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特許7145113ガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20220922BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G01M3/38 K
G01N21/27 A
G01M3/38 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057987
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159798
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 太久
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
(72)【発明者】
【氏名】大貫 彰彦
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-288858(JP,A)
【文献】特開2008-26190(JP,A)
【文献】特開2018-181292(JP,A)
【文献】特開平6-194254(JP,A)
【文献】特開2016-138865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部で撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別する画像識別部と、
前記ガス配管をもとにガスを検知する検知部と、
前記撮像部によって撮像した撮像画像を表示制御する表示制御部と
を具備し、
前記検知部は、
前記画像識別部によって識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスを検知し、
前記表示制御部は、
前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知部が検知した検知位置に対応する、前記撮像部が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、
前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大表示する
ことを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記検知部によって前記ガスを検知したとき、前記検知部からの情報に基づく前記ガスの検知状況を前記撮像画像に重畳して表示する
ことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、
所定濃度以上の前記ガスを検知し、
前記表示制御部は、
前記検知部によって前記ガスを検知した前記検知位置に対する前記撮像位置の全てを含むように前記撮像画像を拡大表示する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記画像識別部は、
前記ガス配管を構成する優先確認部位を識別し、
前記検知部は、
前記優先確認部位を該優先確認部位とは異なる他の部位よりも優先してガス検知する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記優先確認部位は、
前記ガス配管の継ぎ手部位である、
ことを特徴とする請求項4記載のガス検知装置。
【請求項6】
撮像装置で撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別し、
識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスを検知装置によって検知し、
前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知装置が検知した検知位置に対応する、前記撮像装置が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、
前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大表示する
ことを特徴とするガス検知方法。
【請求項7】
ガス配管を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像したガス配管をもとにガスの検知制御を行う検知制御部と、
前記撮像部によって撮像した撮像画像を表示制御する表示制御部と
を具備するガス検知装置と、
前記撮像画像を表示する表示装置と
を有し、
前記検知制御部は、
前記撮像部で撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別する画像識別部
をさらに具備し、
前記画像識別部によって識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスの検知制御を行い、
前記表示制御部は、
前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知制御部が検知した検知位置に対応する、前記撮像部が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、
前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大する表示制御を行い、
前記表示装置は、
拡大する表示制御が行われた撮像画像を表示する
ことを特徴とするガス検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガス、例えばメタン等の成分を含む都市ガスの漏えいを検知するために、接触燃焼式や半導体式などの方法等を利用したガス漏れ検知器を、ガス配管などの検査対象に近づけることによってガスの漏えいを検知する手法が知られている。
【0003】
しかしながら、メタンやブタンなどの成分によって構成されているため、微小な隙間さえあれば、ガスは簡単に漏洩することとなる。ガスの漏洩に気付いたとしても、その微小な隙間は人間には気付きにくく、ガス漏洩の原因となる漏洩箇所の特定に多くの時間を要することとなり、結果として、原因究明に多くの時間を要することとなる。
