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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019215031
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021087302
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-07-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川高 伸人
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 裕司
(72)【発明者】
【氏名】守屋 真治
(72)【発明者】
【氏名】平松 正伸
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝
(72)【発明者】
【氏名】碓井 悠太
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158244(JP,A)
【文献】特開2019-103299(JP,A)
【文献】特開平5-199747(JP,A)
【文献】特開2004-274888(JP,A)
【文献】特開2006-120910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置において、
外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、
前記発光素子制御部は、
前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、
前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、装置内部の動作に関する電源動作情報を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記発光素子制御部は、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子から出力される前記光デジタル信号の内容を人間が目視で認識できるように、前記第一の発光素子を点滅させる請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置において、
外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、
さらに、外部から視認可能に設置され、前記発光素子制御部によって駆動される第二の発光素子が設けられ、
前記発光素子制御部は、
前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、
前記出力電圧が正常な時、前記第二の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、装置内部の動作に関する電源動作情報を光デジタル信号に変換し、前記第二の発光素子から出力させることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記発光素子制御部は、前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を消灯させ、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、前記光デジタル信号を出力させる請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置において、
外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、
さらに、外部から視認可能に設置され、前記発光素子制御部によって駆動される第二の発光素子が設けられ、
前記発光素子制御部は、
前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、
前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を消灯させ、前記第二の発光素子を静的に点灯させることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
前記第二の発光素子は、前記第一の発光素子と発光色が異なる請求項3乃至5のいずれか記載の電源装置。
【請求項7】
前記特定電源動作情報には、少なくとも、前記入力電圧の状態を知得し又は推定するための入力電圧関連情報と、前記電力変換回路が出力する出力電流の状態を知得し又は推定するための出力電流関連情報とが含まれる請求項1,3又は5記載の電源装置。
【請求項8】
前記電力変換回路は、前記入力電圧を中間電圧に変換する第一変換部と、前記中間電圧を前記出力電圧に変換する第二変換部とを備え、
