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特許7145017液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置および駆動信号生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置および駆動信号生成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20220922BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018172685
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020044667
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-329676(JP,A)
【文献】特開2004-114434(JP,A)
【文献】特開2006-056241(JP,A)
【文献】特開2018-111318(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部と、
前記噴射部に対して、1または複数のパルスを有する駆動信号を印加することにより、前記ノズルから前記液体を噴射させる駆動部と、
超音波の音響信号を前記液体中へ向けて発信する発信器と、前記超音波の音響信号を前記液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、
前記音響測定部における前記発信器および前記受信器での信号の比較に基づいて、前記駆動信号を生成する信号生成部と
を備え、
前記信号生成部は、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での到達時間に基づいて、前記液体中での音速を求めると共に、求めた前記液体中での音速に基づいて、前記パルスにおけるパルス幅を求め、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での減衰度を求めると共に、求めた前記減衰度に基づいて、前記パルスにおける波高値を求め、
求めた前記パルス幅および前記波高値を有する前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記音響測定部の少なくとも一部が、前記噴射部内に設けられている
請求項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【請求項4】
液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部に対して印加される、1または複数のパルスを有する駆動信号を生成するシステムであって、
超音波の音響信号を前記液体中へ向けて発信する発信器と、前記超音波の音響信号を前記液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、
前記音響測定部における前記発信器および前記受信器での信号の比較に基づいて、前記駆動信号を生成する信号生成部と
を備え、
前記信号生成部は、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での到達時間に基づいて、前記液体中での音速を求めると共に、求めた前記液体中での音速に基づいて、前記パルスにおけるパルス幅を求め、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での減衰度を求めると共に、求めた前記減衰度に基づいて、前記パルスにおける波高値を求め、
求めた前記パルス幅および前記波高値を有する前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
駆動信号生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置および駆動信号生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-151646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは、ユーザにおける利便性を向上させることが求められている。ユーザにおける利便性を向上させることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置および駆動信号生成システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部と、この噴射部に対して1または複数のパルスを有する駆動信号を印加することにより、ノズルから液体を噴射させる駆動部と、超音波の音響信号を液体中へ向けて発信する発信器と、超音波の音響信号を液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、この音響測定部における発信器および受信器での信号の比較に基づいて、上記駆動信号を生成する信号生成部とを備えたものである。この信号生成部は、超音波の音響信号における発信器から受信器までの液体中での到達時間に基づいて、液体中での音速を求めると共に、求めた液体中での音速に基づいて、パルスにおけるパルス幅を求め、超音波の音響信号における発信器から受信器までの液体中での減衰度を求めると共に、求めた減衰度に基づいて、パルスにおける波高値を求め、求めたパルス幅および波高値を有するパルスを用いて上記駆動信号を生成する。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る駆動信号生成システムは、液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部に対して印加される、1または複数のパルスを有する駆動信号を生成するシステムであって、超音波の音響信号を液体中へ向けて発信する発信器と、超音波の音響信号を液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、この音響測定部における発信器および受信器での信号の比較に基づいて、上記駆動信号を生成する信号生成部とを備えたものである。この信号生成部は、超音波の音響信号における発信器から受信器までの液体中での到達時間に基づいて、液体中での音速を求めると共に、求めた液体中での音速に基づいて、パルスにおけるパルス幅を求め、超音波の音響信号における発信器から受信器までの液体中での減衰度を求めると共に、求めた減衰度に基づいて、パルスにおける波高値を求め、求めたパルス幅および波高値を有するパルスを用いて駆動信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置および駆動信号生成システムによれば、ユーザにおける利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
図2図1に示した液体噴射ヘッドの概略構成例を表す模式図である。
図3図2に示した液体噴射ヘッドの詳細構成例を表すブロック図である。
図4】駆動信号の構成例を模式的に表すタイミング図である。
図5図3に示した信号生成部の詳細構成例等を表すブロック図である。
図6図5に示した解析信号生成部の詳細構成例を表すブロック図である。
図7】比較例に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表すブロック図である。
