(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】レーザ焼結用粉末
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20220922BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220922BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20220922BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20220922BHJP
C08J 3/14 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/153
B33Y40/10
B33Y70/10
C08J3/14
(21)【出願番号】P 2019031048
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ファルジア
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジー・ザルツ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ジェイ・ガードナー
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102417786(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106905672(CN,A)
【文献】特表2018-532853(JP,A)
【文献】特開2005-128176(JP,A)
【文献】特表2012-513319(JP,A)
【文献】特開2013-156617(JP,A)
【文献】特表2018-500450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00- 64/40
B33Y 10/00- 99/00
B28B 1/30
C04B 35/14
C08G 63/00- 64/42
C08J 3/00- 3/28;99/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ焼結用シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を含む粉末組成物であって、
該シリカ注入結晶性ポリエステル粒子が、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂と、該シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の総質量に対して
5質量%~
60質量%の範囲の量で前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子中に存在するシリカナノ粒子とを含み、
前記結晶性ポリエステル樹脂が、少なくとも1つの有機二塩基酸と、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物である少なくとも1つのポリオールとに由来する不飽和結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする粉末組成物。
【請求項2】
前記シリカナノ粒子は、前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の総質量に対して
10質量%~
60質量%の範囲の量で前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子中に存在する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機二塩基酸は、フマル酸である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子は、
5ミクロン~
500ミクロンの範囲の体積平均粒径を有する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項5】
前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子は、
30ミクロン~
50ミクロンの範囲の体積平均粒径を有する、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項6】
前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の溶融温度(Tm)は、
50℃~
100℃の範囲にある、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザ焼結用シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の製造方法であって、
有機溶媒に溶解された結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤を含む溶液を調製することと、
前記溶液に、水溶性ポリマーの水溶液およびシリカナノ粒子を添加することと、および
シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を沈殿させることと、
を含み、前記結晶性ポリエステル樹脂が、少なくとも1つの有機二塩基酸と、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物である少なくとも1つのポリオールとに由来する不飽和結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記シリカナノ粒子を前記溶液に添加する前に、前記水溶性ポリマーの水溶液を前記溶液に添加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液に少なくとも1つの熱開始剤を添加することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー安定剤は、ポリビニルアルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶性ポリエステル樹脂および前記ポリマー安定剤は、
80℃~
100℃の範囲の温度で前記有機溶媒に溶解される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記シリカナノ粒子は、該シリカナノ粒子が、前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の総質量に対して
10質量%~
60質量%の範囲の量で前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子中に存在する量で、前記溶液に添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザ焼結用シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の製造方法であって、
有機溶媒に溶解された結晶性ポリエステル樹脂、シリカナノ粒子、およびポリマー安定剤を含む溶液を調製することと、
前記溶液に水溶性ポリマーの水溶液を添加することと、および
シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を沈殿させることと、
を含み、前記結晶性ポリエステル樹脂が、少なくとも1つの有機二塩基酸と、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物である少なくとも1つのポリオールとに由来する不飽和結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液に少なくとも1つの熱開始剤を添加することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性ポリエステル樹脂、前記シリカナノ粒子、および前記ポリマー安定剤は、
80℃~
