転軸１６Ｂに引っ掛けた状態にロックする。

【0025】

次に、カッター工具１０に高圧エアーを供給し、カッター刃１２を回転させながら、カッター工具１０を電柱廻りに所定の角度、例えば１２０°だけ回動させると、カッター刃１２は電柱に押し付けられているので、電柱は切断されていく。切断の粉塵はカバー１３の排気口１３Ａから電柱を離れる方向に排気される。

【0026】

後は同様にして電柱の残った切断箇所を１２０°ずつ切断すると、電柱を確実に切断することができる。

【0027】

以上のように、リンクアーム１６を電柱に抱きつかせ、保持具１７でリンクアーム１６の他端部を引っ掛けてロックし、カッター工具１０を電柱にセットするようにしたので、リンクアーム１６を電柱にぐるりと掛け廻し、先端フックを引っ掛けてロックするという簡単な作業を行えばよく、高所においてもカッター工具１０を簡単に電柱にセットでき、作業の煩雑さを招来することがない。

【0028】

また、リンクアーム内にガイドローラ１６Ｄを設け、ガイドローラ１６Ｄにローラベアリング１６Ｃを内蔵するようにしたので、カッター工具１０を電柱廻りに円滑に回動させて電柱を正確に切断して始端と終端を一致させることができ、作業者が手作業で打撃などを加えて切断する必要がない。

【0029】

なお、上記の例では高圧エアーを駆動源に使用したが、高圧流体、例えば高圧油でもよく、電動カッター工具を採用することもできる。

【符号の説明】

【0030】

１０ カッター工具
１２ カッター刃
１３ カバー
１４ ホルダー
１５ ベース
１６ リンクアーム
１６Ａ リンク片
１６Ｂ 回転軸
１６Ｃ ボールベアリング
１６Ｄ ローラ
１７ 保持具
１７Ｂ フック状リンク片
１７Ｃ ナット

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】