(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20220922BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220922BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E02F9/26 A
H04N7/18 J
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2019178625
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】除村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】中野 真
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035645(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123228(WO,A1)
【文献】特開2009-121053(JP,A)
【文献】特開2019-132064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0194913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を行うための作業装置と、前記作業装置の姿勢を検知するための姿勢センサと、
撮像装置を含み周囲の物体を認識す
る外界センサと、
表示装置および音声出力装置を含み操作者に情報を報知す
る報知装置と、
前記作業装置を旋回させる旋回機構と、を備える作業機械を制御する、作業機械の制御装置であって、
前記姿勢センサの出力に基づく前記作業装置の姿勢と前記外界センサによって認識された前記物体の高さとを用いて前記作業装置の特定部位の予測軌道と前記物体との高さ関係を演算して前記報知装置に出力する、処理装置を備え
、
前記処理装置は、前記作業装置の先端部の下端と前記作業装置の旋回軸からの距離が最大となる部位を前記特定部位に設定し、前記表示装置に前記撮像装置から取得した前記物体の画像を俯瞰画像として表示させるとともに前記予測軌道を前記高さ関係に基づいて決定された色彩の線で表示させる画像情報を生成して前記表示装置に出力し、前記高さ関係が変更されたときに前記音声出力装置に対して音を発生させる音声出力指令を出力することを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記作業機械は、前記制御装置に対して情報を入力するための入力装置を備え、
前記処理装置は、前記入力装置によって入力された前記物体の高さに基づいて前記予測軌道と前記物体との前記高さ関係を演算することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から油圧ショベル等のように、旋回動作やアームの伸長度合いにより可動域が変化する建設・土木作業車両の作業安全監視システムに関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来のシステムは、以下のようなカメラと安全監視コントローラと画像モニターとを備えたことを特徴とする(同文献、請求項1、第0009段落等を参照)。前記カメラは、前記建設・土木作業車両に搭載され、作業車両周囲のカメラ映像データを取得する。
【0003】
安全監視コントローラは、前記建設・土木作業車両に搭載され、操作者による操作ミスを想定した最大可動域を危険領域と判定する危険領域判定処理部と、前記カメラからのカメラ映像データに、判定された危険領域を重ね合わせるスーパーインポーズ処理部を有する。前記画像モニターは、前記建設・土木作業車両の操作室に設定され、カメラ映像に危険領域を重畳した画像を内部警告表示として映し出す。
【0004】
この従来の作業安全監視システムにあっては、安全監視コントローラの危険領域判定処理部において、操作者による操作ミスを想定した最大可動域が危険領域と判定される。そして、安全監視コントローラのスーパーインポーズ処理部において、建設・土木作業車両に搭載されたカメラからのカメラ映像データに、判定された危険領域が重ね合わせられる。そして、建設・土木作業車両の操作室に設定された画像モニターにおいて、カメラ映像に危険領域を重畳した画像が内部警告表示として映し出される。
【0005】
すなわち、システム構成要素であるカメラと安全監視コントローラと画像モニターは、いずれも建設・土木作業車両に搭載されているため、作業車両にのみ取り付けることでシステムが完結する。そして、建設・土木作業車両の操作室内の操作者は、カメラ映像に危険領域を重畳した画像を映し出す画像モニターを見ることで、作業環境の中で危険領域が占める位置関係を視覚情報として常に得ることができる。この位置関係情報は、作業を安全に進めるため、あるいは、事故を未然に防ぐための操作者に対する内部警告となる。この結果、大規模なシステムを組むこと無く、作業車両にのみ取り付けることで完結する安価な構成でありながら、操作者による作業の安全確認に寄与することができる(同文献、第0010段落等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