100℃の範囲の温度で前記有機溶媒に溶解される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記シリカナノ粒子は、該シリカナノ粒子が、前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の総質量に対して
10質量%~
60質量%の範囲の量で前記シリカ注入結晶性ポリエステル粒子中に存在する量で、前記溶液に添加される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、三次元(3D)印刷としても知られている付加製造における使用のための印刷粉末に関し、特に、機械的強化充填剤としての結晶性ポリエステルへのシリカナノ粒子の添加に関する。
【0002】
3Dコンピュータ支援設計(CAD)データから実際の部品を作製するための簡単で費用対効果の高い手段として、近年、3D印刷が増加している。3D印刷は、ステレオリソグラフィ(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、および溶融堆積モデリング(FDM)を含む多くの付加製造技術を網羅している。これらの製造プロセスは、3Dフォームが作製されるまで、プラスチックまたは金属製の構築材料の層の上に正確に「印刷」することによって、カスタム部品を提供する。
【0003】
3D印刷は、従来の製造技術に勝る多くの利点を提供する。例えば、従来の技術を使用して以前に形成することができなかった複雑な構造のデザインが、3D印刷を使用して形成され得る。さらに、3D印刷は、単一ユニットと同じくらい小さいバッチサイズを製造するための費用対効果の高い方法を提供する。デザインは、エンドユーザによってCADソフトウェアを使用して作成されてもよく、またはユーザが、家庭もしくは小企業で必要な修理部品もしくは所望の装飾構造を作製するためにウェブベースのソフトウェア命令をダウンロードしてもよい。異なるプリントヘッドは、作製されている物体に複数の異なる材料(例えば、ゴム、プラスチック、紙、ポリウレタンのような材料、金属など)を付加することができる。
【0004】
3D印刷方法の1つは、SLSである。SLS印刷は、典型的には、物体を印刷するための構築材料として粉末プラスチックおよび/またはポリマーを用いる。多くのSLS材料は、粉末ガラス、炭素繊維、アルミニウム粉末等のような添加剤を伴うかまたは伴わないポリアミドの複合材料(ナイロン)である。SLS系では、薄膜内に堆積されたポリマー粒子を選択的に融着または溶融するために、CO2レーザビームが使用される。最上部の粉末層中のポリマー粒子は、前の焼結層との接着に加えて合体する。このようにして粉末は、レーザにより層ごとに焼結されて成形され、物体を「ゼロから」構築する。レーザ焼結は通常、約50~約300ミクロンの範囲の粒子を使用し、ここで詳細度は、レーザの精度および粉末の細かさによってのみ制限される。
【0005】
これは、SLS処理での使用に対して知られている結晶性または半結晶性ポリマーについて、結晶化が、処理中に可能な限り長く、または少なくともいくつかの焼結層について抑制されるべきであることを意味する。したがって、処理温度は、所与のポリマーの溶融温度(Tm)と結晶化温度(Tc)との間で正確に制御される必要がある。過冷却ポリマー溶融物のこの準安定熱力学的領域は、所与のポリマーについてのSLS処理の「焼結ウィンドウ」と呼ばれる。
【0006】
広範囲の工業的範囲に対してSLS技術を制限するという1つの問題は、十分な焼結ウィンドウがないために適用可能なポリマーの種類が狭いことである。今日まで、主に結晶性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、およびポリエーテルアミド(PEBA)からなる、少数の種類のポリマーのみがこの技術にうまく適用されてきた。非晶性樹脂、エラストマー、またはポリプロピレンおよびポリエチレンのような他のより柔軟な材料は使用できない。ポリプロピレンおよびポリエチレンなどの材料は、SLS技術にとって十分な焼結ウィンドウを有しない。SLSの3D印刷用の材料は、結晶性でありかつ、約30℃~50℃の温度差のある融点および再結晶点のような、鋭い融点および再結晶点を有する必要がある。
【0007】
焼結ウィンドウに加えて、形状および表面組織はSLS材料について考慮され得る特性である。自由流動性を誘導するためには、形状はできるだけ球形に近いものにする必要がある。滑らかな表面を有する球形は、SLS粉末がさらに圧縮されないので、SLS粉末がSLSマシンの部品台上のローラまたはブレードシステムによって分配されるときに役立ち得る。したがって、ポテト形状であり得るポリアミド粉末は、粉末流動性が劣りかつ粉末密度が低いために極低温粉砕から得られる粒子のように適切でない場合がある。極低温粉砕粉末は、低密度の、弱く、あまり凝縮されていないSLS部品をもたらす傾向がある。
【0008】
よって、得られる印刷構造の硬度、引張強度、および他の物理的および化学的性質を改善するために、現在使用されているポリアミド以外の他のより硬いまたはより柔軟な材料が当該技術分野において必要とされている。さらに、3Dプリンタがより少ない電力を使用し得るように、より低い融解温度および結晶化温度(TcおよびTm)を有するポリマー材料が必要とされている。これは、化学的および機械的耐性を改善することを助けるために特定のナノ充填剤を含有するポリマー材料を含む。
【0009】
本明細書において、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂およびシリカナノ粒子を含むレーザ焼結用シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を含む、粉末組成物を開示する。特定の実施形態では、シリカナノ粒子は、粒子の総質量に対して約5質量%~約60質量%の範囲の量、例えば約10質量%~約30質量%の範囲の量、約10質量%の量、または約20質量%の量で粒子中に存在してもよい。
【0010】
別の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、フマル酸などの少なくとも1つの有機二塩基酸、ならびに1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールから選択される少なくとも1つのポリオールなどの少なくとも1つのポリオール、から誘導される不飽和結晶性ポリエステル樹脂である。本明細書に開示される特定の実施形態では、少なくとも1つの有機二塩基酸は、約25モル%~約90モル%の範囲の量、例えば少なくとも約50モル%または少なくとも約70モル%の量で結晶性ポリエステル樹脂中に存在し得る。特定の実施形態では、少なくとも1つのポリオールは、約25モル%の1,4-ブタンジオールと約75モル%の1,6-ヘキサンジオールとを含む混合物などの1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールの混合物である。一実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、フマル酸と、約25モル%の1,4-ブタンジオールと約75モル%の1,6-ヘキサンジオールとの混合物とから誘導される不飽和結晶性ポリエステル樹脂である。
【0011】
さらに別の実施形態では、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子は、約5ミクロン~約500ミクロンの範囲、例えば、約5ミクロン~約350ミクロン、または約30ミクロン~約50ミクロンの体積平均粒径を有する。
【0012】
本明細書に開示される特定の実施形態では、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の融解温度(Tm)は、約50℃~約100℃の範囲、例えば、約55℃~約90℃の範囲または60℃~85℃の範囲にある。本明細書に開示される他の実施形態では、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の結晶化温度(Tc)は、約50℃~約60℃の範囲にあり、例えば約58℃である。
【0013】
