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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】三次元地図生成装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20220922BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G06T17/05
G09B29/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018135321
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020013351
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹治 直人
(72)【発明者】
【氏名】今西 暁久
(72)【発明者】
【氏名】宮辻 和宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 修
(72)【発明者】
【氏名】岡本 竜郎
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-072011(JP,A)
【文献】特開2013-040850(JP,A)
【文献】特開2012-037490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/05
G09B 29/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地物表面を計測し取得された点群の三次元座標データに基づき、二次元地図データにて線分で表される地物の形状線に標高を付与し三次元地物形状線を生成する三次元地図生成装置であって、
前記三次元地物形状線として、前記形状線の端点に前記点群の要素点のうち水平位置が対応するものに基づいて標高を付与した三次元線分を生成する三次元線分生成手段と、
前記三次元線分に沿って、前記点群から推定される前記地物表面と当該三次元線分との標高差が所定の閾値を超える箇所が存在する場合に、当該箇所に前記地物表面に対応する標高を有する特徴点を定め、当該三次元線分を、当該特徴点を節点として接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる標高差適合手段と、
を有することを特徴とする三次元地図生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元地図生成装置において、
前記形状線上にて前記点群から推定される前記地物表面の標高の最大値又は最小値が当該形状線の端点以外にて与えられる場合に、当該最大値又は最小値となる点に対応して折線の節点を設定し、当該形状線に対して前記三次元線分生成手段により生成された前記三次元線分を、当該節点で接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる最大最小適合手段、を有することを特徴とする三次元地図生成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の三次元地図生成装置において、
前記三次元線分の端点または節点について、当該端点または節点を中心とする所定の大きさ及び形状を有する水平近傍領域内にて、前記点群から推定される前記地物表面が標高方向に屈曲する場合に、当該水平近傍領域内における前記地物表面の屈曲点の標高を付与すること、を特徴とする三次元地図生成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の三次元地図生成装置において、
前記三次元線分の端点または節点について、当該端点または節点を中心とする所定の大きさ及び形状を有する水平近傍領域内にて、前記点群から推定される前記地物表面が段差を形成する場合に、当該端点または節点を同じ水平位置にて上下に分離した2つの端点または節点とし、上側端点または節点に当該水平近傍領域内の前記段差の上側の標高を付与し、下側端点または節点に当該水平近傍領域内の前記段差の下側の標高を付与し、前記三次元地物形状線として、前記形状線に沿って隣り合う前記上側端点または節点同士を結ぶ三次元線分と前記形状線に沿って隣り合う前記下側端点または節点同士を結ぶ三次元線分とを生成すること、
を特徴とする三次元地図生成装置。