たとえば、油圧ショベルによって土砂、砕石、鉱物資源等をダンプトラックに積載する場合に、これらの作業機械を俯瞰すると、一方の作業機械の一部と、他方の作業機械の一部とが、一時的に上下に重なり合う。
【0008】
このような場合、前記従来の作業安全監視システムは、一方の作業機械の一部と他方の作業機械の一部とが上下に重なり合う領域を含む危険領域を判定し、その危険領域をカメラ映像に重畳した画像を画像モニターに映し出す。この場合、一方の作業機械の操作者は、危険領域において他方の作業機械との接触の危険があることを認識できるが、その危険を目視で回避しながら操作を継続せざるを得ず、操作者の負担が大きいという課題がある。
【0009】
本開示は、従来よりも操作者の負担を軽減することが可能な作業機械の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、作業を行うための作業装置と、前記作業装置の姿勢を検知するための姿勢センサと、周囲の物体を認識するための外界センサと、操作者に情報を報知するための報知装置と、を備える作業機械を制御する、作業機械の制御装置であって、前記姿勢センサの出力に基づく前記作業装置の姿勢と前記外界センサによって認識された前記物体の高さとを用いて前記作業装置の特定部位の予測軌道と前記物体との高さ関係を演算して前記報知装置に出力する、処理装置を備えることを特徴とする作業機械の制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の上記一態様によれば、処理装置から報知装置へ作業装置の特定部位の予測軌道と周囲の物体との高さ関係を出力し、その高さ関係を報知装置によって操作者に報知することができる。したがって、本開示の上記一態様によれば、操作者は、作業装置の特定部位の予測軌道と周囲の物体との高さ関係を認識して作業装置の操作を行うことができ、従来よりも操作者の負担を軽減することが可能な作業機械の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る作業機械の制御装置の一実施形態を示すブロック図。
【
図2】
図1に示す作業機械の一例である油圧ショベルの概略的な側面図。
【
図3】
図1に示す作業機械の制御装置の機能ブロック図。
【
図4】
図1に示す作業機械の制御装置の動作の一例を説明するフロー図。
【
図5】
図1の報知装置に含まれる表示装置に表示される画像の一例を示す画像図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示に係る作業機械の制御装置の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本開示に係る作業機械の制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2は、
図1に示す作業機械100の一例である油圧ショベルの概略的な側面図である。
図3は、
図1に示す作業機械100を制御する作業機械の制御装置150の機能ブロック図である。
【0015】
本実施形態に係る作業機械の制御装置150は、たとえば作業機械100に搭載されて作業機械100の動作を制御する。作業機械100は、たとえば
図2に示すように、上部旋回体110と、下部走行体120と、作業装置130と、旋回機構140と、を備えた油圧ショベルである。なお、本実施形態の作業機械の制御装置150は、たとえば、
図1に示すように、姿勢センサ160と、外界センサ170と、報知装置190と、を備える作業機械100を制御対象としている。
図1に示す例において、作業機械100は、さらに、入力装置180を備えている。
【0016】
図2に示すように、上部旋回体110は、下部走行体120の上部に旋回機構140を介して旋回可能に取り付けられている。上部旋回体110は、旋回機構140によって駆動され、作業機械100の高さ方向に平行な旋回軸Aを中心に、下部走行体120に対して旋回する。図示を省略するが、上部旋回体110は、たとえば、ポンプ、エンジン、コントロールバルブ等を含む油圧装置を収容している。
【0017】
下部走行体120は、たとえば、図示を省略する油圧モータによって駆動される履帯121を備え、作業機械100を走行させる。
【0018】
作業装置130は、たとえば、上部旋回体110の前部に設けられ、油圧シリンダによって駆動され、掘削などの作業を行うための機構である。作業装置130は、たとえば、ブーム131と、アーム132と、バケット133とを有する。
【0019】
旋回機構140は、図示を省略する油圧モータまたは電動モータを有し、作業機械100の高さ方向に平行な旋回軸Aを中心に、上部旋回体110を下部走行体120に対して旋回させる。
【0020】
