(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20220922BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220922BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20220922BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G02F1/025
G02B6/12 371
G02B6/13
G02B6/122
(21)【出願番号】P 2018239567
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波岡 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0321240(US,A1)
【文献】国際公開第2016/125772(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146317(WO,A1)
【文献】特開2012-198465(JP,A)
【文献】SHARMA, R. et al.,"Cladding-dependent nature of electro-optic effects in silicon waveguides",2016 Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO),STh4E.2,米国,IEEE,2016年12月19日,pp. 1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成された光導波路と、
前記光導波路を覆うように、前記第1絶縁層上に形成された固定電荷層と、
前記固定電荷層上に形成された第2絶縁層と、
を有し、
前記第1絶縁層の厚さは、2μm以上かつ3μm以下であり、
前記固定電荷層の厚さは、1nm以上かつ10nm以下であり、
前記第2絶縁層の厚さは、1.5μm以上である、半導体装置。
【請求項2】
前記固定電荷層を構成する材料は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ハフニウム、窒化アルミニウム、酸窒化ハフニウムおよび酸窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記固定電荷層を構成する材料は、酸化ハフニウムである、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記固定電荷層は、前記光導波路の上面および両側面と接するように、前記第1絶縁層上に形成されており、
前記光導波路の前記上面および前記両側面には、反転層が形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記光導波路および前記固定電荷層の間に形成された中間層をさらに有し、
前記中間層の厚さは、1nm以上かつ5nm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記中間層を構成する材料は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンである、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記光導波路は、前記光導波路の幅方向において、互いに隣接したp型半導体部およびn型半導体部を含み、かつ
前記固定電荷層は、前記n型半導体部と接している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記光導波路の延在方向に直交する断面において、
前記n型半導体部の占有面積は、前記p型半導体部の占有面積より大きい、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記光導波路は、前記光導波路において、互いに反対側に位置する第1側面および第2側面を有し、
前記n型半導体部は、前記光導波路の前記第1側面側に位置しており、
前記p型半導体部は、前記光導波路の前記第2側面側に位置しており、かつ
前記p型半導体部および前記n型半導体部の接合面は、前記光導波路の幅方向において、前記第1側面よりも前記第2側面に近い場所に位置している、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記光導波路は、光変調部の一部を構成している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記光導波路を構成する材料は、シリコンである、請求項
2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を構成する材料は、酸化シリコンである、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
第1絶縁層上に形成された半導体層をドライエッチング法によりパターニングして、光導波路を形成する工程と、
前記光導波路を覆うように前記第1絶縁層上に固定電荷層を形成する工程と、
前記固定電荷層上に第2絶縁層を形成する工程と、
を含み、
前記第1絶縁層の厚さは、2μm以上かつ3μm以下であり、
前記固定電荷層の厚さは、1nm以上かつ10nm以下であり、
前記第2絶縁層の厚さは、1.5μm以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記固定電荷層を構成する材料は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ハフニウム、窒化アルミニウム、酸窒化ハフニウムおよび酸窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記固定電荷層を構成する材料は、酸化ハフニウムである、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記光導波路を形成する工程と、前記第2絶縁層を形成する工程の間において、前記光導波路を覆うように、前記第1絶縁層上に中間層を形成する工程をさらに含み、