【0004】
ガス漏洩は、重大な事故の発生に繋がるため、早い発見と共に、早急な原因究明および対応が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/143754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス漏れを検知する手段として、多くの技術が開示されているが、ガス配管からのガス漏れを検知するための手段として、大別して、画像の解析によるガス漏れの検知方法と、レーザとを照射することによってガス(メタン等)を検知することが可能なガス検知器を用いたガス漏れの検知方法とがある。
【0007】
その中で、上記の特許文献1に記載されている従来技術は、監視対象物を撮像範囲に含む赤外線カメラを有し、赤外線カメラで撮影した、1フレームごとに画像の画像領域を複数のブロックに分割して、ブロックごとにガス領域か否かを判別し、複数のフレームに亘り、ガス領域と判別された回数をブロックごとにカウントし、所定値以上のブロックをガス漏れ推定位置として設定する。そして、このガス漏れ推定位置として設定されたブロックを明示する画像を、撮影した画像と重ね合わせて表示することも可能としている。
【0008】
このことから、この引用文献に示された技術は、あくまでも画像認識によってガスであるか否かを判別し、画像認識によってガスであると判別した画像と、赤外線カメラによって撮影した画像とを重ね合わせて表示しているものである。
【0009】
このため、上記の特許文献1は、ガスであると判別したブロックを明示する画像と、撮影した画像とを重ね合わせて表示してガスの判別を行っているものに過ぎない。
【0010】
このほか、ガス検知器を用いてガス漏れを検知しているような場面がある。このような場面においても、ガス漏れの原因となっている位置(漏洩箇所)を正確に把握する必要があるとともに、ガス漏れの作業者に対して早急に知らせる必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、ガス漏れを早急に検知可能とするとともにガス漏れの位置を特定できるようにしたガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガス検知装置は、撮像部で撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別する画像識別部と、前記ガス配管をもとにガスを検知する検知部と、前記撮像部によって撮像した撮像画像を表示制御する表示制御部とを具備し、前記検知部は、前記画像識別部によって識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスを検知し、前記表示制御部は、前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知部が検知した検知位置に対応する、前記撮像部が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大表示することを特徴とする。
【0013】
また、前記表示制御部は、前記検知部によって前記ガスを検知したとき、前記検知部からの情報に基づく前記ガスの検知状況を前記撮像画像に重畳して表示することを特徴とすることが好ましい。
【0014】
また、前記検知部は、所定濃度以上の前記ガスを検知し、前記表示制御部は、前記検知部によって前記ガスを検知した前記検知位置に対する前記撮像位置の全てを含むように前記撮像画像を拡大表示することを特徴とすることが好ましい。
【0015】
また、前記画像識別部は、前記ガス配管を構成する優先確認部位を識別し、前記検知部は、前記優先確認部位を該優先確認部位とは異なる他の部位よりも優先してガス検知することを特徴とすることが好ましい。
【0016】
また、前記優先確認部位は、前記ガス配管の継ぎ手部位である、ことを特徴とすることが好ましい。
【0017】
本発明に係るガス検知方法は、撮像装置で撮像した撮像対象物からガス配管を識別し、識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスを検知装置によって検知し、前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知装置が検知した検知位置に対応する、前記撮像装置が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大表示することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るガス検知システムは、ガス配管を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像したガス配管をもとにガスの検知制御を行う検知制御部と、前記撮像部によって撮像した撮像画像を表示制御する表示制御部とを具備するガス検知装置と、前記撮像画像を表示する表示装置とを有し、前記検知制御部は、前記撮像部で撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別する画像識別部をさらに具備し、前記画像識別部によって識別したガス配管に沿ってレーザ光を照射することによって前記ガス配管から漏洩するガスの検知制御を行い、前記表示制御部は、前記ガス配管から漏洩したガスを前記検知制御部が検知した検知位置に対応する、前記撮像部が撮像した撮像画像における撮像位置を特定し、前記撮像位置の少なくとも一部を含むように前記撮像画像を拡大する表示制御を行い、前記表示装置は、拡大する表示制御が行われた撮像画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス漏れを早急に検知可能とするとともにガス漏れの位置を特定できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態におけるガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システムを用いてガス検知を行う対象のガス配管の構成の一例を示す図。
