(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構
(51)【国際特許分類】
H01H 3/18 20060101AFI20220922BHJP
B60Q 1/42 20060101ALI20220922BHJP
H01H 25/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01H3/18 A
B60Q1/42 Z
H01H25/04 N
(21)【出願番号】P 2019041213
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 史典
(72)【発明者】
【氏名】金田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】小林 道崇
(72)【発明者】
【氏名】広畑 雄大
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌彦
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-167345(JP,A)
【文献】特開平10-223098(JP,A)
【文献】特開2017-103177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 25/00 - 25/06
H01H 89/00
B60Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチケースと、
前記スイッチケースに軸支されて操作レバーの操作により揺動するスイッチ作動体と、 前記スイッチ作動体を中立位置、左折位置および右折位置の何れかに節度をもって停止させるクリックストップ機構と、
前記スイッチケースに形成したガイド溝にガイドピンを案内されて前進・後退するキャンセル部材と、を備え、
前記キャンセル部材は前記スイッチ作動体が左折位置あるいは右折位置にあるときにステアリングシャフトに接近する位置に前進し、前記スイッチ作動体が中立位置にあるときに前記ステアリングシャフトから離れる位置に後退し、
前記クリックストップ機構は、弾性材で構成されて前記スイッチケースに支持される節度感発生体と、
前記スイッチ作動体に支持されて前記節度感発生体の節度面に弾発的に押し付けられるクリックピンと、を有し、
前記節度感発生体と、前記ガイド溝の前記ステアリングシャフト側と前記ガイドピンとの間に介在する弾性ストッパ部とが一体であることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構。
【請求項2】
前記節度感発生体と、前記スイッチケースの内面と前記キャンセル部材との間に介在する弾性壁部とが一体であることを特徴とする、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構。
【請求項3】
前記節度感発生体に形成され、かつ前記ガイドピンが挿通する溝において、前記キャンセル部材が前進・後退する方向と直交する向きの長さは、前記ガイド溝において、前記キャンセル部材が前進・後退する方向と直交する向きの長さ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構において、キャンセル部材の移動時に発生する騒音を低減するものが、下記特許文献1あるいは下記特許文献2により公知である。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、カバー3(スイッチケース)の内面に板状の緩衝材30を取り付け、ステアリングシャフトに対して前進・後退するカム体21(キャンセル部材)を緩衝材30に摺動自在に当接させることで、カム体21がカバー3等と直接衝突して発生する騒音を低減するようになっている。
【0004】
また特許文献2に記載されたものは、キャンセルレバー4(キャンセル部材)に板バネ部51d,52dを一体に形成し、この板バネ部51d,52dを下ケース33(スイッチケース)に押し付けることで、キャンセルレバー4が下ケース33と直接衝突して発生する騒音を低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-167345号公報