前記中間層の厚さは、1nm以上かつ5nm以下である、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記中間層を構成する材料は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンである、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記光導波路は、光変調部を構成している、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記光導波路の上面および両側面には、反転層が形成されている、請求項5、または6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記固定電荷層は、前記光導波路の上面および両側面と接するように、前記第1絶縁層上に形成されており、
前記光導波路の前記上面および前記両側面には、反転層が形成されている、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記光導波路を構成する材料は、シリコンである、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を構成する材料は、酸化シリコンである、請求項21に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、光導波路を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術として、シリコンフォトニクス技術が知られている。シリコンフォトニクス技術が採用された半導体装置は、例えば、光導波路内の光の位相を変化させる光変調部を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、n型不純物を含むn型半導体部と、p型不純物を含むp型半導体部とで構成された光導波路を有するpn型の光変調部が開示されている。光変調部を構成する光導波路は、エッチングでパターニングされている。また、上記n型半導体部および上記p型半導体部は、光導波路の内部において互いに隣接し、pn接合面を形成している。当該pn接合面は、光導波路内において、光導波路の両側面と対向するように形成されている。光変調部に逆バイアス電圧を印加すると、上記pn接合面から光導波路の側面に向かって空乏化領域が拡がる。空乏化領域が形成された状態と、空乏化領域が形成されていない状態とでは、光導波路内を進行する光の位相が異なる。光変調部は、この特性を利用して、光導波路内を進行する光の位相を電気的に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光導波路が半導体層のドライエッチングによるパターニングで形成されている場合、光導波路の表面の粗さに起因する光損失が発生し得る。また、光変調部を低い電圧で駆動させる場合には、光導波路内において、空乏化領域を十分に拡げることができず、結果として、光変調部の変調効率が不十分となることがある。このように、従来の光変調器では、半導体装置の特性を高める観点から、改善の余地がある。
【0006】
一実施の形態の課題は、半導体装置の特性を高めることである。その他の課題および新規な特徴は、本明細書および図面の記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る半導体装置は、光導波路を覆っている固定電荷層を有する。
【0008】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体層をドライエッチング法により加工することによって、光導波路を形成する工程と、光導波路を覆うように固定電荷層を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置では、光導波路を有する半導体装置の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る光電気混載装置の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す要部底面図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す要部断面図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、比較用の光変調部において、空乏化領域が形成された状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態に係る光変調部において、空乏化領域が形成された状態を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図7は、比較用の第1光導波路を示す部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態に係る第1光導波路を示す部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図10】
図10は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図11】
図11は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図12】
図12は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図13】
図13は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図14】
図14は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図15】
図15は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図16】
図16は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図17】
図17は、一実施の形態に係る半導体装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【
図18】
図18は、変形例に係る半導体装置の構成の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要件または対応する構成要件には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0012】
(光電気混載装置の回路構成)
