IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特許7145147アルカリ土類酸化物を改質剤として含む高透過性ガラス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】アルカリ土類酸化物を改質剤として含む高透過性ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/083 20060101AFI20220922BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20220922BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20220922BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C3/087
C03C3/085
C03C3/091
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019515240
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017051483
(87)【国際公開番号】W WO2018053078
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】62/395,406
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】レンロート,ナジャ テレーシア
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05120970(US,A)
【文献】米国特許第05122671(US,A)
【文献】特開平06-024754(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017558(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/195435(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/145661(WO,A1)
【文献】特表2015-501280(JP,A)
【文献】米国特許第09029279(US,B2)
【文献】特開平11-314933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
前記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、前記前面の反対側の背面と、前記前面と前記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、前記厚さは前記前面及び前記背面の周りに4つの縁部を形成し、
前記ガラスシートは:
約74モル%超のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%の O(ただし はLi、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)
約11モル%~約16モル%のR O(ただしR は、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)
を含み、
A1 Oは約-2~約0.5であり、
O/ Oは約0.38~約0.53である、ガラス物品。
【請求項2】
ガラス物品であって、
前記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、前記前面の反対側の背面と、前記前面と前記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、
前記ガラスシートは:
約74モル%超のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%の O(ただし は、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である);
約11モル%~約16モル%の O(ただし は、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)
を含み、
O/ Oは約0.3以上約1.0未満である、ガラス物品。
【請求項3】
O/ Oは約0.38~約0.53である、請求項2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラスシートは<0.005の色ずれを有する、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項5】
前記ガラスシートは約600℃超の歪み点を有する、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項6】
前記ガラスシートは約650℃超のアニール点を有する、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項7】
前記ガラスシートは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項8】
前記ガラスシートは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ガラス物品は導光板である、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項10】
前記導光板の前記厚さは約0.2mm~約8mmである、請求項9に記載のガラス物品。
【請求項11】
前記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される、請求項9に記載のガラス物品。
【請求項12】
前記ガラスシートは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項13】
前記ガラスシートは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項14】
前記ガラスシートは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項15】
Al O<1である、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項16】
Al O+/-0.05に略等しい、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項17】
長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2016年9月16日出願の米国仮特許出願第62/395406号の優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は信頼できるものであり、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、アルカリ土類酸化物を改質剤として含む高透過性ガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
側部発光型バックライトユニットは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の高透過率プラスチック材料製であることが多い導光板(LGP)を含む。このようなプラスチック材料は、光透過性等の優れた特性を示すものの、剛性、熱膨張係数(CTE)及び吸湿性といった機械的特性が比較的低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、光透過率、感光、散乱及び光結合に関して改善された光学性能を達成し、かつ剛性、CTE及び吸湿性に関して際立った機械的性能を示す、改善された導光板を提供することが望まれている。