【請求項5】
コンピュータを、地物表面を計測し取得された点群の三次元座標データに基づき、二次元地図データにて線分で表される地物の形状線に標高を付与し三次元地物形状線を生成する三次元地図生成装置として機能させるためのプログラムであって、当該コンピュータを、
前記三次元地物形状線として、前記形状線の端点に前記点群の要素点のうち水平位置が対応するものに基づいて標高を付与した三次元線分を生成する三次元線分生成手段、及び、
前記三次元線分に沿って、前記点群から推定される前記地物表面と当該三次元線分との標高差が所定の閾値を超える箇所が存在する場合に、当該箇所に前記地物表面に対応する標高を有する特徴点を定め、当該三次元線分を、当該特徴点を節点として接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる標高差適合手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物表面を計測し取得された点群の三次元座標データに基づき、二次元地図を三次元化する三次元地図生成装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路台帳図や下水道台帳図等、大縮尺でかつ高精度の各種の図面が整備されているが、そのほとんどが二次元の地図で平面座標のみの管理となっており、地物表面の高さの情報は道路上の標高点や地形の等高線等に限られている。
【0003】
今後、道路施設や地下埋設物といった様々な道路上の構造物の高度管理が必要となってきており、これまでの二次元地図での管理から、当該二次元地図に高さ情報を付与した三次元地図での管理が必要となってきている。
【0004】
既に整備された二次元地図を三次元化する際にあたっては標高データが必要となる。この点に関しては、従来、作業員が現地にて水準測量により地物表面の高さデータを取得することが行われている。また、航空写真を用いたステレオマッチングや、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)を装備した航空機等を使った上空からのレーザ計測により標高データを取得する手法も知られている。
【0005】
また、近年においては、レーザスキャナを含む計測システムを車両に搭載し、地物の三次元形状を把握するモービルマッピングシステム(Mobile Mapping System:MMS)が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-92658号公報
【文献】特開2008-242497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業員が現地測量を行って二次元地図に高さ情報を付与する手法は非常に手間がかかる。また、作業員がオーバーラップして撮影された複数の空中写真を使ってステレオマッチングにより高さ情報を取得する作業も手間がかかる。航空レーザ計測はレーザ密度が比較的低いため、二次元地図の高精度の三次元化は容易ではない。
【0008】
この点、MMSは詳細なレーザ計測により、地物表面の形状を示す高密度の三次元点群を比較的容易に取得することができ、そこから高さ情報が付与された三次元地図を作成する技術も開発されている。しかし、自治体で管理されている台帳図などのように、既存の二次元地図には、個々の地物に対して様々な属性情報が付与されている。従って、当該二次元地図に対応する三次元地図として、MMSで得られた地物表面の三次元形状をそのまま用いることは必ずしも適切ではない。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、地物表面を計測して取得された点群の三次元座標データに基づき、既存の二次元地図データの平面座標および属性情報を保持した状態で、標高データのみを付与し三次元地図を生成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る三次元地図生成装置は、地物表面を計測して取得された点群の三次元座標データに基づき、二次元地図データにて線分で表される地物の形状線に標高を付与し三次元地物形状線を生成する装置であって、前記三次元地物形状線として、前記形状線の端点に前記点群の要素点のうち水平位置が対応するものに基づいて標高を付与した三次元線分を生成する三次元線分生成手段と、前記三次元線分に沿って、前記点群から推定される前記地物表面と当該三次元線分との標高差が所定の閾値を超える箇所が存在する場合に、当該箇所に前記地物表面に対応する標高を有する特徴点を定め、当該三次元線分を、当該特徴点を節点として接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる標高差適合手段と、を有する。