【文献】特開2017-124755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、キャンセル部材に設けたガイドピンをスイッチケースに設けたガイド溝に係合させ、キャンセル部材をガイド溝に沿って前進・後退させるように構成した場合、操作レバーによりスイッチ作動体を中立位置から左折位置あるいは右折位置に操作し、キャンセル部材をステアリングシャフトに向けて前進させるとき、騒音が発生する可能性がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたように、キャンセル部材およびスイッチケース間に弾性材や板バネ部を配置するだけでは、発生する騒音を充分に低減できない問題がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構において、発生する騒音をより低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、スイッチケースと、前記スイッチケースに軸支されて操作レバーの操作により揺動するスイッチ作動体と、前記スイッチ作動体を中立位置、左折位置および右折位置の何れかに節度をもって停止させるクリックストップ機構と、前記スイッチケースに形成したガイド溝にガイドピンを案内されて前進・後退するキャンセル部材と、を備え、前記キャンセル部材は前記スイッチ作動体が左折位置あるいは右折位置にあるときにステアリングシャフトに接近する位置に前進し、前記スイッチ作動体が中立位置にあるときに前記ステアリングシャフトから離れる位置に後退し、前記クリックストップ機構は、弾性材で構成されて前記スイッチケースに支持される節度感発生体と、前記スイッチ作動体に支持されて前記節度感発生体の節度面に弾発的に押し付けられるクリックピンと、を有し、前記節度感発生体と、前記ガイド溝の前記ステアリングシャフト側と前記ガイドピンとの間に介在する弾性ストッパ部とが一体であることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構が提案される。
【0010】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記節度感発生体と、前記スイッチケースの内面と前記キャンセル部材との間に介在する弾性壁部とが一体であることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構が提案される。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記節度感発生体に形成され、かつ前記ガイドピンが挿通する溝において、前記キャンセル部材が前進・後退する方向と直交する向きの長さは、前記ガイド溝において、前記キャンセル部材が前進・後退する方向と直交する向きの長さ以上であることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置のオートキャンセル機構が提案される。
【0012】
なお、実施の形態の第1ガイドピン32aは本発明のガイドピンに対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、操作レバーを操作してスイッチ作動体を中立位置から左折位置あるいは右折位置に揺動させると、クリックストップ機構によりスイッチ作動体は左折位置あるいは右折位置に節度をもって停止する。これと同時にキャンセル部材はスイッチケースに形成したガイド溝にガイドピンを案内されてステアリングシャフトに接近する位置に前進し、ステアリングシャフトが戻し方向に操作されると、キャンセル部材はガイド溝にガイドピンを案内されてステアリングシャフトから離反する方向に後退する。
【0014】
クリックストップ機構は、弾性材で構成されてスイッチケースに支持される節度感発生体と、スイッチ作動体に支持されて節度感発生体に弾発的に押し付けられるクリックピンとを備え、節度感発生体には、ガイド溝の前端とガイドピンとの間に介在する弾性ストッパ部が一体に形成されるので、キャンセル部材がガイド溝にガイドピンを案内されてステアリングシャフトに接近する位置に前進したとき、ガイドピンはガイド溝の前端に衝突することなく節度感発生体の弾性ストッパ部に衝突し、衝突により発生する騒音が低減される。しかも既存の節度感発生体を利用して弾性ストッパ部を一体に形成したので、部品点数の増加、組立工数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】自動車のステアリングホイールを運転者側から見た図である。
【
図2】
図1のターンシグナルスイッチ装置の拡大図である。
【
図6】
図4に対応する作用説明図(左折位置)である。
【
図7】ターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書におけるターンシグナルスイッチ装置14の前方とはターンシグナルスイッチ装置14側からステアリングシャフト12側に向かう方向と定義され、後方とはその逆方向と定義される。
【0017】