図1は、本実施の形態に係る光電気混載装置LEの回路構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示されるように、光電気混載装置LEは、第1電子回路EC1、半導体装置SD、光源LSおよびICチップCPを有する。本実施の形態に係る半導体装置SDは、光導波路OW、光変調部LM、光出力部LO、光入力部LIおよび受光部PRを有する。ICチップCPは、第2電子回路EC2および第3電子回路EC3を有する。半導体装置SDの構成の詳細については、後述する。
【0014】
第1電子回路EC1は、第2電子回路EC2および第3電子回路EC3をそれぞれ制御するための電気信号(制御信号)を出力する。また、第1電子回路EC1は、第3電子回路EC3から出力された電気信号を受信する。第1電子回路EC1は、第2電子回路EC2および第3電子回路EC3に電気的に接続されている。第1電子回路EC1は、例えば、制御回路および記憶回路を含む公知のCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable gate array)によって構成されている。
【0015】
光源LSは、光を出射する。光源LSの種類の例には、レーザダイオード(LD)が含まれる。光源LSからの出射光の波長は、当該出射光が光導波路OWの内部を透過できればよく、光導波路OWを構成する材料に応じて適宜設定され得る。たとえば、光源LSからの出射光のピーク波長は、1.0μm以上かつ1.6μm以下である。光源LSは、光導波路OWを介して光変調部LMに光学的に接続されている。
【0016】
第2電子回路EC2は、光変調部LMの動作を制御するための電気信号(制御信号)を出力する。より具体的には、第2電子回路EC2は、第1電子回路EC1から受信した制御信号に基づいて、光変調部LMを制御する。第2電子回路EC2は、光変調部LMに電気的に接続されている。第2電子回路EC2は、例えば、制御回路を含む公知のトランシーバICによって構成されている。
【0017】
光変調部LMは、第2電子回路EC2から受信した制御信号に基づいて、光源LSから出射された光の位相を変調する。光変調部LMは、当該制御信号に含まれる情報を含んだ光信号を生成する。光変調部LMの種類は、マッハツェンダ型光変調部である。光変調部LMは、電気制御型光変調部であってもよいし、電気制御および熱制御を併用した併用型光変調部であってもよい。光変調部LMは、光導波路OWを介して、光出力部LOに光学的に接続されている。
【0018】
光出力部LOは、光変調部LMで変調された光信号を、半導体装置SDの外部に出力する。たとえば、光出力部LOは、光信号を外部の光ファイバに向けて出射する。光出力部LOの種類の例には、グレーティングカプラ(GC)およびスポットサイズコンバータ(SSC)が含まれる。
【0019】
光入力部LIは、外部からの光を半導体装置SDの内部に入力する。たとえば、外部の光ファイバから出射された光信号を半導体装置SDの内部に入力する。光入力部LIの種類の例には、グレーティングカプラ(GC)およびスポットサイズコンバータ(SSC)が含まれる。光入力部LIは、光導波路OWを介して、受光部PRに光学的に接続されている。
【0020】
受光部PRは、光入力部LIから受信した光信号に基づいて、電子正孔対を生成する。受光部PRは、光信号を電気信号に変換する。受光部PRは、光電変換特性を有していればよい。受光部PRの種類の例には、アバランシェフォトダイオード型受光部が含まれる。受光部PRは、第3電子回路EC3に電気的に接続されている。
【0021】
第3電子回路EC3は、受光部PRから受信した電気信号を処理するとともに、処理された電気信号を第1電子回路EC1に出力する。より具体的には、第3電子回路EC3は、受光部PRから受信した電気信号を増幅し、第1電子回路EC1に出力する。第3電子回路EC3は、例えば、増幅回路を含む公知のレシーバICによって構成されている。
【0022】
(光電気混載装置の動作)
次いで、本実施の形態に係る光電気混載装置LEの動作例について説明する。
【0023】
まず、光電気混載装置LEの送信用部分について説明する。光源LSからの出射光は、光導波路OWを介して光変調部LMに到達する。第2電子回路EC2は、第1電子回路EC1から受信した制御信号に基づいて光変調部LMの動作を制御し、光変調部LMに到達した光を変調する。これにより、電気信号が、光信号に変換される。そして、当該光信号は、光導波路OWを介して光出力部LOに到達し、光出力部LOにおいて半導体装置SDの外部に出射される。半導体装置SDから出力された光信号は、光ファイバなどを介して他の半導体装置に導光される。
【0024】
次いで、光電気混載装置LEの受信用部分について説明する。光ファイバなどを介して他の半導体装置から導光された光信号は、光入力部LIに到達する。当該光信号は、光入力部LIにおいて光導波路OWの内部に導かれる。上記光信号は、光導波路OWを介して受光部PRに到達し、電気信号に変換される。そして、当該電気信号は、第3電子回路EC3で処理された後、第1電子回路EC1に送信される。
【0025】
(半導体装置の構成)
次いで、本実施の形態に係る半導体装置SDの構成について説明する。
【0026】
図2は、半導体装置SDの要部底面図であり、
図3は、
図2中のA-A線における半導体装置SDの要部断面図である。
【0027】
図3に示されるように、半導体装置SDは、基板SUB、第1絶縁層IL1、第1光導波路OW1、光変調部LM、固定電荷層FCL、第2絶縁層IL2、第1プラグPL1、第1配線WR1、第3絶縁層IL3、第2プラグPL2、第2配線WR2および保護膜PFを有する。詳細については後述するが、光変調部LMは、一対の第2光導波路OW2と、第2光導波路OW2の両側面に隣接している二対のスラブ部SLBと、を有する。
【0028】
なお、詳細については後述するが、第2光導波路OW2の一部には不純物が含まれる点と、平面視において、第2光導波路OW2の上記一部が一対のスラブ部SLBに隣接している点とを除いて、第2光導波路OW2の構成(大きさ、形状、材料および機能)は、第1光導波路OW1の構成と同様である。そこで、互いに同様の構成については、重複記載を避ける観点から、第1光導波路OW1についてのみ説明する。
【0029】
基板SUBは、第1絶縁層IL1を介して第1光導波路OW1や光変調部LMなどの光学素子を支持する支持体である。基板SUBは、互いに表裏の関係にある第1面(表面)SF1および第2面(裏面)SF2を含む。基板SUBの種類の例には、シリコン基板が含まれる。当該シリコン基板は、例えば、ホウ素(B)及びリン(P)などのp型不純物を含むシリコン単結晶基板である。たとえば、当該シリコン基板の主面(第1面SF1)の面方位は(100)であり、当該シリコン基板の抵抗率は5Ω・cm以上かつ50Ω・cm以下である。基板SUBの厚さは、例えば、100μm以上かつ900μm以下である。