【0011】
(2)上記(1)に記載の三次元地図生成装置において、さらに、前記形状線上にて前記点群から推定される前記地物表面の標高の最大値又は最小値が当該形状線の端点以外にて与えられる場合に、当該最大値又は最小値となる点に対応して折線の節点を設定し、当該形状線に対して前記三次元線分生成手段により生成された前記三次元線分を、当該節点で接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる最大最小適合手段、を有する構成とすることができる。
【0012】
(3)上記(1)及び(2)に記載の三次元地図生成装置において、前記三次元線分の端点または節点について、当該端点または節点を中心とする所定の大きさ及び形状を有する水平近傍領域内にて、前記点群から推定される前記地物表面が標高方向に屈曲する場合に、当該水平近傍領域内における前記地物表面の屈曲点の標高を付与する構成とすることができる。
【0013】
(4)上記(1)~(3)に記載の三次元地図生成装置において、前記三次元線分の端点または節点について、当該端点または節点を中心とする所定の大きさ及び形状を有する水平近傍領域内にて、前記点群から推定される前記地物表面が段差を形成する場合に、当該端点または節点を同じ水平位置にて上下に分離した2つの端点または節点とし、上側端点または節点に当該水平近傍領域内の前記段差の上側の標高を付与し、下側端点または節点に当該水平近傍領域内の前記段差の下側の標高を付与し、前記三次元地物形状線として、前記形状線に沿って隣り合う前記上側端点および節点同士を結ぶ三次元線分と前記形状線に沿って隣り合う前記下側端点および節点同士を結ぶ三次元線分とを生成する構成とすることができる。
【0014】
(5)本発明に係るプログラムは、コンピュータを、地物表面を計測して取得された点群の三次元座標データに基づき、二次元地図データにて線分で表される地物の形状線に標高を付与し三次元地物形状線を生成する三次元地図生成装置として機能させるためのプログラムであって、当該コンピュータを、前記三次元地物形状線として、前記形状線の端点に前記点群の要素点のうち水平位置が対応するものに基づいて標高を付与した三次元線分を生成する三次元線分生成手段、及び、前記三次元線分に沿って、前記点群から推定される前記地物表面と当該三次元線分との標高差が所定の閾値を超える箇所が存在する場合に、当該箇所に前記地物表面に対応する標高を有する特徴点を定め、当該三次元線分を、当該特徴点を節点として接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる標高差適合手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、道路台帳図等の二次元地図を効率良く三次元化し、高精度の三次元地図データを整備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る三次元地図生成システムの概略の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る三次元地図生成システムによる、二次元地図への標高付与により三次元地図を生成する処理の概略のフロー図である。
図3】本発明の実施形態に係る三次元地図生成システムによる、二次元地図への標高付与により三次元地図を生成する処理の概略のフロー図である。
図4】道路台帳図の例を示す模式図である。
図5】初期の三次元地物形状線の一例を模式的に示す図である。
図6図5の三次元地物形状線に対する最大最小適合手段の処理例を示す模式図である。
図7図6の三次元線分に対する標高差適合手段の処理例を示す模式図である。
図8】屈曲した地物表面での三次元ノードの設定処理を説明する模式図である。
図9】屈曲境界線を有する地物表面の形状モデルの垂直断面の模式図である。
図10】段差を有した地物表面での三次元ノードの設定処理を説明する模式図である。
