(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】自動運転車のためのガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220922BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20220922BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20220922BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20220922BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20220922BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20220922BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20220922BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20220922BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20220922BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 L
C03C3/078
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
B32B7/02
B32B17/00
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2019502789
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2017067921
(87)【国際公開番号】W WO2018015312
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-16
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】フェデュロ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】アヨウブ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ボラン, フランソワ
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0199674(US,A1)
【文献】特表2016-513059(JP,A)
【文献】特表2016-514663(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170771(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/091106(WO,A1)
【文献】特開平08-059287(JP,A)
【文献】特表2013-535025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0017472(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0192677(US,A1)
【文献】特開2016-063416(JP,A)
【文献】特表2010-528968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
C03C 1/00 -14/00
B32B 7/02
B32B 17/00
B60J 1/00
G01S 17/93
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.750~1050nmの波長域において5m
-1未満の吸収係数を有し、かつ外部面および内部面を有する少なくとも1つのガラスシートと、
b.赤外線フィルターと
を含む自動車グレイジングであって、750~1050nmの波長域における赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、赤外線フィルター層がないゾーンにおいて前記ガラスシートの前記内部面上に配置される、自動車グレイジング。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガラスシートは、1m
-1未満の吸収係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車グレイジング。
【請求項3】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、前記グレイジングの内部面に光学的に連結されることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車グレイジング。
【請求項4】
少なくとも1つの熱可塑性中間層と一緒に積層された外部および内部ガラスシートを含む積層グレイジングであり、前記外部および内部ガラスシートは、5m
-1未満の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートであり、前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、面4上に配置されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項5】
前記内部ガラスシートは、赤外線透過の値よりも低い光透過の値を有することを特徴とする、請求
項4に記載の自動車グレイジング。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガラスシートは、少なくとも1つの赤外線透明着色および/または反射コーティングで被覆されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Fe