前記特定電源動作情報には、少なくとも、前記入力電圧の状態を知得し又は推定するための入力電圧関連情報と、前記中間電圧の状態を知得し又は推定するための中間電圧関連情報と、前記第二変換部が出力する出力電流の状態を知得し又は推定するための出力電流関連情報とが含まれる請求項1,3又は5記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧を所定の出力電圧に変換して出力する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置が組み込まれたユーザシステムが稼働している時、電源装置の出力電圧Voに異常が発生してユーザシステムに不具合が発生すると、システム管理者は、異常の原因を調査して早急に復旧させなければならない。そのため、システム管理者やメンテナンス担当者は、電源装置がどんな状況で異常動作をしているのか(Vo異常の状況)を的確に把握するとともに、このような状況になった原因(Vo異常の原因)を特定する必要がある。
【0003】
Vo異常の状況や原因には様々なケースが考えられる。例えば、電源装置に過大な負荷が加わって保護回路が働いて出力電圧Voがダウンしたケース、電源装置の入力ラインに雷サージが侵入し、入力ヒューズが切れて出力電圧Voがダウンしたケース、電源装置の入力ライン又は出力ラインに想定以上の大きいノイズが侵入し、電源装置が誤動作して出力電圧Voが不安定になったケース、電源装置の内部部品が偶発的に故障して出力電圧Voがダウンしたケース等が挙げられ、その他にも多種多様なケースが考えられる。
【0004】
Vo異常は、電源装置を取り外して単体で調査しても再現しないケースが少なくない。したがって、Vo異常の状況や原因を的確に特定するためには、初期調査を、Vo異常が発生した状態で、すなわち電源装置がユーザシステムに組み込まれた状態で行うことが好ましい。
【0005】
電源装置の内部回路の調査を行う場合、通常は、オシロスコープ等の測定器を内部回路に接続し、各部の電圧値や電流値、動作波形をモニタする。しかし、電源装置は、感電防止等の安全性の観点から、内部回路が金属製又は樹脂製の筐体で覆われていたり、ユーザシステムの筐体の中に設置されたりすることが多いので、筐体を取り外さなければオシロスコープ等を接続することは難しい。また、オシロスコープ等を接続すると、ノイズが伝わる環境が変化してしまう可能性があるので、内部回路の調査は、できれば電源装置及びユーザシステムに対して非接触で行うことが好ましい。
【0006】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、出力電圧が正常な値に制御されている時のみ点灯する出力電圧表示用発光素子と、入力電圧が正常に供給されている時のみ点灯する入力電圧表示用発光素子とを備えたスイッチング電源装置があった。このスイッチング電源装置は、電源装置がユーザシステムに組み込まれた状態で、2つの発光素子が点灯しているか消灯しているかを目視することによって、Vo異常の状況又は原因が過電流(過負荷)によるものか、入力電圧消失(電源電圧消失)によるものかを判定することができる。
【0007】
また、特許文献2に開示されているように、入力端に供給される入力電圧と出力端に発生する出力電圧とを表示する表示手段を備え、その表示手段は、入力電圧及び出力電圧の複数の電圧状態を、複数のLEDからなる表示インディケータにより表示する電源装置があった。この電源装置は、電源装置がユーザシステムに組み込まれた状態で、表示インディケータを目視することによって、入力電圧及び出力電圧の概略の値を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-199747号公報
【文献】特開2005-151674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の電源装置は、2つの発光素子が点灯と消灯とに切り替わるだけなので、合計4種類の情報しか出力することができない。また、特許文献1,2の電源装置は、入力電圧や出力電圧に関連した情報しか表示できないが、Vo異常の原因は入力電圧や出力電圧以外の情報がないと特定できないケースが少なくないので、もっと多くの情報が取得できることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、出力電圧が異常になった時、システム管理者等が、その原因を特定するのに有効な情報を容易に取得できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置であって、外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、前記発光素子制御部は、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、装置内部の動作に関する電源動作情報を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させる電源装置である。
【0012】
前記発光素子制御部は、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子から出力される前記光デジタル信号の内容を人間が目視で認識できるように、前記第一の発光素子を点滅させる。
【0013】