【0030】
第1絶縁層IL1は、基板SUBの第1面SF1上に形成されている。第1絶縁層IL1は、第1光導波路OW1の内部を伝搬する光を第1光導波路OW1の内部に実質的に閉じ込めるためのクラッド層である。第1絶縁層IL1は、第1光導波路OW1を構成する材料の屈折率より小さい屈折率を有する材料で構成されている。第1絶縁層IL1を構成する材料の例には、酸化シリコン(SiO2)が含まれる。第1絶縁層IL1を構成する材料の屈折率は、例えば、1.46である。なお、本明細書における屈折率は、波長1.5μmの光に対する数値である。
【0031】
第1絶縁層IL1の厚さは、第1光導波路OW1からの光の染み出し距離(詳細については後述)より大きいことが好ましい。半導体装置SDに加わる応力を低減させる観点と、半導体装置SDの製造時における静電チャックによる半導体ウェハの貼りつきを抑制する観点とから、第1絶縁層IL1の厚さは、小さいことが好ましい。たとえば、第1絶縁層IL1の厚さは、2μm以上かつ3μm以下である。
【0032】
第1光導波路OW1は、その内部を光が伝搬可能な経路である。第1光導波路OW1は、第1絶縁層IL1上に形成されている。第1光導波路OW1は、第1絶縁層IL1および第2絶縁層IL2により、直接的または間接的に覆われている。本実施の形態では、第1光導波路OW1の上面および両側面は、固定電荷層FCLに直接接しており、かつ第1光導波路OW1の下面は、第1絶縁層IL1に直接的に接している。
【0033】
第1光導波路OW1は、第1光導波路OW1を構成する材料の屈折率より小さい屈折率を有する第1絶縁層IL1および電荷固定層FCLによって覆われている。これにより、光は、第1光導波路OW1の内部に実質的に閉じ込められた状態で、第1光導波路OW1の内部を進行することができる。ただし、当該光は、当該光の波長オーダ分、第1光導波路OW1の外部に染み出しながら、第1光導波路OW1の内部を進行する。
【0034】
第1光導波路OW1を構成する材料は、その内部を通る光に対して透明な半導体材料である。第1光導波路OW1を構成する材料の例には、シリコンおよびゲルマニウムが含まれる。第1光導波路OW1を構成する材料の結晶構造は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。第1光導波路OW1を構成する材料の屈折率は、例えば、3.5である。
【0035】
第1光導波路OW1の延在方向に直交する断面における第1光導波路OW1の断面形状は、第1光導波路OW1の内部を光が伝搬できる形状であればよい。第1光導波路OW1の断面形状の例には、矩形状および台形状が含まれる。
【0036】
第1光導波路OW1の幅および高さは、第1光導波路OW1の内部を光が適切に伝搬できれる大きさであればよい。第1光導波路OW1の幅および高さは、第1光導波路OW1の内部を通過する光の波長、および当該光のモードなどの条件に応じて適宜設定され得る。第1光導波路OW1の幅は、例えば、300nm以上かつ500nm以下である。第1光導波路OW1の高さは、例えば、200nm以上かつ300nm以下である。
【0037】
本実施の形態に係る光変調部LMは、pn型の光変調部である。光変調部LMは、
図2に示されるように、入力用の光導波路OW
inと、光導波路OW
inから分岐した一対の第2光導波路OW2(分岐導波路)と、二対のスラブ部SLBと、出力用の光導波路OW
OUTと、を有する。すなわち、光導波路OW
in、光導波路OW
OUTおよび第2光導波路OW2のそれぞれは、光変調部LMの一部を構成している。
【0038】
光導波路OWinおよび光導波路OWOUTの構成(形状および材料など)の例は、第1光導波路OW1の構成と同様である。また、第2光導波路OW2のうち、一対のスラブ部SLBに挟まれている部分に、不純物領域が形成されている点について、第2光導波路OW2は、第1光導波路OW1と異なる。そこで、第2光導波路OW2内における上記不純物領域について説明する。
【0039】
図4は、
図3において破線で示される領域の部分拡大断面図である。
図4に示されるように、第2光導波路OW2は、p型半導体からなるp型半導体部SPpと、n型半導体からなるn型半導体部SPnとを有する。また、第2光導波路OW2は、第2光導波路OW2の幅方向において互いに反対側に位置する第1側面SS1および第2側面SS2を有する。p型半導体部SPpおよびn型半導体部SPnは、第2光導波路OW2の幅方向において、互いに隣接するように形成されている。本実施の形態では、n型半導体部SPnは、第2光導波路OW2の内部において第1側面SS1側に形成されている。p型半導体部SPpは、第2光導波路OW2の内部において第2側面SS2側に形成されている。
【0040】
第2光導波路OW2の内部では、pn接合面が形成される。当該pn接合面は、第2光導波路OW2の両側面に対向するように形成されている。本実施の形態では、上記接合面は、第2光導波路OW2の幅方向において、第2側面SS2側に位置している。すなわち、上記pn接合面は、光導波路の内部において、第1側面SS1よりも第2側面SS2に近い。
【0041】
ここで、第2光導波路OW2「幅方向」とは、第1側面SS1および第2側面SS2の対向方向であり、平面視において、第2光導波路OW2の延在方向に対して垂直な方向である。
【0042】
第2光導波路OW2の延在方向に直交する断面において、n型半導体部SPnの占有面積は、p型半導体部SPpの占有面積より大きくてもよいし、小さくてもよいし、p型半導体部SPpの占有面積と同じであってもよい。詳細については後述するが、光変調部LMの変調効率を高める観点からは、n型半導体部SPnの占有面積は、上記断面において、p型半導体部SPpの占有面積より大きいことが好ましい。本実施の形態では、n型半導体部SPnの占有面積は、上記断面において、p型半導体部SPpの占有面積より大きい。
【0043】
一対の第2光導波路OW2について、一方の第2光導波路OW2におけるn型半導体部SPnに対するp型半導体部SPpの面積比と、他方の第2光導波路OW2におけるn型半導体部SPnに対するp型半導体部SPpの面積比とは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態では、上記2つの面積比は、互いに同じである。
【0044】
