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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】水槽分割隔壁および水槽分割隔壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20220922BHJP
   E03F 11/00 20060101ALI20220922BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C02F1/00 J
E03F11/00
E03F1/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018123282
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020001000
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501054551
【氏名又は名称】株式会社NJS
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】竹森 敬介
(72)【発明者】
【氏名】上山 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】穴▲蔵▼ 正俊
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-090552(JP,U)
【文献】国際公開第2012/021055(WO,A1)
【文献】特開昭64-080697(JP,A)
【文献】実開昭56-047791(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
E03F 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の水槽を分割する水槽分割隔壁であって、
複数のプレキャストブロックによって形成され、
前記水槽の水槽壁面にアンカーによってアングル材が固定され、
前記プレキャストブロックの一方側面および他方側面には前記水槽壁面に対向した壁端面に沿って水膨張ゴムが配置され、
前記水膨張ゴムは前記アングル材を貫通する通しボルトによって、前記アングル材と前記プレキャストブロックとによって挟圧され、
前記プレキャストブロックの前記壁端面と前記水槽壁面との間に、親水性ウレタン樹脂が充填され、
隣接する前記プレキャストブロックの対向した連結端面に連結箱が設けられ、
前記連結端面の間に止水ゴムが配置され、
前記止水ゴムは対向した前記連結箱を締結する連結ボルトによって、前記連結端面によって挟圧されていることを特徴とする水槽分割隔壁。
【請求項2】
前記一方側面と前記アングル材との境界および前記他方側面と前記アングル材との境界にコーキングが施されていることを特徴とする請求項1記載の水槽分割隔壁。
【請求項3】
既設の水槽を分割する水槽分割隔壁を水中において設置する水槽分割隔壁の施工方法であって、
前記水槽の水槽壁面にアンカーを固定し、当該アンカーを一方アングル材に形成されたアンカー孔に挿入し、当該アンカーにアンカーナットを螺合することによって、前記水槽壁面に前記一方アングル材を固定する第1工程と、
プレキャストブロックの一方側面に前記水槽壁面に対向した壁端面に沿って形成されたゴム溝に水膨張ゴムを配置して、前記水膨張ゴムを前記一方アングル材に押し当てる第2工程と、
前記プレキャストブロックの他方側面に前記壁端面に沿って形成されたゴム溝に水膨張ゴムを配置して、前記水膨張ゴムに他方アングル材を押し当てる第3工程と、
前記水膨張ゴムを膨潤させる第4工程と、
前記一方アングル材と前記他方アングル材とを貫通する通しボルトに通しナットを螺合して、前記一方アングル材と前記他方アングル材とを近接させる第5工程と、
前記他方アングル材に形成されたアンカー孔の位置に合わせて前記水槽壁面にアンカーを固定し、当該アンカーを当該アンカー孔に挿入し、当該アンカーにアンカーナットを螺合することによって、前記他方アングル材を前記水槽壁面に固定する第6工程と、
前記プレキャストブロック同士の互いに対向した連結端面の間に止水ゴムを配置する第7工程と、
互いに対向した連結箱に形成された連結ボルト孔を貫通する連結ボルトに連結ナットを螺合して、前記止水ゴムを挟圧する第8工程と、
前記壁端面と前記水槽壁面との間に、親水性ウレタン樹脂を充填する第9工程と、