また、本発明は、入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置であって、外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、さらに、外部から視認可能に設置され、前記発光素子制御部によって駆動される第二の発光素子が設けられ、前記発光素子制御部は、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を消灯させ、前記第二の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、装置内部の動作に関する電源動作情報を光デジタル信号に変換し、前記第二の発光素子から出力させる電源装置である。
【0014】
この場合、前記発光素子制御部は、前記出力電圧が正常な時、前記第一の発光素子を消灯させ、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって、前記光デジタル信号を出力させる構成にすることが好ましい。また、前記第二の発光素子は、前記第一の発光素子と発光色が異なるようにすることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、入力電圧を出力電圧に変換する電力変換回路を備えた電源装置であって、外部から視認可能に設置された第一の発光素子と、前記第一の発光素子を駆動する発光素子制御部とが設けられ、さらに、外部から視認可能に設置され、前記発光素子制御部によって駆動される第二の発光素子が設けられ、前記発光素子制御部は、前記出力電圧が異常な時、前記第一の発光素子を点滅させることによって、前記出力電圧が異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報、又は前記特定電源動作情報に基づいて推定される原因情報、又はその両方を光デジタル信号に変換し、前記第一の発光素子から出力させ、前記出力電圧が正常な時、前記第二の発光素子を静的に点灯させる電源装置である。
【0016】
前記特定電源動作情報には、少なくとも、前記入力電圧の状態を知得し又は推定するための入力電圧関連情報と、前記電力変換回路が出力する出力電流の状態を知得し又は推定するための出力電流関連情報とが含まれる構成にすることが好ましい。また、前記電力変換回路は、前記入力電圧を中間電圧に変換する第一変換部と、前記中間電圧を前記出力電圧に変換する第二変換部とを備え、前記特定電源動作情報には、少なくとも、前記入力電圧の状態を知得し又は推定するための入力電圧関連情報と、前記中間電圧の状態を知得し又は推定するための中間電圧関連情報と、前記第二変換部が出力する出力電流の状態を知得し又は推定するための出力電流関連情報とが含まれる構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電源装置によれば、出力電圧が異常になった時、システム管理者等が、その状況や原因を特定するための特定電源動作情報や原因情報を容易に取得することができる。しかも、Vo異常の状況や原因の調査は、電源装置をユーザシステムに組み込んだ状態で非接触で行うことが好ましいところ、本発明の電源装置によれば、ワイヤレスで送信可能な光デジタル信号を媒体として多くの情報を取得できるので、Vo異常の状況や原因を効率よく的確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の電源装置の第一の実施形態を示す図であって、装置の外観を示す斜視図(a)、内部構成を示す回路ブロック図(b)である。
図2図1(b)の発光素子制御部の動作を示す図表(a)、第一の発光素子の点滅動作の例を示すタイムチャート(b)である。
図3】特定電源動作情報及び原因情報の例を示す図表である。
図4図1(b)の発光素子制御部の内部構成の例を示す回路ブロック図である。
図5図1(b)の発光素子制御部の内部構成の他の例を示す回路ブロック図である。
図6】本発明の電源装置の第二の実施形態を示す図であって、装置の外観を示す斜視図(a)、内部構成を示す回路ブロック図(b)である。
図7図6(b)の発光素子制御部の動作を示す図表(a)、第一の発光素子の点滅動作の例を示すタイムチャート(b)である。
図8】電源装置の一形態を示す図であって、装置の外観を示す斜視図(a)、内部構成を示す回路ブロック図(b)である。
図9図8(b)の通信部の内部構成の例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電源装置の第一の実施形態について、図1図5に基づいて説明する。この実施形態の電源装置10は、図1(a)に示すように、略直方体の外形を有し、6面が筐体12で覆われている。筐体12の一側面であるフロントパネル12aには、電源装置10をユーザシステムの入力電源14に配線するための入力側端子台16と、電源装置10をユーザシステムの負荷18に配線するための出力側端子台20とが設けられ、さらに、外部から視認可能な第一及び第二の発光素子22,24が設けられている。
【0020】
電源装置10は、図1(b)の回路ブロック図に示すように、入力電源14から供給された入力電圧Viを出力電圧Voに変換し、負荷18に対して出力電圧Vo及び出力電流Ioを供給するスイッチングコンバータ等である電力変換回路25と、上記の第一及び第二の発光素子22,24と、第一及び第二の発光素子22,24を駆動する発光素子制御部26と、電力変換回路25と入力側端子台16との間に挿入された保護用の入力ヒューズ28とを備えている。発光素子制御部26は、例えばデジタルプロセッサ等の内部に構成される。
【0021】
