(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】自己修復タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/12 20060101AFI20220922BHJP
B60C 5/04 20060101ALI20220922BHJP
B29C 73/16 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B60C19/12 A
B60C5/04 Z
B29C73/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018133718
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】595108860
【氏名又は名称】丁 景信
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】丁 景信
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-016507(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1476993(CN,A)
【文献】米国特許第04071386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/12
B60C 5/04
B29C 73/16-73/22
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁棒孔を有するリムと、
前記リムに装着される外側タイヤと、
前記外側タイヤの内部で前記リムとの間に装設されるインナーチューブと、
前記弁棒孔に貫通され
る弁棒と、
前記弁棒内に形成され、且つ前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間の空間に連通される外側タイヤ気道と、
前記弁棒内に形成されると共に前記インナーチューブ内部に連通され、前記インナーチューブ内に空気を充填させるためのインナーチューブ気道と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、前記外側タイヤ気道から注入されるシーラントの収蔵に用いられるシーラント層
と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間隔を広げて前記シーラントを収蔵するための空間を形成させ、前記シーラント層を形成させるためのスペーサー構造を備え、
前記スペーサー構造は前記インナーチューブの外面または前記外側タイヤの内面に沿って設けられ、或いは前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、
前記弁棒内には外側タイヤ空気弁及びインナーチューブ空気弁が更に設けられ、前記外側タイヤ空気弁と前記外側タイヤ気道は互いに接続され、且つ前記インナーチューブ空気弁と前記インナーチューブ気道は互いに接続されることを特徴とする自己修復タイヤ。
【請求項2】
弁棒孔を有するリムと、
前記リムに装着される外側タイヤと、
前記外側タイヤの内部で前記リムとの間に装設されるインナーチューブと、
前記弁棒孔に貫通される弁棒と、
前記弁棒内に形成され、且つ前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間の空間に連通される外側タイヤ気道と、
前記弁棒内に形成されると共に前記インナーチューブ内部に連通され、前記インナーチューブ内に空気を充填させるためのインナーチューブ気道と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、前記外側タイヤ気道から注入されるシーラントの収蔵に用いられるシーラント層
と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間隔を広げて前記シーラントを収蔵するための空間を形成させ、前記シーラント層を形成させるためのスペーサー構造を備え、
前記スペーサー構造は前記インナーチューブの外面または前記外側タイヤの内面に沿って設けられ、或いは前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、
前記弁棒内には共用空気弁及び気道切換スイッチが更に設けられ、前記気道切換スイッチは前記共用空気弁を選択的に前記インナーチューブ気道に互いに接続させるか、或いは前記外側タイヤ気道に互いに接続させることを特徴とする自己修復タイヤ。
【請求項3】
第一弁棒孔及び第二弁棒孔を有するリムと、
前記リムに装着される外側タイヤと、
前記外側タイヤの内部で前記リムとの間に装設されるインナーチューブと、
それぞれ前記第一弁棒孔及び前記第二弁棒孔に貫通される第一弁棒及び第二弁棒と、