図8】実施の形態に係る駆動信号の生成処理等を表す流れ図である。
図9図8に示した駆動信号の生成処理の際の各種信号の波形例を表すタイミング図である。
図10】パルス幅の設定手法等の概要について説明するための模式図である。
図11】変形例1に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表すブロック図である。
図12】変形例2に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(音響測定部および信号生成部を液体噴射ヘッド内に設けた場合の例)
2.変形例
変形例1(音響測定部の一部を噴射部内に設けた場合の例)
変形例2(液体噴射ヘッド外部に音響測定部および信号生成部を設けた場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[A.プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。プリンタ1は、後述するインク9を利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。
【0012】
プリンタ1は、図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、インク供給管50と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4K)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。この駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z-X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)の4色のインク9を個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインク9を収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインク9を収容するインクタンク3Mと、シアンのインク9を収容するインクタンク3Cと、ブラックのインク9を収容するインクタンク3Kとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Kは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Kはそれぞれ、収容するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクタンク3と総称して説明する。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル(ノズル孔Hn)から記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録(印刷)を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Kにそれぞれ収容されている4色のインク9を個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Kとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kはそれぞれ、利用するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成例については、後述する(図2図6)。
【0019】
インク供給管50は、インクタンク3内からインクジェットヘッド4内へ向けて、インク9が供給される管である。このインク供給管50は、例えば、以下説明する走査機構6の動作に追従可能な程度の可撓性を有する、フレキシブルホースにより構成されている。
【0020】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール61a,61bと、これらのガイドレール61a,61bに移動可能に支持されたキャリッジ62と、このキャリッジ62をY軸方向に沿って移動させる駆動機構63と、を有している。
【0021】
駆動機構63は、ガイドレール61a,61bの間に配置された一対のプーリ631a,631bと、これらのプーリ631a,631b間に巻回された無端ベルト632と、プーリ631aを回転駆動させる駆動モータ633と、を有している。また、キャリッジ62上には、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Kが、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0022】
なお、このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。
【0023】
[B.インクジェットヘッド4の詳細構成]
続いて、図2図6を参照して、インクジェットヘッド4の詳細構成例について説明する。
【0024】
ここで、図2は、インクジェットヘッド4の概略構成例を、模式的に表したものである。また、図3は、図2に示したインクジェットヘッド4の詳細構成例を、ブロック図で表したものである。
【0025】
インクジェットヘッド4は、図2図3に示したように、ノズルプレート41、アクチュエータプレート42、温度検出部45、音響測定部47、信号生成部48および駆動部49を有している。
【0026】
なお、ノズルプレート41およびアクチュエータプレート42は、本開示における「噴射部」の一具体例に対応している。また、信号生成部48は、本開示における「駆動信号生成システム」の一具体例に対応している。
【0027】
(ノズルプレート41)
ノズルプレート41は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、図2図3に示したように、インク9を噴射する複数のノズル孔Hnを有している(図2図3中の破線の矢印参照)。これらのノズル孔Hnはそれぞれ、所定の間隔をおいて一直線上に(この例ではX軸方向に沿って)並んで形成されている。なお、各ノズル孔Hnは、本開示における「ノズル」の一具体例に対応している。
【0028】
(アクチュエータプレート42)
アクチュエータプレート42は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート42には、複数のチャネル(不図示)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための圧力室として機能する部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0029】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネル(後述する吐出チャネルCe:図10参照)と、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート41におけるノズル孔Hnと連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、所定の方向に沿って交互に並んで配置されている。
【0030】
