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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ペット用温度調節装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
A01K1/015 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018215715
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020080665
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(72)【発明者】
【氏名】野地 克哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文章
(72)【発明者】
【氏名】宮田 昭雄
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-175582(JP,A)
【文献】特開2017-000031(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0083170(KR,A)
【文献】実開昭60-059388(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00- 3/00
A01K 29/00
A01K 31/00-31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却機構又は加熱機構の少なくとも一方を有する温度調節部と、
前記温度調節部に通電することで温度変化する一の領域と、前記通電による温度変化が前記一の領域よりも小さい他の領域とを含むシート部と、
前記シート部における前記一の領域側に配置された、上方に隆起する壁部と
前記シート部の前記一の領域及び前記他の領域において対象物の存否をそれぞれ検出するためのセンサ部と、
前記各領域における前記対象物の存否結果に基づいて前記温度調節部を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記センサ部が前記他の領域における前記対象物の存在を検出した場合に、前記温度調節部への通電率を変更することを特徴とするペット用温度調節装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサ部が前記一の領域及び前記他の領域のそれぞれにおいて前記対象物の存在を検出した場合に、前記温度調節部への通電率を高めることを特徴とする、請求項1に記載のペット用温度調節装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサ部が前記一の領域において前記対象物の存在を検出せず、前記他の領域における前記対象物の存在を検出した場合に、前記温度調節部への通電率を低めることを特徴とする、請求項に記載のペット用温度調節装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記各領域の温度をそれぞれ検知する複数の温度センサから構成され、
前記制御部は、前記各領域ごとに、前記温度センサによる検知温度と、前記対象物がいない状態での前記温度センサが配置された箇所の予測温度と、の温度差に基づいて前記対象物の存否を検出する請求項1から請求項3の何れか一項に記載のペット用温度調節装置。
【請求項5】
外気温を検知する外気温センサを備え、
前記制御部は、前記外気温センサ及び前記温度調節部の通電率から前記予測温度を取得する請求項4に記載のペット用温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペット用温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱冷却プレートと、加熱冷却プレートの温度を調節する電子冷却部材と、大気温度センサと、を有し、大気温度センサで検知された温度に基づいて、電子冷却部材への電気的正負や電力量を切り替えて温度を調節する動物用冷房装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-201388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、所定の温度となるように温度制御をしているため、例えば、対象物(ペット)の種別、個体差や対象物の体調変化等によって快適と感じる温度が異なる場合、対象物の望む温度帯に温度調節することができない場合があった。
【0005】
上記の問題点に鑑み、本発明は、一例として、対象物が快適と感じる温度に自動調節することができるペット用温度調節装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るペット用温度調節装置は、冷却機構又は加熱機構の少なくとも一方を有する温度調節部と、前記温度調節部に通電することにより温度勾配が形成されるシート部と、前記シート部の複数の領域において対象物の存否をそれぞれ検出するためのセンサ部と、前記各領域における前記対象物の存否結果に基づいて前記温度調節部を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1に係るペット用温度調節装置の斜視図である。
