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特許7145083高等植物の葉緑体におけるトランス遺伝子発現を増加させるためのコドン最適化及びリボソームプロファイリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】高等植物の葉緑体におけるトランス遺伝子発現を増加させるためのコドン最適化及びリボソームプロファイリング
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20220922BHJP
   C07K 14/105 20060101ALI20220922BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20220922BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220922BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 39/13 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 8/66 20060101ALI20220922BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C12N15/82 100Z
C07K14/105 ZNA
C07K14/195
A01H5/00 A
C12N9/24
A61K38/47
A61K39/13
A61K8/66
A61Q11/00
A61K36/28
A61K36/81
A61K9/68
A61P31/14
A61P1/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018568189
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2017023263
(87)【国際公開番号】W WO2017165320
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】62/310,788
(32)【優先日】2016-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘンリー
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0179530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0253935(US,A1)
【文献】特表2002-526116(JP,A)
【文献】特開平10-201483(JP,A)
【文献】特開昭63-132844(JP,A)
【文献】MURRAY, E. E. et al. ,Codon usage in plant genes,Nucleic Acids Res. ,1989年,Vol. 17, No. 2,P. 477-498
【文献】Ribosome Profiling Enables Comprehensive Translation Analysis,[online],illumina Application Note:Sequencing,2010年,[令和3年2月15日検索],インターネット<URL:https://www.illumina.com/content/dam/illumina-marketing/documents/products/appnotes/appnote_riboseq.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A01H
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉緑体における目的のタンパク質をコードするトランス遺伝子の翻訳を増加させる方法であって、
a)前記目的のタンパク質をコードする核酸の天然配列を分析すること、及び前記配列中のレアコドンを高等種子植物種の葉緑体のpsbA遺伝子で優先的に使用されるコドンに置き換えること;
b)合成のコドン最適化配列を作製すること、及び前記配列を葉緑体形質転換ベクターにクローニングすることであって、前記合成配列が、前記葉緑体での発現に好適な5’及び3’調節エレメントに作動可能に連結されていること;
c)前記目的のタンパク質が発現する条件下で標的植物を前記ベクターで形質転換することであって、前記レアコドンを優先的コドンで置換することにより、天然配列を用いて観察される発現レベルと比べて少なくとも2倍のタンパク質発現の増加が生じること
を含み、
フェニルアラニンのレアコドンが優先的なTTTコドンに置き換えられており、
ロイシンのレアコドンが優先的なTTAコドンに置き換えられており、
イソロイシンのレアコドンが優先的なATTコドンに置き換えられており、
バリンのレアコドンが優先的なGTAコドンに置き換えられており、
セリンのレアコドンが優先的なTCTコドンに置き換えられており、
プロリンのレアコドンが優先的なCCTコドンに置き換えられており、
スレオニンのレアコドンが優先的なACTコドンに置き換えられており、
アラニンのレアコドンが優先的なGCTコドンに置き換えられており、
チロシンのレアコドンが優先的なTATコドンに置き換えられており、
ヒスチジンのレアコドンが優先的なCACコドンに置き換えられており、
グルタミンのレアコドンが優先的なCAAコドンに置き換えられており、
アスパラギンのレアコドンが優先的なAACコドンに置き換えられており、
リジンのレアコドンが優先的なAAAコドンに置き換えられており、
アスパラギン酸のレアコドンが優先的なGATコドンに置き換えられており、
グルタミン酸のレアコドンが優先的なGAAコドンに置き換えられており、
システインのレアコドンが優先的なTGTコドンに置き換えられており、
トリプトファンのレアコドンが優先的なTGGコドンに置きえられており、
アルギニンのレアコドンが優先的なCGTコドンに置き換えられており、および
グリシンのレアコドンが優先的なGGTコドンに置き換えられている方法。
【請求項2】
前記目的のタンパク質を単離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物から葉を採取して凍結乾燥することを更に含み、前記凍結乾燥葉が前記目的のタンパク質を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コドン最適化配列においてAT含量を増加させることをさらに含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
配列番号25の核酸によってコードされる合成ムタナーゼ酵素の製造のための、請求項1から4の何れか一項に記載の方法
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の方法を実施して目的のタンパク質を得ることを含む、目的のタンパク質の製造方法。
【請求項7】
目的のタンパク質が配列番号4の核酸によってコードされる合成VP1タンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
目的のタンパク質が配列番号25の核酸によってコードされる合成ムタナーゼ酵素である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
抗VP1-IgG1力価及び抗VP1-IgA力価の産生を引き起こすためおよびポリオウイルスに対する免疫をブーストするための医薬を製造する方法であって、請求項1-の何れかの方法を実施すること、および得られた合成VP1タンパク質を用いて医薬を得ることを含む、方法。
【請求項10】
う蝕の形成を阻害するための医薬を製造する方法であって、
請求項1-5の何れかの方法を実施して合成ムタナーゼ酵素を得ること、および得られた合成ムタナーゼ酵素を用いて医薬を得ることを含み、前記ムタナーゼが対象のプラーク形成を阻害する、方法。
【請求項11】
前記ムタナーゼ酵素が抗菌ペプチドと融合され、及びチューインガムとして製剤化される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
配列番号4または25に記載のポリヌクレオチドを含むプラスチド形質転換ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターで形質転換された植物であって、食用である植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/310,788号明細書に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)、助成金番号第R01 HL107904号、第R01 HL109442号、第R01 EY 024564号、及び国立科学財団(National Science Foundation)、助成金番号第IOS-1339130号からの連邦政府の支援を受けて行われた。連邦政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、ゲノミクス法、プロテオミクス法及びリボソームプロファイリング法を用いたコドン最適化による葉緑体におけるトランス遺伝子発現の改良に関する。そのように改良されたトランス遺伝子及びその使用方法もまた提供される。
【背景技術】
【0004】
本明細書全体を通じて、本発明が関係する技術分野の水準を説明するため幾つかの刊行物及び特許文献を引用する。それらの引用の各々は、それらが完全に示されたものとして参照により本明細書に援用される。
【0005】
葉緑体内のヒト治療用タンパク質の臨床移行における大きな制約は、その低い発現レベルである。原核生物遺伝子、又はより短いヒト遺伝子は、葉緑体で高発現する(全葉タンパク質の最大70%)。例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)及びバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)の天然の原核生物遺伝子は、葉緑体内で全可溶性タンパク質(TSP)のそれぞれ最大29.4%及び45.3%発現した(De Cosa et al.,2001;Ruhlman et al.,2010)。小さいヒト遺伝子は、インスリン様成長因子1(約7.8kDa、Daniell et al.,2009)、プロインスリン(約12kDa、Ruhlman et al.,2010)、及びインターフェロン-α2b(約21.5kDa、Arlen et al.,2007)を含め、葉緑体内で極めて高レベルで発現した。しかしながら、大型のヒトタンパク質の発現は大きな課題を示す。
【0006】
同様に、ウイルスワクチン抗原の発現は全く予測不能であり、発現レベルは高いか、中程度か、又は極端に低いかである。例えば、ロタウイルスのVP6抗原は、N末端領域におけるタンパク質分解に対するその感受性に起因して、タバコ葉緑体内での蓄積が極めて低レベルであった(Birch-Machin et al.,2004;Inka Borchers et al.,2012)。ヒトパピローマウイルス16型L1抗原の発現レベルは0.1%~1.5%まで様々であり、LTBと融合した場合にはタバコ葉緑体内に最大2%蓄積したが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)と融合した場合には極端に低かった(Lenzi et al.,2008;Waheed et al.,2011a;Waheed et al.,2011b;Hassan et al.,2014)。更に、タバコにおいては、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対する葉緑体由来の抗原の不安定性が報告されている。葉緑体由来のp24タンパク質は、天然p24 cDNAを発現させたとき最も若い葉に約2.5%蓄積したに過ぎず、成葉では検出不能であった(McCabe et al.,2008)。高用量のワクチン抗原が高レベルの免疫を刺激して、病原体に対するより高い防御性を付与することは周知であり、従って葉緑体内でのより高レベルの発現が大きな要件である(Chan and Daniell,2015)。
【0007】
かかる課題は、最適な調節配列(プロモーター、5’及び3’UTR)、特に種特異的内因性エレメントの使用によって対処されている(Ruhlman et al.,2010)。単純にヒト遺伝子の各コドンの3番目の位置を修飾することによってAT含量を増加させる大ざっぱな試みが行われている(Daniell et al.,2009)。幾つかの同義コドンの翻訳効率に関する挿入遺伝子のインビトロアッセイは、必ずしもプラスチドmRNAにおけるコドン使用と相関するわけではないが(Nakamura and Sugiura,2007)、かかるインビボ研究がないため、これまでのコドン最適化研究で用いられている(Ye et al.,2001;Lenzi et al.,2008;Jabeen at al.,2010)。従って、数百の葉緑体ゲノムのシーケンシングにより集積した広範な知識を利用して高発現葉緑体遺伝子のコドン使用及び頻度を理解しようとする体系的な研究が行われたことはない。別の大きな課題は、多量体構造体の凝集又は形成に起因して唯一の信頼性の高い方法(ELISA)を用いることができないため、不溶性タンパク質を定量化する信頼性の高い方法がないことである。並列反応モニタリング(PRM)による質量分析法によるターゲットプロテオーム定量化が、その特異度及び感度に基づき相対的及び絶対的タンパク質定量化の強力なツールとなっている(Domon and Aebersold,2010;Gallien et al.,2012)。加えて、PRMは高い特異度及び多重化特性を提供するため、nanoLC保持時間及びプレカーサーイオンm/zに基づき(Gallien et al.,2012)、ペプチドの複数のフラグメントイオンを特異的にモニタすることが可能であるが、この概念は植物タンパク質薬物では一度も試験されたことがない。
【0008】
弱毒生ウイルス及び死滅ウイルスの発現に関連した欠点には、ビルレンスへの復帰可能性、免疫原性レベルの低さ、種間の抗原変異性、及び野生型株への遺伝物質の移入可能性が含まれる(Burns et al.,2014)。2006年に初めて確認されたナイジェリアでの2型ワクチン由来ポリオ(VDVP2)のアウトブレイクはアフリカでエンデミックとなり、今日まで存続している(Famulare et al.,2015)。ナイジェリア北部では、2005年以降、2型循環型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV2)に関連するこの大規模な灰白髄炎のアウトブレイクが発生している;403症例の各々からの分離株のP1/カプシド領域配列の系統発生解析によれば、2005~2011年にこのアウトブレイクが23の独立したVDPV2の出現となり、そのうち少なくとも7個が循環型系統群を樹立したことが報告された(Burns et al.,2013)。世界中でポリオ・サーベイランス・プログラム(PSP)を通じて急性弛緩性麻痺(AFP)症例に関連する非ポリオエンテロウイルス(NPEV)が高頻度で報告されている(Laxmivandana et al.,2013)。野生ポリオ症例は多くの国で集中的な経口ポリオワクチン接種プログラムにより根絶されているが、世界中で非ポリオAFP症例の報告が増えつつある。現在認識されているEV種は、3つのPV血清型を含むポリオウイルス(PV)と、ヒトエンテロウイルス(HEV)A、B、C及びDとに分けられている(Dhole et al.,2009)。それらのゲノムの系統発生解析に基づけば、PVとHEV-C種の血清型とは近縁関係にある(Brown et al.,2003)。更に、HEV種Cの循環頻度の高さが、ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)アウトブレイクの報告につながっている(Rakoto-Andrianarivelo et al.,2005)。2005~2011年の間に、ナイジェリアで非ポリオエンテロウイルスC(NPEV-C)起源の非構造領域(NSR)に起源を有する23の循環型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)系統が確認された。従って、セービン経口ポリオウイルスワクチン(OPV)と在来のNPEV-Cとの間での組換えが、ナイジェリアでアウトブレイク時に分離された組換えcVDPV系統の幾つかをもたらした(Adeniji et al.,2015)。cVDPVは、概してOPVとHEV-Cとの間の相同組換えによって生じるもので、全世界で灰白髄炎のアウトブレイクを数多く引き起こしたため、健康への重大な脅威となった(Jiang et al.,2007)。ワクチン接種率が低い地域では、OPVとHEV-Cの組換えに起因して強毒性のcVDPVが野生型PVに置き換わるリスクがある。地球規模のPV根絶に向け、全世界でOPVワクチン接種を中止して、新たなアウトブレイクにつながり得るワクチン由来ポリオウイルス株の数を最小限に抑えることが提案されている(Kouiavskaia et al.,2015;Parker et al.,2015)。
【0009】
植物由来サブユニットワクチンは耐熱性であり、動物病原体による汚染がない。それらはまた、複数の感染症を防御するため複数の抗原及び経粘膜担体(carrire)を含むように操作することもできる(Chan et al.,2015)。経口送達後に回腸の絨毛間で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するインタクトな植物細胞に関する最近の報告により、消化器系にあるタンパク質薬物が胃内の酸及び酵素から保護されることについての直接的なエビデンスが提供された;経粘膜担体CTBと融合したGFPは、植物細胞から腸管腔内に放出されると、上皮細胞によってGM1受容体介在性送達を通じて吸収された(Xiao et al.,2015)。かかる機構的及び概念的進歩は、発酵、精製、低温貯蔵及び輸送などの複雑な生産システムのコスト削減により、ワクチン送達に革命をもたらし得る(Jin et al.,2015及びKwon et al.,2013。核ゲノムで発現させるジャガイモ由来のHBsAgが一昔前に前臨床試験及びヒト臨床試験で試験されたが(Kong et al.,2001;Thanavala et al.,2005)、後期段階に進む上での進捗は遅れている。2つの大きな課題は、核ゲノムによる抗原の発現レベルの低さ、及びアジュバントによる抗原プライミング注射なしにはトレランスが誘導される可能性があることである(Chan et al.,2015;Rybicki et al,2014)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、葉緑体における目的のタンパク質をコードするトランス遺伝子の翻訳を増加させる方法が提供される。例示的方法は、前記目的のタンパク質をコードする核酸の天然配列を分析すること、及び前記配列中のコドンを、100を超える植物種にわたる葉緑体のpsbA遺伝子で優先的に使用されるコドンに置き換えること、及び任意選択でリボソームプロファイリングを実施すること、及び翻訳中にリボソームストールを引き起こす任意のコドンを除去することを含む。次に合成のコドン最適化配列が作製されて葉緑体形質転換ベクターにクローニングされ、前記合成配列は、前記葉緑体での発現に好適な5’及び3’調節エレメントに作動可能に連結されている。次に標的植物が、前記治療用タンパク質が発現する条件下でこのベクターによって形質転換され、ここで前記コドンの置換により、天然配列を用いて観察される発現レベルと比べて少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、20倍又は40倍のタンパク質発現の増加が生じる。本方法は、任意選択で、前記目的のタンパク質を単離することを伴い得る。好ましい実施形態において、本方法は、前記植物から葉を採取して凍結乾燥することを更に含み、ここで凍結乾燥葉は目的のタンパク質を含む。