前記一方側面と前記一方アングル材との境界、前記他方側面と前記他方アングル材との境界、および前記連結端面同士の間にコーキングを施す第10工程とを有することを特徴とする水槽分割隔壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水槽分割隔壁および水槽分割隔壁の施工方法、特にプレキャストコンクリートブロックによって形成された水槽分割隔壁および当該水槽分割隔壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の水槽を複数に分割するには、水槽内の水を一旦排出して「ドライ」の状態にしてから隔壁を設置していた。このため、ドライ状態にする間やドライ状態である間、水処理ができないとか、微生物や活性汚泥を保全するとか、排水や汚泥等を処理するとかの問題が生じていた。
そのため、水槽内の水を排出することなく「ウエット」の状態で、隔壁を設置する発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-103176号公報(第5-8頁、図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、複数の枠部材を並べて吊り上げ、水が貯留された水槽内に下ろし、枠部材を水槽の壁面に近づけてから枠部材同士を固定し、枠部材に面部材を設置し、枠部材の端面と水槽の壁面との間を止水するものである。
このため、予め陸上で鋼製の枠部材を製作し、枠部材に止水手段(水中モルタルの注入によって膨張する袋)を取り付ける必要があり、製造コストが高いという問題があった。また、水槽の上方に、複数の枠部材を並べて吊り上げるためのスペースが必要なことから、設置可能な水槽が限定されるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解消するものであり、設置される水槽の制約がなく、安価に設置することができる水槽分割隔壁および水槽分割隔壁の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水槽分割隔壁は、既設の水槽を分割する水槽分割隔壁であって、複数のプレキャストブロックによって形成され、前記水槽の水槽壁面にアンカーによってアングル材が固定され、前記プレキャストブロックの一方側面および他方側面には前記水槽壁面に対向した壁端面に沿って水膨張ゴムが配置され、前記水膨張ゴムは前記アングル材を貫通する通しボルトによって、前記アングル材と前記プレキャストブロックとによって挟圧され、前記プレキャストブロックの前記壁端面と前記水槽壁面との間に、親水性ウレタン樹脂が充填され、隣接する前記プレキャストブロックの対向した連結端面に連結箱が設けられ、前記連結端面の間に止水ゴムが配置され、前記止水ゴムは対向した前記連結箱を締結する連結ボルトによって、前記連結端面によって挟圧されていることを特徴とする。
また、前記一方側面と前記アングル材との境界および前記他方側面と前記アングル材との境界にコーキングが施されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る水槽分割隔壁の施工方法は、既設の水槽を分割する水槽分割隔壁を水中において設置する水槽分割隔壁の施工方法であって、前記水槽の水槽壁面にアンカーを固定し、当該アンカーを一方アングル材に形成されたアンカー孔に挿入し、当該アンカーにアンカーナットを螺合することによって、前記水槽壁面に前記一方アングル材を固定する第1工程と、プレキャストブロックの一方側面に前記水槽壁面に対向した壁端面に沿って形成されたゴム溝に水膨張ゴムを配置して、前記水膨張ゴムを前記一方アングル材に押し当てる第2工程と、前記プレキャストブロックの他方側面に前記壁端面に沿って形成されたゴム溝に水膨張ゴムを配置して、前記水膨張ゴムに他方アングル材を押し当てる第3工程と、前記水膨張ゴムを膨潤させる第4工程と、前記一方アングル材と前記他方アングル材とを貫通する通しボルトに通しナットを螺合して、前記一方アングル材と前記他方アングル材とを近接させる第5工程と、前記他方アングル材に形成されたアンカー孔の位置に合わせて前記水槽壁面にアンカーを固定し、当該アンカーを当該アンカー孔に挿入し、当該アンカーにアンカーナットを螺合することによって、前記他方アングル材を前記水槽壁面に固定する第6工程と、前記プレキャストブロック同士の互いに対向した連結端面の間に止水ゴムを配置する第7工程と、互いに対向した連結箱に形成された連結ボルト孔を貫通する連結ボルトに連結ナットを螺合して、前記止水ゴムを挟圧する第8工程と、前記壁端面と前記水槽壁面との間に、親水性ウレタン樹脂を充填する第9工程と、前記一方側面と前記一方アングル材との境界、前記他方側面と前記他方アングル材との境界、および前記連結端面同士の間にコーキングを施す第10工程とを有することを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る水槽分割隔壁は、比較的小型軽量なプレキャストブロックを複数設置するものであるから、設置される水槽の制約がなく、鉄鋼製の溶接構造体と比較して安価になる。
