(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】コンロ用バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
F23D14/06 N
(21)【出願番号】P 2018171894
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018027640
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】武田 和也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-127563(JP,A)
【文献】特開昭56-165812(JP,A)
【文献】特開2012-072986(JP,A)
【文献】実開昭54-109673(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備え、下段炎口のみにガスを供給する状態と、上段炎口にもガスを供給する状態とに切換え自在とし、上段炎口へのガス供給の開始で下段炎口から上段炎口に火移りさせるようにしたコンロ用バーナであって、
バーナボディは、外側の筒体と中間の筒体と内側の筒体との内外3重の筒体を有し、バーナヘッドは、内周部にバーナボディの中間筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の下ヘッド部材と、内周部にバーナボディの内側筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の上ヘッド部材とで構成され、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成されるものにおいて、
下ヘッド部材の上面外周部に第1の環状壁が立設されると共に、上ヘッド部材の下面外周部に、第1の環状壁に着座する第2の環状壁が垂設され、
上段炎口は、上炎口部分と下炎口部分との上下2部分に分割されて、第1の環状壁に、第1の環状壁の上端から下方に凹入する下炎口部分となる溝が周方向の間隔を存して複数形成され、第2の環状壁に、第2の環状壁の下端から上方に凹入する上炎口部分となる溝が周方向の間隔を存して、且つ、下炎口部分となる溝に対し周方向に位置をずらして複数形成され
、
第1の環状壁に形成する下炎口部分となる溝の形状は、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で下底よりも上底の幅が広い台形であり、第2の環状壁に形成する上炎口部分となる溝の形状は、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で上底よりも下底の幅が広い台形であり、最も幅広になる溝の部分である下炎口部分となる溝の上端部と上炎口部分となる溝の下端部の幅が消炎距離以下に設定されることを特徴とするコンロ用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備えるコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンロ用バーナとして、下段炎口のみにガスを供給する状態と、上段炎口にもガスを供給する状態とに切換え自在とし、上段炎口へのガス供給の開始で下段炎口から上段炎口に火移りさせるようにしたものが知られている。このものでは、下段炎口のみで燃焼させる弱火から下段と上段の両炎口で燃焼させる強火まで火力を広範囲に調節することができる利点がある。
【0003】
尚、一般的に、バーナボディは、外側の筒体と中間の筒体と内側の筒体との内外3重の筒体を有し、バーナヘッドは、内周部にバーナボディの中間筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の下ヘッド部材と、内周部にバーナボディの内側筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の上ヘッド部材とで構成される。そして、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成される。具体的には、下ヘッド部材の上面外周部に、上ヘッド部材が着座する環状壁を立設し、この環状壁に、その上端から下方に凹入する上段炎口となる溝を周方向の間隔を存して複数形成している。
【0004】