【0011】
特に好ましい実施形態において、ポリオ治療用のワクチンに有利に使用し得る合成VP1タンパク質タンパク質が提供される。従って、ポリオウイルスに対して以前免疫されたことがある対象に全身及び粘膜免疫を生じさせる方法であって、前記対象にアジュバントの存在下で上記に記載される凍結乾燥植物細胞を経口投与することを含み、前記投与が前記対象における抗VP1-IgG1力価及び抗VP-1-IgA力価の産生を引き起こし、それにより前記ポリオウイルスに対する免疫がブーストされる方法が提供される。
【0012】
別の実施形態において、第VIII因子重鎖及び軽鎖がコドン最適化されている。そのように作製された第VIII因子は、血液凝固障害の治療方法に有利に使用し得る。従って、本発明はまた、本明細書に開示されるとおり効率的に発現するよう最適化された凝固因子を用いた血液凝固障害の治療方法も提供する。本明細書ではFVIIIが例示されるが、本明細書に提供される指針を用いてFIX、FX、及びFVIIなどの他の凝固因子も容易に最適化することができる。
【0013】
本発明の方法はまた、合成インスリン成長因子(IGF-1)の作製にも有利に使用し得る。本明細書に記載される合成IGF-1を使用したIGF-1欠損の治療方法もまた本発明の範囲内にある。
【0014】
更に別の実施形態において、合成ムタナーゼ酵素が提供される。合成ムタナーゼ酵素を使用したう蝕の治療方法もまた開示される。
【0015】
本発明の別の態様において、ポリオウイルスに対して以前免疫されたことがある対象に全身及び粘膜免疫を生じさせる方法であって、前記対象にアジュバントの存在下で上記に記載される凍結乾燥植物細胞を経口投与することを含み、前記投与が前記対象における抗VP1-IgG1力価及び抗VP-1-IgA力価の産生を引き起こし、それにより前記ポリオウイルスに対する免疫がブーストされる方法。
【0016】
また、本明細書に記載される合成タンパク質をコードするプラスチド形質転換ベクターも本発明の範囲内にある。かかるベクターを含む植物もまた、本発明の態様を形成する。好ましい実施形態において、植物は食用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】植物葉緑体における異種遺伝子の発現に最適化されたコドンのアルゴリズム開発。コドン最適化アルゴリズムの開発手順。NCBIから収集し、コドン優先度に関して分析した133の植物種からのpsbA遺伝子の配列データ。Javaプログラミング言語を用いてコドン最適化器を開発し、図示するコドン優先度表が生成された。コドン優先度は、各アミノ酸のパーセンテージ使用率によって示す。
図2-1】レタス葉緑体形質転換ベクターへのコドン最適化合成FVIII単鎖、重鎖及び軽鎖遺伝子の構築、並びに大腸菌(E.coli)及びホモプラスミック系統におけるその発現のPCRによる確認。(図2A)CTB-FVIII単鎖、重鎖及び軽鎖発現カセットを含むベクターコンストラクトの概略図。Prrn、rRNAオペロンプロモーター;aadA、アミノグリコシド3’-アデニリルトランスフェラーゼ(adenylytransferase)遺伝子;PpsbA、psbA遺伝子のプロモーター及び5’-UTR;CTB、コレラ非毒性Bサブユニットのコード配列;FVIII SCC、コドン最適化FVIII重鎖(Bドメインからの14アミノ酸を含むHC)及び軽鎖(LC)の融合形態;TpsbA、psbA遺伝子の3’-UTR;trnI、イソロイシル-tRNA;trnA、アラニル-tRNA。pUC-LSLFをBamHIで消化することによりサザンブロットプローブ(SB-P)を作成し、トランスプラストミック植物からのゲノムDNAをHindIIIによって消化した。
図2-2】レタス葉緑体形質転換ベクターへのコドン最適化合成FVIII単鎖、重鎖及び軽鎖遺伝子の構築、並びに大腸菌(E.coli)及びホモプラスミック系統におけるその発現のPCRによる確認。(図2B)大腸菌(E.coli)におけるHC、LC及びSCの天然配列又はコドン最適化配列の発現に関するウエスタンブロットアッセイ。FVIII HC、LC及びSCの天然配列又はコドン最適化配列を含む葉緑体発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)から全タンパク質を抽出した。タンパク質を指示のとおりロードし、抗CTB抗体(1対10,000)でプローブした。形質転換及び非形質転換(UT)大腸菌(E.coli)は、アンピシリン(50μg/ml)を補足したテリフィックブロス(TB)培地中において37℃で一晩インキュベートした。矢印は、対応するサイズが予想されたタンパク質を示す(CTB-FVIII HC、100kDa;CTB-FVIII LC、92kDa及びCTB-FVIII SC、179kDa)(図2C)CTB-FVIII LC及びSC発現カセットの組込みに関するPCR分析。Aに指示するとおりの特異的な一組のプライマーを使用してDNA断片を増幅し、1%アガロースゲル上で分離させた。UT、非形質転換野生型gDNA;S1~S3、3つの独立したFVIII SCトランスプラストミック系統;L1~L8、8つの独立したFVIII LCトランスプラストミック系統(linge)。(図2D)CTB-FVIII SCCのサザンブロット分析。全レタスゲノムDNA(3μg)をHindIIIで消化し、0.8%アガロースゲル上で分離し、Nytran膜にブロットした。UT、非形質転換野生型植物;1~4、4つの独立した2ラウンド目のトランスプラストミック系統。
図2-3】レタス葉緑体形質転換ベクターへのコドン最適化合成FVIII単鎖、重鎖及び軽鎖遺伝子の構築、並びに大腸菌(E.coli)及びホモプラスミック系統におけるその発現のPCRによる確認。(図2E)配列コドン最適化FVIII単鎖。HC、A1及びA2ドメインを含むFVIII重鎖(配列番号1);LC、A3、C1及びC2ドメインを含むFVIII軽鎖。配列番号2)CTB:コレラ非毒性Bサブユニットの天然配列(配列番号3)。
図3】サザンブロットを用いたホモプラスミック系統の確認及びホモプラスミックトランスプラストミック植物系統で発現したタンパク質の定量化。(図3A及び図3B)CTB-FVIII LCC及びCTB-FVIII SCCのサザンブロット分析。全レタスゲノムDNA(3μg)をHindIIIで消化し、0.8%アガロースゲル上で分離し、Nytran膜にブロットした。UT、非形質転換野生型植物;L1~L8及びS1~S4、それぞれCTB-FVIII LCC及びCTB-FVIII SCCの8つ及び4つの独立した2ラウンド目のトランスプラストミック系統。(図3C)CTB-FVIII HCC、CTB-FVIII LCC及びCTB-FVIII SCCを発現する凍結乾燥したトランスプラストミックレタス葉から抽出した全葉タンパク質(500μl抽出緩衝液中10mg)の4マイクログラムを指示されるとおりロードし、8%SDS-PAGEで分離させた。抗CTB抗体(1対10000)を使用してCTB融合FVIIIタンパク質をプローブした。UT、非形質転換野生型(UT);Co、コドン最適化配列。定量化のためCTB標準を指示されるとおりロードし、計算した定量化結果(μg/mg)を各バッチの下に示した。CTB-FVIII HCC及びLCCを発現するトランスプラストミックレタス植物はペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の温室で生育して採取し、CTB-FVIII SCCレタス植物はFraunhofer cGMP施設の水耕培養システムで発芽させて生育し、及び葉は毎月採取した。
図4-1】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け並びにCNTB-FVIII HC及びVP1遺伝子の発現のウエスタンブロットによる定量化。(図4A)CTB-VP1発現カセットを含むタバコ及びレタス葉緑体形質転換ベクター。Prrn、rRNAオペロンプロモーター;aadA、アミノグリコシド3’-アデニリルトランスフェラーゼ(adenylytransferase)遺伝子;PpsbA、psbA遺伝子のプロモーター及び5’-UTR;CTB、非毒性コレラBサブユニットのコード配列;VP1、ポリオウイルスVP1遺伝子のコード配列(配列番号4);TpsbA、psbA遺伝子の3’-UTR;trnI、イソロイシル-tRNA;trnA、アラニル-tRNA。
図4-2】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け並びにCNTB-FVIII HC及びVP1遺伝子の発現のウエスタンブロットによる定量化。レタス(図4B)又はタバコ(図4C)から抽出した全葉タンパク質を指示濃度でロードし、グラジエント(4%~20%)SDS-PAGEで分離した。図4D.野生型(WT)、天然CTB-VP1(N)及びコドン最適化CTB-VP1(CO)タバコ植物から抽出した全タンパク質を抗CNTB抗体でプローブした。定量化の標準としてCNTBをロードした。
図5】ノーザンブロットによるトランス遺伝子転写物の定量化。200bpのpsbA 5’UTR(FVIIIについて)又はpsbA 3’UTR(VP1について)調節配列でプローブしたCNTB-F8 HC(図5A)及びCNTB-VP1(図5B)遺伝子のノーザンブロット。下段及び上段の転写物が内因性psbA遺伝子及びCNTB-FVIII遺伝子を表す。ローディングが等しいことを評価するため、臭化エチジウム(EtBr)染色したゲルを含める。UT、非形質転換野生型;N、天然配列;CO、コドン最適化配列。
図6A】N末端からC末端へのタンパク質配列におけるCNTB-FVIII及びCNTB-VP1タンパク質のPRM質量分光分析。Exe-yは、コドン最適化遺伝子又は天然遺伝子のCTB-F8 HCからのペプチドのペプチドモル濃度計測値(カラム上のfmol)を表す。図6A.CNTB:ペプチド1、IFSYTESLAGK(配列番号5);ペプチド2、IAYLTEAK(配列番号6);ペプチド3、LCVWNNK(配列番号7)。
図6B】N末端からC末端へのタンパク質配列におけるCNTB-FVIII及びCNTB-VP1タンパク質のPRM質量分光分析。Exe-yは、コドン最適化遺伝子又は天然遺伝子のCTB-F8 HCからのペプチドのペプチドモル濃度計測値(カラム上のfmol)を表す。図6B.FVIIIペプチド:ペプチド4、FDDDNSPSFIQIR(配列番号8);ペプチド5、WTVTVEDGPTK(配列番号9);ペプチド6、YYSSFVNMER(配列番号10)。
図6C】N末端からC末端へのタンパク質配列におけるCNTB-FVIII及びCNTB-VP1タンパク質のPRM質量分光分析。Exe-yは、コドン最適化遺伝子又は天然遺伝子のCTB-F8 HCからのペプチドのペプチドモル濃度計測値(カラム上のfmol)を表す。図6C.CNTB:ペプチド1、IFSYTESLAGK(配列番号1);ペプチド3、LCVWNNK(配列番号3);ペプチド2、IAYLTEAK(配列番号5)。各試料における4つのテクニカルレプリケートの中央値を表す。
図7】PRM質量分光分析及びコドン最適化後に観察される変化倍数。報告される変化倍数の増加は、それぞれ6つ及び3つのペプチド、CNTB-FVIII(図7A)及びCNTB-VP1(図7B)による結果の中央値を表す。Exe-yは、コドン最適化又は天然植物抽出物からのペプチドの変化倍数の増加(カラム上のfmol計測値に基づく)を表す。CNTB:ペプチド1、IFSYTESLAGK(配列番号5);ペプチド2、IAYLTEAK(配列番号6);ペプチド3、LCVWNNK(配列番号7)。FVIII:ペプチド4、FDDDNSPSFIQIR(配列番号8);ペプチド5、WTVTVEDGPTK(配列番号9);ペプチド6、YYSSFVNMER(配列番号10)。
図8A】天然及びコドン最適化VP1又はF8 HCを発現するトランスプラストミック植物のリボソームプロファイリングデータ。統合ゲノムビューワ(Integrated Genome Viewer:IGV)で天然(N)トランス遺伝子、コドン最適化(CO)トランス遺伝子並びに内因性psbA及びrbcL遺伝子のリードカバレッジを表示する。図8A.天然及びコドン最適化VP1トランス遺伝子を発現するタバコ葉のデータ。天然系統のデータ中の連続したアラニンコドンの各対にアスタリスクを付す。3つの連続したアラニンコドンに+記号を付す。天然VP1を発現する植物における多くの強力なリボソームポーズ部位が、対を成すアラニンコドンにマッピングされ、一方、これはコドン最適化系統では観察されない。コドン最適化系統における連続したセリンコドンの各対に三角を付す。主要なリボソームストールは、コドン最適化VP1遺伝子では5つの密接したセリンコドンを有する領域にマッピングされる。
図8B】天然及びコドン最適化VP1又はF8 HCを発現するトランスプラストミック植物のリボソームプロファイリングデータ。統合ゲノムビューワ(Integrated Genome Viewer:IGV)で天然(N)トランス遺伝子、コドン最適化(CO)トランス遺伝子並びに内因性psbA及びrbcL遺伝子のリードカバレッジを表示する。図8B.天然及びコドン最適化F8 HCトランス遺伝子を発現するレタス植物のデータ。天然FB HC遺伝子における主要なリボソームストールが、天然psbA遺伝子では使用されないコドンであるCTCロイシンコドンの隣接する対にマッピングされる。リボソームフットプリントカバレッジはコドン最適化トランス遺伝子ではるかに一様性が高い。
図8C】天然及びコドン最適化VP1又はF8 HCを発現するトランスプラストミック植物のリボソームプロファイリングデータ。統合ゲノムビューワ(Integrated Genome Viewer:IGV)で天然(N)トランス遺伝子、コドン最適化(CO)トランス遺伝子並びに内因性psbA及びrbcL遺伝子のリードカバレッジを表示する。図8C.絶対及び相対リボソームフットプリントカウント。
図9A】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け。図9A.天然及びコドン最適化CTB-VP1トランスプラストミックタバコ系統のサザンブロット分析。AflIIIで消化した野生型(WT)及び形質転換(系統1、2、3及び4)ゲノムDNAを、BamHI/BglIIで消化したDIG標識フランキング配列でプローブした。
図9B】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け。図9B.CTB-VP1発現カセットを含むタバコ及びレタス葉緑体形質転換ベクター。Prrn、rRNAオペロンプロモーター;aadA、アミノグリコシド3’-アデニリルトランスフェラーゼ(adenylytransferase)遺伝子;PpsbA、psbA遺伝子のプロモーター及び5’-UTR;CTB、非毒性コレラBサブユニットのコード配列;VP1、ポリオウイルスVP1遺伝子のコード配列;TpsbA、psbA遺伝子の3’-UTR;trnI、イソロイシル-tRNA;trnA、アラニル-tRNA;
図9C】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け。図9C.葉緑体へのトランス遺伝子の部位特異的組込みを確認するサザンブロット分析。
図9D】天然及びコドン最適化CTB-VP1を発現するトランスプラストミックタバコ及びレタス系統の作出及び特徴付け。図9D.2つの独立したレタストランスプラストミック系統及び野生型(WT)対照におけるCTB-VP1のウエスタンブロット分析。
図10】トランスプラストミック系統で産生されたCTB-VP1の安定性。試験した全ての凍結乾燥試料において周囲温度で4及び8ヵ月間の貯蔵後にCTB-VP1融合タンパク質のインタクトな単量体バンドが観察され、いかなる検出可能なCTB-VP1の分解もなかった。GM1結合ELISAアッセイを用いて、葉緑体で発現したCTB-VP1の五量体構造の形成を評価したところ、タバコからの天然の及びコドン最適化した新鮮及び凍結乾燥CTB-VP1の両方がCTB(陽性対照)と同等の吸光度を示し、一方、野生型植物又はBSA(陰性対照)からはシグナルは検出されなかった。
図11-1】経口又は皮下ワクチン接種後の血清VP1-IgG1及びVP1-IgA抗体力価の評価。IPVでプライミングし、且つサポニン及び/又はスクアレンをアジュバントとしたIPV又は植物製天然若しくはコドン最適化VP1のいずれかでブーストしたマウスの抗体反応。プレートを精製VP1タンパク質(10μg/ml)でコーティングし、血清試料(ブーストの2又は4週間後)、続いてHRPコンジュゲートラット抗マウスIgG1(1:1000)(BD)又はHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(1:5000)(American Qualex)でプローブした。(図12A図12F)種々の時点におけるVP1-IgG1抗体力価:(図12A図12D)週1回のブーストと0、29、43及び57日目の血清試料採取;(図12E図12F)月1回のブーストと87及び117日目の試料採取;(図12G図12J)種々の時点におけるVP1-IgA抗体力価:(図12G図12I)週1回のブーストと0、29及び43日目の血清試料採取;(図12J)月1回のブーストと117日目の血清試料採取。群1:未処置;群2:IPVでプライミング及びブースト;群5:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りで天然VP1タンパク質でブースト;群8:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りでコドン最適化VP1タンパク質でブースト;群9:サポニン及びスクアレンの両方をアジュバントとしてコドン最適化VP1でブースト、但しIPVプライミング無し。スチューデントt検定による統計的分析(GraphPad Prism バージョン6)。**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す。
図11-2】経口又は皮下ワクチン接種後の血清VP1-IgG1及びVP1-IgA抗体力価の評価。IPVでプライミングし、且つサポニン及び/又はスクアレンをアジュバントとしたIPV又は植物製天然若しくはコドン最適化VP1のいずれかでブーストしたマウスの抗体反応。プレートを精製VP1タンパク質(10μg/ml)でコーティングし、血清試料(ブーストの2又は4週間後)、続いてHRPコンジュゲートラット抗マウスIgG1(1:1000)(BD)又はHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(1:5000)(American Qualex)でプローブした。(図12A図12F)種々の時点におけるVP1-IgG1抗体力価:(図12A図12D)週1回のブーストと0、29、43及び57日目の血清試料採取;(図12E図12F)月1回のブーストと87及び117日目の試料採取;(図12G図12J)種々の時点におけるVP1-IgA抗体力価:(図12G図12I)週1回のブーストと0、29及び43日目の血清試料採取;(図12J)月1回のブーストと117日目の血清試料採取。群1:未処置;群2:IPVでプライミング及びブースト;群5:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りで天然VP1タンパク質でブースト;群8:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りでコドン最適化VP1タンパク質でブースト;群9:サポニン及びスクアレンの両方をアジュバントとしてコドン最適化VP1でブースト、但しIPVプライミング無し。スチューデントt検定による統計的分析(GraphPad Prism バージョン6)。**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す。