また、本発明に係る水槽分割隔壁の施工方法は、前記第1工程から第10工程を実行するもので、アングル材の固定にアンカーを、アングル材とプレキャストブロックの連結、あるいはプレキャストブロック同士の連結にボルトを用いるから、水中での作業が容易であるため、水中における設置作業を可能にする。したがって、水槽をドライにするための期間を短縮化した分、施工期間を大幅に短縮するため、施工コストが安価になる。
さらに、水膨張ゴム、親水性ウレタン樹脂およびコーキングを具備するから止水性に富む水槽分割隔壁が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、ポンプ場を示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、水槽分割隔壁を示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、図3の(a)は一部(プレキャストブロック)を示す斜視図、図3の(b)は一部(一方アングル材)を示す斜視図、図3の(c)は一部(他方アングル材)を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、図4の(a)は設置形態(通しボルトの位置)を示す正面視の断面図、図4の(b)は設置形態(ウレタン溝の位置)を示す正面視の断面図、図4の(c)は設置形態(水槽柱面への設置)を示す正面視の断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、図5の(a)は連結形態(連結箱の位置)を示す平面視の断面図、図5の(b)は連結形態(連結箱から外れた位置)を示す平面視の断面図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る水槽分割隔壁の施工方法を説明するものであって、施工要領を示す側面図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る水槽分割隔壁の施工方法を説明するものであって、施工要領を示す側面図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る水槽分割隔壁の施工方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁について説明する。なお、各図面は模式的に描かれているため、各部材の形状や大きさ、あるいは部材間の位置関係や部材の数は図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
[実施の形態1]
(水槽分割隔壁)
図1図5は本発明の実施の形態1に係る水槽分割隔壁を説明するものであって、図1はポンプ場を示す平面図、図2は水槽分割隔壁を示す側面図、図3の(a)は一部(プレキャストブロック)を示す斜視図、図3の(b)は一部(一方アングル材)を示す斜視図、図3の(c)は一部(他方アングル材)を示す斜視図、図4の(a)は設置形態(通しボルトの位置)を示す正面視の断面図、図4の(b)は設置形態(ウレタン溝の位置)を示す正面視の断面図、図4の(c)は設置形態(水槽柱面への設置)を示す正面視の断面図、図5の(a)は連結形態(連結箱の位置)を示す平面視の断面図、図5の(b)は連結形態(連結箱から外れた位置)を示す平面視の断面図である。なお、各図面は模式的に描かれたものである。特に図3は各部位を説明するためのものであって、各部位の大きさ(縮尺)や間隔は誇張されている。
【0012】
(ポンプ場)
図1は水槽の一例であるポンプ場を示している。ポンプ場100は、図中左側に示す着水井110と図中右側に示すポンプ井130とを有し、着水井110とポンプ井130との間に4列の第1水処理路120a~第4水処理路120d(以下「水処理路120」と総称する場合がある)が配置され、処理水は図中左側(上流側)から図中右側(下流側)に向かって(以下「X方向」と称す)に流れる。また、ポンプ井130の下流側(図中右側)には5列の第1ポンプ室140a~第5ポンプ室140e(以下「ポンプ室140」と総称する場合がある)が配置されている。なお、以下の説明において、同様の構成については名称を修飾する「第1、第2・・・」および符号の添え字「a、b・・・」の記載を省略する。また、X方向に垂直な方向を「Y方向」と、X-Y面に垂直な方向を「上方」または「Z方向」と称す。
そして、水処理路120には、上流側から下流側に向かって、流入ゲート121、粗目スクリーン122、自動除塵機123、沈砂掻寄機124、および流出ゲート125が設けられている。