図2図1に示したペット用温度調節装置の側面図である。
図3図1に示したペット用温度調節装置のIII-III線矢視断面図である。
図4図2に示したペット用温度調節装置のIV-IV線矢視断面図である。
図5図1に示したペット用温度調節装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図1に示したペット用温度調節装置の制御部の各機能を概念的に示したブロック図である。
図7図1に示したペット用温度調節装置の記憶部に格納される参照テーブルを示す表である。
図8】ペットの体勢と、ペットの温度感覚と、温度制御との関係性について表した図表である。
図9図1に示したペット用温度調節装置の自動温度制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付することにより重複する説明は省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する場合がある。さらに、かかる実施の形態に示す構成要素の形態はあくまでも例示であって、これらの形態に限定されるものではない。
【0009】
以下、本発明の実施の形態1に係るペット用温度調節装置100について説明する。図1は、本実施の形態1に係るペット用温度調節装置100の斜視図である。図2は、図1におけるペット用温度調節装置100の側面図である。図3は、図1におけるペット用温度調節装置100のIII-III線矢視断面図である。図4は、図2におけるペット用温度調節装置100のIV-IV線矢視断面図である。
【0010】
ペット用温度調節装置100は、土台101と、熱伝導体102と、筐体103と、を備える。
【0011】
土台101は、床面等に配置され、熱伝導体102、筐体103を支持している。
【0012】
熱伝導体102は、一枚のプレートを中途部において屈曲することで形成される略L字状の板状部材である。熱伝導体102は、床面と平行に配置され、猫や犬等の対象物(以下、ペットとも称する)が乗って寝たり休憩したりするシート状のシート部102aと、シート部102aの一端部から略垂直に立ち上がるように形成される立ち上がり部102bと、を備える。シート部102aは、筐体103から側方に延出するように設けられ、筐体103から露出している。シート部102aの一端側と、立ち上がり部102bとは、筐体103内に収容される。熱伝導体102において、ペットが寝たり休憩したりする面を表面と称し、その反対側の面を裏面と称する。
【0013】
筐体103は、丸みを帯びた略直方体状であり、土台101及び熱伝導体102を部分的に覆うように設けられる。筐体103の一側面(シート部102aの延出側の面)は、壁部103aとして形成される。壁部103aは、滑らかな曲面から構成され、シート部102aの一端側から上方へ隆起するように形成される。壁部103aは、ペットが寄りかかるための背もたれとしても機能する。また、筐体103は、後述の冷却機構を覆うように設けられる。
【0014】
ペット用温度調節装置100は、温度調節部として冷却機構又は加熱機構の少なくとも一方を有する。本実施の形態では、冷却機構と加熱機構とは個別に設けられる。温度調節部(冷却機構又は加熱機構)に通電することにより、熱伝導体102を冷却又は加熱している。熱伝導体102は、温度調節部からの熱を伝達するために、例えば、アルミニウム、銅、スチール、ステンレス等の熱伝導性の材質からなる板状部材によって成形されたものが好ましい。さらに、熱伝導体102は、熱伝導性、加工性、コスト等を考慮して、アルミニウム板からなるアルミプレートから成形されたものがより好ましい。
【0015】
ペット用温度調節装置100では、冷却機構として、ペルチェ素子111と、放熱手段として設けられるヒートシンク112と、ファン113と、を備える。冷却機構は、立ち上がり部102bの裏側に設けられ、筐体103に収容される。
【0016】
ペルチェ素子111は、熱伝導体102を少なくとも冷却するための熱電変換素子であり、立ち上がり部102bの裏面側に接触するように取付けられる。ペルチェ素子111は、通電することにより、例えば、熱伝導体102と、ヒートシンク112との間に温度差を与えて熱伝導体102を冷却する。これにより、シート部102aの一端側(立ち上がり部102b側)から他端側(立ち上がり部102bと反対側)に向かって温度が高くなるように温度勾配が形成される。
【0017】
冷却機構(ペルチェ素子111)は、シート部102aの一端側に設けられているが、これに限定されない。シート部102aにおいて温度勾配が形成されればよく、例えば、シート部102aの他端に設けられてもよい。
【0018】