図11-3】経口又は皮下ワクチン接種後の血清VP1-IgG1及びVP1-IgA抗体力価の評価。IPVでプライミングし、且つサポニン及び/又はスクアレンをアジュバントとしたIPV又は植物製天然若しくはコドン最適化VP1のいずれかでブーストしたマウスの抗体反応。プレートを精製VP1タンパク質(10μg/ml)でコーティングし、血清試料(ブーストの2又は4週間後)、続いてHRPコンジュゲートラット抗マウスIgG1(1:1000)(BD)又はHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(1:5000)(American Qualex)でプローブした。(図12A図12F)種々の時点におけるVP1-IgG1抗体力価:(図12A図12D)週1回のブーストと0、29、43及び57日目の血清試料採取;(図12E図12F)月1回のブーストと87及び117日目の試料採取;(図12G図12J)種々の時点におけるVP1-IgA抗体力価:(図12G図12I)週1回のブーストと0、29及び43日目の血清試料採取;(図12J)月1回のブーストと117日目の血清試料採取。群1:未処置;群2:IPVでプライミング及びブースト;群5:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りで天然VP1タンパク質でブースト;群8:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りでコドン最適化VP1タンパク質でブースト;群9:サポニン及びスクアレンの両方をアジュバントとしてコドン最適化VP1でブースト、但しIPVプライミング無し。スチューデントt検定による統計的分析(GraphPad Prism バージョン6)。**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す。
図11-4】経口又は皮下ワクチン接種後の血清VP1-IgG1及びVP1-IgA抗体力価の評価。IPVでプライミングし、且つサポニン及び/又はスクアレンをアジュバントとしたIPV又は植物製天然若しくはコドン最適化VP1のいずれかでブーストしたマウスの抗体反応。プレートを精製VP1タンパク質(10μg/ml)でコーティングし、血清試料(ブーストの2又は4週間後)、続いてHRPコンジュゲートラット抗マウスIgG1(1:1000)(BD)又はHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(1:5000)(American Qualex)でプローブした。(図12A図12F)種々の時点におけるVP1-IgG1抗体力価:(図12A図12D)週1回のブーストと0、29、43及び57日目の血清試料採取;(図12E図12F)月1回のブーストと87及び117日目の試料採取;(図12G図12J)種々の時点におけるVP1-IgA抗体力価:(図12G図12I)週1回のブーストと0、29及び43日目の血清試料採取;(図12J)月1回のブーストと117日目の血清試料採取。群1:未処置;群2:IPVでプライミング及びブースト;群5:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りで天然VP1タンパク質でブースト;群8:IPVプライミング、アジュバント(サポニン/スクアレン)有りでコドン最適化VP1タンパク質でブースト;群9:サポニン及びスクアレンの両方をアジュバントとしてコドン最適化VP1でブースト、但しIPVプライミング無し。スチューデントt検定による統計的分析(GraphPad Prism バージョン6)。**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す。
図12-1】ポリオウイルスセービン1、2及び3株に対するポリオウイルス中和力価の決定。サポニン単独(群3及び6)、スクアレン単独(群4及び7)又は両方(群5、8及び9)をアジュバントとして天然又はコドン最適化CTB-VP1抗原で経口的にブーストしたマウス(n=10/群)のウイルス中和抗体力価;IPVでプライミング及びブーストしたマウス(群2);及び未処置マウス。各マウスの個々の力価をプロットした。バーは中和力価平均値±SEMを表す。ウイルス中和が検出されなかった時点における力価の逆数の血清希釈度を2.5のlog2(力価)として記録した。3つ全てのセービン株、(図12A)セービン1、(図12B)セービン2、及び(図12C)セービン3に対するポリオウイルス中和抗体 グラフにはスチューデントt検定を用いた**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す(GraphPad Prism バージョン6)。
図12-2】ポリオウイルスセービン1、2及び3株に対するポリオウイルス中和力価の決定。サポニン単独(群3及び6)、スクアレン単独(群4及び7)又は両方(群5、8及び9)をアジュバントとして天然又はコドン最適化CTB-VP1抗原で経口的にブーストしたマウス(n=10/群)のウイルス中和抗体力価;IPVでプライミング及びブーストしたマウス(群2);及び未処置マウス。各マウスの個々の力価をプロットした。バーは中和力価平均値±SEMを表す。ウイルス中和が検出されなかった時点における力価の逆数の血清希釈度を2.5のlog2(力価)として記録した。3つ全てのセービン株、(図12A)セービン1、(図12B)セービン2、及び(図12C)セービン3に対するポリオウイルス中和抗体 グラフにはスチューデントt検定を用いた**P<0.05、***P<0.01、****P<0.001を示す(GraphPad Prism バージョン6)。
図13-1】皮下IPV又は経口VP1ブースティング後のセービン1、2及び3中和力価の血清陽性率。血清有病マウス(中和抗体log2(力価)≧3)の数と、1日目及び30日目に天然又はコドン最適化CTB-VP1でブーストするか(群3~9)、又はIPVプライム/ブースト(群2)の各群のマウスの総数により決定されるとおりのポリオウイルス中和抗体の血清陽性率。セービン株1、2及び3(図13A図13C)及び3つ全てのセービン型(図13D)に対する中和力価の血清陽性率を示す。図13E.血清陽性率の結果(%)。**、P<0.05、***、P<0.01、****、P<0.001、スチューデントt検定を用いてグラフに指示するとおり(GraphPad Prism バージョン6)。
図13-2】皮下IPV又は経口VP1ブースティング後のセービン1、2及び3中和力価の血清陽性率。血清有病マウス(中和抗体log2(力価)≧3)の数と、1日目及び30日目に天然又はコドン最適化CTB-VP1でブーストするか(群3~9)、又はIPVプライム/ブースト(群2)の各群のマウスの総数により決定されるとおりのポリオウイルス中和抗体の血清陽性率。セービン株1、2及び3(図13A図13C)及び3つ全てのセービン型(図13D)に対する中和力価の血清陽性率を示す。図13E.血清陽性率の結果(%)。**、P<0.05、***、P<0.01、****、P<0.001、スチューデントt検定を用いてグラフに指示するとおり(GraphPad Prism バージョン6)。
図14】タバコ葉緑体形質転換ベクター(pLD-utr)への天然CTBと融合したコドン最適化合成IGF-1の構築及び大腸菌(E.coli)におけるその発現の確認。(図14A)CTB-IGF-1発現カセットを含む葉緑体形質転換ベクターマップの概略図。Prrn、rRNAオペロンプロモーター;aadA、アミノグリコシド3’-アデニリルトランスフェラーゼ(adenylytransferase)遺伝子;PpsbA、psbA遺伝子のプロモーター及び5’-UTR;CTB、天然コレラ非毒性Bサブユニットのコード配列;IGF-1(CN)、コドン最適化ヒトインスリン様成長因子1(Eaペプチドの35アミノ酸を含む105アミノ酸);TpsbA、psbA遺伝子の3’-UTR;trnI、イソロイシル-tRNA;trnA、アラニル-tRNA。(図14B)大腸菌(E.coli)におけるIGF-1のコドン最適化配列の発現に関するイムノブロットアッセイ。IGF-1の2つのコドン最適化配列(CO、コドン最適化した古い方;CN、コドン最適化した新しい方)を含む葉緑体発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)から全タンパク質を抽出した。指示されるとおりタンパク質を12%SDS-PAGEにロードし、抗CTB抗体(1対10,000)でプローブした。2つの合成配列(CO及びCN)間の発現の倍数差をImage Jを用いて計算した。形質転換及び非形質転換(UT)大腸菌(E.coli)は、アンピシリン(50μg/ml)を補足したルリア・ベルターニ(LB)培地中において37℃で一晩インキュベートした。矢印はサイズが予想されたタンパク質を示す(CTB-IGF-1、24.3kDa)(図14C)CTB-IGF-1トランスプラストミック系統のサザンブロット分析。トランスプラストミック植物からのゲノムDNAをAflIIIで消化し、pUC-ctvのBamHI及びBglII消化によって作成した後のサザンブロットプローブ(SB-P)領域の0.81kbをプローブとして使用した。
図15】トランスプラストミック系統(trnasplastomic line)におけるCTB-IGF-1の定量化及び機能分析。抗CTB(図15A)及び抗IGF-1(図15B)に対する凍結乾燥CTB-IGF-1トランスプラストミック系統のウエスタンブロット分析。レーン1、2ng;2、4ng;3、8ngのコレラ毒素Bサブユニット(CTB);1-1、2ng;2-1、4ng;3-1、8ngのヒトインスリン様成長因子1(IGF-1);4、0.1ug;5、0.2ug;6、0.4ugのCTB-IGF-1凍結乾燥葉ホモジネート。約24.3kDaのCTB-IGF-1タンパク質を矢印で示す。(図15C)新鮮及び凍結乾燥CTB-IGF-1からの全葉タンパク質のイムノブロット評価。等量の新鮮葉及び凍結乾燥葉を同じ容積の抽出緩衝液中に抽出し、次にそれらを段階希釈液にロードした。矢印はCTB-IGF-1の予想サイズを示す。(図15D)GM1受容体に対するCTB-IGF-1五量体形態のELISAアッセイ。BSA及びGM1を陰性対照として使用した。
図16】植物由来IGF-1の活性アッセイ。(図16A)CTB-IGF-1によるIGF-1受容体のリン酸化に関する細胞ベースのアッセイ。P-IGFRはリン酸化したIGF-1受容体を示し、及びGAPDH/Aktを対照として使用した。上図は用量に依存的なリン酸化であり、下図は時間に依存的なリン酸化を示す。(図16B)強制経口投与後の時間に依存的なマウス(n=3)血清中の循環Pro-IGF-1量。(図16C)強制経口投与後の時間に依存的な血中グルコース量。植物GFPを同量の植物由来CTB-IGF-1における対照として利用した。(図16D)植物由来CTB-IGF-1を強制経口投与した後に血清及び筋組織で検出されたIGF-1。植物GFPを強制経口投与対照として使用し、及びGAPDHが筋組織における陽性対照であった。
図17-1】精製CTB-IGF-1によるヒト及び/又はマウス細胞の増殖アッセイ(図17A)タバコトランスプラストミック系統からのCTB-IGF-1の精製。C、精製後のCTB-IGF-1のクーマシーブルー(comassie blue)染色;W、CTB抗体に対するウエスタンブロットアッセイ。矢印は約24.3kDaのCTB-IGF-1を示す。(図17B)植物からのIGF-1ペプチド及び精製CTB-IGF-1の濃度系列とのHOK(ヒト口腔ケラチノサイト)のインキュベーション後48時間。2,500個のHOK細胞を播種してから18時間後、それをIGF-1及び精製CTB-IGF-1と共に48時間インキュベートした。生細胞の密度をMTTアッセイ(essay)によって吸光度570で計測した。IGF-1ペプチドを陽性対照として利用した。(図17C)CTB-IGF-1用量依存的なGMSC(ヒト歯肉由来間葉系間質細胞)の相対吸光度。4000個のGMSC細胞を播種し、CTB-IGF-1及び対照としてのIGF-1と共に24時間インキュベートした後に生細胞を計測した。(図17D)IGF-1及びCTB-IGF-1と共に48時間インキュベートした後、生存SCC(ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞)の吸光度を計測した。インキュベーションには3000個のSCCを播種した。(図17E)24時間インキュベートした後のMC3TC(マウス骨芽細胞)のCTB-IGF-1用量依存的相対吸光度。4000個のMC3TCを播種した。(図17B図17E)これは、各々が、3回繰り返して行った2つのバイオロジカルリピートから得られたデータの代表である。(図17F)天然及びコドン最適化(Nat及びCo)IGF-1遺伝子の配列アラインメント。最適化コドンには黄色を付す。Nat:天然配列;Co:コドン最適化配列。グリコシル化を回避するため、Lsy68(AAG)、Arg74(CGT)及びArg77(CGC)をGly68(GGT)、Ala74(GCA)及びAla77(GCT)に変えた(これらには赤色を付す)。
図17-2】精製CTB-IGF-1によるヒト及び/又はマウス細胞の増殖アッセイ(図17A)タバコトランスプラストミック系統からのCTB-IGF-1の精製。C、精製後のCTB-IGF-1のクーマシーブルー(comassie blue)染色;W、CTB抗体に対するウエスタンブロットアッセイ。矢印は約24.3kDaのCTB-IGF-1を示す。(図17B)植物からのIGF-1ペプチド及び精製CTB-IGF-1の濃度系列とのHOK(ヒト口腔ケラチノサイト)のインキュベーション後48時間。2,500個のHOK細胞を播種してから18時間後、それをIGF-1及び精製CTB-IGF-1と共に48時間インキュベートした。生細胞の密度をMTTアッセイ(essay)によって吸光度570で計測した。IGF-1ペプチドを陽性対照として利用した。(図17C)CTB-IGF-1用量依存的なGMSC(ヒト歯肉由来間葉系間質細胞)の相対吸光度。4000個のGMSC細胞を播種し、CTB-IGF-1及び対照としてのIGF-1と共に24時間インキュベートした後に生細胞を計測した。(図17D)IGF-1及びCTB-IGF-1と共に48時間インキュベートした後、生存SCC(ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞)の吸光度を計測した。インキュベーションには3000個のSCCを播種した。(図17E)24時間インキュベートした後のMC3TC(マウス骨芽細胞)のCTB-IGF-1用量依存的相対吸光度。4000個のMC3TCを播種した。(図17B図17E)これは、各々が、3回繰り返して行った2つのバイオロジカルリピートから得られたデータの代表である。(図17F)天然及びコドン最適化(Nat及びCo)IGF-1遺伝子の配列アラインメント。最適化コドンには黄色を付す。Nat:天然配列;Co:コドン最適化配列。グリコシル化を回避するため、Lsy68(AAG)、Arg74(CGT)及びArg77(CGC)をGly68(GGT)、Ala74(GCA)及びAla77(GCT)に変えた(これらには赤色を付す)。
図18A】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18A:最適化ムタナーゼコード配列を提供するベクター構築。
図18B】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18B:psbA遺伝子のコドン頻度に基づきムタナーゼ遺伝子をコドン最適化した。この表は天然及びコドン最適化ムタナーゼ配列のコドン頻度を示す。
図18C】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18C.制限消化によるpLS-MFベクター中のムタナーゼ遺伝子の確認。レーン1:DNAマーカー;レーン2:Nde I及びBgl IIで消化したpLS-MFムタナーゼ;レーン3:Sal I及びPshA IIで消化したpLS-MFムタナーゼ;レーン4:未消化プラスミド。
図18D】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18D.大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質の発現を検出するウエスタンブロット分析:抗His抗体でプローブしたウエスタンブロット。ムタナーゼ遺伝子をpLD及びpLS-MFベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)で発現させた。タンパク質を更に精製し、その発現をウエスタンブロットによって確認した。
図18E】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18E.ムタナーゼ(mutanse)アッセイの結果を示す。
図18F】葉緑体形質転換ベクターへのパエニバチルス属種(Paenibacillus sp.)株RM1のコドン最適化ムタナーゼ配列の構築。5’末端にプロテグリンを付加し、及び3’末端にHisタグを付加した。図18F.ムタナーゼを発現するトランスプラストミック植物を作出するための植物形質転換方法の概略。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、葉緑体ゲノム配列を利用した異種遺伝子発現、リボソームプロファイリング及び質量分析法又は並列反応モニタリング(PRM)によるターゲットプロテオーム定量化を用いることにより、葉緑体における目的の異種タンパク質の翻訳を増加させる方法を開発した。133の植物種のpsbA遺伝子に基づくコドン最適化により、同一のpsbA調節配列によってドライブされる対応する天然遺伝子と比較したとき、ヒト凝固第VIII因子(FVIII)及びポリオウイルスカプシドタンパク質1(VP1)の重鎖の翻訳効率が増加した。N末端又はC末端からのペプチドを使用したPRM分析では、FVIII又はVP1コドン最適化遺伝子の5~7倍又は22~28倍の増加が示された。同じバッチの材料のウエスタンブロット分析では、より低い定量或いはより高い定量のいずれも示され、何らかの限界が浮き彫りとなった。PRMは、植物細胞におけるバイオ医薬品の定量に関してここで初めてバリデートされ、不溶性又は多量体タンパク質に特に有用である。原核生物起源であるにも関わらず、大腸菌(E.coli)と葉緑体との間ではコドン使用が異なる。ノーザンブロットにより、コドン最適化タンパク質合成の増加が、転写物の存在量又は安定性に対する任意の影響というよりむしろ、翻訳レベルでの増加であることが確認された。リボソームフットプリントはFVIIIコドン最適化後にVP1翻訳に比例して増加することなく、又は減少さえしたが、律速段階の診断に有用である。天然遺伝子のCTCロイシンコドンにおける主要なリボソームポーズがコドン最適化時に除去された。コドン最適化VP1遺伝子においてはセリンコドンのクラスターにリボソームストールが観察された。CTCロイシンクラスターを除去する合成配列が、かかる配列を更に最適化する。
【0019】
WHOの戦略的諮問専門家グループ(Strategic Advisory Group of Experts)は、2016年、全世界に向けてOPV2を完全に使用中止し、少なくとも1回のIPV接種に置き換えることを勧告した。しかしながら、高いコスト、IPVの限られた供給、持続的なcVDPV伝播及び後のブースティングの必要性については依然として解決されていない。低コストでコールドチェーンが不要の植物製ウイルスタンパク質1(VP1)サブユニットワクチンを単回のIPVプライミング後の経口ブースターとして使用する戦略は、この危急の必要性に応える新規解決法である。植物細胞にバイオカプセル化したVP1の経口ブースティングは、3つ全てのポリオウイルスセービン血清型に対して高いVP1-IgG1、IgA及び中和抗体力価(約3.17~10.17log2力価)をもたらした。VP1を発現する凍結乾燥植物細胞を有効性の損失なしに周囲温度で無期限に貯蔵可能であることにより、現在全てのワクチンに必要なコールドチェーンが廃止される。これらの知見は、植物製ブースターワクチンがOPVに取って代わること、又は年少期に受けた免疫の免疫力が弱まっている高齢者集団で免疫力をブーストすることについてのエビデンスを提供する。