上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極(不図示)が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが存在している。これらの駆動電極と、駆動基板(不図示)における駆動回路との間は、フレキシブル基板(不図示)に形成された複数の引き出し電極を介して、電気的に接続されている。これにより、このフレキシブル基板を介して、後述する駆動部49を含む駆動回路から各駆動電極に対し、後述する駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている。
【0031】
(温度検出部45)
温度検出部45は、図3に示したように、インクジェットヘッド4内におけるアクチュエータプレート42付近の温度(アクチュエータ温度Tpzt)を検出するものである。このようにして温度検出部45によって検出されたアクチュエータ温度Tpztは、後述する信号生成部48へと出力されるようになっている。
【0032】
(音響測定部47)
音響測定部47は、図3に示したように、前述したインク供給管50内を流れるインク9について、所定の測定(音響測定)を行うものであり、超音波発信器471および超音波受信器472を有している。
【0033】
超音波発信器471は、図3に示したように、超音波の音響信号Sacを、音響信号Sacoutとしてインク9中へ向けて発信する機器である。なお、このような音響信号Sacoutの発信は、例えば、信号生成部48から出力される電気信号に基づき、電気-機械変換を用いて行われるようになっている(図3参照)。
【0034】
超音波受信器472は、図3に示したように、超音波の音響信号Sacを、インク9中から受信する機器である。具体的には、超音波受信器472は、超音波発信器471から出力されてインク9中を進行した音響信号Sacを、音響信号Sacinとして受信する。なお、このような音響信号Sacinの受信は、例えば機械-電気変換を用いて行われるようになっており、そのようにして得られた音響信号Sacinは、信号生成部48へと出力されるようになっている(図3参照)。
【0035】
ちなみに、このような音響信号Sac(Sacout,Sacin)はそれぞれ、本実施の形態では例えば後述するように(図9参照)、正弦波を用いて構成されている。このような正弦波を用いて音響信号Sacを構成することで、音響信号Sacにおける周波数成分が単一となることから、例えば、周波数成分が単一ではないパルス状の波形(矩形波)を用いて音響信号Sacを構成した場合と比べ、以下のようになる。すなわち、例えば高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等の周波数成分の分離処理が不要となるため、信号生成部48内の後述する解析信号生成部482での解析処理を、簡易なものとすることが可能となっている。
【0036】
ここで、このような超音波発信器471および超音波受信器472はそれぞれ、本開示における「発信器」および「受信器」の一具体例に対応している。
【0037】
(信号生成部48)
信号生成部48は、詳細は後述するが、上記した音響測定部47における超音波発信器471および超音波受信器472での信号の比較に基づいて、駆動信号Sdにおける1または複数パルス(パルス幅Wp,電圧値Vp)を設定し、設定したそのパルスを用いて駆動信号Sdを生成するものである。
【0038】
ここで、図4(A)~図4(C)はそれぞれ、このような駆動信号Sdの構成例を、模式的にタイミング図で表したものである。なお、これらの図4(A)~図4(C)において、横軸は時間tを、縦軸は、駆動信号Sdにおける駆動電圧Vd(この例では正電圧)を、それぞれ示している。
【0039】
まず、図4(A)に示した駆動信号Sdは、1つのパルス(パルスPa)を有しており、いわゆる「1ドロップ」の場合の例となっている。このパルスPaは、立ち上がりタイミングと立ち下がりタイミングとの間に設けられたON期間であり、上記したパルス幅Wpおよび電圧値Vpの一例として、パルス幅Wpa1および電圧値Vp1を有している。
【0040】
一方、図4(B)に示した駆動信号Sdは、いわゆる「マルチパルス方式」が適用されるパルスとして、以下の2つのパルス(パルスPa,Pb)を有している(いわゆる「2ドロップ」の場合の例)。すなわち、そのようなパルス(ON期間)として、パルスPa,Pbの2つが設けられている。なお、これら2つのパルスPa,Pbの間には、OFF期間(「OFF1」)が設けられている。また、上記したパルス幅Wpおよび電圧値Vpの一例として、パルスPaはパルス幅Wpa2および電圧値Vp2を有し、パルスPbはパルス幅Wpb2および電圧値Vp2を有している。
【0041】
同様に、図4(C)に示した駆動信号Sdは、上記した「マルチパルス方式」が適用されるパルスとして、以下の3つのパルス(パルスPa,Pb,Pc)を有している(いわゆる「3ドロップ」の場合の例)。すなわち、そのようなパルス(ON期間)として、パルスPa,Pb,Pcの3つが設けられている。なお、パルスPa,Pbの間にはOFF期間(「OFF1」)が設けられているとともに、パルスPb,Pcの間にはOFF期間(「OFF2」)が設けられている。また、上記したパルス幅Wpおよび電圧値Vpの一例として、パルスPaはパルス幅Wpa3および電圧値Vp3を有し、パルスPbはパルス幅Wpb3および電圧値Vp3を有し、パルスPcはパルス幅Wpc3および電圧値Vp3を有している。
【0042】
なお、これらの駆動信号Sdにおける各パルスPa,Pb,Pcは、ハイ(High)状態の期間において前述した吐出チャネルを膨張させると共に、ロウ(Low)状態の期間において吐出チャネルを収縮させる、ポジティブパルスとなっている。
【0043】
ここで、信号生成部48は、詳細は後述するが、このようなパルス(パルスPa,Pb,Pc)におけるパルス幅Wpおよび電圧値Vpをそれぞれ求め、求めたパルス幅Wpおよび電圧値Vpを有するパルスを用いて、駆動信号Sdを生成するようになっている。なお、このような信号生成部48による駆動信号Sdの生成処理の詳細については、後述する(図8図10)。
【0044】
ここで、上記した電圧値Vpは、本開示における「波高値」の一具体例に対応している。また、上記した「パルス」とは、例えば図4に示したような矩形波だけではなく、例えば、台形波や三角波、ステップ波などの波形も含む概念のものであり、以下同様である。
【0045】
(駆動部49)
駆動部49は、アクチュエータプレート42に対して上記した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加して、上記した吐出チャネルを膨張または収縮させることで、各ノズル孔Hnからインク9を噴射させる(噴射動作を行わせる)ものである(図2図3参照)。具体的には、駆動部49は、上記した信号生成部48において生成された駆動信号Sdを用いて、そのような噴射動作を行わせるようになっている。
【0046】
[C.信号生成部48の詳細構成]
続いて、図5図6を参照して、上記した信号生成部48の詳細構成例について説明する。図5は、信号生成部48の詳細構成例を、前述した音響測定部47とともにブロック図で表したものである。また、図6は、図5に示した解析信号生成部482(後述)の詳細構成例を、ブロック図で表したものである。
【0047】
図5に示したように、信号生成部48は、バンドパスフィルタ481、解析信号生成部482、振幅信号生成部483、カウンタ回路484、音響信号生成部485、減衰度演算部486および波形設定部487を有している。