ヒートシンク112は、ペルチェ素子111において発生した熱を放熱する放熱体であり、ペルチェ素子111と接触するように設置されている。ヒートシンク112は、矩形状の板状部112aと、板状部112aから垂直に延び、板状部112aの長辺と略平行に整列された複数のフィン112bと、を有する。ファン113は、ヒートシンク112のフィン112bと対向するように設置されており、ヒートシンク112に送風して、空冷するようになっている。なお、本実施の形態において、フィン112bは、板状部112aの長辺と略平行に整列するように構成されているが、これに限定されない。例えば、フィン112bは、板状部112aの短辺と略平行に整列するように構成してもよい。
【0019】
熱伝導体102の立ち上がり部102bの形状は、例えば、ペルチェ素子111及びヒートシンク112等の大きさに合わせることが好ましい。また、本実施の形態において、ペルチェ素子111を熱伝導体102の冷却機構として用いているが、これに限定されない。例えば、電流の向き及び強度を変えることにより、熱伝導体102を加熱する加熱機構として用いてもよい。
【0020】
加熱機構は、ヒータ120から構成される。ヒータ120は、一例として、シート状のアルミヒータから構成され、シート部102aの裏面に設けられる。ヒータ120は、シート部102aの一端側(立ち上がり部102b側)に設けられており、通電することにより熱伝導体102を加熱する。これにより、シート部102aの一端側(立ち上がり部102b側)から他端側(立ち上がり部102bと反対側)に向かって温度が低くなるように温度勾配が形成される。
【0021】
なお、ヒータ120は、シート部102aの一端側に設けられているが、これに限定されない。ヒータ120に通電することにより、シート部102aに温度勾配が形成されればよく、ヒータ120をシート部102aの他端側に設けてもよい。また、ヒータ120をシート部102aの全体にかけて配置し、ヒータ120を構成する電熱線の密度等を変更することにより、シート部102aに温度勾配を形成してもよい。また、ヒータ120をシート部102aの全体にかけて配置し、ペルチェ素子111を熱伝導体102の加熱機構として用いることにより、シート部102aに温度勾配を形成してもよい。
【0022】
シート部102a及び土台101の間には、土台101側から順に断熱部材121、ヒータ120、絶縁シート122が積層され、土台101に支持されている。断熱部材121は、シート部102aから床面側への熱の放散を抑制するものであり、例えば、発泡スチロール等で形成されている。絶縁シート122は、シート部102a及びヒータ120を絶縁するものであり、絶縁性を有する樹脂等で形成されている。これにより、シート部102aを加熱することができる。
【0023】
シート部102aには、複数の領域において対象物(ペット)の存否をそれぞれ検出するためのセンサ部が設けられる。シート部102aには、温度調節部に通電することにより、温度勾配が形成される。複数の領域は、温度調節部の通電によるシート部102a内での温度変化の大きさに基づいて区分けされる。複数の領域は、温度調節部の通電による温度変化が大きい一の領域と、温度調節部の通電による温度変化が小さい他の領域と、を少なくとも含んで構成される。つまり、複数の領域は、シート部102aにおいて、温度調節部の通電による温度変化の異なる2地点がそれぞれ含まれるように構成される。本実施の形態では、複数の領域は、シート部102aの一端側の領域(温度調節部近傍の領域)と、シート部102aの他端側の領域(温度調節部から離れた領域)と、から構成される。
【0024】
センサ部は、一例として、各領域の温度をそれぞれ検知する複数の温度センサ(本実施の形態では、温度センサ114及び温度センサ115)から構成される。ペット用温度調節装置100では、各領域ごとに、温度センサによる検知温度(後述のシート温度)と、対象物(ペット)がいない状態での温度センサが配置された箇所の予測温度と、の温度差に基づいて対象物の存否を検出している。
【0025】
具体的には、温度センサ114は、シート部102aの一端側の領域内の所定位置の温度(シート温度Th1)を検知している。シート温度Th1は、以下において検知温度Th1とも称する。ペット用温度調節装置100では、温度センサ114による検知温度Th1と、温度センサ114が配置された箇所(一端側の領域内の所定位置)の予測温度Th1´と、の温度差に基づいて対象物の存否を検出している。
【0026】
同様に、温度センサ115は、シート部102aの他端側の領域内の所定位置の温度(シート温度Th2)を検知している。シート温度Th2は、以下において検知温度Th2とも称する。ペット用温度調節装置100では、温度センサ115による検知温度Th2と、温度センサ115が配置された箇所(他端側の領域内の所定位置)の予測温度Th2´と、の温度差に基づいて対象物の存否を検出している。
【0027】
図4に示すように、筐体103の他側面(ファン113の吸気側と対向する面)からヒートシンク112にかけて形成される内部空間には、二つのダクト形成部材201が配置されることで吸気路202及び排気路203が形成される。筐体103の他側面は、外部との間で空気を流通させる開口部が形成される。開口部のうち、吸気路202に対応する部分(中央部)は、吸気口202aとして機能する。開口部のうち、排気路203に対応する部分(両端部)は、排気口203aとして機能する。以上の構成において、ペット用温度調節装置100は、吸気口202aから吸気路202を介して空気を取り込み、排気路203を介して排気口203aから空気を排出する。