そして、ポンプ井130は、水槽壁面である水槽底面131および複数の水槽柱面134と、水槽柱面134間に設けられた水槽側面132とによって包囲されている。また、水槽側面132には水処理路120に連通する開口とポンプ室140に連通する開口とが形成されている。そして、ポンプ井130は水槽分割隔壁150によって水密的に仕切られている。また、ポンプ井130の上部には、水槽底面131と平行な水槽梁133が設置されている(図6の(a)等参照)。
【0013】
(水槽分割隔壁)
図2において、水槽分割隔壁150は15枚のプレキャストブロック(以下「PCブロック」と略称する)10a~PCブロック10p(以下「PCブロック10」と総称する場合がある)と、PCブロック10を水槽底面131および水槽柱面134に設置する一方アングル材20および他方アングル材30(図4参照)とを具備している。
なお、水槽分割隔壁150は、既設のポンプ場100のポンプ井130の水を排出しない状態(ウエット)で、水中で設置されたものである(これについては、別途詳細に説明する)。なお、水槽分割隔壁150が設置される水槽を、ポンプ場100におけるポンプ井130にしているが、本発明はこれに限定するものでなく、様々な水槽に設置されるものである。また、水槽分割隔壁150を形成するPCブロック10の数を限定するものではない。
【0014】
(プレキャストブロック)
図2において、PCブロック10は四角形または五角形の板状であるが、説明を簡素にするため、以下、四角形のPCブロック10aについて説明する。
図3の(a)において、PCブロック10aは一対の側面(以下それぞれを、一方側面12および他方側面13と称す)と、ポンプ井130の水槽底面131に対向する底端面11と、ポンプ井130の水槽柱面134に対向する柱端面14と、底端面11に平行で隣接するPCブロック10fに対向する天端面15と、柱端面14に平行で隣接するPCブロック10bに対向する連結端面16とを具備している。
なお、底端面11および柱端面14は水槽の壁面を構成する水槽底面131および水槽柱面134にそれぞれ対向するから「壁端面」に同じである。また、例えばPCブロック10bについは、水槽柱面134に対向する端面を具備しないから、一対の連結端面16を具備するとし、例えばPCブロック10eについは、周囲を隣接するPCブロック10によって包囲されているから、4つの連結端面16を具備するとし、最上段の中央に配置されるPCブロック10oについては、3つの連結端面16を具備するとする。さらに、五角形の例えばPCブロック10cについては、柱端面14が折れ曲がった一対の平面によって形成されていると看做す。
【0015】
(ゴム溝およびウレタン溝)
図3の(a)において、PCブロック10aの一方側面12および他方側面13には、水膨張ゴム40を配置するための凹溝であるゴム溝41が、底端面11および柱端面14と平行で全幅に渡ってそれぞれ形成されている。また、ゴム溝41よりも底端面11に近い位置に、通しボルト90を貫通するための通しボルト孔91が形成されている。ただし、ゴム溝41よりも柱端面14に近い位置には通しボルト孔91が形成されていない。
そして、ゴム溝41よりも底端面11に近い位置およびゴム溝41よりも柱端面14に近い位置に、親水性ウレタン樹脂50を通過させるためのウレタン溝51がそれぞれ形成されている。なお、ウレタン溝51は通しボルト孔91と干渉しない位置に形成されている。
【0016】
(連結箱)
図3の(a)において、PCブロック10aの連結端面16(天端面15を含む)には、隣接するPCブロック10同士を連結するための連結箱70が設けられている。但し、最上段に配置されるPCブロック10n、10o、10pの天端面15には連結箱70が設けられていない。
図5の(a)において、PCブロック10aに設置された連結箱70は、天端面15または連結端面16と同一面に配置された連結面71と、一方側面12(他方側面13の場合もある)と同一面に配置された連結箱蓋72と、PCブロック10内に埋没した埋没面73(4面)と、箱体の内部に設置されたグラウトまたはモルタル74とを具備している。そして、連結面71に連結ボルト孔75が形成され、埋没面73には、PCブロック10aを補強するための鋼棒(以下「アンカー筋79」と称す)が接続されている。
【0017】
(一方アングル材)
図3の(b)および図4の(a)~(c)において、一方側面12に配置される一方アングル材20および他方側面13に配置される他方アングル材30は、何れもステンレス鋼製の等辺山型鋼であるが、本発明は、ステンレス鋼製の等辺山型鋼に限定するものではなく、適宜材質を変更したり、不等辺山型鋼や溶接構造のアングル材にしたりしてもよい。
