(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】浄化材
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20220922BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220922BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220922BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B01J20/18 E
B01J20/20 D
C02F1/28 E
C02F1/28 D
C02F1/28 G
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2018180873
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳任
(72)【発明者】
【氏名】皆川 円
(72)【発明者】
【氏名】今西 正千代
(72)【発明者】
【氏名】南條 喜子
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0326919(US,A1)
【文献】特開昭63-166434(JP,A)
【文献】特開昭53-062798(JP,A)
【文献】特開昭62-283812(JP,A)
【文献】特開2006-212597(JP,A)
【文献】特開2005-008676(JP,A)
【文献】特開2005-008675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/34
C02F 1/28
C02F 1/42
C01B 33/20 - 39/54
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトと、シリカマグネシア又はスメクタイト系粘土とを含み、この細孔容積は水銀圧入法で測定した細孔半径110000~32Åでの細孔容積が0.7mL/g以上の範囲にあり、前記ゼオライトを20~95質量%の量で含有している粒状物から成
り、水から鉛を吸着除去することを特徴とする浄化材。
【請求項2】
前記ゼオライトと、シリカマグネシアと、スメクタイト系粘土とを下記式:
20≦Zw≦90、
5≦Sw≦55、
5≦Cw≦55
式中、Zw、Sw、Cwはそれぞれ、前記3成分の含有量の合計に対するゼオライトの割合(質量%)、シリカマグネシアの割合(質量%)、スメクタイト系粘土の割合(質量%)である、
を全て満たす範囲で含有している請求項1に記載の浄化材。
【請求項3】
前記ゼオライトがNa-X型ゼオライトである請求項1又は2に記載の浄化材。
【請求項4】
前記シリカマグネシアが、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
R=Sm/Mm
式中、Smは、SiO
2換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比Rが1.3~3.0となる範囲で含有している請求項1~3のいずれかに記載の浄化材。
【請求項5】
下記式:
Zw≦Sw+4Cw
式中、Zw、Sw、Cwはそれぞれ、前記ゼオライトと、シリカマグネシア又はスメクタイト系粘土の2乃至3成分の含有量の合計に対する、ゼオライトの割合(質量%)、シリカマグネシアの割合(質量%)、スメクタイト系粘土の割合(質量%)である、
を満たす請求項1~4に記載の浄化材。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の浄化材と活性炭とからなり、該浄化材を、活性炭100質量部当り1~30質量部の量で含有している水浄化材。
【請求項7】
請求項6に記載の水浄化材を組み込んだことを特徴とする浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化材に関するものであり、より詳細には、鉛等の重金属を水から除去することが可能な浄化材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛等の重金属吸着剤として、非晶質チタノシリケート化合物、X型ゼオライト、A型ゼオライトなどが知られている(特許文献1参照)。
