(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220922BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2018124890
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】大竹 康宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 義徳
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰弘
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-289638(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030929(WO,A1)
【文献】特開2017-004102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置であって、
前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、前記複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得部と、
予め作成された図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定部と、
前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得部によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する自己位置推定部と、を備えていることを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記寸法に関する情報は、寸法許容差であって、
前記対象部位特定部は、
前記建物における前記複数の対象部位それぞれの前記寸法許容差を含む前記図面データを参照し、前記複数の対象部位の中から前記寸法許容差に基づいて前記基準対象部位を特定することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記対象部位特定部は、前記複数の対象部位の中から前記寸法許容差が最も小さい対象部位を、少なくとも前記基準対象部位として特定することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記寸法に関する情報は、寸法誤差であって、
前記対象部位特定部は、前記図面データと前記形状データの比較によって得られる、前記複数の対象部位それぞれの前記寸法誤差に基づいて、前記複数の対象部位の中から前記寸法誤差が最も小さい対象部位を、少なくとも前記基準対象部位として特定することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記建物の施工現場内において墨出し線をマーキングするためのマーキング部と、
前記自己位置推定部によって推定された前記自己位置に基づいて、実際の墨出し線のマーキング位置を検出するマーキング位置検出部と、
該マーキング位置検出部によって検出された前記マーキング位置を対象として墨出し線のマーキングを実行するように、前記マーキング部を制御するマーキング実行部と、を備えていることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項6】
前記マーキング位置検出部は、
前記建物の各施工段階における墨出し線のマーキング位置を含む前記図面データに含まれる前記マーキング位置と、前記自己位置推定部によって推定された前記自己位置との照合結果に基づいて、実際の前記マーキング位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の自律移動装置。
【請求項7】
前記建物内の複数の部屋を含む前記図面データに含まれる前記部屋内における前記複数の対象部位の位置と、前記形状データにおける実際の前記複数の対象部位の位置とを前記部屋ごとに照合し、前記複数の部屋の中から前記複数の対象部位の適合率に基づいて部屋を決定する部屋決定部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項8】
建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置としてのコンピュータに、
前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得処理と、
予め作成された図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定処理と、
前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得処理によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する自己位置推定処理と、を実行させることを特徴とする自律移動プログラム。
【請求項9】
建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置の位置を推定するための位置推定システムであって、