【0028】
吸気口202aの近傍には、温度センサ204が設けられる。温度センサ204は、吸気口202aの近傍に設けられることで、外気温Th3を検知する外気温センサとして機能する。温度センサ204は、吸気口202a近傍に設けられているが、外気温Th3を検知できればよく、これに限定されない。
【0029】
筐体103の内部空間には、電子制御ボックス205が設けられる。電子制御ボックス205は、電源基板、制御基板等のペット用温度調節装置100の動作を制御するための電子制御機器を収納している。電子制御ボックス205は、吸気路202及び排気路203から隔離された筐体103内の空間に設置されている。これにより、電子制御ボックス205は、ヒートシンク112から放散された熱に晒されることがなくなり、電子制御機器の損傷を防止することができる。
【0030】
ペット用温度調節装置100では、ユーザが操作具(図示せず)を操作することにより、ペルチェ素子111に通電してシート部102aを冷却する冷房モード(冷却運転)と、ヒータ120に通電してシート部102aを加熱する暖房モード(暖房運転)とが切り換えられるようになっている。
【0031】
図5から図9を用いて、ペット用温度調節装置100の自動温度制御について説明する。図5は、ペット用温度調節装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図5に示すように、ペット用温度調節装置100は、制御部300と、計時部301と、記憶部302と、ペルチェ素子111と、ヒータ120と、温度センサ114と、温度センサ115と、温度センサ204と、を備える。
【0032】
制御部300は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等のメモリによって構成される。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読みだして実行することにより、ペット用温度調節装置100の各部の動作を制御する。計時部301は、時間を計測する。記憶部302は、制御部300により実行されるプログラムおよび制御部300にて使用する各種パラメータやテーブル等を記憶する。制御部300は、計時部301や記憶部302とともに電子制御ボックス205内の制御基板に設けられており、ペルチェ素子111、ヒータ120、温度センサ114、温度センサ115、温度センサ204等のそれぞれに接続され、各部を制御することで、シート部102aをペットにとって快適な温度帯(以下、快適温度帯とも称する)に調節することを可能としている。
【0033】
図6は、ペット用温度調節装置100による、自動温度制御を実現するための制御部300の各機能を、概念的に示したブロック図である。図6に示すように、制御部300は、通電率取得部310、外気温検知部320、シート温度予測部330、シート温度検知部340、算出部350、判定部360及び動作制御部370を含む。ペット用温度調節装置100では、冷房モード又は暖房モードが開始されると、所定時間経過後に、以下の処理を実施する。所定時間とは、所定の通電率E1で通電した際の予測温度に到達するまでの時間を指し、例えば、10分に設定される。
【0034】
通電率取得部310は、記憶部302に記憶される現在の通電率E1を取得する。
【0035】
外気温検知部320は、温度センサ204が検知した外気温Th3を取得する。
【0036】
シート温度予測部330は、外気温Th3及び通電率E1から予測温度Th1´及び予測温度Th2´をそれぞれ取得する。予測温度Th1´とは、温度センサ114が配置され箇所において、通電率E1にて通電することにより到達する温度を指す。同様に、予測温度Th2´とは、温度センサ115が配置された箇所において、通電率E1にて通電することにより到達する温度を指す。
【0037】
シート温度予測部330は、通電率E1及び外気温Th3を、図7に示す参照テーブルに照合して、予測温度Th1´及び予測温度Th2´をそれぞれ取得する。図7に示す参照テーブルは、シート温度Th1及び予測温度Th1´及び外気温Th3の対応関係と、シート温度Th2及び予測温度Th2´及び外気温Th3の対応関係と、をそれぞれ示すテーブルである。図7に示す参照テーブルは、実験等により予め設定される値であり、記憶部302に記憶される。
【0038】
図7(a)に示す参照テーブルは、冷房モードでの各温度の対応関係を示しており、例えば、外気温Th3が25℃で、通電率E1が50%の場合、予測温度Th1´は19℃となり、予測温度Th2´は21℃となる。図7(b)に示す参照テーブルは、暖房モードでの各温度の対応関係を示しており、例えば、外気温Th3が10℃で、通電率E1が50%の場合、予測温度Th1´は24℃となり、予測温度Th2´は20℃となる。
【0039】