このような重金属吸着剤において、非晶質チタノシリケート化合物は、かなり高価であるという問題があり、一方、ゼオライト系のものは、細孔が発達しておらず、流水から重金属を捕捉するという点では不十分である。
【0003】
また、シリカマグネシア製剤やマグネシウム表面処理シリカゲル粒子について、鉄等の重金属吸着能に優れていることが報告されている(特許文献2,3参照)。これらのシリカマグネシア製剤などの価格は、非常に安価であり、また重金属の飽和吸着量にも優れているのであるが、流水中での重金属除去性能(破過寿命)が極端に低いという欠点がある。
【0004】
本発明者等は、先に、シリカと酸化マグネシウムとが一体化したシリカマグネシア複合粒子が流水中での重金属除去性能に優れていることを見出し、特許出願したが(特願2017-066621号)、このシリカマグネシア複合粒子が示す重金属除去性能についての研究をさらに推し進めていく過程で、このシリカマグネシア或いはスメクタイト系粘土をバインダーとしてゼオライトと組み合わせ、細孔調整することにより、水中からの重金属除去性能、特に鉛除去性能に優れ、浄化材として極めて優れているという新たな知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2004/039494
【文献】特開2005-8676号
【文献】特開2015-178064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、重金属、特に鉛に対する流水中での除去性能(破過寿命)が向上している浄化材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ゼオライトと、シリカマグネシア又はスメクタイト系粘土とを含み、この細孔容積は水
銀圧入法で測定した細孔半径110000~32Åでの細孔容積が0.7mL/g以上の
範囲にあり、前記ゼオライトを20~95質量%の量で含有している粒状物から成り、水から鉛を吸着除去することを特徴とする浄化材が提供される。
【0008】
本発明の浄化材においては、
(1)前記ゼオライトと、シリカマグネシアと、スメクタイト系粘土とを下記式:
20≦Zw≦90、
5≦Sw≦55、
5≦Cw≦55
式中、Zw、Sw、Cwはそれぞれ、前記3成分の含有量の合計に対するゼオライト
の割合(質量%)、シリカマグネシアの割合(質量%)、スメクタイト系粘土の割合(質
量%)である、
を全て満たす範囲で含有していること、
(2)前記ゼオライトがNa-X型ゼオライトであること、
(3)前記シリカマグネシアが、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
R=Sm/Mm
式中、Smは、SiO2換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比Rが1.3~3.0となる範囲で含有していること、
(4)下記式:
Zw≦Sw+4Cw
式中、Zw、Sw、Cwはそれぞれ、前記ゼオライトと、シリカマグネシア又はスメクタイト系粘土の2乃至3成分の含有量の合計に対する、ゼオライトの割合(質量%)、シリカマグネシアの割合(質量%)、スメクタイト系粘土の割合(質量%)である、
を満たすこと、
(5)前記浄化材と活性炭とからなり、該浄化材を、活性炭100質量部当り1
~30質量部の量で含有している水浄化材であること、
(6)前記水浄化材を組み込んだことを特徴とする浄水器。
が好ましい。
【0009】
本発明によれば、また、上記の浄化材と活性炭とからなり、該浄化材を、活性炭100質量部当り1~30質量部の量で含有している水浄化材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浄化材は、特に鉛等の重金属に対する吸着能が高く、特に、水からの重金属の捕捉に用いる浄化材として使用される。しかも、この浄化材は、粒子強度が高く、このため、粒子の崩壊を生じ難く、流水中で安定に粒子形状が維持される。従って、流水中でも長期間にわたって吸着性能を発揮できる。例えば、上水道などに使用される水の浄化材として使用でき、さらには、他の吸着剤と組み合わせて浄水器のフィルターとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で用いた浄化材のゼオライト、シリカマグネシア及びスメクタイト系粘土の三成分組成と重金属(鉛)吸着性能との関係を表す三角図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の浄化材は、ゼオライトを主材として含むものであり、このゼオライトに加えてバインダー成分として、シリカマグネシア及び/又はスメクタイト系粘土を含んでいる。
