(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】回転機器の静止体寸法測定用治具および回転機器の静止体寸法測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 3/18 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
G01B3/18 101
(21)【出願番号】P 2018237673
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】桑原 遼
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】野村 篤嗣
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-116801(JP,U)
【文献】特開2015-083834(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205138(JP,U)
【文献】特開2000-009402(JP,A)
【文献】米国特許第09182209(US,B1)
【文献】特開2017-044575(JP,A)
【文献】実開昭56-142405(JP,U)
【文献】特開2004-069510(JP,A)
【文献】中国実用新案第206496699(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、前記回転体の周囲に設けられ、内面に設けられたシールフィンを有する静止体と、を備えた回転機器の前記シールフィンの内側寸法を測定するためにインサイドマイクロメータの測定子に取り付けられる回転機器の静止体寸法測定用治具であって、
前記シールフィンの先端と当接する当接部と、第1方向において前記当接部の両側に設けられ、前記シールフィンに対する前記第1方向への移動を規制する一対の規制部と、を有する測定部と、
前記測定部を前記インサイドマイクロメータの前記測定子に着脱可能に固定する固定部と、を備える、回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項2】
前記固定部は、前記インサイドマイクロメータの前記測定子に設けられた雄ねじ部と螺合する第1の雌ねじ部を有する、請求項1に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項3】
前記測定部は、雄ねじ部を有し、
前記固定部は、前記測定部の前記雄ねじ部と螺合した第2の雌ねじ部を有する、請求項2に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項4】
前記第1の雌ねじ部および前記第2の雌ねじ部は、連続して形成されている、請求項3に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項5】
前記固定部は、外面から前記第2の雌ねじ部に延びるねじ孔と、前記ねじ孔に螺合し、前記測定部の前記雄ねじ部を押圧するロックボルトと、を含む、請求項3または4に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項6】
前記固定部は、前記測定部の前記雄ねじ部と螺合し、前記固定部に締め付けられたロックナットを含む、請求項3または4に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項7】
前記測定部および前記固定部は、一体に形成されている、請求項1または2に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項8】
前記測定部は、前記当接部よりも前記固定部の側に設けられた胴体部を更に有し、
前記当接部は、前記胴体部の側に設けられた根元部と、前記根元部よりも前記固定部の側とは反対側に設けられた、前記シールフィンの先端と当接する平坦な当接面と、を含み、
前記第1方向で見たときの前記当接面に沿う第2方向において、前記当接面の長さが、前記根元部の長さよりも短い、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項9】
前記当接部は、前記シールフィンに向かって先細状に形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の回転機器の静止体寸法測定用治具。
【請求項10】
回転体と、前記回転体の周囲に設けられ、内面に設けられたシールフィンを有する静止体と、を備えた回転機器の前記シールフィンの内側寸法を測定する回転機器の静止体寸法測定方法であって、
インサイドマイクロメータと、前記インサイドマイクロメータの一端に設けられた測定部であって、前記シールフィンの先端と当接する平坦な当接面を含む当接部と、第1方向において前記当接部の両側に設けられ、前記シールフィンに対する前記第1方向への移動を規制する一対の規制部と、を有する測定部と、を備えた測定装置を準備する準備工程と、
前記測定装置により前記シールフィンの内側寸法を測定する測定工程と、
前記第1方向で見たときの前記当接面の中点と前記シールフィンの先端との間の間隙寸法であって、前記当接面に沿う第2方向に直交する第3方向における前記間隙寸法を算出する算出工程と、
前記測定工程で測定された前記内側寸法の測定値に、前記間隙寸法を加算して、前記測定値を補正する補正工程と、を備える、回転機器の静止体寸法測定方法。
【請求項11】
前記準備工程は、前記測定部を前記インサイドマイクロメータの前記一端に設けられた測定子に取り付ける取付工程を有し、
前記取付工程において、前記測定部が前記インサイドマイクロメータの前記測定子に着脱可能に固定される、請求項10に記載の回転機器の静止体寸法測定方法。
【請求項12】
前記測定部は、前記当接部よりも前記インサイドマイクロメータの側に設けられた胴体部を更に有し、