【0020】
定義:
前述の概要及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的及び説明的なものに過ぎず、本教示の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。本願においては、特に具体的に明記されない限り、単数形の使用が複数形を含む。例えば、「少なくとも1つ」は、2つ以上が存在し得ることを意味する。また、「~を含む(comprise)」、「~を含む(contain)」、及び「~を含む(include)」、又はこれらの語幹を持つ単語の変化形、例えば限定はされないが、「~を含む(comprises)」、「~を含んだ(contained)」、及び「~を含んでいる(including)」の使用は、限定を意図するものでなく、「以下の要素を含むが、他の要素を除外しない」ことを意味する。
【0021】
用語「~から本質的になる(consists essentially of)」、又は「~から本質的になっている(consisting essentially of)」は、本明細書で使用されるとき、他の要素がその組み合わせにいかなる本質的な重要性を及ぼすことも除外する。「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。用語「及び/又は」は、その前及び後にある用語をまとめて考慮しても、又は別々に考慮してもよいことを意味する。例示として、但し限定でなく、「X及び/又はY」は「X」又は「Y」又は「X及びY」を意味することができる。
【0022】
本明細書で使用されるとき、薬剤、薬物、又はペプチドを対象に「投与すること」又は「投与」という用語には、化合物をその意図される機能が発揮されるように対象に導入又は送達する任意の経路が含まれる。投与すること又は投与は、経口的、鼻腔内、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸内、又は局所的なものを含め、任意の好適な経路によって行うことができる。投与すること又は投与には、自己投与及び他者による投与が含まれる。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「疾患」、「障害」、又は「合併症」は、対象の正常状態からの任意の逸脱を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」「有効な量」などは、所望の結果を実現するのに必要な投与量で及び期間にわたって有効な量を意味する。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「阻害する」又は「治療する」は、疾患状態の臨床症状を悪化させない又は発症させないこと、例えば、疾患状態に曝露されている又はそれに罹り易い可能性があるものの、疾患状態の症状はまだ現れていない又はそれを示していない対象において、疾患の発生を阻害することを意味する。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「CTB」はコレラ毒素Bサブユニットを指す。コレラ毒素は、1つのAサブユニットと5つのBサブユニットとを含むタンパク質複合体である。Bサブユニットは非毒性であり、それによってタンパク質がガングリオシドの五糖鎖を介して細胞表面に結合することが可能となるため、タンパク質複合体にとって重要である。
【0027】
「レプリコン」は、概してそれ自体の制御下での複製能を有する任意の遺伝要素、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ又はウイルスである。レプリコンはRNA又はDNAのいずれであってもよく、且つ一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0028】
「ベクター」は、そこに別の遺伝子配列又はエレメント(DNA又はRNAのいずれか)が付加され、付加された配列又はエレメントの複製をもたらす任意の媒体である。
【0029】
「発現オペロン」は、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えば、ATG又はAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどの転写及び翻訳制御配列を有し得る核酸セグメントであって、宿主細胞又は生物におけるポリペプチドコード配列の発現を促進するものを指す。
【0030】
用語「プロモーター領域」は、遺伝子の5’調節領域(例えば、5’UTR配列(例えば、psbA配列、プロモーター(例えば、形質転換する植物にとって内因性のユニバーサルPrnnプロモーター又はpsbAプロモーター及び任意選択のエンハンサーエレメントを指す。
【0031】
用語「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、本発明の配列、プライマー及びプローブを指し、2つ以上の、好ましくは3つより多いリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、種々の要因、並びにそのオリゴヌクレオチドの詳細な適用及び使用に依存することになる。
【0032】
語句「特異的にハイブリダイズする」は、当該技術分野において一般に用いられる所定の条件下でかかるハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補的な(時に「実質的に相補的」と称される)配列の2つの一本鎖核酸分子間の会合を指す。詳細には、この用語は、本発明の一本鎖DNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列とのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを指し、非相補配列の一本鎖核酸とのそのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの実質的な除外を指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「レポーター」、「レポーターシステム」、「レポーター遺伝子」、又は「レポーター遺伝子産物」は、例えば生物学的アッセイ、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイによるか、又は熱量測定、蛍光発生、化学発光若しくは他の方法によって容易に計測可能なレポーターシグナルを発現時に生成する産物をコードする遺伝子が核酸に含まれる作動可能な遺伝的システムを意味するものとする。核酸はRNA又はDNA、線状又は環状、一本鎖又は二本鎖、アンチセンス又はセンス極性のいずれであってもよく、レポーター遺伝子産物の発現に必要な制御エレメントに作動可能に連結される。必要な制御エレメントは、レポーターシステムの性質及びレポーター遺伝子の形態がDNAか、それともRNAかによって異なり得るが、限定はされないが、プロモーター、エンハンサー、翻訳制御配列、ポリA付加シグナル、転写終結シグナルなどのようなエレメントが含まれ得る。
【0034】
用語「形質転換する」、「トランスフェクトする」、「形質導入する」は、細胞又は宿主生物に核酸を導入する任意の方法又は手段を指すものとし、同じ意味を伝えて同義的に使用され得る。かかる方法としては、限定はされないが、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、PEG融合などが挙げられる。
【0035】
用語「選択可能なマーカー遺伝子」は、発現時に形質転換細胞又は植物に抗生物質耐性などの選択可能な表現型を付与する遺伝子を指す。プラスチド形質転換ベクターにおいて有用な選択可能なマーカーとしては、限定なしに、スペクチノマイシン耐性、グリホセート耐性、BADH耐性、及びカナマイシン耐性をコードするものが挙げられる。
【0036】
用語「作動可能に連結された」は、コード配列の発現に必要な調節配列がDNA分子においてコード配列に対してそのコード配列の発現を生じさせるように適切な位置に置かれていることを意味する。この同じ定義が、時に発現ベクターにおける転写単位及び他の転写制御エレメント(例えばエンハンサー)の配置に適用されることもある。
【0037】
用語「DNAコンストラクト」は、植物の形質転換及び子孫トランスジェニック植物の作成に使用される遺伝子配列を指す。これらのコンストラクトは、ウイルスベクター又はプラスミドベクターで植物に投与し得る。しかしながら、本発明での使用に最も好ましいのは、プラスチド形質転換ベクターである。アグロバクテリウム属(Agrobacterium)T-DNA介在性形質転換及び微粒子銃方法を用いた形質転換などの他の送達方法もまた、本発明の範囲内にあることが企図される。形質転換用DNAは、“Current Protocols in Molecular Biology”,eds.Frederick M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons,1995に示されるものなどの標準的なプロトコルに従い調製し得る。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「葉緑体」には、植物細胞及び光合成を行う他の真核生物に見られる細胞小器官又はプラスチドが含まれる。葉緑体は光エネルギーを捕捉して自由エネルギーをATPの形態で確保し、光合成と呼ばれる複雑な一組のプロセスを経てNADPをNADPHに還元する。葉緑体はクロロフィルを含有する。葉緑体ではトランス遺伝子のコピー数及び発現レベルが高い。各葉緑体が最大100個のゲノムを含有し得る一方、各植物細胞が最大100個の葉緑体を含有し得る。従って、各植物細胞が100000個もの葉緑体ゲノムを含有することができ、これが葉緑体ゲノムによって発現されるタンパク質の高い発現レベルをもたらす。更に、葉緑体ゲノムは核ゲノムDNAと異なり花粉によって伝達されないため、葉緑体は母性遺伝を通じた遺伝子の封じ込めを提供する。葉緑体はポリシストロニックRNAを転写する能力を有し、ジスルフィド結合、多量体のアセンブリ及び脂質修飾などの翻訳後修飾を行う能力を含め、真核生物タンパク質の正しいプロセシングを実施することができる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「組成物」、「医薬組成物」又は「治療剤」は全て、本明細書に記載されるとおりのコンストラクトを含むミエリン塩基性タンパク質を含む組成物を含む。任意選択で、「組成物」、「医薬組成物」又は「治療剤」は、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体を更に含む。
【0040】
本明細書で使用されるとき、遺伝子又はポリヌクレオチドの文脈で用語「発現」とは、遺伝子又はポリヌクレオチドのRNAへの転写を含む。この用語はまた、必ずしもというわけではないが、続くRNAのポリペプチド鎖への翻訳及びそのタンパク質へのアセンブリも含み得る。
【0041】
植物レムナントには、目的のタンパク質が発現した植物に由来する1つ以上の分子(限定はされないが、タンパク質及びその断片、ミネラル類、ヌクレオチド及びその断片、植物構造成分等)が含まれ得る。従って、全植物材料(例えば、植物の葉、茎、果実等の全体又は一部分)又は粗植物抽出物に関する組成物であれば、並びに1つ以上の検出可能な植物レムナントを有する精製された目的のタンパク質を含む組成物も、高濃度の植物レムナントを必ず含有し得る。具体的な実施形態において、植物レムナントはルビスコである。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、植物葉緑体で産生される治療用融合タンパク質の投与によって疾患を治療又は予防するための投与可能な組成物に関する。本組成物は、植物が発現する融合タンパク質の治療有効量及び植物レムナントを含む。
【0043】
本明細書に教示される特定の実施形態において発現するタンパク質は、種々の方法で対象、ヒト又は動物に投与することによりインビボで使用され得る。医薬組成物は経口的又は非経口的に、即ち、皮下、筋肉内又は静脈内に投与されてもよく、しかし経口投与が好ましい。
【0044】
本発明の実施形態によって作製される経口組成物は、プラスチド由来の治療用融合タンパク質を産生するトランスジェニック植物を用いて製造された食品材料の摂取により投与することができる。植物の可食部、又はその一部分が、食事成分として使用される。治療用組成物は、所望の投与様式に適切な固体又は液体媒体、希釈剤及び添加剤を用いて古典的な方法で製剤化することができる。経口的には、組成物は、少なくとも1つの媒体、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチン等を含む錠剤、カプセル、顆粒、散剤、チュアブルガムなどの形態で投与することができる。調製物はまたエマルション化されてもよい。活性免疫原性又は治療用成分は、多くの場合に、薬学的に許容可能な、且つ活性成分と適合性のある賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びこれらの組み合わせである。加えて、必要であれば、組成物は湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、又はアジュバントなどの少量の補助物質を含有してもよい。好ましい実施形態では、医薬品を作り出すトランスジェニック植物の食用植物、ジュース、穀粒、葉、塊茎、茎、種子、根又は他の植物部位がヒト又は動物によって摂取され、ひいては疾患を治療する又は疾患に対して免疫する極めて安価な手段がもたらされる。
【0045】
具体的な実施形態において、治療用融合タンパク質の発現能を有する葉緑体を含む植物材料(例えばレタス、トマト、ニンジン、低ニコチンタバコ材料等)は、ホモジナイズされ、カプセル化される。具体的な一実施形態において、レタス材料の抽出物がカプセル化される。代替的実施形態において、レタス材料はカプセル化前に粉末化される。
【0046】
代替的実施形態において、投与の便宜上、組成物はトランスジェニック植物のジュースで提供され得る。前記目的のため、形質転換する植物は、好ましくは、とりわけトマト、ニンジン及びリンゴ(これらは通常はジュースの形態で摂取される)からなる食用植物から選択される。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に開示されるとおりの治療用融合タンパク質又はペプチドを発現する異種遺伝子を含むベクターで形質転換された形質転換葉緑体ゲノムに関する。
【0048】
本明細書におけるタンパク質配列の参照は、既知の完全長アミノ酸配列並びにかかるアミノ酸配列から選択される少なくとも12、15、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250又は265連続アミノ酸、又はその生物学的に活性な変異体に関する。典型的には、ポリペプチド配列は既知のヒトバージョンの配列に関する。
【0049】
同一性パーセントのばらつきは、例えば、アミノ酸置換、挿入、又は欠失に起因し得る。アミノ酸置換は、1対1のアミノ酸の置き換えと定義される。アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が同様の構造的及び/又は化学的特性を有するとき、本質的に保存的である。保存的な置き換えの例は、ロイシンのイソロイシン又はバリンによる置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による置換、又はスレオニンのセリンによる置換である。
【0050】
アミノ酸挿入又は欠失は、アミノ酸配列への変化又はアミノ酸配列内での変化である。それらは典型的には約1~5アミノ酸の範囲内に収まる。ポリペプチドの生物学的又は免疫学的活性を消失させることなく、どのアミノ酸残基を置換し、挿入し、又は欠失させ得るかを決定する際の指針は、DNASTARソフトウェアなど、当該技術分野において周知のコンピュータプログラムを用いて見付け出すことができる。アミノ酸変化が生物学的に活性な治療用融合ポリペプチドをもたらすかどうかは、例えば以下の具体的な実施例に記載されるとおりの、天然の活性に関するアッセイによって容易に判定することができる。
【0051】
本明細書における遺伝子配列への言及は、一本鎖又は二本鎖核酸配列を指し、及び目的のポリペプチドのコード配列又はそのコード配列の相補体を含む。ポリペプチドをコードする縮重核酸配列、並びにcDNAと少なくとも約50、55、60、65、60、好ましくは約75、90、96、又は98%同一である相同ヌクレオチド配列は、本明細書の教示においてポリヌクレオチドとして使用され得る。2つのポリヌクレオチドの配列間のパーセント配列同一性は、FASTAアルゴリズムを利用するALIGNなどのコンピュータプログラムを用いて、ギャップ開始ペナルティ-12及びギャップ伸長ペナルティ-2でアフィンギャップ検索を用いて決定される。生物学的に活性なポリペプチドをコードする核酸配列の相補DNA(cDNA)分子、種相同体、及び変異体もまた、有用なポリヌクレオチドである。
【0052】
上記に記載した核酸配列の変異体及び相同体もまた、有用な核酸配列である。典型的には、相同ポリヌクレオチド配列は、当該技術分野において公知のとおり、ストリンジェントな条件下で候補ポリヌクレオチドが既知のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることにより同定し得る。例えば、以下の洗浄条件:2×SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%SDS、室温2回、各30分;次に2×SSC、0.1%SDS、50℃1回、30分;次に2×SSC、室温2回、各10分を用いると、高々約25~30%の塩基対ミスマッチを含む相同配列を同定することができる。より好ましくは、相同核酸鎖は15~25%の塩基対ミスマッチ、更により好ましくは5~15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0053】
本明細書において言及されるポリヌクレオチドの種相同体もまた、好適なプローブ又はプライマーを作製してcDNA発現ライブラリをスクリーニングすることにより同定し得る。相同性が1%低下する毎に二本鎖DNAのTmが1~1.5℃ずつ低下することは周知である(Bonner et al.,J.Mol.Biol.81,123(1973)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件に従い目的のポリヌクレオチド又はその相補体とハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた、有用なポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は周知であり、当該技術分野において理解されており、例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd ed.,1989の9.50~9.51頁に開示されている。
【0054】
典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、試験下のハイブリッドのTm計算値を約12~20℃下回る温度及び塩濃度の組み合わせが選択されなければならない。目的のポリヌクレオチド又はその相補体と、それらのヌクレオチド配列のうちの1つと少なくとも約50、好ましくは約75、90、96、又は98%同一のポリヌクレオチド配列とのハイブリッドのTmは、例えば、Bolton and McCarthy,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.48,1390(1962)の式:
Tm=81.5℃-16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-0.63(%ホルムアミド)-600/l)、