ここで、環状壁に形成する上段炎口となる溝は、溝の成形金型を上方に抜くための抜き勾配がついた台形、即ち、下底が幅狭で上底が幅広の台形に形成される。溝の成形金型の下底側の幅は、強度確保に必要なある程度の寸法にする必要がある。そのため、溝形状である台形の下底の幅を消炎距離に比し左程小さな寸法に設定することはできず、上底の幅、即ち、上段炎口の上端の幅は消炎距離より広くなってしまう。そして、このようなコンロ用バーナでは、上段炎口と下段炎口との間の上下方向距離が短いと、下段炎口から上段炎口への火移り時に、上段炎口での逆火を生じやすくなる。その理由は以下の通りである。即ち、上段炎口へのガス供給開始後、上段炎口からのガス噴出速度が燃焼速度を上回るまでにある程度の時間がかかる。一方、上段炎口と下段炎口との間の上下方向距離が短いと、上段炎口へのガス供給開始から上段炎口に火移りするまでの時間が短くなる。そして、上段炎口からのガス噴出速度が燃焼速度以上に上昇する前に火移りして、消炎距離より幅広の上段炎口の上端部での逆火を生じてしまう。
【0005】
そこで、従来、特許文献1により、上段炎口と下段炎口との間の上下方向距離を長くしたコンロ用バーナが知られている。このものでは、上段炎口へのガス供給開始から上段炎口に火移りするまでに時間がかかる。そのため、上段炎口に火移りするまでに、上段炎口からのガス噴出速度が燃焼速度を上回る。その結果、火移り時に消炎距離より幅広の上段炎口の上端部で逆火を生ずることを防止できる。然し、上段炎口と下段炎口との間の上下方向距離を長くしたのでは、バーナが大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナの大型化を招くことなく、上段炎口への火移り時の逆火を抑制できるようにしたコンロ用バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナボディ上に設けられるバーナヘッドの外周面に開口する上下2段の炎口を備え、下段炎口のみにガスを供給する状態と、上段炎口にもガスを供給する状態とに切換え自在とし、上段炎口へのガス供給の開始で下段炎口から上段炎口に火移りさせるようにしたコンロ用バーナであって、バーナボディは、外側の筒体と中間の筒体と内側の筒体との内外3重の筒体を有し、バーナヘッドは、内周部にバーナボディの中間筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の下ヘッド部材と、内周部にバーナボディの内側筒体に嵌合する筒部を垂設した環状の上ヘッド部材とで構成され、バーナボディの外側筒体と下ヘッド部材との間に下段炎口が画成され、下ヘッド部材と上ヘッド部材との間に上段炎口が画成されるものにおいて、下ヘッド部材の上面外周部に第1の環状壁が立設されると共に、上ヘッド部材の下面外周部に、第1の環状壁に着座する第2の環状壁が垂設され、上段炎口は、上炎口部分と下炎口部分との上下2部分に分割されて、第1の環状壁に、第1の環状壁の上端から下方に凹入する下炎口部分となる溝が周方向の間隔を存して複数形成され、第2の環状壁に、第2の環状壁の下端から上方に凹入する上炎口部分となる溝が周方向の間隔を存して、且つ、下炎口部分となる溝に対し周方向に位置をずらして複数形成され、第1の環状壁に形成する下炎口部分となる溝の形状は、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で下底よりも上底の幅が広い台形であり、第2の環状壁に形成する上炎口部分となる溝の形状は、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で上底よりも下底の幅が広い台形であり、最も幅広になる溝の部分である下炎口部分となる溝の上端部と上炎口部分となる溝の下端部の幅が消炎距離以下に設定されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、上段炎口を上炎口部分と下炎口部分との上下2部分に分割するため、第1と第2の各環状壁に形成する溝の凹入深さは、上段炎口を上下2分割しない場合に比し半減する。従って、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で最も幅広になる溝の部分、即ち、第1の環状壁に形成する下炎口部分となる溝の上端部と、第2の環状壁に形成する上炎口部分となる溝の下端部の幅を上記の如く消炎距離以下にすることができる。