【0013】
<ゼオライト>
本発明においては、重金属吸着能に優れている主材として、ゼオライトを用いる。本発明で用いるゼオライトは、分子の大きさを識別できる独特な三次元構造の結晶性アルミノシリケートであり、分子ふるい作用やイオン交換性を示すことから、いわゆるモレキュラーシーブと呼ばれる物質群であり、合成品又は天然品のいずれであってもよい。これらのゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトなどがあげられ、通常は結晶形、粒子径等のコントロールの点からみて合成品の方が優れている。
【0014】
かかるゼオライトは、吸着能と後述するバインダーとの一体化の観点から、平均粒子径0.1~10μmの範囲にあるものがよく、出来るだけ粒度分布のシャープなものが好ましい。
【0015】
なお、上記ゼオライト粉末においては周知のようにカチオン交換性があり、基本ゼオライトであるナトリウムアルミノシリケートのナトリウムイオンがその全部又は一部を他の金属イオンとイオン交換された置換型ゼオライトであっても勿論差支えない。置換できる陽イオンとしては、例えばH+,K+,Ca2+,Mg2+などが代表的にあげられる。
本発明においては特に、重金属吸着能の観点から、X型ゼオライトが好ましく、また、Na+を含むことが好ましく、Na-X型ゼオライトが好適に用いられる。
【0016】
本発明の浄化材において、係るゼオライトは20~95質量%含むことが重要であり、好ましくは30質量%以上、特に好ましくは45質量%以上、最も好ましくは55質量%以上であり、上限について、好ましくは80%以下である。この含有量が上記範囲よりも少ないと、重金属に対する吸着性が不満足となる。また、この含有量が上記範囲よりも多いと、粒子強度が低くなり、流水中で安定に粒子形状が維持されず、粒子崩壊に起因する性能低下、例えば、崩壊した粒子によるフィルターの目詰まり等を生じ易くなってしまう。
また、上記範囲でゼオライトを含む場合、ゼオライトと、シリカマグネシア又はスメクタイト系粘土の2乃至3成分の含有量の合計に対する、ゼオライトの割合Zw(質量%)、シリカマグネシアの割合Sw(質量%)、スメクタイト系粘土の割合Cw(質量%)とすると、各成分の関係は下記式:
20≦Zw≦95、
5≦Sw+Cw≦80
で表され、重金属に対する吸着性と粒子強度の観点から、Zwの下限について、好ましくは30≦Zw、特に好ましくは45≦Zw、最も好ましくは55≦Zwであり、また、Zwの上限について、好ましくはZw≦90、特に好ましくはZw≦80である。
【0017】
<シリカマグネシア>
本発明においては、粒子強度を確保するためのバインダーとして、シリカマグネシアを用いる。上記のシリカマグネシアは、シリカと酸化マグネシウム(マグネシア)とが一体化したものであり、シリカとマグネシアとが原子の組み換えや交換を伴う化学結合によるものではなく、それぞれの微細な粒子が物理的に分離しないレベルに緊密に接触した形態を取るものである。
【0018】
上述したシリカマグネシアは、シリカ成分とマグネシア成分とを、下記式:
R=Sm/Mm
式中、Smは、SiO2換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比Rが0.1~50となる範囲で含有しており、特に、1.3~3.0となる範囲で含有していることが好適である。
【0019】