[式中、l=塩基対単位でのハイブリッドの長さ]
を用いて計算することができる。
【0055】
ストリンジェントな洗浄条件としては、例えば、4×SSCで65℃、又は50%ホルムアミド、4×SSCで42℃、又は0.5×SSC、0.1%SDSで65℃が挙げられる。高度にストリンジェントな洗浄条件としては、例えば、0.2×SSCで65℃が挙げられる。本発明の実施を容易にするため、以下の材料及び方法を提供する。
【0056】
コドン最適化
葉緑体における異種遺伝子の発現を最大化するため、133の種子植物種にわたるpsbA遺伝子のコドン優先度に基づき葉緑体コドン最適化プログラムを開発した。配列は全て、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI、ncbi.nlm.nih.gov/genomes/GenomesGroup.cgi?taxid=2759&opt=plastid)からダウンロードした。133個のpsbA遺伝子からの合計46,500個のコドンを分析することにより、各アミノ酸について同義コドン間での使用優先度を決定した。JAVAを用いて最適化アルゴリズム(クロロプラスト・オプティマイザー(Chloroplast Optimizer)v2.1)を作製し、レアコドンから葉緑体で高頻度に使用されるコドンへの変更を促進した。
【0057】
トランスプラストミック系統の作出
pAAV-TTR-hF8-ミニプラスミド(Sherman et al.,2014)をPCR鋳型として使用して、FVIII重鎖(HC)の天然配列を増幅した。コドン・オプティマイザー(Codon Optimizer)v2.1を使用して得たコドン最適化HC配列がGenScript(Piscataway、NJ、USA)によって合成された。本発明者らはまた、FVIII軽鎖(LC)、IFG-1及びムタナーゼも最適化した。セービン1(Konstantin Chumakov博士、FDAより供与いただいた)の天然VP1遺伝子(906bp)をPCR増幅の鋳型として使用した。コドン最適化VP1配列もまたGenScriptによって合成された。増幅した合成の遺伝子配列をそれぞれラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)及びプティ・ハバナ(Petit Havana)の葉緑体形質転換ベクターpLSLF及びpLD-utrにクローニングした。以前記載のとおり(Verma et al.,2008)、配列が確認されたプラスミドをボンバードメントに使用してトランスプラストミック植物を作出した。サザンブロット分析を用いたトランスプラストミック系統の確認を以前記載のとおり行い(Verma et al.,2008)、但しプローブ標識及び検出については、DIG high prime DNA標識及び検出スターターキットII(Roche、カタログ番号11585624910)を使用した。
【0058】
翻訳の評価
天然配列とコドン最適化配列との間でタンパク質発現レベルを比較するため、抗CNTB抗体を用いてイムノブロット及びデンシトメトリーアッセイを実施した。1×PBS及び5mM EDTA中に再懸濁した大腸菌(E.coli)細胞を超音波処理することにより、大腸菌(E.coli)から全タンパク質を抽出した。全植物タンパク質については、粉末化した凍結乾燥植物細胞を抽出緩衝液(100mM NaCl、10mM EDTA、200mMトリス-Cl pH8.0、0.05%(v/v)Tween-20、0.1%SDS、14mM β-ME、400mMスクロース、2mM PMSF、及びプロテイナーゼ阻害薬カクテル)中に500μL当たり10mgの比率で懸濁し、氷上で1時間インキュベートして再水和させた。懸濁細胞をボルテックス(約30秒)後に超音波処理した(パルスオン5秒及びパルスオフ10秒、ソニケーター3000、Misonix)。ブラッドフォードアッセイの後、等量のホモジナイズしたタンパク質を既知量のCNTBタンパク質標準と共にSDS-ポリアクリルアミドにロードし、分離した。CNTB融合タンパク質を検出するため、抗CNTBポリクローナル抗体(GenWay Biotech Inc.、San Diego、CA)を1×PBST(0.1%Tween-20)中に1:10,000希釈し、次に、1×PBST中に1:4,000希釈したヤギ抗ウサギIgG-HRP二次抗体(Southern Biotechnology、4030-05)で膜をプローブした。化学発光シグナルをX線フィルム上に現像し、これを使用してImage Jソフトウェア(IJ 1.46r;NIH)で定量分析を行った。
【0059】
転写物の評価
組織培養室内の寒天培地で生育した植物の葉からeasy-BLUE(商標)全RNA抽出キット(iNtRON、カタログ番号17061)を使用して全RNAを抽出した。RNAゲルブロットについては、等量の全RNA(4μg)を0.8%アガロースゲル(1.85%ホルムアルデヒド及び1×MOPS含有)上で分離し、ナイロン膜(Nytran SPC;Whatman、Buckinghamshire、UK)にブロットした。ノーザンブロットについては、葉緑体形質転換プラスミドのpsbA 5’又は3’UTR領域からのPCR増幅産物をプローブとして使用した。上記に記載したとおりDIG標識及び検出キットを使用して膜上のハイブリダイゼーションシグナルを検出した。
【0060】
凍結乾燥
確認されたホモプラスミック系統を温度及び光が制御された温室に移した。完全に成長したトランスプラストミック植物の成葉を採取し、凍結乾燥まで-80℃で貯蔵した。-植物葉材料をフリーズドライするため、3日間にわたりチャンバ温度を-40℃から25℃に上昇させながら、凍結して砕いた小さい葉片を400mTorr真空下で昇華させた(Genesis 35XL、VirTis SP Scientific)。コーヒーグラインダー(Hamilton Beach)を最高速度で使用して、脱水した葉を粉末化し、タバコは3回、各10秒間粉砕し、及びレタスは3回、5秒間粉砕した。粉末化した葉をシリカゲルと共に室温で気密・無水条件下に容器内に貯蔵した。
【0061】
凍結したCTB-VP1タバコ葉を凍結乾燥器(Genesis 35XL、SP Scientific、Stone Ridge、NY)のドライアイス上に移し、400mTorr真空下、-40℃、-30℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃及び25℃で合計72時間凍結乾燥した。凍結乾燥葉材料をコーヒーグラインダー(Hamilton Beach,Southern Pines,NC,USA)において最高速度で3回粉砕した(パルスオン10秒及びオフ30秒)。この細粉をシリカゲルと共に無水環境に室温で貯蔵した。
【0062】
質量分光分析のためのタンパク質抽出及び試料調製
10mgの凍結乾燥葉粉末から、1mL抽出緩衝液(2%SDS、100mM DTT、20mM TEAB)を加えることによって全タンパク質を抽出した。凍結乾燥葉粉末を時々ボルテックスしながら室温で30分間インキュベートすることにより、植物細胞を再水和させた。次にホモジネートを70℃で1時間インキュベートし、続いて常時回転させながら室温で一晩インキュベーションした。14,000rpm(約20,800rcf)で遠心することにより細胞壁/細胞膜デブリをペレット化した。この手順はデュプリケートで実施した。
【0063】
以前記載のとおり(Leon et al.,2013)、全てのタンパク質抽出物(100μl)を10kDaのフィルタカットオフの遠心装置(Vivacon)において0.5%デオキシコール酸ナトリウムの存在下に10μgトリプシン/Lys-C(Promega)で酵素消化した。消化後、デオキシコール酸ナトリウムを1%(最終濃度)トリフルオロ酢酸による酸沈殿によって除去した。脱塩前に試料に安定同位体標準(SIS)ペプチド(>97%純度、C末端Lys及びArgをLys U-13C6;U-15N2及びArg U-13C6;U-15N4としたもの、JPT Peptide Technologies)をスパイクした。MS分析前に試料をOligoR3 stage-tip(Applied Biosystems)で脱塩した。初期タンパク質抽出物(10μl)をOligoR3 stage tipカラムで脱塩した。次に脱塩した材料を高速真空装置で乾燥させて、6μLの水中0.1%ギ酸に懸濁した。2μlの脱塩材料をカラムに注入することにより、MS分析をデュプリケートで実施した。
【0064】
PRM質量分光分析及びデータ分析
33.3μgの凍結乾燥葉粉末から抽出及び消化した全タンパク質の量に対応する、34fmolの各SISペプチドをスパイクインした2μLのペプチドをカラムに注入することにより、液体クロマトグラフィーと組み合わせたターゲット質量分光分析を実施した。Easy-nLC 1000(Thermo Scientific)を使用して自作の30cm×75μm内寸C18カラム(1.9μm粒径、ReproSil、Dr.Maisch HPLC GmbH)でペプチドを分離した。移動相は、両方ともにHPLCグレード(Fluka)の、0.1%ギ酸(A)及び90%アセトニトリル及び0.1%ギ酸(B)の水溶液からなった。4%溶媒Bの水溶液でカラムにペプチドを250nL/分でロードした。4-7-27-36-65-80%Bについて非直線グラジエントをそれぞれ2-50-10-10-5分間適用することによりペプチドを溶出させた。
【0065】
nanospray Flex(商標)イオン源を備えたQexactive質量分析計(Thermo Scientific)で並列反応モニタリング(PRM)モードを用いてMS分析を実施した(Gallien et al.,2012)。2m/zウィンドウでインクルージョンリストから標的を分離、分解能35,000(m/z200で)、目標AGC値1×106、及び最大充填時間120ms。正規化衝突エネルギーは29に設定した。等しいnanoLCクロマトグラフィー下におけるSISペプチドの分析により、保持時間スケジュールを決定した。標的プレカーサーイオン及び保持時間スケジュールの一覧は補足情報に報告する。Skylineソフトウェアを用いてPRMデータ分析を実施した(MacLean et al.,2010)。
【0066】
リボソームプロファイリング
植物の上から2番目及び3番目の葉をリボソームプロファイリング用に採取した。レタス植物は約2ヵ月齢であった。タバコ植物は、天然及びコドン最適化VP1コンストラクトについてそれぞれ2.5又は2ヵ月齢であった。葉は正午に採取し、液体窒素で急速凍結した。Zoschke et al(2013)に記載されるとおり、但しミクロコッカスヌクレアーゼの代わりにリボヌクレアーゼIを用いて、リボソームフットプリントを調製した。NEXTflex Illumina Small RNAシーケンシングキットv2(BIOO Scientific、5132-03)でリボソームフットプリントをシーケンシングライブラリに変換した。パイロット実験で観察された大量のrRNA夾雑物に対応するビオチン化オリゴヌクレオチドを用いて第1鎖cDNA合成後にサブトラクティブハイブリダイゼーションによってrRNA夾雑物を除去した。試料をオレゴン大学ゲノミクスコア施設(University of Oregon Genomics Core Facility)でシーケンシングした。配列リードをcutadaptによって処理してアダプター配列を除去し、デフォルトパラメータのbowtie2でリードを改変葉緑体ゲノム配列とアライメントした。
【0067】
トランスプラストミック植物の葉緑体ベクター構築及び再生
フォワードプライマー5’-gggCCCgggCCCCggCgTAAACgCTCTgTTgggTTAggTCAgATg-3’及びリバースプライマー5’-CgATCTAgATCAATATgTggTCAgATC-3’を使用してセービン1型ポリオウイルス(Konstantin Chumakov博士、FDAより供与いただいた)の天然VP1遺伝子(906bp)を増幅した。PCR増幅断片及びコドン最適化VP1遺伝子(GenScript、Piscataway、NJ、USAによって合成された)をタバコ及びレタス葉緑体形質転換ベクターにクローニングした。葉緑体形質転換ベクターの微粒子銃送達並びにトランスプラストミックタバコ(ニコチアナ・タバカム品種プティ・ハバナ(Nicotiana tabacum cv.Petit Havana))及びレタス(ラクツカ・サティバ品種シンプソン・エリート(Lactuca sativa cv.Simpson Elite))系統の再生を以前記載のとおり実施した(Ruhlman et al.,2007;Verma et al.,2008)。
【0068】
トランスプラストミックタバコ及びレタス系統の特徴付け
葉緑体ゲノムへのトランス遺伝子カセットの組込みを確認するため、タバコ及びレタスについてそれぞれプライマー対3P/3M及び5P/2M又は16S-Fw/3M及び5P/2Mを使用してPCRを実施した(Verma et al.,2008;Kanagaraj et al.,2011)。以前記載のとおりサザンブロット分析を実施してトランス遺伝子の組込み及びホモプラスミーを確認した(Verma et al.,2008)。
【0069】
葉緑体由来タンパク質のイムノブロット分析及び精製
既発表の方法(Davoodi-Semiromi et al.,2010)に従いCTB-VP1融合タンパク質のイムノブロット分析及び定量化を実施した。CTB-VP1融合タンパク質を検出するため、ブロットを1:10,000ウサギ抗CTBポリクローナル抗体(GeneWay、San Diego、CA、USA)又は1:1,000ウサギ抗VP1ポリクローナル抗体(Alpha Diagnostic Intl.Inc.、San Antonio、TX、USA)、続いて二次抗体として1:4,000ヤギ抗ウサギIgG-HRP(SouthernBiotech、Birmingham、AL、USA)と共にインキュベートした。CTB(Sigma、St Louis、MO、USA)及び組換えセービン1 VP1(Alpha Diagnostic Intl.Inc.、San Antonio、TX、USA)を陽性対照として使用した。葉緑体由来CTB-VP1融合タンパク質を精製するため、His60 Ni Superflow Resin(Clontech Laboratories、Mountain View、CA、USA)を製造者の指示に従い使用した。溶出した画分を滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回透析し、アリコートに分け、-20℃で保存した。精製した葉緑体由来CTB-VP1を免疫グロブリン測定に使用した。
【0070】
コレラ毒素B-GM1ガングリオシド受容体結合アッセイ
タバコ葉緑体由来CTB-VP1が五量体を形成してGM1ガングリオシド受容体に結合する能力を試験するため、記載されるとおりCTB-GM1結合アッセイを実施した(Davoodi-Semiromi et al.,2010)。
【0071】
マウス及び免疫スケジュール
Charles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から6~7週齢の雌CD-1マウスを購入し、マイクロアイソレーターケージで飼育した。実験はペンシルベニア大学動物実験委員会(University of Pennsylvania Institutional Animal Care and Use Committee)の指針に従い行った。マウスを1群当たり10匹のマウスの9群に無作為に分けた。群1は対照群とし、マウスは処置を受けなかった。群2~8のマウスは全て、3種類のポリオウイルス(1型(マホーニー)、2型(MEF-1)、及び3型(ソウケット)(IPOL、Sanofi Pasteur SA))の100μlのIPV懸濁液で皮下的に(s.c.)プライミングした。群2のマウスはプライミングの30日後に同じIPVでs.c.ブーストした。群3~9のマウスは凍結乾燥した植物材料で経口的にブーストした:群3~8のマウスは、プライミングの1週間後から開始して8週連続で週1回ブーストした。群3~5のマウスは、凍結乾燥した天然CTB-VP1発現葉で経口的にブーストした;各マウスは、200μlのPBS+種々のアジュバント:サポニン(群3)、スクアレン(群4)又は両方(群5)中20mgの材料でブーストした。群6~9のマウスは、凍結乾燥したコドン最適化CTB-VP1発現葉で経口的にブーストした;各マウスは、200μlのPBS+種々のアジュバント:サポニン(群6)、スクアレン(群7)又は両方(群8及び9)中20mgの材料でブーストした。プライミングの1日前及びブースティングの7日後に血液を採取した。血清試料は56℃で30分間熱失活させて補体活性を破壊した。
【0072】
バイオカプセル化植物製CTB-VP1タンパク質のワクチン製剤の調製
ワクチン製剤化は、概して以前記載のとおり39、40、但し変更を加えて実施した。簡潔に言えば、ダブルエマルション法を用いてワクチン製剤を調製した。スクアレンをアジュバントとするVP1抗原を調製するため、PBS中0.05%Tween-80を20mgの凍結乾燥VP1抗原と混合することにより水相中の一次エマルションを作製した。油相はスクアレン(80%v/v)とSpan-80(Sigma、P4780)(20%v/v)との組み合わせであった。エマルションは、一次油性エマルションを水相と混合し、マウス当たり総容積200μlとなるようにPBSで調整した後、5,000rpmで5分間ホモジナイズすることにより作製した。
【0073】
サポニンをアジュバントとするVP1抗原を調製するため、20mgの凍結乾燥した天然又はコドン最適化CTB-VP1植物材料をマウス当たり2mgサポニンと混合し、PBSを加えて最終容積を200μlにした。両方のアジュバントを用いるVP1抗原を調製するため、20mgの凍結乾燥した天然又はコドン最適化VP1を0.05%Tween-80含有のPBS中2mgのサポニンと混合することにより一次エマルションを作製した。次に、一次エマルションを次にスクアレン(80%v/v)及びSpan-80(20%v/v)含有のスクアレンエマルションと穏やかに混合した。
【0074】
ELISAによる抗体反応の決定
VP1特異的IgG1及びIgA力価の血清レベルを含めた免疫応答をダイレクトELISA及びインビトロポリオウイルスセービン1、2及び3中和アッセイによってアッセイした(これらは疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)によって実施された)。簡潔に言えば、抗体反応アッセイのため、10μg/ml精製CTB-VP1タンパク質を使用して96ウェルMaxisorp ELISAプレート(Nunc)を4℃で一晩コーティングした。プレートを0.05%Tween含有のPBS中1%BSA(Sigma 7906)でブロックした。1:400希釈から開始して、個々の熱失活血清試料の2倍希釈物を4℃で一晩インキュベートした。二次抗体は、ブロッキング緩衝液で希釈したHRPコンジュゲートラット抗マウスIgG1(BD Pharmingen、559626、1:1,000)及びHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgA(American Qualex、A138N、1:5,000)であり、37℃で1時間インキュベートし、続いてTMB基質(ES001、EMD Millipore、CA)によって室温で10分間発色させた。100μlの2N硫酸を各ウェルに加えることにより反応を停止させて、450nmでELISAリーダーを用いて吸光度を測定した。抗体力価は、カットオフを上回る最も高い希釈度の逆数として定義し、カットオフはバックグラウンド平均値の3倍であった41。血清試料は全てトリプリケートで試験した。結果は個々の抗体力価±SEMとして示す。
【0075】
ポリオウイルスセービン1、2、3中和アッセイ