そのため、バーナの大型化を招かないよう、上段炎口の下炎口部分と下段炎口との間の上下方向距離を短くすることで、下段炎口から上段炎口への火移りに要する時間が短縮されて、上段炎口の下炎口部分や上炎口部分からのガス噴出速度が燃焼速度以上になる前に火移りしても、上段炎口の下炎口部分及び上炎口部分での火移り時の逆火を防止できる。更に、上段炎口の上炎口部分と下炎口部分とが千鳥状に配置されることになるため、上炎口部分と下炎口部分から個々に噴出するガスに対しその周囲から十分に二次空気が供給される。その結果、上段炎口に形成される炎が短炎化され、鍋底の外方に炎が溢れ出す炎溢れを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のコンロ用バーナの斜視図。
【
図3】実施形態のコンロ用バーナの要部の拡大側面図。
【
図4】下段炎口と上段炎口とに供給されるガス量の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、
図2を参照して、1は、本発明の実施形態のコンロ用バーナである。このバーナ1は、バーナボディ2と、バーナボディ2上のバーナヘッド3とを備えている。バーナヘッド3の外周面には、上下2段の炎口4U,4Lが周方向の間隔を存して複数開口している。尚、コンロ天板上に配置する五徳の複数の五徳爪と同一方位に位置するバーナヘッド3の周方向複数箇所の部分には、五徳爪に火炎が触れて不完全燃焼することを防止するため、上段炎口4Uを形成せずに下段炎口4Lのみを形成している。
【0012】
より詳細に説明すれば、バーナボディ2は、外側の筒体21と中間の筒体22と内側の筒体23との内外3重の筒体を有している。外側筒体21には、その上端部外周から垂下するスカート部21aが設けられている。バーナヘッド3は、内周部にバーナボディ2の中間筒体22に嵌合する筒部31aを垂設した環状の下ヘッド部材31と、内周部にバーナボディ2の内側筒体23に嵌合する筒部32aを垂設した環状の上ヘッド部材32とで構成されている。そして、バーナボディ2の外側筒体21と下ヘッド部材31との間に下段炎口4Lが画成され、下ヘッド部材31と上ヘッド部材32との間に上段炎口4Uが画成される。
【0013】
上段炎口4Uは、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubとの上下2部分に分割されている。具体的に説明すれば、下ヘッド部材31の上面外周部には、第1の環状壁33が立設され、上ヘッド部材32の下面外周部には、第1の環状壁33に着座する第2の環状壁34が垂設されている。そして、第1の環状壁33に、第1の環状壁33の上端から下方に凹入する上段炎口4Uの下炎口部分4Ubとなる溝が周方向の間隔を存して複数形成されている。更に、第2の環状壁34に、第2の環状壁34の下端から上方に凹入する上段炎口4Uの上炎口部分4Uaとなる溝が周方向の間隔を存して、且つ、下炎口部分4Ubとなる溝に対し周方向に位置をずらして複数形成されている。これにより、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubは周方向に位置をずらして千鳥状に配置されることになる。
【0014】
図3を参照して、第1の環状壁33に形成する下炎口部分4Ubとなる溝の形状は、溝の成形型を上方に抜くための抜き勾配をつける関係で下底よりも上底の幅が広い台形となる。第2の環状壁34に形成する上炎口部分4Uaとなる溝の形状は、溝の成形型を下方に抜くための抜き勾配をつける関係で上底よりも下底の幅が広い台形となる。ここで、上段炎口4Uを上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubとの上下2部分に分割すれば、第1と第2の各環状壁33,34に形成する溝の凹入深さは上段炎口4Uを上下2分割しない場合に比し半減する。そのため、溝の成形金型の抜き勾配をつける関係で最も幅広になる溝の部分、即ち、第1の環状壁33に形成する下炎口部分4Ubとなる溝の上端部と、第2の環状
壁34に形成する上炎口部分4Uaとなる溝の下端部の幅も消炎距離(例えば、1.2mm)以下にすることができる。
【0015】
下ヘッド部材31の下面外周部には、バーナボディ2の外側筒体21の上端部に着座する第3の環状壁35が垂設されている。第3の環状壁35には、第3の環状壁35の下端から上方に凹入する下段炎口4Lとなる溝が周方向の間隔を存して複数形成されている。また、下ヘッド部材31の周方向1箇所には、図示省略した点火電極に対向するターゲット部36が突設されており、点火電極とターゲット部36との間での火花放電により下段炎口4Lに点火される。
