(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】補強具及び二重折板屋根
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20220922BHJP
E04D 3/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E04D3/36 V
E04D3/00 E
E04D3/00 M
(21)【出願番号】P 2018147104
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 真司
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160643(JP,A)
【文献】特開平01-178654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下折板屋根と上折板屋根との間に配置される補強具であって、
前記下折板屋根の下底の上面に載る載置部と、
前記載置部の上端部に取り付けられ、前記上折板屋根の下底の下面に対向する天板部と、
を備え、
前記載置部は、
前記下折板屋根の前記下底の前記上面に沿った第一方向に交差する板面を含む少なくとも1つの第一縦板と、
前記第一縦板から前記第一方向に沿って突出し、前記第一方向に直交しかつ前記下折板屋根の前記下底の前記上面に沿った第二方向に間隔をおいて
互いに対向して並ぶ2つの第二縦板と、
を有し、
前記天板部は、
前記第一縦板及び前記第二縦板の上端面に対向する天板と、
前記天板から下方向に突出し、前記2つの第二縦板の外側面に沿う2つの垂下板と、を有する、
補強具。
【請求項2】
前記天板部は、前記垂下板から前記垂下板に交差する方向に突出する補強片を有する、請求項1の補強具。
【請求項3】
前記載置部は、
前記第一縦板及び前記第二縦板をそれぞれに含む複数の支持脚と、
前記複数の支持脚の下端部を互いにつなぐ連結部と、
を有する、
請求項1又は請求項2の補強具。
【請求項4】
前記垂下板と前記第二縦板とは、固着具を介して連結されている、
請求項1~3のいずれか1つの補強具。
【請求項5】
下折板屋根と、
前記下折板屋根の下底の上面に設置される請求項1~4のいずれか1つの補強具と、
前記下折板屋根の上方に配置され、その下底の下面が、前記補強具の前記天板部の上面に対向する上折板屋根と、
を備える、
二重折板屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強具及び二重折板屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の補強具が開示されている。この特許文献1に記載の補強具は、立上部と、立上部の上端部に設けられた支持板部とを備える。支持板部は、上折板屋根の底部の下面を支持する。立上部は、第1の縦部と第2の縦部とを備える。
【0003】
第1の縦部及び第2の縦部には、多数の貫通孔が形成されている。第1の縦部及び第2の縦部では、これら多数の貫通孔のうちのいずれか1つの貫通孔を選択し、互いにボルトを通すことで、接続位置を変えることができる。これにより、特許文献1に係る補強具は、高さ位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の補強具では、貫通孔が多数形成されているため、上折板屋根からの荷重に対して、強度が低下するという懸念がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、上折板屋根から掛かる荷重に対して変形しにくい補強具及び二重折板屋根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の補強具は、下折板屋根と上折板屋根との間に配置される補強具である。前記補強具は、前記下折板屋根の下底の上面に載る載置部と、前記載置部の上端部に取り付けられ、前記上折板屋根の下底の下面に対向する天板部と、を備える。前記載置部は、少なくとも1つの第一縦板と、2つの第二縦板とを有する。前記第一縦板は、前記下折板屋根の前記下底の前記上面に沿った第一方向に交差する板面を含む。前記第二縦板は、前記第一縦板から前記第一方向に沿って突出し、前記第一方向に直交しかつ前記下折板屋根の前記下底の前記上面に沿った第二方向に間隔をおいて並ぶ。前記天板部は、前記第一縦板及び前記第二縦板の上端面に対向する天板と、前記天板から下方向に突出し、前記2つの第二縦板の外側面に沿う2つの垂下板と、を有する。
【0008】