【0005】
更に:比較的安価な原材料を用いて、上述の属性及び性能を提供すること;製造プロセスにおけるブリスターを削減すること;並びに製造プロセスにおけるフローを向上することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の主題の複数の態様は、ガラス製の導光板及び上記導光板を含むバックライトユニットの製造のための、化合物、組成物、物品、デバイス及び方法に関する。いくつかの実施形態では、PMMA製の導光板に比べて同等の又は優れた光学特性を有し、かつPMMA導光板に比べて、剛性、CTE及び多湿条件下での寸法安定性といった機械的特性が際立っている、導光板(LGP)が提供される。
【0007】
上述の主題の原理及び実施形態は、いくつかの実施形態では、バックライトユニットで使用するための導光板に関する。いくつかの実施形態では、上記導光板又はガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含むことができ、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、上記ガラスシートは、約74モル%~約77モル%のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)、約0モル%~約4モル%のZnO、及び約0モル%~約1.7モル%のZrOを含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである。いくつかの実施形態では、上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、約5ppm未満のCo、及び約5ppm未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、Al/RO<1である。いくつかの実施形態では、AlはRO+/-0.05に略等しい。いくつかの実施形態では、上記ガラスはBaOを含有せず、SrO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である。いくつかの実施形態では、上記ガラスはBaOを含有し、SrO、BaO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である。いくつかの実施形態では、T35kP温度は1200℃以上である。いくつかの実施形態では、T200P温度は1700℃以下である。いくつかの実施形態では、長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、上記ガラスシートは化学強化される。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.3以上かつ約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、A1-ROは-2~0.5である。
【0008】
他の実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、上記ガラスシートは、約74モル%のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRはLi、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)を含み、A1-ROは約-2~約0.5である。更なる実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記ガラスシートは、約74モル%超のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)を含み、RO/ROは約0.3以上かつ約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである。いくつかの実施形態では、上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、Al/RO<1である。いくつかの実施形態では、AlはRO+/-0.05に略等しい。いくつかの実施形態では、長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである。
【0009】
また更なる実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記ガラスシートは、約74モル%超のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)を含み、A1-ROは約-2~約0.5であり、RO/ROは約0.3以上約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む。
【0010】
本開示の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、その一部は、当業者には「発明を実施するための形態」から容易に明らかになるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲及び添付の図面を含む本明細書に記載の方法を実行することによって認識されるだろう。
【0011】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも、本開示の様々な実施形態を提示しており、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本開示の様々な実施形態を図示しており、本記載と併せて、本開示の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【0012】
以下の「発明を実施するための形態」は、以下の図面と併せて読むと更に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】導光板のある例示的実施形態の模式図
図2】LEDとLGP縁部との間の距離に対する、光結合のパーセンテージを示すグラフ
図3】LGPのRMS粗度に対する、dB/mを単位とする推定光漏れを示すグラフ
図4】2mm厚のLGPに結合された2mm厚のLEDに関して、LGPとLEDとの間の距離の関数として、予想される結合(フレネル損失なし)を示すグラフ
図5】LEDからガラスLGPへの結合メカニズムの模式図
図6】表面トポロジから算出された、予想される角度エネルギ分布を示すグラフ
図7】ガラスLGPの2つの隣接する縁部における光の全内部反射を示す模式図
図8】1つ以上の実施形態による、LGPを備える例示的なLCDパネルの断面図
図9】別の実施形態による、LGPを備える例示的なLCDパネルの断面図
図10】更なる実施形態による、接着パッドを備えるLGPを示す模式図
図11】独立してFe、NiO、及びCrでドープされた例示的なガラス組成物の透過率値を示すグラフ
図12】様々なROタイプを含む例示的なガラス組成物の透過率値を示すグラフ
図13】表2のガラスに関する透過率値を示すグラフ
図14】様々なアルカリ土類を有するガラスに関する透過率値を示すグラフ
図15A】ホウ素を含む、様々なAl及びRO含有量を有するガラスに関する、透過率値を示すグラフ
図15B】ホウ素を含まない、様々なAl及びRO含有量を有するガラスに関する、透過率値を示すグラフ
図16A】表5のガラスに関する透過率値を示すグラフ
図16B】表6のガラスに関する透過率値を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載されるのは、本発明の複数の実施形態による、導光板、上記導光板の作製方法、及び上記導光板を利用するバックライトユニットである。
【0015】