図11】段差を有する地物表面の模式的な垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である三次元地図生成システム2について、図面に基づいて説明する。本システムは、地物表面を計測して取得された点群の三次元座標データ(三次元点群データ)に基づき、二次元地図データにて線分で表される地物の形状線に標高を付与し三次元地物形状線を生成する三次元地図生成装置である。三次元点群データは例えば、上述のMMSのように地上を走行する車両に搭載されたレーザスキャナにより取得される。また、レーザスキャナを地上に設置して計測を行っても良い。三次元点群データが地物表面の三次元形状を表すには、地物表面の凹凸、段差のスケールに応じた密度でレーザスキャンが行われる必要がある。この点、車両や三脚等の高さから行うレーザスキャンは、例えば、道路及びその近傍程度の範囲にて、道路脇の段差といった数センチメートル程度の小さな形状変化を捉えることができる程度の走査密度を実現できる。
【0018】
図1は、三次元地図生成システム2の概略の構成を示すブロック図である。本システムは、演算処理装置4、記憶装置6、入力装置8及び出力装置10を含んで構成される。演算処理装置4として、本システムの各種演算処理を行う専用のハードウェアを作ることも可能であるが、本実施形態では演算処理装置4は、コンピュータ及び、当該コンピュータ上で実行されるプログラムを用いて構築される。
【0019】
当該コンピュータのCPU(Central Processing Unit)が演算処理装置4を構成し、後述する三次元線分生成手段20、最大最小適合手段22、標高差適合手段24、屈曲境界線探索手段26及び段差探索手段28として機能する。
【0020】
記憶装置6はコンピュータに内蔵されるハードディスクなどで構成される。記憶装置6は演算処理装置4を三次元線分生成手段20、最大最小適合手段22、標高差適合手段24、屈曲境界線探索手段26及び段差探索手段28として機能させるためのプログラム及びその他のプログラムや、本システムの処理に必要な各種データを記憶する。例えば、記憶装置6は、処理対象データとして二次元地図データ30及び三次元点群データ32を予め格納され、また、処理で生成された三次元地図データ34を格納する。
【0021】
二次元地図データ30は平面上での地物の形状や境界を表す線分を含む。ここでは当該線分を形状線と呼ぶことにする。地物の形状や境界は平面上にて形状線を連ねた折線、多角形で表すことができる。ここでは当該折線の節点、多角形の頂点を二次元ノードと称する。なお、形状線は、地物表面に現実に現れる線に限られず、二次元地図上にて仮想的に設定される線や、地名、注記、地図記号等の文字やマークの表示位置を示す線であってもよい。
【0022】
三次元点群データ32は、既に述べたように、地物表面の三次元形状を表す点群のデータであり、点群を構成する多数の点(要素点)がそれぞれ地物表面の三次元座標を与える。
【0023】
三次元地図データ34は、二次元地図データ30の形状線に標高を付与した三次元地物形状線を含む。三次元地物形状線は水平面内での位置に関しては、二次元地図データ30の形状線と基本的に共通する。つまり、1つの線分である形状線に対応して生成された三次元地物形状線を水平面に射影すると1つの線分となる。しかし、1つの線分の形状線に対応する三次元地物形状線は三次元的には1つの線分とは限らず、鉛直面内にて屈曲した複数の線分で構成され得る。ここでは三次元地物形状線を構成する線分を三次元線分、また三次元線分同士の接続点(節点)を三次元ノードと称する。
【0024】
入力装置8は、キーボード、マウスなどであり、ユーザが本システムへの操作を行うために用いる。
【0025】
出力装置10は、ディスプレイ、プリンタなどであり、処理対象範囲の二次元地図や三次元点群データ、また生成された三次元地図を画面表示、印刷等によりユーザに示す等に用いられる。
【0026】
図2及び図3は、二次元地図への標高付与により三次元地図を生成する三次元地図生成システム2の処理の概略のフロー図である。この図2及び図3を参照しながら、演算処理装置4の各手段を説明する。
【0027】
演算処理装置4は三次元線分生成手段20として機能し、例えば、ユーザにより指定された処理対象範囲の二次元地図データ30を記憶装置6から読み込む(ステップS5)。
【0028】
ここでは道路台帳図を二次元地図データ30の例として説明する。図4は道路台帳図の例を示す模式図である。図4において、点Q~Qを端点とする線分Q,Q,Qがそれぞれ形状線の例である。
【0029】
また、三次元線分生成手段20は、読み込んだ二次元地図データ30に対応する水平領域の三次元点群データ32を記憶装置6から読み込む(ステップS10)。そして、二次元地図データ30と三次元点群データ32とで座標系を統一させるために、いずれかのデータの座標変換を行う(ステップS15)。本実施形態では、水平面をXY面、鉛直方向をZ軸としたXYZ直交座標系を定義し、二次元地図データ30と三次元点群データ32とを共通の当該座標系で表す。