制御装置150は、たとえば、マイクロコントローラやファームウェアによって構成されている。制御装置150は、たとえば、処理装置151と、記憶装置152とを含む。処理装置151は、たとえば、CPUやマイクロプロセッサ(MPU)などの電子部品であり、記憶装置152に記憶されたコンピュータプログラムやデータを読み込んで各種の処理を実行する。記憶装置152は、たとえば、中央処理装置(CPU)内部の半導体メモリや、RAMなどの主記憶装置を含み、コンピュータプログラムやデータが記憶される。制御装置150は、姿勢センサ160、外界センサ170、入力装置180、および報知装置190に対して、情報通信可能に接続されている。
【0021】
姿勢センサ160は、たとえば、
図2に示すように、ブーム131の基端部に設けられた角度センサ161と、アーム132の基端部に設けられた角度センサ162と、バケット133の基端部に設けられた角度センサ163とを含んでいる。角度センサ161は、ブーム131の回転角度を検出し、角度センサ162は、アーム132の回転角度を検出し、角度センサ163は、バケット133の回転角度を検出する。これらの角度センサ161,162,163は、検出結果を制御装置150へ出力する。また、姿勢センサ160は、たとえば、下部走行体120に対する上部旋回体110の旋回角度を検出する角度センサを含む。
【0022】
外界センサ170は、作業機械100の周囲の物体を認識する。外界センサ170は、たとえばカメラなどの撮像装置によって構成されている。より具体的には、外界センサ170は、たとえば上部旋回体110に取り付けられた複数のカメラを含む。複数のカメラは、たとえば、作業機械100の周囲を360度の角度で撮影できるように、上部旋回体110の前部、側部、後部、コーナー部、キャビンなどに取り付けられ、隣り合うカメラの視野角が重複するように様々な方向に向けられている。
【0023】
外界センサ170がステレオカメラである場合には、作業機械100の周囲の物体の情報として二つのカメラの視差情報を取得し、その視差情報に基づいてステレオカメラから物体までの距離、物体の大きさ、物体の高さなどの情報を取得することができる。なお、外界センサ170は、カメラなどの撮像装置に限定されず、たとえばLIDAR(Light Detection and Ranging)やレーダなど、作業機械100の周囲の物体の位置、大きさ、高さなど情報を取得可能な他の装置によって構成することも可能である。外界センサ170は、制御装置150に対して情報通信可能に接続され、物体の認識結果を制御装置150へ出力する。
【0024】
入力装置180は、作業機械100において、たとえば上部旋回体110のキャビン内に配置され、キャビンに搭乗する作業機械100の操作者が制御装置150に対して情報を入力するための装置である。入力装置180は、たとえば、タッチパネル、キーボード、音声認識装置などによって構成され、作業機械100の操作者の操作により、制御装置150に対して作業機械100の周囲の物体の高さなどの情報を入力可能に接続されている。
【0025】
報知装置190は、作業機械100の操作者に情報を報知するための装置である。報知装置190は、制御装置150に対して情報通信可能に接続され、制御装置150から入力された指令や情報に基づいて、作業機械100の操作者に情報を報知する。報知装置190は、たとえば、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置によって構成され、制御装置150から出力されて報知装置190に入力された情報を、画面上に画像や文字で表示することにより、操作者に情報を報知する。また、報知装置190は、たとえば、スピーカやブザーなどの音声出力装置によって構成され、制御装置150から出力されて報知装置190に入力された情報に基づく音や音声を発することにより、操作者に情報を報知する。
【0026】
図3に示すように、制御装置150は、画像処理機能F1と、姿勢演算機能F2と、軌道予測機能F3と、画像合成機能F4と、表示制御機能F5と、報知機能F6とを有している。制御装置150の各機能は、たとえば、処理装置151と、姿勢センサ160、外界センサ170、または入力装置180から制御装置150に入力される情報と、記憶装置152に記憶されたデータおよびコンピュータプログラムによって実現することができる。以下、
図4を参照して、制御装置150の各機能に基づく動作を説明する。
【0027】
図4は、
図1および
図3に示す作業機械の制御装置150の動作の一例を説明するフロー図である。
図5は、
図1の報知装置190に含まれる表示装置に表示される画像Gの一例を示す画像図である。制御装置150は、まず、情報取得処理P1を実行する。情報取得処理P1において、制御装置150は、たとえば、画像処理機能F1により、外界センサ170を構成する撮像装置から、作業機械100の周囲の物体、たとえばダンプトラックなどの他の作業機械200の画像情報I1を取得する。また、情報取得処理P1において、制御装置150は、たとえば、姿勢演算機能F2により、姿勢センサ160を構成する角度センサ161,162,163から、作業装置130の各部の角度などの姿勢情報I2を取得する。