【0048】
(バンドパスフィルタ481)
バンドパスフィルタ481は、図5に示したように、超音波受信器472から取得した音響信号Sacinに対して、所定のバンドパスフィルタ処理を施すものである。このバンドパスフィルタ処理は、音響信号Sacinにおけるノイズを抑制するためのフィルタ処理であり、例えば音響測定部47での測定に使用されている正弦波帯域が、通過域となっている。なお、このようなバンドパスフィルタ処理後の音響信号Sacinは、信号S0(正弦波の信号)として、解析信号生成部482へと出力されるようになっている。
【0049】
(解析信号生成部482)
解析信号生成部482は、上記した信号S0に対して所定の解析処理を行うことにより、図5に示したように、2つの解析信号S1a,S1bをそれぞれ出力するものである。なお、この例では解析信号S1bは、解析信号S1bに対して位相が90°遅れた信号となっている。
【0050】
この解析信号生成部482は、図6に示したように、ヒルベルト変換回路482aおよび遅延回路482bを有している。
【0051】
ヒルベルト変換回路482aは、入力された正弦波の信号S0に対してヒルベルト変換を行い、余弦波からなる解析信号S1bを出力する回路である。
【0052】
遅延回路482bは、入力された正弦波の信号S0に対して所定の遅延処理を施し、正弦波からなる解析信号S1aを出力する回路である。具体的には、遅延回路482bは、信号S0が入力されてから上記した解析信号S1bが出力されるまでの時間と同じ時間の分だけ、信号S0に対して遅延処理を施すようになっている。
【0053】
(振幅信号生成部483)
振幅信号生成部483は、図5に示したように、上記した2つの解析信号S1a,S1bに対して所定の演算処理を行うことで、上記した音響信号Sacinにおける振幅A2の値を示す信号である、瞬時振幅信号S2を出力する回路である。
【0054】
ここで、2つの解析信号S1a,S1bはそれぞれ、上記したように、正弦波と余弦波である。したがって、三角関数の公式である以下の(1)式を利用し、以下の(2)式を用いることで、上記した振幅A2が求められることになる。
(sinθ)+(cоsθ)=1 ……(1)
A2={(S1a)+(S1b)1/2 ……(2)
【0055】
(カウンタ回路484)
カウンタ回路484は、図5に示したように、上記した瞬時振幅信号S2に基づいて、所定のカウンタ処理を行う回路である。このようなカウンタ処理が行われることで、詳細は後述するが(図9参照)、超音波発信器471からの音響信号Sacoutの発生タイミングと、瞬時振幅信号S2のピーク値(振幅A2)のタイミングと、の間の時間差(到達時間Δt)を示す時間差信号S3が、生成されるようになっている。
【0056】
具体的には、まず、前述したように、インク9中を超音波の音響信号Sacが進行する際には、この音響信号Sacの速度、すなわち、インク9中での音速Vsに応じて、超音波発信器471から超音波受信器472までの音響信号Sacの到達時間Δtが、変化する。また、瞬時振幅信号S2は、音響信号Sacを受信していないときには「0」を示すと共に、音響信号Sacを受信しているときには、その振幅A2に応じた波高値(ピーク値)を示す、山なり状の信号となる(後述する図9参照)。したがって、この瞬時振幅信号S2におけるピーク値(振幅A2)のタイミングと、音響信号Sacoutの発生タイミングとの間の時間差(到達時間Δt)を、カウンタ回路484におけるカウンタ処理で測定することで、上記した時間差信号S3が生成される。なお、この時間差信号S3の値は、上記したインク9中での音速Vsの大きさに応じて、変化するようになっている。
【0057】
(音響信号生成部485)
音響信号生成部485は、図5に示したように、上記した時間差信号S3に基づき、超音波発信器471から発信される音響信号Sacoutを、その音波周期Tacを調整したうえで、超音波発信器471へと出力するものである。具体的には、音響信号生成部485は、インク9中での音速Vsが変化しても時間差信号S3の値が常に一定に保たれるように、音響信号Sacoutにおける音波周期Tacを調整するようになっている。なお、このようにして調整された音波周期Tacは、図5に示したように、波形設定部487へと出力されるようになっている。
【0058】
(減衰度演算部486)
減衰度演算部486は、図5に示したように、瞬時振幅信号S2の振幅A2(音響信号Sacinの振幅に相当)と、音響信号Sacoutの振幅A1とに基づいて、これらの音響信号Sacout(送信信号)と音響信号Sacin(受信信号)との間での減衰度Atを演算するものである。このような音響信号Sacout,Sacin間での振幅の減衰は、詳細は後述するが、インク9の粘性抵抗などに起因して生じるものである。なお、このようにして求められた減衰度Atは、図5に示したように、波形設定部487へと出力されるようになっている。
【0059】
ちなみに、このような減衰度Atは、例えば以下の(3)式,(4)式で示すように、上記した振幅A1,A2同士の差分もしくは比を用いて規定されるようになっている。
At=(A1-A2) ……(3)
At=(A2/A1) ……(4)
【0060】
(波形設定部487)
波形設定部487は、図5に示したように、音響信号生成部485から出力される音波周期Tacと、減衰度演算部486から出力される減衰度Atとに基づき、駆動信号Sdにおける所定の波形設定を行うものである。具体的には、波形設定部487は、これらの音波周期Tacおよび減衰度Atに基づき、駆動信号Sdにおけるパルス(前述したパルスPa,Pb,Pc等)のパルス幅Wpおよび電圧値Vpを、それぞれ設定するようになっている。なお、そのような波形設定処理を含む、駆動信号Sdの生成処理の詳細については、後述する(図8図10)。
【0061】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインク9が十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインク9は、インク供給管50を介して、インクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0062】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22と間に、記録紙Pが搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構63における駆動モータ633が、プーリ631a,631bをそれぞれ回転させることで、無端ベルト632を動作させる。これにより、キャリッジ62がガイドレール61a,61bにガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)によって、4色のインク9を記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0063】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
続いて、インクジェットヘッド4における詳細動作(インク9の噴射動作)について説明する。すなわち、このインクジェットヘッド4では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0064】