図2】本発明の実施の形態におけるガス検知装置(ガス検知システム)の詳細な構成を示すブロック図。
図3図2に示すような構成からなるガス検知装置が、図1に示すようなガス配管設備に設けられたガス配管の任意の部位を撮像したものの例を示す図。
図4】フランジ接合したガス配管からガス漏洩が発生し、このガスを検知したガス検知装置に撮像画像を表示した例を示す図。
図5】本発明の実施の形態におけるガス検知装置(ガス検知システム)によって行われるガス検知処理の詳細な流れを示すフローチャート。
図6図5におけるガス検知処理において行われる画像解析処理の詳細な流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係わるガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システムの一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例
【0022】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置、ガス検知方法およびガス検知システムを用いてガス検知を行う対象のガス配管の構成の一例を示す図である。
【0023】
図1には、ガスの輸送経路を形成するガス配管(単に、「ガス管」、「パイプ」とも称する)およびこのガス配管でガスを輸送するために構成する構成部品の一例を示している。このガス配管および構成部品は、ガス製造施設やガバナステーション等の各種施設に設けられたものであるほか、ガス製造施設で製造されたガスを供給先へと供給するためのネットワークの一部を形成するものである。
【0024】
このときのガス配管としては、金属系の材料からなる配管や、樹脂系の材料からなる配管等がある。このうち、金属系の材料からなる配管(金属系配管)として、例えば、SGPやSTPGと称される配管用炭素鋼鋼管や、ステンレス鋼管などがあり、また、樹脂系の材料(樹脂系配管)からなる配管として、例えば、ポリエチレン管(PE管)や塩化ビニル管などがある。輸送するガスの性質、温度、圧力などに応じて最適なガス配管が用いられている。もちろん、金属系の材料および樹脂系の材料の両方を用いたポリエチレン被覆鋼管などもある。
【0025】
また、ガス配管同士を接続するための部品(部位)として、継ぎ手(継手)、ジョイントやコネクタと呼ばれるものがあり、これらの部品においてもガス配管と同様に、金属系の材料(金属系継手)や、樹脂系の材料(樹脂系継手)が使われている。
【0026】
このガス配管として、特に、露出配管と称される、地表に露出された状態で設置されているガス配管が該当し、高圧管・中圧管・低圧管等を問わない。また、このガス配管には、各種のガス物質を貯蔵するタンクと接続する付属配管や輸送配管等が含まれる。
【0027】
さらに、上記のようなガス配管でガスを輸送するための構成部品も、上記同様、金属系の材料からなり、この構成部品の例として、弁体(バルブ)、計測機器、圧力機器(圧力調整機器、畜圧器等)、ポンプなどがある。
【0028】
この弁体(バルブ)は、機能によって仕切弁、調整弁、遮断弁、安全弁などと称される。これらの弁体として、例えば、電気信号によって開閉・流路変更等が可能な電磁弁、手動によって開閉・流路変更等が可能な手動弁がある。特に、電磁弁は、遠隔の管理センター等から電気信号による指示を受けることで弁体の開閉等が行われて、ガス配管で輸送されるガスの流量、方向を調整することが可能である。
【0029】
また、計測機器は、ガスの供給に関する各種の情報を計測する機器であって、機能によって圧力計、流量計、濃度計などと称されるものが該当する。
【0030】
さらに、圧力機器は、供給するガスの熱量を調整する機器であって、供給するガスの圧力を調整するための圧力調整機器や、畜圧器(アキュムレータ)等があり、安全にかつ最適な圧力でガスの需要もとへとガスを供給する。
【0031】
このようなガス配管および構成部品は、有形物であることから経年劣化、腐食、我部からの圧力等によって破損の可能性を有する。
【0032】
上記に示すようなガス配管によって輸送されるガスは、気体の総称であって、エネルギー資源とも称され、様々な種類の成分からなるものが存在する。一般的に都市ガスと呼ばれる、メタンを主成分とする天然ガスやプロパン・ブタンを主成分とする石油ガスがある。この石油ガスは、一般家庭、工場等で用いられるものであって、張り巡らされたガス配管を伝わって供給される。また、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、水素、ヘリウムなどを主成分とする産業ガスなどもある。このほか、アンモニア、硫化水素、塩素、シアン化水素等もガスに含まれる。
【0033】
これらのガスは、成分によって使用用途や特性が異なるものの、有毒性や引火性を有するものである。また、各ガスは、その製造過程の付臭剤の成分、付臭濃度(ppm)によって臭気性に違いはあるものの、人が臭気を感じ難い場合がある。そんな中、上記に示すようなガス配管や構成部品に破損が生じているような場合には早急にガス漏洩を検知する必要が生じることとなる。
【0034】
図1には、ガス配管および構成部品からガスが漏洩した場合にそのガスを検知可能なガス検知装置100が示されている。このガス検知装置100は、ガス漏洩の有無に係る検査する装置であることから「ガス検査装置」とも称されることがある。
【0035】
また、ガス配管および構成部品を総称して、単に「ガス配管」、「ガス管」、「ガス配管設備」とも称する。
【0036】
ガス検知装置100は、ガスを検知することが可能な検知部200と、このガス配管を含む構造物(撮像対象物)を撮像することが可能な撮像部101(可視光カメラ、撮像装置)とを少なくとも有しており、このほか、図1のガス検知装置100には、撮像部101で撮像対象物を撮像した撮像画像を表示可能な表示部311と、ガスの検知に係る検査を指示する検査ボタン150が示されている。
【0037】
検査ボタン150を検査者が操作することで撮像開始条件が成立すると、撮像部101は、撮像対象を撮像する処理が開始してガス漏洩の検査が開始される。その一方で、再度、検査者が押下する操作を行うことで検査停止条件が成立して撮像が停止してガス漏洩の検査が終了する。なお、この検査停止条件は、検査を開始してから所定時間以上経過したときにも成立する条件である。