シート温度検知部340は、温度センサ114が検知したシート温度Th1(検知温度Th1)と、温度センサ115が検知したシート温度Th2(検知温度Th2)と、を取得する。
【0040】
算出部350は、検知温度と予測温度との温度差を算出する。具体的には、検知温度Th1から予測温度Th1´を差し引くことで、温度差ΔTh1を算出している。同様に、検知温度Th2から予測温度Th2´を差し引くことで、温度差ΔTh2を算出している。
【0041】
判定部360は、温度差ΔTh1が所定の閾値T1よりも大きいか否かを判定する。また、判定部360は、温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいか否かを判定する。所定の閾値T1とは、実験等により予め設定される値であり、例えば、シート部102aに乗ったペットの体温によって少なくとも上昇する温度(例えば、2℃)に設定される。所定の閾値T1は、運転モード(冷房モード又は暖房モード)や外気温Th3に関わらず、同一の値に設定されているが、これに限定されず、運転モードや外気温Th3毎に閾値を設定してもよい。
【0042】
判定部360において、温度差ΔTh1が所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合、シート部102aの一端側の領域にペットが存在しているものとする。判定部360において、温度差ΔTh1が所定の閾値T1以下であると判定された場合、シート部102aの一端側の領域にペットが存在していないものとする。
【0043】
同様に、判定部360において、温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合、シート部102aの他端側の領域にペットが存在しているものとする。判定部360において、温度差ΔTh2が所定の閾値T1以下であると判定された場合、シート部102aの他端側の領域にペットが存在してないものとする。これにより、判定部360は、シート部102aの複数の領域においてペットの存否を検出している。
【0044】
図8は、ペットの体勢と、ペットの温度感覚と、温度制御との関係性について表した図表である。図8(a)に示すように、シート部102aの温度がペットにとって快適な温度帯に未だ到達していない場合、ペットはシート部102aに全身を出来るだけ密着させてシート部102aからの熱(又は冷熱)を受け取ろうとする。ゆえに、ペットはシート部102aの全体にわたって存在することになる。すなわち、温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きい場合、シート部102aが快適温度帯に到達していないものとしている。快適温度帯に到達していない状態とは、冷房モードの場合であればペットが暑いと感じている状態であり、暖房モードの場合であればペットが寒いと感じている状態を指す。
【0045】
判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合、動作制御部370は、通電率E1を所定の通電率だけ高くする。所定の通電率とは、予め設定された値であり、例えば、10%を指す。これにより、シート部102aの温度を快適温度帯に近づけることができるため、ペットにとってより快適な温度環境を提供することができる。
【0046】
図8(b)に示すように、シート部102aの温度が快適温度帯に属している場合、ペットは、温度調節部の通電による温度変化が大きい側を中心にリラックスした体勢をとるため、シート部102aの一端側を中心にペットが存在することとなる。すなわち、温度差ΔTh1のみが所定の閾値T1よりも大きい場合、シート部102aの温度が快適温度帯に属しているものとしている。快適温度帯に属している状態とは、ペットが快適に感じている状態を指す。また、温度調節部の通電による温度変化が大きい側に壁部103aが形成されることで、ペットが隅部(壁部103a)を好む習性を有する場合、シート部102aの一端側を中心にペットが寄り付くように誘導できる。
【0047】
判定部360において温度差ΔTh1のみが所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合、動作制御部370は、通電率E1を維持する。これにより、ペットにとって快適な温度環境を維持することができる。なお、本実施の形態では、判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1以下と判定された場合も同様に、動作制御部370は、通電率E1を維持している。なお、判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1以下であると判定された場合とは、ペットがシート部102aにいない状態を指す。
【0048】
図8(c)に示すように、シート部102aの温度が快適温度帯を通り越している場合、ペットは温度調節部の通電による温度変化が大きい側を敬遠して、温度調節部の通電による温度変化が小さい側へ移動するため、シート部102aの他端側を中心にペットが存在することとなる。すなわち、温度差ΔTh2のみが所定の閾値T1よりも大きい場合、シート部102aの温度が快適温度帯を通り越しているものとしている。快適温度帯を通り越している状態とは、冷房モードの場合であればペットが少し寒いと感じている状態であり、暖房モードの場合であればペットが少し暑いと感じている状態を指す。