まず、駆動部49は、アクチュエータプレート42内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する(図2図3参照)。具体的には、駆動部49は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0065】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0066】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート41のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0067】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(図2図3参照)。このようにしてインクジェットヘッド4におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われることになる。
【0068】
(C.駆動信号Sdの生成動作)
次に、図1図6に加えて図7図10を参照して、前述した信号生成部48による駆動信号Sdの生成動作(生成処理)等について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0069】
(C-1.比較例)
図7は、比較例に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ101の概略構成例を、ブロック図で表したものである。この比較例のプリンタ101は、比較例に係る液体噴射ヘッドとしての、インクジェットヘッド104を備えている。また、この比較例のインクジェットヘッド104は、前述したノズルプレート41、アクチュエータプレート42および温度検出部45とともに、波形情報記憶部108を有する駆動部109を備えている。すなわち、このインクジェットヘッド104は、本実施の形態のインクジェットヘッド4(図3参照)において、前述した音響測定部47および信号生成部48を設けない(省く)ようにすると共に、駆動部49の代わりに駆動部109を設けたものに対応している。
【0070】
駆動部109における波形情報記憶部108には、駆動信号Sdにおけるパルス(図4中のパルスPa~Pc参照)を設定するための波形情報(例えば、前述したパルス幅Wpや電圧値Vp等の各種情報)が、予め記憶されている。このような波形情報は、例えば、ノズルプレート41における各ノズル孔Hnからのインク9の噴射を、事前に人手で観測して算出された情報である。そして、駆動部109は、プリンタ101本体から入力された印刷データ等に基づき、この波形情報記憶部108に予め記憶されている波形情報を用いて駆動信号Sdを設定し、その駆動信号Sdをアクチュエータプレート42に対して印加するようになっている。
【0071】
ところで、インクジェットヘッドでは一般に、前述した吐出チャネルの形状やインク9の物性値などによって、最適な圧力発生タイミング(後述するオンパルスピーク)や、圧力設定条件(駆動電圧)が、大きく異なることが知られている。したがって、このような圧力発生タイミングや圧力設定条件を最適化するために、この比較例では、上記したようなインク9の噴射観測(飛翔観測)を、事前に人手で行う必要が生じているのである。ただし、このようなインク9の噴射観測を利用した波形情報は事前に、トライ・アンド・エラーを繰り返して作成されることから、膨大な時間が必要であったり、十分な経験と知識が必要となったり、インク9の種類ごとに上記した波形情報の作成が必要となったりする。
【0072】
また、プリンタのユーザ(エンドユーザ等)にとっては、インク9を自由に変更したいという要求があるものの、この比較例のプリンタ101では、インク9を変更すると、上記した波形情報の適切な利用ができなくなってしまうことになる。つまり、上記した圧力発生タイミングや圧力設定条件の最適化が図られず、印刷画質が低下してしまうおそれがある。したがって、このような印刷画質の低下のリスクを考慮すると、プリンタ101のユーザにとっては、インク9についての選択の自由度は、事実上は非常に小さいものとなってしまうと言える。
【0073】
このようにしてこの比較例では、駆動信号Sdにおけるパルスの設定のために、ノズル孔Hnからのインク9の噴射観測等を事前に人手で行っておく必要があり、膨大な時間や手間を要することから、以下のようになる。すなわち、ユーザにおける利便性が損なわれてしまうおそれがある。
【0074】
(C-2.本実施の形態)
そこで、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、信号生成部48において、駆動信号Sdを随時生成する(自動生成する)ようにしている。具体的には、信号生成部48は、駆動信号Sdにおけるパルス(前述したパルスPa,Pb,Pc等)のパルス幅Wpおよび電圧値Vpをそれぞれ求め、求めたパルス幅Wpおよび電圧値Vpを有するパルスを用いて、駆動信号Sdの生成を行う。以下、このような駆動信号Sdの生成処理について、詳細に説明する。
【0075】
図8は、本実施の形態に係る駆動信号Sdの生成処理等を、流れ図で表したものである。なお、この図8に示した一連の処理(後述するステップS10~S17)のうち、後述するステップS11~S16の各処理が、駆動信号Sdの生成処理に相当する。
【0076】
また、図9は、図8に示した駆動信号Sdの生成処理の際の各種信号の波形例を、タイミング図で表したものである。具体的には、図9において、(A)は、音響測定部47における測定開始タイミングを示す測定開始信号Smを、(B),(C)はそれぞれ、前述した音響信号Sacout,Sacinを、(D),(E)はそれぞれ、前述した瞬時振幅信号S2および時間差信号S3を、示している。なお、この図9において、横軸は時間tを示している。
【0077】
図8に示した一連の処理では、まず前段階として、信号生成部48は、駆動信号Sdの生成(更新)が必要であるのか否かについて、判定を行う(ステップS10)。ここで、駆動信号Sdの生成が必要であると判定された場合(ステップS10:Y)、以下説明する駆動信号Sdの生成処理(ステップS11~S16)へと移行する。一方、駆動信号Sdの生成が必要ではないと判定された場合(ステップS10:N)、後述するステップS17へと移行し、現段階での駆動信号Sdに基づいてインク9の噴射動作が行われることになる。
【0078】
なお、駆動信号Sdの生成が必要な場合とは、例えば以下のような場合が挙げられる。すなわち、例えば、所定の時間が経過した場合や、インクタンク3のカートリッジを装着した場合、ユーザからの所定の操作信号がプリンタ1に入力された場合、インク9の非吐出期間(アイドル期間)が所定時間以上となった場合、等が挙げられる。
【0079】
次いで、駆動信号Sdの生成処理(ステップS11~S16)では、信号生成部48は、パルスにおけるパルス幅Wpの算出処理(ステップS11~S13)と、パルスにおける電圧値Vpの算出処理(ステップS14~S15)とをそれぞれ、並行して行う(図8参照)。
【0080】
(ステップS11~S13:パルス幅Wpの算出処理)
ここで、パルス幅Wpの算出処理では、まず、信号生成部48は、音響信号Sacのインク9中での到達時間Δtを求める(ステップS11)。すなわち、例えば図9に示したように、信号生成部48は、測定開始信号Smの立ち上がりタイミング(タイミングt1)から、瞬時振幅信号S2においてピーク値(振幅A2)を示すタイミング(タイミングt2)までの時間差に対応する、到達時間Δtを求める。具体的には、信号生成部48におけるカウンタ回路484が、前述した手法にて、このような到達時間Δtを求める(図5参照)。