n型半導体部SPnを構成するn型半導体は、ヒ素(As)およびリン(P)などのn型不純物を含む。n型半導体部SPnにおける不純物濃度は、1×1017/cm3以上である。また、p型半導体部SPpを構成するp型半導体は、ホウ素(B)および二フッ化ボロン(BF2)などのp型不純物を含む。p型半導体部SPpにおける不純物濃度は、1×1017/cm3以上である。
【0045】
二対のスラブ部SLBは、第1絶縁層IL1上に形成されている。スラブ部SLBの構成は、特に限定されず、pn型変調部のスラブ部として公知の構成が採用され得る。スラブ部SLBは、第2光導波路OW2の幅方向において、第2光導波路OW2と隣接するように第1絶縁層IL1上に形成されている。本実施の形態では、一対のスラブ部SLBが、第2光導波路OW2を両側から挟むように、第1絶縁層IL1上に形成されている。n型半導体部SPnに隣接するスラブ部SLBは、上記n型不純物を含み、p型半導体部SPpに隣接するスラブ部SLBは、上記p型不純物を含む。電圧降下を抑制する観点から、スラブ部SLBにおける不純物濃度は、n型半導体部SPnおよびp型半導体部SPpにおける不純物濃度より大きいことが好ましい。なお、スラブ部SLBは、第1プラグPL1と電気的に接続されている。
【0046】
図2に示されているように、光変調部LMでは、入力用の光導波路OW
inの内部を伝搬する光は、一対の第2光導波路OW2に分波され、一対の第2光導波路OW2の一方または両方で位相差を与えられた後に、出力用の光導波路OW
OUTで合波される。そして、光導波路OW
OUTで生じる光の干渉により、光の振幅が制御され、結果として、光信号が生成され得る。
【0047】
光変調部LMは、キャリアプラズマ効果によって、第2光導波路OW2の内部を通過する光の位相を制御することができる。具体的には、p型半導体部SPpおよびn型半導体部SPnの間に逆バイアス(電圧)を印加することによって、pn接合面から第2光導波路OW2の両側面に向かって空乏化領域が拡がる。空乏化領域が形成された状態と、空乏化領域が形成されていない状態とでは、第2光導波路OW2内を進行する光の位相が異なる。このように、光変調器LMは、第2光導波路OW2内を進行する光の位相を電気的に制御することができる。
【0048】
固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2を含む光変調部LMを覆うように、第1絶縁層IL1上に形成されている。固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2上に形成された状態において、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2を覆うように形成された負の固定電荷を含む絶縁層である。これにより、固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2の表面に反転層を形成する。
【0049】
固定電荷層FCLは、上記機能を発揮できる材料で構成されており、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2を構成する材料に応じて選択され得る。固定電荷層FCLを構成する材料は、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ハフニウム、窒化アルミニウム、酸窒化ハフニウムおよび酸窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種である。固定電荷層FCLを構成する材料は、酸化ハフニウムであることが好ましい。なお、固定電荷層FCLは、上記材料で構成された単層膜であってもよいし、上記材料で構成された複数の膜からなる積層膜であってもよい。
【0050】
固定電荷層FCLは、耐熱性の観点から、シリコン(Si)および窒素(N)などの成分を含んでいてもよい。当該成分の濃度は、固定電荷層FCLの絶縁性が損なわれない範囲で適宜決定される。
【0051】
固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1と、第2光導波路OW2のn型半導体部SPnおよびp型半導体部SPpとに直接的に接していてもよいし、間接的に接していてもよい(後述の変形例参照)。効果的に反転層を形成する観点から、固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2と直接的に接していることが好ましい。本実施の形態では、固定電荷層FCLは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2と直接的に接している。
【0052】
固定電荷層FCLの厚さは、上記反転層を形成するために十分な厚さであればよい。固定電荷層FCLの厚さが小さすぎると、上記反転層が十分に形成されず、固定電荷層FCLによる作用を得られない傾向がある。また、固定電荷層FCLの厚さが大きすぎると、厚い上記反転層が形成され、空乏化領域を形成した状態と形成していない状態とで、第2光導波路OW2内を伝搬する光の位相差が小さくなり、結果として、光変調器LMの変調効率が低下する傾向がある。このような観点から、固定電荷層FCLの厚さは、1nm以上かつ10nm以下であることが好ましく、5nm程度であることがより好ましい。
【0053】
第2絶縁層IL2は、固定電荷層FCL上に形成されている。第2絶縁層IL2は、固定電荷層FCLを介して、第1光導波路OW1および光変調部LMを覆うように、第1絶縁層IL1上に形成されている。第2絶縁層IL2は、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2を構成する材料の屈折率より小さい屈折率を有する材料で構成されている。第2絶縁層IL2を構成する材料の例には、酸化シリコン(SiO2)が含まれる。第2絶縁層IL2を構成する材料の屈折率は、例えば、1.46である。
【0054】
第2絶縁層IL2上に形成されている第1配線WR1によって、第2光導波路OW2から染み出した光が散乱されるのを抑制する観点から、第2絶縁層IL2の厚さは、1.5μm以上であることが好ましい。また、製造プロセスの容易性の観点から、第2絶縁層IL2の厚さは、2μm程度であることがより好ましい。
【0055】
第1プラグPL1は、第2絶縁層IL2に形成された貫通孔を埋めるように形成されている。第1プラグPL1は、光変調部LMのスラブ部SLBと、第1配線WR1とを互いに電気的に接続している。第1プラグPL1は、第2絶縁層IL2の厚さ方向に沿って、光変調部LMのp型半導体部SPpおよびn型半導体部SPnに達するように形成されている。第1プラグPL1については、半導体技術においてプラグとして採用されている公知の構成が採用され得る。第1プラグPL1の材料の例には、タングステン(W)が含まれる。