さらに本明細書において、有機溶媒に溶解された結晶性ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールを含む溶液を調製することと、ポリビニルアルコールの水溶液およびシリカナノ粒子を溶液に添加することと、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を沈殿させることと、を含む、レーザ焼結用シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の製造方法を開示する。特定の実施形態によれば、シリカナノ粒子を溶液に添加する前にポリビニルアルコールの水溶液を溶液に添加し、特定の実施形態によれば、シリカナノ粒子をポリビニルアルコールの水溶液に添加して、シリカ/ポリビニルアルコールを形成し、次いで、有機溶媒に溶解された結晶性ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールを含む溶液に、シリカ溶液/ポリビニルアルコール溶液を添加する。
【0014】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールは、約80℃~約100℃の範囲の温度、例えば約90℃の有機溶媒に溶解される。
【0015】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態では、有機溶媒に溶解された結晶性ポリエステル樹脂、シリカナノ粒子、およびポリビニルアルコールを含む溶液を調製することと、溶液にポリビニルアルコールの水溶液を添加することと、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子を沈殿させることと、を含む、シリカ注入結晶性ポリエステル粒子の製造方法を開示する。特定の実施形態において、結晶性ポリエステル樹脂、シリカナノ粒子、およびポリビニルアルコールは、約80℃~約100℃の範囲の温度、例えば約90℃の有機溶媒に溶解される。
【0016】
特定の実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、アゾ開始剤などの少なくとも1つの開始剤を溶液に添加することをさらに含む。
【0017】
本明細書に開示される方法の様々な実施形態において、シリカナノ粒子は、シリカナノ粒子がシリカ注入結晶性ポリエステル粒子の総質量に対して約5質量%~約60質量%の範囲の量、例えば、約10質量%~約30質量%、約10質量%、または約20質量%で粒子中に存在するような量で溶液に添加される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本明細書に開示される実施形態に従って調製される例示的なシリカ注入微結晶粒子の概略図であり、結晶性ポリエステル樹脂の表面上のシリカナノ粒子を示す。
【
図2】本明細書に開示される実施形態に従って調製された例示的なシリカ注入微結晶粒子の概略図であり、結晶性ポリエステル樹脂の表面上のシリカナノ粒子を示す。
【
図3】本明細書に開示される実施形態に従って調製された例示的なシリカ注入微結晶粒子の概略図であり、結晶性ポリエステル樹脂のマトリックス内に埋め込まれたシリカナノ粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されるとき、「3D印刷」という用語は、三次元空間における材料の堆積を使用して3D物体を形成することができる任意の種類の積層造形を指す。3D印刷は、溶融堆積モデリング(FDM)および溶融フィラメント製造(FFF)のように、材料を押し出してから硬化させる押出堆積を含むことができる。3D印刷は、粒状材料の結合も含み、粒状材料は二次元平面に堆積され、続いて選択的レーザ焼結(SLS)および選択的レーザ溶融(SLM)のように一緒に結合される。
【0020】
本明細書で使用されるとき、シリカナノ粒子などの「ナノ粒子」は、全単位と見なすことができ、ナノメートルで測定することができる粒子状材料を示す。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約0.1ナノメートル~約1,000ナノメートルの範囲、例えば約1ナノメートル~約100ナノメートルの範囲にあってもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「微粒子」という用語は、全単位と見なすことができ、ミクロン単位で測定することができる粒状材料を示す。特定の実施形態では、微粒子は、約0.01ミクロン~約100,000ミクロンの範囲、例えば約0.1ミクロン~約1,000ミクロンの範囲であってもよい。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「シリカ注入」という用語は、シリカがポリマーマトリックス中および/またはポリマーマトリックス上に組み込まれている結晶性ポリエステル樹脂などの材料を示す。特定の実施形態では、注入シリカは、シリカがポリマー樹脂の表面上にあるか、ポリマー樹脂中に分散しているか、または表面上にありかつポリマー樹脂全体に分散していることを示す。シリカがポリマー樹脂全体に分散している場合、シリカはポリマー樹脂全体に比較的均一にまたは不均一に分散していてもよい。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「結晶性」は、三次元秩序を有するポリエステルを指す。「半結晶性樹脂」は、例えば、約10%~約90%の結晶性、例えば約12%~約70%の結晶性の結晶パーセンテージを有する樹脂を指す。本明細書で使用されるとき、「結晶性ポリエステル樹脂」および「結晶性ポリエステル」は、特に指定しない限り、結晶性樹脂と半結晶性樹脂の両方を包含する。
【0024】
本明細書において、SLSプロセスなどの積層造形プロセスで使用するための粉末が開示される。本明細書中に開示される粉末は、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子を含む。シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、結晶性ポリエステル樹脂とシリカとの間の相溶性を可能にする混合方法によって得られ得る。
【0025】
本明細書に開示されるように、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子を調製するための1つの方法は、溶融混合または溶液混合のいずれかによってシリカをポリマーマトリックスに直接混合することによる。特定の実施形態では、微粒子中のシリカの充填量を増加させることは、結晶性ポリエステルに対する強化添加剤として作用し得、それによって微粒子の化学的および機械的耐性を改善する。本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子が3D印刷に使用される場合、それらの改善された化学的および機械的耐性は、非シリカ注入樹脂、例えば非シリカ注入結晶性ポリエステルまたはポリアミドから調製される最終焼結部品と比較して、最終焼結部品における改善をもたらす。
【0026】
シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子を調製するための別の方法は、シリカの遅延添加によるものであり、ここで、シリカは、結晶性ポリエステル粒子の表面上に位置する。特定の実施形態において、微粒子の表面上に位置するシリカの量を増加させることは、シリカが流動剤、固結防止添加剤、および/または静電電荷制御剤として機能することを可能にし得る。したがって、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、非シリカ注入結晶性ポリエステルまたはポリアミドと比較して、向上した流動性、固化防止特性、および静電荷制御を有し得る。
【0027】
本明細書に開示される特定の実施形態では、結晶性ポリエステルの総質量に対して、少なくとも約5質量%、例えば少なくとも約10質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、少なくとも約25質量%、または少なくとも約30質量%のシリカナノ粒子を結晶性ポリエステルに添加してマトリックスを形成することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、約5質量%~約30質量%、例えば約10質量%~約20質量%の範囲の質量パーセントのシリカナノ粒子を添加することを含む方法を提供する。