前記第一弁棒内に形成され、且つ前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間の空間に連通される外側タイヤ気道と、
前記第二弁棒内に形成されると共に前記インナーチューブ内部に連通され、前記インナーチューブ内に空気を充填させるためのインナーチューブ気道と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、前記外側タイヤ気道から注入されるシーラントの収蔵に用いられるシーラント層
と、
前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間隔を広げて前記シーラントを収蔵するための空間を形成させ、前記シーラント層を形成させるためのスペーサー構造を備え、
前記スペーサー構造は前記インナーチューブの外面または前記外側タイヤの内面に沿って設けられ、或いは前記インナーチューブと前記外側タイヤとの間に設けられ、
前記第一弁棒内には前記外側タイヤ気道に互いに接続される外側タイヤ空気弁が更に設けられ、前記第二弁棒内には前記インナーチューブ気道に互いに接続されるインナーチューブ空気弁が更に設けられることを特徴とする自己修復タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクを自動的に修理するタイヤに関し、更に詳しくは、タイヤ中に収蔵されたシーラント(sealant)を利用してパンクを修理する空気充填タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自己修復タイヤの多くは空気充填タイヤのトレッド(tread:接地部)の内層に粘着性のシーラントが塗装されていたり、或いは封止されたシーラント層がトレッドの内面に設置されている。トレッドがパンクしてシーラント層が破れたときには、シーラントがパンク箇所から溢れ出し、パンク箇所に充填されることによってタイヤの空気漏れが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような自己修復タイヤには、パンクした後にシーラントが再充填できず、また、余ったシーラントを回収して使用することもできず、且つその多くがタイヤ工場内で製造されるため高価格であるといった欠点が存在した。
【0004】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、低コスト且つ工場内での特殊なプロセスを経ずに製造可能な自己修復タイヤを提案するものである。本発明は、従来の一般的な空気充填タイヤを自己修復タイヤに改装することができ、且つパンクした後にタイヤを従来の技術を用いて修理し、シーラントも再充填または回収して再利用可能にすることでコストを大幅に削減し、自己修復タイヤの作製及び後続のメンテナンスをより容易にする。これにより、自己修復タイヤの普及を容易にする。
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、自己修復タイヤの全体的な製造及びメンテナンスコストを低下させ、改装及び修復が容易な自己修復タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る自己修復タイヤの特徴は、気密性の外側タイヤ及びリムと、空気を充填可能なインナーチューブと、インナーチューブと外側タイヤとの間に設けられるシーラント層とを備える。前記外側タイヤは、弁棒により液体シーラントがインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層に注入され、前記インナーチューブには弁棒により空気が注入される。正常な使用においては、シーラントがインナーチューブの気圧により圧迫されて、外側タイヤの内面に沿ったシーラント層に均一に分布される。また、その液圧はインナーチューブ内の気圧と同じであり、外側タイヤがパンクした場合、シーラントがインナーチューブにより圧迫されてパンク箇所から絞り出され、空気と接触してパンク箇所に補充される。インナーチューブ及び外側タイヤが同時に破れた場合、空気漏れが起こっている箇所の気圧が低下するためにシーラントがパンク箇所に向けて流れ、これがパンク箇所に補填されて空気漏れが阻止される(
図1参照)。
【0007】
また、本発明の他の実施形態に係る自己修復タイヤは、前述の実施形態と類似するが、インナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層にスペーサー構造が更に備えられ、インナーチューブと外側タイヤとの間の間隔を広げてシーラント層とする空間を形成させ、シーラントの収蔵及び流動を行わせるのに用いられる。また、このスペーサー構造は、保護が必要なトレッドまたはサイドウォールの内面に沿ってシーラントを均一に分布させる。前記スペーサー構造は独立構造であるか、或いはインナーチューブの表面または外側タイヤの内面に貼着される(
図2参照)。