【0049】
判定部360において温度差ΔTh2のみが所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合、動作制御部370は、通電率E1を所定の通電率だけ低くする。所定の通電率とは、予め設定された値であり、例えば、10%を指す。これにより、シート部102aの温度を快適温度帯に近づけることができるため、ペットにとってより快適な温度環境を提供することができる。
【0050】
図9は、ペット用温度調節装置100による自動温度制御を示すフローチャートである。図9の処理は、一例として、ユーザが操作具を操作することで、冷房モード又は暖房モードが開始されており、運転開始時における通電率E1は実験等により予め設定された初期通電率(例えば、50%)に設定されている。初期通電率は、記憶部302に記憶されている。自動温度制御では、運転開始後、所定時間経過してから、ステップS101に進む。所定時間とは、通電率E1で通電した際の予測温度に到達するまでの時間を指す。
【0051】
通電率取得部310は、記憶部302に記憶される運転中の通電率E1を取得する(ステップS101)。運転開始時点では、記憶部302に記憶される初期通電率を取得する。外気温検知部320は、温度センサ204の検知信号を受けて現在の外気温Th3を検知する(ステップS102)。次に、シート温度予測部330は、通電率E1及び外気温Th3から予測温度Th1´及び予測温度Th2´をそれぞれ取得する(ステップS103)。次に、シート温度検知部340は、温度センサ114及び温度センサ115の検知信号をそれぞれ受けてシート温度Th1及びシート温度Th2を検知する(ステップS104)。そして、算出部350は、シート温度Th1から予測温度Th1´を差し引くことで、温度差ΔTh1を算出し、シート温度Th2から予測温度Th2´を差し引くことで、温度差ΔTh2を算出する(ステップS105)。
【0052】
判定部360は、温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2がそれぞれ所定の閾値T1よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合(ステップS106において、YESである場合)、動作制御部370は、通電率E1を所定の通電率だけ高くする(ステップS107)。
【0053】
ステップS107において、通電率E1が変更されると、所定時間経過後に、ステップS101に戻り、自動温度制御を再度繰り返す。所定時間とは、変更後の通電率E1で予測温度Th1´(予測温度Th2´)に到達するまでの時間(例えば、10分)に、ペットが体勢を変更した場合の温度変化がシート部102aに反映されるまでの時間(例えば、5分)を加えた時間を指す。ステップS107において、変更後の通電率E1を変更日時と紐づけて記憶部302に記憶する。
【0054】
判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2がともに所定の閾値T1以上であると判定されない場合(ステップS106において、NOである場合)、判定部360は温度差ΔTh1が所定の閾値T1以下であり、かつ、温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいか否かを判定する(ステップS108)。判定部360において温度差ΔTh1が所定の閾値T1以下であり、かつ、温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きいと判定された場合(ステップS108において、YESである場合)、動作制御部370は、通電率E1を所定の通電率だけ低くする(ステップS109)。
【0055】
ステップS109において、通電率E1が変更されると、所定時間経過後に、ステップS101に戻り、自動温度制御を再度繰り返す。所定時間とは、変更後の通電率E1で予測温度Th1´(予測温度Th2´)に到達するまでの時間(例えば、10分)に、ペットが体勢を変更した場合の温度変化がシート部102aに反映されるまでの時間(例えば、5分)を加えた時間を指す。ステップS109において、変更後の通電率E1を変更日時と紐づけて記憶部302に記憶する。
【0056】
判定部360において、温度差ΔTh1が所定の閾値T1以下であり、かつ、温度差ΔTh2が所定の閾値T1よりも大きい、とは判定されない場合(ステップS108において、NOである場合)、動作制御部370は、通電率E1を維持する(ステップS110)。
【0057】
ステップS110において、通電率E1が維持されると、所定時間経過後に、ステップS101に戻り、自動温度制御を再度繰り返す。所定時間とは、ペットが体勢を変更した場合の温度変化がシート部102aに反映されるまでの時間(例えば、5分)を指す。ステップS110において、通電率E1を維持した日時と紐づけて記憶部302に記憶する。
【0058】