サポニン及び/又はスクアレンをアジュバントとした天然又はコドン最適化CTB-VP1タンパク質による、又は群2についてはプライミング及びブースティングの両方ともにIPVによる10回目の経口ブースト後、以前記載のとおり21、42のCDCでの後の中和アッセイのため血清試料を採取し、-80℃で保存した。簡潔に言えば、血清試料は、セービン株1型、2型、及び3型に対する抗体の変法マイクロ中和アッセイを用いてトリプリケートで試験した。対照群及び実験群からの血清試料を無作為盲検的に試験した。ウイルス中和が検出されなかった時点における力価の逆数の血清希釈度を2.5のlog2(力価)、又は陰性として記録した;≧3のlog2力価を防御的と見なした。各マウスの個々の力価をプロットし、バーは中和力価平均値±SEMを表す。
【0076】
統計的分析
全てのデータは個々のマウスについて報告し、各群の平均値±SEMを提示する。群間の抗体力価の統計的に有意な差に関する分析はスチューデントt検定を用いて実施し(GraphPad Prism バージョン6)及びP値<0.05を有意と見なした。
【0077】
本発明の特定の実施形態を例示するため、以下の実施例を提供する。これらの実施例はいかなる形であれ本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0078】
実施例I
ゲノミクス、プロテオミクス及びリボソームプロファイリングツールを用いた天然及びコドン最適化ヒト又はウイルス遺伝子の比較分析は葉緑体におけるトランス遺伝子発現の理解を高める
ヒト/ウイルストランス遺伝子のコドン最適化
葉緑体によるコドン使用の違いは、多くの場合に翻訳の低下と関連付けられる。治療的に関連性のあるタンパク質の発現を増加させるため、先行研究が例えばFVIIIについて<0.005%及びVP1について約0.1%の極めて低い発現レベルを明らかにしたことに伴い、ヒトの血液凝固第VIII因子重鎖(FVIII HC及びFVIII LC)、及びIGF-1、ポリオウイルスのウイルスカプシドタンパク質1(VP1)及び細菌のムタナーゼの天然配列を分析した。psbA遺伝子は葉緑体において最も高発現の遺伝子であるため、133の植物種のpsbA遺伝子で使用されるコドンの分析に基づき、アルゴリズムを用いて翻訳を増加させるためのコドン最適化ソフトウェアを開発した(図1)。psbA遺伝子の翻訳効率はrbcL遺伝子より200倍超高いため、この遺伝子を最適化に選択した(Eibl et al.,1999)。更に、葉緑体で発現する140個のトランス遺伝子のうち75%超がpsbA調節配列を使用する。図1に示されるとおりのその使用頻度に従い各アミノ酸の同義コドンを順位付けした。従って、異種遺伝子のレアコドンのほとんどが、コドン最適化プログラムによってpsbA遺伝子で使用されるコドンに従い変更された。コドン最適化プログラムの開発においては、本発明者らはまた、各アミノ酸について最も高い優先度のコドンのみを使用する合成遺伝子の発現についても調べた。
【0079】
大腸菌(E.coli)における天然及び合成遺伝子の翻訳の評価
本研究では、新規に開発した葉緑体コドン最適化器を用いてFVIII HC(2262bp)、FVIII LC及びFVIIISCc(コドン最適化FVIII重鎖(Bドメインからの14アミノ酸を含むHC)と軽鎖(LC)との融合形態(図2A及び図2E)及びVP1(図4A)(906)の天然配列をコドン最適化し、合成した。コドン最適化後、FVIII HCのAT含量が56%から62%へとやや増加し、754アミノ酸中383個のコドンが最適化された。セービン1のVP1配列については、906bp長の天然配列をコドン最適化し、これによりAT含量が51.98%から59.03%へとやや増加し、302アミノ酸中187個のコドンが最適化された。合成遺伝子カセットを葉緑体形質転換ベクター、レタスについてはpLSLF又はタバコについてはpLD-utrに挿入した(図2A及び図4A)。腸上皮細胞に存在するモノシアロテトラヘキソシルガングリオシド受容体(GM1)を介した融合タンパク質の効率的な粘膜送達に使用されるコレラ非毒性Bサブユニット(CNTB)に天然及び合成遺伝子を融合した。2つのタンパク質の融合によって立体障害が引き起こされる可能性を排除し、及びインターナリゼーション後に繋留されたタンパク質の循環中への放出を促進するため、CNTBと融合タンパク質との間にヒンジ(Gly-Pro-Gly-Pro)及びフューリン切断部位(Arg-Arg-Lys-Arg)のヌクレオチド配列を操作した。コドン最適化の特異的評価のため、これらの融合遺伝子は同一のpsbAプロモーター、5’UTR及び3’UTR下に置いた(図2A及び図4A)。形質転換体の選択のため、アミノグリコシド-3”-アデニリルトランスフェラーゼ遺伝子の遺伝子(aadA)をリボソームRNAプロモーター(Prrn)によってドライブして、形質転換細胞にスペクチノマイシン耐性を付与した。内因性葉緑体ゲノム配列と同一であるイソロイシル-tRNAシンテターゼ(trnI)及びアラニル-tRNAシンテターゼ(trnA)遺伝子の配列が発現カセットに隣接し、効率的な二重相同組換え及びフランキング配列を有するイントロンの最適なプロセシングにつながった。
【0080】
コドン最適化CNTB-FVIII HC及びCNTB-VP1を発現するトランスプラストミック植物を作出する前に、まず合成遺伝子を大腸菌(E.coli)に形質転換してその発現を評価した。原核生物起源であるため、葉緑体は類似した転写/翻訳機構を有する。図2Bに見られるとおり、天然FVIII遺伝子の発現レベルは、レタス及びタバコの両方の葉緑体形質転換ベクターにクローニングした合成FVIII遺伝子よりも約11倍低かった。対照的に、ほぼ極めて優先度の高いコドンのみで構成された合成FVIII遺伝子は、ウエスタンブロットで検出不能でさえあった。CNTB-VP1について、コドン最適化配列の発現は天然配列より3倍高かった。また、極めて優先度の高いコドンのみで構成された合成VP1遺伝子は天然配列より2倍低い発現を示した。
【0081】
レタス及びタバコ葉緑体における天然及びコドン最適化遺伝子の翻訳効率
大腸菌(E.coli)における合成配列の発現の向上を確認した後、合成FVIII HC及びVP1配列を含む形質転換ベクターを使用して、コドン最適化HC及びVP1を発現するトランスプラストミックレタス及びタバコ植物を作出した。ホモプラスミーを確認するため、天然及びコドン最適化FVIII HCを発現する4つの独立したレタス及びタバコ系統、及び天然及びコドン最適化VP1を発現する系統でサザンブロット分析を実施した。CNTB-FVIII HC天然及びコドン最適化配列を発現するレタス植物については、葉緑体ゲノムDNAをHindIIIによって消化し、フランキング領域にわたる消化標識プローブでプローブした(図2D)。CNTB-HVIII HC(コドン最適化)を発現するタバコ植物については、AflIIIを用いてゲノムDNAを消化した。選択された全ての系統が、予想された個別的なハイブリダイゼーション断片を示し、形質転換されなかった断片はなかった(図3A)。図4Aに示すコンストラクトによってコードされるCNTB-VP1を発現するタバコ植物の場合、4つの独立したトランスプラストミック系統から抽出した全ゲノムDNAをAflIIIによって消化し、フランキング配列でプローブすると、2つの個別的なハイブリダイゼーション断片が示され、形質転換されなかった4.4kb断片はなかった。従って、これらのデータから、全てのトランスプラストミック系統のホモプラスミーが確認され、従ってトランス遺伝子コピー数でなく、その発現レベルが翻訳効率に直接関係するはずである。
【0082】
イムノブロット及びデンシトメトリーアッセイを用いてコドン最適化又は天然遺伝子配列の発現レベルを定量化した(図4C及び図4D)。約100.7~約596.6ug/gDWのコドン最適化遺伝子のFVIII HCの濃度は、約20.0~57.2μg/gDWであった天然FVIII HC遺伝子を発現するレタス植物と比べて1.76~29.8倍高かった。パーセンテージ全葉タンパク質率(%TLP)は、コドン最適化ヒト遺伝子配列(0.058~約0.38%)で天然ヒト遺伝子配列(0.015~約0.026%)よりも約2.23~約25.33倍高かった。かかる発現レベルのばらつきは、葉の年齢及び発生段階の違いに起因する。本研究でPRM質量分析法に使用したバッチは、それぞれコドン最適化配列と天然配列との間で乾燥重量基準で5.02倍の増加(100.7対20.0μg/gDW)又は全葉タンパク質基準で3.98倍の増加(0.074対0.016%TLP)を示した。タバコ植物の場合、コドン最適化植物における濃度は約847.7~1266.0μg/gDWであり、約36.6~約85.5μg/gDWであった天然遺伝子と比べて約9.92~34.6倍高い、又はTLP基準で約4.0~約13.9倍高いFVIIIタンパク質が発現した。CNTB-VP1を発現するタバコ植物については、PRM質量分析法に使用したバッチはそれぞれコドン最適化配列と天然配列との間でDW基準で48倍の高さ(2,600対54μg/gDW)及びTLP基準で46倍の高さ(4.6%対0.1%)を示した(図4D)。これらのデータから、本発明者らの新規に開発したコドン最適化プログラムから得られたコドン最適化配列が、トランス遺伝子の翻訳をコード配列に基づき様々なレベルに大幅に改善した。
【0083】
コドン最適化が転写物の安定性に及ぼす影響を調べるため、プローブ、psbA 5’又は3’UTR配列でノーザンブロットを実施した(図5A図5B)。抽出した全RNAを連続的にロードし、CNTB-FVIII HC及びCNTB-VP1のコドン最適化及び天然配列の検出されたmRNAレベルをデンシトメトリーを用いて内因性psbA転写物に対して正規化し、次に正規化後の割合を比較した。ノーザンブロットから、コドン最適化CNTB-F VIII及び-VP1蓄積の増加がRNA転写物の存在量又は安定性というよりむしろ、翻訳レベルでの増加であることが示された。
【0084】
PRM分析による絶対定量化
コドン最適化及び天然遺伝子配列の発現レベルもまたPRM質量分析法を用いて定量化した(図6A図6C)。CNTB及びFVIII HC配列のPRM分析に最適なプロテオタイプのペプチドを選択するため、本発明者らは初めに、CNTB-FVIII HCを発現するレタス植物のトリプシン消化物の標準MS/MS分析を実施した(データは示さず)。この実験から、本発明者らはCNTBからの3つのペプチド(ペプチド1、IFSYTESLAGK(配列番号5);ペプチド2、IAYLTEAK(配列番号6);ペプチド3、LCVWNNK(配列番号7)及び3つのFVIII HCトリプシンペプチド(ペプチド4、FDDDNSPSFIQIR(配列番号8);ペプチド5、WTVTVEDGPTK(配列番号9);ペプチド6、YYSSFVNMER(配列番号10)を選択した。これらの3つのCNTBトリプシンペプチド及び3つのFVIII HCトリプシンペプチドのPRM測定の結果として、コドン最適化植物のFVIII HCタンパク質の含量を計算した(図6A図6B)。コドン最適化レタス植物のFVIII HCタンパク質の含量(Tcontent)は、天然配列を発現するレタス植物と比べて5.6倍高かった(図7A)。CTBから選択されたペプチドは、天然コンストラクトとコドン最適化コンストラクトとの間で4.9(IAYLTEAK)(配列番号6)~5.2(IFSYTESLAGK)(配列番号5))~6.6(LCVWNNK)(配列番号7)の範囲の変化倍数を示した。FVIII HCから選択されたペプチドは、5.5(FDDDNSPSFIQIR)(配列番号8)~5.7(YYSSFVNMER)(配列番号10)~7.1(WTVTVEDGPTK)(配列番号9)(図7A)の範囲を示した。これらの結果は表1に報告する。定量化範囲の直線性もまた決定した(データは示さず)。これらの6つのペプチド全てについて、本発明者らは0.98を超えるR2値を観察した。
【0085】
【表1】
【0086】
3つのCNTBトリプシンペプチドのPRM測定の結果として、コドン最適化植物のVP1タンパク質の含量を計算した(図6C)。コドン最適化植物のVP1タンパク質の含量は、天然配列VP1を発現するタバコ植物と比べて25.9倍高いと計算された。増加倍数は22.5(LCVWNNK)(配列番号7)~26.0(IAYLTEAK)(配列番号6)~28.0(IFSYTESLAGK)(配列番号5)(図7B)の範囲である。定量化範囲の直線性もまた、220atomol~170fmol(注入1回当たりのカラム上に相当する値)を包含するダイナミックレンジで一定量の植物消化物(4種類の植物材料全ての1:1:1:1混合物)においてSISペプチドをスパイクすることにより調べた。
【0087】
絶対定量化は、既知量のカウンターパートSISペプチドを試料にスパイクすることにより実現し得る。各々についてカウンターパートSISペプチド(34fmol)をタンパク質消化物(33.3μgの凍結乾燥葉粉末から抽出されたタンパク質に相当する量)と混合してカラムに注入した。各々、SIS及び内因性ペプチドの曲線下面積(AUC)の比を計算することにより、本発明者らは、内因性ペプチドモル濃度を推定し、カラム上のフェムトモルとして表した(図6A図6C)。コドン最適化及び天然配列についてのカラム上のフェムトモル(fentomole)の計算した全ての比の平均値(それぞれ6及び3つのペプチド、CNTB-FVIII HC及びCNTB-VP1)をコドン最適化コンストラクトにおけるタンパク質発現の増加倍数として報告する。図6A図6Cに、試料調製及びPRM分析の高い再現性が示される。ペプチド測定値は全て、4つのテクニカルレプリケート、2つの試料調製レプリケート(葉粉末~抽出~タンパク質消化)及び2つのMSテクニカルレプリケートの結果であった。ペプチド当たりの4つの測定値間の変動係数(%)は、16%及び22%であった2例を除き、いずれにおいても0.5%~10%の範囲であった。
【0088】
リボソームプロファイリング研究
リボソームプロファイリングは、ディープシーケンシングを用いて「リボソームフットプリント」-外因性ヌクレアーゼの攻撃からリボソームによって保護されるmRNA断片をマッピングする。この方法は、インビボでリボソームによって占有されるmRNAセグメントのゲノムワイドな高分解能の定量的スナップショットを提供する(Ingolia et al.,2009)。全体的なリボソームフットプリントカバレッジが、翻訳アウトプットの推定を提供することができ、及びリボソームが減速又は失速する位置は、リボソーム占有率が特に高い領域を特徴とする。
【0089】
コドン最適化が如何にリボソームの挙動に影響を及ぼすかを調べるため、本発明者らは、天然及びコドン最適化CNTB-FVIII HC及びCNTB-VP1トランス遺伝子を発現する植物からリボソームプロファイリングを行った。図8A図8Cは、各トランス遺伝子における位置の関数としてのリボソームフットプリントの存在量を示す;内因性葉緑体psbA及びrbcL遺伝子におけるフットプリントカバレッジが、最適化コンストラクトと天然コンストラクトとの間でトランス遺伝子データを正規化する手段として示される。リボソームフットプリントカバレッジは、天然VP1試料と比べてコドン最適化VP1試料ではるかに高かった(図8A)。しかしながら、この増加の大きさは、データをどのように正規化するかに応じて異なる(図8C):増加は、全葉緑体リボソームフットプリント、psbAリボソームフットプリント、又はrbcLリボソームフットプリントに対して正規化したとき、それぞれ5倍、16倍、又は1.5倍である。これらの数値は、定量的質量分析データから推測されるVP1タンパク質存在量の22~28倍の増加と比べてかなり低い。リボソームプロファイルのトポグラフィーは概してバイオロジカルレプリケート間で高度に再現性がある(例えば図8BのrbcL及びpsbAを参照)。これとの関連において、内因性psbA及びrbcL遺伝子のピーク及びバレーが天然及び最適化タバコVP1系統で非常に異なることは注目に値する。これらの内因性遺伝子、特に天然VP1系統に観察された高いピーク(リボソームポーズと推定される)の多くは、対を成すアラニンコドン(図8A中のアスタリスク)にマッピングされる。アラニンコドンにおけるリボソーム挙動の大域的違いが天然及びコドン最適化系統の差次的トランス遺伝子発現に寄与し得る可能性がある。
【0090】
FVIII系統におけるリボソームフットプリント数はコドン最適化系統において約2分の1に低下した一方、タンパク質蓄積は5~7倍増加した。しかしながら、主要なリボソームポーズは天然トランス遺伝子の3’末端近傍と、続いてリボソーム占有率が極めて低い領域に観察することができる(図8Bの括弧で括った領域を参照)。このリボソームポーズは、天然psbA遺伝子では決して使用されないコドンであるCTCロイシンコドンの対にマッピングされる(図1を参照)。これらの結果は、これらのロイシンコドンにおけるリボソームのストールが下流配列の翻訳及びタンパク質全体のアウトプットを制限する一方で、上流配列にリボソームの蓄積もまた引き起こすことを強く示唆している。従って、この場合、全体的なリボソーム占有率は翻訳アウトプットを反映しない。コドン最適化変異体においてそれらのロイシンコドンが修飾されると、このリボソームストールが消失し、トランス遺伝子にわたってはるかに均等なリボソーム分布がもたらされた(図8B、右)。リボソームフットプリントカバレッジはコドン最適化トランス遺伝子ではるかに一様性が高い(図8C)。
【0091】
考察
大腸菌(E.coli)と葉緑体とのコドン使用は同様でない
コドン最適化FVIII HC、LC及びSC配列は大腸菌(E.coli)における発現レベルを7~10倍向上させた。ホモプラスミック系統(全ての葉緑体ゲノムの形質転換)をサザンブロットによって確認した。コドン最適化CTB-FVIII重鎖(100kDa)、軽鎖(92kDa)及び単鎖(179kDa)の最も高いレベルの発現レベルは、凍結乾燥植物細胞でそれぞれ2440、160及び230μg/gであった。単鎖レタスでは、発現レベルは26日齢から48日齢で150μg/gから230μg/gに増加した。合成遺伝子の翻訳効率について、葉緑体は原核生物起源であるため、初めに大腸菌(E.coli)発現系で試験した。しかしながら、合成VP1遺伝子の発現は、天然遺伝子よりも僅か3倍高いことを示したに過ぎなかった。合成VP1の翻訳レベルがFVIII HCよりも低いのは、大腸菌(E.coli)と葉緑体との間でまれにしか使用されないコドンに違いがあるためであり得る。大腸菌(E.coli)では、6つのアルギニンコドンのうち4つ(AGG、AGA、CGG及びCGA)のコドンの優先度が低い。また、グリシンのGGA、イソロイシンのAUA、ロイシンのCUA、及びプロリンのCCC(Kane,1995)は、大腸菌(E.coli)で最も優先度が低いコドンである。通常、少数のレアコドンが翻訳に重大な障害を引き起こすことはない。しかしながら、多数のレアコドンがクラスター化すると、翻訳に影響する。アルギニンコドンAGG/AGAについては、大腸菌(E.coli)におけるタンパク質発現に対するその有害効果が広く研究されてきた。AGGコドンのタンデムリピートの程度が異なる試験タンパク質を使用した研究では、AGGクラスターの数が2から5になると、翻訳は大幅に低下した(Rosenberg et al.,1993)。天然VP1についてはレアコドンのクラスター化の問題はないが、FVIII HCの天然配列は3つのクラスター化部位を有し、そこにアルギニン又はグリシンのレアコドンが連続的に、例えばコドン3及び4(AGA-AGA)、コドン489及び499(AGG-AGA)、及びコドン562及び563(AGA-GGA)に置かれていることが分かった。従って天然FVIII HC配列からコドン最適化によってまれなArgコドンの多重リピートを除去すれば、大腸菌(E.coli)における合成HCの翻訳が増加し得る。対照的に、VP1の天然配列はかかるレアコドンのタンデムリピートを有しないため、FVIII HC天然配列と比べて発現効率への影響は小さかった。これらのデータを踏まえると、食用レタスを使用したFVIII SC凝固因子の作製及び経口送達が、費用対効果の高い安全な方法で、コンプライアンスが向上した患者に有益となるであろうことは明らかである。cGMP施設における治療用植物葉の大規模な/臨床グレードの生産は、大型動物モデル、非ヒト霊長類における植物製凝固因子の評価を強化し、及び毒性研究を促進するであろう。
【0092】
