(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】カッティングプロッタ
(51)【国際特許分類】
B26D 7/32 20060101AFI20220922BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20220922BHJP
B41J 11/66 20060101ALI20220922BHJP
B65H 29/52 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B26D7/32 B
B26D5/00 F
B41J11/66
B65H29/52
(21)【出願番号】P 2019033935
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000105062
【氏名又は名称】グラフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 一也
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-134698(JP,U)
【文献】特開2015-20259(JP,A)
【文献】特開2008-6523(JP,A)
【文献】特開2003-95503(JP,A)
【文献】特開平5-138594(JP,A)
【文献】特開2014-141350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/32
B26D 5/00
B41J 11/66
B65H 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートロールに巻かれたシート状の媒体が水平方向の一方側から他方側に向かう第1の方向に引き出されて載せられる作業ステージと、
前記作業ステージの上の媒体を前記一方側または前記他方側に搬送する搬送装置と、
前記第1の方向と直交する水平方向である第2の方向に移動するカッティングヘッドを有し、前記搬送装置と協働して前記作業ステージの上で媒体にカッティング加工を施すカッティング装置と、
前記作業ステージより低い位置に配置され、前記作業ステージから前記第1の方向へ搬出された媒体の搬送方向下流側の端部を巻取る巻取装置と、
前記作業ステージと前記巻取装置との間に配置され、媒体が前記巻取装置より前記第1の方向に離間した位置を通るように媒体の搬送経路を規定するガイド機構とを備え、
前記ガイド機構は、
前記第2の方向に延びる複数の棒状体を有しかつ導電性を有するガイド部材と、
前記ガイド部材を支持するフレーム部材とを備え、
前記複数の棒状体は、前記第1の方向に互いに離間するように配置されて前記搬送経路の一部を構成し、
前記ガイド部材は、前記フレーム部材を介して接地されていることを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項2】
請求項1記載のカッティングプロッタにおいて、
前記ガイド部材は、前記複数の棒状体の前記第2の方向の両端部どうしを互いに接続するホルダーを含み、
前記ホルダーは、前記第1の方向において前記作業ステージから突出する使用位置と、前記作業ステージと前記巻取装置との間に収容される退避位置との間で移動するように、前記フレーム部材に移動自在に支持されていることを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項3】
請求項2記載のカッティングプロッタにおいて、
前記ホルダーは、導電性を有するプラスチック材料によって形成されていることを特徴とするカッティングプロッタ。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のカッティングプロッタにおいて、
前記フレーム部材は、前記ホルダーが前記使用位置と前記退避位置との間で滑って移動するガイドを有し、
前記ガイドは、前記第2の方向から見て山形状に形成されていることを特徴とするカッティングプロッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティング加工済みのシート状の媒体を巻取る巻取装置を備えたカッティングプロッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカッティングプロッタとしては、例えば特許文献1に記載されているように、ロールに巻かれたシート状の媒体を使用するものがある。特許文献1に開示されたカッティングプロッタは、ロールから引き出された長尺状の媒体が載せられる作業ステージと、この媒体を作業ステージの上で水平方向の一方または他方に移動させる搬送装置と、作業ステージより低い位置に配置された巻取装置とを備えている。作業ステージは、断面山形状に形成されている。巻取装置は、カッティング加工済みの媒体をロール状に巻取る構造のもので、作業ステージの下端部の真下に配置されている。