このように、制御部300は、各領域における対象物(ペット)の存否結果に基づいて温度調節部を制御している。本実施の形態では、センサ部は、シート部102aの各領域の温度をそれぞれ検知する複数の温度センサから構成される。制御部300は、各領域ごとに、温度センサによる検知温度と、対象物(ペット)がいない状態での温度センサが配置された箇所の予測温度と、の温度差に基づいて対象物(ペット)の存否を検出している。具体的には、検知温度及び予測温度の温度差が所定の閾値内にあるか否かを判定することで、対象物(ペット)の存否を検出している。そして、各領域における対象物(ペット)の存否結果(判定結果)に基づいてペットの姿勢を判定して温度調節部を制御している。これにより、外部環境(温湿度等)の変化、対象物(ペット)の個体差や種別、対象物(ペット)の体調変化等によって対象物(ペット)が快適と感じる温度が変化したとしても、シート部102aの温度を対象物(ペット)にとって快適な温度に調節することができる。また、センサ部は、温度センサから構成されているが、これに限定されない。センサ部は、対象物(ペット)の存否を検出できればよく、例えば、重量センサ、測距センサ、フォトセンサ、圧力センサ等のうち、少なくとも一つのセンサから構成してもよい。
【0059】
また、シート部102aを複数の領域に区切って、それぞれの領域において対象物(ペット)の存否を検出可能とすることで、シート部102a上での対象物(ペット)の体勢を判別することができる。これにより、ペットの体勢に基づいて温度調節を行うことができる。また、シート部102aを複数の領域に区切る際に、温度調節部の通電による温度変化が比較的大きい領域(本実施の形態ではシート部102aの一端側の領域)と、同じ通電であっても温度変化が比較的小さい領域(本実施の形態ではシート部102aの他端側の領域)とに区切るように構成することで、冷房モードと暖房モードのいずれで運転した場合であっても同一の制御とすることができる。また、温度調節部としての冷却機構又は加熱機構を一端側に集約して配置することが可能となり、簡易な構造とすることができるため、製造コストの低減および長期信頼性の向上を図ることができる。さらに、冷房モードと暖房モードとにかかわらず、ペットが快適と感じる姿勢が同じとなるように制御することができるため、ペットが本装置において居心地がよくなる姿勢移動が通年で同じとなり、ペットのストレスを解消できる。
【0060】
また、動作制御部370は、判定部360において温度差ΔTh1が所定の閾値T1よりも大きく、かつ、温度差ΔTh2が所定の閾値T1未満であると判定された場合にのみ通電率E1を維持するように構成してもよい。この場合、判定部360において温度差ΔTh1及び温度差ΔTh2が所定の閾値T1未満であると判定されたときには、通電率E1を所定の通電率(例えば、30%)まで低くした省エネモードでの運転とする。これにより、ペットがシート部102aにいないと判断した場合に省エネモードとすることで、消費電力を抑えることができる。
【0061】
省エネモードでの運転時において、所定時間経過毎に、判定部360においてペットの存否を判定し、ペットが存在していると判定された場合に、通電率E1を、所定の通電率(例えば、初期通電率)又は省エネモードに切り換る直前の通電率に変更して、図9に示す自動温度制御を繰り返し実施するように構成してもよい。
【0062】
また、初期通電率は、実験等により予め設定された値としているが、これに限定されない。運転中において記憶部302に蓄積される通電率(判定部360の判定結果を加味した通電率)から快適温度帯になる最適な通電率を自動学習により抽出し、抽出した通電率を初期通電率として次回運転時に用いてもよい。例えば、通電率E1が維持される度に記憶部302に外気温Th3および通電率E1を記憶して、記憶部302に蓄積された通電率の中から、現在の外気温において維持され続けた時間が最も長い通電率を抽出し、その通電率を初期通電率として更新してもよい。また、記憶部302に蓄積される通電率の中から、現在の外気温において最頻値である通電率を抽出し、その通電率を初期通電率として更新してもよい。これにより、初期通電率を快適温度帯になる最適な通電率に更新することができ、次回運転時に温度調節をスムーズに行うことができる。
【0063】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達することができる構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 ペット用温度調節装置、102a シート部、103a 壁部、111 ペルチェ素子、114 温度センサ、115 温度センサ、120 ヒータ、204 温度センサ、300 制御部、310 通電率取得部、320 外気温検知部、330 シート温度予測部、340 シート温度検知部、350 算出部、360 判定部、370 動作制御部、E1 通電率、T1 閾値、Th1 シート温度(検知温度)、Th1´ 予測温度、Th2 シート温度(検知温度)、Th2´ 予測温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9