発光素子制御部26は、図2(a)に示すように、出力電圧Voが正常な時、第一の発光素子22を消灯させ、第二の発光素子24を静的に点灯させる。そして、出力電圧Voが異常な時、第一の発光素子22を点滅させることによって、後述する特定電源動作情報TDJ又は原因情報GJ又はその両方を光デジタル信号に変換し、第一の発光素子22から出力させ、第二の発光素子24を消灯させる。
【0022】
特定電源動作情報TDJは、装置内部の動作に関する電源動作情報であって、出力電圧Voが異常な原因を推定するために使用される特定の情報である。どんな電源動作情報を特定電源動作情報TDJに設定するかは自由であるが、少なくとも、入力電圧Viの状態を知得し又は推定するための入力電圧関連情報(例えば、入力ヒューズ28の後段の電圧値、この後段電圧を抵抗分圧した箇所の電圧値等)と、出力電流Ioの状態を知得し又は推定するための出力電流関連情報(例えば、出力電流Ioが流れる経路に挿入された電流検出抵抗の電圧値、出力電流Ioに比例したスイッチング電流が流れる経路に挿入された電流検出抵抗の電圧値等)とが含まれることが好ましい。
【0023】
原因情報GJは、上記の特定電源動作情報TDJに基づいて推定されたVo異常の原因の情報である。例えば、図3に示すように、類型1では、「Vi=正常」という入力電圧関連情報と「Io=過大」という出力電流関連情報とに基づいて、「過電流保護回路が動作して出力電圧Voが低下している。」という原因情報GJが推定されている。また、類型2では、「Vi=ゼロ」という入力電圧関連情報と「Io=ゼロ」という出力電流関連情報とに基づいて、「入力ラインに過大電流が流れて入力ヒューズ28が断となり、電力変換回路25が動作を停止している。」という原因情報GJが推定されている。また、類型3では、「Vi=正常」という入力電圧関連情報と「Io=ゼロ」という出力電流関連情報とに基づいて、「過電圧保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」と「過熱保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」という2つの原因情報GJが推定されている。このように、特定電源動作情報TDJの中に入力電圧関連情報と出力電流関連情報とが含まれていると、Vo異常の原因をある程度の確度で絞り込むことができる。
【0024】
より高い確度でVo異常の原因を推定したい場合は、特定電源動作情報TDJの種類を多くすればよい。例えば、類型3は、入力電圧関連情報と出力電流関連情報だけを基にしているので、原因情報GJが1つに絞り込めていないが、図3の下段に記載した類型Aのように、さらに部品温度関連情報(スイッチング素子や電力トランス等の温度上昇、内部回路の消費電力等)を加えると、原因情報GJを1つの絞り込むことができる。類型Aでは、「Vi=正常」という入力電圧関連情報と、「Io=ゼロ」という出力電流関連情報と、「入力電源14の投入後、スイッチング素子の温度が危険な値まで上昇した。」という部品温度関連情報とに基づいて、「過熱保護回路が動作して、電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」という1つの原因情報GJに絞り込まれている。
【0025】
このように、特定電源動作情報TDJの種類を多くすればVo異常の原因を絞り込みやすくなる。ただ、特定電源動作情報TDJの種類を多くすると、その分だけ電圧検出回路や電流検出回路等を多く設けなければならないので注意が必要である。
【0026】
第一の発光素子22から出力される光デジタル信号のフォーマットは自由であり、例えば、汎用的なシリアル通信の方式であるUART方式やI2C方式等のフォーマットを使用することができる。そして、専用の外部機器30(各方式に対応した受信部30aを備えた点検用装置等)を用意することによって、その光デジタル信号を読み取ることができる。この場合、図2(b)のタイプ1のように、所定の短い期間に光デジタル信号を出力させた後、しばらく静的に点灯させ、その後、再び光デジタル信号を出力させるようにするとよい。このようにすれば、システム管理者等は、第一の発光素子22が静的に点灯しているように見えるので、Vo異常が発生していることを明確に認識することができる。
【0027】
あるいは、図2(b)のタイプ2のように、独自フォーマットの光デジタル信号を使用し、光デジタル信号の内容を人間が目視で認識できるように、第一の発光素子22をゆっくり点滅させるようにしてもよい。このようにすれば、システム管理者等は、専用の外部機器30を用意しなくても、光デジタル信号を読み取ることができる。
【0028】
なお、電源装置10の場合、第二の発光素子24は出力電圧Voが正常な時に発光し、第一の発光素子22は出力電圧Voが異常な時に発光することになるので、システム管理者等が正常か異常かを一目で判定できるように、2つの発光素子22,24の発光色を互いに異なる色にすることが好ましい。例えば、第二の発光素子24の発光色は、システム管理者等に安心感を与える色(緑色や青色)とし、第一の発光素子22の発光色は、システム管理者等の注意を喚起する色(赤色や橙色)にする方法が考えられる。
【0029】