【0003】
このカッティングプロッタにおいて、カッティング加工は、搬送装置によって媒体を作業ステージの上で水平方向の一方と他方とに移動させて行われる。このため、カッティング加工時は、作業ステージから巻取装置に向けて垂れ下がった媒体が巻取装置のロール状の媒体と接しながら上下方向に移動するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたカッティングプロッタでは、カッティング加工時に作業ステージから垂れ下がった媒体が巻取装置のロール状の媒体との接触により円滑に移動できなくなったり、ロール状の媒体の表面が傷付いたり汚れてしまうという問題があった。また、媒体どうしが接触することに起因して静電気が発生し、作業ステージから垂れ下がった媒体がステージの下端部や巻取装置のロール状の媒体に吸着されて媒体の搬送不良が起こることもあった。
【0006】
このような不具合を解消するにあたっては、使い勝手が悪くなることを避けるために、下記の2つの条件を満たすようにして行わなければならない。第1の条件は、媒体が作業ステージから巻取装置に正しく送られるように、媒体の搬送経路が確保されることである。第2の条件は、巻取装置の作動状況を確認し易いように、巻取装置の視認性が確保されることである。
【0007】
本発明の目的は、媒体の搬送経路および巻取装置の視認性が確保される構成を採りながら、作業ステージから垂れ下がった媒体が巻取装置のロール状の媒体に接触したり、静電気が発生することがないカッティングプロッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この目的を達成するために、シートロールに巻かれたシート状の媒体が水平方向の一方側から他方側に向かう第1の方向に引き出されて載せられる作業ステージと、前記作業ステージの上の媒体を前記一方側または前記他方側に搬送する搬送装置と、前記第1の方向と直交する水平方向である第2の方向に移動するカッティングヘッドを有し、前記搬送装置と協働して前記作業ステージの上で媒体にカッティング加工を施すカッティング装置と、前記作業ステージより低い位置に配置され、前記作業ステージから前記第1の方向へ搬出された媒体の搬送方向下流側の端部を巻取る巻取装置と、前記作業ステージと前記巻取装置との間に配置され、媒体が前記巻取装置より前記第1の方向に離間した位置を通るように媒体の搬送経路を規定するガイド機構とを備え、前記ガイド機構は、前記第2の方向に延びる複数の棒状体を有しかつ導電性を有するガイド部材と、前記ガイド部材を支持するフレーム部材とを備え、前記複数の棒状体は、前記第1の方向に互いに離間するように配置されて前記搬送経路の一部を構成し、前記ガイド部材は、前記フレーム部材を介して接地されているものである。
【0009】
本発明は、前記カッティングプロッタにおいて、前記ガイド部材は、前記複数の棒状体の前記第2の方向の両端部どうしを互いに接続するホルダーを含み、前記ホルダーは、前記第1の方向において前記作業ステージから突出する使用位置と、前記作業ステージと前記巻取装置との間に収容される退避位置との間で移動するように、前記フレーム部材に移動自在に支持されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記カッティングプロッタにおいて、前記ホルダーは、導電性を有するプラスチック材料によって形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記カッティングプロッタにおいて、前記フレーム部材は、前記ホルダーが前記使用位置と前記退避位置との間で滑って移動するガイドを有し、前記ガイドは、前記第2の方向から見て山形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、作業ステージから垂れ下がる媒体が巻取装置から第1の方向に離れた位置を通って上下方向に移動するから、この媒体が巻取装置のロール状の媒体に接触することがない。このため、本発明に係るカッティングプロッタにおいては、ロール状の媒体が傷付くことはない。また、ガイド部材は接地されているから、このガイド部材に媒体が接触するにもかかわらず、静電気が発生することはない。
