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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】床版架設機
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20220922BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220922BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20220922BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D22/00 A
E01D24/00
E01D19/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018111836
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214858
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 真作
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-093643(JP,A)
【文献】特開2004-300688(JP,A)
【文献】特開2010-090675(JP,A)
【文献】特開平11-131427(JP,A)
【文献】実開昭56-134911(JP,U)
【文献】特開2004-176486(JP,A)
【文献】特開2006-169757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 22/00
E01D 24/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対からなり下方に前後方向に延在する走行レールを備える主桁と、
各主桁間に主桁と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置される複数の横梁と、
を有する平面構造体と、
該平面構造体を左右一対の複数組で支持するとともに、夫々の下端に移動固定機構を装着する、脚体と、
前記平面構造体の下方に設けられた走行機構と、
前記走行機構の左右方向に伸縮可能に設けられた横行機構と、
前記横行機構の下方に懸架され、架設用部材を吊上げる吊具ユニットと、
を備え、
前記走行機構は、前記各走行レールに対して前後方向に移動可能に取り付けられた前後一対の走行トロリーと、
前記各走行レール間に走行レールと垂直に、且つ、前後方向に一列に配置されるように前記走行トロリーを介して前記走行レールに吊持された前後一対の走行梁と、を備え、
前記各走行梁同士は、一体に構成されており、それによって、前記走行機構は一体に走行レールに沿って前後方向に移動可能であり、
前記横行機構は、前記各走行梁の下方に左右方向に連続して設けられたローラと、
前記ローラを介して左右方向に伸縮可能な前後一対の横行梁と、
前記各横行梁とでフレーム状を形成するように、前記各横行梁を連結する左右一対の連結材と、を備え、
前記各横行梁は、各連結材で一体化となっており、走行梁に設けられたローラを介して左右方向に伸縮可能であり、
前記横行梁は、各横行梁間に横行梁と平行に設けられた前後一対の横行レールと、
前記各横行レールとでフレーム状を形成するように、前記各横行レールと接続する左右一対の接続材と、
前記横行レールと上下方向で一体化となるように設けられる束材と、を備え、
前記横行レールと一体となって、左右方向に伸縮可能であることを特徴とする床版架設装置。
【請求項2】
前記横行機構は、当該横行機構を人を介することなく、自動で駆動可能な横行駆動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の床版架設装置。
【請求項3】
前記吊具ユニットは、横行トロリーを介して横行レールに吊持されていることを特徴とする請求項に記載の床版架設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設橋梁の床版の取換工事において使用する床版架設機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁における床版の架設は、トラッククレーン、門型クレーン、及びジブクレーンなどといった大型重機を使用して行われてきた。
しかし、大型重機で架設工事する際、天井制限のあるトラス橋やトンネル内では、床版を架設場所まで搬送することは困難な場合がある。