発光素子制御部26の内部は、例えば図4図5に示すような構成にすることができる。図4に示す発光素子制御部26(1)は、出力電圧Voを監視して正常か異常かを判定するVo監視部32と、Vo監視部32が異常と判定した時に特定電源動作情報TDJを取得して出力する特定電源動作情報出力部34と、特定電源動作情報TDJに基づいて原因情報GJを作成して出力する原因情報出力部36とを備えている。さらに、Vo監視部32の判定結果に基づいて第二の発光素子24の点灯及び消灯を制御する点灯消灯制御部38(1)と、特定電源動作情報TDJ又は原因情報GJ又はその両方を受けて第一の発光素子22の点滅動作を制御する点滅制御部40(1)と、点灯消灯制御部38(1)及び点滅制御部40(1)から出力された制御信号を受けて2つの発光素子22,24を駆動する発光素子駆動部42(1)とを備えている。
【0030】
発光素子制御部26(1)は、汎用のデジタルプロセッサ等を用いて容易に構成することができ、特に、Vo異常の時、図2(b)のタイプ2のような光デジタル信号を出力させるのに好適である。
【0031】
また、図5に示す発光素子制御部26(2)は、発光素子制御部26(1)が有する点灯消灯制御部38(1)、点滅制御部40(1)及び発光素子駆動部42(1)を、点灯消灯制御部38(2)、点滅制御部40(2)及び発光素子駆動部42(2)に置き換えたものである。特徴的なのは、汎用のデジタルプロセッサ等に標準搭載されているシリアル通信用の通信モジュール(ここでは、UART通信モジュール44)を利用しているという点である。
【0032】
UART通信モジュール44は、電源装置10がユーザシステムに組み込まれた状態で、ユーザのシステム制御装置46との間で双方向の通信を行うために使用され、電源装置10は、UART通信モジュール44を通じてシステム制御装置46からの指令を受信し、出力電圧Voをオン又はオフさせたり、出力電圧Voの設定値を変更したりする。そして、Vo異常が発生した時、UART通信モジュール44が点滅制御部40(2)の一部として動作する。
【0033】
発光素子駆動部42(2)は、ANDゲート48と駆動回路50とを備えており、UART通信モジュール44は、特定電源動作情報TDJ又は原因情報GJ又はその両方を受けると、第一の発光素子22の点滅動作を規定するデジタル信号を生成し、ANDゲート48の一方の入力に向けて出力する。
【0034】
点灯消灯制御部38(2)は、Vo監視部32の判定結果に基づいて第二の発光素子24の点灯及び消灯を制御する信号を生成し、駆動回路50に向けて出力する。さらに、ANDゲート48の他方の入力に向けて、Vo監視部32の判定結果が正常の時に「0」、異常の時に「1」を出力する。
【0035】
ANDゲート48は、Vo監視部32の判定結果が正常の時、駆動回路50に向けて第一の発光素子24の消灯させる信号「0」を出力し、判定結果が異常の時、駆動回路50に向けて第一の発光素子22の点滅動作を制御する信号(UART通信モジュール44が出力したデジタル信号と同じ信号)を出力する。そして、駆動回路50は、点灯消灯制御部38(2)から出力された制御信号を受けて第二の発光素子24を駆動し、ANDゲート48から出力された制御信号を受けて第一の発光素子22を駆動する。
【0036】
発光素子制御部26(2)は、汎用的なデジタルプロセッサ等を用いて容易に構成することができ、特に、Vo異常の時、図2(b)のタイプ1のような光デジタル信号を出力させるのに好適である。また、デジタルプロセッサに標準搭載されたUART通信モジュールを有効利用しているので、デジタルプロセッサ内に専用の点滅制御部を設ける必要がないという利点がある。なお、図5では、UART通信モジュール44がユーザのシステム制御装置46との間で通信を行う構成を示したが、発光素子制御部26(2)は、このような通信機能を備えていない電源装置に適用してもよい。
【0037】
電源装置10によれば、出力電圧Voが異常になった時、システム管理者等が、その原因を特定するための特定電源動作情報TDJや原因情報GJを容易に取得することができる。しかも、Vo異常の状況や原因の調査は、電源装置をユーザシステムに組み込んだ状態で非接触で行うことが好ましいところ、電源装置10によれば、ワイヤレスで送信可能な光デジタル信号を媒体として多くの情報(特定電源動作情報TDJや原因情報GJ)を取得できるので、Vo異常の状況や原因を効率よく的確に特定することができる。
【0038】
なお、発光素子制御部26は、図2(a)に示すように、出力電圧Voが正常な時、第二の発光素子24を静的に点灯させているが、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって適宜の電源動作情報DJを光デジタル信号に変換し、第二の発光素子24から出力させるようにしてもよい。電源動作情報DJとは、出力電圧Voが正常な時の装置内部の動作に関する情報のことであり、出力電圧Voが異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報TDJとは少し性格が異なるものである。出力電圧Voが正常な時に電源動作情報DJが出力される構成にすれば、システム管理者等は、電源装置10が正常に動作していることを数値データで確認したり、異常が発生しそうな兆候を事前に察知したりすることができる。
【0039】