【0013】
ガイド部材の複数の棒状体が第1の方向に並んでいるから、これらの棒状体が媒体の搬送経路を構成するようになる。このため、作業ステージから搬出された媒体の搬送経路が確保される。また、複数の棒状体どうしの間には下方を視認可能な隙間が形成され、この隙間を通して巻取装置を視認することが可能になるから、巻取装置の視認性が確保される。
したがって、媒体の搬送経路および巻取装置の視認性が確保される構成を採りながら、作業ステージから垂れ下がった媒体が巻取装置のロール状の媒体に接触したり、静電気が発生することがないカッティングプロッタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るカッティングプロッタの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明に係るカッティングプロッタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るカッティングプロッタの一実施の形態を
図1~
図7を参照して詳細に説明する。
(カッティングプロッタの説明)
図1に示すカッティングプロッタ1は、
図1において右側に二点鎖線の円として描かれているシートロール2からシート状の媒体3を
図1において左側に引き出して使用するものである。媒体3は、
図1の左右方向の中央部に位置する搬送装置4によって引かれて作業ステージ5の上に引き出され、搬送装置4の近傍に位置するカッティング装置6によってカッティング加工が施される。
【0016】
カッティング加工済みの媒体3は、
図1において作業ステージ5より左側であって低い位置に設けられている巻取装置7に巻取られる。搬送装置4、カッティング装置6および巻取装置7の構成は後述する。
以下において、カッティングプロッタ1の部品を説明するうえで方向を示すにあたっては、
図1の左右方向において作業ステージ5より右側(シートロール2側)をカッティングプロッタ1の後側とし、
図1の左右方向において作業ステージ5より左側を「前側」として行う。この前後方向において、シートロール2に巻かれた媒体3が引き出される方向、すなわち水平方向の一方側となる
図1の右側(カッティングプロッタ1の後側)から、水平方向の他方側となる
図1の左側(カッティングプロッタ1の前側)に向かう方向を「第1の方向」という。
【0017】
また、以下の説明で左右方向と上下方向とを示すにあたっては、設置状態にあるカッティングプロッタ1を前方から見たときの方向で行う。すなわち、
図1の紙面の手前側がカッティングプロッタ1の右側になり、
図1の上側がカッティングプロッタ1の上側になる。この実施の形態においては、カッティングプロッタ1の左右方向が本発明でいう「第1の方向と直交する水平方向である第2の方向」になる。
【0018】
(媒体の説明)
この実施の形態による媒体3は、詳細には図示してはいないが、粘着剤付きのフィルムシートに剥離紙を貼り合わせたものである。この媒体3に施すカッティング加工は、フィルムシートを粘着剤とともに所定の形状に切断する切断加工である。なお、カッティング加工の内容は、媒体3の種類に応じて適宜変更される。
【0019】
シートロール2は、
図1の紙面と直交する方向に延びる芯部材11に媒体3を巻き付けて形成されている。芯部材11の両端部には一対の円板状のフランジ12が設けられている。これらのフランジ12は、第1および第2の支持ローラ13,14の上に載せられており、これらの第1および第2の支持ローラ13,14を介してカッティングプロッタ1のフレーム15に回転自在に支持されている。
第1および第2の支持ローラ13,14は、それぞれ円柱状に形成されており、カッティングプロッタ1の左右方向に延びる状態で両端部においてフレーム15に支持されている。
【0020】
(フレームの説明)
フレーム15は、
図1中に簡略化して外形のみが描かれている右側本体16が右側の端部に位置するように形成されている。このフレーム15は、右側本体16と同等の構造となるように形成されてカッティングプロッタ1の左側の端部に位置する左側本体17(
図2参照)と、左右方向に延びてこれらの右側本体16と左側本体17とを互いに接続する上部クロスメンバ18(
図1参照)および下部クロスメンバ19などを備えている。このフレーム15を形成する材料は金属である。また、フレーム15は、図示してはいないが、アース線が接続されており、このアース線を介して接地されている。