また、床版の耐荷重力によっては、床版上に設置する大型重機の重量が制限を受ける場合もある。
そのため、昨今では大型重機を使用しなくても桁上の旧床版を容易に撤去でき、その後、新床版を容易に設置でき、さらに、どのような場所(例えば、トンネル内など)においても使用できる床版架設機が要望されており、このような要望を解決するために、例えば、特許文献1に記載の床版架設機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-300688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の床版架設機は、建築限界内に収まる大きさとなっており、微調整程度の横行(床版に対しての幅員方向の移動)は可能であるが、広範囲な横行が不可能であった。すなわち、床版を廃棄物運搬車へ撤去する例を挙げて説明すると、一般的に廃棄物運搬車は通常10トン車であり、10トンを超える重量物(床版)の場合は、床版を幅員方向の長さを略半分に切断し、重量を10トン以下に抑える必要がある。そして、切断後は切断した一方の半分を撤去し、そして、残りの他方の半分を撤去しなければならない。
しかしながら、その際、床版架設機自体を他方の半分側へ移動させる必要がある。
さらに、上述の移動においては、構造上、幅員方向へ直接移動できないため、他方の半分側へ移動するには、移動時間及び移動後の床版架設機の移動不能に固定する固定時間などの工数が余分に発生する。そのため、廃棄物運搬車へ床版を撤去するには、相当な時間を有してしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、床版架設機自体を幅員方向へ移動させることなく、床版を廃棄物運搬車へ素早く撤去することが可能な床版架設機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
左右一対の主桁と、各主桁間に主桁と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置される複数の横梁とを有する平面構造体と、この平面構造体を左右一対の複数組で支持するとともに、夫々の下端に移動固定機構を装着する脚体と、平面構造体の下方に、前後方向に移動可能に設けられた走行機構と、走行機構の左右方向に伸縮可能に設けられた横行機構と、横行機構の下方に懸架され、架設用部材を吊上げる吊具ユニットとを備えることを特徴とする床版架設装置を提供することによって解決される。
【0007】
本発明の床版架設装置における各主桁は、下部に前後方向に延在する走行レールを更に備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の床版架設装置における走行機構は、各走行レールに前後移動可能に取り付けられた前後一対の走行トロリーと、各走行レール間に走行レールと垂直に、且つ、前後方向に一列に配置されるように走行トロリーを介して走行レールに吊持された前後一対の走行梁とを備え、各走行梁同士は、一体に構成されており、それによって、走行機構は一体に走行レールに沿って前後方向に移動可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の床版架設装置における横行機構は、各走行梁の下部に左右方向に連続して設けられたローラと、ローラを介して左右方向に伸縮可能な前後一対の横行梁と、各横行梁とでフレーム状を形成するように、各横行梁を連結する左右一対の連結材とを備え、各横行梁は、各連結材で一体化となっており、走行梁に設けられたローラを介して左右方向に伸縮可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の床版架設装置における横行梁は、各横行梁間に横行梁と平行に設けられた前後一対の横行レールと、各横行レールとでフレーム状を形成するように、各横行レールと接続する左右一対の接続材と、横行レールと上下方向で一体化となるように設けられる束材とを備え、横行レールと一体となって、左右方向に伸縮可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の床版架設装置における横行機構は、当該横行機構を人を介することなく、自動で駆動可能な横行駆動機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の床版架設装置における吊具ユニットは、横行トロリーを介して横行レールに吊持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、床版架設機自体を幅員方向へ移動させることなく、床版を廃棄物運搬車へ素早く撤去することが可能な床版架設機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す床版架設機の側面図である。