【0008】
また、本発明のさらなる他の実施形態に係る自己修復タイヤは、前述の実施形態に類似するが、インナーチューブ及び外側タイヤの弁棒が結合されてコンボ型(合体型)弁棒となり、リム上の弁棒孔に貫通するように設けられる。前記コンボ型弁棒の一実施形態では2つの空気弁及び2つの気道を備え、そのうち1つの空気弁及び1つの気道によりインナーチューブに空気が充填され、別の空気弁及び別の気道によりインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層にシーラントが注入される。或いは、前記コンボ型弁棒の他の実施形態では、共用空気弁と、2つの気道と、気道切換スイッチとが備えられることにより、気道を選択させる弁棒として構成され、その気道切換スイッチにより、インナーチューブに対して空気を充填させるか、それともインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層にシーラントを注入させるかが選択される。コンボ型弁棒は、市場に出回る大部分の単一の弁棒孔のみを有するリムに適用できるため、従来のインナーチューブの無いタイヤを本発明の自己修復タイヤに改造することができる(
図3参照)。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明では、本来インナーチューブを有しない空気充填タイヤにインナーチューブが内設され、そのインナーチューブと外側タイヤとの間の空間にシーラントが注入されることにより自己修復タイヤとなる。したがって、作製コストが低く、メンテナンスが容易であるほか、従来の空気充填タイヤを全て自己修復タイヤに改造できる。パンクした後にインナーチューブまたは外側タイヤを取り外し、従来のタイヤ修理技術によりそれぞれ修理し、且つタイヤ内のシーラントを弁棒から回収するか、再充填することができる。よって、他の自己修復タイヤと比較すると、本発明は低コストであり、メンテナンスが容易であり、従来のタイヤを直接改造可能であるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態による自己修復タイヤを示す概略図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による自己修復タイヤを示す概略図である。
【
図3】本発明の第3実施形態による自己修復タイヤを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための複数の形態について、詳細に説明する。同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態による自己修復タイヤを示す概略図であり、リム1と、気密性の外側タイヤ2と、外側タイヤ弁棒(第一弁棒と称する)3と、外側タイヤ気道4と、空気を充填可能なインナーチューブ5と、インナーチューブ弁棒(第二弁棒と称する)6と、インナーチューブ気道7と、インナーチューブと外側タイヤとの間に形成されるシーラント層8とを備える。リム1は第一弁棒孔(外側タイヤ弁棒3がリム1を貫通させる箇所の開口部)及び第二弁棒孔(インナーチューブ弁棒6がリム1を貫通させる箇所の開口部)を有する。外側タイヤ2はリム1に装着され、インナーチューブ5は外側タイヤ2の内部でリム1との間に装設される。外側タイヤ弁棒3は前述の第一弁棒孔に貫通され、インナーチューブ弁棒6は前述の第二弁棒孔に貫通される。外側タイヤ気道4は外側タイヤ弁棒3内に形成され、且つインナーチューブ5と外側タイヤ2との間の空間に連通される。インナーチューブ気道7はインナーチューブ弁棒6内に形成されると共に、インナーチューブ5内部に連通される。外側タイヤ弁棒(第一弁棒と称する)3内には外側タイヤ気道4に互いに接続される外側タイヤ空気弁(図示省略)が更に設けられ、また、インナーチューブ弁棒(第二弁棒と称する)6内にはインナーチューブ気道7に互いに接続されるインナーチューブ空気弁(図示省略)が更に設けられる。シーラント層8は外側タイヤ気道4から注入されるシーラントの収蔵に用いられる。インナーチューブ5にインナーチューブ弁棒6及びインナーチューブ気道7を通じて空気が充填された後、シーラントが外側タイヤ弁棒3及び外側タイヤ気道4を通じてインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層8に注入される。正常な使用時においては、シーラントはインナーチューブ5中の気圧により圧迫され、外側タイヤ2の内面に沿ったシーラント層8に均一に分布され、且つその液圧はインナーチューブ5内の気圧と同じとなる。外側タイヤ2がパンクした場合、シーラントがインナーチューブにより圧迫されてパンク箇所から流出し、空気と接触することでパンク箇所に補填されて空気漏れが防止される。インナーチューブ5及び外側タイヤ2が同時に破れた場合、空気漏れが起こっている箇所の気圧が低くなるためにシーラントがパンク箇所に向けて流れ、これによりパンク箇所が補填されて空気漏れが阻止される。