前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、前記複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得部と、
予め作成された図面データを取得し、前記図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定部と、
前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得部によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における前記自律移動装置の位置を推定する位置推定部と、を備えていることを特徴とする位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムに係り、特に、建物の施工現場内において自律移動する自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律移動ロボットの中には、光学式距離センサを用いて作業環境内の対象物体までの方位及び距離を検出して3次元点群データを取得した上で、予め記憶されている作業環境内の地図情報における対象物体の位置情報と、3次元点群データにおける実際の対象物体の位置情報とを照合することで、自己位置を推定するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の自律移動装置では、カメラによって撮像した画像データ、及び距離センサによって取得したレンジデータ(3次元形状データ)の双方を用いて、自己位置を推定することが開示されている。
詳しく言うと、周囲環境に応じて画像データによる自己位置推定と、レンジデータによる自己位置推定との信頼度をそれぞれ決定し、決定した信頼度に基づいて最終的な自己位置を決定することが開示されている。上記構成により、様々な環境下において自己位置推定の精度を確保することができる。
【0004】
特許文献2の自律移動型墨出しロボットでは、当該ロボットに搭載した距離測定センサを利用して建設現場にある柱の位置を測定することで、建設現場における現在位置を検出し、そこから墨出し位置へ移動して墨出し線を描画することが開示されている。
上記構成により、建設現場における墨出し作業を省力化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-322138号公報
【文献】特開平8-1552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建物の施工現場では、建物(特に建物の躯体)の部位ごとによって、また、建物(建物の部屋)の用途によって、各部位に対して要求される寸法精度が異なっており、各施工段階において建物ごとに異なった寸法誤差が生じるものである。
そのような施工現場内において精度良く自己位置を推定するためには、施工現場ならではの事情を考慮して、距離センサの対象部位を特定する必要があった。
例えば、外壁よりも内側の部位においては、その後の内装仕上げによって寸法誤差を吸収することができるため、要求される寸法精度が高くないことから、距離センサの対象部位としてはふさわしくない部位と言える。また、内壁に取り付けられる断熱材等の部位においても表面の凹凸が比較的大きいため、こちらも距離センサの対象部位としてはふさわしくない。
また例えば、各部屋の用途(顧客の要望を含む)によって、店舗系のショップならば、間仕切りの寸法精度を柱や外壁等の部位よりも優先することや、コンビニエンスストアならば、出入り口周辺の部位の寸法精度を優先して設計することも考えられる。
従って、特許文献1、2のような自律移動装置とは異なった観点で、上述したような建物の施工現場ならではの事情を考慮しながら、精度良く自己位置を推定することが可能な自律移動装置が求められていた。
【0007】
また、建物の施工現場においては、各種作業(特に墨出し作業)を省力化し、ヒューマンエラーを低減することが課題として挙がっており、精度良く自己位置を推定した上で、床や壁面等に対し墨出し作業まで実行することが可能な自律移動装置が求められていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、建物の施工現場ならではの事情を考慮して、当該施工現場内で精度良く自己位置を推定することが可能な自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、建物の施工現場において、精度良く自己位置を推定した上で、墨出し作業まで実行することが可能な自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の自律移動装置によれば、建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置であって、前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、前記複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得部と、予め作成された図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定部と、前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得部によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する自己位置推定部と、を備えていること、により解決される。