【0056】
第1配線WR1は、第2絶縁層IL2上に形成されている。第1配線WR1は、第1プラグPL1を介して光変調部LMに電気的に接続されている。第1配線WR1については、半導体技術において配線として採用されている公知の構成が採用され得る。第1配線WR1の例には、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム層、窒化チタン層およびチタン層がこの順で積層されたアルミニウム配線が含まれる。また、アルミニウム層の代わりに、銅層またはタングステン層が用いられてもよい。本実施の形態では、第1配線WR1は、上記アルミニウム配線である。
【0057】
第3絶縁層IL3は、第1配線WR1を覆うように、第2絶縁層IL2上に形成されている。第3絶縁層IL3を構成する材料の例は、第2絶縁層IL2と同様である。第3絶縁層IL3の厚さは、例えば、1μm以上かつ2.5μm以下である。
【0058】
第2プラグPL2は、第3絶縁層IL3に形成された貫通孔を埋めるように形成されている。第2プラグPL2は、第1配線WR1および第2配線WR2を互いに電気的に接続している。第2プラグPL2は、第3絶縁層IL3の厚さ方向に沿って、第1配線WR1に達するように形成されている。第2プラグPL2についても、半導体技術においてプラグとして採用されている公知の構成が採用され得る。第2プラグPL2の材料の例には、第1プラグPL1と同様である。
【0059】
第2配線WR2は、第3絶縁層IL3上に形成されている。第2配線WR2は、第2プラグPL2を介して第1配線WR1に電気的に接続されている。第2配線WR2については、半導体技術において配線として採用されている公知の構成が採用され得る。第2配線WR2の材料の例は、第1配線WR1と同様である。
【0060】
保護膜PFは、第3絶縁層IL3上に形成されている。保護膜PFには、第2配線WR2を外部に露出するパッド開口部POPが形成されている。保護膜PFは、半導体装置SDを保護することができればよい。保護膜PFの材料の例には、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンおよびPSG(Phospho Silicate Glass)が含まれる。保護膜PFの厚さは、例えば、1μm以上かつ2.5μm以下である。保護膜PFに形成されたパッド開口部POPの内部には、第2配線WR2の一部が露出している。
【0061】
第2配線WR2のうち、パッド開口部POPから露出した部分は、例えば、ボンディングワイヤのような外部配線と接続されるためのパッド部を構成する。なお、当該外部配線を当該パッド部にボンディングする際に、上記光学素子に対して生じうるダメージを抑制する観点から、平面視において、パッド開口部POPは、上記光学素子と重ならないことが好ましい。
【0062】
(固定電荷層FCLの作用)
ここで、固定電荷層FCLの作用について説明する。ここでは、(1)光変調部に対する固定電荷層FCLの作用と、(2)光導波路に対する固定電荷層FCLの作用とについて説明する。
【0063】
(1)光変調部に対する固定電荷層FCLの作用
比較のために、固定電荷層FCLに覆われていない光変調部RLM(以下、「比較用の光変調部」ともいう)についても説明する。
図5は、比較用の光変調部RLMにおいて、空乏化領域DRが形成された状態を示す部分拡大断面図であり、
図6は、本実施の形態に係る光変調部LMにおいて、空乏化領域DRが形成された状態を示す部分拡大断面図である。
図5および
図6において、空乏化領域DRは、黒色の領域で示されている。
【0064】
比較用の光変調部RLMでは、逆バイアスが印加されたとき、第2光導波路OW2において、pn接合面から光導波路の側面に向かって空乏化領域DRが形成される。400nmの幅を有し、かつ200nmの高さを有する第2光導波路OW2に対して、5V程度の逆バイアス電圧が印加された場合を考える。この場合、比較用の光変調部RLMでは、
図5に示されるように、pn接合面から第2光導波路OW2の両側面に向かって100nm程度ずつ空乏化領域DRが拡がる。すなわち、比較例に係る光変調部RLMでは、幅400nmの第2光導波路OW2に対して形成される空乏化領域DRの幅は200nm程度であり、第2光導波路OW2の内部を十分に空乏化できない。
【0065】
これに対して、本実施の形態に係る光変調部LMでは、固定電荷層FCLが、光変調部LMを覆っている。これにより、第2光導波路OW2におけるn型半導体部SRnの表面(上面および側面)には、反転層が形成されている。上記の条件と同様の条件で光変調部LMに逆バイアス電圧が印加された場合、本実施の形態に係る光変調部LMでは、
図6に示されるように、pn接合面から空乏化領域DRが拡がるだけでなく、上記反転層からも空乏化領域DRが拡がる。すなわち、本実施の形態に係る光変調部LMでは、第2光導波路OW2の第1側面SS1と、第2光導波路OW2の上面とからも空乏化領域DRが拡がる。このため、比較用の光変調部ELMと比較して、空乏化領域DRの大きさを約1.3倍程度大きくできる。すなわち、光変調部LMの変調効率が向上する。なお、上記反転層の形成領域を大きくし、空乏化領域DRをより広範囲に拡げる観点から、第2光導波路OW2の延在方向に直交する断面において、n型半導体部SPnの占有面積は、p型半導体部SPpの占有面積より大きいことが好ましい。
【0066】
(2)光導波路に対する固定電荷層FCLの作用
比較のために、固定電荷層FCLに覆われていない第1光導波路ROW1(以下、「比較用の第1光導波」ともいう)についても説明する。
図7は、比較用の第1光導波路ROW1を示す部分拡大断面図であり、
図8は、本実施の形態に係る第1光導波路OW1を示す部分拡大断面図である。
図7および
図8において、第1光導波路ROW1、OW1の側面の粗さ(「ラインエッジラフネス」ともいう)を強調して示している。
【0067】
半導体層のドライエッチングによって、第1光導波路ROW1が形成される場合、
図7に示されるように、第1光導波路ROW1の側面の表面粗さは、第1光導波路OW1の上面の表面粗さと比較して大きい傾向がある。このため、第1光導波路OW1内を光が伝搬する際に、第1光導波路OW1のラインエッジラフネスに起因して光損失(伝搬損)が生じ得る。
【0068】