【0013】
図2は本発明の第2実施形態による自己修復タイヤを示す概略図である。前述の実施形態と類似するが、第1実施形態との違いは、インナーチューブと外側タイヤとの間にスペーサー構造9が増設され、インナーチューブ5と外側タイヤ2との間の間隔が広げられてシーラント層8となる空間が形成され、ここにシーラントが収蔵され、且つシーラントが流動して、保護が必要なトレッドまたはサイドウォールの内面に均一に分布される点である。スペーサー構造9は突起構造を有し、タイヤ内でのシーラントの分布領域が調整される。前記スペーサー構造9はインナーチューブ5の外面に貼着されるか、外側タイヤ2の内面に貼着されるか、或いはインナーチューブ5及び外側タイヤ2とは独立した構造物として設けられる。
【0014】
図3は本発明の第3実施形態による自己修復タイヤを示す概略図である。前述の実施形態と類似するが、前述の実施形態との違いは、本実施形態では前述の実施形態のインナーチューブ弁棒6及び外側タイヤ弁棒3が結合されてコンボ型(合体型)弁棒10となり、リム1の弁棒孔(
図3のコンボ型弁棒10がリム1を貫通させる開口部)に貫通される。リム1には1つの弁棒孔を設けるのみでコンボ型弁棒10が装設可能となる。外側タイヤ気道4及びインナーチューブ気道7は共にコンボ型弁棒10内に設けられ、インナーチューブ気道7はインナーチューブ5に連通され、外側タイヤ気道4は外側タイヤ2の内部(即ち、インナーチューブ5と外側タイヤ2との間の空間)に連通され、1つの弁棒によりインナーチューブ5に対する空気の充填と、インナーチューブ5と外側タイヤ2との間に位置されるシーラント層8に対するシーラントの注入とを達成させる。本実施形態に係るコンボ型弁棒10は、市場に出回る大部分の単一の弁棒孔のみを有するリム1に適用できるため、従来のインナーチューブのないタイヤを本発明の自己修復タイヤに改造し得る。
【0015】
図4は本発明のコンボ型弁棒11の実施形態である。コンボ型弁棒11は2つの空気弁(外側タイヤ空気弁111、インナーチューブ空気弁112)と、2つの気道(外側タイヤ気道4、インナーチューブ気道7)を備え、インナーチューブ気道7及びインナーチューブ5は互いに接続され、外側タイヤ気道4及びインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層8は互いに接続される。インナーチューブ空気弁112及びインナーチューブ気道7によりインナーチューブ5に空気が充填され、外側タイヤ空気弁111及び外側タイヤ気道4によりインナーチューブ5と外側タイヤ2との間のシーラント層8にシーラントが注入される。本実施形態に係るコンボ型弁棒11は、市場に出回る大部分の単一の弁棒孔のみを有するリム1に適用できるため、且つ従来のインナーチューブのないタイヤを本発明の自己修復タイヤに改造し得る。
【0016】
図5は本発明の他のコンボ型弁棒12の実施形態である。コンボ型弁棒12は共用空気弁121と、2つの気道(外側タイヤ気道4、インナーチューブ気道7)と、気道切換スイッチ122とを備え、気道を選択可能な弁棒とする。インナーチューブ気道7及びインナーチューブ5は互いに接続され、外側タイヤ気道4及びインナーチューブと外側タイヤとの間のシーラント層8は互いに接続され、気道切換スイッチ122により、共用空気弁121の作動時に外側タイヤ気道4とインナーチューブ気道7との内のどちらの気道に接続されるかが選択される。これにより、インナーチューブ5に対する空気の充填、またはインナーチューブ5と外側タイヤ2との間に形成されるシーラント層8に対するシーラントの注入のいずれかが選択される。本実施形態に係るコンボ型弁棒12は、市場に出回る大部分の単一の弁棒孔のみを有するリム1に適用できるため、且つ従来のインナーチューブのないタイヤを本発明の自己修復タイヤに改造し得る。
【0017】
上述したように、本発明に係る自己修復タイヤは、本来インナーチューブを有しない空気充填式外側タイヤ内にインナーチューブを増設し、且つ外側タイヤ気道により、そのインナーチューブと外側タイヤとの間にシーラントを注入することができるようになる。そのため、低コストで、メンテナンスが容易であり、従来のタイヤを改装できる等の長所を有する。
【0018】
以上は単に例示に過ぎず、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、これに対して行われる等価の修正又は変更のいずれも、別紙の特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0019】
1 リム
2 外側タイヤ
3 外側タイヤ弁棒
4 外側タイヤ気道
5 インナーチューブ
6 インナーチューブ弁棒
7 インナーチューブ気道
8 シーラント層
9 スペーサー構造
10 コンボ型弁棒
11 コンボ型弁棒
12 コンボ型弁棒
111 外側タイヤ空気弁
112 インナーチューブ空気弁
121 共用空気弁
122 気道切換スイッチ