【0021】
右側本体16と左側本体17は、それぞれ第1~第6の機能部を組み合わせて一つの組立体となるように形成されている。
第1の機能部は、最も下に位置して前後方向に延びる設置板21によって構成されている。この設置板21には、図示してはいないがキャスターが取り付けられる。また、設置板21の前端部上には前側支持パイプ22が立てて設けられている。設置板21の後端部上には後側支持パイプ23が立てて設けられている。前側支持パイプ22には前側バスケット24の前端部が装着され、後側支持パイプ23には後側バスケット25の後端部が装着されている。
これらの前側バスケット24と後側バスケット25は、カッティング加工時に媒体3が床(図示せず)に触れることを防ぐためのもので、それぞれ帯状のシート材料によって形成されて側面視においてU字状に弛んだ状態で設置されている。
【0022】
第2の機能部は、設置板21の前後方向の中央部から上方に延びる支柱26によって構成されている。支柱26の上下方向の中間部には下部クロスメンバ19が取付けられている。
第3の機能部は、支柱26の上端部から後方に向けて延びる後側アーム27によって構成されている。上述した第1および第2の支持ローラ13,14は、この後側アーム27に回転自在に支持されている。
【0023】
第4の機能部は、支柱26の上端部から上方に延びる支持板28によって構成されている。支持板28は、上下方向と前後方向とに延びる状態で支柱26に支持されている。
支持板28の下部には上部クロスメンバ18が取付けられている。後述する搬送装置4とカッティング装置6は、これらの支持板28と上部クロスメンバ18とに支持されている。また、支持板28の下部には、媒体3がシートロール2から第1の方向に引き出されて載せられる作業ステージ5が設けられている。この作業ステージ5は、支持板28の前端部から後端部まで延びる断面山形状に形成されている。また、作業ステージ5は、
図2に示すように、このカッティングプロッタ1の左側の端部から右側の端部まで左右方向に延びている。
【0024】
支持板28の上端部には、
図1に示すように、上部カバー29が取付けられている。この上部カバー29は、
図2に示すように、このカッティングプロッタ1の左側の端部から右側の端部まで左右方向に延びている。上部カバー29の右側の端部には、使用者(図示せず)がカッティングプロッタ1を使用する際に操作する操作パネル30が設けられている。
【0025】
第5の機能部は、支柱26の上下方向の中間部から前方に向けて延びる第1のアーム31(
図1参照)によって構成されている。この第1のアーム31には、後述する第3および第4の支持ローラ32,33が回転自在に支持されている。
第6の機能部は、支柱26の上端部から前方に向けて延びる第2のアーム34によって構成されている。この第2のアーム34には、
図3および
図6に示すように上方に向けて開放される凹部35が形成されている。凹部35は、
図6および
図7に示すように前下がりに傾斜する前側斜面36と、
図3および
図4に示すように後下がりに傾斜する後側斜面37とを有している。
【0026】
(搬送装置の説明)
搬送装置4は、
図1に示すように、媒体3より下に位置する搬送ローラ41と、媒体3より上に位置するピンチローラ42と、搬送ローラ41を駆動するモータ(図示せず)とを有している。
図1は、搬送装置およびその周辺の部品を簡略化して描いてある。搬送ローラ41とピンチローラ42は、それぞれ左右方向に延びる軸線を中心にして回転する。搬送ローラ41は、
図2に示すように、その一部が作業ステージ5から上方に突出するように構成され、左右方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の位置にそれぞれ配置されている。ピンチローラ42は、図示していない押圧機構に接続されており、媒体3を上方から搬送ローラ41に押し付け、搬送ローラ41と協働して媒体3を挟む。このように搬送ローラ41に媒体3が押し付けられた状態で搬送ローラ41が左右方向の軸線回りに回転することによって、媒体3が第1の方向または第1の方向とは反対方向に送られる。
【0027】
(カッティング装置の説明)
カッティング装置6は、
図1に示すように、作業ステージ5の上方に配置されたカッティングヘッド43を有している。カッティングヘッド43は、昇降可能なカッティングペン44を備え、ガイドレール45に左右方向へ移動自在に支持されている。ガイドレール45は、左右一対の支持板28に架け渡されている。この実施の形態によるカッティングヘッド43は、左右方向に延びる無端ベルト46(