【0081】
次いで、信号生成部48は、このようにして求められた到達時間Δtに基づいて、インク9中での音速Vsを求める(ステップS12)。具体的には、信号生成部48における音響信号生成部485において、前述した手法にて音波周期Tac(図9(B)参照)が求められることから、この音波周期Tacと、超音波発信器471から超音波受信器472までの物理的距離とに基づき、インク9中での音速Vsが求められる。
【0082】
続いて、信号生成部48は、このようにして求められたインク9中での音速Vsに基づいて、パルスにおけるパルス幅Wpを求める(ステップS13)。具体的には、信号生成部48における波形設定部487が、そのような音速Vsに基づいて、パルス幅Wpの設定を行う(図5参照)。
【0083】
ここで、図10を参照して、このようなパルス幅Wpの設定手法等について、説明する。図10は、パルス幅Wpの設定手法等の概要について、模式的に表したものである。
【0084】
まず、インク9の噴射速度(吐出速度)が最大となるようにすることを考えた場合、例えば図10に示したように、前述した吐出チャネルCeにおけるチャネル長Lに対し、駆動信号Sdにおけるパルスのパルス幅Wpは、以下の(5)式のように規定される。そして、この(5)式を用いることで、インク9の噴射速度を最大とするためのパルス幅Wp(オンパルスピーク(AP):図10参照)が、求められることになる。
(2×Wp)=(2×L)/(N×Vs) (N=1,2,3,…) ……(5)
【0085】
ちなみに、このAPとは、吐出チャネルCe内におけるインク9の固有振動周期の1/2の期間(1AP=(インク9の固有振動周期)/2)に対応している。そして、パルス幅WpがこのAPに設定された場合、上記したように、通常の1滴分のインク9を吐出(1滴吐出)させる際に、インク9の噴射速度(吐出効率)が最大となる。なお、このAPは、例えば、吐出チャネルCeの形状やインク9の物性値(比重等)などによって、規定されるようになっている。
【0086】
(ステップS14~S15:電圧値Vpの算出処理)
一方、電圧値Vpの算出処理では、まず、信号生成部48は、前述した音響信号Sacのインク9中での減衰度Atを求める(ステップS14)。具体的には、信号生成部48における減衰度演算部486が、前述した手法にて、瞬時振幅信号S2の振幅A2(音響信号Sacinの振幅に相当)と、音響信号Sacoutの振幅A1との間での減衰度Atを求める(図9参照)。
【0087】
次いで、信号生成部48は、このようにして求められた減衰度Atに基づいて、パルスにおける電圧値Vpを求める(ステップS15)。具体的には、信号生成部48における波形設定部487が、そのような減衰度Atに基づいて、電圧値Vpの設定を行う(図5参照)。なお、この際に信号生成部48は、温度検出部45において検出されたアクチュエータ温度Tpztを考慮して、電圧値Vpの制御(電圧制御)を行うようにしてもよい。
【0088】
ここで、このような音響信号Sacout,Sacin間での振幅の減衰は、前述したように、インク9の粘性抵抗などに起因して生じるものであり、インク9中を音響信号Sacが通過した際に生じる、エネルギー損失量を表している。このような超音波のエネルギー損失としては、一般に、液体中の気泡などによる媒質の不均一に起因した散乱減衰や、粘性抵抗に起因した吸収減衰が挙げられる。プリンタに使用されるインクでは通常、脱気が行われることが多いため、この場合におけるエネルギー損失の主要因は、粘性抵抗となる。
【0089】
また、例えば、インクの噴射速度を所定の範囲内に収める際に、インクの粘度における温度依存性と、そのときに必要とされる駆動電圧の温度依存性とは、非常に強い相関があることが知られている。このことからも、インクの粘性抵抗が、超音波のエネルギーの損失に強い関係があることが分かる。
【0090】
これらのことから、超音波のエネルギー損失を表している減衰度Atに基づき、適切な駆動電圧(パルスの電圧値Vp)が求められると言える。
【0091】
なお、この減衰度Atに基づいて電圧値Vpを設定する際には、例えば、インク9を吐出するための音響エネルギーを得る手段の物理特性や、アクチュエータプレート42(圧電体)における電気機械特性値などの情報が、必要となる。したがって、減衰度Atに基づいて電圧値Vpを設定する際には、所定の補正関数や、補正用のルックアップテーブルなどを、用いるようにすればよい。あるいは、減衰度Atと電圧値Vpとの関係を規定した情報を、信号生成部48内に予め記憶しておき、減衰度Atの変化率から電圧値Vpの変化率を求めるようにしてもよい。
【0092】
(ステップS16,S17:駆動信号Sdの生成,インク9の噴射動作)
続いて、信号生成部48は、このようにして求められたパルス幅Wpおよび電圧値Vpを有するパルスを用いて、例えば前述した図4に示したような、駆動信号Sdを生成する(ステップS16)。そして、信号生成部48は、このような駆動信号Sdをアクチュエータプレート42に印加して、ノズル孔Hnからインク9を噴射させる(ステップS17)。このようにして、前述したインク9の噴射動作が行われる。
【0093】
以上で、図8に示した一連の処理が終了となる。
【0094】
(C-3.作用・効果)
このようにして、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、音響測定部47におけるインク9中での超音波の音響信号Sacの発信器(超音波発信器471)および受信器(超音波受信器472)での信号の比較に基づいて、駆動信号Sdのパルスが設定される。そして、設定されたパルスを用いて駆動信号Sdが生成され、生成された駆動信号Sdがアクチュエータプレート42に対して印加されることで、ノズルプレート41におけるノズル孔Hnから、インク9が噴射される。すなわち、超音波の音響信号Sacを用いてインクジェットヘッド4内で自動生成された駆動信号Sdを利用して、インク9の噴射動作が行われる。
【0095】
これにより本実施の形態では、前述した比較例等の場合とは異なり、以下のようになる。すなわち、駆動信号Sdにおけるパルスの設定のために、ノズル孔Hnからのインク9の噴射観測等を、事前に人手で行っておく必要がなくなる。したがって、膨大な時間や手間を必要とせずに、その時々での駆動条件に適したパルス(駆動信号Sd)が、インクジェットヘッド4内において随時自動生成されるようになる。
【0096】
以上のことから本実施の形態では、上記した比較例等と比べ、ユーザ(エンドユーザ等)における利便性を、向上させることが可能となる。また、例えば、上記したインク9の噴射観測等の際に別途必要となる、測定設備投資や固定費を、大幅に低減することも可能となる。更に、インク9についての選択の自由度を大幅に向上させることができ、ユーザにおけるプリンタ1を使用する際の自由度も、向上させることが可能となる。
【0097】
また、本実施の形態では、超音波の音響信号Sacにおける到達時間Δtに基づいて、インク9中での音速Vsが求められ、そのインク9中での音速Vsに基づいてパルスのパルス幅Wpが求められることから、以下のようになる。すなわち、駆動条件に対してより適切に設定されたパルスが生成されるようになる結果、インク9の吐出安定性を向上させることが可能となる。
【0098】