【0016】
また、バーナ1は、バーナボディ2の中間筒体22と内側筒体23との間の空間に連通する上段炎口4U用の第1混合管5Uと、バーナボディ2の外側筒体21と中間筒体22との間の空間に連通する下段炎口4L用の第2混合管5Lとを備える。第1混合管5Uには、共通のガス供給路6から分岐した第1分岐路6Uを介して燃料ガスが供給される。第2混合管5Lには、ガス供給路6から分岐した第2分岐路6Lを介して燃料ガスが供給される。そして、第1と第2の各混合管5U,5L内で燃料ガスと各混合管5U,5Lに吸い込まれる一次空気とが混合され、第1混合管5Uからの混合ガスがバーナボディ2の中間筒体22と内側筒体23との間の空間及び下ヘッド部材31と上ヘッド部材32との間の空間を介して上段炎口4Uから噴出する。また、第2混合管5Lからの混合ガスがバーナボディ2の外側筒体21と中間筒体22との間の空間及び外側筒体21と下ヘッド部材31との間の空間を介して下段炎口4Lから噴出する。
【0017】
ガス供給路6には、点火時に開かれ、消火時に閉じる元弁7が介設されている。また、第1と第2の各分岐路6U、6Lには、図示省略した火力調節用のレバーや摘みから成る操作部材に連動して開度が変化する第1と第2の各流量調節弁8U,8Lが介設されている。操作部材は、弱火位置から強火位置まで操作できるようになっている。操作部材を弱火位置から強火位置まで操作すると、第2流量調節弁8Lの開度が最小開度から次第に増加する。そして、下段炎口4Lへの供給ガス量は、
図4にa線で示す如く、下段炎口4Lでの逆火防止に必要な所定の最小量QLminから最大量QLmaxまで漸増する。一方、第1流量調節弁8Uは、操作部材が所定の中間位置に達するまで開弁されず、中間位置を超えたところで所定開度まで急に開き、その後の強火位置への操作で開度が次第に増加する。そして、操作部材を弱火位置から強火位置まで操作したとき、
図4にb線で示す如く、上段炎口4Uには中間位置に達するまでガスが供給されず、中間位置を超えたところで上段炎口4Uへの供給ガス量が所定の最小量QUminに急増し、その後最大量QUmaxまで漸増する。
【0018】
上段炎口4Uでも燃焼させる場合、操作部材を中間位置を超えて強火位置側に操作し、上段炎口4Uへのガス供給を開始して、下段炎口4Lから上段炎口4Uに火移りさせる。ここで、本実施形態では、上段炎口4Uの下炎口部分4Ubとなる溝の最も幅広になる部分である上端部と、上段炎口4Uの上炎口部分4Uaとなる溝の最も幅広になる部分である下端部の幅を上記の如く消炎距離以下にすることができる。また、本実施形態では、バーナ1の大型化を招かないよう、上段炎口4Uの下炎口部分4Ubと下段炎口4Lとの間の上下方向距離を短くしている。そのため、下段炎口4Lから上段炎口4Uへの火移り要する時間が短縮されて、上段炎口4Uの下炎口部分4Ubや上炎口部分4Uaからのガス噴出速度が燃焼速度以上になる前に火移りしてしまうことがある。然し、本実施形態では、上記の如く下炎口部分4Ubとなる溝の最も幅広になる部分である上端部と、上炎口部分4Uaとなる溝の最も幅広になる部分である下端部の幅を消炎距離以下にすることができるため、下炎口部分4Ubや上炎口部分4Uaからのガス噴出速度が燃焼速度以上になる前に火移りしても、下炎口部分4Ub及び上炎口部分4Uaでの火移り時の逆火を生じない。
【0019】
また、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubとが千鳥状に配置されるため、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubから個別に噴出するガスに対しその周囲から十分に二次空気が供給される。その結果、上段炎口4Uに形成される炎が強火状態でも短炎化され、鍋底の外方に炎が溢れ出す炎溢れを抑制することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…コンロ用バーナ、2…バーナボディ、21…外側筒体、22…中間筒体、23…内側筒体、3…バーナヘッド、31…下ヘッド部材、31a…下ヘッド部材の筒部、32…上ヘッド部材、32a…上ヘッド部材の筒部、33…第1の環状壁、34…第2の環状壁、4U…上段炎口、4Ua…上炎口部分、4Ub…下炎口部分、4L…下段炎口。