【0030】
座標系の統一後、三次元地図生成システム2は三次元線分生成手段20により、初期の三次元地物形状線として、1線分の形状線に対応して1つの三次元線分を生成し、しかる後、最大最小適合手段22及び標高差適合手段24により、地物表面の起伏に応じて、当該三次元線分の途中に適宜、ノードを追加して、初期の三次元地物形状線を複数の三次元線分からなる折線の三次元地物形状線に変換する。
【0031】
まず、三次元地図生成システム2は三次元線分生成手段20により、初期の三次元地物形状線として、点群の要素点のうち形状線の端点に水平位置が対応するものに基づいて当該端点に標高を付与した三次元線分を生成する処理を行う。
【0032】
具体的には、三次元線分生成手段20は、二次元地図データ30の形状線の端点(二次元ノードQ)を順次選択し(ステップS20)、当該二次元ノードに対し所定の大きさ、形状の水平近傍領域(バッファ領域Bと呼ぶことにする。)を設定する(ステップS25)。そして、バッファ領域B内の点群を抽出し(ステップS30)、当該点群に基づいて二次元ノードQに標高を設定し三次元ノードTを定義する(ステップS35)。
【0033】
三次元線分生成手段20はステップS20~S35を処理対象領域内の二次元ノード全てについて反復する(ステップS40にて「NO」の場合)。全ての二次元ノードQについて、三次元ノードTを定義する処理が完了すると(ステップS40にて「YES」の場合)、処理対象の各形状線に対し初期の三次元地物形状線が定まる。
【0034】
図5は初期の三次元地物形状線の一例を模式的に示す図である。図5は形状線Qi+1に沿った垂直断面を表しており、バッファ領域B内の点群40と、当該点群40により表現される地物表面の形状(破線42)と、初期の三次元地物形状線である三次元線分Ti+1(実線44)とが示されている。ちなみに、図5において水平方向が二次元地図データ30が定義されるXY面に沿った方向であり、垂直(標高)方向がZ軸である。
【0035】
なお、ノードに対して設定するバッファ領域Bの形状は例えば、当該ノードを中心とする円や矩形などとすることができる。また、バッファ領域Bの大きさは二次元地図データ30の精度、及び三次元点群データ32の点群密度に応じて設定することができる。具体的には、二次元地図の精度が低い場合や、点群密度が低い場合はバッファ領域Bは広めに設定される。
【0036】
ノードのバッファ領域Bに三次元点群データの要素点が1つのみ存在する場合には、例えば、当該要素点の標高を三次元ノードの標高として定めることができる。一方、バッファ領域Bに複数の要素点が存在する場合には基本的には、三次元ノードの標高は例えば、ノードの最寄り点の標高や、当該複数の要素点の標高の最頻値又は平均値などで定義することができる。なお、その際、統計的手法などを用いて、例外的な数値を取る要素点を予め除去してもよい。
【0037】
また、三次元地図生成システム2は地物表面の屈曲点や段差の近傍では、上述の基本的な手法以外のやり方で三次元ノードの標高を定めることもできる。具体的には、ノードに対して水平面内で設定されるバッファ領域B内にて、屈曲境界線探索手段26によって、点群から推定される地物表面が標高方向に屈曲することが検出された場合には、当該ノードに対し、その近傍における地物表面の屈曲点の標高を付与する。また、バッファ領域B内にて、段差探索手段28によって、点群から推定される地物表面が段差を形成することが検出された場合には、或るノードに対し同じ水平位置にて上下に分離して2つの三次元ノード(上側ノードTと下側ノードTとする)を設定し、上側ノードにその近傍の段差の上側の標高を付与し、下側ノードにその近傍の段差の下側の標高を付与する。段差に対応してノードを上下に分離設定した場合には、三次元地物形状線として、形状線に沿って隣り合う上側ノード同士を結ぶ三次元線分と形状線に沿って隣り合う下側ノード同士を結ぶ三次元線分とを生成する構成とすることができる。スロープ等により段差が解消されるまで、当該三次元線分は並行して設定されることになる。これら屈曲部分、段差部分に関する処理についてはさらに後述する。
【0038】
三次元線分生成手段20により各形状線に対応して三次元線分が生成されると、次に演算処理装置4は最大最小適合手段22及び標高差適合手段24として機能し、当該三次元線分をより地物表面の起伏に適合させる。