更に、本実施の形態では、超音波の音響信号Sacにおける減衰度Atが求められ、その減衰度Atに基づいてパルスの電圧値Vpが求められ、求められた電圧値Vpおよびパルス幅Wpを有するパルスを用いて、駆動信号Sdが生成される。すなわち、インク9中での音速Vsに基づいて求められたパルス幅Wpと、減衰度Atに基づいて求められた電圧値Vpとを有するパルスが、インクジェットヘッド4内で自動生成される。このようにして、上記したパルス幅Wpに加え、インク9の吐出特性に寄与する電圧値Vpもが自動調整されることから、駆動条件に対してより適したパルスが、インクジェットヘッド4内で随時自動生成されるようになる。よって、ユーザにおける利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0099】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0100】
[変形例1]
図11は、変形例1に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1aの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例1のプリンタ1aは、実施の形態のプリンタ1において、インクジェットヘッド4の代わりに以下説明するインクジェットヘッド4aを設けたものに対応している。
【0101】
なお、プリンタ1aは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インクジェットヘッド4aは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。
【0102】
この変形例1のインクジェットヘッド4aでは、図11に示したように、実施の形態のインクジェットヘッド4(図3参照)において音響測定部47の配置位置を変更し、音響測定部47の一部分が、アクチュエータプレート42内に設けられたものとなっている。具体的には、この図11の例では、音響測定部47における超音波発信器471および超音波受信器472がそれぞれ、アクチュエータプレート42内に配置されている。ちなみに、音響測定部47におけるその他の部分(例えば、所定の増幅器や、デジタル-アナログ変換回路(DAC:Digital to Analog Converter)、アナログ-デジタル変換回路(ADC:Analog to Digital Converter)など)は、アクチュエータプレート42の外部に配置されている。
【0103】
このような構成の変形例1においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0104】
また、特にこの変形例1では、音響測定部47の一部分がアクチュエータプレート42内に設けられていることから、インク9の吐出環境に近い場所において、超音波の音響信号Sacについての、インク9中での発信および受信がそれぞれ行われるようになる。その結果、実施の形態のインクジェットヘッド4と比べ、インク9に適合した駆動信号Sdが生成され易くなることから、ユーザにおける利便性を更に向上させることが可能となる。
【0105】
なお、この変形例1では、音響測定部47の一部分がアクチュエータプレート42内に設けられている場合を例に挙げて説明したが、例えば、音響測定部47の一部分ではなく全部が、アクチュエータプレート42内に設けられているようにしてもよい。また、例えば、音響測定部47における一部分または全部が、アクチュエータプレート42およびノズルプレート41の双方の内部に配置されるようにしてもよい。
【0106】
[変形例2]
図12は、変形例2に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1bの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例2のプリンタ1bは、実施の形態のプリンタ1において、インクジェットヘッド4の代わりに以下説明するインクジェットヘッド4bを設けたものに対応している。
【0107】
なお、このプリンタ1bは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0108】
この変形例2のインクジェットヘッド4bは、図12に示したように、実施の形態のインクジェットヘッド4(図3参照)において、音響測定部47および信号生成部48をそれぞれ、インクジェットヘッド4bの外部に設けるようにしたものに対応している。すなわち、これらの音響測定部47および信号生成部48はいずれも、プリンタ1b内におけるインクジェットヘッド4bの外部に配置されている。したがって、この変形例2のインクジェットヘッド4bには、ノズルプレート41、アクチュエータプレート42、温度検出部45および駆動部49のみが設けられている(図12参照)。
【0109】
このような構成の変形例2においても、プリンタ1b全体としては、これまでに説明したプリンタ1やプリンタ1aと同様の構成となっていることから、実施の形態や変形例1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0110】
また、特にこの変形例2では、音響測定部47および信号生成部48をそれぞれ、インクジェットヘッド4bの外部に設けるようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、例えば既存の構成のインクジェットヘッド4bを用いる場合であっても、プリンタ1b内に音響測定部47および信号生成部48等を配置することで、これまでに説明したような駆動信号Sdの生成処理等を実現することが可能となる。
【0111】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0112】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。具体的には、例えば、ノズルプレート41上のノズル孔Hn、もしくは、ノズルプレート41上に別途設けたダミーノズル孔を利用して、超音波発信器471および超音波受信器472による測定を行うようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、インクジェットヘッドが移動するシャトルタイプのプリンタを例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、インクジェットヘッドが固定されたシングルパスタイプのプリンタであってもよい。更に、上記実施の形態等では、インクタンクが所定の筺体内に収容されている場合を例に挙げて説明したが、この例には限られず、インクタンクが筺体の外部に配置されているようにしてもよい。加えて、音響測定部47および信号生成部48のうち、一方がプリンタ内(インクジェットヘッドの外部)に配置されると共に、他方がインクジェットヘッド内に配置されるようにしてもよい。
【0113】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレートにおける各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、サーマル式(サーマル方式オンデマンド型)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0114】
更に、上記実施の形態等では、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドにおいても、本開示を適用することが可能である。