【0038】
また、検知部200(検知装置)は、レーザ光や超音波を用いた検知方式のほか、半導体式、接触燃焼式などの方法によってガスを検知する。以下では、レーザ光を用いた検知方式について説明する。
【0039】
検知部200では、赤外線等の半導体レーザ(「レーザ光」と称する)を、ガスを検知したい検知対象物であるガス配管に照射し、そのガス配管から反射された反射光を受光する。
【0040】
ガス配管周辺にガスが滞留しているような場合、そのガスの成分に応じた周波数の反射光が反射される。検知部200では、この反射光の周波数を分析することによってガスを検知することが可能となる。また、ガス検知装置100では、反射光の周波数分析によって、検知したガスのガス種別を判別するとともに、そのガスの濃度(ガス濃度、ガス計測値)を算出する。
【0041】
また、撮像部101は、撮像対象物を撮像して、その撮像した撮像画像を生成する。なお、詳細については図2を用いて後述するが、ガス検知装置100では、この撮像画像を解析することによってその撮像画像に含まれる撮像対象物から識別対象物であるガス配管を識別することが可能である。
【0042】
表示部311は、撮像部101が撮像した撮像画像を表示可能な表示ディスプレイである。この表示部311では、撮像画像に重畳してまたは代えて、検知部200によって検知した情報に基づくガスの検知状況を示す情報として、ガス種別、ガスの濃度等を所定の形式(例えば、数値やグラフィック)で表示する。
【0043】
なお、図1に示す例では、この表示部311を含むガス検知装置100の例を示しているが、この表示部311は、必須の構成要件でなく、ガス検知装置100が通信部を有することでその通信部を介して外部に設けられた表示装置に撮像画像や計測値を送信して表示させるようにしてもよい。
【0044】
図1に示すガス検知装置100は、ガス配管を撮像部101が撮像する撮像範囲として2つの撮像範囲(第1の撮像範囲F1、第2の撮像範囲F2)を示している。この第1の撮像範囲F1は、広域(ワイド)でガス配管を撮像した状態を示しており、第2の撮像範囲F2は、第1の撮像範囲F1よりも狭い狭域(ナロー)でガス配管を撮像した状態を示している。すなわち、第1の撮像範囲F1の一部を拡大表示した範囲が第2の撮像範囲F2である。
【0045】
第1の撮像範囲F1と第2の撮像範囲F2は撮像範囲が異なっているものの、分解能である画素数は同じになっている。一例として、第1の撮像範囲F1では、「縦3メートル、横4メートル」の広域を7千画素で撮像しているのに対して、第2の撮像範囲F2では、「縦1メートル、横1.5メートル」の狭域を同画素で撮像している。
【0046】
ガス検知装置100は、撮像部101が第1の撮像範囲F1を撮像した撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別し、ガス配管を識別できた場合、そのガス配管に沿ってレーザ光を照射する。すなわち、ガス配管に沿ってレーザ光を走査することとなる。
【0047】
また、ガス検知装置100は、そのレーザ光に対する反射光をもとに、反射光の周波数を分析することによって検知部200がガスを検知すると、そのガス(ガス配管から漏洩したガス)を検知した検知位置に対応する、撮像画像(第1の撮像範囲F1の画像)における撮像位置を特定して、この撮像位置の少なくとも一部を含むようにその撮像画像を拡大表示する。すなわち、第2の撮像範囲F2の画像を表示することとなる。
【0048】
これに加えて、ガス検知装置100は、検知部200が検知したガスのガス種別を判別するとともに、そのガスの濃度を算出して、これらを表示部311に撮像画像とともに表示することとしてもよい。
【0049】
これによって、ガス検知装置100は、ガス漏れを早急に検知可能とするとともに検査者がガス漏れの位置を特定し易くなる。
【0050】
図2は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置(ガス検知システム)の詳細な構成を示すブロック図である。
【0051】
図2に示すガス検知装置100は、撮像部101、画像解析部102、画像識別部103、画像作成部104、検知部200、報知制御部300、報知部310、記憶部400を具備して構成されている。
【0052】
報知部310は、情報を報知するものであって、表示部311、スピーカ312、操作部313を具備する。また、報知制御部300は、報知部310での報知に関する制御処理を行い、表示制御部301、音制御部302を具備する。
【0053】
このうち、表示部311は、表示制御部301が表示制御することで、撮像部101で撮像した撮像画像や、検知部200によって検知した情報に基づくガスの検知情報(ガス種別、ガス濃度(ガス計測値))をそれぞれ、または同時に表示する。
【0054】
また、スピーカ312は、音制御部302が音を出力する出力制御を行うことで、ガスの検知状態に応じた音を出力する。例えば、検知部200がガスを検知していない状態のとき、音制御部302は「無音」とする制御を行い、また、検知部200がガスを検知したとき、音制御部302は複数の有効音(第1音や第2音など)のいずれかを所定のボリュームで出力する出力制御を行う。このときの第1音は、例えば、検知部200が検知したガスのガス濃度が所定濃度未満であるときに出力し、第2音は、検知部200が検知したガスのガス濃度が所定濃度以上のときに出力する。
【0055】
操作部313は、検査者による操作が可能であって、図1に示すガス検知装置100の検査ボタン150が該当する。このほか、操作部313は、表示部311の表示状態やスピーカ312の出力状態を変更(有効/無効、ボリューム変更)するボタン、ダイヤル等で構成される。
【0056】
操作部313の検査ボタン150を検査者が押下する操作を行うと、撮像部101では、撮像対象物の撮像を開始する。撮像部101は、CCD(Charged-coupled devices)やCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)等の撮像素子によって撮像した撮像画像を生成する処理を行う。そして、撮像部101は、この撮像画像を画像解析部102へと送出する。