図2図1の床版架設機の平面図である。
図3図1の床版架設機のA-A矢視図である。
図4図2を前後方向に見たD部詳細拡大図である。
図5図4のB-B矢視図である。
図6図5の走行梁の詳細拡大図である。
図7】床版の撤去時の横行動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0016】
本発明の床版架設機の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
なお、説明で方向を表す際、特に言及しない限り、床版架設機が床版を廃棄物運搬車に搬送する側を「前」、一方、その反対側を「後」とし、床版架設機の前後に延在する走行レールに沿って移動する方向を「前後方向」とする。また、走行レールに直交する方向を「左右方向」、「横行方向」、または「幅員方向」とする。また、吊具ユニットが床版を吊上げる方向、または、吊下げる方向を「上下方向」とする。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態を示す床版架設機の側面図、図2図1の床版架設機の平面図、図3図1の床版架設機のA-A矢視図である。
【0018】
本実施形態の床版架設機3は、既設の橋梁において路面を構成している架設用部材(以下、床版2という)の取換(旧床版の撤去とこれに換わる新床版の設置)を行う。
【0019】
図1において、橋梁の橋桁1は、H形鋼などにより構成されて前後方向に延在し、その上部に所定サイズの床版2が配置される。また、橋桁1の左右方向のピッチ間隔は、一般的に3m、または、6mの間隔となっている。
【0020】
床版2は、鉄筋入りのプレキャストコンクリート製で、その長手方向(長辺)を前後方向に直交する左右方向に向け、前後方向に列をなして連続して並べられることで路面を構成している。
【0021】
このような床版2は、長年の使用による腐食、剥離、或いは、ひび割れなどの経年劣化によって、取換(旧床版の撤去及び新床版の設置)が求められる場合がある。
そして、このような旧床版の撤去において、一般的に、旧床版を処理場まで運搬するには、10トン車の廃棄物運搬車等によって行われる。
そのため、10トン車に搬送できるように、通常、旧床版の前後方向の長さを2mサイズに切断し、更に左右方向の長さを2分割にすることで10トン以下の重量にしている。
【0022】
本実施形態の床版架設機3は、かかる場合に床版2の取換を行うものであって、図1に示すように、床版架設機3を取換場所まで移動した後に、移動不能に床版2上に配置し、吊具ユニット11で旧床版を廃棄物運搬車等へ撤去(積込作業)する。
【0023】
そして、その作業を複数回(本実施形態では14回)繰り返した後、廃棄物運搬車等は、撤去された床版をまとめて処理場へ搬出する。その後、トレーラーで搬入された新床版を複数回(本実施形態では7回)設置することで、床版2の取換(旧床版の撤去と、これに換わる新床版の設置)が完了となる。
【0024】
〈床版架設機の構造〉
床版架設機3は、主に、主桁4と横梁5等からなる平面構造体6、脚体7、移動固定機構8、走行機構9、横行機構10、及び吊具ユニット11などで構成されている。
【0025】
主桁4は、角形管や鋼板などの部材からなり、前後方向に延在する左右一対の2本構成となっている。また、この各主桁4の下部には、後述の走行トロリー15を前後移動可能にするための走行レール14が夫々敷設されている。
【0026】
各走行レール14は、主桁4の前後端部より若干延在するように夫々設けられており、また、走行トロリー15のケーブルを収納可能となっている。
【0027】
横梁5は、角形管や鋼板などの部材からなり、各主桁4との間に垂直に設けられ、両端部は溶接によって連結されている。そして、前後方向に複数本(本実施形態では5本)が一列に設けられている。
すなわち、左右一対の主桁4と各主桁4に連結された横梁5とによって、一体構造物となるように平面構造体6が構成されている。
【0028】
脚体7は、鋼板などの部材からなり、平面構造体6を左右一対の複数組(本実施形態では前後2組)で溶接によって支持している。また、夫々の脚体7の下端には移動固定機構8が装着されている。
【0029】
また、図2で示すように、前後の脚体7の間隔は、設置する新床版の床版回転範囲Rより大きく設けられていれば良い。
また、図示していないが、各脚体7には道路形状などに対応して、床版架設機3を水平レベルに維持可能に脚体の上下方向の長さを調整する伸縮構造が夫々設けられている。
【0030】