図1に示すように、ステアリングホイール11に接続されたステアリングシャフト12を覆うステアリングコラム13に、左右のターンシグナルランプを点滅させるためのターンシグナルスイッチ装置14が設けられる。ターンシグナルスイッチ装置14は、ステアリングコラム13の内部に配置されるスイッチケース15と、スイッチケース15からステアリングコラム13の外部に突出する操作レバー16とを備える。
【0018】
操作レバー16は、中立位置と、中立位置から反時計方向に回転した左折位置と、中立位置から時計方向に回転した右折位置とにおいて選択的に停止可能であり、操作レバー16が中立位置にあるときに左右のターンシグナルランプが消灯し、操作レバー16が左折位置にあるときに左側のターンシグナルランプが点滅し、操作レバー16が右折位置にあるときに右側のターンシグナルランプが点滅する。操作レバー16が左折位置にあるときにステアリングホイールを右折方向に回転させると、操作レバー16はオートキャンセル機構により自動的に中立位置に復帰し、また操作レバー16が右折位置にあるときにステアリングホイールを左折方向に回転させると、操作レバー16はオートキャンセル機構により自動的に中立位置に復帰する。
【0019】
図2~
図7に示すように、スイッチケース15は、トップカバー21と、センターケース22と、ロアカバー23とを結合して構成されており、トップカバー21およびセンターケース22の内部に収納されるスイッチ作動体24は、同軸上に配置された一対の軸部24aを、トップカバー21の軸孔21aおよびセンターケース22の軸孔22aにそれぞれ支持することで、スイッチケース15に対して上方(
図1の時計方向)および下方(
図1の反時計方向)に揺動可能である。
【0020】
スイッチ作動体24の内部に挿入される操作レバー16には同軸上に配置された一対の軸部16a(
図3参照)が突設されており、これらの軸部16aを支点として操作レバー16はスイッチ作動体24に対して揺動可能である。操作レバー16の先端に形成されたガイド孔16bにスプリング25で突出方向に付勢されたクリックピン26が摺動自在に収納されており、クリックピン26の先端がスイッチ作動体24の内面に形成された2個のクリック溝24b,24cの何れかに選択的に当接する。
【0021】
操作レバー16に収納されるクリックピン26の先端がクリック溝24cと当接した位置にあるとき、ヘッドライトはロービーム状態にある。運転者により操作レバー16が軸部16aまわりに車体前方側に押され、クリックピン26の先端がクリック溝24bに当接した位置にあるとき、ヘッドライトがハイビーム状態に切り換えられ、操作レバー16はハイビーム状態に保持される。また、運転者により操作レバー16が軸部16aまわりに車体後方側に引かれ、クリックピン26の先端が斜面24eに当接した位置にあるとき、ヘッドライトがハイビーム状態に切り換えられ、運転者が操作レバー16から手を離すと操作レバー16はロービーム状態に移行する。
【0022】
スイッチ作動体24の先端に形成されたガイド孔24dに、スプリング27で突出方向に付勢されたクリックピン28が摺動自在に収納される。一方、トップカバー21およびセンターケース22の内部には弾性を有する樹脂材よりなる節度感発生体29が固定されており、節度感発生体29の内面にはクリックピン28の先端が当接するクリック溝29a(
図5参照)が形成される。操作レバー16と一体のスイッチ作動体24は軸部24aまわりに揺動可能であり、クリックピン28の先端が中央のクリック溝29aに当接するとスイッチ作動体24は中立位置に安定的に保持される。またクリックピン28の先端がクリック溝29aの上側の当接面29bに当接するとスイッチ作動体24は左折位置に安定的に保持され、クリックピン28の先端がクリック溝29aの下側の当接面29cに当接するとスイッチ作動体24は右折位置に安定的に保持される。
【0023】
スイッチケース15の内部には不図示の複数の固定接点が敷設された端子盤と可動接点が敷設された接触片が配設されている。操作レバー16の回動に伴い、この端子盤上を接触片が摺動する。各固定接点は,操作レバー16が左折位置や右折位置に保持されているときに接触片と接触するように配置され、接触片が各固定接点に対して接離することにより、電気的な接離が行われて各固定接点に対応した動作モードでウインカーが作動する。また、各固定接点は操作レバー16がロービーム状態やハイビーム状態に位置するときに接触片と接触するように配置され、接触片が各固定接点に対して接離することにより、電気的な接離が行われて各固定接点に対応した動作モードでヘッドライトが作動する。例えば、スイッチ作動体24が左折位置に保持されているとき、左側のターンシグナルランプが点滅し、またスイッチ作動体24が右折位置に保持されているとき、右側のターンシグナルランプが点滅する。