本発明に係る一態様の二重折板屋根は、下折板屋根と、前記下折板屋根の下底の上面に設置される前記補強具と、前記下折板屋根の上方に配置され、その下底の下面が、前記補強具の前記天板部の上面に対向する上折板屋根と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上折板屋根から掛かる荷重に対して変形しにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の二重折板屋根を含む二重折板屋根構造の正面図である。
【
図3】
図3Aは、同上の補強具の斜視図である。
図3Bは、同上の補強具の分解斜視図である。
【
図4】
図4Aは、同上の補強具の平面図である。
図4Bは、同上の補強具の正面図である。
図4Cは、同上の補強具の側面図である。
【
図5】
図5Aは、同上の下折板屋根に補強具を載せる際の斜視図である。
図5Bは、同上の上折板屋根を施工する際の斜視図である。
【
図6】
図6Aは、変形例の補強具の斜視図である。
図6Bは、更なる変形例の補強具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る二重折板屋根2は、
図1に示すように、下折板屋根3と、上折板屋根4とを備える。上折板屋根4は、下折板屋根3の上方に支持具6を介して取り付けられている。これにより、少なくとも、上折板屋根4の下底42は、下折板屋根3の下底32から離れている。
【0012】
本実施形態に係る補強具7は、下折板屋根3の下底32の上面に載るように配置される。これにより、本実施形態に係る補強具7は、上折板屋根4の下底42の下面を支持する。補強具7は、
図3Aに示すように、載置部71と、天板部74とを備える。
【0013】
載置部71は、下折板屋根3の下底32の上面に載る部分である。ここで、下折板屋根3の下底32の上面に沿った方向のうち、一方向を第一方向D1とし、第一方向D1に直交する方向を第二方向D2とする。載置部71は、
図3Bに示すように、第一縦板721と、少なくとも2つの第二縦板722と、を有する。第一縦板721は、第一方向D1に交差する板面を含む。第二縦板722は、第一縦板721から第一方向D1に沿って突出する。2つの第二縦板722は、第二方向D2に間隔をおいて並ぶ。
【0014】
天板部74は、載置部71の上端面723に対向する天板75と、天板75から下方向に突出する垂下板76とを有する。垂下板76は、第二縦板722の外側面に沿っている。
【0015】
本実施形態に係る補強具7では、垂下板76が第二縦板722の外側面に沿っているため、第二縦板722が外側方に向かって動こうとしても、垂下板76によって第二縦板722の動きが規制される。この結果、第二縦板722の変形は抑制される。このため、本実施形態に係る補強具7によれば、上折板屋根4の下底42に対し、積雪等による大きな荷重が掛かっても、変形を抑えることができ、上折板屋根4を支持することができる。
【0016】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る二重折板屋根2及び補強具7について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る二重折板屋根2を備えた二重折板屋根構造1を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係る下折板屋根3の斜視図であり、一部の折板を省略している。
図3~4は、本実施形態に係る補強具7を示す図である。
【0017】
本実施形態に係る二重折板屋根構造1は、主に、非住宅建築物が備える屋根構造である。非住宅建築物は、例えば、店舗,倉庫,工場,又は集会場等が例示される。ただし、本開示に係る二重折板屋根構造1は、非住宅建築物に限らず、住宅建築物又は複合建築物に適用されてもよい。本実施形態に係る二重折板屋根構造1は、
図1に示すように、屋根下地8と、二重折板屋根2と、を備える。
【0018】
ここで、本実施形態では、下折板屋根3の下底32の上面に沿った一方向として、複数の支持脚72が並ぶ方向を「第一方向D1」とし、第一方向D1に直交しかつ天板75に沿う方向を「第二方向D2」(
図3A参照)として定義する。また、軒から棟に向かう方向と棟から軒に向かう方向との双方向を「屋根勾配方向」として定義し、屋根勾配方向に直交しかつ水平面に沿う方向(双方向)を「左右方向」として定義する。ただし、本実施形態では、「左右方向」と「第一方向D1」とが平行で、かつ「屋根勾配方向」と「第二方向D2」とが平行となるように、下折板屋根3に各補強具7が配置される。
【0019】
(2.1)屋根下地
屋根下地8は、二重折板屋根2の下地となる部分である。屋根下地8は、本実施形態では、複数の横架材81を備える。
【0020】
複数の横架材81は、