【0057】
画像解析部102は、画像識別部103を具備しており、撮像部101によって撮像した撮像画像を画素単位で解析することによって、レーザ光によってガスの検知が可能な照射範囲(照射距離)で撮像が行われた撮像画像であるか否かを判断する。
【0058】
この判断処理によって、レーザ光によってガスを検知できない範囲(距離)で撮像され、ガスを検知できない状態で検査が行われることを防止できる。そのため、レーザ光によってガスの検知が可能な照射範囲(照射距離)で撮像が行われた撮像画像ではない場合、画像解析部102はその旨を表示制御部301へと通知して表示部311にその旨を表示させてもよい。
【0059】
反対に、レーザ光によってガスの検知が可能な照射範囲(照射距離)で撮像が行われた撮像画像であると判断すると、画像解析部102では、画像識別部103が、撮像画像に含まれる撮像対象物からガス配管を識別する処理を行う。この画像識別部103では、特定の対象物を識別する画像識別処理を行うものであって、例えば、記憶部400等において記憶するガス配管の画像情報を用いた各種のパターンマッチング方法を用いることでガス配管を識別する。
【0060】
画像識別部103における画像識別処理によってガス配管を識別すると、続いて、画像識別部103は、ガス配管を構成する優先確認部位を識別する。この優先確認部位は、ガス配管におけるガス漏洩の可能性が高いと予め指定された、ガス配管の一部の部位である。例えば、優先確認部位として、継ぎ手や弁体などのほか、ガス配管の曲線部位が該当する。
【0061】
そして、画像解析部102は、画像作成部104および検知部200に対して、ガス配管を検知したこと、優先確認部位が識別されたときにはその優先確認部位の情報、および撮像画像上のガス配管位置情報を送出する。なお、画像解析部102は、撮像画像を記憶部400へと記憶する。
【0062】
まず、画像作成部104では、画像解析部102からガス配管を検知したことを受信すると、ガス配管位置情報をもとにガス配管の位置を検査者に報知するための画像情報(ガス配管の形状に基づく線形画像)を作成して報知制御部300へと送出する。
【0063】
このとき、報知制御部300においては、表示制御部301が、画像作成部104から送出された、ガス配管の位置を検査者に報知するための画像情報を、撮像部101で撮像した撮像画像に重畳した画像の生成を行う。そして、表示制御部301は、この生成した画像を表示部311で表示させる。
【0064】
このとき、検査者は、表示部311で表示された画像をもとに、ガス検知装置100がガス配管を認識した状態にあることを知ることができる。また、ガス配管の形状が線形画像によって示されていることで、そのガス配管に沿ってガス検知装置100を移動していくことが可能となる。
【0065】
この検査者によるガス検知装置100の移動を補助するために、ガス検知装置100は、加速度センサーや駆動モーター等を搭載し、加速度センサーを用いたセンシングに基づいて駆動モーターの駆動制御を行うことによって、ガス検知装置100をガス配管に沿って容易に移動できるようにしても良い。
【0066】
次に、検知部200は、レーザ光照射制御部201、レーザ光照射部202、受光部203、ガス検知制御部204を具備して構成される。
【0067】
レーザ光照射制御部201は、レーザ光照射部202からレーザ光の照射に関する制御処理を行う。このレーザ光照射制御部201は、画像解析部102からガス配管を検知したこと、優先確認部位の情報およびガス配管位置情報を受信し、このガス配管位置情報に基づいてガス配管に沿ってレーザ光を照射することをレーザ光照射部202へと指示する。なお、優先確認部位の情報が含まれている場合、レーザ光照射制御部201は、その優先確認部位を他の部位よりも優先してレーザ光を照射させるようにレーザ光照射部202に指示してガスの検知を行う。
【0068】
レーザ光照射部202は、レーザ光照射制御部201からの指示に基づき、ガスの検知対象物であるガス配管に沿ってレーザ光を照射する。すなわち、レーザ光照射部202は、撮像された撮像画像で識別したガス配管に沿ってレーザ光を走査することとなる。レーザ光照射部202では、レーザ光照射制御部201から優先確認部位の情報を受信している場合、その優先確認部位にレーザ光を照射し、その後に、その優先確認部位とは異なる他の部位にレーザ光を照射する。
【0069】
このような構成によって、ガス検知装置100は、撮像した撮像画像にガス配管が含まれる場合、そのガス配管にレーザ光を照射することが可能となり、ガス配管から漏洩したガスの検知が可能となる。
【0070】
続いて、受光部203では、レーザ光照射部202から照射されたレーザ光に対して、対象物(ガス配管を含む)から反射された反射光を受光する。ガス検知制御部204は、受光した反射光をもとに、反射光の周波数を分析することによってガスの成分が含まれるか否かを判断する。
【0071】
このガス検知制御部204は、ガス種別判別部205、ガス濃度算出部206を具備している。受光部203で受信した反射光をもとに、ガスの成分が含まれると判断する場合、ガス検知制御部204は、そのガスの検知位置を特定して表示制御部301へと送出する。さらに、ガス検知制御部204では、ガス種別判別部205が、その反射光の周波数をもとにガス種別の判別を行い、また、ガス濃度算出部206が、その反射光の周波数をもとにガス濃度の算出を行う。
【0072】
このとき、ガス検知制御部204では、判別したガス種別、および算出したガス濃度から、所定濃度以上のガスを検知したか否かを判断する。ガス検知制御部204は、所定濃度以上のガスを検知した場合に、ガス種別やガス濃度を音制御部302および画像作成部104に送出する。所定濃度以上のガスを検知していないと判断する場合には、その旨を音制御部302および表示制御部301へと送出する。後者の場合、音制御部302では、ガスを検知していない状態であることから無音とする制御を行い、表示制御部301では、ガスの検知状況に関する情報を非表示とする制御を行う。
【0073】