前記当接部は、前記当接面よりも前記胴体部の側に設けられた根元部を更に含み、
前記第2方向において、前記当接面の長さが、前記根元部の長さよりも短い、請求項11に記載の回転機器の静止体寸法測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、回転機器の静止体寸法測定用治具および回転機器の静止体寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンもしくはガスタービンなどの軸流タービンまたはコンプレッサなどの回転機器(ターボ機械)は、ロータと、そのロータの周囲に設けられたケーシングと、を備えている。ロータの外周面には動翼が設けられており、ロータと共に回転体を構成している。ケーシングの内周面には静翼が設けられており、ケーシングと共に静止体を構成している。
【0003】
静止体と回転体との間には、半径方向に間隙が設けられている。この間隙には、シール装置が設けられている。シール装置は、静止体の内面に設けられた、回転体の外周面に向かって突出したシールフィンを有している。このシールフィンの先端と回転体との間には、接触を防止するとともに通過する作動流体の流量を低減するために、微小間隙が設けられている。
【0004】
このシールフィンの先端と回転体との間の微小間隙の寸法(間隙寸法)は、回転機器の運転中に、回転体の酸化スケールなどにより、経時的に変化し得る。このため、回転機器の点検時に、この間隙寸法が見積もられ、当該間隙寸法が規定の範囲内にあるか否かが確認される。この間隙寸法は、静止体のシールフィンの内径などの内側寸法から見積もることができる。この静止体のシールフィンの内側寸法は、インサイドマイクロメータにより測定することができる。
【0005】
インサイドマイクロメータは、円柱状に形成されたロッドを有しており、両端に半球状に形成された端部を有する測定子が設けられている。シールフィンの内側寸法測定時には、例えば、インサイドマイクロメータの一方の測定子端部を、径方向一側においてシールフィンの先端と当接させ、他方の測定子端部を、径方向他側においてシールフィンの先端と当接させる。このようにして、シールフィンの先端の内側寸法を測定することができる。
【0006】
ここで、インサイドマイクロメータの測定子端部は半球状に形成されているため、シールフィンの内側寸法測定時に、測定子端部がシールフィンの先端からずれて、測定誤差が生じるおそれがある。そこで、インサイドマイクロメータの測定子に、スリット状の切り込みを形成する技術が知られている。この測定子の切り込みにシールフィンの先端を挿入することで、測定子がシールフィンの先端からずれることを防止することができ、シールフィンの内側寸法測定時の測定誤差を低減することができる。
【0007】
しかしながら、インサイドマイクロメータの測定子に上述したような切り込みを形成した場合、そのインサイドマイクロメータはシールフィンの内側寸法を測定するための専用の測定装置になってしまう。この場合、このインサイドマイクロメータを、シールフィンの内側寸法測定以外の用途で使用することが困難になるおそれがある。また、異なる端部形状を有する測定子が必要になった場合や、測定子が損傷した場合、経年使用により測定子の端部形状が変化した場合などには、新たなインサイドマイクロメータを用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、シールフィンの内側寸法測定時の測定誤差を低減することができる回転機器の静止体寸法測定用治具および回転機器の静止体寸法測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態による回転機器の静止体寸法測定用治具は、回転体と、回転体の周囲に設けられ、内面に設けられたシールフィンを有する静止体と、を備えた回転機器のシールフィンの内側寸法を測定するためにインサイドマイクロメータの測定子に取り付けられる。回転機器の静止体寸法測定用治具は、シールフィンの先端と当接する当接部と、第1方向において当接部の両側に設けられ、シールフィンに対する第1方向への移動を規制する一対の規制部と、を有する測定部と、測定部をインサイドマイクロメータの測定子に着脱可能に固定する固定部と、を備えている。
【0011】
また、実施の形態による回転機器の静止体寸法測定方法は、回転体と、回転体の周囲に設けられ、内面に設けられたシールフィンを有する静止体と、を備えた回転機器のシールフィンの内側寸法を測定する。回転機器の静止体寸法測定方法は、インサイドマイクロメータと、インサイドマイクロメータの一端に設けられた測定部であって、シールフィンの先端と当接する平坦な当接面を含む当接部と、第1方向において当接部の両側に設けられ、シールフィンに対する第1方向への移動を規制する一対の規制部と、を有する測定部と、を備えた測定装置を準備する準備工程を備えている。また、回転機器の静止体寸法測定方法は、測定装置によりシールフィンの内側寸法を測定する測定工程と、第1方向で見たときの当接面の中点とシールフィンの先端との間の間隙寸法であって、当接面に沿う第2方向に直交する第3方向における間隙寸法を算出する算出工程と、測定工程で測定された内側寸法の測定値に、間隙寸法を加算して、測定値を補正する補正工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シールフィンの内側寸法測定時の測定誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態における回転機器のシール装置を拡大して示す断面図である。
【
図2】
図1のシール装置のシールフィンの内側寸法を測定する、本実施の形態による測定装置を示す側面図である。
【
図3】
図2の測定装置の測定用治具を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図3をX方向でシールフィンの側から見た正面図である。
【
図6】鉛直方向におけるシールフィンの先端と回転体との間の間隙寸法を見積もる方法を説明するための図である。