図2に示すように、左右方向に延びる水平材であり、二重折板屋根2を支える構造材である。各横架材81は、本実施形態では、桁(ここでは、母屋)である。複数の横架材81は、屋根勾配方向に一定の間隔をおいて並んでいる。各横架材81は、本実施形態では、H形鋼により構成されるが、本開示では、溝形鋼,リップ溝形鋼,又は角形鋼管等であってもよい。横架材81は、水平面に平行な上面811を有する。
【0021】
ここで、本開示でいう「平行」とは、厳密な意味での「平行」を意味するのではなく、構造上許容される誤差を含み得る。本開示では、「平行」は、同一平面上の2直線(あるいは空間の2平面,又は1直線と1平面)の成す角が、例えば、0°以上10°以下である場合を含むこととする。
【0022】
(2.2)二重折板屋根
二重折板屋根2は、上下方向に並ぶ少なくとも2つの金属製折板屋根を備えた屋根である。二重折板屋根2は、本実施形態では、
図1に示すように、屋根下地8に複数のタイトフレーム5を介して取り付けられた金属製折板屋根(以下、下折板屋根3)と、下折板屋根3の上面811に対し、複数の支持具6を介して取り付けられた金属製折板屋根(以下、上折板屋根4)とを備える。本実施形態に係る二重折板屋根2は、改修工法を適用した二重折板屋根である。要するに、本実施形態に係る二重折板屋根2では、下折板屋根3が既設の折板屋根であり、上折板屋根4が新設の折板屋根である。
【0023】
ただし、本開示に係る二重折板屋根2では、下折板屋根3及び上折板屋根4を新設の折板屋根としてもよい。新設の折板屋根として、例えば、上折板屋根4と下折板屋根3との間に断熱材を充填して、いわゆる断熱工法を適用した二重折板屋根としてもよいし、断熱材を充填しない二重折板屋根としてもよい。もちろん、本実施形態に係る改修工法において、下折板屋根3と上折板屋根4との間に断熱材を充填してもよい。
【0024】
二重折板屋根2は、本実施形態では、複数のタイトフレーム5と、下折板屋根3と、複数の支持具6と、上折板屋根4と、複数の補強具7と、を備える。
【0025】
複数のタイトフレーム5は、
図2に示すように、横架材81の上面811に取り付けられる部材であり、下折板屋根3が取り付けられる。各タイトフレーム5は、本実施形態では、各横架材81の上面811に載った状態で、横架材81に対して固定される。各タイトフレーム5は、複数の取付け部51と、複数の凸部52とを備える。各取付け部51は、各凸部52につながっている。本実施形態では、取付け部51と凸部52とは一体である。
【0026】
取付け部51は、横架材81に対するタイトフレーム5の取付け代(しろ)である。取付け部51は、本実施形態では、横架材81の上面811に平行な平板により構成される。取付け部51は、横架材81に載った状態で、横架材81の上面811に取り付けられる。横架材81とタイトフレーム5との取り付けは、本開示では、ねじ,ボルト又はリベット等の固着具による取り付け,又は溶接による取り付け等で実現される。
【0027】
本実施形態では、複数の取付け部51の全てが横架材81に対して取り付けられているが、本開示では、複数の取付け部51のうちのいずれかが横架材81に対して取り付けられてもよい。また、本実施形態では、凸部52と取付け部51とは、左右方向に沿って繰り返し形成されているが、本開示では、各タイトフレーム5は、1つの凸部52と、1又は複数の取付け部51と、で構成されてもよい。この場合、1つの横架材81に対して、多数のタイトフレーム5が取り付けられる。
【0028】
凸部52は、下折板屋根3が取り付けられる部分である。凸部52は、取付け部51から、上下方向における上側に突出している。凸部52の上端部には、吊子53が取り付けられている。凸部52には、吊子53を介して、下折板屋根3が取り付けられている。
【0029】
下折板屋根3は、屋根下地8に取り付けられる折板屋根である。下折板屋根3は、本実施形態では、複数の折板31を備える。下折板屋根3は、本実施形態では、複数の折板31が左右方向に連結されることで構成されている。
【0030】
各折板31は、本実施形態では、下底32と、一対の傾斜部33と、第1の上底34と、第2の上底35とを備え、断面略V字状に形成されている。各折板31は、本実施形態では、屋根勾配方向に延びており、断面形状が屋根勾配方向に一様である。各折板31は、本実施形態では、金属板を曲げ加工することで形成されており、下底32,一対の傾斜部33,第1の上底34,及び第2の上底35が一体である。本開示では、金属板は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標),亜鉛めっき鋼板,塗装鋼板,エスジーエル(登録商標)鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム合金板,又はチタン板等が例示される。ただし、折板31は、金属製に限らず、FRP(Fiber-Reinforced Plastics),又はポリカーボネート等のように非金属製であってもよい。