また、前者の場合であって、ガス種別やガス濃度を受信した画像作成部104では、このガス種別およびガス濃度に応じた画像を作成してガス配管位置情報とともに表示制御部301へと送出する。このときの画像は、ガス種別およびガス濃度に応じた画像であって、図4に示す例では、記号「○」、記号「▲」によってガス種別およびガス濃度を示している。なお、ガス濃度は、所定濃度以上であるときにこの画像を表示すること、または、ガス濃度に応じた色彩によって表現するような構成であってもよい。
【0074】
そして、表示制御部301では、撮像部101において撮像した撮像画像と、ガス検知制御部204から受信したガスの検知位置とを用いて、ガス検知制御部204がガスを検知した検知位置に対応する、撮像部が撮像した撮像画像上の撮像位置を特定する処理を行う。
【0075】
これによって、レーザ光を用いて検知したガスの位置(検知位置)と、撮像画像上の位置(撮像位置)とが関連付けられることとなる。
【0076】
また、表示制御部301では、この特定した撮像画像上の撮像位置に、画像作成部104で作成した、ガス種別およびガス濃度に応じた画像を重畳する表示制御処理を行う。この表示制御処理では、表示部311へ表示する表示範囲を、撮像位置の少なくとも一部が含まれるように設定して撮像画像を拡大して表示する拡大表示制御を行う。
【0077】
そして、表示部311では、この拡大表示された撮像画像を表示する。
【0078】
これによって、ガス配管からガスが漏洩している場合、表示部311に、検出したガス種別およびガス濃度に応じた画像を重畳した撮像画像を拡大表示されることとなり、検査者は、ガス漏れの位置を容易に特定することが可能となる。なお、撮像部による撮像範囲が、そのガス漏洩箇所を含まない範囲に移動したときなどは拡大表示終了条件が成立したものとして拡大表示を終了して標準倍率での表示となる。もちろん、拡大表示を継続するような構成であってもよい。
【0079】
その一方で、ガス検知制御部204は、受光部203で受信した反射光をもとに、ガスの成分に応じた周波数が含まれていないと判断する場合、その旨を音制御部302へと通知する。このときの音制御部302では、上記に示すように、無音による出力制御を行う。
【0080】
上記に示すような構成からなるガス検知装置100によってガスを検知可能となるが、ガス検知装置100のみに限定されることなく、このガス検知装置100と、表示装置とを有する「ガス検知システム」によって漏洩したガスを検知するようにしてもよい。
【0081】
すなわち、このガス検知システムでは、ガス検知装置100が、ガスを検知したときに、ガスを検知した撮像位置の少なくとも一部を含むように撮像画像を拡大する表示制御を行ってこの撮像情報を表示装置に送信することで、表示装置が、この表示制御されて拡大された撮像画像を表示する処理が行われる。
【0082】
図3は、図2に示すような構成からなるガス検知装置100が、図1に示すようなガス配管設備に設けられたガス配管の任意の部位を撮像したものの例を示す図である。
【0083】
図3(a)は、ガス配管の管本体部の端部に設けられた継ぎ手部位をボルトとナットを用いてフランジ接合することで、ガス配管同士を接合した例を示している。このほか、トランジション継ぎ手部品を用いることでガス配管同士を接合するような構成であってもよい。
【0084】
図3(b)は、樹脂材料であるポリエチレンからなるガス配管(PE管)同士を、継ぎ手部品であるEFソケット(把持部)を用いてEF接合(エレクトロフュージョン接合)してガス配管同士を接合した例を示している。もちろん、これに限定されることなく、片受直管のガス配管を用いてガス配管同士を接合することとしてもよい。
【0085】
図3(c)は、ガスの流量調整、仕切等の役割を担う玉形弁またはボール弁等の弁体を継ぎ手部品としてこの弁体と、ガス配管の管本体部とをフランジ接合した例を示している。
【0086】
これら図3(a)、図3(b)、図3(c)の継ぎ手部位(継ぎ手部品)が優先確認部位の一例である。
【0087】
図4は、ガス検知装置100がガスを検知したときに表示部311に表示される画像の一例を示す図である。この図4では、図3(a)に示している、フランジ接合したガス配管からガスの漏洩が発生した状態を示している。
【0088】
図4(a)は、撮像した撮像画像から識別したガス配管と、そのガス配管に沿ってレーザ光を走査(レーザ走査)した状態(一点鎖線(直線矢印))と、このレーザ走査によってフランジ接合部分(継ぎ手部)周辺からガスが漏洩したことを検知した状態を示している。この図4(a)においては、漏洩したガスを検知したことを記号「▲」を用いて示している。
【0089】
この図4(a)においては、記号「▲」のみが示されていることからガス検知装置100が、単一の種別からなるガスを検知していることを示している。このほか、漏洩したガスを検知したことを示す記号「▲」の表示形態(表示濃度)をガス濃度に対応付けて変化させて表示させるようにしてもよい。
【0090】
図4(b)は、撮像した撮像画像から識別したガス配管と、そのガス配管に沿ってレーザ光を走査(レーザ走査)した状態(一点鎖線(直線矢印))と、このレーザ走査によってガス配管本体部(鋼管部)からガスが漏洩したことを検知した状態を示している。また、この図4(b)においては、漏洩したガスを検知したことを記号「▲」と記号「○」を用いて示している。
【0091】
この図4(b)においては、記号「▲」と記号「○」とが示されていることからガス検知装置100が、複数の種別からなるガスを検知していることを示している。
【0092】
なお、図4に示す例はあくまで一例であって、図4に表示された画像よりも高い倍率で拡大した画像を表示することとしてもよい。
【0093】
このような表示態様によって、ガス配管設備全体からガス漏洩が発生している箇所(部位)を検査者が容易に特定できるようになる。
【0094】
図5は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置(ガス検知システム)によって行われるガス検知処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0095】
本フローチャートにおける処理は、ガス検知装置100を用いてガス漏洩の検査を行う検査者が、検査対象となる対象物に撮像部のレンズを向けて検査ボタン150を押下することで開始される。