【0028】
特定の実施形態では、複合材料は、選択的レーザ焼結に好適なサイズを有する粒子に形成される。特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、約1ミクロン~約10,000ミクロン、例えば、約5ミクロン~約3,000ミクロン、約30ミクロン~約50ミクロン、約5ミクロン~約350ミクロン、または約20ミクロン~約60ミクロン範囲の有効平均粒径を有してもよい。
【0029】
本明細書に開示される結晶性ポリエステル樹脂にシリカを添加することは、SLS印刷用途のための良好な流動性、向上した固化防止特性、および静電荷制御、ならびに最終部品の改善された化学的および機械的耐性を有するシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子を提供し得る。特定の実施形態では、シリカ注入結晶性微粒子について示され得る向上した特性は、非シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子だけでなく、他の充填剤が添加されてもよい結晶性ポリエステル微粒子に対しても向上される。本開示の特定の実施形態では、約20%の10nmコロイダルシリカを添加することなどの、シリカナノ粒子を添加することは、結晶性ポリエステル樹脂の強度および硬度の両方を約1.5~約2.5倍増加させ得る。
【0030】
結晶性樹脂
特定の実施形態によれば、本明細書において、結晶性樹脂から調製されるシリカ注入結晶性微粒子を開示する。結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、およびそれらの混合物などが挙げられ得る。特定の実施形態では、結晶性樹脂は結晶性ポリアミド樹脂または結晶性ポリエステル樹脂である。
【0031】
ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン-アジパミド)、ポリ(プロピレン-アジパミド)、ポリ(ブチレン-アジパミド)、ポリ(ペンチレン-アジパミド)、ポリ(ヘキシレン-アジパミド)、ポリ(オクチレン-アジパミド)、ポリ(エチレン-スクシンアミド)、およびポリ(プロピレン-セバカミド)が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン-アジピミド)、ポリ(プロピレン-アジピミド)、ポリ(ブチレン-アジピミド)、ポリ(ペンチレン-アジピミド)、ポリ(ヘキシレン-アジピミド)、ポリ(オクチレン-アジピミド)、ポリ(エチレン-スクシンイミド)、ポリ(プロピレン-スクシンイミド)、ポリ(ブチレン-スクシンイミド)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
結晶性ポリエステル樹脂の例としては、ポリ(エチレン-アジペート)、ポリプロピレン-アジペート)、ポリ(ブチレン-アジペート)、ポリ(ペンチレン-アジペート)、ポリ(ヘキシレン-アジペート)、ポリ(オクチレン-アジペート)、ポリ(エチレン-スクシネート)、ポリ(プロピレン-スクシネート)、ポリ(ブチレン-スクシネート)、ポリ(ペンチレン-スクシネート)、ポリ(ヘキシレン-スクシネート)、ポリ(オクチレン-スクシネート)、ポリ(エチレン-セバケート)、ポリ(プロピレン-セバケート)、ポリ(ブチレン-セバケート)、ポリ(ペンチレン-セバケート)、ポリ(ヘキシレン-セバケート)、ポリ(オクチレン-セバケート)、アルカリコポリ(5-スルホイソフタロイル)-コポリ(エチレン-アジペート)、ポリ(デシレン-セバケート)、ポリ(デシレン-デカノエート)、ポリ-(エチレン-デカノエート)、ポリ-(エチレン-ドデカノエート)、ポリ(ヘキサン-ドデカネート)、ポリ(ノニレン-セバケート)、ポリ(ノニレン-セバケート)、ポリ(ノニレン-デカノエート)、ポリ(ノニレン-ドデカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-セバケート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-デカノエート)、コポリ(エチレン-フマレート)-コポリ(エチレン-ドデカノエート)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
多くの供給元から入手可能である結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、少なくとも約50℃~約100℃、約55℃~約90℃、または約60℃~約85℃など、約30℃~約120℃の種々の融解温度(Tm)を有してもよい。より低いTmの材料は、例えばポリオール含有量を増加させることにより(例えば、1,4-ブタンジオール含有量を増加させることにより)得ることができる。しかしながら、再結晶温度(Tc)は、粒子ブロッキング(付着)が含まれるほど低くあるべきではない。例えば、特定の実施形態では、Tcは、約55℃以上、例えば、約58℃以上、約65℃以上、または約75℃以上である。特定の実施形態では、本明細書に開示される結晶性ポリエステル樹脂は、市販のポリアミド粉末と比較して温度遷移(TcとTm)において少なくとも約60℃、例えば、温度遷移において少なくとも約70℃、80℃、または少なくとも約90℃低くてもよい。市販のPA-12粉末は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合に約144℃のTcおよび約186℃のTmを有するが、例えば、特定の実施形態では、本明細書に開示される結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによって測定した場合に約58℃のTcおよび約93℃のTmを有する。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合に、例えば、約2,000~約25,000、約3,000~約15,000、約6,000~約12,000など、約1,000~約50,000の数平均分子量(Mn)を有してもよい。結晶性ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特定の実施形態では、ポリスチレン標準を用いてGPCにより測定した場合に、約2,000~約50,000、約3,000~約40,000、約10,000~約30,000、または約21,000~約24,000など、約50,000以下としてもよい。結晶性ポリエステル樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、特定の実施形態では、約2~約6、例えば約3~約4の範囲にあってもよい。結晶性ポリエステル樹脂は、約2~約20mgKOH/g、例えば約5~約18mgKOH/g、または約12~約15mgKOH/gの酸価を有してもよい。酸価(または中和価)は、1グラムの結晶性ポリエステル樹脂を中和するのに必要とされるミリグラム単位の水酸化
【0035】
本開示の特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、飽和結晶性ポリエステル樹脂または不飽和結晶性ポリエステル樹脂としてもよい。本明細書に開示される特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、少なくとも1つの有機二塩基酸と少なくとも1つのポリオールとから誘導される、不飽和結晶性ポリエステル樹脂である。
【0036】
結晶性樹脂の調製のために選択されるビニル二酸を含む有機二塩基酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、ジメチルフマレート、ジメチルイタコレート、シス-1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸、およびこれらのジエステルまたは無水物が挙げられる。
【0037】
少なくとも1つの有機二塩基酸は、例えば、約30モル%~約60モル%、約40モル%~約50モル%、少なくとも約25モル%、少なくとも約50モル%、または約50モル%など、約25モル%~約75モル%の範囲の量で選択され得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの有機二塩基酸は、フマル酸であり、特定の実施形態では、フマル酸は、約40モル%~約60モル%の範囲の量で存在する。少なくとも1つの有機二塩基酸は、例えば熱開始剤の存在下で樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な量で存在し得る。