このシリカマグネシアはそれ自体で重金属に対する吸着能を有しており、後述する焼成の過程においてその吸着能を維持しながら粒子強度を高めることができる。さらに、後述する造粒方法においてマクロポアを形成しやすいため、流水との接触効率を向上させる効果を持つ。このため、シリカマグネシアは一定量含まれていることが好ましい。従って、本発明の浄化材におけるゼオライト、シリカマグネシア、スメクタイト系粘土の含有量の合計に対するシリカマグネシアの割合Sw(質量%)は、一般に5≦Sw≦80の範囲が適用でき、下限について、好ましくは10≦Swであり、上限について、好ましくはSw≦55、特に好ましくはSw≦45である。
【0020】
尚、本発明においては、上述したシリカマグネシアの代わりにシリカと酸化マグネシウムとが反応したケイ酸マグネシウムを使用することも可能であるが、そのバインダー効果はシリカマグネシアよりもさらに低く、重金属に対する吸着性能の観点からも、シリカマグネシアを使用するほうが好ましい。
【0021】
<スメクタイト系粘土>
本発明においては、上述したシリカマグネシアに代えて、あるいはシリカマグネシアとともに、バインダーとしてスメクタイト系粘土が使用される。本発明で用いるスメクタイトは、Si-Oの四面体層状構造を有するケイ酸塩鉱物であり、各種の天然或いは合成の粘土鉱物を使用することができる。例えばモンモリロナイト(酸性白土やベントナイトなど)、バイデライト、ノントロナイトなどのジオクタヘドラル型スメクタイト;サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、フライポンタイトなどのトリオクタヘドラル型スメクタイト;及びスチブンサイト等を例示することができ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用することもできる。本発明においては特に、前述したゼオライトと堅密に一体化した粒子が形成しやすいという観点から、基本層間にナトリウム等のアルカリ原子を含むジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土が好ましい。
【0022】
上記スメクタイト系粘土は重金属吸着能を有しているが、後述する焼成の過程で変性が生じ、重金属吸着能が著しく低下する。このため、スメクタイト系粘土の含有量が過度に多いと、前述したゼオライトによる重金属に対する吸着性が損なわれてしまうおそれがある。一方、この変性により粒子強度は大きく向上するため、スメクタイト系粘土は一定量含まれていることが好ましい。従って、本発明の浄化材におけるゼオライト、シリカマグネシア、スメクタイト系粘土の含有量の合計に対するスメクタイト系粘土の割合Cw(質量%)は、一般に5≦Cw≦80の範囲が適用でき、上限について、好ましくはCw≦55、特に好ましくはCw≦30、最も好ましくはCw≦25である。
【0023】
本発明では、バインダーとしてシリカマグネシアとスメクタイト系粘土を併用することが最も好適である。従って、前記ゼオライトと、シリカマグネシアと、スメクタイト系粘土とを下記式:
20≦Zw≦90、
5≦Sw≦55、
5≦Cw≦55
式中、Zw、Sw、Cwはそれぞれ、前記3成分の含有量の合計に対するゼオライトの割合(質量%)、シリカマグネシアの割合(質量%)、スメクタイト系粘土の割合(質量%)である、
を全て満たす範囲で含有していることが好ましい。
【0024】
本発明の浄化材では、バインダー成分であるシリカマグネシア及びスメクタイト系粘土の含有量がゼオライトの含有量に対して少なすぎる場合、粒子強度が小さくなり、流水中での粒子崩壊などの問題が生じる。スメクタイト系粘土及びシリカマグネシアが持つバインダー能(粒子強度を向上させる能力)を考慮すると、前記2乃至3成分の含有割合がZw≦Sw+4Cwを満たすことが好ましい。
【0025】
図1には、ゼオライト、シリカマグネシア及びスメクタイト系粘土の三成分組成と重金属(鉛)吸着性能との関係を表す三角図が示されており、上述の範囲を満足させるようにこれら三成分が使用されることが、重金属除去能力および粒子強度の観点から最適である。
【0026】
<細孔容積>
本発明の浄化材は、ゼオライトとともにシリカマグネシアあるいはスメクタイト系粘土をバインダー成分として含んでいるが、係る浄化材は、水銀圧入法で測定した細孔半径110000~32Åの細孔(マクロポア)の容積が0.7mL/g以上、特に0.85mL/g以上の範囲にあるものでなければならない。ゼオライト自体は、このようなマクロポアの細孔容積が極めて低いが、本発明では、後述する方法により、マクロポアの容積が大きくなるように設定されているため、例えば、流水中での鉛等の重金属への高い吸着性が発現している。即ち、マクロポアの容積が大きいため、流水との接触面積が極めて大きく、その結果、ゼオライトの優れた重金属に対する吸着性能が如何なく発揮されているわけである。