図2参照)に取付けられており、この無端ベルト46が図示していないモータによって駆動されて回転することによって、ガイドレール45に沿って左右方向に移動する。
【0028】
カッティングペン44は、下端に刃を有し、カッティング加工を行わないときには刃が媒体3より上に位置するように上昇し、カッティング加工時には刃が媒体3に刺さるように下降する。
このカッティング装置6によるカッティング加工は、刃が媒体3に刺さった状態でカッティングヘッド43が左右方向に移動するとともに、搬送装置4によって媒体3が前後方向(第1の方向と、第1の方向とは反対の方向)に移動することによって行われる。
【0029】
カッティング加工が終了したカッティング加工済みの媒体3は、作業ステージ5から第1の方向に搬出され、作業ステージ5の前下方に位置するガイド機構51によって規定された搬送経路に沿って下方に送られる。ガイド機構51の構成は後述する。このように下方に送られた媒体3は、前側バスケット24の上で後側に進みながら反転して上方に向かい、後述する巻取装置7によって巻取られる。
【0030】
(巻取装置の説明)
巻取装置7は、媒体3が巻き付けられるボビン52と、このボビン52を巻取り方向に回転させるモータ53などを備えている。この巻取装置7は、カッティングプロッタ1の前後方向において作業ステージ5の前端部と同じ位置であって、作業ステージ5より低い位置に配置されている。
ボビン52は、パイプからなる芯部材54と、この芯部材54の両端に設けられた一対の円板状のフランジ55とから構成されている。これらのフランジ55は、第3および第4の支持ローラ32,33の上に載せられており、これらの第3および第4の支持ローラ32,33を介してフレーム15の第1のアーム31に回転自在に支持されている。
【0031】
第3および第4の支持ローラ32,33は、それぞれ円柱状に形成されており、
図2に示すように、右側本体16の第1のアーム31と、左側本体17の第1のアーム31とに架け渡されている。第3および第4の支持ローラ32,33は、それぞれ一対の第1のアーム31に回転自在に支持されている。
第3および第4の支持ローラ32,33のうち、カッティングプロッタ1の後側に位置する第3の支持ローラ32の右側の端部内には、ボビン52を駆動するためのモータ53が組み付けられている。このモータ53は、第3の支持ローラ32を第1のアーム31に対して回転させるように構成されている。第3の支持ローラ32が
図1において時計方向に回ることにより、ボビン52が
図1において反時計方向に回る。
【0032】
ボビン52の芯部材54には媒体3の搬送方向下流側の端部が接続される。媒体3は、作業ステージ5から後述するガイド機構51と巻取装置7の前方とを通って下方に導かれ、前側バスケット24の上で反転し、芯部材54に巻取装置7の後側下方から巻取られる。芯部材54に媒体3が取付けられた状態でボビン52が
図1において反時計方向に回転することによって、媒体3が芯部材54に巻取られ、カッティング加工済みの媒体3からなるロール56が生成される。
【0033】
巻取装置7による媒体3の巻取動作は、前側バスケット24の上に所定量の媒体3が溜められた状態で開始され、媒体3が
図1に示すように巻取装置7の下方でU字状に弛んで垂れ下がる状態となったときに終了する。この巻取動作を終了する時期は、巻取装置7の下方の媒体3を後方から検出するセンサ57の検出結果に基づいて決められる。センサ57は、超音波を用いて媒体3の有無を検出するもので、下部クロスメンバ19から下方に延びるブラケット58の下端に設けられている。
【0034】
(ガイド機構の説明)
作業ステージ5の前下方に位置するガイド機構51は、上下方向において作業ステージ5と巻取装置7との間に配置されている。このガイド機構51は、作業ステージ5から第1の方向に排出された媒体3が巻取装置7より第1の方向に離間した位置を通るように、媒体3の搬送経路を規定するものである。
この実施の形態によるガイド機構51は、
図3~
図5に示すように、左右方向(第2の方向)に延びる複数の棒状体61,62を有するガイド部材63と、このガイド部材63を支持する第2のアーム34とによって構成されている。ガイド部材63は、
図2に示すように、カッティングプロッタ1の左側の端部から右側の端部まで延びるように形成されている。この実施の形態においては、第2のアーム34が本発明でいう「フレーム部材」に相当する。
【0035】
この実施の形態による複数の棒状体61,62は、2本の金属製のパイプによって形成されている。これらの棒状体61,62の両端部は、