上記構成により、建物の施工現場ならではの事情を考慮して、施工現場内で精度良く自己位置を推定することが可能な自律移動装置を実現することができる。
詳しく説明すると、本発明の自律移動装置では、建物における複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて基準対象部位を特定している。そのため、施工現場ならではの事情、すなわち各施工段階において建物ごとに異なる寸法情報が生じている事情を考慮したものとなっている。
【0010】
このとき、前記寸法に関する情報は、寸法許容差であって、前記対象部位特定部は、前記建物における前記複数の対象部位それぞれの前記寸法許容差を含む前記図面データを参照し、前記複数の対象部位の中から前記寸法許容差に基づいて前記基準対象部位を特定すると良い。
上記構成により、建物の寸法許容差を含む図面データを参照して、施工現場内に存在する複数の対象部位の中から寸法許容差に基づいて基準対象部位を特定している。そのため、各施工段階において建物ごとに異なる寸法許容差が生じている事情を考慮したものとなっている。
【0011】
このとき、前記対象部位特定部は、前記複数の対象部位の中から前記寸法許容差が最も小さい対象部位を、少なくとも前記基準対象部位として特定すると良い。
上記構成により、建物の施工現場内においてより精度良く自己位置を推定することが可能な自律移動装置となる。
【0012】
このとき、前記寸法に関する情報は、寸法誤差であって、前記対象部位特定部は、前記図面データと前記形状データの比較によって得られる、前記複数の対象部位それぞれの前記寸法誤差に基づいて、前記複数の対象部位の中から前記寸法誤差が最も小さい対象部位を、少なくとも前記基準対象部位として特定すると良い。
上記構成により、施工現場内に存在する複数の対象部位それぞれの寸法誤差に基づいて、複数の対象部位の中から基準対象部位を特定している。そのため、各施工段階において建物ごとに異なる寸法誤差が生じている事情を考慮したものとなっている。
【0013】
このとき、前記建物の施工現場内において墨出し線をマーキングするためのマーキング部と、前記自己位置推定部によって推定された前記自己位置に基づいて、実際の墨出し線のマーキング位置を検出するマーキング位置検出部と、該マーキング位置検出部によって検出された前記マーキング位置を対象として墨出し線のマーキングを実行するように、前記マーキング部を制御するマーキング実行部と、を備えていると良い。
また、前記マーキング位置検出部は、前記建物の各施工段階における墨出し線のマーキング位置を含む前記図面データに含まれる前記マーキング位置と、前記自己位置推定部によって推定された前記自己位置との照合結果に基づいて、実際の前記マーキング位置を検出すると良い。
上記構成により、建物の施工現場において、精度良く自己位置を推定した上で、墨出し作業まで実行することが可能な自律移動装置を実現できる。
【0014】
このとき、前記建物内の複数の部屋を含む前記図面データに含まれる前記部屋内における前記複数の対象部位の位置と、前記形状データにおける実際の前記複数の対象部位の位置とを前記部屋ごとに照合し、前記複数の部屋の中から前記複数の対象部位の適合率に基づいて部屋を決定する部屋決定部を備えていると良い。
上記構成により、建物内においてレイアウトが類似した複数の部屋が存在する場合であっても、図面データにおいて複数の部屋の中から対象となる部屋を精度良く決定することができ、その後、当該部屋に対して自己位置を推定し、墨出し作業などの施工作業を進めることができる。
【0015】
また、建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置としてのコンピュータに、前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得処理と、予め作成された図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定処理と、前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得処理によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する自己位置推定処理と、を実行させる自律移動プログラムも実現できる。
【0016】
また、建物の施工現場内を自律移動する自律移動装置の位置を推定するための位置推定システムであって、前記建物のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出した検出結果に基づいて、前記複数の対象部位の形状データを取得する形状データ取得部と、予め作成された図面データを参照し、前記複数の対象部位それぞれの寸法に関する情報に基づいて、前記複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定部と、前記図面データに含まれる前記基準対象部位の位置と、前記形状データ取得部によって取得された前記形状データにおける実際の前記基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における前記自律移動装置の位置を推定する位置推定部と、を備えた位置推定システムも実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムによれば、建物の施工現場ならではの事情を考慮して、当該施工現場内で精度良く自己位置を推定することが可能となる。