【
図7】
図2の測定装置を用いて水平方向におけるシールフィンの内径を測定する測定方法を説明するための図である。
【
図8】
図2の測定装置を用いて鉛直方向におけるシールフィンの半径を測定する測定方法を説明するための図である。
【
図9】
図2の測定装置を用いたシールフィンの内側寸法測定時の、Y方向で見た当接部を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図9の変形例(第1の変形例)を示す図である。
【
図11】
図3の変形例(第2の変形例)を示す図である。
【
図12】
図3の変形例(第3の変形例)を示す図である。
【
図13】
図9の変形例(第4の変形例)を示す図である。
【
図14】
図3の変形例(第5の変形例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態による測定用治具および測定装置について説明する。
【0015】
まず、
図1を参照して、本実施の形態における回転機器について説明する。本実施の形態における回転機器の具体例としては、蒸気タービンやガスタービンなどの軸流タービン、およびコンプレッサなどが挙げられる。本実施の形態では、一例として蒸気タービンを例にとって以下説明する。
【0016】
図1に示すように、蒸気タービン1は、ロータ2と、ロータ2の周囲に設けられたケーシング3と、を備えている。ロータ2は、ケーシング3に対して軸方向Lに延びる回転軸線を中心に回転可能に構成されている。
【0017】
ロータ2には、複数の動翼翼列4が設けられている。ロータ2と動翼翼列4は、回転体18として構成されている。一方、ケーシング3には、複数の静翼翼列5が設けられている。ケーシング3と静翼翼列5は、静止体17として構成されている。静翼翼列5と動翼翼列4は、軸方向Lに交互に配置されている。
【0018】
静翼翼列5は、ケーシング3に支持された静翼外輪7と、静翼外輪7よりも半径方向内側に設けられた静翼内輪8と、静翼外輪7と静翼内輪8との間で周方向に配列された複数の静翼9と、を有している。静翼内輪8は、その内周面がロータ2の外周面と対向するように配置されている。一方、動翼翼列4は、周方向に配列された複数の動翼10を有している。動翼10は、その外周面が静翼外輪7の内周面と対向するように配置されている。
【0019】
ケーシング3に供給された作動流体は、静翼翼列5と動翼翼列4とを通過し、動翼10に対して仕事を行う。このことにより、作動流体の持つ流体エネルギが、ロータ2を回転駆動させる回転エネルギに変換される。ロータ2は、発電機(不図示)に連結されており、回転エネルギ(または回転トルク)を発電機に伝達することができるようになっている。発電機は、その回転エネルギによって発電を行うように構成されている。
【0020】
回転体18と静止体17との間には、間隙が設けられている。この間隙には、シール装置12が設けられている。
図1に示す例では、ロータ2の外周面と静翼内輪8の内周面との間、および動翼10の外周面と静翼外輪7の内周面との間に、それぞれシール装置12が設けられている。
【0021】
シール装置12は、静翼内輪8や静翼外輪7などの静止体17に保持されたシールセグメント14と、シールセグメント14の内周面に設けられた複数のシールフィン15と、を有している。シールフィン15は、周方向に延びており、軸方向Lに複数並んで配置されている。シールフィン15は、シールセグメント14から突出しており、シールセグメント14の内周面から、ロータ2または動翼10などの回転体18に向かって先細状に形成されている。シールフィン15の先端15aと回転体18との間には、微小間隙が設けられている。
【0022】
このように、回転体18と静止体17との間の微小間隙によって、蒸気タービン1の運転中に回転体18と静止体17とが接触することを防止しつつ、回転体18と静止体17との間を通過する作動流体の流量を低減し、蒸気タービン1の効率を向上させている。
【0023】
ところで、このシールフィン15の先端15aと回転体18との間の微小間隙の寸法(間隙寸法)は、蒸気タービン1の運転中に、回転体18の酸化スケールなどにより、経時的に変化し得る。このため、蒸気タービン1の点検時に、この間隙寸法が見積もられ、当該間隙寸法が規定の範囲内にあるか否かが確認される。この間隙寸法は、後述する見積方法により、静止体17のシールフィン15の内側寸法(例えば、内径や半径)から見積もることができる。この間隙寸法を見積もるために、次に説明する測定装置を用いてシールフィン15の内側寸法が測定される。
【0024】
図2~
図5を参照して、本実施の形態による、シールフィンの内側寸法を測定するための回転機器の静止体寸法測定装置(以下、単に測定装置と記す)について説明する。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態による測定装置20は、インサイドマイクロメータ30と、測定用治具40(回転機器の静止体寸法測定用治具)と、を備えている。
【0026】
まず、インサイドマイクロメータ30について説明する。
図2に示すように、インサイドマイクロメータ30は、測定ヘッド31と、ロッド32と、を有している。ロッド32の一方の端部に、測定ヘッド31が着脱可能に取り付けられている。
【0027】
ロッド32は、円柱状に形成されており、ロッド32の軸方向であるX方向(第3方向)に延びている。インサイドマイクロメータ30には、長さが異なる複数のロッド32が用意されている。測定ヘッド31には、測定対象物の測定範囲に応じて、これら複数のロッド32のうちいずれか1つのロッド32が着脱可能に取り付けられる。また長さが異なる複数のロッド32を、測定ヘッド31に直列に取り付けることも可能になっている。このようにロッド32の選定によって、測定装置20の長さを大まかに調整することが可能になっている。
【0028】