2O
3として表される) 0.002~0.06%
- Cr
2O
3 0.0001~0.06%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Fe
2O
3として表される) 0.002~0.06%
- Cr
2O
3 0.0015~1%
- Co 0.0001~1%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Fe
2O
3として表される) 0.02~1%
- Cr
2O
3 0.002~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Fe
2O
3として表される) 0.002~1%
- Cr
2O
3 0.001~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
- Se 0.0003~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項11】
前記少なくとも1つのガラスシートは、エクストラクリアガラスであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項12】
赤外線フィルター層の系は、それぞれの機能層が誘電体コーティングによって包囲されるように、赤外線放射を反射する材料のn個の機能層(ここで、n≧1である)と、n+1個の誘電体コーティングとを含む多層スタックであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項13】
前記赤外線フィルター層の系は、銀ベースであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項14】
前記赤外線フィルター層の系は、コーティングであり、脱コーティングゾーンであって、その上に赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが配置される脱コーティングゾーンが提供されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項15】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、走査、回転または固体状態LiDARをベースとし、かつ車両の周りの周囲環境を3Dマッピングすることを可能にするLIDAR系であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項16】
反射防止コーティングは、前記自動車グレイジングの表面上に提供されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項17】
ウインドシールドであることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ベースのリモートセンシングデバイス、特にLiDARセンサーを含むガラスに関する。特に、本発明は、自動運転車に集積化される新世代LiDARセンサーを含むガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、将来的に完全に使用される自動運転車を一層多く使用する傾向がある。例えば、ドライバーレスカ―、セルフドライビングカー、ロボットカーとも呼ばれる未来的な自動運転車は、その環境を感知することが可能であり、かつ人間の入力なしで操縦することが可能な車両である。
【0003】
自動運転車両は、レーダー、LiDAR(光検出および測距(Light Detection And Ranging)の頭字語)、GPS、走行距離計(Odometry)およびコンピュータビジョンを使用して周囲を検出する。先進的制御システムは、適切な操縦経路ならびに障害物および適切な標識を識別するためにセンサー情報を翻訳する。自動運転車は、道路上の種々の自動車を区別するためにセンサーデータを分析することが可能である制御システムを有し、これは、所望の目的地への経路を計画するために非常に有用である。
【0004】
今日、自動運転車は、自動車金属ボディ全体に沿って飛び出ている「マッシュルーム状」LiDARセンサーを含む。それらの「マッシュルーム」は、例えば、ルーフ上または自動車リアビュー中に配置される。美的でないことに加えて、それらは、外観上印象的であり、かつ外部センサーと互換性がない非常に滑らかで曲線的な未来の自動車のデザインを作成するカーデザイナーの予想と一致しない多くのスペースを取る。LiDARセンサーは、バンパー上に配置され得る。
【0005】
LiDARが集積化されたウインドシールドも周知である。しかしながら、被覆ガラス、特に被覆ウインドシールドは、自動車メーカーにより、例えば温熱快適性のためにより一層使用されているが、新世代のLiDARは、被覆ガラスまたは通常のガラスと不適合である。
【0006】
したがって、自動運転車のための「マッシュルーム」等の外観上印象的であり、かつ美的でないLiDARセンサーまたはバンパー上のLiDARの使用に代わるものが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスLiDARセンサーは、走査、回転または固体状態Lidarをベースとし、かつ車両の周りの周囲環境を3Dマッピングすることを可能にする新世代LIDARである。したがって、IRベースのセンサーは、自動車の周囲環境の正確なマッピングを作成することを可能にし、このマッピングを使用して、正確に自動運転車を運転し、障害物によるいずれの衝撃も防がれる。
【0008】
LiDAR(Lidar、LIDARまたはLADARとも記載される)は、レーザー光で標的を照射することによって距離を測定する技術である。それらは、特に走査、回転または固体状態Lidarである。走査または回転レーザーは、自動車の金属ボディ全体に沿って飛び出ているが、固体状態LiDARは、対象物に反射する光パルスを放出する。
【0009】