また、建物の施工現場において、精度良く自己位置を推定した上で、墨出し作業まで実
行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の位置推定システム全体の構成図である。
【
図2】自律移動装置、データサーバーのソフト構成図である。
【
図3】建物の部屋における「図面データ」の一例を示す図である。
【
図4】建物の部屋における「実際の施工状況」の一例を示す図である。
【
図5】建物の部屋における「形状データ(点群データ)」の一例を示す図である。
【
図7】自己位置推定部による処理、墨出し線マーキング処理を説明する図である。
【
図8】本実施形態の自律移動プログラムの処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について
図1~
図8を参照して説明する。
本実施形態は、建物の施工現場内で自己位置推定を行った上で墨出し作業を実行する自律移動装置であって、予め作成された、建物の寸法許容差を含む図面データを記憶しており、建物のうち施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出し、検出結果に基づいて複数の対象部位の形状データ(点群データ)を取得し、図面データを参照して建物における複数の対象部位それぞれの寸法許容差に基づいて複数の対象部位の中から基準対象部位を特定し、図面データに含まれる基準対象部位の位置(座標位置)と、形状データにおける実際の基準対象部位の位置(座標位置)との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定することを特徴とする発明に関するものである。
【0020】
本実施形態となる自律移動装置1を含む位置推定システムS全体の構成を
図1に示す。
位置推定システムSは、建物の施工現場内において自己位置推定を行い、墨出し作業を行うときに用いられる自律移動装置1と、自律移動装置1とネットワークを通じて接続され、各種プログラムやデータを保管するデータサーバー100と、から主に構成されている。
「自己位置推定」とは、装置(ロボット)自身が現在どの場所にいるのか、どちらの方向を向いているのか、またはどれぐらいの速度で走行しているのか等、現在の装置(ロボット)の状態を各種センサデータを参照して推定することを意味する。
また「墨出し作業」とは、建物の施工現場等において、各種施工作業の基準位置を示す基準線(墨出し線)を床面、壁面または天井面等にマーキングする作業を意味し、具体的には、基礎墨出しや躯体墨出し、仕上げ墨出し等がある。基準線は、その後の建物の部材の取り付け作業や、空調・電気設備等の器具の取り付け作業を実施するために用いられる。
【0021】
自律移動装置1は、施工現場内の床面を自律移動し、自己位置を推定しながら墨出し線を床面に対してマーキングするロボットであって、データサーバー100と情報データ通信を行い、データサーバー100に記憶されている最新のプログラムやデータを読み込んで記憶しておくことができる。
データサーバー100は、主に自己位置推定作業、墨出し作業を実行するための各種プログラムやデータを管理して保管しておくためのマスターサーバーとしての機能と、設計図面データを管理して保管しておくための管理サーバーとしての機能と、を有している。
【0022】
<自律移動装置1のハード構成>
自律移動装置1は、
図1に示すように、距離センサ2と、移動ユニット3と、マーキングユニット4と、駆動ユニット5と、各種演算・制御を実行するためのプロセッサー6と、を主に備えており、それぞれロボットの本体部分に取り付けられている。
なお、マーキングユニット4が、特許請求の範囲においてマーキング部に相当する。
【0023】
距離センサ2は、ロボット本体の上端に取り付けられたレーザーセンサであって、照射方向を連続的に変化させながらレーザー光を照射し、対象部位からの反射光を受光することで、当該対象部位までの距離を測定するものである。
具体的には、距離センサ2は、施工現場内に存在する対象部位との距離を計測することで、当該対象部位の形状を検出し、検出結果に基づいて対象部位の形状データを作成するものである。
「形状データ」とは、本実施例では対象部位の2次元距離情報に基づく2次元点群データを意味するが、3次元距離情報(3次元点群データ)であってももちろん良い。
なお、距離センサ2は、レーザーセンサに特に限定されることなく、加速度センサ(ジャイロセンサ)、磁気センサ、電波を使用して対象物体までの距離を計測するレーダセンサや、施工現場内の光学的情報を取得するカメラセンサ等を利用しても良い。
【0024】
移動ユニット3(移動部)は、ロボット本体を2次元方向に移動させるための一対の駆動車輪と、不図示の補助車輪とから主に構成されており、ロボット本体の側方に取り付けられている。そして、駆動ユニット5から駆動動力を受けて回転することで、ロボット本体を移動させることができる。
なお、移動ユニット3は、駆動車輪を想定しているが、特に限定されることなく、駆動クローラー等の公知な駆動手段を採用しても良い。