【0031】
下底32は、各折板31の断面において、下端部に位置する部分である。下底32は、本実施形態では、タイトフレーム5の各取付け部51に対向しており、各取付け部51によって下から支持されている。ただし、本開示では、下底32とタイトフレーム5の取付け部51との間に隙間があってもよく、下底32は、タイトフレーム5の取付け部51から離れていてもよい。
【0032】
下底32は、本実施形態では、平板状に形成されており、水平面に対して傾いている。ここでいう「平板状」とは、大部分が平面であることを意味し、下底32の左右方向の中央部に上方に突出したリブ部が形成された場合にも「平板状」であることとする。下底32には、後述の補強具7が載せられる。
【0033】
一対の傾斜部33は、下底32の左右方向の端部から、左右方向のうちの外側(下底32から離れる側)に行くに従って上方向に位置するように傾斜している。したがって、本実施形態に係る一対の傾斜部33では、上方向に行くに従って、一対の傾斜部33の間の寸法が広がる。
【0034】
第1の上底34及び第2の上底35は、下折板屋根3の上底38となる部分である。第1の上底34は、一対の傾斜部33のうちの一方の傾斜部33につながっている。第2の上底35は、一対の傾斜部33のうちの他方の傾斜部33につながっている。第2の上底35は、隣接する折板31の第1の上底34に対して接続される。
【0035】
第1の上底34と第2の上底35との接続は、本実施形態では、端部同士を互いに締めることにより実現される(締められた部分を「はぜ36」という)。ただし、本開示では、第1の上底34と第2の上底35との接続は、端部同士を締める「はぜ方式」のほか、「重ね方式」又は「嵌合方式」等により実現されてもよい。
【0036】
下折板屋根3は、複数の山部37を有する。山部37は、一方の傾斜部33及びこれにつながる第1の上底34と、第1の上底34に接続された第2の上底35及びこれにつながる傾斜部33とで構成されている。したがって、本実施形態に係る下折板屋根3では、山部37と下底32とが左右方向に交互に連続しており、下底32は、一対の山部37の間に位置する。本実施形態では、1つの山部37に含まれる第1の上底34と第2の上底35とを合わせて「上底38」という場合がある。
【0037】
複数の支持具6は、
図1に示すように、下折板屋根3に取り付けられ、上折板屋根4を支持する。支持具6は、本実施形態では、下折板屋根3の山部37に取り付けられている。より詳細にいうと、複数の支持具6は、下折板屋根3において、タイトフレーム5に対応する位置に配置されており、下折板屋根3の各上底38に沿って、所定間隔で取り付けられている。各支持具6は、本実施形態では、はぜ36に対し、左右方向の両側から挟むようにして取り付けられている。
【0038】
ここで、本開示では、「下折板屋根3においてタイトフレーム5に対応する位置」とは、下折板屋根3の屋根面に直交する方向(すなわち、上下方向)に見て、タイトフレーム5と下折板屋根3とが重なる位置を意味する。したがって、本実施形態では、支持具6の少なくとも一部は、上下方向に見て、吊子53に重なるため、上底38に取り付けられた状態において直接的に吊子53を挟むことができ、下折板屋根3の上底38に対して固定される。本実施形態に係る二重折板屋根2では、支持具6の直下にタイトフレーム5が位置するため、支持具6に掛かった荷重(主に、鉛直方向の荷重)は、タイトフレーム5によって、直接的に受けられる。
【0039】
上折板屋根4は、複数の支持具6に取り付けられる。上折板屋根4は、本実施形態では、各支持具6に対して吊子61を介して取り付けられている。より詳細にいうと、上折板屋根4の上底43が、支持具6に対して吊子61を介して取り付けられている。これにより、上折板屋根4は、下折板屋根3に対して、一定の間隔をおいて、上方向に配置される。上折板屋根4は、下折板屋根3と同様に、複数の折板41で構成される。本実施形態では、上折板屋根4を構成する複数の折板41は、下折板屋根3を構成する複数の折板31と同じである。したがって、重複する説明は省略する。
【0040】
ただし、本開示では、上折板屋根4を構成する折板41と、下折板屋根3を構成する折板31とは同じ構造でなくてもよい。例えば、下折板屋根3を構成する折板31を重ね方式の折板とし、上折板屋根4を構成する折板41をはぜ方式の折板としてもよい。また、下折板屋根3を構成する折板31をはぜ方式の折板とし、上折板屋根4を構成する折板41を重ね方式の折板としてもよい。また、下折板屋根3を構成する折板31を、例えば、非金属製の折板とし、上折板屋根4を構成する折板41を金属製の折板としてもよい。