コドン最適化により葉緑体における翻訳が大幅に亢進する
葉緑体における天然VP1とコドン最適化VP1との間の22.5~28.0倍(PRMによる)及び46~48倍(WBによる)の増加はかなり顕著である。コドン最適化器Codon Optimizerは葉緑体における異種遺伝子の発現を最適化するように設計したため、葉緑体における天然配列と合成配列との間での発現レベルの向上は大腸菌(E.coli)における発現と比べてはるかに大きいことが予想される。例えば、ロイシンのCUAは大腸菌(E.coli)ではまれにしか使用されないが、同じコドンが葉緑体では最も選好して使用される。コドン最適化プログラムは6つのロイシンコドンのうちCUAの割合をVP1の天然配列の27.8%からコドン最適化配列の38.9%に増加させた。大腸菌(E.coli)での発現と対照的に、天然配列及びコドン最適化配列を発現するVP1植物間のタンパク質レベルの倍数差は、FVIII HCを発現する植物における天然配列とコドン最適化配列との間のその倍数差と比べて大きかった。FVIIIの分子量(754アミノ酸)がVP1(302アミノ酸)よりも高いため、葉緑体においてより多くのtRNA及びアミノ酸が必要であることを所与とすれば、得られたタンパク質合成は効率が低いことになる。葉緑体は外来性タンパク質を合成及び蓄積する能力が極めて高いことを考えると、窒素供給及びアミノ酸プールが組換えタンパク質の蓄積にとって大きな関心事であり得る。既報告に見られるとおり(Bally et al.,2009)、タンパク質合成資源の制限に起因した常在タンパク質、特にルビスコ(通常は主要な葉アミノ酸貯蔵タンパク質として機能する)の減少に伴い、トランスプラストミック植物の全アミノ酸含量が大きい影響を受けた。
【0093】
psbAにおけるコドン使用(本発明者らのプログラム)は、優先的なArg、Asn、Gly、His、Leu及びPheコドンが、インビトロ研究(Nakamura and Sugiura,2007)に基づく79個のタバコ葉緑体mRNAに関する既報告のものと異なる。優先的コドンは、恐らくは優先的コドンを認識する対応するtRNAの濃度がより高いことに起因して非優先的コドンよりも速く解読され、これによりタンパク質合成の伸長速度が加速する(Yu et al.,2015)。高等植物葉緑体ゲノムは、保存された一組の30個のtRNAをコードする。この一組が、葉緑体における翻訳機構を支持するのに十分であると考えられる(Lung et al.,2006)。コドン最適化VP1のリボソームプロファイリングデータでは、推定上のリボソームストール部位に相当する2つの主ピークのデータが異常に高濃度のセリンコドンと相関した(図8A)。コドン71、73、75、76及び79に5つのセリンコドンがクラスター化した。コドン178、179及び182に3つの他のセリンコドンが見付かった。各クラスター内の2つの隣接するセリン(コドン75及び76(UCU-AGU)、及びコドン178及び179(UCC-UCU))(図8Aの三角形の印を参照)は、高レベルのリボソームストールを示す。従って、これらのコドンを、異なるが同様であるアミノ酸のコドンに置き換えることにより、コドン最適化VP1トランス遺伝子の発現の更なる増加を達成し得る。
【0094】
先行研究では、異種遺伝子の発現レベルを向上させるためのコドン修飾は、コドンの3番目のヌクレオチドを変更することによるAT含量の増加に焦点が置かれた。IGF-1の場合(Daniell et al.,2009)、コドンの3番目の位置によって変更されたIGF-1の合成配列が、大腸菌(E.coli)システムで天然配列と比べて発現の劇的な増加倍数を示したが、葉緑体では発現レベルの増加は観察されなかったことから、AT含量の増加は翻訳の亢進における主要な寄与因子でないことが示唆される。この研究に見られるとおり、コドン最適化VP1のAT含量は僅かに増加したが、最適化CTB-VP1のタンパク質レベルは葉緑体での発現時に天然配列と比べて最大22.56~28.0倍(PRMによる)及び46~48倍(WBによる)に劇的に増加した。従って、翻訳効率の調節においては、幾つかの他の要因が重要な役割を果たす。CNTB-VP1のリボソームプロファイリング研究で観察されるとおり、特定のコドンの利用可能性及び密度が翻訳に重大な影響を与え得る。同様に、FVIII HC、リボソームフットプリントの結果は、リボソームポーズが、psbA遺伝子ではほぼ使用されないCTCロイシンコドンにマッピングされることを示した。このコドンはまた、レタスrbcL遺伝子(2.44%)においてもまれにしか使用されず、タバコrbcLについては、このコドンは全く使用されない。天然FVIII HCはCTCコドンを15.28%もの高さで使用するが、psbAコドン使用に従いCTCコドンはコドン最適化配列から除かれた。天然FVIII HC及びpsbA遺伝子のコドン頻度のより詳細な分析により、レアコドンに関する更なる洞察が明らかになる;GlyのGGGはpsbAでは2.3%使用されるが、HC天然では11.63%である;LeuのCTGはpsbAでは3.7%であるが、HC天然では26.39%である;ProのCCCは1.9%対11.9%である;ArgのCGGは0.5%対10.81%である;ValのCTGは1.7%対25.49%である。そのため、CTCコドンと同様に、天然ヒト遺伝子における上記に記載した幾つかの他のレアコドンが、葉緑体における翻訳効率を低下させたはずである。
【0095】
不溶性多量体タンパク質の定量化の新規解決法
大きな課題は、多量体構造体の凝集又は形成に起因して唯一の信頼性の高い方法(ELISA)を用いることができないため、不溶性タンパク質を定量化する信頼性の高い方法がないことである。しかしながら、タンパク質薬物の正確な用量の送達は、その臨床使用に向けた基本的な要件である。従って、この研究で本発明者らは、コドン最適化配列及び天然配列を担持する植物におけるCNTB-FVIII HC及びCNTB-VP1の絶対定量化のため並列反応モニタリング(PRM)分析を行った。PRM分析は、その高い感度、特異度、及び複合的タンパク質マトリックス内の特異的タンパク質標的の正確な定量化により、例えば血漿中のバイオマーカーの発見など、定量的プロテオミクス研究において広く利用されている(Gallien et al.,2012)。これらの性質は、タンパク質マトリックス供給源(例えばタバコ又はレタスからの植物抽出物)又は複雑さとは無関係の、特異的タンパク質標的の定量化にPRMを用いることの利点を明らかに示している。更に、少数のタンパク質用のPRMアッセイの開発を比較的短期間及び低コストで実現することができる(MS機器は考慮に入れない)。ペプチド主体の定量化方法論はまた、タンパク質抽出方法のロバスト性及び多用途性ももたらすため、目的タンパク質を天然のコンホメーションに保つことは必須ではない。しかしながらこれは、消化に使用される酵素の酵素切断部位へのアクセスにより本質的にバイアスを受ける。このバイアスを解消するため、本発明者らは強力な変性条件(即ち2%SDS)及びタンパク質分解酵素の活性に有利な緩衝液(即ちデオキシコール酸ナトリウム系緩衝液)(Leon et al.,2013)を使用している。FVIII HC(図6及び図7)については、天然配列と比べたコドン最適化配列の増加倍数の値に有意なばらつきはなく、それは定量化に選択したペプチドによって決まった。CNTB領域(融合タンパク質のN末端)から選択された3つのペプチドは、増加倍数の範囲が4.9~6.4であったことを示したが、この範囲はFVIII領域(融合タンパク質のC末端)から選択されたペプチドについては5.3~7.1であった。従ってPRM分析から得られた定量化結果は、融合タンパク質の選択領域(N末端か、それともC末端か)又は構成タンパク質(CNTBか、それともFVIII HCか)とは無関係に一貫している。また、CNTBVP1の同じ3つのCNTBペプチドは、増加倍数が22.5~28.0の範囲で一貫していることを示した。PRM分析は、異なるサイズのタンパク質の移動度及びトランスファー並びに抗体プローブの飽和度によりもたらされるばらつきを排除したため、ウエスタンブロットより優れている。総じて、PRMワークフローは第一にCNTB及びFVIII HC配列からのプロテオタイプペプチドの選択;及びカウンターパートSISペプチドの合成からなった。6つのペプチドが選択され、これらのペプチドの二重及び/又は三重荷電状態の質量電荷比(m/z)及びウィンドウ±5分としたクロマトグラフィーで観察された保持時間(RT)に基づき、Qexactive質量分析計でのPRM分析のスケジュールが組まれた。プレカーサーイオンの選択を目標とするこの二重の方法が、Qexactive MSの高分解能に加え、アッセイの高い特異度に寄与する。取得後のPRMデータ分析もまた、アッセイに高い特異度を付与する。次に、マトリックスからの明らかな夾雑物の寄与がない、5つの最も高強度のフラグメントイオンが、ペプチドの定量化に選択される。最後に、使用するバイオインフォマティクスツール、即ちSkyline(MacLean et al.,2010)によるフラグメントイオンのアサインの信頼性が、カウンターパートSISペプチドの各々で生成された参照MS/MSスペクトル及びRTプロファイルの比較によって実現する。PRMの高い感度、特異度、多用途性及びロバスト性は、植物における翻訳システムを特徴付ける新たな機会を提供する。
【0096】
結論
葉緑体における有益なバイオ医薬品の合成に関する我々の理解を促進するため、葉緑体ゲノム配列、リボソームプロファイリング及びターゲット質量分析法(MS)を利用して異種遺伝子発現を分析した。質量分析法によるターゲットプロテオーム定量化により、コドンを最適化すると翻訳効率がコード配列基準で5~50倍増加することが示され、この手法が植物細胞におけるタンパク質薬物投与量の定量化に初めてバリデートされた。多量体構造体の凝集又は形成に起因して不溶性タンパク質を定量化する信頼性の高い方法がないことが、大きな課題である。本研究に使用したバイオ医薬品は両方ともCNTB融合タンパク質であり、腸上皮GM1受容体へのその結合の要件である五量体を形成するものである。かかる多量体構造体のため、投与量の定量化に関して一般的に用いられるELISAは排除された。しかしながら、タンパク質薬物の正確な用量の送達は、その臨床使用に向けた基本的な要件であり、本研究ではこの重要な目標が達成された。実際、本研究で作成された植物バイオマスは、疾病管理センター(Center for Disease Control)によってバリデートされたポリオブースターワクチンの開発につながっており、アウトブレイク地域で重篤なポリオを引き起こす現行の経口ポリオワクチンを中止するよう求める世界保健機関(World Health Organization)の2016年4月の要求事項に適合する時機の良い発明である。
【0097】
コドン最適化タンパク質の蓄積のかかる増加は、転写物の存在量又は安定性に対する任意の影響というよりむしろ、翻訳レベルでの増加である。コドン最適化プログラムはタバコ及びレタスの両方で葉緑体におけるトランス遺伝子発現を増加させ、種特異性がない。先行のインビトロ研究と対照的に、新規にシーケンシングした多量の葉緑体ゲノムを用いた異種遺伝子発現の初の徹底的インビボ研究が新規コドン最適化プログラムの開発を促進し、このプログラムは臨床応用に重要な2つのタンパク質を使用して試験された。プロファイリング研究を用いて得られたリボソームフットプリントは、VP1翻訳に比例して増加することはなく、又はFVIIIコドン最適化後に減少さえしたが、これは翻訳における律速段階の診断に有効なツールである。コドン最適化後には、葉緑体でまれにしか使用されないコドンであるCTCロイシンコドンにおける主要なリボソームポーズが天然遺伝子から除かれた。コドン最適化遺伝子における他のコドンクラスターで観察されるリボソームストールが、かかるストールを引き起こすコドンを除くことによる更なる最適化の機会を提供する。
【0098】
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【0099】
実施例II
種々のポリオウイルス血清型に対する免疫を付与するコールドチェーン及びウイルス不要の植物製ブースターワクチン
植物形質転換ベクターの構築
セービン1コード配列(CDS)に由来する2つのVP1タンパク質をタバコ及びレタス葉緑体で発現させた。図4Aを参照のこと。第1の配列は、経粘膜担体CTBと融合した天然906bp VP1配列(51.98%AT)を包含した。第2の配列は、実施例Iに記載されるとおりタバコ及びレタス葉緑体における発現にコドン最適化した。タンパク質中の302アミノ酸のうち187個のコドンについて、コドン使用頻度が葉緑体psbA遺伝子(最も高度に翻訳される葉緑体遺伝子)のものに類似するよう変更することにより最適化した。レアコドンを葉緑体におけるトランス遺伝子発現に最適なコドンに置き換え、最適化したVP1遺伝子のAT含量が51.98%から59.03%に増加した。両方のCTB-VP1融合遺伝子とも、GPGP(Gly-Pro-Gly-Pro)(配列番号13)ヒンジ領域と共に構築して融合したVP1の立体障害を最小限に抑え、並びにフューリン切断部位、RRKRSV(Arg-Arg-Lys-Arg-Ser-Val)(配列番号14)と共に構築した(図10A)。融合遺伝子はpsbAプロモーター及び5’非翻訳領域(UTR)によってドライブして発現を増加させ、及びpsbA 3’-UTRによって転写物を安定化させた。
【0100】
タバコ及びレタスプラストームへの外来性遺伝子の組込み
微粒子銃パーティクルボンバードメントによってCTB-VP1トランスプラストミック系統を作成した。スペクチノマイシン含有培地で選択した後、タバコについて3P/3M及び5P/2M又はレタスについて16S-Fw/3M及び5P/2MのプライマーセットによるPCR分析によって推定トランスプラストミック系統を確認した(データは示さず)。CTB-VP1遺伝子のターゲット組込み及びホモプラスミーをtrnI及びtrnAフランキング配列でプローブしたサザンブロットによって更に確かめた(図9B)。全ての独立したトランスプラストミックタバコ系統が、AflIII消化した全DNAブロットにおいて野生型からの4.4kb断片を除き、正しいサイズの個別的なハイブリダイゼーション断片を示した(図9A)。トランスプラストミックレタス系統は12.2kbの予想サイズのハイブリダイズ断片を示したが、非形質転換野生型植物からの9.1kb断片もまた示し、ヘテロプラスミーが示唆された。しかしながら、2ラウンドの選択後、トランスプラストミックレタス系統1はほぼホモプラスミーに達した(図9C及び図9D)。従ってサザンブロット分析により、葉緑体ゲノムへのトランス遺伝子の部位特異的な安定組込み及びトランス遺伝子ホモプラスミーが確認された。図9Dに示されるとおり、レタス由来のCTB-VP1は44kDaの正しい分子質量で検出された。
【0101】
凍結乾燥タバコ葉におけるフォールディング、安定性及びCTB-VP1五量体アセンブリ
トランスプラストミック植物におけるCTB-VP1蓄積をウエスタンブロット分析によって定量化した。天然及びコドン最適化植物のバンドにおけるCTB-VP1タンパク質の強度を既知量のCTB標準と比較した。ウエスタンブロット分析から、天然VP1遺伝子産物と比較したときコドン最適化VP1配列がCTB-VP1の蓄積を有意に増加させたことが示された。天然及びコドン最適化CTB-VP1は全葉タンパク質のそれぞれ最大0.1%及び4~5%に達した(ターゲットMS又はウエスタンブロットを用いた定量化に基づけば最大100倍の増加、データは示さず)。図9Dに示すとおり、44kDaの正しい分子質量を有する単量体CTB-VP1融合タンパク質が抗CTB又はVP1抗体で検出された。CTB-VP1抗原は、凍結葉試料と比較したとき凍結乾燥細胞中で約20倍増加した。試験した全ての凍結乾燥試料において周囲温度で4及び8ヵ月間の貯蔵後にCTB-VP1融合タンパク質のインタクトな単量体バンドが観察され、いかなるCTB-VP1の検出可能な分解もなかった。GM1結合ELISAアッセイを用いて、葉緑体で発現したCTB-VP1の五量体構造の形成を評価した。図10に示すとおり、タバコからの天然の及びコドン最適化した新鮮及び凍結乾燥CTB-VP1の両方がCTB(陽性対照)と同等の吸光度を示し、一方、野生型植物又はBSA(陰性対照)からはシグナルは検出されなかった。これは、新鮮葉緑体及び凍結乾燥葉緑体の両方で発現するCTB-VP1融合タンパク質が、タンパク質薬物送達の要件であるGM1ガングリオシド受容体に結合し得る正しい五量体構造を形成したことを示している。凍結乾燥し、及び8ヵ月間周囲温度で長期間保存した後にも、VP1の安定性、GM1ガングリオシド受容体への結合の有効性、正しいフォールディング及び五量体アセンブリが維持された。
【0102】
VP1に対する動物ワクチン接種及び抗体反応
植物由来サブユニットワクチンは耐熱性であり、動物病原体による汚染がない。こうしたワクチンはまた、複数の感染症を防御するため、複数の抗原及び経粘膜担体(carrire)を含むように操作することもできる。かかる機構的及び概念的進歩は、発酵、精製、低温貯蔵及び輸送などの複雑な生産システムのコスト削減により、ワクチン送達に革命をもたらし得る。植物ベースのワクチン生産の2つの大きな課題としては、核ゲノムによる抗原の発現レベルの低さ、及びアジュバントによる抗原プライミング注射なしにはトレランスが誘導される可能性があることが挙げられる。
【0103】
ワクチン有効性の低さ、不安定性及び神経毒性への復帰、循環ワクチン由来ポリオウイルスの排出、並びに不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)のコストの高さ及び不適切な粘膜免疫を含めた現行のOPVの不適切な点に対処するため、本研究では植物細胞にバイオカプセル化したポリオウイルス抗原を使用して低コストブースターワクチンを開発した。経口ブースターにOPV反復ワクチン接種よりむしろ植物製ウイルスタンパク質1(VP1)サブユニットワクチンを使用する戦略は、全世界的PV根絶という目標を達成するための新規手法である。本研究では、本発明者らは、植物製アジュバント(サポニン及びスクアレン)と併せた葉緑体由来VP1による経口ブースティングが強力な免疫応答を誘導して、それが種々のPV血清型に対する防御免疫を付与することのエビデンスを提供する。
【0104】
前出の例では、本発明者らは凍結乾燥CTB-VP1タンパク質について記載している。本例では、このタンパク質を植物由来のアジュバント(サポニン及び/又はスクアレン)と共に製剤化しており、これらのアジュバントは特異的抗体免疫原性を誘導して種々のポリオウイルス血清型を中和するものである。マウスを「方法」の節及び以下の表に記載するとおり群に分けた。
【0105】
【表2】
【0106】
植物形質転換ベクターの構築
セービン1コード配列(CDS)に由来する2つのVP1タンパク質をタバコ葉緑体で発現させた。第1の配列は、経粘膜担体CTBと融合した天然906bp VP1配列(51.98%AT)を包含した。第2の配列は、タバコ及びレタス葉緑体における発現にコドン最適化した。タンパク質中の302アミノ酸のうち187個のコドンについて、コドン使用頻度が葉緑体psbA遺伝子(最も高度に翻訳される葉緑体遺伝子)のものに類似するよう変更することにより最適化した。レアコドンを葉緑体におけるトランス遺伝子発現に最適なコドンに置き換え、最適化したVP1遺伝子のAT含量が51.98%から59.03%に増加した。両方のCTB-VP1融合遺伝子とも、GPGP(Gly-Pro-Gly-Pro)ヒンジ領域と共に構築して融合したVP1の立体障害を最小限に抑え、並びにフューリン切断部位、RRKRSV(Arg-Arg-Lys-Arg-Ser-Val)と共に構築した(図4A及び図9B)。融合遺伝子はpsbAプロモーター及び5’非翻訳領域(UTR)によってドライブして発現を増加させ、及びpsbA 3’-UTRによって転写物を安定化させた。
【0107】
VP1に対する動物ワクチン接種及び抗体反応