また、移動ユニット3は、本実施例では2次元方向の移動ユニットを想定しているが、特に限定されることなく、公知な機構によって3次元方向に移動することが可能なユニットを採用しても良い。
【0025】
マーキングユニット4(マーキング部)は、インクジェット方式によって墨出し線をマーキングする機構を有し、ロボット本体の下端に取り付けられており、インクを下方に向かって噴霧することで床面に対し墨出し線をマーキングすることができる。
なお、マーキングユニット4は、インクジェット方式に特に限定されることなく、直接ペンの先端を床面に接触させて水平方向に移動することで床面に墨出し線をマーキングしても良いし、インクを滴下する方式で墨出し線をマーキングする等しても良い。
駆動ユニット5(駆動部)は、各種ユニットを駆動させるためのモーターであって、ロボット本体の内部に取り付けられており、プロセッサー6から受信した駆動命令に基づいて動作するものである。
【0026】
プロセッサー6は、データの演算・制御処理装置としてのCPUと、記憶装置としてのROM、RAM、及びHDDと、ホームネットワーク又はインターネットを通じて情報データの送受信を行う通信用インタフェースとを主に備えたものである。
なお、自律移動装置1は、文字又は画像の情報を表示する表示装置と、CPUに所定の指令を入力するときユーザー入力操作される入力装置と、外付けハードディスク等の外部記憶装置と、をさらに備えていても良い。
これらROM、HDD、及び外部記憶装置には、
図2に示すように、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、自己位置推定プログラムや、墨出し線マーキングプログラムが記憶されており、これらプログラムがCPUによって実行されることにより、自律移動装置1の機能が発揮されることになる。
なお、データサーバー100は、同様のハード構成を備えたコンピュータである。
【0027】
<自律移動装置1のソフト構成>
自律移動装置1は、
図2に示すように、機能面から説明すると、予め作成された図面データや、各種プログラム及び各種データをデータサーバー100から読み込んで一時的に記憶しておく記憶部10と、施工現場内に存在する対象部位の形状を検出するように距離センサ2を制御する検出実行部11と、距離センサ2の検出結果によって作成された形状データを取得する形状データ取得部12と、図面データに含まれる部屋内における対象部位の位置と、形状データにおける実際の対象部位の位置とを部屋毎に照合し、複数の部屋の中から対象部位の適合率に基づいて部屋を決定する部屋決定部13と、図面データを参照し、複数の対象部位の中から基準対象部位を特定する対象部位特定部14と、図面データに含まれる基準対象部位の位置と、形状データにおける実際の基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する自己位置推定部15と、を構成要素として備えている。
また、自律移動装置1は、自己位置推定部15によって推定された自己位置に基づいて、実際の墨出し線のマーキング位置を検出するマーキング位置検出部16と、マーキング位置検出部16によって検出されたマーキング位置を対象として墨出し線のマーキングを実行するように、マーキングユニット4及び駆動ユニット5を制御するマーキング実行部17と、を構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
なお、データサーバー100についても機能面から説明すると、各種プログラム及び各種情報データを保持して格納しておく記憶部110と、自律移動装置1に向けて最新のプログラム及びデータを発信するデータ発信部111と、データ受信部112と、を主な構成要素として備えている。
【0028】
記憶部10に記憶される「図面データ」とは、
図3に示すように、2次元形状の設計図に関する情報と、寸法許容差に関する情報とを含むデータであって、建物内の部屋ごとに作成されており、かつ、施工段階ごとにそれぞれ作成されている。
「部屋」とは、建物内において壁や間仕切り等によって隔てられた一空間を意味するほか、一空間又は複数の空間からなるフロア等を意味するものであっても良い。
なお、本実施例では建物の2次元形状を示す図面データを想定しているが、特に限定されることなく、3次元形状を示す図面データ、例えば建物のBIM(Building Information Modeling)データであっても良い。
また、本実施例では、設計図と寸法許容差の情報がまとめられて一つの図面データとして成立して保管されているが、特に限定されることなく、設計図の情報と寸法許容差の情報がそれぞれ別のデータに分かれて保管されていても良い。
【0029】
「図面データ」のうち、設計図に関する情報は、建物内の所定の部屋において所定の施工段階における図面を示すものであって、当該設計図には墨出し線のマーキング位置情報も含まれている。
具体的には、建物の情報と、当該建物内の部屋の情報と、当該部屋の施工段階の情報とが対応付けられている。
図3の本実施例を見ると、建物ID「001」、建物名「Aビル」に対して部屋ID「201」、部屋名「2階B店舗」、施工段階「内装仕上げの墨出し」等が予め示されている。また、設計図面内には、建物における躯体の部位として柱及び外壁の施工位置と、墨出し線のマーキング位置とがそれぞれ示されている。
ここで当該墨出し線のマーキング位置は、次工程の「内装仕上げ」を実施するための基準線となるものである(既に前工程「外壁の取付け」が施工完了している段階である)。