【0115】
加えて、上記実施の形態等では、信号生成部48による駆動信号Sdの生成処理等の例を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で挙げた例には限られず、他の手法を用いて、駆動信号Sdの生成処理等を行うようにしてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、パルスにおけるパルス幅Wpおよび電圧値(波高値)Vpの双方を設定(自動調整)したうえで、駆動信号Sdを生成する場合を例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、パルスにおけるパルス幅Wpおよび電圧値Vpのうち、パルス幅Wpまたは電圧値Vpの一方のみを設定したうえで、駆動信号Sdを生成するようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、音響信号Sacとして正弦波を用いているが、この例には限られず、例えばパルス状の波形を用いて、音響信号Sacを構成するようにしてもよい。このようにした場合、インク9の吐出に使用される実際の波形形状を利用して、音響測定部47において測定を行うことが可能となる。
【0116】
また、上記実施の形態等では、各吐出チャネル内の容積を膨張させるパルス(パルスPa,Pb,Pc)が、ハイ(High)状態の期間において膨張させるパルス(ポジティブパルス)である場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、ハイ状態の期間において膨張させると共にロウ(Low)状態の期間において収縮させるパルスの場合だけでなく、逆に、ロウ状態の期間において膨張させると共にハイ状態の期間において収縮させるパルス(ネガティブパルス)としてもよい。
【0117】
更に、例えば、ON期間の直後のOFF期間中に、液滴の吐出を補助するためのパルスを、付加的に印加するようにしてもよい。この液滴の吐出を補助するためのパルスとしては、例えば、各吐出チャネル内の容積を収縮させるためのパルスや、吐出した液滴の一部を引き戻すためのパルス(補助パルス)などが挙げられる。また、後者の補助パルスの直前に印加されるパルス(メインパルス)は、例えば、オンパルスピーク(AP)の幅以下のパルス幅を有している。なお、このような液滴の吐出を補助するためのパルスを付加したとしても、これまでに説明してきた本開示の内容(駆動方法等)には、影響を及ぼさない。
【0118】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0119】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0120】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0121】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0122】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部と、
前記噴射部に対して、1または複数のパルスを有する駆動信号を印加することにより、前記ノズルから前記液体を噴射させる駆動部と、
超音波の音響信号を前記液体中へ向けて発信する発信器と、前記超音波の音響信号を前記液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、
前記駆動信号を生成する信号生成部と
を備え、
前記信号生成部は、
前記音響測定部における前記発信器および前記受信器での信号の比較に基づいて、前記パルスを設定し、
設定した前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
液体噴射ヘッド。
(2)
前記信号生成部は、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での到達時間に基づいて、前記液体中での音速を求め、
求めた前記液体中での音速に基づいて、前記パルスにおけるパルス幅を求め、
求めた前記パルス幅を有する前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
上記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記信号生成部は、
前記超音波の音響信号における前記発信器から前記受信器までの前記液体中での減衰度を求め、
求めた前記減衰度に基づいて、前記パルスにおける波高値を更に求め、
求めた前記波高値および前記パルス幅を有する前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
上記(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記音響測定部の少なくとも一部が、前記噴射部内に設けられている
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(5)
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
(6)
液体を噴射する複数のノズルを有する噴射部に対して印加される、1または複数のパルスを有する駆動信号を生成するシステムであって、
超音波の音響信号を前記液体中へ向けて発信する発信器と、前記超音波の音響信号を前記液体中から受信する受信器と、を有する音響測定部と、
前記駆動信号を生成する信号生成部と
を備え、
前記信号生成部は、
前記音響測定部における前記発信器および前記受信器での信号の比較に基づいて、前記パルスを設定し、
設定した前記パルスを用いて、前記駆動信号を生成する
駆動信号生成システム。
【符号の説明】
【0123】
1,1a,1b…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3K)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4K),4a,4b…インクジェットヘッド、41…ノズルプレート、42…アクチュエータプレート、45…温度検出部、47…音響測定部、471…超音波発信器、472…超音波受信器、48…信号生成部、481…バンドパスフィルタ、482…解析信号生成部、482a…ヒルベルト変換回路、482b…遅延回路、483…振幅信号生成部、484…カウンタ回路、485…音響信号生成部、486…減衰度演算部、487…波形設定部、49…駆動部、50…インク供給管、6…走査機構、61a,61b…ガイドレール、62…キャリッジ、63…駆動機構、631a,631b…プーリ、632…無端ベルト、633…駆動モータ、9…インク、P…記録紙、d…搬送方向、Hn…ノズル孔、Ce…吐出チャネル、Sd…駆動信号、Vd…駆動電圧、Tpzt…アクチュエータ温度、Wp…パルス幅、Vp…電圧値(波高値)、Vs…音速、Pa,Pb,Pc…パルス、Sac,Sacin,Sacout…音響信号、S0…信号、S1a,S1b…解析信号、S2…瞬時振幅信号、S3…時間差信号、Sm…測定開始信号、A1,A2…振幅、At…減衰度、L…チャネル長、t…時間、t1,t2…タイミング、Δt…到達時間、Tac…音波周期。
図1
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