【0028】
次に、制御装置150は、たとえば、姿勢演算機能F2により、作業装置130の姿勢を演算する姿勢演算処理P2を実行する。姿勢演算処理P2において、処理装置151は、姿勢センサ160の出力である姿勢情報I2に基づいて、作業装置130の姿勢を演算する。より具体的には、記憶装置152には、たとえば、作業装置130のブーム131、アーム132、バケット133の三次元形状、寸法、可動範囲などのデータが記憶されている。また、記憶装置152には、前記データと、姿勢センサ160によって取得される上部旋回体110に対するブーム131の角度、ブーム131に対するアーム132の角度、およびアーム132に対するバケット133の角度などに基づいて、作業装置130の姿勢を演算するためのコンピュータプログラムが記憶されている。処理装置151は、たとえば、姿勢センサ160から取得した作業装置130の各部の角度と、記憶装置152から読み込んだデータおよびコンピュータプログラムとを用いて、作業装置130の各部の姿勢を演算する。
【0029】
次に、制御装置150は、たとえば、姿勢演算機能F2により、作業装置130の各部の姿勢に基づいて、作業装置130の特定部位a,bの位置を演算する位置演算処理P3を実行する。より具体的には、位置演算処理P3において、処理装置151は、たとえば
図2に示すような作業装置130の姿勢に基づいて、作業装置130の先端部の下端を特定部位aに設定する。より詳細には、処理装置151は、
図2に示す姿勢の作業装置130において、作業装置130の先端部の下端に位置するバケット133の爪部の先端を特定部位aに設定する。また、制御装置150は、たとえば、作業装置130の姿勢や、記憶装置152に記憶された下部走行体120の下端からブーム131の基端部までの高さなどのデータに基づいて、特定部位aの地表からの高さHaを算出して記憶装置152に記憶させる。
【0030】
また、本実施形態の作業機械100のように、作業機械100が作業装置130を旋回させる旋回機構140を備える場合、位置演算処理P3において、処理装置151は、たとえば
図2に示すような作業装置130の姿勢に基づいて、作業装置130の旋回軸Aからの距離が最大となる部位を特定部位bに設定する。より詳細には、処理装置151は、
図2に示す姿勢の作業装置130において、作業装置130の旋回軸Aからの距離が最大となるバケット133の底部の外面を特定部位bに設定する。また、制御装置150は、たとえば、作業装置130の姿勢や、記憶装置152に記憶された下部走行体120の下端からブーム131の基端部までの高さなどのデータに基づいて、特定部位bの地表からの高さHbを算出して記憶装置152に記憶させる。
【0031】
図2に示す例において、作業装置130の旋回軸Aからの距離が最大となる特定部位bの地表からの高さHbは、作業装置130の先端部の下端である特定部位aの地表からの高さHaよりも高くなっている。また、作業装置130の旋回軸Aから特定部位bまでの距離である特定部位bの旋回半径Rbは、作業装置130の旋回軸Aから特定部位aまでの距離である特定部位aの旋回半径Raよりも大きくなっている。すなわち、
図2に示す例において、特定部位aは、作業装置130の先端部のアーム132およびバケット133の他の部位よりも鉛直方向の下方に位置している。また、
図2に示す例において、特定部位bは、旋回軸Aを基準として、作業装置130の他の部位よりも遠方または外方に位置している。
【0032】
次に、制御装置150は、たとえば、軌道予測機能F3により、特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbを演算する予測軌道演算処理P4を実行する。予測軌道演算処理P4において、処理装置151は、たとえば、特定部位a,bの三次元座標上の位置に基づいて、旋回機構140によって上部旋回体110を下部走行体120に対して旋回軸Aを中心として旋回させたときの特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbを演算して、記憶装置152に記憶させる。
【0033】
次に、制御装置150は、たとえば、軌道予測機能F3により、特定部位aの高さHaと作業機械100の周囲の物体、たとえばダンプトラックなどの他の作業機械200の高さHoとを比較する高さ判定処理P5を実行する。なお、外界センサ170から制御装置150に入力された作業機械100の周囲の物体の情報に物体の高さHoが含まれていない場合、操作者は、入力装置180を用いて物体の高さHoを入力することができる。この場合、制御装置150の軌道予測機能F3は、入力装置180から入力された物体の高さHoの情報I3を記憶装置152に記憶させる。なお、外界センサ170の出力が作業機械100の周囲の物体の高さHoを含む場合、入力装置180を用いた操作者による物体の高さHoの入力は省略することが可能である。
【0034】