【0041】
(2.3)補強具
下折板屋根3と上折板屋根4との間には、複数の補強具7が配置されている。補強具7は、下折板屋根3の下底32に載せられることで、上折板屋根4の下底42の下面を支持する。補強具7は、本実施形態では、下折板屋根3においてタイトフレーム5に対応する位置に配置される。補強具7は、
図3Aに示すように、載置部71と、天板部74とを備える。
【0042】
載置部71は、下折板屋根3の下底32の上面に載る部分であり、天板部74を支持する。載置部71は、本実施形態では、複数(ここでは一対)の支持脚72と、連結部73とを備える。
【0043】
複数の支持脚72は、天板部74を支持する。複数の支持脚72は、第一方向D1(本実施形態では左右方向)に間隔をおいて並んでいる。本実施形態では、複数の支持脚72は2つであるが、本開示では、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0044】
各支持脚72は、本実施形態では、
図3Bに示すように、第一縦板721と、2つの第二縦板722とを有し、断面C字状に形成されている。支持脚72は、本実施形態では、金属板を曲げ加工することで形成されており、第一縦板721と一対の第二縦板722とは一体である。本開示では、金属板は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標),亜鉛めっき鋼板,塗装鋼板,エスジーエル(登録商標)鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム合金板,又はチタン板等が例示される。
【0045】
第一縦板721は、第一方向D1に交差する一対の板面を含む。本開示でいう「一対の板面」とは、第一縦板721の厚み方向の両側の表面を意味する。板面は、鉛直面であり、本実施形態では、高さ方向及び第二方向D2を同一面内に含み、第一方向D1に直交する。ただし、本開示では、板面は、鉛直面であれば、第一方向D1及び第二方向D2に対して傾斜していてもよく、要するに、板面は少なくとも第一方向D1に交差していればよい。
【0046】
なお、第一縦板721の高さ方向(長手方向)は、補強具7が下折板屋根3の下底32の上面に載ると、下折板屋根3の下底32の上面に直交する。
【0047】
第二縦板722は、第一縦板721から第一方向D1に沿って突出する。本実施形態では、第二縦板722は、第一縦板721の第二方向D2の端部から、左右方向のうちの内側(左右方向のうちの補強具7の中央に近付く側)に突出している。第二縦板722の板面は、本実施形態では、第一縦板721の板面に対して直交している。第二縦板722の板面のうち、外側の板面を「外側面」という場合がある。
【0048】
ここで、本開示でいう「第一方向D1に沿って突出する」とは、厳密な意味での第一方向D1に突出することに加えて、構造上許容される誤差を含み得る。本開示では、第一方向D1と第二縦板722との成す角、例えば、0°±10°である場合を含むこととする。
【0049】
支持脚72は、上端面723と、下端面724と、を有する。支持脚72の上端面723は、本実施形態では、下端面724に対して平行である。
【0050】
連結部73は、一対の支持脚72の下端部を互いにつなぐ。連結部73は、本実施形態では、載置板731と、一対の接続片733とを備える。載置板731の第二方向D2の長さ(幅という場合がある)は、
図4Cに示すように、支持脚72の第二方向D2の長さよりも長い。また、
図4Bに示すように、載置板731の厚み方向のうちの上側の面は、一対の支持脚72の下端面724に対向する。載置板731の厚み方向のうちの下側の面は、下折板屋根3の下底32の上面に対向する(
図1)。載置板731の左右方向の中央部には、上方向に凸曲した凸曲部732が形成されている。凸曲部732が形成されていることで、下折板屋根3の下底32に上方向に突出するリブ部が形成されていても、載置板731を下折板屋根3の下底32に載せることができる。
【0051】
載置板731の第一方向D1の長さは、下折版屋根3の下底32の上面の幅以下であることが好ましい。具体的には、載置板731の第一方向D1の長さは、下折版屋根3の下底32の上面の幅よりも、0以上100mm以下の範囲で短いことが好ましい。
【0052】