移動固定機構8は、複数(本実施形態では2つ)の車輪12とジャッキアップ装置13とからなり、車輪12を回転させる際は、ジャッキアップ装置13をオフ(縮んだ)状態にし、一方、車輪12を回転不能(移動不能)にする際は、ジャッキアップ装置13をオン(伸びた)状態にすることで車輪12を浮かして固定している。
【0031】
ところで、床版2は、上述の橋桁1によって支えられているが、薄い床版2だけで床版架設機3を支えることは強度的に難しい。よって、一般的には、床版架設機3の荷重がかかる箇所は橋桁1の近傍に配置するようになっている。すなわち、本実施形態の左右一対の移動固定機構8は、橋桁1のピッチ間隔(本実施形態では6m)と略同間隔となるように設けられており、固定する際は、橋桁1上で行うようにしている。
【0032】
走行機構9は、平面構造体6の下方に前後方向移動可能に取り付けられている。
図4は、図2を前後方向に見たD部詳細拡大図であり、便宜上、走行機構9を説明する上で主桁4を省いた図としている。
【0033】
〈走行機構の構造〉
図4に示すように、走行機構9は、主に、走行トロリー15、走行梁16などで構成されている。
【0034】
走行トロリー15は、各走行レール14に前後移動可能に前後一対の2つが取り付けられている。また、前後一対の走行トロリー15同士は、つなぎ材(図示せず)によって一体に移動可能に構成されている。ここで、つなぎ材の長さによって、走行トロリー15間の距離は定まるが、後述する横行レール間の距離より長ければ良い。
【0035】
図5は、図4のB-B矢視図、図6は、図5の走行梁の詳細拡大図である。
図5及び図6に示すように、走行梁16は、鋼板組合せ構造からなり、断面凹状の形状をしている。そして、断面凹状の開口部を下にした状態で走行レール14と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置されるように各走行トロリー15に取り付けられている。
【0036】
それによって、前後一対の走行梁16は、夫々走行トロリー15を介することで、走行レール14に吊持されている。
したがって、各走行梁16は、前後一体に構成された各走行トロリー15に夫々取り付けられていることより、各走行梁16と各走行トロリー15は一体となって前後方向に移動可能となっている。
【0037】
すなわち、走行梁16および走行トロリー15などで構成されている走行機構9は、一体に走行レール14に沿って前後方向に移動可能となっている。
【0038】
横行機構10は、平面構造体6の下方に平面構造体6に対して左右方向に伸縮可能に取り付けられている。
【0039】
〈横行機構の構造〉
横行機構10は、主に、上ローラ17、下ローラ18、横行梁19、及び横行レール20などで構成されている。
【0040】
下ローラ18は、円柱状の形状をしており、各走行梁16の断面凹状の両内側面下側に、且つ、自身の中心周りに回転可能な状態で左右方向に連続して設けられている。
【0041】
上ローラ17は、下ローラ18より径小な円柱状の形状をしており、横行梁19を摺動可能に挟むように、各下ローラ18の上側に対向して設けられている。
【0042】
横行梁19は、H形鋼などの梁で、走行梁16に設けられた上下一対のローラ17、18間に摺動可能に支持されており、左右方向に伸縮(移動)可能となっている。
また、各横行梁19同士は左右一対の連結材21によって、一体にフレーム状を形成している。そして、この横行梁19は、後述の横行駆動機構22によって、左右方向に伸縮駆動が可能となっている。
【0043】
横行レール20は、I形鋼などの部材からなり、横行梁19の上部、且つ、各横行梁19間に横行梁19と平行に所定の間隔を有して前後一対設けられている。
また、各横行レール20同士は左右一対の接続材32によって、一体にフレーム状を形成している。
【0044】
そして、各横行レール20の両端部は、束材33を介して横行梁19の連結材21と上下一体となるように夫々固定されている。
【0045】
すなわち、横行梁19と横行レール20は、上下方向において一体に固定されており、一体となって、走行梁16に設けられた上下一対のローラ17、18に沿って、左右方向に伸縮可能となっている。
【0046】
また、各横行レール20には、左右一対の横行トロリー34が左右方向に移動可能に夫々取り付けられている。そして、この各横行トロリー34を介してチェーンブロック35が横行レール20に吊下げられている。すなわち、この前後左右に設けられた4つのチェーンブロック35で後述の吊具ユニット11の吊上げ、または、吊下げを行っている。
【0047】
その際、横行機構10の横行駆動は、手動で行っても良いが、好ましくは横行駆動機構22によって自動で行う方が良い。
以下、横行駆動機構22について、図4図6を用いて説明する。
【0048】
〈横行駆動機構の構造〉