しかしながら、本実施の形態に係る第1光導波路OW1は、固定電荷層FCLにより覆われている。これにより、
図8に示されるように、第1光導波路OW1の表面には、P型反転層PINが形成されている。第1光導波路OW1内を伝搬する光は、P型反転層PINの存在により第1光導波路OW1の表面に到達し難くなる。このため、第1光導波路OW1のラインエッジラフネスに起因する上記伝搬損が低減される。
【0069】
(半導体装置の製造方法)
次いで、本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法の一例について説明する。
図9~
図17は、半導体装置SDの製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
【0070】
本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法は、(1)半導体ウェハSWの準備工程と、(2)光学素子の形成工程と、(3)固定電荷層FCLの形成工程と、(4)配線層の形成工程と、を含む。
【0071】
(1)半導体ウェハSWの準備工程
まず、
図9に示されるように、第1面(表面)SF1および第2面(裏面)SF2を有する半導体基板SUBと、半導体基板SUBの第1面SF1上に形成された第1絶縁層IL1と、第1絶縁層IL1上に形成された半導体層SLと、を有する半導体ウェハSWを準備する。半導体ウェハSWは、製造されてもよいし、市販品として購入されてもよい。
【0072】
半導体ウェハSWは、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板である。SOI基板の製造方法としては、公知の製造方法から適宜選択され得る。SOI基板の製造方法の例には、SIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)法およびスマートカット法が含まれる。
【0073】
半導体基板SUBの材料の例は、前述の通りである。基板SUBの厚さは、例えば、700~900μmである。第1絶縁層IL1の材料および厚さの例は、前述の通りである。半導体層SLの材料の例には、シリコンおよびゲルマニウムが含まれる。半導体層SLの材料の結晶構造は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。
【0074】
(2)光学素子の形成工程
次いで、
図10に示されるように、準備した半導体ウェハSWを加工して第1光導波路OW1および光変調部LMなどの光学素子を形成する。本実施の形態では、第1光導波路OW1と、第2光導波路OW2およびスラブ部SLBを有する光変調部LMとが、以下の手順により形成される。上記光学素子の形成方法としては、シリコンフォトニクス技術における光学素子の公知の形成方法から適宜採用され得る。
【0075】
まず、半導体層SLをパターニングして、第1光導波路OW1、第2光導波路OW2およびスラブ部SLBを形成する。具体的には、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によって、半導体層SLをパターニングする。半導体層SLのエッチング方法は、特に限定されず、例えば、ドライエッチング法である。上記手順を繰り返して、半導体層SLを所望の形状にパターニングする。これにより、第1光導波路OW1、第2光導波路OW2およびスラブ部SLBが形成され得る。
【0076】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入技術によって、所望の不純物濃度のn型不純物を第2光導波路OW2およびスラブ部SLB内に注入する。同様に、所望の不純物濃度のp型不純物を第2光導波路OW2およびスラブ部SLB内に注入する。これにより、
図4で説明したn型半導体部SPnおよびp型半導体部SPpが形成され得る。以上により、第1光導波路OW1および光変調部LMが形成され得る。
【0077】
(3)固定電荷層FCLの形成工程
次いで、
図11に示されるように、第1光導波路OW1および光変調部LMを覆うように第1絶縁層IL1上に固定電荷層FCLを形成する。固定電荷層FCLは、例えば、固定電荷層FCLを構成する材料を堆積すればよい。固定電荷層FCLの形成方法の例には、化学気相成長法(CVD法)、スパッタリング法および原子層蒸着法(ALD法)が含まれる。
【0078】
(4)配線層の形成工程
次いで、上記配線層を固定電荷層FCL上に形成する。前述のとおり、本実施の形態において、上記配線層の形成工程は、第2絶縁層IL2の形成工程、第1プラグPL1の形成工程、第1配線WR1の形成工程、第3絶縁層IL3の形成工程、第2プラグPL2の形成工程、第2配線WR2の形成工程および保護膜PFの形成工程を含む。
【0079】
まず、
図12に示されるように、第1光導波路OW1および光変調部LMを覆うように、固定電荷層FCL上に第2絶縁層IL2を形成する。第2絶縁層IL2の形成方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択され得る。第2絶縁層IL2の形成方法の例には、CVD法が含まれる。第2絶縁層IL2を構成する材料の例は、前述のとおりである。なお、必要に応じて、第2絶縁層IL2の上面は、平坦化処理が施されてもよい。第2絶縁層IL2の上面の平坦化処理の例には、リフロー法、エッチバック法、およびCMP(Chemical mechanical polishing)法が含まれる。
【0080】
次いで、
図13に示されるように、光変調部LMにおけるスラブ部SLBに達する第1プラグPL1を形成する。具体的には、第2絶縁層IL2に貫通孔を形成した後に、当該貫通孔を埋めるように導電膜を形成すればよい。第1プラグPL1の形成方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択され得る。上記導電膜の材料の例には、タングステンが含まれる。
【0081】
次いで、
図14に示されるように、第1プラグPL1に電気的に接続された第1配線WR1を形成する。本実施の形態では、第1配線WR1は、第2絶縁層IL2上に形成されたアルミニウム配線である。第1配線WR1の形成方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択され得る。たとえば、スパッタリング法によりチタン層、窒化チタン層、アルミニウム層、窒化チタン層およびチタン層がこの順に積層された積層膜を第2絶縁層IL2上に形成した後、上記積層膜をパターニングすることによって、第1配線WR1は形成され得る。