したがって、今日、自動運転車内部、特にウインドシールド上に設置されたLiDARなど、対象物検出および車両の周りの周囲環境を3Dマッピングすることが可能である赤外線(IR)ベースのリモートセンシングデバイス/センサーが必要とされている。IRベースのセンサーは、自動車の周囲環境の正確なマッピングを作成することを可能にし、このマッピングを使用して、正確に自動運転車を運転し、障害物によるいずれの衝撃も防がれる。
【0010】
したがって、Lidarが集積化されたガラスが可能な解決策であると考えられなかったため、従来技術からの解決策では、特にLiDAR新世代に関する必要条件に答えることができない。
【0011】
現在、IR信号が、十分な強度を有して車体または自動車のウインドシールドまたはバックライトなどのガラス部分を通過することを可能にする解決策はない。
【0012】
したがって、本発明は、高い検出範囲、最小のデザイン変更およびより高い安全性と組み合わせて、LiDAR新世代センサーが自動運転車内部に集積化され得る解決策を提案する。
【0013】
この解決策は、センサーが適切に作動するために十分なIR透過を示すウインドシールドまたは自動車グレイジング上でのLiDARセンサーの集積化によって可能である。
【0014】
単純さのために、以下の記載中のガラスシートのナンバリングは、グレイジングに関して慣習的に使用されるナンバリング命名法を参照する。したがって、車両外部の環境と接触するグレイジングの面は、側面1として知られており、内部媒質、すなわち乗客区画と接触する面は、面2と呼ばれる。積層グレイジングに関して、車両の外部環境と接触するガラスシートは、側面1として知られており、内部、すなわち乗客区画と接触する面は、面4と呼ばれる。
【0015】
疑義の回避のために、「外部」および「内部」という用語は、車両中でのグレイジングとしての設置中のグレイジングの方向を意味する。
【0016】
同じく、疑義の回避のために、本発明は、自動車、列車、飛行機などの全ての輸送手段のために適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明は、
a.750~1050nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有し、かつ外部面および内部面を有する少なくとも1つのガラスシートと、
b.赤外線フィルターと
を含む自動車グレイジングに関する。
【0018】
本発明によれば、750~1050nmの波長域における赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、赤外線フィルターがないゾーンにおいてガラスシートの内部面上に配置される。
【0019】
本発明によれば、ガラスシートは、750~1050nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する。赤外線域におけるガラスシートの低い吸収を数量化するために、本記載では、吸収係数は、750~1050nmの波長域で使用される。吸収係数は、吸光度と、所与の環境における電磁放射線によって横断された光路長さとの間の比率によって定義される。それは、m-1で表される。したがって、それは、材料の厚さに依存しないが、吸収した放射の波長および材料の化学的性質の関数である。
【0020】
ガラスの場合、選択された波長λにおける吸収係数(μ)は、材料(thick=厚さ)の透過率(T)および屈折率nの測定から算出することができる。n、ρおよびTは、選択された波長λの関数である。
【数1】
式中、ρ=(n-1)
2/(n+1)
2である。
【0021】
本発明によるガラスシートは、好ましくは、本発明に関連する光学技術において一般に使用される750~1050nmの波長域において、従来のガラス(そのような係数が30m-1程度である「透明ガラス」と呼ばれるもの)と比較して非常に低い吸収係数を有する。特に、本発明によるガラスシートは、750~1050nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する。
【0022】
好ましくは、ガラスシートは、3m-1未満、またはさらに2m-1未満、なおより好ましくは1m-1未満、またはさらに0.8m-1未満の吸収係数を有する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によると、ガラスシートは、750~950nmの波長域において吸収係数を有する。
【0024】
低い吸収は、最終IR透過が材料の光路によってそれほど影響されないという追加的な利点を提供する。それは、高い開口角を有する大視域(FOV)センサーに関して、特にセンサーがグレイジングに光学的に連結される場合、種々の角度において認知された強度(異なる領域においてイメージである)がより均一であるであろうことを意味する。
【0025】
したがって、自動運転車両が、道路建設または障害など、自動運転作動のために不適切な予想外の運転環境に遭遇するとき、本発明によるグレイジングを通して、車両センサーは、イメージ、レーダーおよびLiDARデータなどを含めて車両および予想外の運転環境についてのデータを取り込むことができる。取り込まれたデータは、リモートのオペレーターに送信され得る。リモートのオペレーターは、リモートで手作業により車両を運転するか、または種々の車両システムで実行されるコマンドを自動運転車両に発することができる。リモートのオペレーターに送信された取り込まれたデータは、取り込まれたデータの限定的な下位グループを送信することによってなど、バンド幅を浪費しないように最適化することができる。
【0026】
本発明によれば、ガラスシートは、特に750~1050nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する、種々の部類に属し得るガラスから製造される。したがって、ガラスは、ソーダライム-シリカ型ガラス、アルミノ-シリケート、ボロシリケート等であり得る。
【0027】
好ましくは、高レベルの近赤外線放射透過を有するガラスシートは、エクストラクリアガラス(extra-clear glass)である。
【0028】
好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの重量パーセントで表される全含有量:
SiO2 55~85%