横行駆動機構22は、主に、前軸受23、後軸受24、シャフト25、チェーンスプロケット26、第1ローラチェーン27、モータ28、駆動スプロケット29、従動スプロケット30、及び第2ローラチェーン31などで構成されている。
【0049】
シャフト25は、走行梁16の上端側を前後方向に貫通するように走行梁16の左右両端近傍に一対設けられている。
この各シャフト25の一方の前側となる走行梁16の前側側面には、シャフト25が回転可能に支持されるように前軸受23が夫々嵌合されて取り付けられている。
【0050】
一方、他方の後側となる走行梁16の後側側面にも、シャフト25が回転可能に支持されるように後軸受24が夫々嵌合されて取り付けられている。
また、走行梁16内の各シャフトの前後方向中央部には、チェーンスプロケット26がシャフト25と回転一体に夫々取り付けられている。
【0051】
そして、この左右方向に設けられた各チェーンスプロケット26を掛け渡すように第1ローラチェーン27が夫々に係合されている。この第1ローラチェーン27によって、一方のシャフト25の回転が、他方のシャフト25に伝達されるようになっている。また、このとき、第1ローラチェーン27は、横行梁19の上面と繋止されている。
【0052】
また、左右両端近傍に設けられた一対のシャフト25のうち、左側のシャフト25の最後端(ここでは、後側の走行梁16を例としていう。)である後軸受24の後側には、従動スプロケット30がシャフト25と回転一体に取り付けられている。
【0053】
ここで、走行梁16の左側上端面にはモータ28が固定されており、その回転主軸には、駆動スプロケット29が回転一体に取り付けられている。そして、駆動スプロケット29と従動スプロケット30とを掛け渡すように第2ローラチェーン31が夫々に係合されている。
【0054】
したがって、横行駆動機構22は、モータ28の駆動によって、駆動スプロケット29、従動スプロケット30を介して、シャフト25に伝達され、シャフト25が回転することで、チェーンスプロケット26を介して第1ローラチェーン27が駆動するようになっている。この駆動力が横行梁19に伝達されることで、横行機構10が横行(左右方向)に駆動可能となっている。
【0055】
吊具ユニット11は、横行機構10の下方に懸架され、床版の吊上げ、または、吊下げを行うものである。換言すると、吊具ユニット11は、横行機構10の横行トロリー34を介して横行レール20に吊持されている。
【0056】
この吊具ユニット11は、上下方向に吊具上部36と吊具下部37とで構成されており、吊具上部36に4本のチェーンブロック35が取り付けられており、吊具下部37で床版2を固定するようになっている。
【0057】
図7は、床版の撤去時の横行動作を示した図である。図7(a)は横行レール内で移動する図、図7(b)は横行梁及び横行レールの移動する図、図7(c)は旧床版を撤去する図を夫々示している。尚、動作説明をする上で便宜上、脚体など一部削除している。
【0058】
以下、旧床版の撤去動作の一例を説明する。
旧床版は前後方向の長さをおよそ2m間隔でワイヤーソー等を用いて切断する。その切断作業を計7回、すなわち、前後方向の長さ14m分を行う。その後、ジャッキ装置等で橋桁1より夫々剥離され、床版架設機3で吊上げ、人力により旋回して、搬出位置に運び、廃棄物運搬車に積み込んで処理場へ運送される。
【0059】
このとき、廃棄物運搬車の積載重量は10トンであるため、床版が10トンを超える場合は、さらに左右(長手)方向中央で切断し、2分割にして重量を10トン以下に押さえることで、廃棄物運搬車に積み込んでいる。
すなわち、計14回、廃棄物運搬車に積み込むこととなる。
【0060】
その際、2分割された床版のうち、右側の床版は、床版架設機3の吊具ユニット11の重心の左右方向の位置と、床版の重心の左右方向の位置がずれているため、吊上げることができない。
【0061】
そこで、本発明の横行駆動機構22と横行機構10とを組合わせることによって、床版架設機3自身を右側に移動させることなく、右側の床版を素早く安全に吊上げることが可能となる。
【0062】
以下、横行機構10と横行駆動機構22とを用いた撤去例を、図7を用いて説明する。
まず、図7(a)に示すように、4本のチェーンブロック35で懸架された吊具ユニット11を横行トロリー34による電動駆動によって横行レール20に沿って所定の位置へ移動させる。
【0063】
次に、図7(b)に示すように、横行駆動機構22を駆動させて、人の手を介さずに自動で横行機構10を走行梁16に沿って右方向に移動させる。このとき、吊具ユニット11の重心と撤去する床版2の重心の左右方向の位置が概ね揃うように移動させる。
その後、図7(c)に示すように、チェーンブロック35を作動させて、吊具ユニット11に撤去する床版2を取り付けてから吊上げる。