高さ判定処理P5において、処理装置151は、記憶装置152に記憶された特定部位aの高さHaすなわち予測軌道Taの高さHaと、作業機械100の周囲の物体、たとえばダンプトラックなどの他の作業機械200の高さHoとを比較する。この比較の結果、予測軌道Taの高さHaが物体の高さHoよりも高い場合(YES)、処理装置151は、判定結果である高さHaと高さHoの大小関係(Ha>Ho)を予測軌道Taと物体との高さ関係として記憶装置152に記憶させ、色決定処理P6を実行する。一方、特定部位aの高さHaが物体の高さHo以下である場合(NO)、処理装置151は、判定結果である高さHaと高さHoの大小関係(Ha≦Ho)を予測軌道Taと物体との高さ関係として記憶装置152に記憶させ、色決定処理P7を実行する。
【0035】
色決定処理P6および色決定処理P7において、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、報知装置190を構成する表示装置に予測軌道Taを表示させるための画像情報を生成する。より具体的には、色決定処理P6において、処理装置151は、作業装置130の特定部位aの予測軌道Taと作業機械100の周囲の物体との高さ関係(Ha>Ho)に基づいて決定された青色の色彩の線で予測軌道Taを表示装置に表示させるための画像情報を生成する。一方、色決定処理P7において、処理装置151は、作業装置130の特定部位aの予測軌道Taと作業機械100の周囲の物体との高さ関係(Ha≦Ho)に基づいて決定された赤色の色彩の線で予測軌道Taを表示装置に表示させるための画像情報を生成する。
【0036】
次に、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、特定部位bの高さHbと作業機械100の周囲の物体の高さHoとを比較する高さ判定処理P8を実行する。高さ判定処理P8において、処理装置151は、記憶装置152に記憶された特定部位bの高さHbすなわち予測軌道Tbの高さHbと、作業機械100の周囲の物体の高さHoとを比較する。この比較の結果、予測軌道Tbの高さHbが物体の高さHoよりも高い場合(YES)、処理装置151は、判定結果である高さHbと高さHoの大小関係(Hb>Ho)を予測軌道Tbと物体との高さ関係として記憶装置152に記憶させ、色決定処理P9を実行する。一方、特定部位bの高さHbが物体の高さHo以下である場合(NO)、処理装置151は、判定結果である高さHbと高さHoの大小関係(Hb≦Ho)を予測軌道Tbと物体との高さ関係として記憶装置152に記憶させ、色決定処理P10を実行する。
【0037】
色決定処理P9および色決定処理P10において、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、報知装置190を構成する表示装置に予測軌道Tbを表示させるための画像情報を生成する。より具体的には、色決定処理P9において、処理装置151は、作業装置130の特定部位bの予測軌道Tbと作業機械100の周囲の物体との高さ関係(Hb>Ho)に基づいて決定された青色の色彩の線で予測軌道Tbを表示装置に表示させるための画像情報を生成する。一方、色決定処理P10において、処理装置151は、作業装置130の特定部位bの予測軌道Tbと作業機械100の周囲の物体との高さ関係(Hb≦Ho)に基づいて決定された赤色の色彩の線で予測軌道Tbを表示装置に表示させるための画像情報を生成する。
【0038】
次に、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、前回の処理で決定された予測軌道Ta,Tbの色彩と、今回の処理で決定された予測軌道Ta,Tbの色彩とを比較する色判定処理P11を実行する。色判定処理P11において、処理装置151は、たとえば記憶装置152に記憶された前回の処理における予測軌道Ta,Tbの色彩と、今回の処理における予測軌道Ta,Tbとを比較する。この比較の結果、予測軌道Ta,Tbの少なくとも一方の色彩が変化した場合(YES)、制御装置150は、たとえば報知機能F6により、警報処理P12を実行する。一方、予測軌道Ta,Tbの双方の色彩に変化がない場合(NO)、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、色記憶処理P13を実行する。
【0039】
警報処理P12において、制御装置150の報知機能F6を構成する処理装置151は、たとえば、報知装置190を構成する音声出力装置に対して指令または音声情報O2を出力する。この指令または音声情報O2は、特定部位a,bと作業機械100の周囲の物体との高さ関係が変化したことを通知する音声やブザー音を、音声出力装置から出力させるためのものである。警報処理P12の終了後、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、色記憶処理P13を実行する。
【0040】