【0096】
図5において、ガス検知装置100は、撮像部によって撮像対象を撮像する(S501)。このように撮像を開始することで撮像状態が「有効(ON)」の状態となることを示している。なお、この撮像部では、撮像対象としてガス配管やガス配管設備はもちろんのこと、背景を含めその他のさまざまな対象物が撮像される。検査者が、撮像方向を変更すればそれに伴って撮像対象も変わっていくこととなる。
【0097】
このようにして様々な撮像対象を撮像すると、続いて、ガス検知装置100は、撮像した画像を解析する画像解析処理を行う(S502)。この画像解析処理は、ガス漏洩の検知に用いるレーザ光の照射範囲(照射距離)で撮像が行われた画像であるか否かを判断して、この画像にガス配管が含まれているかを解析する処理である。この画像解析処理の詳細な流れを図6に示しており、後述する。
【0098】
このようにして撮像した画像の画像解析処理が行われると、ガス検知装置100は、その画像解析処理による解析結果として、画像からガス配管を識別できたか否かを判断する(S503)。
【0099】
この画像からガス配管を識別できない場合(S503でNO)、ガス検知装置100は、続いて、撮像対象の撮像を停止する撮像停止条件が成立したか否かによって撮像を停止するか否かを判断する(S504)。
【0100】
この撮像停止条件は、ガス漏洩の検査を停止するために検査ボタンを押下されたときや、検査を開始してから所定時間以上経過したときに成立する条件である。
【0101】
この判断処理によって、撮像停止条件が成立して撮像を停止する場合(S504でYES)、ガス検知装置100は、撮像を停止して(S505)撮像状態を「無効(OFF)」の状態にして、本フローチャートにおける処理を終了する。一方で、撮像停止条件が成立せず撮像を停止しない場合(S504でNO)、ガス検知装置100は、撮像している画像の解析処理(S502)を継続する。
【0102】
これに対して、撮像した画像からガス配管を識別できたか否かの判断処理(S503)によって、ガス配管を識別できたと判断する場合(S503でYES)、ガス検知装置100は、レーザ光を撮像対象に沿って照射する(S506)。すなわち、画像によって特定したガス配管に対してレーザ光を照射することとなる。このとき、このレーザ光の照射を開始することで照射状態が「有効(ON)」の状態となることを示している。
【0103】
続いて、ガス検知装置100は、レーザ光を照射しているガス配管からガスが漏洩した状態にないかを検査するガス漏洩検査を行う(S507)。このガス漏洩検査として、上記に示すように、ガスの成分(例えば、メタン等)が特定の周波数を吸収する特性を利用して、レーザ光を照射した後に生じる反射光を分析することでガスの漏洩を検知する検査等がある。
【0104】
ガス検知装置100は、このガス漏洩検査によって、ガス配管から漏洩したガスを検知したか否かを判断する(S508)。これは、ガス配管からガスが漏洩した場合はもちろんのこと、ガス配管周辺に滞留するガスを検知することをも含むことを意味する。
【0105】
この判断処理(S508)において、ガスを検知していない場合(S508でNO)、ガス検知装置100は、続いて、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立したか否かを判断する(S509)。この検査終了条件として、例えば、ガス漏洩の検査を停止するために検査ボタンが押下されたことのほか、検査を開始してから所定時間以上経過したこと等がある。
【0106】
検査終了条件が成立したか否かの判断処理(S509)において、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立したと判断する場合(S509でYES)、ガス検知装置100は、撮像部による撮像対象の撮像を停止して撮像状態を「無効(OFF)」の状態とするとともに、レーザ光の照射を停止して照射状態を「無効(OFF)」の状態として(S518)、本フローチャートにおける処理を終了する。また、検査終了条件が成立したか否かの判断処理(S509)において、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立しないと判断する場合(S509でNO)、ガス検知装置100は、継続してガス漏洩検査を行う(S507)。
【0107】
続いて、ガス配管から漏洩したガスを検知したか否かの判断処理(S508)において、ガスを検知した場合(S508でYES)、ガス検知装置100は、レーザ光を照射して検知したガスの成分からガス種別を識別する処理を行う(S510)とともに、そのガスごとにガス濃度を測定する処理を行う(S511)。
【0108】
そのレーザ光を照射して検知したガスをもとに、ガス検知装置100は、撮像した画像上においてガスの漏洩箇所(範囲)を特定する処理を行って、画像上でガスの漏洩箇所(範囲)を特定することができたか否かを判断する(S512)。すなわち、レーザ光を照射して検知したガスの漏洩位置に対する、撮像した画像の位置を特定する処理を行う。
【0109】
この処理によってガスの漏洩箇所を特定することができない場合(S512でNO)、ガス検知装置100は、継続してガス漏洩検査の処理(S507)以降の各処理を行うことでガス漏洩箇所を特定する処理を繰り返し行う。
【0110】
また、ガスの漏洩箇所を特定することができた場合(S512でYES)、ガス検知装置100は、特定したガスの漏洩箇所(範囲)を含めて撮像した画像に、識別したガス種別と、その種別のガスにおけるガス濃度とを示すガス漏洩情報(例えば、色彩を含む記号)を重畳した画像を作成する(S513)。すなわち、この画像は、ガスの漏洩箇所にそのガス漏洩情報が表示されたものとなり、検査者は、ガスの漏洩箇所とともにガス漏洩情報を確認できることとなる。
【0111】
そして、ガス検知装置100は、その作成した画像(ガスの漏洩箇所にそのガス漏洩情報が表示された画像)のガス漏洩箇所の少なくとも一部を含むように拡大して表示(拡大表示)を行う(S514)。
【0112】