測定ヘッド31は、円筒状のスリーブ31aと、シンブル31bと、を有している。スリーブ31aの内部には、不図示の送りねじが設けられている。シンブル31bの内部には、当該送りねじに螺合する不図示のナットが設けられている。シンブル31bを回転させることで、スリーブ31aに対してシンブル31bをX方向に直線移動させることができる。これにより、X方向において測定ヘッド31の長さを変更することができ、測定装置20の長さを微調整することができる。不図示のクランプねじを回転させると、シンブル31bをスリーブ31aに対して固定することができる。スリーブ31aには、第1目盛が表示されている。この第1目盛と、シンブル31bの端面に位置する第2目盛とを読み取ることで、例えば0.01mm単位で、測定対象距離を得ることができる。なお、測定ヘッド31にデジタル表示部が設けられている場合もあり、この場合には、測定対象距離は、デジタル表示部に表示される。
【0029】
ロッド32の一方の端部(測定ヘッド31とは反対側の端部)に、測定子33が設けられている。
図2に示すように、測定子33は、半球状に形成された測定子端部36を含んでいる。また、測定ヘッド31の他方の端部(ロッド32とは反対側の端部)に、測定子34が設けられている。
図3および
図4に示すように、測定子34は、半球状に形成された測定子端部37を含んでいる。また、
図3および
図4に示すように、測定子34の測定子端部37の側の外周面には、雄ねじ部35が形成されている。雄ねじ部35は、ロッド32の雌ねじ部と螺合し、ロッド32を取り付けることができるようになっているが、ここでは、後述する測定用治具40の固定部50の第1の雌ねじ部52と螺合し、測定用治具40が取り付けられている。
【0030】
次に、測定用治具40について説明する。
図3~
図5に示すように、測定用治具40は、測定部41と、測定部41をインサイドマイクロメータ30の測定子34に着脱可能に固定する固定部50と、を有している。
【0031】
測定部41は、インサイドマイクロメータ30の側(固定部50の側)に設けられた、円柱状に形成された胴体部42と、胴体部42からインサイドマイクロメータ30の側とは反対側(測定対象物であるシールフィン15の側)に突出した、円柱状に形成された当接部43と、を有している。
【0032】
胴体部42のインサイドマイクロメータ30の側の端面は、インサイドマイクロメータ30の測定子端部37と当接している。胴体部42のインサイドマイクロメータ30の側の外周面には、雄ねじ部44が設けられている。
【0033】
当接部43は、胴体部42の側に設けられた根元部43aと、その根元部43aよりもシールフィン15の側(固定部50の側とは反対側)に設けられた当接端部43bと、を有している。当接端部43bは、後述するY方向で見たときに台形状に形成されており、後述するシールフィン15の内側寸法測定時に、シールフィン15の先端15aと当接する平坦な当接面43cを含んでいる。本実施の形態では、
図4に示すように、Y方向で見たときの当接面43cに沿う方向(X方向およびY方向に直交するZ方向、第2方向)において、当接面43cの長さd1が、根元部43aの長さd2よりも短くなっている(
図9参照)。
【0034】
また、
図3に示すように、Y方向(第1方向)において、当接部43の当接面43cの両側に一対の規制部46が設けられている。言い換えると、Y方向は、X方向に直交する方向であって、当接部43に対して両側に一対の規制部46が設けられた方向として定義される。この一対の規制部46によって、スリット状に形成された溝47が画定されている。この一対の規制部46は、後述するシールフィン15の内側寸法測定時に、シールフィン15の先端15aが溝47に挿入されて、測定部41がシールフィン15に対してY方向に移動することを規制する。
【0035】
固定部50は、円筒状に形成された円筒構造部51と、円筒構造部51の内面に設けられた第1の雌ねじ部52および第2の雌ねじ部53と、を有している。円筒構造部51のインサイドマイクロメータ30の側の端面は、インサイドマイクロメータ30の測定子34の端面と当接している。第1の雌ねじ部52は、インサイドマイクロメータ30の側に形成されており、インサイドマイクロメータ30の測定子34に形成された雄ねじ部35と螺合している。第2の雌ねじ部53は、測定部41の側に形成されており、測定部41の胴体部42に形成された雄ねじ部44と螺合している。第1の雌ねじ部52および第2の雌ねじ部53は、
図3および
図4に示すように、連続して形成されていてもよい。
【0036】
また、固定部50は、
図3に示すように、円筒構造部51の外面に設けられたねじ孔54と、ねじ孔54に螺合したロックボルト55(ロックビス)と、を含んでいる。ねじ孔54は、円筒構造部51の外面から内面まで貫通しており、外面から第2の雌ねじ部53まで半径方向に延びている。ロックボルト55は、固定部50の第2の雌ねじ部53と螺合した測定部41の雄ねじ部44を締め付けて押圧している。このため、測定部41は、固定部50およびインサイドマイクロメータ30に対してしっかりと固定されている。
【0037】
また、ロックボルト55を緩めて取り外し、第2の雌ねじ部53と測定部41の雄ねじ部44との螺合状態を解除することで、測定部41を固定部50から取り外すことができる。また、第1の雌ねじ部52と測定子34の雄ねじ部35との螺合状態を解除することで、固定部50をインサイドマイクロメータ30の測定子34から取り外すことができる。このように、測定部41および固定部50は、インサイドマイクロメータ30に対して着脱可能に構成されている。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。ここでは、
図6~
図9を用いて、シールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法を見積もる間隙寸法の見積方法について説明する。ここで、見積もりの対象となる間隙寸法は、
図6に示すように、鉛直方向におけるシールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法Cである。本実施の形態による間隙寸法Cの見積方法では、まず、