【0064】
そして、図7(b)、図7(a)の逆の動きとなるように、横行駆動機構22を駆動させて横行機構10の横行梁19を走行梁16内に移動(格納)させる。
次に、横行トロリー34による電動駆動によって吊具ユニット11を左右一対の脚体7間に移動させる(戻す)。
【0065】
その状態で、床版を人の手を介して手動で90度旋回させて、左右の脚体7同士の間をそれぞれの脚体7に干渉しないように、走行機構9の走行レール14に沿って、走行トロリー15による電動駆動によって前方向に移動させ、廃棄物運搬車に積み込むことで床版の撤去となる。
【0066】
次に、新床版の設置動作の一例を説明する。
撤去した旧床版のかわりに新床版を設置する。このとき、一般的な床版は、長さ10~11m、重量14トン程度であり、トレーラーで搬送されてくる。
【0067】
搬送された新床版は、旧床版の2分割の長さよりも長い。よって、新床版を旋回するために、事前に前後の脚体7の間隔を広く延長しておく。また、新床版の長さが長いため、安定して搬送するために事前に吊具下部37の長手方向の長さも延長しておく。
尚、この延長は、詳細は省略するが、ボルト接続により、簡単に素早く延長することが可能となっている。
【0068】
その状態で、トレーラーに積み込まれている床版2を吊上ユニット11で吊上げ、その後、走行トロリー15による電動駆動によって前後方向の脚体7同士の間(床版回転範囲)内に移動させる。そして、人の力を介して手動で床版2を90度旋回させる。次に、4本のチェーンブロック35で懸架された吊具ユニット11を横行トロリー34、または、走行トロリー15の少なくとも一方による電動駆動によって、設置する所定の位置へ移動させて、チェーンブロック35を作動させて設置する。
【0069】
尚、一般的な床版の設置は、横行機構10を右方向に作動させることなく、吊具ユニット11を横行レール20内で移動させることで設置可能な構成としているが、床版または状況に応じて、横行機構を作動させるなど適宜設置することが好ましい。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、横行機構10を設けることで、吊具ユニット11を、横行レール20内の限られた範囲での移動から、さらに左右方向へ移動させることができる。
それによって、床版架設機3自体を幅員方向へ移動させることなく、或いは、分割前の床版を一旦吊上げ、90度旋回させた後に分割するという手間をかける必要もなく、その場で10トン以下に分割された床版を廃棄物運搬車へ素早く撤去することが可能となる。
また、横行駆動機構を設けることで、人の手を介することなく自動で左右方向移動させることができる。
また、横行梁19の上部に横行レール20を設けることで、機高を4.5m以下に押さえることができる。それによって、トンネル内での作業、または道路標識に干渉することなく、移動や床版の取換工事が行うことができる。
【0071】
なお、本発明にかかる床版架設機は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0072】
例えば、駆動スプロケット29と従動スプロケット30とに夫々係合する第2ローラチェーン31は、タイミングベルトでも良く、または、中間伝達部材を用いず、直接駆動スプロケット29と従動スプロケット30、または、他のギア同士が噛合うことで伝達しても良い。
また、第1ローラチェーン27の代わりにラックアンドピニオン方式によって横行梁19を左右方向に移動させても良い。
また、吊上げとしてチェーンブロック35を用いているが、これに限らず、ウインチやホイスト等であっても構わない。
また、横行トロリー34及び走行トロリー15は電動駆動としているが、無線駆動や手動駆動であっても良い。
また、横行機構10の駆動は、横行駆動機構22によって行われているが、これに限らず、手動で行っても良いし、シリンダーを用いる等、他の機構で行っても良い。
さらに、移動固定機構は、車輪12を用いているが、車輪の代わりにローラ、チルタンク、或いは、無限軌道等各種の移動手段を適用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
2 床版
3 床版架設機
4 主桁
5 横梁
6 平面構造体
7 脚体
8 移動固定機構
9 走行機構
10 横行機構
11 吊具ユニット
14 走行レール
15 走行トロリー
16 走行梁
17 上ローラ
18 下ローラ
19 横行梁
20 横行レール
21 連結材
22 横行駆動機構
32 接続材
33 束材
34 横行トロリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7