【0038】
少なくとも1つのポリオールの例としては、主鎖部に炭素数4~20の直鎖状脂肪族ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールの例としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、および1,14-エイコサンデカンジオールが挙げられる。これらの中で、本明細書に開示される特定の実施形態に従って使用され得る脂肪族ジオールの例としては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
少なくとも1つのポリオールは、例えば、約40モル%~約70モル%、約50モル%~約60モル%、少なくとも約25モル%、少なくとも約50モル%、または約50モル%など、約25モル%~約75モル%の範囲の量で選択され得る。
【0040】
特定の実施形態では、少なくとも1つのポリオールは、少なくとも2つのポリオールの混合物である。特定の実施形態では、混合物は、少なくとも約10モル%~90モル%、例えば、約20モル%~80モル%、25モル%~75モル%、または50モル%~約50モル%の割合で存在する2つのポリオールを含んでもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つのポリオールは1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物であり、特定の実施形態では、1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物は、約25モル%の1,4-ブタンジオール、および約75モル%の1,6-ヘキサンジオールの量で存在する。
【0041】
実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、およびこれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの有機二塩基酸を有する、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリオールからなるモノマー系から誘導されてもよい。特定の実施形態では、本明細書において、以下に示されるように、フマル酸および1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物から誘導される不飽和結晶性ポリエステル樹脂を開示する。
【0042】
【0043】
熱開始剤
本明細書に開示されている結晶性ポリエステル樹脂および微粒子は、架橋剤としても知られている開始剤を使用することによってさらに強化され得る。特定の実施形態によれば、開始剤は、本明細書に開示される不飽和結晶性ポリエステルの不飽和炭素ポリマー主鎖に作用して、ポリエステル同士のさらなる架橋を開始してもよい。硬化とも称されるこの追加の架橋は、結晶性ポリエステル樹脂および微粒子に強度を追加するように機能する。
【0044】
特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂または微粒子を架橋するプロセスは、粒子表面に開始剤のコーティングを塗布することによって達成されてもよい。
【0045】
好適な架橋剤の例としては、例えば、有機過酸化物およびアゾ化合物などのフリーラジカルまたは熱開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。熱開始剤は、室温ではほとんど不活性であり、溶液がある温度を超えて加熱された場合にのみ溶液中で活性化して、ポリマーを架橋してもよい。
【0046】
好適な有機過酸化物の例としては、例えば、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシド、などのジアシルペルオキシド、例えば、シクロヘキサノンペルオキシド、およびメチルエチルケトン、などのケトンペルオキシド、例えば、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、2,5-ジメチル2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-アミルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-アミルペルオキシベンゾエート、oo-t-ブチルo-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、oo-t-ブチルo-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、およびoo-t-アミルo-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、などのアルキルペルオキシエステル、例えば、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、α-α-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシド、および2,5-ジメチル2,5-ジ(t-ブチル)ペルオキシ)ヘキシン-3、などのアルキルペルオキシド、例えば、2,5-ジヒドロペルオキシ2,5-ジメチルヘキサン、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、およびt-アミルヒドロペルオキシド、などのアルキルヒドロペルオキシド、例えば、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、およびエチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、などのアルキルペルオキシケタール、ならびにこれらの組み合わせ、が挙げられる。好適なアゾ化合物の例としては、2,2,’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、アゾビス-イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレート)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、他の類似の既知の化合物、およびそれらの組み合わせ、が挙げられる。特定の実施形態では、熱開始剤は、例えば、デラウェア州ウィルミントンのデュポン社から入手可能なVazo(登録商標)67などの、商品名Vazo(登録商標)で入手可能なアゾ開始剤である。
【0047】
本明細書に開示された特定の実施形態では、熱開始剤は、熱開始剤がレーザ焼結プロセスの融解/焼結工程中に活性化されるように、レーザ焼結前またはレーザ焼結中にシリカ注入結晶性ポリエステル粒子に添加されてもよい。したがって、特定の実施形態では、熱開始剤によって開始されたシリカ注入結晶性ポリエステル粒子の架橋は、レーザ焼結プロセスの溶融/焼結工程中に起こり得る。特定の実施形態では、熱開始剤およびシリカ注入結晶性ポリエステル粒子は、印刷プロセス中に十分な時間および十分な温度で組み合わされて、架橋結晶性ポリエステルを形成してもよい。特定の実施形態では、熱開始剤および結晶性ポリエステルは、約25℃~約120℃の温度、例えば、約40℃~約110℃、約80℃~約100℃、または少なくとも約90℃の温度で、約1分~約10時間の範囲の期間、例えば、約5分~約5時間の範囲の期間で加熱されて、架橋結晶性ポリエステルを形成してもよい。本開示の様々な実施形態によれば、SLSプロセス中に、レーザエネルギーは、印刷される生成物の最表層を貫通して、熱開始剤を結晶性ポリエステル中に存在するビニル/二重結合と架橋させてもよい。印刷プロセス中に追加の層が置かれると、層間で架橋が生じ得るか、または前に印刷された層との間で相互架橋が生じ得る。特定の実施形態では、熱開始剤を使用して生産された生成物は、熱開始剤なしで製造された生成物よりも高い機械的強度を示し得る。
【0048】