そして、一方アングル材20の水槽底面131または水槽柱面134に当接する辺(以下、「壁面辺21」と称す)には、水槽底面131または水槽柱面134に立設されたアンカー80を貫通させるためのアンカー孔82が形成され、一方アングル材20のPCブロック10の一方側面12に対向する辺(以下、「側面辺22」と称す)には、通しボルト90を貫通させるための通しボルト孔92が形成されている。
このとき、アンカー孔82は2列に配置され、それぞれに5個所等間隔に形成されている。このため、水槽底面131の近くや水槽柱面134の近くに配設された鉄筋等との干渉を避ける位置にアンカー80が固定された場合でも、アンカー80が侵入するアンカー孔82の列を選択することによって、水槽分割隔壁150(PCブロック10に同じ)を所望の位置に設置することができる。
【0018】
(他方アングル材)
図3の(c)および図4の(a)~(c)において、他方アングル材30の水槽底面131または水槽柱面134に当接する辺(以下、「壁面辺31」と称す)には、水槽底面131または水槽柱面134に立設されたアンカー80を貫通させるためのアンカー孔83が形成され、PCブロック10の他方側面13に対向する辺(以下、「側面辺32」と称す)には、通しボルト90を貫通させるための通しボルト孔93が形成されている。なお、一方アングル材20と他方アングル材30とは設置形態に応じて長さが相違する。また、他方アングル材30は、底端面11に配置されるものと柱端面14に配置されるものとで、長さが相違する。
【0019】
(ウレタン注入口)
図3の(c)および図4の(b)において、他方アングル材30の側面辺32には他方側面13に形成されたウレタン溝51に対応した位置に、親水性ウレタン樹脂50を注入するためのウレタン注入口53が形成されている。このとき、ウレタン注入口53は、側面辺32を貫通する貫通孔(図示しない)とかかる貫通孔を包囲して壁面辺31側に突出するように側面辺32に固定された接続管とを具備している。かかる接続管は親水性ウレタン樹脂50の注入ホース(図示しない)を接続するためのものである。
なお、一方アングル材20の側面辺22に親水性ウレタン樹脂50を注入するためのウレタン注入口(図示しない)を形成して、他方アングル材30におけるウレタン注入口53の形成を省略してもよい。さらに、一方アングル材20および他方アングル材30の両方にウレタン注入口を形成し、一方を、親水性ウレタン樹脂50を排出するためのウレタン排出口としてもよい。
【0020】
(PCブロックの水槽底面への設置形態)
図4の(a)および(b)において、水槽底面131にアンカー80が立設されている。そして、アンカー80は一方アングル材20の壁面辺21に形成されたアンカー孔82を貫通し、螺合するアンカーナット88が壁面辺21を水槽底面131に押し付けている。同様に、アンカー80は他方アングル材30の壁面辺31に形成されたアンカー孔83を貫通し、螺合するアンカーナット88が壁面辺31を水槽底面131に押し付けている。
そして、一方アングル材20と他方アングル材30との間にPCブロック10が配置され、一方アングル材20に形成された通しボルト孔92と他方アングル材30に形成された通しボルト孔93とPCブロック10に形成された通しボルト孔91とを貫通した通しボルト90に通しナット99が螺合している(図4の(a)参照)。
【0021】
このとき、一方側面12および他方側面13に形成されたゴム溝41にはそれぞれ水膨張ゴム40が配置され、膨潤した水膨張ゴム40は一方側面12に形成されたゴム溝41と側面辺22とによって、また、他方側面13に形成されたゴム溝41と側面辺32とによってそれぞれ挟圧されている。
そして、PCブロック10の自重は通しボルト90に伝達され、PCブロック10の底端面11と水槽底面131との間に隙間(以下「底面隙間101」と称す)が形成されている。なお、水膨張ゴム40は挟圧されてゴム溝41に収まっているため、側面辺22と一方側面12とが当接し、側面辺32と他方側面13とが当接しているから、正確には、PCブロック10の自重の一部は、摩擦力として一方アングル材20および他方アングル材30に伝達されることがある。
【0022】
さらに、他方アングル材30の側面辺32に形成されたウレタン注入口53から親水性ウレタン樹脂50が注入され、一方アングル材20と他方アングル材30とで挟まれた範囲、すなわち、底面隙間101に親水性ウレタン樹脂50が充填されている(正確には、ゴム溝41よりも底端面11に近い範囲で側面辺32と他方側面13の間、およびゴム溝41よりも底端面11に近い範囲で側面辺22と側面12の間にも侵入している場合がある)。
さらに、PCブロック10の一方側面12と一方アングル材20の側面辺22との境界、およびPCブロック10の他方側面13と他方アングル材30の側面辺32との境界にコーキング60が施されている。