色記憶処理P13において、制御装置150は、たとえば軌道予測機能F3により、今回の処理で決定された予測軌道Ta,Tbの色彩を、前回の処理で決定されて記憶装置152に記憶された予測軌道Ta,Tbの色彩に上書きする。より具体的には、処理装置151は、今回の色決定処理P6または色決定処理P7および色決定処理P9または色決定処理P10によって決定された予測軌道Ta,Tbの色彩を記憶装置152に記憶させる。このとき、処理装置151は、前回の色決定処理P6または色決定処理P7および色決定処理P9または色決定処理P10によって決定されて記憶装置152に記憶された予測軌道Ta,Tbの色彩に、今回の処理で決定された色彩を上書きする。
【0041】
次に、制御装置150は、たとえば画像処理機能F1により、俯瞰画像生成処理P14を実行する。俯瞰画像生成処理P14において、処理装置151は、たとえば外界センサ170を構成する撮像装置によって撮影された画像を俯瞰画像として表示させる画像情報を生成する。より具体的には、処理装置151は、外界センサ170を構成する撮像装置から入力された画像情報を用いた演算により、視点変換を行って、俯瞰画像を表示させるための画像情報を生成する。
【0042】
次に、制御装置150は、たとえば画像合成機能F4により、画像合成処理P15を実行する。画像合成処理P15において、処理装置151は、軌道予測機能F3による予測軌道演算処理P4で演算された特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと、俯瞰画像生成処理P14で生成された俯瞰画像とを合成して表示させるための画像情報を生成する。なお、特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbを表示装置に表示する線の色彩は、色決定処理P6または色決定処理P7および色決定処理P9または色決定処理P10において、たとえば青色または赤色に決定されている。
【0043】
次に、制御装置150は、たとえば表示制御機能F5により、画像表示処理P16を実行する。画像表示処理P16において、処理装置151は、画像合成機能F4で生成された画像情報を、報知装置190を構成する表示装置に表示させるための画像表示用の出力信号O1に変換して、表示装置に出力する。これにより、
図5に示すように、報知装置190を構成する表示装置に、作業機械100の周囲の俯瞰画像と、特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbとを重畳させた画像Gを表示することができる。
【0044】
この画像Gにおいて、作業機械100の周囲の物体、たとえばダンプトラックなどの他の作業機械200の高さHoが、作業機械100の作業装置130の特定部位a,bの高さHa,Hbよりも低ければ、予測軌道Ta,Tbは青色の線で表示される。一方、作業機械100の周囲の物体の高さHoが、作業機械100の作業装置130の特定部位a,bの高さHa,Hbと等しいかそれよりも高い場合、予測軌道Ta,Tbは赤色の線で表示される。
【0045】
制御装置150は、たとえば、操作者による作業装置130の操作中に情報取得処理P1から画像表示処理P16までの処理を所定の周期で繰り返し実行する。作業装置130の姿勢が変化すると、特定部位a,bの位置が変化して予測軌道Ta,Tbの半径が変化する。さらに作業機械100の周囲の物体と作業装置130の特定部位a,bとの高さ関係が変化すると、予測軌道Ta,Tbの色彩が前回処理で決定された色彩から変化する。このように、前回の処理から予測軌道Ta,Tbの色彩が変化すると、警報処理P12が実行される。
【0046】
以下、本実施形態に係る作業機械の制御装置150の作用を説明する。
【0047】
本実施形態の作業機械の制御装置150は、前述のように、作業を行うための作業装置130と、その作業装置130の姿勢を検知するための姿勢センサ160と、周囲の物体を認識するための外界センサ170と、操作者に情報を報知するための報知装置190と、を備える作業機械100を制御するための装置である。制御装置150は、処理装置151を備えている。処理装置151は、姿勢センサ160の出力に基づく作業装置130の姿勢と、外界センサ170によって認識された物体の高さHoとを用いて、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係を演算して報知装置190に出力する。
【0048】
この構成により、作業機械100の操作者は、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと、作業機械100の周囲の物体、たとえばダンプトラックなどの他の作業機械200との高さ関係を、報知装置190による情報の報知によって認識することができる。すなわち、作業機械100の操作者は、作業装置130の特定部位a,bを予測軌道Ta,Tbに沿って移動させたときに、その特定部位a,bと、作業機械100の周囲の物体とが、高さ方向すなわち鉛直方向に干渉するか否かを、報知装置190によって認識することができる。
【0049】