図6に示す水平方向におけるシールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法A、Bの測定値と、水平方向におけるシールフィン15の内径Hの測定値とから回転体18の半径Rを算出し、その後、算出された半径Rと、鉛直方向におけるシールフィン15の半径Vの測定値とから、間隙寸法Cを求める。以下に、間隙寸法Cの見積方法についてより詳細に説明する。
【0039】
まず、
図6に示すように、蒸気タービン1から静止体17の上半部分が取り外される。そして、この状態において、水平方向におけるシールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法A、Bを測定する。これらの間隙寸法A、Bは、それぞれ任意の測定方法により測定することができる。
【0040】
次に、
図7に示すように、回転体18が取り外される。そして、本実施の形態による回転機器の静止体寸法測定方法を用いて、水平方向におけるシールフィン15の内径H、および鉛直方向におけるシールフィン15の半径Vが測定される。
【0041】
回転機器の静止体寸法測定方法は、測定装置20を準備する準備工程と、測定装置20によりシールフィン15の内径H(内側寸法の一例)を測定する第1測定工程と、測定装置20によりシールフィン15の半径V(内側寸法の他の一例)を測定する第2測定工程と、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法D(
図9参照)を算出する算出工程と、測定装置20の測定値を補正する補正工程と、を備えている。
【0042】
まず、準備工程として、上述したインサイドマイクロメータ30および測定用治具40を有する測定装置20を準備する。ここで、準備工程は、ロッド32をインサイドマイクロメータ30の測定ヘッド31に取り付けるロッド取付工程と、測定用治具40をインサイドマイクロメータ30の測定子34に取り付ける治具取付工程と、を有している。
【0043】
ロッド取付工程において、用意された複数のロッド32のうちシールフィン15の内径Hの測定に適した長さのロッド32(またはその組み合わせ)が選定され、測定ヘッド31に取り付けられる。ここで、シールフィン15の内径Hが、測定装置20の測定可能な長さの範囲内に収まるようなロッド32が選定される。
【0044】
ロッド取付工程の後、治具取付工程において、測定用治具40の測定部41がインサイドマイクロメータ30の測定子34に取り付けられる。より具体的には、
図3および
図4に示すように、固定部50の第1の雌ねじ部52を、測定子34の雄ねじ部35と螺合させ、円筒構造部51を測定子34の端面に当接させる。また、固定部50の第2の雌ねじ部53を、測定部41の雄ねじ部44と螺合させ、胴体部42の端面を測定子端部37に当接させる。次に、ロックボルト55をねじ孔54に螺合させ、ロックボルト55により測定部41の雄ねじ部44を締め付けて押圧させる。
【0045】
このようにして、
図2に示すような測定装置20が得られる。なお、治具取付工程は、ロッド取付工程の前に行うようにしてもよい。
【0046】
準備工程の後、第1測定工程として、
図6に示すような、水平方向におけるシールフィン15の内径Hを測定する。
【0047】
第1測定工程において、まず、
図7に示すように、測定装置20の測定部41の溝47に、径方向一側(
図7の右側端部)に位置するシールフィン15の先端15aが挿入されるように、測定装置20を移動させる。そして、当接部43の当接面43cを、シールフィン15の先端15aと当接させる。言い換えると、シールフィン15の下半部分が有する一対の上端部のうちの一方に、当接面43cを当接させる。ここで、
図3に示すように、当接面43cと当接するシールフィン15の先端15aの両側には、一対の規制部46が位置している。これにより、測定部41がシールフィン15に対してY方向に移動することが規制され、測定部41がシールフィン15の先端15aからずれることが防止される。
【0048】
続いて、測定装置20の測定子33の測定子端部36を、径方向他側(
図7の左側端部)に位置するシールフィン15の先端15aと当接させる。言い換えると、シールフィン15の下半部分が有する一対の上端部のうちの他方に、測定子端部36を当接させる。ここで、測定装置20は、
図7に示すように、その軸方向が水平になるような姿勢となる。
【0049】
この際、インサイドマイクロメータ30のシンブル31bを回転させて、測定装置20の長さを調節する。すなわち、測定装置20の長さをシールフィンの内径Hよりも小さくした状態で、測定装置20の一端側の当接面43cを径方向一側のシールフィン15の先端15aと当接させてから、測定装置20の長さを伸ばして、測定装置20の他端側の測定子端部36を径方向他側のシールフィン15の先端15aと当接させる。
【0050】
そして、この状態において、スリーブ31aの第1目盛およびシンブル31bの第2目盛の値を読み取って、測定装置20の測定値を得る。
【0051】
このようにして、シールフィン15の内径Hの補正前の測定値を得ることができる。
【0052】
第1測定工程の後、第2測定工程として、
図6に示すような、鉛直方向におけるシールフィン15の半径Vを測定する。なお、ここで、シールフィン15の半径Vとは、シールフィン15の下半部分の鉛直方向における内径でもある。
【0053】
第2測定工程において、まず、定盤60を用意し、
図8に示すように、定盤60を静止体17の下半部分の一対の上端部に載置する。ここで、定盤60は、測定許容精度を満たすような平面度を有するものを用意してもよい。また、ここで、測定装置20のロッド32は、シールフィン15の半径Vが、測定装置20の測定可能な長さの範囲内に収まるようなロッド32に交換されてもよい。
【0054】
次に、