【0039】
演算処理装置4は、これまでの処理で生成されている三次元線分を順次、最大最小適合手段22及び標高差適合手段24の処理対象として選択し(ステップS45)、選択した三次元線分に沿った水平近傍領域を当該三次元線分に関するバッファ領域Bとして設定する(ステップS50)。本実施形態では、三次元線分についてのバッファ領域Bは、当該三次元線分を水平面に射影した線分を中心としてその両側にそれぞれ所定幅w(合計幅2w)の帯状領域とする。幅wは、ノードのバッファ領域Bの大きさと同様、二次元地図データ30の精度、及び三次元点群データ32の点群密度に応じて設定することができる。
【0040】
最大最小適合手段22は、形状線上にて点群から推定される地物表面の標高の最大値又は最小値が当該形状線の端点以外にて与えられる場合に、当該最大値又は最小値となる点に対応して折線の節点を設定し、当該形状線に対して三次元線分生成手段20により生成された三次元線分を、当該節点で接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる。
【0041】
最大最小適合手段22は、バッファ領域B内の三次元点群データを抽出し(ステップS55)、その中での標高が最大値となる要素点(最高要素点P)及び標高が最小値となる要素点(最低要素点P)を求める(ステップS60)。図5にはこの処理で抽出された点P,Pの例が示されている。
【0042】
最大最小適合手段22は、最高要素点P及び最低要素点Pを二次元地図データの水平面に射影した点から形状線へ下ろした垂線の足Q,Qを求める。点Qが形状線の端点以外の点、つまり形状線の両端を含まない開線分上の点である場合に(ステップS65にて「NO」の場合)、点Qの水平位置に三次元線分を折り曲げるノードTを追加する(ステップS70)。点Qについても同様に、三次元ノードTを追加する処理を行う(ステップS65,S70)。これら点Q,Qの水平位置に対応して設定する三次元ノードT,Tには、それぞれ点P,Pの標高(又は点P,Pに応じた標高)を付与する(ステップS70)。図6は、図5の初期の三次元地物形状線に対する最大最小適合手段22の処理結果の例を示す模式図であり、図5と同様の垂直断面での図である。
【0043】
なお、点Q又はQが形状線の端点に一致する場合には(ステップS65にて「YES」の場合)、その点に対応する三次元ノードの追加処理は省略される。
【0044】
この最大最小適合手段22の処理により、三次元線分生成手段20により1つの形状線に対応して生成された1本の三次元線分は、2又は3本の三次元線分からなり当該形状線に沿った鉛直面内で屈曲する折線に変換され得る。例えば、図5の初期の三次元線分Ti+1は、図6に示すように、追加した三次元ノードT,Tを節点として連鎖した3つの三次元線分T,T,Ti+1の折線に変換される。
【0045】
本実施形態では最大最小適合手段22による処理後の三次元線分に対し、標高差適合手段24による処理を行う。
【0046】
標高差適合手段24は三次元線分に沿って、点群から推定される地物表面と当該三次元線分との標高差が所定の閾値を超える箇所が存在する場合に、当該箇所に地物表面に対応する標高を有する特徴点を定め、当該三次元線分を、当該特徴点を節点として接続される複数の三次元線分からなる折線に屈曲変形させる。この標高差適合手段24の処理を説明する。
【0047】
ちなみに、図2及び図3のフロー図では、標高差適合手段24によるステップS75~S95の処理は、ステップS45で選択した三次元線分に対応して行われる。つまり、標高差適合手段24による処理に先行して行われる最大最小適合手段22による処理にて、ステップS45で選択した三次元線分が複数の三次元線分に変換されている場合には、それら複数の三次元線分それぞれについてステップS75~S95の処理が例えば、ループ処理などによって実行される。
【0048】
標高差適合手段24は処理対象の三次元線分の両端の三次元ノードの座標に基づいて、当該三次元線分を表す一次関数式を作成する(ステップS75)。
【0049】
標高差適合手段24は、バッファ領域B内の三次元点群データを三次元線分に沿った鉛直面に射影し、各要素点について当該鉛直面上の射影点を求める。そして、射影点と三次元線分との標高差を算出する(ステップS80)。具体的には、射影点の水平座標をステップS75で求めた一次関数に代入し、その関数値が与える標高と射影点の標高との差分(絶対値)を算出する。
【0050】