次に、本発明の電源装置の第二の実施形態について、図6図7に基づいて説明する。ここで、上記の電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の電源装置52は、図6(a)に示すように、略直方体の外形を有し、6面が筐体12で覆われている。そして、筐体12の一側面であるフロントパネル12aに、外部から視認可能な第一の発光素子54が設けられている。
【0040】
電源装置52は、図6(b)の回路ブロック図に示すように、電源装置10と同様の電力変換回路25及びヒューズ28を備え、さらに、上記の第一の発光素子54と、第一の発光素子54を駆動する発光素子制御部56とを備えている。発光素子制御部56は、例えばデジタルプロセッサ等の内部に構成される。
【0041】
発光素子制御部56は、図7(a)に示すように、出力電圧Voが正常な時、第一の発光素子54を静的に点灯させる。そして、出力電圧Voが異常な時、第一の発光素子54を点滅させることによって、上述した特定電源動作情報TDJ又は原因情報GJ又はその両方を光デジタル信号に変換し、第一の発光素子54から出力させる。
【0042】
第一の発光素子54から出力される光デジタル信号のフォーマットは自由であり、例えば、汎用的なシリアル通信の方式であるUART方式やI2C方式のフォーマットを使用することができる。そして、上記の外部機器30を用意することによって、光デジタル信号を読み取ることができる。この場合、図7(b)のタイプ1のように、所定の短い期間に光デジタル信号を出力させた後、しばらく消灯させ、その後、再び光デジタル信号を出力させるようにするとよい。このようにすれば、システム管理者等は、出力電圧Voが異常な時、第一の発光素子54が静的に消灯しているように見えるので、出力電圧Voが正常な時の発光状態(静的に点灯している状態)と容易に区別することができ、Vo異常が発生していることを明確に認識することができる。
【0043】
あるいは、図7(b)のタイプ2のように、独自フォーマットの光デジタル信号を使用し、光デジタル信号の内容を人間が認識できるように、第一の発光素子54をゆっくり点滅させてもよい。このようにすれば、システム管理者等は、専用の外部機器30を用意しなくても、光デジタル信号を読み取ることができる。
【0044】
発光素子制御部56の動作は、例えば図4図5に示す構成と同様の構成で実現することができる。そして、この実施形態の電源装置52においても、電源装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
なお、発光素子制御部56は、図7(a)に示すように、出力電圧Voが正常な時、第一の発光素子54を静的に点灯させているが、人間が見た時に静的に点灯していると認識されるように点滅させることによって適宜の電源動作情報DJを光デジタル信号に変換し、第一の発光素子54から出力させるようにしてもよい。電源動作情報DJは、上記のように、出力電圧Voが正常な時の装置内部の動作に関する情報のことである。出力電圧Voが正常な時に電源動作情報DJが出力される構成にすれば、システム管理者等は、電源装置52が正常に動作していることを数値データで確認したり、異常が発生しそうな兆候を事前に察知したりすることができる。
【0046】
次に、電源装置の一形態について、図8図9に基づいて説明する。ここで、上記の電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この形態の電源装置58は、図8(a)に示すように、略直方体の外形を有し、6面が筐体12で覆われている。そして、筐体12の一側面であるフロントパネル12aに、外部から視認可能な発光素子60、受光素子62及び補助発光素子64が設けられている。
【0047】
電源装置58は、図8(b)の回路ブロック図に示すように、電源装置10と同様の電力変換回路25及びヒューズ28を備え、さらに、上記の発光素子60及び受光素子62を有した通信部66と、上記の補助発光素子64と、補助発光素子64を駆動する補助発光素子制御部68とを備えている。通信部66(発光素子60及び受光素子62を除く)及び補助発光素子制御部68は、例えばデジタルプロセッサ等の内部に構成される。
【0048】
通信部66は、出力電圧Voが異常な時、出力電圧Voが異常な原因を推定するために使用される特定電源動作情報TDJ、又は特定電源動作情報TDJに基づいて推定された原因情報GJ、又はその両方を光デジタル信号に変換し、発光素子60から外部機器70に向けて送信する機能を備えている。さらに、受光素子62を通じて外部機器70から指令を受信すると、その指令に対応した特定電源動作情報TDJを光デジタル信号に変換し、発光素子60から外部機器70に向けて送信する機能を備えている。
【0049】
外部機器70は、システム管理者等が操作する点検用装置等であり、UART方式に対応した通信部72を備えている。通信部72は、光デジタル信号を受信するための受光素子76と、光デジタル信号を送信するための発光素子74とが設けられ、電源装置58の通信部66との間で双方向通信を行うことができる。
【0050】
通信部66の内部は、例えば図9に示すような構成にすることができる。図9に示す通信部66は、上記と同様のVo監視部32、特定電源動作情報出力部34及び原因情報出力部36とを備えている。さらに、特定電源動作情報TDJや原因情報GJを受けると、発光素子60の点滅動作を規定するデジタル信号を生成するUART通信モジョール44と、UART通信モジュール44が生成したデジタル信号に基づいて発光素子60を駆動する発光素子駆動部78とを備えている。さらに、外部機器70から送信された光デジタル信号を受光素子62を通じて受信し、電気信号に変換してUART通信モジュール44に出力する受信部80を備えている。上述した通信部66の2つの機能は、これらの各ブロックが協働することによって実現される。