このようにしてガスの漏洩箇所を拡大して画像を表示した状態で、ガス検知装置100は、拡大表示終了条件が成立したか否かを判断する(S515)。この判断処理において、拡大表示終了条件が成立したと判断しない場合(S515でNO)、ガス検知装置100は、S513に示す処理以降の各処理を行う。
【0113】
また、拡大表示終了条件が成立したか否かの判断処理(S515)において、この拡大表示終了条件が成立したと判断する場合(S515でYES)、ガス検知装置100は、その画像を保存する(S516)。つまり、ガス漏洩箇所が特定され、ガス漏洩情報を含む画像が保存される。もちろん、通信部(図示せず)を介して外部装置にその画像を送信するようにしてもよい。
【0114】
このときの拡大表示終了条件は、撮像部による撮像範囲が、そのガス漏洩箇所を含まない範囲に移動したときなどに成立するものである。
【0115】
そして、ガス検知装置100は、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立したか否かを判断する(S517)。この検査終了条件は、上記同様、ガス漏洩の検査を停止するために検査ボタンが押下されたことや、検査を開始してから所定時間以上経過したことによって成立する。
【0116】
検査終了条件が成立したか否かの判断処理(S517)において、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立したと判断する場合(S517でYES)、ガス検知装置100は、撮像部による撮像対象の撮像を停止して撮像状態を「無効(OFF)」の状態とするとともに、レーザ光の照射を停止して照射状態を「無効(OFF)」の状態として(S518)、本フローチャートにおける処理を終了する。一方で、ガス漏洩検査を終了する検査終了条件が成立したと判断しない場合(S517でON)、ガス検知装置100は、上記のS507に示す処理へと戻る。
【0117】
このような処理によって、本発明のガス検知装置100は、ガスの漏洩箇所が微小箇所であったとしても、検査者が漏洩箇所を視認可能な状態(拡大表示された状態)で特定することでき、かつ、検査者がその微小箇所から漏洩したガスの種類、ガスの濃度等を認識することが可能となる。
【0118】
図6は、図5におけるガス検知処理において行われる画像解析処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0119】
この画像解析処理は、ガス検知装置100が、撮像状態が「有効(ON)」の状態となることで撮像部によって撮像対象を撮像することが可能な状態となると処理が開始される。
【0120】
まず、ガス検知装置100は、撮像されている撮像対象の構造物が、レーザ光の照射によってガスの検知が可能な範囲(距離)であるかを確認する処理が行われる(S601)。すなわち、レーザ光を照射することによってガスの検知が可能な範囲(距離)で画像を撮像した状態となっているか否かを確認する処理である。
【0121】
この確認処理によって、ガス検知装置100は、撮像部が撮像した画像が、レーザ光の照射によってガスを検知可能な範囲(距離)で撮像したものとなっていることを確認できたか否かを判断する(S602)。
【0122】
ガス検知装置100は、撮像部が撮像した画像が、レーザ光の照射によってガスを検知可能な範囲(距離)で撮像したものとなっていることを確認できない場合(S602でNO)、レーザ光の照射によってガスを検知可能な範囲(距離)に移動するように検査者に対して通知する(S603)。この場合、S601以降の各処理を繰り返し行う。
【0123】
これに対して、撮像部が撮像した画像が、レーザ光の照射によってガスを検知可能な範囲(距離)で撮像したものとなっていることを確認できた場合(S602でYES)、ガス検知装置100は、撮像した画像から構造物を認識する処理を行う(S604)。
【0124】
ガス検知装置100は、認識した構造物が、ガス配管であるか否かを判断する(S605)。認識した構造物が、ガス配管である場合(S605でYES)、ガス配管が検出されたことを設定し(S606)、そのガス配管においてガス漏洩の可能性が高い箇所として予め指定された箇所(確認部位)を特定する処理を行う(S607)。
【0125】
この箇所(確認部位)を特定することができた場合にはその箇所(確認部位)を、優先的にレーザを用いて検査する箇所(優先確認部位または優先検査箇所)と指定する。また、その箇所(優先確認部位)を特定することができない場合にはガス配管全体を検査する箇所と指定する。特に、前者の場合、優先確認部位に続いて他の箇所(確認部位)を検査する箇所と指定する。
【0126】
これによって、ガス検知装置100は、本画像解析処理を終了する。
【0127】
なお、このS607に示すように、優先確認部位が指定されている場合、図5のS506、S507に示す処理において、その指定されている優先検査箇所が撮像されたときに、その優先確認部位を他の確認部位よりも優先して検査するようにしてもよい。
【0128】
また、認識した構造物が、ガス配管であるか否かの判断処理(S605)において、認識した構造物が、ガス配管でない場合(S605でNO)、ガス検知装置100は、ガス配管が検出されたことを設定せずに、本画像解析処理を終了する。
【0129】
このような画像解析処理によって、ガス検知装置100は、ガス漏洩の検知に用いるレーザ光の照射範囲(照射距離)で撮像が行われた画像であるか否かを判断して、この画像にガス配管が含まれているかを解析することが可能となる。
【0130】
以上に示す実施の形態は、本発明の実施の一形態であって、これらの実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【符号の説明】
【0131】
1 ガス配管施設
100 ガス検知装置
101 撮像部
102 画像解析部
103 画像識別部
104 画像作成部
150 検査ボタン
201 レーザ光照射制御部
202 レーザ光照射部
203 受光部
204 ガス検知制御部
205 ガス種別判別部
206 ガス濃度算出部
300 報知制御部
301 表示制御部
302 音制御部
310 報知部
311 表示部
312 スピーカ
313 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6