図8に示すように、測定装置20の測定部41の溝47に、上下方向における下端部に位置するシールフィン15の先端15aが挿入されるように、測定装置20を移動させる。そして、当接部43の当接面43cを、シールフィン15の先端15aと当接させる。ここで、
図3に示すように、当接面43cと当接するシールフィン15の先端15aの両側には、一対の規制部46が位置している。これにより、測定部41がシールフィン15に対してY方向に移動することが規制され、測定部41がシールフィン15の先端15aからずれることが防止される。
【0055】
続いて、測定装置20の測定子33の測定子端部36を、定盤60の下面と当接させる。ここで、測定装置20は、
図8に示すように、その軸方向が定盤60の下面に垂直な(鉛直方向に沿うような)姿勢となる。このため、測定子端部36は、回転体18の軸方向で見たときの回転体18の軸中心点Oに位置付けられる。
【0056】
この際、インサイドマイクロメータ30のシンブル31bを回転させて、測定装置20の長さを調節する。すなわち、測定装置20の長さをシールフィンの半径Vよりも小さくした状態で、測定装置20の一端側の当接面43cを径方向下端部のシールフィン15の先端15aと当接させてから、測定装置20の長さを伸ばして、測定装置20の他端側の測定子端部36を定盤60の下面と当接させる。
【0057】
そして、この状態において、スリーブ31aの第1目盛およびシンブル31bの第2目盛の値を読み取って、測定装置20の測定値を得る。
【0058】
このようにして、シールフィン15の半径Vの補正前の測定値を得ることができる。
【0059】
第2測定工程の後、算出工程として、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dを算出する。
図9に示すように、測定装置20の当接部43の当接面43cをシールフィン15の先端15aと当接させた状態において、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間に微小な先端間隙が形成される。具体的には、Y方向(回転体18の軸方向)で見たときのX方向(回転体18の径方向)において、当接面43cの中点Mとシールフィン15の先端15aとの間に、間隙寸法Dの先端間隙が形成される。この先端間隙は、シールフィン15の内側寸法測定時の測定誤差となり得る。算出工程では、この先端間隙の間隙寸法Dを算出する。この間隙寸法Dは、例えばシールフィン15の半径の設計寸法とZ方向における当接面43cの長さd1の設計寸法との幾何学的関係から算出することができる。
【0060】
算出工程の後、補正工程として、測定装置20の測定値を補正する。より具体的には、第1測定工程で測定装置20により測定されたシールフィン15の内径Hの測定値に、間隙寸法Dを加算する。また、第2測定工程で測定装置20により測定されたシールフィン15の半径Vの測定値に、間隙寸法Dを加算する。これにより、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差を低減することができる。
【0061】
このようにして、本実施の形態による回転機器の静止体寸法測定方法を用いて、
図6に示すような、水平方向におけるシールフィン15の内径Hの測定値、および鉛直方向におけるシールフィン15の半径Vの測定値が得られる。
【0062】
次に、このようにして得られた、間隙寸法A、B、水平方向におけるシールフィン15の内径H、および鉛直方向におけるシールフィン15の半径Vから、鉛直方向におけるシールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法Cを見積もる方法について、
図6を参照して説明する。
【0063】
図6に示すような回転体18の半径Rと、上述した間隙寸法A、Bおよびシールフィン15の内径Hとの間には、幾何学的に以下の関係式(1)が成り立つ。
2R=H-(A+B) (1)
【0064】
この関係式(1)に、間隙寸法A、Bおよびシールフィン15の内径Hがそれぞれ代入され、回転体18の半径Rが算出される。
【0065】
また、間隙寸法Cと、シールフィン15の半径Vおよび回転体18の半径Rとの間には、幾何学的に以下の関係式(2)が成り立つ。
C=V-R (2)
【0066】
従って、この関係式(2)に、シールフィン15の半径Vと、関係式(1)により算出された回転体18の半径Rがそれぞれ代入され、間隙寸法Cが求められる。
【0067】
このようにして、鉛直方向におけるシールフィン15の先端15aと回転体18との間の間隙寸法Cを見積もることができる。
【0068】
なお、シールフィン15の内径Hの測定およびシールフィン15の半径Vの測定が終了した後、測定装置20は、シールフィン15から取り外される。そして、測定用治具40は、インサイドマイクロメータ30から取り外されてもよい。この場合、まず、ロックボルト55を緩めて取り外し、第2の雌ねじ部53と測定部41の雄ねじ部44との螺合状態を解除することで、測定部41が固定部50から取り外される。また、第1の雌ねじ部52と測定子34の雄ねじ部35との螺合状態を解除することで、固定部50がインサイドマイクロメータ30の測定子34から取り外される。このようにして、測定部41および固定部50を含む測定用治具40がインサイドマイクロメータ30から取り外される。これにより、測定子34の測定子端部37を測定対象物に直接的に当接させて測定を行うことができる。また、測定子34に、シールフィン15以外の測定対象物に適した測定用治具を取り付けて、当該測定対象物の寸法測定を行うこともできる。すなわち、インサイドマイクロメータ30を、シールフィン15の内側寸法測定以外の用途で使用することができる。
【0069】