上述のとおり、マウスを上記の表に示される群に分けた。免疫化の1日前、全ての群のマウスを採血した。本発明者らは、アジュバントと共にIPV又はCTB-VP1でブーストした後29、43、57、87及び117日目に種々の時点のVP1特異的IgG1及びIgA抗体の血清力価を決定した。試験した全ての時点で、全身及び粘膜免疫応答をELISAによって定量化した。VP1-IgG1力価は初めの1ヵ月で最も高いレベルに達し、同じレベルに留まった。更なるブースティングによってはVP1-IgG1レベルは増加しなかった(図11を参照)。コドン最適化CTB-VP1+両方のアジュバントでブーストしたマウスもまた、IPVでブーストしたもの(群9、図11B図11Fを参照)よりも高い抗VP1 IgG1抗体力価を有した。同様に、VP1-IgA力価も経口ブースティング後に初めの1ヵ月で増加し、後続のブースティングがもたらしたIgA力価の増加は僅かであった(図11G図11J)。際立って対照的に、IPVブースティングによってはIgA力価は増加せず、全身ワクチン送達の限界が確認された。これらの結果は、CTB-VP1を発現する植物細胞による経口ブースティングが粘膜免疫応答及び全身免疫応答の両方を誘導し得る一方、IPVプライム/ブーストはより低いレベルのIgG1及び無視できる程のIgA力価を生じさせたことを示している。
【0108】
更に、コドン最適化VP1によるワクチン接種が特異的抗VP1 IgG1及びIgAの有意に高い血清力価を誘導したことから、凍結乾燥コドン最適化材料における抗原の高発現が有効な免疫化に決定的に重要であることが示される。更に、2つのアジュバントと組み合わせた天然又はコドン最適化のいずれのVP1抗原によるブースティングも(群5、8及び9)、いずれか一方のアジュバントを併せるよりも強力なIgG1及びIgA免疫応答を誘導したことから、植物由来のアジュバントが粘膜経路(rote)による抗原の送達並びに強力な粘膜及び全身免疫応答の発生を亢進させることが示唆される。
【0109】
プライミング及びブースティング後の全てのセービン1、2及び3株に対するポリオウイルス中和力価
抗VP1 IgG1及びIgA抗体がポリオウイルスを中和することができるかどうかを決定するため、3つ全てのセービン血清型についてウイルス中和力価を測定した。全ての実験群及び未処置群からの血液試料をCDCにおいて二重盲検式にトリプリケート試料で試験した。血清試料は、抗体がlog2力価≧2.5で存在する場合に血清反応陽性と見なした。個々の中和力価をプロットした。バーは各群の中和力価平均値±SEMを表す。結果は、IPVプライミング後に、全ての実験群-天然(群3~5)又はコドン最適化VP1抗原+いずれか一方又は両方のアジュバント(群6~9)による経口ブースティング、並びに同じIPVのみによるプライミング及びブースティング(群2)が3つ全てのセービン株血清型に対して有意に高い中和力価を誘導したことを示している。結果は、コドン最適化VP1+サポニン及びスクアレンによる経口ブースティング(群8)が最も多いセービン1、セービン2及びセービン3中和抗体を生じ、プライミング及びブーストの両方をIPVで行ったマウス群(群2)と同様であったことを示している(図12)。異なるセービンウイルス血清型間で中和有効性に有意な統計学的差はなかったが、IPVプライム/ブースト(P<0.01)及び植物細胞を用いた経口ブースティング(P<0.001)でセービン3が最も高い中和力価を有した。しかしながら、IPVプライミングなしにコドン最適化VP1で経口的にブーストしたのみのマウスの血清中には、中和抗体は検出されなかった。
【0110】
ポリオウイルス中和抗体の血清陽性率を決定するため、各セービン株について、血清有病(中和抗体log2(力価)≧3)のマウスの数を各群のマウス総数と比較した。IPVでブーストしたマウス(群2)、又はコドン最適化VP1抗原+サポニン及びスクアレンアジュバントで経口的にブーストしたマウス(群8)は、ポリオウイルスセービン1、2及び3中和抗体について高い血清陽性率を示した(図13-D)。血清陽性率は、IPVプライム/ブースト対VP1による経口ブースティングについて70~90%の間で様々であったが、同様のP値(<0.001)で統計学的差はなかった。これらの結果は、サポニン及びスクアレンの両方をアジュバントとしたコドン最適化VP1抗原が、セービン1、2及び3株の全てに対して最も高い血清陽性率(図13)及びウイルス中和力価(図13)(log2力価約3.17~10.17)を有することを示している。この結果は、OPVブースティングによって引き起こされると考えられる野生型ポリオウイルス又はcVDPVの再燃に苦慮する国々において、植物細胞にバイオカプセル化したサブユニットワクチンを灰白髄炎に対する費用対効果の高いブースターワクチンとして使用し得ることを実証している。
【0111】
考察
VDPV2のアウトブレイク後、血清型2型OPVの使用中止リスクを軽減するため少なくとも1回のIPV接種をルーチンの免疫スケジュールに取り入れることを支援して、2013年に幾つかの重要な地球規模の政策及び手順が採られた。WHOの戦略的諮問専門家グループ(Strategic Advisory Group of Experts:SAGE)はルーチンの免疫プログラムからのOPV2の使用中止を全ての国に勧告し、これは2015年のOPVを使用する全ての国における少なくとも1回のIPV接種の導入、及び2016年の全世界的なOPV2の使用中止によって促進された(世界ポリオ根絶構想(global polio eradication initiative:GPEI)、2015年)。これらの現状での優先事項を達成するためには、許認可及びルーチン免疫への二価OPVの利用し易さの向上、並びにOPVを使用する全ての国への少なくとも1回のIPV接種の確かな実現を含め、必要な活動に重点が置かれなければならない。しかしながら、IPVの全世界的な導入及び来たる三価OPV(tOPV)から二価OPV(bOPV)への切り替えの準備には、IPV供給の逼迫、持続的cVDPV伝播及び封じ込め要件に適合するための課題を含め、複数のリスクがなおも残っている(GPEIポリオ根絶最終段階の中期レビュー(Polio Eradication & Endgame Midterm Review)、2015年)。最も重要なことには、IPV以外に利用可能なブースター技術はなく、多くの発展途上国はその費用を負担できない。更に、OPVワクチン接種のルーチンでの使用は、世界PV根絶上は中止すべきであり、全世界でOPVの代わりにIPVを導入することが求められている。同時に、VDPVの出現及び将来起こる野生型PVのアウトブレイクに対して高いレベルの集団免疫を維持する必要がある。しかしながら、IPVワクチン接種1回当たりの現在の費用は発展途上国にとって高過ぎる。
【0112】
葉緑体におけるVP1の発現及び植物細胞へのバイオカプセル化は、経口送達時に抗原を消化器系から保護することができ、片利共生微生物による腸内での免疫系へのその放出を促進する22、23。CTB抗原融合物は、GM1腸上皮受容体を介した免疫系への経粘膜送達を促進する24。更に、CTB融合ワクチン抗原はプライミング及び経口ブースター後に抗原特異的IgG及びIgAの産生を刺激して、毒素/病原体攻撃からの防御をもたらす22。コールドチェーンを必要としない、経口投与し易い感染症に対する生ワクチンの生産が、特に低温貯蔵及び輸送の利用が限られている地域において重要なニーズである22。先行研究では、バイオ医薬品又は抗原タンパク質を凍結乾燥植物材料中において室温で数ヵ月間又は更には2年間、いかなる検出可能な分解もなく貯蔵できることが実証されている2527。VP1は、周囲温度で数ヵ月間貯蔵したとき、凍結乾燥植物細胞中で極めて安定している。
【0113】
数回の経口ブーストが適切に高レベルの全身及び粘膜免疫を生じさせた後、抗原特異的IgG及びIgAが有意に誘導された。VP1-IgG1及びVP1-IgAの両方の力価とも、経口ブースティング後の最初の1ヵ月で最も高いレベルに達し、更なる回数のブースターによってもそれ以上増加しなかった。ここでは後期段階の血清採取からの中和データを提供するが、セービン血清型1型の中和に関して評価した以前のバッチも、VP1を発現する植物細胞でブーストした群において同様の結果を示した(データは示さず)。本研究では、経口送達前に植物細胞をPBSに懸濁したが、小児への送達については、液糖を含有する好適な製剤が必要となり得る。IPVは全身性抗体を誘導して麻痺性疾患を防ぐのに極めて有効であるが、ポリオウイルスの再感染及び環境中への排出を防ぐために必要な粘膜免疫の誘導においては効率が下がる。本発明者らの結果から、IPVでs.c.プライミング/ブーストしたマウスにおいてIgA力価が最小限であることが確認されたが、これはIPVの不十分な粘膜免疫を説明している。IPVでs.c.プライミングしてバイオカプセル化VP1で経口的にブーストしたマウスは強力な抗原特異的血清IgG1(>12,800力価)及びIgA(>800力価)応答を誘発し、アジュバントと併せたVP1抗原の経口送達が全身免疫応答及び粘膜免疫応答の両方を生じさせたことが確認された。ウイルスによる免疫化と異なり、サブユニットワクチンは主としてIgG1アイソタイプ抗体を伴うTh2応答を誘導する2830。サブユニットワクチンによる経口ブースティングは、高いIgG1/IgA力価によって示されるとおり、粘膜免疫応答及び全身免疫応答の両方を誘発する。
【0114】
本研究では、本発明者らは葉緑体で発現する天然及びコドン最適化VP1抗原の両方を評価した。VP1タンパク質レベルは、コドン最適化VP1を発現する植物においてはるかに高かった。本発明者らのインビボ研究はまた、コドン最適化VP1によるワクチン接種が天然VP1と比べてはるかに高いIgG1及びIgA抗体反応を誘導したことも示しており(図11A図11J)、ワクチン製剤として経口的に送達される抗原タンパク質が高量であるほど、経口免疫化に一層有効であることが示唆される。ブースト間の間隔がより長かったにも関わらず抗体力価は増加したことから、サブユニットワクチンによるブースティングが強力な記憶免疫応答を生じさせ得ることが示唆される。
【0115】
1:8希釈(3log2(力価))の閾値を上回る力価の中和抗体レベルが、国のあらゆる規制当局により、IPV含有ワクチンに関する許可申請の精査時に防御と良好な相関があるとして認められている21、31。予想どおり、全てのセービン株について、IPVによるプライミング及びブースティングによって誘導されたウイルス中和力価は高かった。本発明者らの研究では、IPVによるプライミング及びアジュバント(サポニン及びスクアレン)と併せたバイオカプセル化VP1による経口ブースティングが、全てのセービン1、2、3株に対して最も高い血清陽性及びウイルス中和力価を示した(3.17~10.17の範囲のlog2力価)。VP1+2つのアジュバントによるブーストのみで、プライミングしなかったマウス(群9)は、最も強力なVP1特異抗体(IgG1及びIgA)産生を示したが、IPVでプライミングしたマウスと比較したとき、この群では中和ウイルス力価は観察されなかった。従って、サブユニットワクチン接種による経口ブースティング単独は、抗原に対する良好な中和抗体反応を誘導するには不十分であるように見える。ELISAによるこれらの高い抗VP1抗体は、感染細胞の表面上に発現するウイルスタンパク質に結合するのみで、遊離ウイルス粒子には有意と言える程には結合せず、従ってそれらはウイルスを中和して細胞をウイルス感染から防御することができない可能性もある32。ウイルス感染の細胞間伝播を阻止するには、高濃度の中和抗体が必要である3335。これらの結果は、病原体に対して十分な免疫を誘導するには経口プライミングが不可欠であることを実証している。
【0116】
本研究はポリオブースターワクチンに焦点を当てているが、平均余命が増加していることに伴い、免疫をブーストする必要性は高まっている。高齢者集団で感染症に対する免疫が失われることについての懸念は増大しつつある。例えば、帯状疱疹は、加齢によって免疫系が弱まったときに潜伏性水痘ウイルスが再活性化すると起こり、これが新規のウイルス感染に起因して観察されることはめったにない。従って、高齢者集団で幾つもの感染症に対する免疫を亢進させるため、低コストの経口ブースターワクチンがあれば、この目的に適うことができるであろう。
【0117】
結論として、現在、いかなる感染症に対しても、ウイルス不要及びコールドチェーン不要のワクチンは利用可能でない。従って、トランスプラストミック技術を用いたワクチンの生産及び経口送達は、低コストのコールドチェーン不要及びウイルス不要のブースターワクチンの開発を促進するであろう。ここで本発明者らは、全世界的PV根絶及びエンデミック地域におけるポリオアウトブレイクの予防に向けたOPVワクチン反復接種を回避する代替戦略としてのバイオカプセル化ポリオ抗原を使用した低コストのブースターワクチンを示す。
【0118】
参考文献
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【0119】
実施例III
植物葉緑体にバイオカプセル化したコドン最適化インスリン様成長因子1の経口送達
ヒトインスリン様成長因子1(IGF-1)は、傷害後の筋芽細胞/線維形成、分化及び再生における骨格筋の成長及び発達において重要な役割を果たす。EペプチドがIGF-1の有効性を高めるため、葉緑体でPro-IGF-1を発現させてコストを削減し、経口送達を促進することが望ましい。
【0120】
実施例Iに記載した、133の植物種からの最も高発現の葉緑体遺伝子に基づき開発したソフトウェアを用いて、Pro-IGF-1E(105aa)をコドン最適化した(図17Fを参照)。合成pro-IGF-1Eを天然配列コレラ毒素Bサブユニット(CTB)に融合し、図14Aに示されるとおり葉緑体ベクターに挿入した。IGF-1のコドン最適化配列の発現に関するイムノブロットアッセイを大腸菌(E.coli)で実施した。IGF-1の2つのコドン最適化配列(CO、コドン最適化した古い方;CN、コドン最適化した新しい方)を含む葉緑体発現ベクターで形質転換した大腸菌(E.coli)から全タンパク質を抽出した。図14Bの矢印は、予想タンパク質サイズを示す(CTB-IGF-1、24.3kDa)。CTB-IGF-1トランスプラストミック系統のサザンブロット分析を図14Cに示す。図15A図15Dは、トランスプラストミック細胞系統におけるコドン最適化IGF-1の定量化及び機能分析を示す。
【0121】
植物由来CTB-Pro-IGF-1によるIGF-1受容体(IGFR)のリン酸化をインビトロで調べた。結果は図16Aに示す。図16B図16Dは、CTB-Pro-IGF-1の強制経口投与後のマウスで測定したときの循環系中の遊離Pro-IGF-1を示す。CTB-Pro-IGF-1はまた、4つのヒト/マウス経口細胞系統の増殖アッセイによっても評価した。図17A図17Eを参照。
【0122】
105aaのうち73個のコドンが修飾された結果、コドン最適化IGF-1遺伝子のAT含量は57%となった。グリコシル化を回避するため、Lsy68、Arg74及びArg77をGly68、Ala74及びAla77に変えた。図17Fを参照。調べた系統は、サザンブロットでホモプラスミー(全ての葉緑体ゲノムへの組込み)を示し、及びCTB-IGF1の高レベルの発現を示した。凍結乾燥植物細胞のGM1 ELISAから、五量体形態のCTB-Pro-IGF-1の維持及びジスルフィド結合を含むフォールディングが確認された。葉緑体由来CTB-Pro-IGF-1はP6細胞のIGF-1受容体(IGFR)を用量依存的且つ時間依存的にリン酸化した。
【0123】
凍結乾燥植物細胞の経口送達後8時間の時点で血中のPro-IGF-1は3倍に増加し、これは最長24時間まで維持された(図18C);pro-IGF-1は筋組織において2倍高かった(図16D)。植物細胞からの精製CTB-Pro-IGF-1は、ヒト口腔ケラチノサイト、歯肉由来間葉系間質細胞、頭頸部扁平上皮癌細胞、及びマウス骨芽細胞の増殖を用量依存的に(1.4~3.9倍高く)刺激した。
【0124】
結論
強制経口投与後の植物由来CTB-Pro-IGF-1によるIGFRのリン酸化並びに循環系及び筋組織におけるPro-IGF-1の維持から、植物細胞にバイオカプセル化した機能性IGF1の低コスト生産及び送達にこのシステムが適合することが確認される。凍結乾燥植物細胞は、IGF-1の有効性の低下なしに周囲温度で無期限に貯蔵することができる。
【0125】
臨床的意義
葉緑体におけるEペプチドと併せたPro-IGF-1の発現は、筋肉障害を含めた、IGF-1欠損によって引き起こされる障害を治療するための有効、効率的且つ廉価な経口薬物送達概念を提供する。この手法は、反復的長期薬物送達への患者コンプライアンスを高めることに加え、医療費の高騰に対処するための技術的な進歩をもたらす。
【0126】
実施例IV
レタスで作製されるう蝕治療用の廉価なバイオ医薬品
う蝕は、世界中に蔓延しているバイオフィルム関連口腔疾患である。抗菌薬はエキソポリサッカライド(EPS)マトリックスに浸透しないため、最小限の有効性しかない。従って、本例では、本発明者らは、抗菌ペプチド(AMP)と融合したEPS分解酵素デキストラナーゼ及びムタナーゼを発現させる。植物葉緑体における組換え酵素生産は、非常に高価な発酵、精製、低温貯蔵/輸送及び侵襲的外科的送達をなくして周囲温度での貯蔵を促進するため、1000~3,100倍安価である。本例の主な目標は、AMP及び酵素を発現する凍結乾燥植物細胞が含浸されたチューインガムを開発することである。従って、レポーター遺伝子GFPを発現する凍結乾燥植物細胞で作られたチューインガムで、薬物放出が最大限となるように咀嚼シミュレータを使用して咀嚼速度及び時間を最適化する初期研究を実施した。
【0127】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)のデキストラナーゼ遺伝子及びパエニバチルス属(Paenibacillus)のムタナーゼ遺伝子をPG1と融合するか、又はPG1無しかのいずれかとし、葉緑体ベクターにクローニングし、その機能を初めに大腸菌(E.coli)で評価した。図18Aを参照。天然に存在する酵素と最適化バージョンとのコドン使用の違いを図18Bに示す。上記に記載し、及び図18Cに示すとおり、最適化した遺伝子をレタス発現ベクターにクローニングした。ウエスタンブロッティングによりロバストなタンパク質発現が確認された。図18Dを参照。咀嚼シミュレータを使用して、人工唾液中のGFPを定量化することによりガム錠の放出動態を研究した。
【0128】
新規コドン最適化アルゴリズムは、psbAコドン階層に基づきムタナーゼ遺伝子における(1261個中)586個のレアコドンを優先的コドンに置き換えた。コドン最適化ムタナーゼ遺伝子(AMP融合有り又は無し)をタバコ及びレタス葉緑体ベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)で発現させ、これは市販の酵素と同様に完全に機能性であった。図18Eを参照。天然デキストラナーゼ遺伝子をタバコ葉緑体ベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)におけるデキストラナーゼ活性を試験した。大腸菌(E.coli)によって産生された組換えデキストラナーゼは寒天プレート上のブルーデキストランを分解し、デキストラン加水分解が確認される。トランスプラストミック系統の作出及び特徴付けの手順を図18Fに示す。
【0129】
ガム錠中のGFPがガム調製中に有意に分解されることはなかった。最大限のタンパク質放出に必要な咀嚼速度、時間は、咀嚼シミュレータを使用して現在最適化しているところである。従って、AMPと融合したEPS分解酵素の産生は、好ましくはガム錠として投与される、有望なう蝕治療を提供するはずである。
【0130】
本発明の好ましい実施形態の幾つかを上記に説明し、具体的に例示したが、本発明をかかる実施形態に限定することは意図されない。それらの実施形態に対しては、以下の特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な改良を行うことができる。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
【配列表】
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