【0023】
(PCブロックの水槽柱面への設置形態)
図4の(c)において、水槽柱面134(壁面に同じ)における設置形態は水槽底面131における設置形態と略同様であるが、PCブロック10の柱端面14寄りには通しボルト孔91が形成されていないから、通しボルト90は、一方アングル材20に形成された通しボルト孔92と他方アングル材30に形成された通しボルト孔93とを貫通しているだけで、PCブロック10の柱端面14と水槽柱面134との間に位置している。したがって、PCブロック10の柱端面14と水槽柱面134との間に、通しボルト孔91の一部が侵入した隙間(以下「柱面隙間104」と称す)が形成され、柱面隙間104に親水性ウレタン樹脂50が充填されている。
そうすると、PCブロック10の自重は通しボルト90に伝達されることはないが、正確には、PCブロック10の自重の一部は摩擦力として一方アングル材20および他方アングル材30に伝達される。
なお、PCブロック10の柱端面14寄りには通しボルト孔91を形成しないのは、Y方向で隣接するPCブロック10同士を連結した際に生じるPCブロック10同士の間隔のバラツキを吸収するためである。
【0024】
(隣接するPCブロックの連結形態)
図5の(a)および(b)において、隣接するPCブロック10aとPCブロック10bは、前者の連結端面16に設置された連結箱70と後者の連結端面16に設置された連結箱70とが対向している。そして、対向した連結箱70に形成された連結ボルト孔75を貫通した連結ボルト76に連結ナット77を螺合することによって、隣接したPCブロック10aとPCブロック10bとは連結されている。このとき、互いに対向した連結端面16の間に止水ゴム78が配置され、前記螺合によって止水ゴム78は挟圧されている。
さらに、両者の連結端面16(正確には、一方側面12との角部および他方側面13との角部)に跨がってコーキング60が施されている。
【0025】
(作用効果)
水槽分割隔壁150は前記構成であって、簡素な構造で水密性が保証され、複数のPCブロック10によって形成されるから、鋼鉄製の溶接構造体に比べて安価である。また、複数のPCブロック10を連結することによって形成されるから、設置する既設水槽の制限がなくなる。
また、PCブロック10の水槽底面131や水槽柱面134への設置や、PCブロック10同士の連結にボルト/ナットを用いるため、水中での作業が容易になり、ポンプ場100をドライにするための期間を短縮化した分、施工期間が大幅に短縮する
【0026】
[実施の形態2]
(水槽分割隔壁の施工方法)
図6図8は本発明の実施の形態2に係る水槽分割隔壁の施工方法を説明するものであって、図6および図7は施工要領を示す側面図、図8はフローチャートである。なお、実施の形態1と同じ部位および相当する部位には同じ名称および同じ符号を付し、一部説明を省略する。
図6の(a)において、ポンプ井130を排水して「ドライ」状態にして「準備作業」を実施する。そして、作業者300は、仮設の山留材やチェーンブロック(図示しない)を設置し、単管パイプによる足場301を組み立して、水槽底面131および水槽柱面134の近傍における鉄筋を探査して鉄筋の芯出しを実施する。さらに、足場301の一部を撤去する。なお、かかる準備作業のためにのみ「ドライ」にする必要があるが、かかる期間は短時間であるから、「ドライ」にすることに伴う問題は最少に抑えられている。
図6の(b)において、ポンプ井130に給水して「ウエット」状態にする。そこで、一方アングル材20を設置するために、水槽底面131および水槽柱面134にアンカー80を固定する。
【0027】
図6の(c)において、一方アングル材20を水槽底面131および水槽柱面134に設置する。このとき、一方アングル材20には現地において、水槽底面131および水槽柱面134に設置されたアンカー80に対応した位置にアンカー孔82が形成されている。そして、足場301の一部を撤去する。
図6の(d)において、PCブロック10を1枚ずつ吊り込んで一方アングル材20に押し当てて他方アングル材30で挟み付けると共に、他方アングル材30を水槽底面131および水槽柱面134に固定する(これについては別途詳細に説明する)。さらに、隣接するPCブロック10同士を連結する(これについては、別途詳細に説明する)。なお、他方アングル材30はPCブロック10毎に長さが調整され、1つのPCブロック10が設置された後、次のPCブロック10が吊り込まれるものである。
【0028】
図7の(a)において、全てのPCブロック10が設置された後に、ウレタン注入口53に注入ホース(図示しない)を接続して底面隙間101および柱面隙間104に親水性ウレタン樹脂50を充填する。また、連結箱70内にグラウトまたはモルタル74を充填する(図5の(a)参照)。