標高差適合手段24は当該差分が最大となる射影点Pを抽出し(ステップS85)、その差分を予め定めた閾値と比較する(ステップS90)。そして、差分が閾値を超えている場合は(ステップS90にて「YES」の場合)、当該射影点Pの水平位置に三次元線分を折り曲げるノードTを追加する(ステップS95)。追加した三次元ノードTには、射影点Pの標高(又は点Pに応じた標高)を付与する(ステップS95)。
【0051】
なお、差分が閾値以下の場合は(ステップS90にて「NO」の場合)、その三次元線分に対する標高差適合手段24による三次元ノードの追加処理は省略される。
【0052】
図6にはステップS85にて抽出された点Pの例が示されている。図7は、図6の三次元線分に対する標高差適合手段24の処理例を示す模式図であり、図5及び図6と同様の垂直断面での図である。標高差適合手段24は、三次元線分Tについて、破線42で表す地物表面との標高差の最大点Pが閾値を超えて三次元線分Tから乖離していたため、三次元ノードTを追加し、2つの三次元線分T,Tの折線に変換する。一方、三次元線分T,Ti+1については破線42との乖離が閾値を越えないため、三次元ノードは追加されていない。
【0053】
演算処理装置4は、三次元線分生成手段20が形状線ごとに生成した三次元線分の全てについて最大最小適合手段22及び標高差適合手段24の処理を行う。具体的には、未処理の三次元線分が残っていれば(ステップS100にて「NO」の場合)、ステップS45に戻って新たな三次元線分を選択しステップS95までの処理を繰り返し、一方、全ての三次元線分について処理を終えた場合には(ステップS100にて「YES」の場合)、二次元地図データ30の三次元化処理を終了する。ちなみに、これまでの処理で三次元ノードを追加して地物表面の形状に順次適合させてきた三次元線分は適宜、三次元地図データ34として記憶装置6に記録される。
【0054】
なお、図3に示す標高差適合手段24の処理(ステップS75~S95)では、最大最小適合手段22により生成された三次元線分に対し1つの三次元ノードを追加するのみであったが、複数の三次元ノードを追加する処理としてもよい。例えば、標高差適合手段24は自身が三次元ノードを追加して分割生成した三次元線分に対して、ステップS75~S95を再度行い、より地物表面形状に適合した三次元地物形状線を生成してもよい。当該構成において、標高差適合手段24は、ステップS75~S95の処理を予め定めた回数反復してもよいし、生成された三次元線分の全てについて地物表面との標高差が予め定めた許容値以下となるまで反復してもよい。
【0055】
次に、上述した地物表面の屈曲部分や段差部分での三次元ノードの標高の決定処理について説明する。
【0056】
図8は屈曲した地物表面での三次元ノードの設定処理を説明する模式図である。図8(a)は屈曲部分を有する地物表面の斜視図であり、水平面50に対して上り傾斜となる斜面52が存在し、水平面50と斜面52との境界線54にて地表面は下向きに凸に屈曲している。なお、斜面52の上端は水平面56に接続し、その境界線58では地表面は上向きに凸に屈曲している。
【0057】
図8(b)は図8(a)の地物表面の平面図である。屈曲境界線探索手段26は、三次元線分60(又は形状線)の端点Tα,Tβ(水平位置Qα,Qβ)に対して設定したバッファ領域Bに水平位置が含まれる三次元点群データ32を抽出し、抽出された点群に基づいてバッファ領域Bにおける屈曲境界線を探索する。図8(b)の例では、三次元線分60は斜面60の下端近くに位置し、点Qα,Qβのバッファ領域Bには屈曲境界線54が通っており、屈曲境界線探索手段26はこのバッファ領域B内の屈曲境界線54の位置を検出する。
【0058】
図9は屈曲境界線を有する地物表面の形状モデルの模式図であり、屈曲境界線に交差する垂直断面を表している。形状モデルは屈曲境界線を直線とし、当該直線(図9にて点70)にて接続する2つの半平面(図9にて半直線72,74)で表される。例えば、屈曲境界線探索手段26は、バッファ領域B内の点群76に、図9の形状モデルを回帰分析などにより当てはめて屈曲境界線を求める。三次元線分生成手段20は例えば、点Qαに対して、そのバッファ領域B内にて検出された屈曲境界線を水平面に射影した直線へ点Qαから垂線を下ろし、その垂線の足Qα’を求め、水平位置Qα’での屈曲境界線の標高を三次元ノードTαの標高とする。また、三次元ノードTβ(点Qβ)にも同様に水平位置Qβ’での屈曲境界線の標高を付与することができる。
【0059】