【0027】
<浄化材の製造>
上述した本発明の浄化材は、各原料成分を含むスラリーを調製し、このスラリーを用いてスプレー造粒し、次いで焼成することにより製造される。
【0028】
各原料成分を含むスラリーの調製は以下のようにして行われる。
上述したシリカマグネシアは、シリカとマグネシア(酸化マグネシウム)もしくはその水和物とを、水分の存在下で均質に混合して水性スラリーを調製する。この水性スラリーは、シリカマグネシアの形成成分である。即ち、水分の存在下、例えば水中での均質混合により、原料の一方であるシリカ(二酸化ケイ素)がコロイド粒子乃至微細凝集粒子(1次乃至2次粒子)まで解れる(微細粒子化)。他方のマグネシア(酸化マグネシウム)も、水中に投入されて撹拌もしくは粉砕されると、溶解は殆ど起こらないが、マグネシア粒子表面の部分的な水和により、その結晶(もしくは新たに生成した水和物の結晶)の一部分或いは全部が崩壊もしくは剥離して、マグネシア(酸化マグネシウム)及び/又は酸化マグネシウム水和物からなる微細な粒子となって水中に分散される(微細粒子化)。従って、このような水性スラリーから水分が除去されることにより、シリカとマグネシアが緊密に一体化されたシリカマグネシアが形成される。
【0029】
上記のシリカマグネシア形成用水性スラリーに、ゼオライト及びスメクタイト系粘土を投入し、均一に混合する。ゼオライト及びスメクタイト系粘土はどのような形態で上記シリカマグネシア形成用水性スラリーに投入しても良いが、水性スラリーの状態で投入するのが均一な混合を行うという観点から好適である。
【0030】
尚、シリカマグネシアを使用しない場合には、ゼオライト及びスメクタイト系粘土をスラリー状にして互いに均一混合すればよい。
【0031】
上記のようにして調製された原料スラリーは、スプレー造粒によって粒状化される。このスプレー造粒では、まず、原料スラリーを適宜加熱された乾燥機流(例えば空気や窒素ガス)中に噴霧し、これにより水分が除去されることで前述したマクロポアが大きな粒状物が得られる。例えば、転動造粒のような手段では、得られる粒子が著しく緻密になってしまい、前述したマクロポアが大きな粒状物は得ることができない。このようなスプレー造粒により球形または楕円形の粒状物が得られ、その径(楕円形状の場合は長径)は10~500μmである。
【0032】
上記のようにして得られた粒状物を、さらに500~800℃、好ましくは550~750℃の温度で焼成する。このような温度での焼成により、前述した細孔分布を有する浄化材の粒子が得られる。
【0033】
本発明の浄化材の破過寿命は、JIS S-3201(浄水器性能試験-溶解性鉛ろ過能力試験)に準拠し、3gの該浄化材と50gの活性炭とを混合して、鉛濃度が0.05mg/Lの試料水を濾過流量3L/minにて測定した破過通水量(浄化材の鉛吸着が破過し、濾過水の鉛濃度が試料水の20%を超えるまでに要した通水量(L/g))により評価することができ、1gあたり160以上、特に580以上である。また、本発明の浄化材は、1.2MPa以上の圧縮強度を有している。
【0034】
本発明の浄化材は、鉛、マンガン、クロム、ニッケル、バナジウム、銅、鉄等の重金属、特に鉛に対しての吸着性能に優れているため、特に水浄化材として好適に使用される。
【0035】
また、本発明の浄化材は、粒子強度が高く、粒子の崩壊を生じにくいため、活性炭、及び/又は、他の吸着剤と混合して使用する場合にも、粒子崩壊による性能低下を生ぜず、安定して吸着性能が発揮される。従って、水浄化材として流水中に配置して使用する用途に好適であり、特に各種の有機物やハロゲン化物に対する吸着性に優れた活性炭およびその他の吸着剤と混合して使用することが最も好適である。
【0036】
このような活性炭と混合して水浄化材として使用する場合、一般に、活性炭100質量部あたり、1~30質量部の量で、本発明の浄化材が使用される。本発明の水浄化材又は活性炭と組み合わせての水浄化材は、浄水器、特に家庭用の浄水器のカートリッジ形式のフィルターとして好適である。