これにより、作業装置130によって土砂、砕石、鉱物資源等などを他の作業機械200に積載する場合など、作業装置130を作業機械100の周囲の物体の上方に移動させる場合に、操作者は、作業装置130の目視に頼ることなく、報知装置190の報知により接触の危険を回避することができる。したがって、本実施形態によれば、従来よりも作業機械100の操作者の負担を軽減することが可能な作業機械の制御装置150を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、作業装置130の先端部の下端を特定部位aに設定する。
【0051】
この構成により、作業装置130を作業機械100の周囲の物体の上方に移動させる場合に、周囲の物体との接触の危険性が高い作業装置130の先端部の下端、たとえばバケット133の下端を、特定部位aに設定することができる。これにより、作業機械100の操作者は、作業機械100の高さ方向すなわち鉛直方向において、作業装置130の先端部と作業機械100の周囲の物体との接触の危険の有無を認識し、より確実にその危険を回避することが可能になる。
【0052】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150の制御対象である作業機械100は、作業装置130を旋回させる旋回機構140を備えている。また、処理装置151は、作業装置130の旋回軸Aからの距離が最大となる部位を特定部位bに設定する。
【0053】
この構成により、作業装置130を旋回させて作業機械100の周囲の物体の上方に移動させる場合に、周囲の物体との接触の危険性が高い旋回の最外周に位置する部位を、作業装置130の特定部位bに設定することができる。これにより、作業機械100の操作者は、作業機械100の高さ方向すなわち鉛直方向において、作業装置130の先端部と作業機械100の周囲の物体との接触の危険の有無を認識し、より確実にその危険を回避することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150の制御対象である作業機械100において、外界センサ170は撮像装置を含み、報知装置190は表示装置を含む。また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、画像情報を生成して報知装置190を構成する表示装置に出力する。この画像情報は、外界センサ170を構成する撮像装置から取得した物体の画像と、制御装置150によって演算した予測軌道Ta,Tbと、その予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係とを、報知装置190を構成する表示装置に表示させるためのものである。
【0055】
この構成により、作業機械100の操作者は、たとえば
図5に示すように、報知装置190の表示装置に表示された画像Gにより、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと作業機械100の周囲の物体との高さ関係を視認することができる。これにより、作業機械100の操作者は、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと、作業機械100の周囲の物体との、高さ方向における干渉の有無を画像Gにより視認することができる。したがって、作業機械100の操作者は、作業機械100の高さ方向すなわち鉛直方向における作業装置130の先端部と作業機械100の周囲の物体との接触の危険の有無を画像Gに基づいて視覚的に認識し、より確実にその危険を回避することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、外界センサ170を構成する撮像装置から取得した物体の画像を俯瞰画像として表示させる画像情報を生成する。
【0057】
この構成により、作業機械100の操作者は、たとえば
図5に示すように、報知装置190の表示装置に表示された作業機械100の周囲の俯瞰画像を含む画像Gにより、より直感的に作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと作業機械100の周囲の物体との高さ関係を認識することができる。したがって、作業機械100の操作者は、作業機械100の高さ方向における作業装置130の先端部と作業機械100の周囲の物体との接触の危険の有無をより容易に認識することができ、より確実にその危険を回避することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、予測軌道Ta,Tbを、その予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係に基づいて決定された色彩の線で表示させる画像情報を生成する。
【0059】
この構成により、作業機械100の操作者は、たとえば