なお、最大最小適合手段22及び標高差適合手段24にて追加される三次元ノードについても同様にして、近傍に屈曲境界線が存在する場合には、その標高を付与することができる。
【0060】
図10は段差を有した地物表面での三次元ノードの設定処理を説明する模式図である。図10(a)は段差部分を有する地物表面の斜視図であり、段差は下側の面80と上側の面82との間の段差面84を有する。
【0061】
図10(b)は図10(a)の地物表面の平面図である。段差面84は基本的に鉛直面であり、平面図にて段差境界線86として表される。段差探索手段28は、三次元線分90(又は形状線)の端点Tα,Tβ(水平位置Qα,Qβ)に対して設定したバッファ領域Bに水平位置が含まれる三次元点群データ32を抽出し、抽出された点群に基づいてバッファ領域Bにおける段差を探索して、段差の位置(段差境界線)及び段差の上下の標高を求める。
【0062】
図11は段差を有する地物表面の模式的な垂直断面図である。例えば、段差探索手段28は、バッファ領域B内の点群90に、鉛直面92と上下の水平面94,96とからなる段差の形状モデルを回帰分析などにより当てはめて、段差の位置及び段差の上下の標高を求める。また、段差探索手段28は、点群90の水平面への射影点が段差境界線の近傍にて密度が高くなること、及び段差境界線を挟んだ一方領域と他方領域とで点群に標高差が生じることに基づいて、段差の位置及び段差の上下の標高を求めることもできる。
【0063】
三次元線分生成手段20は点Qαに対して段差が検知された場合、点Qαに対応する三次元ノードTαとして、水平位置が共通で上下に分離した2つの三次元ノードである上側ノードTと下側ノードTとを設定する。ノードT,Tの標高に関しては、例えば、点Qαのバッファ領域B内にて検出された段差境界線へ点Qαから垂線を下ろし、その垂線の足Qα’を求める。そして、水平位置Qα’での段差の上側面の標高と下側面の標高をそれぞれ三次元ノードT,Tとする。三次元ノードTβ(点Qβ)に対しても同様に上下のノードT,Tを設定することができる。
【0064】
段差に対応して三次元ノードT,Tを設定した場合には、上述したように、三次元地物形状線として、形状線に沿って隣り合う上側ノードT同士を結ぶ三次元線分と形状線に沿って隣り合う下側ノードT同士を結ぶ三次元線分とを生成する構成とすることができる。このように生成される上下の線分は、段差部分に沿って連続して接続されていく。スロープ等により段差が解消されるまで、当該三次元線分は並行して設定されることになる。
【0065】
段差が終了する場合は、例えば、上側ノードと下側ノードを垂直につなげる線分を生成して並行線を終了させる。つまり、水平位置Qλのノードにて三次元ノードT,Tが設定され、形状線に沿った水平位置Qλの隣接ノードQλ+1にて三次元ノードが上下に分離されない場合には、水平位置Qλの三次元ノードTとTとを結ぶ垂直な三次元線分を生成する。なお、この場合に、水平位置Qλのノードと水平位置Qλ+1のノードとの間の三次元線分として、水平位置Qλ+1の三次元ノードTλ+1と水平位置Qλの三次元ノードT,Tのいずれか一方とを結ぶ線分を生成することができ、例えば、当該三次元ノードT,Tのうち三次元ノードTλ+1との標高差が小さい方と、三次元ノードTλ+1とを結ぶ三次元線分を設定することができる。
【0066】
一方、段差がスロープの場合のように徐々に解消する場合に対応して、水平位置Qλの上下2つの三次元ノードから発した2本の三次元線分が水平位置Qλ+1の三次元ノードTλ+1にて1箇所に収束する形として水平位置Qλ+1にて並行線が終了するようにすることもできる。つまり、この場合、上述の水平位置Qλの三次元ノードTとTとを結ぶ垂直な三次元線分に代え、上側ノードTと三次元ノードTλ+1とを結ぶ三次元線分と、下側ノードTと三次元ノードTλ+1とを結ぶ三次元線分とが生成される。
【0067】
なお、最大最小適合手段22及び標高差適合手段24にて追加される三次元ノードについても同様にして、近傍に段差が存在する場合には、上下に分離した2つの三次元ノードT,Tを設定することができる。
【符号の説明】
【0068】
2 三次元地図生成システム、4 演算処理装置、6 記憶装置、8 入力装置、10 出力装置、20 三次元線分生成手段、22 最大最小適合手段、24 標高差適合手段、26 屈曲境界線探索手段、28 段差探索手段、30 二次元地図データ、32 三次元点群データ、34 三次元地図データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11