【0051】
補助発光素子制御部68は、点灯消灯制御部82及び駆動部84とを備え、Vo監視部32の判定結果に基づいて補助発光素子64の点灯及び消灯を制御する。具体的には、Vo監視部32の判定結果が正常の時に補助発光素子64を静的に点灯させ、判定結果が異常の時に消灯させる。なお、補助発光素子64及び補助発光素子制御部68は、必要なければ省略してもよい。
【0052】
次に、電源装置58の使用方法の一例を紹介する。ここで、電源装置58の通信部66は、Vo異常が発生した時に、絞り込んだ原因情報GJと、その根拠とした特定電源動作情報TDJだけを外部機器70に送信するようプログラムされているとする。例えば、図3の類型3に該当するVo異常が発生した場合、「Vi=正常」という入力電圧関連情報と、「Io=ゼロ」という出力電流関連情報と、「過電圧保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」及び「過熱保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」という2つの原因情報GJとを送信する。
【0053】
ユーザシステムが稼働している時、実際に類型3に該当するVo異常が発生すると、補助発光素子64が消灯し、発光素子60が点滅して光デジタル信号(類型3の特定電源動作情報TDJ及び原因情報GJ)が出力される。
【0054】
システム管理者等は、補助発光素子64が消灯したのを見て、Vo異常が発生したことを認識し、外部機器70を使用して、発光素子60から出力される光デジタル信号を読み取り、Vo異常が類型3に該当することを知得する。
【0055】
システム管理者等は、できれば2つの原因情報GJを1つに絞り込みたいので、外部機器70を操作して、例えば、「その他の特定電源動作情報TDJの中の部品温度関連情報を追加で送信せよ。」という内容の光デジタル信号を通信部66に向けて送信する。
【0056】
システム管理担当者等は、追加で送信された部品温度関連情報が、「格別に温度上昇した部品はない」という内容であれば、Vo異常の原因を「過電圧保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」に絞ることができる。反対に、「スイッチング素子の温度が危険な温度まで上昇した」という内容であれば、Vo異常の原因を「過熱保護回路が動作して電力変換回路25のスイッチング動作がラッチ停止している。」に絞ることができる。
【0057】
このように、電源装置58によれば、システム管理者等と電源装置58との間で上記のようなやり取りを行うことによって、Vo異常の原因を、システム管理者等の知見を活かして効率よく的確に絞り込むことが可能になる。
【0058】
なお、本発明の電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、発光素子制御部は、図4図5に示す発光素子制御部26(1),26(2)の構成に限定されず、本発明の目的とする動作が可能であれば、発光素子制御部26(1),26(2)とは異なる構成に変更することができる。図9に示す通信部66の構成についても同様である。
【0059】
図3に記載した特定電源動作情報TDJ及び原因情報GJの内容はあくまでも例であり、電力変換回路を含む内部回路の構成に応じて適宜設定されるものである。ただし、上記のように、特定電源動作情報TDJの中に、少なくとも、入力電圧関連情報及び出力電流関連情報を含めることが好ましい。また、電力変換回路が、入力電圧Viを中間電圧Vcに変換する第一変換部(例えば、力率改善用のAC-DCコンバータ)と中間電圧Vcを出力電圧Voに変換する第二変換部(例えば、DC-DCコンバータ)とで構成される場合は、さらに中間電圧関連情報を加えることによって、上記と同様の効果が得られる。
【0060】
さらに、特定電源動作情報TDJの中に、部品温度関連情報や、出力電圧関連情報(出力電圧Voの値、出力電圧Voに発生しているリップルの値等)や、スイッチング関連情報(スイッチング周波数の値、PWM変調用のランプ電圧の有無等)等を加えてもよく、これにより、Vo異常の原因をより厳密に推定することが可能になる。
【0061】
その他、各発光素子は、必ずしも筐体のフロントパネルに設置する必要はなく、外部から視認できる場所であればどこに設置してもよい。例えば、電源装置が、筐体を有しない基板単体電源の場合、各発光素子を、基板の2つの面(表面と裏面)のうちの、ユーザシステムに取り付けられた時に外部から視認できる方の面に搭載すればよい。
【符号の説明】
【0062】
10,52,58 電源装置
22,54 第一の発光素子
24 第二の発光素子
26,26(1),26(2),56 発光素子制御部
30,70 外部機器
60 発光素子
62 受光素子
66 通信部
TDJ 特定電源動作情報
GJ 原因情報
Io 出力電流
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9