【0030】
「図面データ」のうち、寸法許容差に関する情報は、建物の各部位における寸法許容差を示すデータテーブルであって、設計図に関する情報と対応付けられている。
具体的には、図面データは、建物の部位におけるID番号と、部位名と、寸法許容差とが対応付けられている。
ここで「寸法許容差」とは、基準(施工基準)となる寸法値(施工寸法値)と、それに対して許容される限界の寸法値(施工寸法値)との差であって、施工時に施工誤差が生じてしまった場合に許容される範囲を示すもの(施工の寸法許容差)である。
図3の本実施例を見ると、建物の部位におけるID「001」、部位名「柱」に対して寸法許容差「±3(mm)」、また、ID「002」、部位名「外壁」に対して寸法許容差「±6(mm)」等が予め示されている。
つまり、本実施例では、複数の対象部位の中で「柱」が最も寸法許容差が小さい部位となっていることが分かる。
なお、最も寸法許容差が小さい部位を特定するにあたって、上記「柱」や「外壁」では寸法許容差の最大及び最小が対称的であるところ、所定の部位において寸法許容差の最大及び最小が非対称である場合には、例えば寸法公差(寸法上規定された最大値と最小値との差)に基づいて最も寸法公差が小さい部位を特定することとしても良い。
【0031】
検出実行部11は、建物のうち、施工現場内に存在する対象部位の形状を検出するように距離センサ2を動作させるものである。
形状データ取得部12は、距離センサ2による検出結果に基づいて作成された、複数の対象部位の形状データを取得する。以下、
図4を例に挙げて説明する。
図4に示す「実際の施工状況」は、施工段階として柱及び外壁の取付け作業が完了した時点の部屋の施工状況を示している。
本実施例の部屋では、4本の柱が外壁と比較して
図3に示す設計図面通りに施工されていることが分かる。一方で、複数の外壁のうち、角部及び開口周辺以外に取り付けられた外壁は、図面と比較してやや傾いた形で施工されていることが分かる。
形状データ取得部12は、
図4に示す部屋の施工状況において4本の柱(柱の内側)の形状、及び9本の外壁(外壁の内側)の形状を対象部位として検出し、部屋内においてこれら対象部位の形状データ(点群データ)を取得する。当該形状データが
図5に示されている。
【0032】
部屋決定部13は、
図3に示す「図面データ」に含まれる部屋内での対象部位の位置と、
図5に示す「形状データ」における実際の対象部位の位置とを部屋ごとに照合し、複数の部屋の中から対象部位の適合率に基づいて部屋を決定する。
具体的には、部屋決定部13は、
図6に示すように、まず、取得した部屋の形状データ(点群データ)をデジタル加工し、検出した点群データの各点のうち最も近い点同士を線で結ぶ処理を行う。
そして、加工された形状データにおける「実際の複数の対象部位の座標位置」と、予め用意された図面データに含まれる「設計上の複数の対象部位の座標位置」とを部屋ごとに重ね合わせて照合し、重ね合わせたときの複数の対象部位の適合率が最も高い値を示した部屋を決定する。
なお、適合率の値は、例えば互いの座標位置を重ね合わせたときの、対象部位同士の重ね合わせ誤差(投影誤差)を算出することで求めることができる。
【0033】
対象部位特定部14は、
図3に示す「図面データ」を参照し、施工現場内に存在する複数の対象部位の中から寸法許容差(寸法に関する情報)に基づいて基準対象部位を特定する。
図3の本実施例で説明すると、対象部位特定部14は、複数の対象部位として「柱」及び「外壁」の中から、寸法許容差が最も小さい対象部位となる「柱」を基準対象部位として特定している。
「対象部位」としては、建物における躯体や内装材のほか、断熱材、空調・電気設備等の器具など、施工現場以内に存在するあらゆる部位を対象とすることができる。
【0034】
自己位置推定部15は、
図3に示す「図面データ」に含まれる基準対象部位の位置と、
図5に示す「形状データ」における実際の基準対象部位の位置との照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する。
具体的には、
図7に示すように、まず、図面データに含まれる「対象部位の座標位置」と、形状データ(点群データ)に含まれる「実際の対象部位の座標位置」とを重ね合わせる処理を行う。その上で、寸法許容差が比較的大きい部材「外壁(外壁の内側)」は無視して、寸法許容差が最も小さい部材「柱(柱の内側)」を基準対象部位として照合し、照合結果に基づいて自己位置を推定している。
詳しく説明すると、例えば
図3において「柱」を基準対象部位として特定したときに、図面上では、所定の「柱」から部屋の中心部に向かって南北方向(縦方向)において1000mm、東西方向(横方向)において2000mm離れた位置に自律移動装置が位置していたとする。その際に、所定の「柱」が、実際には縦及び横方向それぞれ2mmずつ部屋の中心部から離れるように誤差を生じて施工されていたとする。
その場合には、自己位置推定部15は、実際には所定の「柱」から南北方向において1002mm、東西方向において2002mm離れた位置を自己位置として推定することになる。
【0035】
マーキング位置検出部16は、自己位置推定部15によって推定された自己位置に基づいて、実際の墨出し線のマーキング位置を検出する。
具体的には、
図3に示す図面データに含まれる「マーキングの座標位置」と、自己位置推定部15によって推定された「自己の座標位置」との照合結果に基づいて、実際のマーキング位置を検出している。