図5に示すように、左側ホルダー64と右側ホルダー65とによって互いに連結されている。これらの左側ホルダー64と右側ホルダー65は、2本の棒状体61,62をこれらの棒状体61,62の長手方向とは直交する方向に互いに離間するように支持している。また、左側ホルダー64と右側ホルダー65は、導電性を有するプラスチック材料によって形成されており、棒状体61,62が嵌合するボス部66と、ボス部66から下方に突出する板状部67とを有している。
【0036】
この実施の形態においては、これらの左側ホルダー64と右側ホルダー65とが請求項2記載の発明でいう「ホルダー」に相当する。複数の棒状体61,62が金属によって形成され、左側ホルダー64と右側ホルダー65とが導電性を有するプラスチック材料によって形成されているから、ガイド部材63は導電性を有することになる。このガイド部材63は、第2のアーム34に載せられて第2のアーム34と電気的に接続されることにより、フレーム15を介して接地される。
【0037】
ガイド部材63は、2本の棒状体61,62が第1の方向(カッティングプロッタ1の前後方向)に並ぶような姿勢で第2のアーム34に装着される。このようにガイド部材63が第2のアーム34に装着されることにより、2本の棒状体61,62が媒体3の搬送経路の一部を構成するようになり、媒体3の搬送経路を規定するようになる。
図1に示すガイド部材63は、前側に位置する棒状体61が前後方向において巻取装置7より前側に突出するように位置付けられている。このガイド部材63によって搬送経路が規定された媒体3は、巻取装置7から第1の方向(前方)に離間した位置を通って下方に送られる。
【0038】
左側ホルダー64と右側ホルダー65は、
図3および
図4に示すように第2のアーム34の凹部35に上方から挿入され、凹部35の前側斜面36または後側斜面37に載る状態で凹部35内に保持されている。左側ホルダー64は、左側本体17に設けられた第2のアーム34の凹部35内に保持されている。右側ホルダー65は、右側本体16に設けられた第2のアーム34の凹部35内に保持されている。
この実施の形態による凹部35は、第2のアーム34の一部を構成するガイド板34aに形成されている。ガイド板34aは、金属材料によって形成され、上下方向と前後方向とに延びている。この実施の形態においては、凹部35を有するガイド板34aが請求項4記載の発明でいう「ガイド」に相当する。左側ホルダー64と右側ホルダー65が凹部35に収容される際には、ボス部66がガイド板34aに載せられる。また、板状部67は、ガイド板34aよりカッティングプロッタ1の左右方向の中央側に位置するように設けられている。このため、ガイド部材63の左右方向への移動は、板状部67がガイド板34aに当たることによって規制される。
【0039】
左側ホルダー64と右側ホルダー65は、凹部35の前側斜面36と後側斜面37との間を滑って移動することが可能である。左側ホルダー64および右側ホルダー65は、前側斜面36に載せられている状態においては、
図4に示すように、第1の方向において作業ステージ5から突出した使用位置に位置付けられる。
このように左側ホルダー64と右側ホルダー65とが使用位置に位置している状態においては、
図3に示すように、2本の棒状体61,62どうしの間に下方を視認可能な隙間Sが形成される。
また、左側ホルダー64と右側ホルダー65とが使用位置に位置している状態においては、媒体3に作用する張力によって前側の棒状体61,62が押される方向が
図4中に矢印Fで示すように、前側斜面36と交差する方向になる。このため、左側ホルダー64と右側ホルダー65とが使用位置に保持されるようになる。
【0040】
一方、左側ホルダー64および右側ホルダー65は、後側斜面37に載せられている状態においては、
図7に示すように、作業ステージ5と巻取装置7との間に収容される退避位置に位置付けられる。すなわち、この実施の形態によるガイド板34aの凹部35となる部分(ガイド)は、左右方向(第2の方向)から見て山形状に形成されている。
【0041】
(カッティングプロッタの動作と実施の形態による効果の説明)
このように構成されたカッティングプロッタ1においては、ガイド部材63の左側ホルダー64および右側ホルダー65が使用位置に位置する状態でカッティング加工が行われる。カッティング加工時には、媒体3が搬送装置4によって駆動されて作業ステージ5上で前後方向に移動する。このとき、作業ステージ5より前方(第1の方向)に位置する媒体3は、作業ステージ5から垂れ下がるようになる。このように作業ステージ5から垂れ下がる媒体3は、ガイド部材63の前側の棒状体61によって搬送経路が規定され、巻取装置7から前方(第1の方向)に離れた位置を通って上下方向に移動する。