開始剤は、モノマーの約0.01~約20質量%の範囲の量、例えば約0.1~約10質量%、または約1~5質量%の範囲の量で添加することができる。
【0049】
シリカナノ粒子
本明細書に開示される結晶性ポリエステル微粒子は、シリカナノ粒子などの無機材料を含む。理論に拘束されることを望まないが、結晶性ポリエステルポリマーマトリックスにシリカナノ粒子を添加すると、結晶性ポリエステルポリマーマトリックスの脆弱性を増大させることなく、引張強度、機械的強度、および耐衝撃性が増大したハイブリッド微粒子が得られ得る。さらに、結晶性ポリエステルへのシリカの添加は、最初の粒子/粉末、ならびにSLSなどの3D印刷の使用を通して製造される任意の結果として生じる部品の両方を向上させ得る。特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性微粒子を使用して製造された3D印刷部品は、向上した断熱特性、溶媒および揮発性生成物に対して増大したバリア特性、ならびに高温での熱劣化の低減を有し得る。結晶性ポリエステル樹脂をシリカナノ粒子でコーティングすることによって、粒子凝集の低減、ならびに静電荷の低減が達成され得る。シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、接着剤、保護コーティング、生体材料、複合材料、薄膜、マイクロエレクトロニクスなどとしての用途を見出し得る。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の特性を向上させるために本明細書に開示される実施形態に従って使用され得る2つの形態のシリカナノ粒子は、コロイダルシリカおよびヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、より費用対効果が高くあり得るが、十分な分散性を有しない場合がある。コロイダルシリカは、狭い粒度分布を有し、異なる直径、例えば約20nm~約1μmの範囲の直径に調整可能でもある。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂に添加されるシリカナノ粒子の量は、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の得られる特性、ならびにそれから製造される、得られる3D物品に影響を及ぼし得る。シリカナノ粒子の量を増加させることは、脆弱性を増加させることなく、引張強度および耐衝撃性を理想的な量まで増加させ得る。特定の実施形態では、添加されるシリカの量は、結晶性ポリエステル樹脂の質量を基準として、約1質量%~約80質量%、例えば、約5質量%~約50質量%、または約10質量%~約30質量%の範囲にあってもよい。特定の実施形態では、添加されるシリカの量は、結晶性ポリエステル樹脂の質量を基準にして、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約50質量%、または約55質量%であってもよい。
【0052】
特定の実施形態では、シリカは、商標名Ludox(登録商標)AMで入手可能なシリカなどのコロイダルシリカであってもよい。特定の実施形態では、シリカは、約10nm~約120nm、約50nm~約110nm、約10nm~約15nm、または約12nmの範囲のナノ粒子などの小径のシリカナノ粒子を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリカナノ粒子は、ほぼ球形で、非多孔性で、および水中に分散可能であり、特定の実施形態では、シリカナノ粒子は、シラノール(Si-OH)基で覆われた表面を含んでもよい。
【0053】
シリカ注入結晶性ポリエステルミクロスフェアの調製
本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、様々な方法によって調製され得る。結晶性ポリエステル微粒子中および/または結晶性ポリエステル微粒子上のシリカの位置は、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の調製方法に基づいて決定されてもよい。シリカは、ポリエステルに対して比較的良好な親和性を有するが、凝固における問題が生じる可能性があるので、ポリエステル中のシリカ粒子の分散性は劣る可能性があり、それは粒子の表面上に粗い突起の形成をもたらし得る。特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、結晶性樹脂中および/または結晶性樹脂上にシリカナノ粒子の実質的に均一な分散性を有する。
【0054】
本明細書に開示される一実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤を、水混和性有機溶媒に溶解することによって、結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤を含む第1の溶液を調製することによるシリカ注入結晶性微粒子の調製方法がある。本開示の様々な実施形態によれば、溶媒に可溶性であるか、または結晶性ポリエステル樹脂に対して親和性を示す任意のポリマーが、ポリマー安定剤として有効であり得る。非限定的な例示的ポリマー安定剤としては、ポリスチレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ポリラウリルメタクリレート)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(イソブチレン)、シス-1:4-ポリ(イソプレン)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、Tween(商標)80、Tween(商標)20、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン、およびポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus(登録商標)、ポリ酢酸ビニルフタレート、およびセルロースアセテートフタレートなど)、が挙げられ得る。特定の実施形態では、ポリマー安定剤は、ポリビニルアルコールであり、特定の実施形態では、結晶性ポリエステルおよびポリマー安定剤は、約90℃~約100℃の範囲の温度などの高温で溶解されてもよい。
【0055】
水混和性有機溶媒は、例えば、アルコール、酢酸、アセトン、およびジメチルアセトアミドなどのアセトアミドなどの当該技術分野で公知のものから選択されてもよい。特定の例示的な実施形態では、水混和性有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)である。
【0056】
シリカナノ粒子、およびポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーを含む第2の溶液は、水性分散液として水中で調製され得る。想定され得る他の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、PEG、およびPEG含有ブロックコポリマー(例えば、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンブチレン)、およびポリ(カプロラクトン)など);ポビドンとしても知られるポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー;ポリアクリル酸;ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のブロックコポリマーで変性されたポリ(アクリル酸)コポリマー;ポリアクリルアミド;N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド;ジビニルエーテル-無水マレイン酸;ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン);ポリリン酸エステル類、ポリホスホネート類などのポリホスホエステル類;ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]、ポリ[ジ(メトキシエトキシエトキシ)ホスファゼン]などの水溶性ポリホスファゼン;キサンタンガム、ペクチン、N-カルボキシメチルキトサン、デキストラン、カラギーナン、グアーガムなどの天然水溶性ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースエーテル、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン、およびデンプン系デリバティブ;N-ビニルカルボキサミドの水溶性ポリマー;ならびに親水性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤、が挙げられる。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0057】