接続片733は、各支持脚72に対し、連結部73が取り付けられる部分である。接続片733は、本実施形態では、載置板731の左右方向の端部に設けられている。接続片733は、本実施形態では、載置板731の端部が曲げられることで形成されており、載置板731と一体である。各接続片733は、本実施形態では、各第一縦板721に取り付けられる。接続片733と支持脚72との取り付けは、ねじ,ボルトあるいはリベット等の固着具,又は溶接等により実現される。本実施形態では、接続片733は、支持脚72に対して、リベットを介して取り付けられている。
【0053】
ここで、本実施形態では、連結部73は、支持脚72の下端面724に対向しているが、本開示では、第二縦板722に対向するように配置された状態で、支持脚72の下端部同士をつないでもよい。ここでいう、「下端部」とは、支持脚72の高さ方向において、中央よりも下側のいずれかの部分を意味する。
【0054】
天板部74は、載置部71の上端部に取り付けられ、上折板屋根4の下底42を支持する部分である。天板部74の上面は、本実施形態では、上折板屋根4の下底42の下面に対向する。ここで、本開示でいう「対向」には、向かい合う2つの面が接触していることと、所定の隙間を介していること(向かい合う2つの面が離れていること)とを含む。すなわち、天板部74が、設置時において下底42の下面に対して所定の隙間を介していても、上折板屋根4に荷重が掛かったときに、下底42の下面に接触し、支持することができる。ここでいう「所定の隙間」とは、上折板屋根4に荷重が掛かったときに、天板部74が下底42を支持することができるという効果を奏することができる程度の隙間を意味し、例えば、0mmより大きくかつ10mm以下であり、好ましくは、5mm以下である。
【0055】
天板部74は、
図3Bに示すように、天板75と、一対の垂下板76と、補強片77と、一対の補強板78と、を備える。
【0056】
天板75の下面は、支持脚72の上端面723、すなわち、第一縦板721及び第二縦板722の上端面723に対向する。天板75は、本実施形態では、平板であり、平面視矩形状である。天板75の第一方向D1の長さ(本実施形態では、長手方向の長さ)は、上折板屋根4の下底42の下面の幅以上である。天板75の第一方向D1の長さが上折板屋根4の下底42の下面の幅以上であると、上折板屋根4の下底42の変形を抑えることができる。具体的には、天板部75の第一方向D1の長さは、上折版屋根4の下底42の下面の幅よりも、0以上100mm以下の範囲で長いことが好ましい。ただし、本開示では、天板75の第一方向D1の長さは、上折板屋根4の下底42の下面の幅よりも小さくてもよい。
【0057】
垂下板76は、天板75から下方向に突出し、第二縦板722の外側面に沿う。これにより、垂下板76は、支持脚72の変形を抑え得る。垂下板76は、本実施形態では、天板75の第二方向D2の両端部に設けられている。各垂下板76の内面は、
図4A,4Cに示すように、対応する第二縦板722の外側面に対向しており、本実施形態では、各垂下板76の内面は対応する第二縦板722の外側面に当たっている。ただし、本開示では、各垂下板76の内面は、第二縦板722の外側面に対して離れていてもよい。例えば、天板75に荷重が掛かり、支持脚72が変形した場合に、第二縦板722が外側に動いても、第二縦板722が僅かに動いた時点で垂下板76に当たり、第二縦板722の動きを規制する。したがって、この場合でも、垂下板76は、支持脚72の変形を抑え得る。また、垂下板76は、本実施形態では、天板75に対して垂直であるが、本開示では、垂直でなくてもよい。
【0058】
垂下板76は、本実施形態では、第二縦板722に固着具79を介して連結されている。固着具79は、例えば、ねじ,ボルト又はリベット等が挙げられる。これにより、例えば、天板75に荷重が掛かり、支持脚72が座屈等による変形が生じる際に、第二縦板722が内側に動こうとしても、固着具79により移動を規制でき、支持脚72の変形を抑え得る。
【0059】
補強片77は、垂下板76を補強する。補強片77は、垂下板76から垂下板76に交差する方向に突出する。本実施形態では、補強片77は、垂下板76の下端部に設けられている。補強片77は、本実施形態では、垂下板76の下端部を外側に曲げることで形成されている。ただし、本開示では、補強片77は、垂下板76の中央部に対し、例えば溶接により設けられてもよい。また、補強片77の長手方向は、第一方向D1に沿っていなくてもよく、例えば、上下方向に沿っていてもよい。この場合、補強片77は、第一方向D1に一定の間隔で複数配置されるとよい。
【0060】
補強板78は、
図3Aに示すように、天板75から下方向に突出する。補強板78は、本実施形態では、天板75の第一方向D1の両端部に設けられている。本実施形態では、補強板78は、鉛直面に平行な板のみで構成されるが、本開示では、垂下板76と同様に、補強片77が設けられてもよい。
【0061】
(2.4)施工方法