その後、マーキング実行部17は、
図7に示すように、マーキング位置検出部16によって検出されたマーキング位置を対象として墨出し線のマーキングを実行するように、マーキングユニット4及び駆動ユニット5を制御する。
本実施例では、部屋の床面に対して矩形状の墨出し線がマーキングされていることが分かる。
詳しく説明すると、例えば
図3において「柱」を基準対象部位として特定したときに、それぞれの「柱」から部屋の中心部に向かって南北方向及び東西方向において10mmずつ離れた位置に墨出し線をマーキングする必要があるとする。その際に、所定の「柱」が、実際には南北及び東西方向それぞれ1mmずつ部屋の中心部とは離れるように誤差が生じて施工されていたとする。
その場合には、マーキング実行部17は、図面上ではそれぞれの「柱」から10mmずつ離れた位置に墨出し線をマーキングするところ、実際には所定の「柱」については11mmずつ離れた位置に墨出し線をマーキングすることになる。
【0036】
<自律移動プログラム>
次に、自律移動装置1で実行される自律移動プログラム(墨出し線マーキングプログラムを含む)の処理について、
図8に基づいて説明する。
本実施形態に係る上記プログラムは、記憶部10を備えた自律移動装置1の機能的な構成要素として、上述した検出実行部11と、形状データ取得部12と、部屋決定部13と、対象部位特定部14と、自己位置推定部15と、マーキング位置検出部16と、マーキング実行部17と、を実現させるために各種プログラムを集約させたユーティリティプログラムであって、自律移動装置1のCPUがこの自己位置推定プログラムを実行する。
なお、上記プログラムは、作業員から作業の指示を受け付けて実行されるものである。
【0037】
図8に示す「自律移動処理フロー」では、まず、検出実行部11が、自律移動装置1が備える距離センサ2を動作させて、建物の部屋のうち、施工現場内に存在する複数の対象部位の形状を検出するステップ1(STEP1)から始まる。
なお、自律移動装置1の記憶部10には、予めデータサーバー100から受信した
図3に示す「図面データ」が記憶されている。図面データは、2次元形状の設計図に関する情報と、寸法許容差に関する情報とを含むデータであって、建物内の部屋ごとに、かつ、施工段階ごとにそれぞれ作成されている。
【0038】
次に、ステップ2で、形状データ取得部12が、距離センサ2の検出結果に基づいて作成された、複数の対象部位の「形状データ」を取得する。
なお、形状データは、
図5に示すように、複数の対象部位の2次元距離情報に基づく2次元点群データであって、記憶部10に記憶される。
【0039】
次に、ステップ3で、部屋決定部13が、
図3に示す「図面データ」に含まれる部屋内での複数の対象部位の座標位置と、
図5に示す「形状データ」における実際の複数の対象部位の座標位置とを部屋ごとに照合する。そして、複数の部屋の中から対象部位の適合率に基づいて所定の部屋を決定する(ステップ4)。
詳しく言うと、座標位置の原点及び軸を互いに重ね合わせて照合したときに、複数の対象部位同士の適合率が最も高い値を示した部屋を決定する。
【0040】
次に、ステップ5で、対象部位特定部14が、
図3に示す「図面データ」を参照し、施工現場内に存在する複数の対象部位の中から寸法許容差に基づいて基準対象部位を特定する。詳しく言うと、寸法許容差が最も小さい対象部位を基準対象部位として特定している。
【0041】
次に、ステップ6で、自己位置推定部15、
図3に示す「図面データ」に含まれる基準対象部位の座標位置と、
図5に示す「形状データ」における実際の基準対象部位の座標位置とを照合する。そして、当該照合結果に基づいて、施工現場内における自己位置を推定する(ステップ7)。
詳しく言うと、予め寸法許容差が比較的大きい部材は対象外とし、寸法許容差が最も小さい部材を基準対象部位として照合し、照合結果に基づいて施工現場内における自己位置を推定している。
【0042】
次に、ステップ8で、マーキング位置検出部16が、自己位置推定部15によって推定された自己位置に基づいて、実際の墨出し線のマーキング位置を検出する。
詳しく言うと、
図3に示す図面データに含まれる「マーキングの座標位置」と、自己位置推定部15によって推定された「自己の座標位置」との照合結果に基づいて、実際のマーキング位置を検出している。
最後に、ステップ9で、マーキング実行部17が、
図7に示すように、検出されたマーキング位置を対象として墨出し線のマーキングを実行するように、マーキングユニット4及び駆動ユニット5を制御する。なお、本実施例では、部屋の床面に対して矩形状の墨出し線をマーキングしている。
【0043】
上記ステップ1からステップ9を経て
図8のプロセスを終了する。
上記の自律移動プログラムの処理フローにより、建物の施工現場ならではの事情を考慮して、当該施工現場内で精度良く自己位置を推定することが可能となる。
また、建物の施工現場において、精度良く自己位置を推定した上で、墨出し作業まで実
行することが可能となる。
【0044】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、「墨出し作業」を実行するための装置としているが、特に墨出し作業に限定されるものではなく、施工現場における各工程の計測作業や、部材や器具を取り付ける作業(例えば、間仕切の設置作業、間仕切りにおける煉瓦積み作業)を実行するための装置であっても良い。また、そのほか作業装置(作業ロボット)が自己位置推定をした上で実行可能な施工作業であれば広く適用することが可能である。