【0024】
トップカバー21には前後方向に延びる長孔状のガイド溝21b(
図2、
図3、
図4および
図7参照)が形成されており、このガイド溝21bにキャンセル部材32の第1ガイドピン32aが前後摺動自在かつ揺動自在に支持される。キャンセル部材32の前端にはステアリングシャフト12に対向する前部突起32bが形成され、後端には後部突起32cが形成される。キャンセル部材32の前後方向中間部に形成されたスプリング係合溝32dにコイルスプリング33の中間部が係止され、コイルスプリング33の両端部がトップカバー21に設けた一対のスプリング係止部21cに係止される。したがって、キャンセル部材32はコイルスプリング33の弾発力でスイッチケース15から前方に突出する方向に常時付勢される。
【0025】
ステアリングシャフト12の外周面には、径方向外側に突出する複数の凸部12aと、径方向内側に窪む複数の凹部12bとが周方向に交互に形成される。キャンセル部材32が後退位置にあるとき、その前部突起32bはステアリングシャフト12の凸部12aの移動軌跡よりも後方にあり、キャンセル部材32が前進位置にあるとき、その前部突起32bはステアリングシャフト12の凸部12aの移動軌跡よりも前方に移動して凹部12b内に突出する。
【0026】
弾性材よりなる節度感発生体29はトップカバー21側に延び、トップカバー21およびキャンセル部材32間に挟まれる板状の弾性壁部29d(
図3および
図7参照)を一体に備える。また節度感発生体29の弾性壁部29dにはトップカバー21のガイド溝21bと略重なる溝29eが形成されており、溝29eの前端には弾性ストッパ部29f(
図3および
図7参照)が一体に形成される。弾性ストッパ部29fは、トップカバー21のガイド溝21bの前端よりも僅かに後方に位置している。
【0027】
節度感発生体29の溝29eにおけるキャンセル部材32が前進・後退する方向と直交する向きの長さ(溝幅)は、トップカバー21のガイド溝21bにおけるキャンセル部材32が前進・後退する方向と直交する向きの長さ(溝幅)以上となるように設定される。したがって、キャンセル部材32が前進・後退するときに、第1ガイドピン32aは節度感発生体29の溝29eに当接することなく、トップカバー21のガイド溝21bに沿って案内される。
【0028】
キャンセル部材32は、第1ガイドピン32aと同軸上に配置された第2ガイドピン32e(
図3、
図4および
図7参照)を備える。一方、スイッチ作動体24の前端には、第2ガイドピン32eが摺動可能に当接する駆動カム部34が形成される。駆動カム部34は、中央に位置して後方に突出する頂面34aと、頂面34aの両側に位置して斜め前方に延びる一対の駆動カム面34b,34cとを備える。
【0029】
またスイッチ作動体24の前部には、キャンセル部材32の後部突起32cに当接可能な従動カム部35が形成される。従動カム部35は、後部突起32cの両側に位置して斜め前方に延びる一対の従動カム面35a,35bを備える。
【0030】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0031】
操作レバー16が中立位置にあるとき、
図5に示すようにクリックピン28が節度感発生体29の中央のクリック溝29aに係合することで、スイッチ作動体24は中立位置に安定的に保持される。スイッチ作動体24が中立位置にあるとき、
図4に示すようにコイルスプリング33で前方に向けて付勢されたキャンセル部材32は、その第2ガイドピン32eが駆動カム部34の頂面34aに当接することで前進を阻止されており、キャンセル部材32の前部突起32bはスイッチケース15の内部に引っ込んでいる。
【0032】
この状態から、例えば車両を左折させるべく運転者が操作レバー16を反時計方向に操作すると、操作レバー16と一体のスイッチ作動体24が軸部24aを支点として反時計方向に揺動し、
図5においてクリックピン28が節度感発生体29の中央のクリック溝29aから出てクリック溝29aの上側の当接面29bに当接することで、
図6に示すようにスイッチ作動体24は左折位置に安定的に保持される。スイッチ作動体24の反時計方向への揺動に伴い、スイッチ作動体24と一体の駆動カム部34が反時計方向へ揺動すると、コイルスプリング33で付勢されたキャンセル部材32の第2ガイドピン32eが駆動カム部34の一方の駆動カム面34bに案内され、かつ第1ガイドピン32aがトップカバー21のガイド溝21bに案内されることで、キャンセル部材32の前部突起32bはスイッチケース15の外部に突出し、ステアリングシャフト12の凸部12aの回転軌跡内に侵入する。
【0033】