図5に示すように、報知装置190の表示装置に表示された作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbの色彩に基づいて、予測軌道Ta,Tbと周囲の物体との高さ関係を視覚的かつ直感的に認識することが可能になる。より具体的には、たとえば前述のように、予測軌道Ta,Tbの高さが、ダンプトラックなどの他の作業機械200を含む周囲の物体の高さHo以下である場合に予測軌道Ta,Tbが赤色で表示され、周囲の物体の高さHoより高い場合に予測軌道Ta,Tbが青色で表示される。そのため、作業機械100の操作者は、たとえば予測軌道Ta,Tbが赤色である場合に、その予測軌道Ta,Tbが青色になるように作業装置130を操作することで、作業装置130の先端部と周囲の物体との接触の危険を回避することができ、負担が軽減される。
【0060】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150の制御対象である作業機械100において、報知装置190は、音声出力装置を含む。また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係が変更されたときに報知装置190を構成する音声出力装置に対して音を発生させる音声出力指令を出力する。
【0061】
この構成により、作業機械100の操作者は、聴覚により予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係が変更されたことを認識することができる。たとえば、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbの高さが、ダンプトラックなどの他の作業機械200を含む周囲の物体の高さHo以下である状態から、作業機械100の操作者の操作によって周囲の物体の高さHoより高くなったとする。このとき、処理装置151が報知装置190を構成する音声出力装置に対して音を発生させる音声出力指令を出力することで、音声出力装置から音が発せられる。これにより、操作者は、作業装置130の先端部と周囲の物体との接触の危険が回避されたことを、音により認識することができる。
【0062】
また、作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbの高さが、周囲の物体の高さHoより高い状態から、作業機械100の操作者の操作によって周囲の物体の高さHo以下になったとする。このとき、処理装置151が報知装置190を構成する音声出力装置に対して音を発生させる音声出力指令を出力することで、音声出力装置から音が発せられる。これにより、操作者は、作業装置130の先端部と周囲の物体との接触の危険が生じたことを、音により認識することができる。したがって、作業機械100の操作者は、音声出力装置からの音に基づいて作業装置130を操作することで、作業装置130の先端部と周囲の物体との接触の危険を回避することができ、負担が軽減される。
【0063】
また、本実施形態の作業機械の制御装置150の制御対象である作業機械100は、制御装置150に対して情報を入力するための入力装置180を備えている。また、本実施形態の作業機械の制御装置150において、処理装置151は、報知装置190によって入力された物体の高さに基づいて予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係を演算する。
【0064】
この構成により、たとえば外界センサ170によって作業機械100の周囲の物体の高さHoが検出できない場合でも、作業機械100の操作者は外界センサ170によって認識された物体の高さHoを入力装置180によって制御装置150に入力することができる。これにより、外界センサ170によって作業機械100の周囲の物体の高さHoが検出できない場合でも、報知装置190によって入力された物体の高さHoに基づいて予測軌道Ta,Tbと物体との高さ関係を演算することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理装置151から報知装置190へ作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと周囲の物体との高さ関係の情報を出力し、その情報を報知装置190によって操作者に報知することができる。したがって、本実施形態によれば、操作者が作業装置130の特定部位a,bの予測軌道Ta,Tbと周囲の物体との高さ関係を認識して作業装置130の操作を行うことができ、従来よりも操作者の負担を軽減することが可能な作業機械の制御装置150を提供することができる。
【0066】
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械の制御装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。たとえば、本開示に係る作業機械の制御装置の制御対象は、前述の油圧ショベルに限定されず、たとえば、ホイールローダーやクレーンなどの他の作業機械を含む。
【符号の説明】
【0067】
100 作業機械、130 作業装置、140 旋回機構、150 制御装置、151 処理装置、160 姿勢センサ、170 外界センサ(撮像装置)、180 入力装置、190 報知装置(表示装置、音声出力装置)、A 旋回軸、a 特定部位、b 特定部位、Ho 物体の高さ、Ta 予測軌道、Tb 予測軌道