このため、作業ステージ5より前方で上下方向に延びる媒体3が巻取装置7のカッティング加工済みのロール状の媒体3からなるロール56に接触することはないから、この媒体3が傷付くことはない。また、ガイド部材63は接地されているから、このガイド部材63に媒体3が接触するにもかかわらず、静電気が発生することはない。
【0042】
さらに、ガイド部材63の複数の棒状体61,62が前後方向に並んでいるから、作業ステージ5から搬出された媒体3の搬送経路が確保される。カッティング加工時に媒体3が大きく後方に移動した後に大きく前方(第1の方向)に移動するような場合は、ガイド部材63の前側の棒状体61が抵抗となってそれより後側で媒体3が下方に向けて撓むことがある。このとき、後側の棒状体62が設けられていないと、前側の棒状体61の後方を通って媒体3が垂れ下がるようになるおそれがある。しかし、この実施の形態に示すガイド部材63によれば、前側の棒状体61より後側で媒体3が下に向けて撓むようなことがあったとしても、後側の棒状体62が媒体3を支えるようになる。このため、上述したように媒体3の搬送経路が確保されるようになる。
【0043】
このカッティングプロッタ1においては、カッティング加工時に媒体3がガイド部材63や巻取装置7を上方と前方とから覆っており、巻取装置7の作動状況を確認し難くなる。しかし、この実施の形態においては、ガイド部材63の複数の棒状体61,62どうしの間に形成されている隙間Sを通して下方の巻取装置7を見ることができるから、巻取装置7の視認性が確保される。
したがって、媒体3の搬送経路が確保されるとともに巻取装置7の視認性が確保される構成を採りながら、作業ステージ5から垂れ下がった媒体3が巻取装置7のロール56に接触したり、静電気が発生することがないカッティングプロッタを提供することができる。
【0044】
この実施の形態によるガイド部材63は、複数の棒状体61,62の左右方向(第2の方向)の両端部どうしを互いに接続する左側ホルダー64と右側ホルダー65を有している。左側ホルダー64と右側ホルダー65は、第1の方向において作業ステージ5から突出する使用位置と、作業ステージ5と巻取装置7との間に収容される退避位置との間で移動するように、第2のアーム34に移動自在に支持されている。
このため、左側ホルダー64と右側ホルダー65を退避位置に移動させることによりガイド部材63が作業ステージ5の下方に収容され、巻取装置7の前上方が広く開放されるようになる。したがって、巻取装置7のボビン52に媒体3の搬送方向下流側の端部を接続するときの作業性や、カッティング加工済みの媒体3からなるロール56を巻取装置7から取り外す際の作業性が高くなる。
【0045】
左側ホルダー64と右側ホルダー65は、導電性を有するプラスチック材料によって形成されている。このため、左側ホルダー64と右側ホルダー65が使用位置と退避位置との間で移動する際の摩擦抵抗を小さくすることができ、ガイド部材63を容易に移動させることが可能になる。この結果、使い勝手がよいカッティングプロッタを提供することができる。
【0046】
この実施の形態によるフレーム15の第2のアーム34は、左側ホルダー64および右側ホルダー65が使用位置と退避位置との間で滑って移動するガイド板34aを有している。ガイド板34aの凹部35(ガイド)は、左右方向(第2の方向)から見て山形状に形成されている。
このため、ガイド部材63が媒体3の張力で押されることにより使用位置に保持されるようになるから、媒体3の搬送経路をガイド部材63で規定するにあたって信頼性が高くなる。
【0047】
上述した実施の形態に示したガイド部材63は、2本の棒状体61,62を有している。しかし、棒状体の数は、2本に限定されることはなく、2本以上とすることができる。また、棒状体61,62を左側ホルダー64と右側ホルダー65にそれぞれ回転自在に取付けることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…カッティングプロッタ、2…シートロール、3…媒体、4…搬送装置、5…作業ステージ、6…カッティング装置、7…巻取装置、34…第2のアーム(フレーム部材)、34a…ガイド板(ガイド)、43…カッティングヘッド、51…ガイド機構、61,62…棒状体、63…ガイド部材、64…左側ホルダー、65…右側ホルダー。