Al2O3 0~30%
B2O3 0~20%
Na2O 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
K2O 0~20%
BaO 0~20%
を含む。
【0029】
より好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量において:
SiO2 55~78%
Al2O3 0~18%
B2O3 0~18%
Na2O 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0030】
より低い生産コストの理由のため、より好ましくは、本発明による少なくとも1つのガラスシートは、ソーダライムガラスから製造される。有利には、本実施形態によると、ベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
SiO2 60~75%
Al2O3 0~6%
B2O3 0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
Na2O 5~20%
K2O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0031】
そのベース組成物に加えて、ガラスは、性質および望ましい効果の量によって適合される他の成分を含み得る。
【0032】
その美しさまたはその色に弱い影響を及ぼすかまたは影響を及ぼさない、高い赤外線(IR)において非常に透明なガラスを得るために本発明において提案される解決策は、ガラス組成物において低い鉄の量および特定の含有量の範囲のクロムを組み合わせることである。
【0033】
したがって、第1の実施形態によれば、ガラスシートは、好ましくは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全Fe(Fe2O3として表される) 0.002~0.06%
Cr2O3 0.0001~0.06%
を含む組成を有する。
【0034】
そのような低濃度の鉄およびクロムを組み合わせたガラス組成物は、赤外線反射に関して特に良好な性能を示し、かつ可視において高い透明度を示し、また顕著な色を示さず、「エクストラクリア」と呼ばれるガラスに近い。これらの組成物は、国際出願の国際公開第2014128016A1号パンフレット、国際公開第2014180679A1号パンフレット、国際公開第2015011040A1号パンフレット、国際公開第2015011041A1号パンフレット、国際公開第2015011042A1号パンフレット、国際公開第2015011043A1号パンフレットおよび国際公開第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらは、参照により本出願に組み込まれる。この第1の特定の実施形態によれば、組成物は、好ましくは、ガラスの全重量に対して0.002重量%~0.06重量%の(Cr2O3として表される)クロム含有量を含む。そのようなクロムの含有量により、赤外線反射をさらに改善することが可能となる。
【0035】
第2の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全Fe(Fe2O3として表される) 0.002~0.06%
Cr2O3 0.0015~1%
Co 0.0001~1%
を含む組成を有する。
【0036】
そのようなクロムおよびコバルトベースのガラス組成物は、美しさ/色(青みがかった中性から強度の着色、さらに不透明まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13198454.4号明細書に記載されている。
【0037】
第3の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Fe2O3として表される) 0.02~1%
Cr2O3 0.002~0.5%
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有する。
【0038】
好ましくは、本実施形態によれば、組成物は、0.06%<全鉄≦1%を含む。
【0039】
クロムおよびコバルトをベースとするそのような組成物は、色および光透過に関して、市場に出ているブルーおよびグリーンガラスに匹敵するが、赤外線反射に関して特に良好な性能を有するブルー-グリーン範囲の着色ガラスシートを得るために使用される。そのような組成物は、参照により本出願に組み込まれる欧州特許出願公開第15172780.7号明細書に記載されている。
【0040】
第4の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~1%
Cr2O3 0.001~0.5%
Co 0.0001~0.5%
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有する。
【0041】
そのようなクロム、コバルトおよびセレンベースのガラス組成物は、美しさ/色(グレー中性からグレー-ブロンズ範囲のわずかな着色強度まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、欧州特許出願公開第15172779.9号明細書に記載されており、これは、参照により本出願に組み込まれる。
【0042】
第1の代替実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~0.06%
CeO2 0.001~1%
を含む組成を有する。
【0043】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13193345.9号明細書に記載されている。
【0044】
別の代替実施形態によれば、ガラスは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Fe2O3として表される) 0.002~0.06%、および
以下の成分の1種:
- 0.01~1重量%の範囲の量のマンガン(MnOとして算出される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のアンチモン(Sb2O3として表される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のヒ素(As2O3として表される)、または
- 0.0002~0.1重量%の範囲の量の銅(CuOとして表現される)
を含む組成を有する。
【0045】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第14167942.3号明細書に記載されている。
【0046】
本発明によれば、自動車グレイジングは、平面シートの形態であり得る。グレイジングは、曲線状であり得る。これは、通常、リアウインドウ、サイドウインドウもしくはルーフまたは特にウインドシールドのための自動車グレイジングの場合である。
【0047】
自動車用途において、赤外線における高い透過のガラスシートの存在は、車両が日光に曝露されるときに温熱快適性の維持に貢献しない。本発明の提案される手段は、高い選択性(TL/TE)、好ましくは1より高いまたは1.3より高い選択性を有するグレイジングを提供することである。したがって、エネルギー透過および温熱快適性の適切な条件下に維持するために、すでに明示された要素を別として、本発明によるグレイジングは、日光放射から選択的に赤外線をフィルターするための手段を含む。
【0048】
代わりに、本発明によるガラスとの組合せにおいて、50、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2または1%より低いIR透過を有するフィルタリング層を使用することが有利であり得る。
【0049】
有利には、赤外線フィルターは、それぞれの機能層が誘電体コーティングによって包囲されるように、赤外線放射を反射する材料をベースとするn個の機能層(ここで、n≧1である)と、n+1個の誘電体コーティングとを含む多層スタックを有する反射層である。
【0050】
赤外線反射層の一部分である機能層は、貴金属から有利に形成される。それらは、銀、金、パラジウム、白金またはそれらの混合物もしくは合金をベースとし得、銅またはアルミニウム単独、合金または1種以上の貴金属との合金もベースとし得る。好ましくは、全ての機能層は、銀をベースとする。非常に高い赤外線放射反射効率を有するものは、貴金属である。それは、マグネトロンデバイス中に容易に導入され、かつそのコストは、特にその有効性に関して高額ではない。有利には、銀は、例えば、1~10質量%の数パーセントのパラジウム、アルミニウムまたは銅でドープされるか、または銀合金として使用され得る。
【0051】
赤外線反射層の一部分である誘電体、透明コーティングは、スパッタリングによって堆積されたフィルムの分野でも周知である。適切な材料は多く、本明細書において全リストを作成することは有用でない。これらは、一般に、酸化物、オキシ窒化物または金属窒化物である。最も一般的なものの中でも、例えば、SiO2、TiO2、SnO2、ZnO、ZnAlOx、Si3N4、AlN、Al2O3、ZrO2、Nb2O5、YOx、TiZrYOx、TiNbox、HfOx、MgOx、TaOx、CrOxおよびBi2O3ならびにその混合物が挙げられる。また、以下の材料:AZO、ZTO、GZO、NiCrOx、TXO、ZSO、TZO、TNO、TZSO、TZAOおよびTZAYOも挙げることができる。AZOという用語は、好ましくは、中性またはわずかに酸化雰囲気のいずれかで堆積させ、噴霧させる酸化物によって形成されたセラミック標的から得られた、アルミニウムまたは亜鉛およびアルミニウムの混合酸化物でドープされた酸化亜鉛に関する。同様に、ZTOまたはGZOという表現は、中性またはわずかに酸化雰囲気のいずれかでセラミック標的から得られたチタンおよび亜鉛または亜鉛およびガリウムの混合酸化物にそれぞれ関する。TXOという用語は、酸化チタンセラミック標的から得られた酸化チタンに関する。ZSOという用語は、酸化雰囲気で堆積された合金の金属標的から、または対応する酸化もしくは中性雰囲気もしくはわずかに酸化のセラミック標的から得られた混合亜鉛-スズ酸化物を意味する。TZO、TNO、TZSO、TZAOまたはTZAYOという表現は、中性またはわずかに酸化雰囲気のいずれかでセラミック標的から得られた混合チタンジルコニウム酸化物、チタン-ニオブ、チタン-ジルコニウム-スズ、チタン-ジルコニウム-アルミニウムまたはチタン-ジルコニウム-アルミニウム-イットリウムにそれぞれ関する。これらの全ての上記材料は、本発明で使用される誘電体フィルムを形成するために使用することができる。
【0052】
好ましくは、1つまたは複数の機能層と直接接触して1つまたはそれぞれの機能層の下に配置された誘電体コーティングは、アルミニウムもしくはガリウムで任意選択的にドープされた酸化亜鉛または酸化スズとの合金をベースとする層を含む。酸化亜鉛は、特にそれがコストに関する場合、機能層の安定性および耐食性に対して特に好ましい効果を有し得る。それは、銀ベースの層の電気伝導率の改善にも貢献し、したがって低放射率が得られる。
【0053】
スタックの種々の層は、例えば、既知のマグネトロンデバイスにおいて減圧マグネトロンスパッタリング下でスパッタリングされる。しかしながら、本発明は、層堆積のこの特定の方法に限定されない。
【0054】
本発明の特定の実施形態によれば、アセンブリのこれらの層は、積層体に挿入されたか、またはガラスシート上に直接適用された特にPETのキャリアシート上に配列され得る。
【0055】