図7の(b)において、一方側面12と一方アングル材20との境界、他方側面13と他方アングル材30との境界、および連結端面16同士の間にコーキング60を施す。
そして、その後、片水圧試験を実施して、水漏れ個所の有無や、水漏れがある場合は再コーキングを施し、仮設材(図示しない)を撤去する。
【0029】
(フローチャート)
図8に基づいて、PCブロック10を設置する要領を詳細に説明する。
まず、水槽底面131および水槽柱面134にアンカー80を固定し(S1の1)、アンカー80を一方アングル材20に形成されたアンカー孔82に挿入し(S1の2)、アンカー80にアンカーナット88を螺合する(S1の3)。
次に、PCブロック10の一方側面12に形成されたゴム溝41に水膨張ゴム40を配置して、水膨張ゴム40を一方アングル材20に押し当てる(S2)。
そして、PCブロック10の他方側面13に形成されたゴム溝41に水膨張ゴム40を配置して、水膨張ゴム40に他方アングル材30を押し当てる(S3)。
そして、水膨張ゴム40を膨潤させるため待機する(S4)。なお、水膨張ゴム40が既に膨潤している場合は、待機することなく次の工程に進む。
そこで、一方アングル材20と他方アングル材30とを貫通する通しボルト90に、通しナット99を螺合して、一方アングル材20と他方アングル材30とを近接させる(S5)。すなわち、PCブロック10を一方アングル材20および他方アングル材30によって挟持する。
【0030】
そして、他方アングル材30に予め形成されているアンカー孔83の位置に合わせて水槽底面131および水槽柱面134にアンカー80を固定し(S6の1)、アンカー80にアンカーナット88を螺合する(S6の2)。
さらに、PCブロック10同士の互いに対向した連結端面16の間に止水ゴム78を配置し(S7)、互いに対向した連結箱70に形成された連結ボルト孔75を貫通する連結ボルト76に連結ナット77を螺合して、止水ゴム78を挟圧する(S8)。
そして、底面隙間101および柱面隙間104に親水性ウレタン樹脂50を充填し(S9)、一方側面12と一方アングル材20との境界、他方側面13と他方アングル材30との境界、および連結端面16同士の間にコーキング60を施す(S10)。
【0031】
(作用効果)
以上のように、本発明に係る水槽分割隔壁の施工方法は、前記工程を実行するもので、一方アングル材20および他方アングル材30の固定にアンカー80およびアンカーナット88を、PCブロック10の一方アングル材20および他方アングル材30による挟持に通しボルト90および通しナット99を、PCブロック10同士の連結に連結ボルト76および連結ボルトナット77を用いるから、水中での作業が容易であるため、水中における設置作業を可能にする。したがって、水槽をドライにするための期間を短縮化した分、施工期間を大幅に短縮し施工コストが安価になる。
さらに、水膨張ゴム40、親水性ウレタン樹脂50およびコーキング60を具備するから止水性に富む水槽分割隔壁150が得られる。
【0032】
以上、本発明を実施の形態1、2をもとに説明した。この実施の形態1、2は例示であり、それらの各構成要素およびその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は以上であるから、各種水槽に設置される水槽分割隔壁および水槽分割隔壁の施工方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10:PCブロック
11:底端面
12:一方側面
13:他方側面
14:柱端面
15:天端面
16:連結端面
20:一方アングル材
21:壁面辺
22:側面辺
30:他方アングル材
31:壁面辺
32:側面辺
40:水膨張ゴム
41:ゴム溝
50:親水性ウレタン樹脂
51:ウレタン溝
53:ウレタン注入口
60:コーキング
70:連結箱
71:連結面
72:連結箱蓋
73:埋没面
74:グラウトまたはモルタル
75:連結ボルト孔
76:連結ボルト
77:連結ナット
78:止水ゴム
79:アンカー筋
80:アンカー
82:アンカー孔
83:アンカー孔
88:アンカーナット
90:通しボルト
91:通しボルト孔
92:通しボルト孔
93:通しボルト孔
99:通しナット
100:ポンプ場
101:底面隙間
104:柱面隙間
110:着水井
120:水処理路
121:流入ゲート
122:粗目スクリーン
123:自動除塵機
124:沈砂掻寄機
125:流出ゲート
130:ポンプ井
131:水槽底面
132:水槽側面
133:水槽梁
134:水槽柱面
140:ポンプ室
150:水槽分割隔壁
300:作業者
301:足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8