続いて、運転者が左折すべくステアリングホイール11を反時計方向に操作すると、ステアリングシャフト12が
図6の矢印A方向に回転して凸部12aがキャンセル部材32の前部突起32bを矢印B方向に押圧するが、キャンセル部材32は第1ガイドピン32aおよび第2ガイドピン32eまわりに矢印C方向に揺動して空振りするだけであり、キャンセル部材32の後部突起32cは従動カム部35に当接することはない。その結果、運転者がステアリングホイール11を反時計方向に操作している間、スイッチ作動体24および操作レバー16は左折位置に保持され、車両が左折することを知らせるターンシグナルランプは点滅し続ける。
【0034】
左折が完了して直進走行に移行すべく運転者がステアリングホイール19を時計方向に操作すると、今度はステアリングシャフト12が
図6の矢印D方向に回転して凸部12aがキャンセル部材32の前部突起32bを矢印E方向に押圧するため、キャンセル部材32は第1ガイドピン32aおよび第2ガイドピン32eまわりに矢印G方向に揺動し、従動カム部35の従動カム面35aを矢印H方向に押圧する。その結果、スイッチ作動体24が矢印H方向に揺動し、クリックピン28が節度感発生体29の一方の当接面29bから出て中央のクリック溝29aに係合することで、スイッチ作動体24は自動的に中立位置に復帰して左折を知らせるターンシグナルランプは消灯する。
【0035】
以上、オートキャンセル機構の左折時の作用について説明したが、右折時の作用も同様である。
【0036】
さて、操作レバー16を中立位置から左折位置あるいは右折位置に操作すると、従来のターンシグナルスイッチ装置14では、キャンセル部材32がスイッチ作動体24に対して前進することで、キャンセル部材32の第1ガイドピン32aがトップカバー21のガイド溝21bに沿って摺動し、第1ガイドピン32aがガイド溝21bの前端に衝突して騒音を発生する可能性があった。
【0037】
しかしながら、本実施の形態によれば、弾性材よりなる節度感発生体29の弾性ストッパ部29fがガイド溝21bの前端に張り出しているため(
図2および
図3参照)、前進するキャンセル部材32の第1ガイドピン32aがガイド溝21bの前端に直接衝突することがなくなり、第1ガイドピン32aが節度感発生体29の弾性ストッパ部29fに衝突することで騒音の発生が防止される。さらに、弾性ストッパ部29fはスイッチケース15に覆われるため、衝突する騒音がスイッチケース15の外部に伝わるのを低減することができる。
【0038】
またキャンセル部材32はトップカバー21の内面に沿って摺動するが、キャンセル部材32およびトップカバー21の内面間に隙間が存在すると、キャンセル部材32が摺動するときに、キャンセル部材32が前記隙間の範囲内で暴れてトップカバー21の内面に直接衝突し、騒音を発生する可能性があった。
【0039】
しかしながら、本実施の形態によれば、弾性材よりなる節度感発生体29の弾性壁部29dがキャンセル部材32およびトップカバー21間に介在することで、キャンセル部材32がトップカバー21に直接衝突して騒音を発生するのを防止することができる。さらに、弾性壁部29dはスイッチケース15に覆われるため、衝突する騒音がスイッチケース15の外部に伝わるのを低減することができる。
【0040】
さらに、キャンセル部材32が前進・後退するときに、キャンセル部材32の第1ガイドピン32aは弾性を有する節度感発生体29の溝29eに沿って案内されるのではなく、節度感発生体29よりも剛性の高いトップカバー21のガイド溝21bに沿って案内されるので、キャンセル部材32は傾くことなく安定した姿勢でスムーズに前進・後退することができる。
【0041】
しかも弾性ストッパ部29fおよび弾性壁部29dは節度感発生体29と一体に形成されているため、弾性ストッパ部29fおよび弾性壁部29dを個々に設ける場合に比べて部品点数や組立工数の増加を抑制することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、実施の形態の操作レバー16は左手で操作するものであるが、右手で操作するものであっても良い。
【0044】
また実施の形態では操作レバー16が軸部16aでスイッチ作動体24に揺動可能に連結されているが、操作レバー16およびスイッチ作動体24は一体であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
12 ステアリングシャフト
15 スイッチケース
16 操作レバー
21b ガイド溝
24 スイッチ作動体
28 クリックピン
29 節度感発生体
29d 弾性壁部
29e 溝
29f 弾性ストッパ部
32 キャンセル部材
32a 第1ガイドピン(ガイドピン)