【0082】
次いで、
図15に示されるように、第3絶縁層IL3を第2絶縁層IL2上に形成した後に、第2プラグPL2を第3絶縁層IL3内に形成する。本実施の形態では、第3絶縁層IL3は、第1配線WR1を覆うように第2絶縁層IL2上に形成されている。第2プラグPL2は、第1配線WR1に達するように形成される。第3絶縁層IL3の形成方法の例は、第2絶縁層IL2の形成方法と同様である。第2プラグPL2の形成方法の例は、第1プラグPL1の形成方法と同様である。
【0083】
次いで、
図16に示されるように、第2プラグPL2に電気的に接続された第2配線WR2を形成する。本実施の形態では、第2配線WR2は、第3絶縁層IL3上に形成されたアルミニウム配線である。第2配線WR2の形成方法の例は、第1配線WR1の形成方法と同様である。
【0084】
次いで、
図17に示されるように、保護膜PFを第3絶縁層IL3上に形成する。本実施の形態では、保護膜PFは、第2配線WR2を覆うように第3絶縁層IL3上に形成される。保護膜PFの形成方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択され得る。保護膜PFの材料の例は、前述のとおりである。次いで、保護膜PFのうち、第2配線WR2上に位置する部分を除去する。これにより、第2配線WR2の一部を露出するパッド開口部POPが保護膜PFに形成され得る。
【0085】
最後に、半導体ウェハSWをダイシングすることによって、個片化された複数の半導体装置SDが得られる。
【0086】
以上の製造方法により、本実施の形態に係る半導体装置SDを製造することができる。なお、本実施の形態に係る半導体装置SDの製造方法は、必要に応じて、他の工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、他の工程の例には、光源としてのレーザダイオードの配置工程、グレーティングカプラの形成工程、スポットサイズコンバータの形成工程、および受光部の形成工程が含まれる。当該他の工程は、シリコンフォトニクス技術において公知の形成方法から適宜採用され得る。
【0087】
(効果)
本実施の形態に係る半導体装置SDは、第1光導波路OW1と、第2光導波路OW2を含む光変調部LMとを覆っている固定電荷層FCLを有する。これにより、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2における伝搬損が低減される。また、光変調部LMにおいて、広範囲に亘って空乏化領域DRを形成することができる。これにより、光変調部LMの変調効率が向上するため、光変調部LMの小型化を実現できる。これは、結果として、本実施の形態に係る半導体装置SDでは、半導体装置SDの特性を高めることができる。
【0088】
[変形例]
図18は、変形例に係る半導体装置MSDの構成の一例を示す要部断面図である。
【0089】
図18に示されるように、変形例に係る半導体装置MSDは、少なくとも第2光導波路OW2および固定電荷層FCLの間に形成された中間層INTをさらに有する。本変形例では、中間層INTは、第1光導波路OW1および第2光導波路OW2の両方を覆うように、形成されている。固定電荷層FCLは、中間層INTを介して第1光導波路OW1および光変調部LMを覆うように、第1絶縁層IL1上に形成されている。中間層INTは、第1光導波路OW1の上面および側面と、第2光導波路OW2の上面および側面とに直接的に接している。固定電荷層FCLは、中間層INTを介して、第1光導波路OW1の上面および側面と、第2光導波路OW2の上面および側面とに間接的に接している。
【0090】
中間層INTを構成する材料の例には、酸化シリコン(SiO2)および酸窒化シリコン(SiON)が含まれる。中間層INTの厚さが小さすぎると、第2光導波路OW2および固定電荷層FCLの界面準位が十分低減されない傾向がある。中間層INTの厚さが大きすぎると、上記反転層が形成されない傾向がある。このような観点から、中間層INTの厚さは、1nm以上かつ5nm以下であることが好ましい。
【0091】
変形例に係る半導体装置MSDは、中間層INTにより第2光導波路OW2および固定電荷層FCLの界面準位を低減することによって、界面準位の数が多い場合にGR(Grown Recombination)センタで発生し得るホール/エレクトロンペアの変動に起因する空乏化領域の大きさの変動を抑制することができる。結果として、光変調部LMの変調動作をより安定にできる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更され得る。たとえば、上記実施の形態に係る半導体装置SD、MSDは、光学素子として、光導波路OW1および光変調部LMを有する態様について説明したが、必要に応じてグレーティングカプラ、スポットサイズコンバータ、および受光部などの他の光学素子を有していてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、上記配線層の数が2つの場合について説明したが、上記配線層の数は、3つ以上であってもよい。
【0094】
また、第1配線WR1および第2配線WR2が、アルミニウム配線である態様について説明したが、第1配線WR1および第2配線WR2は、銅配線であってもよい。この場合、当該銅配線は、例えば、ダマシン法により形成され得る。
【0095】
また、特定の数値例について記載した場合であっても、理論的に明らかにその数値に限定される場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値であってもよい。また、成分については、「Aを主要な成分として含むB」などの意味であり、他の成分を含む態様を排除するものではない。
【符号の説明】
【0096】
CP ICチップ
DR 空乏化領域
EC1 第1電子回路
EC2 第2電子回路
EC3 第3電子回路
IL1 第1絶縁層
IL2 第2絶縁層
IL3 第3絶縁層
FCL 固定電荷層
INT 中間層
LI 光入力部
LE 光電気混載装置
LM、RLM 光変調部
OW 光導波路
OW1、ROW1 第1光導波路
OW2 第2光導波路
PF 保護膜
PIN 反転層
PL1 第1プラグ
PL2 第2プラグ
POP パッド開口部
SD、MSD、RSD 半導体装置
SF1 第1面
SF2 第2面
SL 半導体層
SLB スラブ部
SPn n型半導体部
SPp p型半導体部
SS1 第1側面
SS2 第2側面
SUB 半導体基板
SW 半導体ウェハ
WR1 第1配線
WR2 第2配線