このように本実施の形態によれば、測定部41をインサイドマイクロメータ30の測定子34に着脱可能に固定する固定部50を備えている。このことにより、インサイドマイクロメータ30の測定子34に切り込みを入れるなどの加工を不要としつつ、シールフィン15の内側寸法測定時に測定装置20の先端をシールフィン15に対してしっかりと固定することができる。このため、シールフィン15の内側寸法測定時の測定誤差を低減することができるとともに、その内側寸法測定に使用したインサイドマイクロメータ30を、シールフィン15の内側寸法測定以外の用途に使用することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、固定部50は、インサイドマイクロメータ30の測定子34に設けられた雄ねじ部35と螺合する第1の雌ねじ部52を有している。このため、固定部50をインサイドマイクロメータ30の測定子34に容易に着脱することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、固定部50は、測定部41の雄ねじ部44と螺合した第2の雌ねじ部53を有している。このため、測定部41を固定部50に容易に着脱することができ、測定部41の交換等を容易に行うことができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、第1の雌ねじ部52および第2の雌ねじ部53は、連続して形成されている。このことにより、第1の雌ねじ部52および第2の雌ねじ部53の加工を容易化させることができ、固定部50の製造コストを低減することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、ロックボルト55が、固定部50のねじ孔54に螺合し、測定部41の雄ねじ部44を押圧している。このことにより、測定部41を、固定部50およびインサイドマイクロメータ30に対してしっかりと固定することができる。このため、シールフィン15の内側寸法測定時に測定部41がインサイドマイクロメータ30に対して位置ずれすることを防止し、測定誤差を低減することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、Z方向において、当接面43cの長さd1が、根元部43aの長さd2よりも短くなっている(
図9参照)。このことにより、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dを、例えば後述する
図10に示す第1の変形例のような、Z方向において、当接面43cの長さが、根元部43aの長さとほぼ同じ長さd3の場合の当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Eよりも小さくすることができる。このため、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差を低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、測定装置20により測定された測定値に、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dを加算して、測定値を補正している。このことにより、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差を低減することができる。また、上述したように、Z方向において、当接面43cの長さd1を、根元部43aの長さd2よりも短くすることにより、この測定値の補正量(間隙寸法)を小さくすることができる。補正量は、上述したように設計寸法から算出する値であるため、実際の寸法との間に誤差が生じ得るが、補正量を小さくすることにより、補正の精度を向上させることができる。このように、Z方向において、当接面43cの長さd1を、根元部43aの長さd2よりも短くすることと、上述した間隙寸法Dを加算して測定値を補正することとを組み合わせることにより、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差をより一層低減することができる。
【0076】
(第1の変形例)
上述した本実施の形態において、Z方向において、当接面43cの長さd1が、根元部43aの長さd2よりも短くなっている例を示した(
図9参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、
図10に示したように、Z方向において、当接面43cの長さが、根元部43aの長さとほぼ同じ長さd3であってもよい。
【0077】
このように、Z方向において、当接面43cの長さを、根元部43aの長さとほぼ同じ長さd3にすることにより、当接部43の加工を容易化させることができ、測定部41の製造コストを低減することができる。
【0078】
(第2の変形例)
また、上述した本実施の形態において、固定部50のねじ孔54に螺合したロックボルト55が、測定部41の雄ねじ部44を締め付けて押圧することにより、測定部41を固定部50に対して固定する例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図11に示すように、固定部50は、ロックナット56を固定部50に締め付けることにより測定部41を固定部50に対して固定してもよい。
【0079】
図11に示す例では、測定部41の雄ねじ部44は、測定部41の胴体部42の外周面全体に渡って形成されている。この雄ねじ部44は、固定部50の第2の雌ねじ部53と螺合している。ロックナット56は、その固定部50よりもシールフィン15の側で雄ねじ部44と螺合している。そして、ロックナット56は、固定部50の端面と当接し、固定部50に締め付けられている。
【0080】
このように、ロックナット56が、測定部41の雄ねじ部44と螺合し、固定部50に締め付けられていることにより、測定部41を、固定部50およびインサイドマイクロメータ30に対してしっかりと固定することができる。また、ロックナット56は、ロックボルトよりも大きな部品で構成することができるため、締め付け力を強めて、より一層しっかりと固定することができる。
【0081】
(第3の変形例)