本実施形態に係る補強具7では、例えば、次のようにして施工される。
【0062】
図5Aに示すように、作業者は、下折板屋根3において、タイトフレーム5に対応する位置のうち、山部37の上底38に支持具6を取り付ける。また、下折板屋根3において、タイトフレーム5に対応する位置のうち、下底32の上面に補強具7を取り付ける。
【0063】
このとき、下折板屋根3の下底32に対して、補強具7を、例えば、両面テープを用いて仮止めすることが好ましい。上折板屋根4を設置する際に、補強具7がずれるのを防ぐことができるからである。ここで、上述したように、補強具7は、平面視において、少なくとも一部が、タイトフレーム5に重なっていれば、支持具6がタイトフレーム5に対応する位置に配置されていることとする。
【0064】
次いで、
図5Bに示すように、上折板屋根4を設置する。具体的には、折板41を補強具7に載せ、この折板41に対して、左右方向に並ぶように、別の折板41を配置する。このとき、必要に応じて、下折板屋根3と上折板屋根4との間に、断熱材(例えば、グラスウール)を充填してもよい。この後、隣り合う折板41同士を連結する。
【0065】
このような二重折板屋根2は、例えば、上折板屋根4に積雪すると、上折板屋根4に掛かる荷重は、支持具6を介してタイトフレーム5の凸部52に伝わる。このとき、上折板屋根4に係る荷重は、下底42から、補強具7を介してタイトフレーム5及び屋根下地8にも伝わる。したがって、本実施形態の二重折板屋根2によれば、補強具7が設けられることで、タイトフレーム5の凸部52に伝達する荷重を低減させることができ、タイトフレーム5の変形を抑えることができる。
【0066】
しかも、本実施形態に係る補強具7によれば、天板部74が第二縦板722の外側面に沿う垂下板76を備えるため、支持脚72の変形を抑えることができる。したがって、本実施形態では、補強具7の変形を抑え得る。
【0067】
(変形例)
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0068】
上記実施形態に係る補強具7は、2つの支持脚72を有していたが、本開示では、1つの支持脚72であってもよい。変形例に係る補強具7では、
図6Aに示すように、2つの第一縦板721と、3つの第二縦板722とを有する。
【0069】
本変形例では、第二方向D2に離れた複数の第二縦板722のうちの、2つの第二縦板722は、同一面上に配置され、残りの第二縦板722は、前記2つの第二縦板722に対して第二方向D2に離れている。垂下板76は、上記実施形態と同様、各第二縦板722の外側面に沿っている。
【0070】
また、上記実施形態に係る補強具7は、
図6Bに示すように、1つの第一縦板721と、2つの第二縦板722とを備えてもよい。本変形例では、第二方向D2に離れた2つの第二縦板722の各々の第一方向D1の長さは、連結部73の第一方向D1の長さと略同じ寸法である。第一縦板721は、第二縦板722の第一方向D1の一方の端部同士をつなぐ。第二縦板722の第一方向D1の端部のうち、第一縦板721とは反対側の端部には、第二方向D2のうちの内側に突出した一対の突出片725が設けられる。一対の突出片725の各々は、連結部73の接続片733に固着具を介して取り付けられている。垂下板76は、上記実施形態と同様、各第二縦板722の外側面に沿っている。
【0071】
上記実施形態では、第二縦板722は、一の第一縦板721に対して2つ設けられていたが、本開示では、第二縦板722は3つ以上設けられてもよい。この場合、垂下板76は、最も外側の2つの第二縦板722の外側面に沿う。
【0072】
天板部74の上面と上折板屋根4の下底42の下面との間に、断熱材を挟んでもよい。この場合、断熱材は、例えば、平板状に形成される。断熱材は、補強具7の金属よりも熱伝導率が低い材料により構成され、また、上折板屋根4材を構成する折板41よりも熱伝導率が低い材料により構成される。断熱材としては、例えば、ABS樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド,ポリカーボネート,ポリアセタール,フェノール樹脂,メラミン樹脂,又はアルキド樹脂等により構成される。断熱材は、0.4[W・m-1・K-1]以下であることが好ましい。また、この断熱材は、下折板屋根3の下底32と、載置部71との間に配置されてもよい。
【0073】
支持具6は、上記実施形態では、下折板屋根3の上底38に取り付けられたが、本開示では、例えば、山部37の基端部から山部37を跨ぐような構造の支持具であってもよい。要するに、支持具6は、上底38に限らず、下折板屋根3の山部37に取り付けられていればよい。また、支持具6と補強具7は、離れている必要はなく、互いにつながっていてもよい。