次いで、第2の溶液を第1の溶液に計量供給し、混合して、第3の溶液を生成し得、これにより、第3の溶液からシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子が沈殿する。次いで、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子を濾過し乾燥してもよい。
図1は、本明細書に開示されるプロセスに従って調製される例示的なシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の概略図であり、シリカナノ粒子およびポリビニルアルコールの水性分散液を含む第2の溶液が、結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤を含む第1の溶液に計量供給される。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に従って調製されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、それら自体で周囲温度に達することによって徐冷されるか、または例えば氷で急冷されるように、冷却される。
【0058】
別の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、結晶性ポリエステル微粒子、およびポリビニルアルコールなどのポリマー安定剤を、DMAcなどの水混和性有機溶媒に溶解することによって、結晶性ポリエステル微粒子およびポリマー安定剤を含む第1の溶液を調製することによって調製されてもよい。特定の実施形態では、結晶性ポリエステル微粒子およびポリマー安定剤は、約90℃~約100℃の範囲の温度などの高温で溶解されてもよい。次に、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの水溶液を第1の溶液に添加して、第2の溶液を生成してもよい。水溶性ポリマーの水溶液が第1の溶液に添加されて、第2の溶液が生成された後、シリカナノ粒子が第2の溶液に添加されて、第3の溶液を生成してもよい。特定の実施形態では、シリカは、水性分散液として第2の溶液に添加されてもよく、特定の実施形態では、シリカは、乾燥シリカとして第2の溶液に添加されてもよい。特定の実施態様では、シリカは、約90℃~約100℃の範囲の温度などの高温で水性分散液として添加されてもよい。水溶性ポリマー水溶液に添加された後にシリカナノ粒子が添加されると、得られるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、微粒子の表面に分散されたシリカを含んでもよい。
【0059】
図2は、本明細書に開示されるプロセスに従って調製されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の概略図であり、ポリビニルアルコールの水性分散液が、結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤を含む第1の溶液に添加されて第2の溶液を生成し、次いで、シリカナノ粒子が第2の溶液に添加される。
【0060】
別の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子は、DMAcなどの水混和性有機溶媒中に結晶性ポリエステル樹脂、ポリマー安定剤、およびシリカナノ粒子を含む第1の溶液を調製することによって調製されてもよい。特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂、シリカナノ粒子、およびポリマー安定剤は、溶解中に約90℃~約100℃の範囲の温度に加熱されてもよい。次いで、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの水性分散液が第1の溶液に添加されてもよく、その結果、第1の溶液からシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の沈殿が生じる。シリカナノ粒子が結晶性ポリエステル樹脂およびポリマー安定剤と同時に添加される場合、得られるシリカ注入CPE微粒子は、微粒子の本体全体に分散したシリカを含んでもよい。
図3は、本明細書に開示されるプロセスに従って調製されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の概略図であり、ポリビニルアルコールの水性分散液が、結晶性ポリエステル樹脂、ポリマー安定剤、およびシリカナノ粒子を含む第1の溶液に添加される。
【0061】
特定の実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂と水混和性有機溶媒の比は、約0.1:1~約1:1、例えば、約0.15:1、約0.16:1、約0.17:1、または約0.2:1である。
【0062】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリカ注入結晶性ポリエステル微粒子のシリカナノ粒子は、複雑な環境および生物学的マトリックスにおける環境関連濃度でナノ材料を検出および特徴付ける能力を有する、誘導結合プラズマ質量分析法(spICP-MS)などの誘導結合プラズマ(ICP)によって検出されてもよい。走査型電子顕微鏡(SEM)もまた、微粒子内のシリカを視覚的に検出することができる。
【0063】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるありとあらゆる小範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0064】
本教示は1つ以上の実施形態に関して例示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、示された例に対して変更および/または修正を加えることができる。さらに、本教示の特定の特徴は、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されていることがあるが、そのような特徴は、任意の所与または特定の機能にとって望ましいおよび有利であり得る他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはそれらの変形は、詳細な説明および特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む/備える(comprising)」という用語と同様に包括的であると意図される。さらに、本明細書の説明および特許請求の範囲において、「about(約)」という用語は、変更が例示の実施形態に対するプロセスまたは構造の不適合を生じない限り、列挙された値がいくらか変更され得ることを示す。最後に、「例示的(exemplary)」は、それが理想であることを意味するのではなく、説明が例として使用されることを示す。
【0065】
上に開示の変形物、ならびに他の特徴および機能、またはその代替物は、多くの他の異なるシステムまたは用途に組み合わされ得ることが理解されよう。種々の現在予見し得ない、または予期し得ない代替物、改造、変形、または改良が、当業者によって今後なされ得、それらもまた以下の請求項に包含されることが意図される。
【0066】
実施例1-結晶性ポリエステルの調製