また、上述した本実施の形態において、測定部41は、雄ねじ部44が固定部50の第2の雌ねじ部53と螺合することにより、固定部50に取り付けられている例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図12に示すように、測定部41および固定部50が、一体に形成されていてもよい。すなわち、測定部41の胴体部42および固定部50の円筒構造部51が、一体となって胴体構造部57を構成していてもよい。胴体構造部57は、インサイドマイクロメータ30の側に形成されたねじ孔部58を有しており、その内面に、インサイドマイクロメータ30の測定子34と螺合する第1の雌ねじ部52が形成されていてもよい。
【0082】
このように、測定部41および固定部50が、一体に形成されていることにより、測定部41を固定部50に取り付けること、および測定部41を固定部50から取り外すことを不要にすることができ、測定部41をインサイドマイクロメータ30により一層容易に着脱することができる。
【0083】
(第4の変形例)
上述した本実施の形態において、当接部43は、シールフィン15の先端15aと当接する平坦な当接面43cを含んでいる例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図13に示すように、当接部43は、シールフィン15に向かって先細状に形成されていてもよい。
図13に示す例では、当接部43は、Y方向で見たときにシールフィン15の側に向かって尖った先端部43dを有している。先端部43dは、シールフィン15の内側寸法測定時に、Y方向で見たときにシールフィン15の先端15aと1点で当接している。このため、当接部43とシールフィン15の先端15aとの間に、先端間隙が形成されることを防止することができる、または形成される先端間隙の寸法を無視できる程度に小さくすることができる。
【0084】
このように、当接部43が、シールフィン15に向かって先細状に形成されていることにより、当接部43とシールフィン15との間の先端間隙をより一層小さくすることができる。このため、当接部43とシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差をより一層低減することができる。
【0085】
(第5の変形例)
上述した本実施の形態において、インサイドマイクロメータ30に測定用治具40を取り付けた測定装置20により測定された測定値に、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dを加算して、測定値を補正する例を示した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、
図14に示すように、インサイドマイクロメータ30の測定子34にスリット状の切り込みが形成された測定装置20により測定された測定値についても同様に補正することで、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dの測定誤差を低減することができる。
【0086】
図14に示す例では、インサイドマイクロメータ30の一端に設けられた測定子34は、測定部41を含んでおり、シールフィン15の先端15aと当接する当接部43を有している。すなわち、
図14に示す例では、測定子34に、
図3等に示した当接部43が一体に形成されている。
【0087】
このようなインサイドマイクロメータ30の測定子34にスリット状の切り込みが形成された測定装置20を用いた場合も、
図9および
図10で説明したように、シールフィン15の内側寸法測定時に、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間に先端間隙が形成される。このため、このような測定装置20により測定された測定値に、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法Dを加算して、測定値を補正することで、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定度差を低減することができる。すなわち、間隙寸法Dを加算するという補正により測定誤差を低減することができるという作用効果は、当接部43を有する測定部41が、インサイドマイクロメータ30の測定子34に着脱可能であることに依拠することなく、得ることができる。
【0088】
また、
図14に示す例において、当接端部43bは、
図4および
図9で示した例と同様に、Y方向で見たときに台形状に形成されていてもよく、Z方向において、当接面43cの長さが、当接端部43bよりもシールフィン15の側とは反対側の測定子34(測定部41)の部分の長さよりも短くなっていてもよい。このような構成にすることで、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の間隙寸法を小さくすることができる。このため、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差を低減することができる。また、上述したように、Z方向において、当接面43cの長さを短くすることと、上述した間隙寸法を加算して測定値を補正することとを組み合わせることにより、当接面43cとシールフィン15の先端15aとの間の先端間隙に起因した測定誤差をより一層低減することができる。
【0089】
以上述べた本実施の形態によれば、シールフィンの内側寸法測定時の測定誤差を低減することができる。
【0090】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1:蒸気タービン、15:シールフィン、17:静止体、18:回転体、20:測定装置、30:インサイドマイクロメータ、33、34:測定子、35:雄ねじ部、40:測定用治具、41:測定部、43:当接部、43a:根元部、43c:当接面、44:雄ねじ部、46:規制部、50:固定部、52:第1の雌ねじ部、53:第2の雌ねじ部、54:ねじ孔、55:ロックボルト、56:ロックナット