上記のような計測作業や取り付け作業を実行する場合には、自律移動装置1が、公知なロボットアームのような施工ユニットをさらに備えていると良い。当該施工ユニットは駆動ユニット5の駆動によって動作し、プロセッサー6の制御によって実行すると良い。
【0045】
上記実施形態では、「床面に対して墨出し作業」を実行するための装置としているが、特に床面に限定されるものではなく、壁面または天井面等に墨出し線をマーキングする装置であっても良い。
上記の場合には、移動ユニット3が2次元方向の移動ユニットであるところ、代わりに公知な機構によって3次元方向に移動することが可能なユニットを採用すると良い。
また、自律移動装置1が、公知なロボットアームのような施工ユニットをさらに備え、当該ロボットアームの先端部分にマーキングユニット4を取り付けると良い。
【0046】
上記実施形態では、「寸法許容差が最も小さい対象部位」を基準対象部位として特定しているが、特に限定されることなく、例えば、寸法許容差が所定の基準値以下となる部位を基準対象部位として特定しても良い。
または、寸法許容差に加えてその他の判断基準(建物の用途、顧客の要望、施工時期(季節)など)を組み合わせて特定しても良い。さらに基準対象部位を複数特定しても良い。
【0047】
上記実施形態では、「寸法許容差」に基づいて基準対象部位を特定しているが、特に限定されることなく、「寸法に関する情報」として「寸法誤差」に基づいて基準対象部位を特定しても良い。
ここで「寸法誤差」とは、実際の施工後に測定された寸法値(施工寸法値)から基準(施工基準)となる寸法値(施工寸法値)を引いた値である。
例えば、対象部位特定部14が、図面データと形状データの比較(照合結果)によって得られる、複数の対象部位それぞれの実際の寸法誤差に基づいて、複数の対象部位の中から基準対象部位を特定することとしても良い。その場合には、「寸法誤差が最も小さい対象部位」を基準対象部位として特定することが望ましい。
具体的には、
図3において「柱」の実際の寸法誤差が2mm、「外壁」の寸法誤差が1mmで施工されていた場合には、対象部位特定部14は、複数の対象部位の中から「外壁」を基準対象部位として特定することになる。
【0048】
上記実施形態では、自律移動装置1が、レーザー光を利用した距離センサ2を備えた構成となっているが、距離センサに限定されることなく変更可能である。
例えば、対象物体の加速度(重力加速度)を計測する加速度センサ(ジャイロセンサ)を採用しても良いし、対象磁場(磁界)の大きさや方向を計測する磁気センサを採用しても良い。
【0049】
上記実施形態では、位置推定システムSが自律移動装置1と、データサーバー100とから構成されているが、特に限定されることなく、より検出精度を高めるために公知な光波測定器(光波測距儀)をさらに備えたシステム構成としても良い。
その場合、自律移動装置1による距離センサ2と、この光波測定器とを併用しても良い。または、自律移動装置1が距離センサ2を備えておらず、代わりに光波測定器から検出結果に基づく形状データを取得する(受信する)構成としても良い。
【0050】
上記実施形態では、位置推定システムSが自律移動装置1と、データサーバー100とから主に構成されており、自律移動装置1が主要な機能となる検出実行部11、形状データ取得部12、部屋決定部13、対象部位特定部14、自己位置推定部15、マーキング位置検出部16、マーキング実行部17を構成要素として備えているが、特に限定されることなく適宜変更可能である。
例えば、データサーバー100が主要な機能を備えており、自律移動装置1は、データサーバー100から各種の実行プログラムや実行データを受信することで、自己位置推定を行い、墨出し作業を実行することとしても良い。
具体的には、データサーバー100が、予め作成された図面データ等を記憶する記憶部110、データ発信部111、データ受信部112に加えて、形状データ取得部12、部屋決定部13、対象部位特定部14、位置推定部15を備えており、一方で自律移動装置1は、検出実行部11、データ発信部、データ受信部を備えていることとしても良い。
その場合、自律移動装置1は、検出実行部11によって得られた検出結果データをデータサーバー100にデータ発信し、その後、データサーバー100から自律移動装置1の位置を推定するための実行データや、墨出し作業を実行するための実行データをデータ受信する構成にすると良い。
なお、位置推定システムSにおいて、自律移動装置1とデータサーバー100のどちらが上記の機能的な構成要素をそれぞれ備えているかについては適宜変更可能である。
【0051】
上記実施形態では、主として本発明に係る自律移動装置、自律移動プログラム及び位置推定システムに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
S 位置推定システム
1 自律移動装置
2 距離センサ
3 移動ユニット(移動部)
4 マーキングユニット(マーキング部)
5 駆動ユニット(駆動部)
6 プロセッサー
10 記憶部
11 検出実行部
12 形状データ取得部
13 部屋決定部
14 対象部位特定部
15 自己位置推定部(位置推定部)
16 マーキング位置検出部
17 マーキング実行部
100 データサーバー
110 記憶部
111 データ発信部
112 データ受信部