上記に基づく金属層の代替として、赤外線反射層は、それがバンドパスフィルターとして機能するように複数の非金属層を含むことができる(バンドは、領域赤外線電磁スペクトル付近を中心とする)。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車グレイジングは、少なくとも1つの熱可塑性中間層と一緒に積層された外部および内部ガラスシートを含む積層グレイジングであり、外部および内部ガラスシートは、750~1050nm、好ましくは750~950nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートである。したがって、赤外線放射を反射する層は、好ましくは、車両上に取り付けられ、外部環境と接触する第1のガラスの内面上を意味する面2上に配置される。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、赤外線フィルターは、赤外線を吸収する熱可塑性中間層である。そのような熱可塑性中間層は、例えば、ITOでドープされたPVBである。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、赤外線フィルターは、着色ガラスである。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシートは、赤外線透過の値よりも低い光透過の値を有する。特に、本発明の別の実施形態によれば、可視における光透過の値は、10%未満であり、かつ赤外線透過の値は、50%より高い。
【0060】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、良好なレベルの作動性能を保証しながら、外側から非美的要素のセンサーを隠すために、少なくとも1つのIR透過着色および/または反射コーティングで被覆される。このコーティングは、例えば、可視光域において透過を有さない(または非常に低い)が、用途のために重要な赤外線域において高い透過性を有する少なくとも1つの層のブラックインクから構成され得る。そのようなインクは、400~750nm域において<5%および850~950nm域において>70%の透過率を達成することができる有機化合物から製造され得る。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、850~1100nmの近赤外線光において高度に透過性であるが、300~750nmのUVおよび可視光を効率的にブロックする黒色赤外線透明フィルムは、良好なレベルの作動性能を保証しながら、外側から非美的要素のセンサーを隠すために、ガラスシートに積層され得る。
【0062】
代わりに、類似の特性を有する着色熱可塑性物質、例えばPMMAとしても知られるポリ(メタクリル酸メチル)、アクリルまたはアクリルガラスがガラスシートと組み合わせて使用され得る。ポリカーボネートプラスチックまたは他の適切なプラスチック材料も使用され得る。着色熱可塑性物質は、当業者に周知の適切な中間層と一緒にガラスに積層され得る。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、ガラスシートは、高いIR透過を維持しながら、選択的に可視域を反射するように最適化された多層コーティングで被覆され得る。したがって、Kromatix(登録商標)製品において観察されるものなどのいくつかの特性が求められる。そのような層が適切なガラス組成物に堆積される場合、これらの特性は、完全系の全体の低IR吸光度を保証する。コーティングは、単一の自動車グレイジング要素に関して面1もしくは/および面2上に、または積層自動車グレイジングに関して面1もしくは/および面4上にその耐久性次第で提供され得る。
【0064】
本発明によれば、LiDAR機器は、少なくとも1つのレーザー発信器と、光捕収剤(望遠鏡または他の光学素子)を含む少なくとも受信器と、光を電気信号および求める情報を抽出する電子プロセス鎖信号に変換する少なくとも光検出器とから構成される光電子システムである。
【0065】
LiDARは、赤外線フィルター層がないゾーンにおける1つのガラスシートグレイジングの場合、ガラスシートの内部面(すなわち面2)上に配置される。
【0066】
好ましくは、LiDARは、グレイジングの上部に配置され、より好ましくは反射鏡ホルダーに閉鎖される。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、自動車グレイジングは、IRフィルタリング手段が存在しないガラスシートのゾーンにおいて、LiDARが内部ガラスシートの内部面、すなわち面4に配置される積層グレイジングである。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車グレイジングは、ウインドシールドである。したがって、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、赤外線反射層がないゾーンにおいてウインドシールドの面4上に配置される。実際に、赤外線反射コーティングの場合、コーティングがないゾーンは、例えば、この機能を保証するために、面4(または1つのガラスシートグレイジングの場合には面2)上で、コーティングがないこの領域においてLiDARが配置される様式で脱コーティングまたはマスキングによって提供される。コーティングがない領域は、一般に、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスの形状および寸法を有する。赤外線吸収フィルムの場合、この機能を保証するために、フィルムなしでこの領域に配置されているLiDARの寸法でフィルムを切断する。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、自動車グレイジングは、超薄グレイジングである。
【0070】
有利には、IRベースのリモートセンシングデバイスは、グレイジングの内部面に光学的に連結される。例えば、ガラスおよびLiDARの外部レンズの屈折率に適合する軟質材料が使用され得る。
【0071】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層でコーティングされる。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する多孔性シリカをベースとする層であり得るか、またはいくつかの層(スタック)、特に低屈折率および高屈折率を有し、かつ低屈折率を有する層を末端とする誘電体材料交代性層の層のスタックから構成され得る。そのようなコーティングは、単一のグレイジングに関して面1もしくは/および2上に、または積層グレイジングに関して面1もしくは/および4上に提供され得る。テクスチャガラスシートも使用され得る。反射を回避するために、エッチングまたはコーティング技術も使用され得る。