【0074】
上記実施形態では、二重折板屋根2であるが、本開示では、少なくとも上折板屋根4と下折板屋根3とを備えていればよい。要するに、本開示に係る補強具7は、3重以上の金属製折板屋根に対して適用してもよい。
【0075】
上記実施形態では、二重折板屋根2は、軒棟方向の全長にわたる折板31,41を有していたが、本開示では、軒棟方向において、複数の折板を接続してもよい。
【0076】
上記実施形態では、補強具7の高さ(載置部71の下端面から天板75上面までの寸法)は、支持具6の高さ(吊子61を除く高さ)に対して、±40mmに設定されることが好ましい。これによって、下折板屋根3と上折板屋根4とが異なる形状の折板で構成されていても、好適に設置することができる。
【0077】
(態様)
以上説明したように、第1の態様に係る補強具(7)は、下折板屋根(3)と上折板屋根(4)との間に配置される補強具(7)である。補強具(7)は、下折板屋根(3)の下底(32)の上面に載る載置部(71)と、載置部(71)の上端部に取り付けられ、上折板屋根(4)の下底(42)の下面に対向する天板部(74)と、を備える。載置部(71)は、下折板屋根(3)の下底(32)の上面に沿った第一方向(D1)に交差する板面を含む第一縦板(721)と、第一縦板(721)から第一方向(D1)に沿って突出する少なくとも2つの第二縦板(722)と、を有する。2つの第二縦板(722)は、第一方向(D1)に直交し、かつ下折板屋根(3)の下底(32)の上面に沿った第二方向(D2)に間隔をおいて並ぶ。天板部(74)は、第一縦板(721)及び第二縦板(722)の上端面(723)に対向する天板(75)と、一対の垂下板(76)と、を有する。2つの垂下板(76)は、天板(75)から下方向に突出し、2つの第二縦板(722)の外側面に沿う。
【0078】
この態様によれば、垂下板(76)が第二縦板(722)の外側面に沿っているため、第二縦板(722)が外側方に向かって動こうとしても、垂下板(76)によって第二縦板(722)の動きが規制される。この結果、第二縦板(722)の変形は抑制される。このため、本実施形態に係る補強具(7)によれば、上折板屋根(4)の下底(42)に対し、積雪等による大きな荷重が掛かっても、変形を抑えることができ、上折板屋根(4)を支持することができる。
【0079】
第2の態様に係る補強具(7)では、第1の態様において、天板部(74)は、垂下板(76)から垂下板(76)に交差する方向に突出する補強片(77)を有する。
【0080】
この態様によれば、垂下板(76)が補強片(77)によって補強されるため、第二縦板(722)の変形をより抑えることができる。
【0081】
第3の態様に係る補強具(7)では、第1又は第2の態様において、載置部(71)は、第一縦板(721)及び第二縦板(722)をそれぞれに含む複数の支持脚(72)と、複数の支持脚(72)の下端部を互いにつなぐ連結部(73)と、を有する。
【0082】
この態様によれば、複数の支持脚(72)が互いに異なる向きに変形するのを抑えることができ、支持脚(72)の強度を高めることができる。
【0083】
第4の態様に係る補強具(7)では、第1~第3のいずれか1つの態様において、垂下板(76)と第二縦板(722)とは、固着具(79)を介して連結されている。
【0084】
この態様によれば、例えば、天板部(74)に荷重が掛かり、支持脚(72)において座屈等による変形が生じる際に、第二縦板(722)が内側に動こうとしても、固着具(79)により第二縦板(722)の動きを規制でき、支持脚(72)の変形を抑え得る。
【0085】
第5の態様に係る二重折板屋根(2)では、下折板屋根(3)と、第1~4の態様のいずれか1つの補強具(7)と、上折板屋根(4)と、を備える。補強具(7)は、下折板屋根(3)の下底(32)の上面に設置される。上折板屋根(4)は、下折板屋根(3)の上方に配置され、補強具(7)によって、下底(42)の下面が支持される。
【0086】
この態様によれば、上折板屋根(4)の下底(42)に対し、積雪等による大きな荷重が掛かっても、補強具(7)の変形を抑えることができ、上折板屋根(4)を支持することができる。
【0087】
第2~第4の態様に係る構成については、補強具(7)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0088】
2 二重折板屋根
3 下折板屋根
32 下底
4 上折板屋根
42 下底
7 補強具
71 載置部
72 支持脚
721 第一縦板
722 第二縦板
73 連結部
74 天板部
75 天板
76 垂下板
77 補強片
79 固着具
D1 第一方向
D2 第二方向