フマル酸、および25モル%の1,4-ブタンジオールと75モル%の1,6-ヘキサンジオールとの混合物を用いて不飽和結晶性ポリエステルを調製した。機械式撹拌機、蒸留装置、および底部排出バルブを備えた2リットルのBuchi反応器に、フマル酸(479.5グラム)、1,4-ブタンジオール(94.6グラム)、および1,6-ヘキサンジオール(375.5グラム)を入れた。混合物を窒素下で1時間かけて165℃に加熱した。バッチ温度が120℃に達したときに撹拌を開始した。次にバッチ温度が191℃に達するまで反応温度を毎分0.5℃上昇させた。粘度測定は、ブルックフィールド粘度計を用いて120℃(100rpm)で行い、次いで粘度が170Paに達するまで定期的にサンプリングした。反応混合物を金属容器に排出し、一晩室温に冷却させた。
【0067】
生じた沈殿物を濾過し、結晶性ポリエステルの特性を分析した。調製された結晶性ポリエステルの酸価は15.2ミリグラムKOH/gの樹脂であり、120℃での粘度は、120℃(100rpm)で170Paであった。結晶性ポリエステルは、DSCにより分析され、Tmは93.0℃であり、Tcは58.6℃であり、37.7J/gの融解熱を有していた。
【0068】
実施例2-シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の調製
本明細書に開示される実施形態に従って、4つの異なるバッチのシリカ注入結晶性微粒子を調製した。
【0069】
バッチA:バッチAを、290.18gのDMAc中で50.26gの結晶性ポリエステルと19.5gのポリビニルアルコールとを混合して第1の溶液を生成することによって調製した。次に、55.7質量%のLudox(登録商標)SiO2(結晶性ポリエステルに対して)を193g(2.2質量%)のポリビニルアルコールと水溶液中で混合した。次に、SiO2/ポリビニルアルコール水溶液を第1の溶液に混合し、SiO2/ポリビニルアルコール水溶液が、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の沈殿を引き起こす溶媒として作用するようにした。微粒子はそれら自体で周囲温度に達するように放置した。バッチAは、調製した4つのバッチのうち最も高いシリカ充填量を有していた。SEMによって決定された粒径は、約30μm~約45μmの範囲にあった。
【0070】
以下の表1は、バッチA(徐冷)についての粒子の数および分布を示す。徐冷された粒子は通常、高速冷却されたまたは急冷された粒子よりも広い粒度分布を有することが観察されている。理論に縛られることを望まないが、徐冷プロセス中に結晶が形成するのに十分な時間がある一方で、氷で急冷するようなより速い冷却方法は結晶核形成および成長のための時間を短縮すると考えられる。これは粒子表面のSEMによって証明されることができ、そこではより多くの微結晶/結晶様秩序が徐冷された粒子の表面上に見られる。
【0071】
【0072】
バッチB:バッチBを、257.90gのDMAc中で52.80gの結晶性ポリエステルと16.60gのポリビニルアルコールとを混合して第1の溶液を生成することによって調製した。次に、水溶液中で26.8質量%のLudox(登録商標)SiO2(結晶性ポリエステルに対して)を442g(3.7質量%)のポリビニルアルコールと混合した。次に、SiO2/ポリビニルアルコール水溶液を第1の溶液に混合し、SiO2/ポリビニルアルコール水溶液が、シリカ注入結晶性ポリエステル微粒子の沈殿を引き起こす溶媒として作用するようにした。微粒子を自然に周囲温度に到達させる代わりに、バッチBを氷で急冷した。バッチBは、調製した4つのバッチのうち2番目に高いシリカ充填量を有していた。SEMによって決定された粒径は、約36μm~約50μmの範囲にあった。
【0073】
以下の表2は、バッチB(急冷)についての粒子の数および分布を示す。上述したように、高速冷却されたまたは急冷された粒子は典型的には徐冷された粒子ほど広い粒度分布を有さないと考えられる。
【0074】
【0075】
バッチC:バッチCを、250.0gのDMAc中で7.8%のシリカを50.0gの結晶性ポリエステルおよび8.0gのポリビニルアルコールと混合することによって調製した。次に、水溶液中の274.8g(1.7質量%)のポリビニルアルコールの水溶液を、シリカ/結晶性ポリエステル/ポリビニルアルコール混合物中に計量供給した。ポリビニルアルコール水溶液を計量供給する前でさえも、有機相中での粒子の早期の沈殿のために、混合物は大きな粒子を生じた。ポリビニルアルコールの添加の前にコロイダルシリカからの水が微粒子の播種を開始することによって、粒子をより大きなものにした。SEMによって決定された粒径は、約580μm~約2,150μmの範囲にあり、粒子の最高濃度は約650~約950μm(800μm±150μm)の範囲にあった。シリカ注入微粒子は非常に大きく球形であった。
【0076】
バッチD:最後のバッチであるバッチDを、最初に254.5gのDMAc中で40.0gの結晶性ポリエステルを11.0gのポリビニルアルコールと混合することによって調製した。次に、水溶液中の274.8g(1.7質量%)のポリビニルアルコール水溶液を、結晶性ポリエステル/ポリビニルアルコール溶液に混合した。最後に、水性ポリビニルアルコールの全てを添加した後、90℃での10.1%のコロイド状シリカを、ゆっくりと結晶性ポリエステル/ポリビニルアルコールの溶液にピペットで入れた。SEMによって決定された粒径は非常に広く、約5μm~約350μmの範囲にあった。最高濃度の粒子は、約20~約60μmの範囲にあった。バッチAのように、これらの粒子は表面に大きな空隙を有していた。いくつかの粒子はまた、その中に埋め込まれたより小さな粒子を有していた。
【0077】
装填量がバッチCよりも高かったにもかかわらず、バッチDはシリカの存在量が最も少なかった。これは、バッチDの製造中にポリビニルアルコール水溶液の後にシリカが添加されているためである。シリカナノ粒子は結晶性ポリエステル微粒子の表面にゆるく付着している可能性があるので、洗浄工程中にシリカが除去された可能性がある。
【0078】
以下の表3は、調製された4バッチのシリカ注入微粒子の調製仕様を詳述する。
【0079】
【0080】
ppmで表したシリカの量をICPによって測定し、DSCによって測定したときの微粒子の融解熱と比較した。以下の表4に示すように、微粒子中のシリカの量が減少するにつれて、融解熱(すなわち、温度の変化なしに固体の単位質量を液体/溶融状態に変換するのに必要な熱量;ΔH)が増加した。シリカ注入CPE粒子のこの特徴は、微粒子の焼結中に微粒子がより少ないエネルギーを必要とすることを可能にする。
【0081】
【0082】
実施例3-焼結
焼結能力についての粒子の試験を、選択的レーザ焼結(SLS)に基づくSharebot SnowWhiteプリンタを使用して行った。このプリンタは、CADのデジタルファイルから製造される3次元オブジェクトへと作製される熱可塑性粉末を使用する。ポリマー粉末は、同時に焼結されて薄い層に融合されてもよく、これは、優れた鮮明度を有する小さい物体の構築を可能にする。このプリンタは、CO2レーザを使用しており、ナイロンなどの様々な粉末を焼結することができる。
【0083】
6つの異なる粉末(従来のナイロン樹脂PA-11、シリカを含まない結晶性ポリエステル、および実施例2で上述したように調製した4つのバッチのシリカ注入結晶性ポリエステル)を、最初に黒色光沢紙上にバーコーティングした。PA-11は、紙上に均一で、かつ十分にコーティングされたコーティングをもたらした。結晶性ポリエステル(粉砕、シリカなし)は紙上に均一ではないコーティングをもたらした。以下の表5は、4つの調製されたバッチA~Dについてのふるいおよびバーコーティングの結果を詳述する。
【0084】
【0085】
粉末を25%および30%の両方のレーザ出力でレーザ焼結した。結晶性ポリエステル(粉砕、シリカなし)は25%の出力で焼結せず、PA-11粉末は焼結した。PA-11粉末をさらに20%、30%、35%、および40%の出力で焼結した。20%の出力では、PA-11は焼結しなかった。25%の出力で、PA-11粉末は焼結し、かすかな輪郭が見えた。30%の出力では、PA-11粉末は焼結して見やすくなり、35%の出力では、PA-11粉末は焼結してよく見えた。40%の出力では、焼結材料の端部はカールを示した。
【0086】
4つの調製したシリカ注入微粒子のバッチA~Dの異なる条件下でのレーザ焼結の結果を以下の表6に示す。
【0087】
【0088】
当初の30mm×30mmの印刷された単層の正方形を用意した。以下の表7の値は、30mm×30mmの正方形の様々なレーザ焼結パラメータの後に得られた測定値である。
【0089】