【0037】
その他の吸着剤として特に制限はないが、例えば、チタノシリケート化合物、ケイ酸マグネシウムなどの各種ケイ酸塩、セピオライト、アタパルジャイト、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの各種粘土、イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0038】
本発明の浄化材は、水以外の広く有用な液状物等から不純物としての重金属の吸着・除去による精製にも有効に使用することができる。
【0039】
また、本発明の浄化材は、飽和吸着量が高く、重金属吸着後の溶出抑制に優れている。このため、焼却灰、下水汚泥、土壌などの重金属で汚染された被処理物に対して、重金属不溶化材として本発明の浄化材を施用することも有効である。
【実施例】
【0040】
本発明の優れた効果を、次の実験例により説明する。
【0041】
(1)細孔容積
Micromeritics社製AutoPore IV 9500を用いて水銀圧入法にて測定を行った。細孔直径が110000~32Åでの細孔容積は10~3500psiaの圧入量より求めた。
【0042】
(2)圧縮強度
(株)島津製作所製微小圧縮試験機MCT-510を用いて各浄化材20点の粒子の圧縮強度を測定し、中央値を吸着剤の圧縮強度とした。
【0043】
(3)破過寿命
3gの浄化材と50gの活性炭とを混合して水浄化材を作製した。JIS S-3201(浄水器性能試験-溶解性鉛ろ過能力試験)に基づいて、鉛濃度が0.05mg/Lの試料水(硝酸鉛(II)水溶液)を調整し、流量3L/min(空塔速度1000h-1線速度LV=2.5cm/s)で上記水浄化材に通水した。浄化材の鉛吸着が破過し、濾過水の鉛濃度が試料水の20%を超えるまでに要した通水量(L/g)を破過寿命とした。
【0044】
(4)平均粒子径
Malvern社製レーザ回折散乱式粒度分布測定機マスターサイザー3000を用いて、平均粒子径を測定した。
【0045】
(実施例1)
シリカ原料として市販の二酸化ケイ素(水澤化学工業(株)製)、マグネシア原料として市販の酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製スターマグU)を用い、前記請求項4で定義した重量比(R)がR=2.0となるよう原料を量り取り、固形分濃度10%となるよう水に加え分散した。攪拌下、加熱により95℃まで昇温し、10時間かけて均質混合及び熟成を行った後室温まで放冷し、シリカマグネシアスラリーを得た。
Na-X型ゼオライト粉末(水澤化学工業(株)製、SiO2/Al2O3=2.6)を固形分濃度10%となるよう水に加え分散した。このスラリーをボールミルで平均粒子径0.9μmとなるまで粉砕し、ゼオライトスラリーを得た。
Na型ベントナイト(水澤化学工業(株)製ベンクレイMK-101)を固形分濃度10%となるよう水に少しずつ加え、ベントナイトスラリーを得た。
上記シリカマグネシアスラリー、ゼオライトスラリー、ベントナイトスラリーを、固形物換算でゼオライト重量:シリカマグネシア重量:ベントナイト重量=70:15:15となるよう混合し、大河原化工機(株)製スプレードライヤFOC-20を用いてスプレー造粒した後750℃で2時間焼成し、得られた造粒物を浄化材として評価した。
【0046】
(実施例2~7)
ゼオライト、シリカマグネシア、ベントナイト重量比と焼成温度を変化させた以外は、実施例1と同様にして造粒物を調製し、浄化材として評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
Ca-X型ゼオライト粉末(水澤化学工業(株)製、SiO2/Al2O3=2.6)とセピオライト(水澤化学工業(株)製エードプラスFF)を、ゼオライト:セピオライト=70:30(質量割合)となるよう混合し、水を噴霧しながら転動造粒機を用いて直径1mm程度の造粒物を得た。得られた造粒物を110℃で8時間乾燥した後、550℃で2時間焼成した。焼成品をサンプルミル(ハンマーミル型粉砕機)で粉砕した後、篩による分級を行い、75~250μmの粒子径のものを浄化材として評価した。その結果を表1に示す。
【0048】