LCDバックライト用途で使用される現行の導光板は、典型的にはPMMA材料から作製される。というのは、PMMAが可視スペクトルにおける光透過率に関して最良の材料の1つであるためである。しかしながらPMMAは機械的な問題を提示し、これらの問題により、剛性、吸湿性及び熱膨張係数(CTE)といった機械的設計に関して、大型(例えば対角線50インチ(1.27m)以上)のディスプレイは困難となる。
【0016】
剛性に関して、従来のLCDパネルは、PMMA光導体と、複数の薄型プラスチックフィルム(拡散体、デュアル輝度増強フィルム(DBEF)等)とを備えた、2片の薄型ガラス(色フィルタ基板及びTFT基板)で作製される。PMMAの弾性率が低いため、LCDパネルの全体的な構造は十分な剛性を有さず、LCDパネルに剛度を提供するためには追加の機械的構造が必要となる。なお、PMMAは一般に約2GPaのヤング率を有するが、特定の例示的なガラスは約60GPa~約90GPa以上のヤング率を有する。
【0017】
吸湿性に関して、湿度試験は、PMMAが湿気に敏感であり、サイズが約0.5%変化し得ることを示している。長さ1mのPMMAパネルに関して、この0.5%の変化は長さを5mm増大させ得、これは重大なものであり、これに対応するバックライトユニットの設計は困難となる。この問題を解決するための従来の手段は、発光ダイオード(LED)とPMMA導光板(LGP)との間に空隙を残して、材料の膨張を許容することである。このアプローチの問題は、光結合がLEDとLGPとの間の距離に極めて敏感であり、ディスプレイの輝度を湿度に応じて変化させてしまう場合があることである。図2は、LEDとLGP縁部との間の距離に対する光結合のパーセンテージを示すグラフである。図2を参照すると、PMMAによる困難を解決するための従来の方法の欠点を示す、ある関係が図示されている。より具体的には、図2は、LED及びLGP両方の高さを2mmと仮定した、LED‐LGP間距離に対する光結合のプロットを示す。LEDとLGPとの間の距離が遠くなるほど、LEDとLGPとの間の光結合の効率が低下することを観察できる。
【0018】
CTEに関して、PMMAのCTEは約75E-6℃-1であり、またPMMAは比較的低い熱伝導率(0.2W/m/K)を有するが、その一方で一部のガラスのCTEは約8E-6℃-1であり、熱伝導率は0.8W/m/Kである。当然のことながら、他のガラスのCTEは様々であってよく、上述のような開示は本明細書に添付の請求項の範囲を限定するものではない。PMMAはまた、約105℃のガラス転移温度を有し、LGPとして使用される場合、PMMA LGPは超高温になる場合があり、PMMAの低い熱伝導率により、熱の放散が困難になる。従って、導光板の材料としてPMMAの代わりにガラスを使用すると、この点で便益が得られるが、従来のガラスは、鉄及び他の不純物を主要な原因として、PMMAに比べて比較的低い透過率を有している。また、表面粗度、うねり及び縁部品質研磨といった他のいくつかのパラメータも、ガラス導光板が発揮できる性能に対して大きな役割を果たし得る。本発明の実施形態によると、バックライトユニットで使用するためのガラス導光板は、以下の属性のうちの1つ以上を有することができる。
【0019】
ガラス導光板の構造及び組成
図1は、導光板のある例示的実施形態の模式図である。図1を参照すると、前面であってよい第1の面110と、第1の面の反対側の、背面であってよい第2の面とを有する、ガラスのシートを備える、例示的な導光板の形状及び構造を有する例示的な実施形態の図示が提供されている。第1及び第2の面は、高さH及び幅Wを有してよい。第1及び/又は第2の面は、0.6nm未満、0.5nm未満、0.4nm未満、0.3nm未満、0.2nm未満、0.1nm未満、又は約0.1nm~約0.6nmの粗度を有してよい。
【0020】
ガラスシートは、前面と背面との間の厚さTを有してよく、この厚さが4つの縁部を形成する。ガラスシートの厚さは前面及び背面の高さ及び幅より小さくてよい。様々な実施形態では、導光板の厚さは、前面及び/又は背面の高さの1.5%未満であってよい。あるいは厚さTは、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、又は約0.1mm~約3mmであってよい。導光板の高さ、幅、及び厚さは、LCDバックライト用途での使用のために構成及び寸法設定してよい。
【0021】
第1の縁部130は、例えば発光ダイオード(LED)が供給する光を受承する、光入射縁部であってよい。光入射縁部は、透過時に半値全幅(FWHM)12.8°未満の角度で光を散乱させてよい。光入射縁部は、光入射縁部を研磨することなく縁部を研削することによって得ることができる。ガラスシートは更に、光入射縁部に隣接する第2の縁部140と、第2の縁部の反対側の、光入射縁部に隣接する第3の縁部とを備えてよく、第2の縁部及び/又は第3の縁部は、反射時にFWHM12.8°未満の角度で光を散乱させてよい。第2の縁部140及び/又は第3の縁部は、6.4°未満の、反射時の散乱角を有してよい。なお、図1に示す実施形態は、光が入射する単一の縁部130を示しているが、例示的実施形態100の縁部のうちの1つ以上に光を入射させることができるため、請求対象である主題はそのように限定されないものとする。例えばいくつかの実施形態では、第1の縁部130及びその反対側の縁部の両方に光を入射させることができる。このような例示的実施形態は、幅Wが大きい、又は幅Wが曲線を有する、ディスプレイデバイスに使用してよい。更なる実施形態は、第1の縁部130及び/又はその反対側の縁部ではなく、第2の縁部140及びその反対側の縁部に光を入射させてよい。例示的なディスプレイデバイスの厚さは、約10mm未満、約9mm未満、約8mm未満、約7mm未満、約6mm未満、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、又は約2mm未満とすることができる。
【0022】
様々な実施形態では、基板のガラスのガラス組成物は、74~77モル%のSiO、3~6モル%のAl3、及び0~4モル%のB、並びに50ppm未満の鉄(Fe)濃度を含んでよい。いくつかの実施形態では、25ppm未満のFeが存在してよく、又はいくつかの実施形態ではFe濃度は約20ppm以下であってよい。様々な実施形態では、導光板100の熱伝導率は0.5W/m/K超であってよい。追加の実施形態では、ガラスシートは、研磨済みフロートガラス、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス、リドロープロセス、又は別の好適な成形プロセスによって形成してよい。
【0023】
1つ以上の実施形態によると、LGPは、ガラス形成剤SiO、Al及びBから選択された無色の酸化物成分を含むガラスから作製できる。例示的なガラスは、好ましい溶融属性及び形成属性を得るために、フラックスも含んでよい。このようなフラックスとしては、アルカリ酸化物(LiO、NaO、KO、RbO及びCsO)並びにアルカリ土類酸化物(MgO、CaO、SrO、ZnO及びBaO)が挙げられる。一実施形態では、ガラスは、74~77モル%のSiO、3~6モル%のAl、0~4モル%のB、及び4~7%のアルカリ酸化物、10~16%のアルカリ土類酸化物又はこれらの組み合わせという構成成分を含有する。
【0024】
本明細書に記載のいくつかのガラス組成物において、SiOは塩基性ガラス形成剤として作用できる。特定の実施形態では、SiOの濃度は60モル%超とすることができ、これによりガラスに、ディスプレイガラス又は導光板ガラスに好適な密度及び耐化学性、並びにダウンドロープロセス(例えばフュージョンプロセス)で形成できるようにする液相線温度(液相粘度)を提供できる。上限に関して、一般にSiO濃度は約80モル%以下とすることができ、これにより、従来の大容積溶融技法、例えば耐火性溶融器内でのジュール溶融を用いてバッチ材料を溶融できるようにする。SiOの濃度を上昇させると、200ポアズ温度(溶融温度)は一般に上昇する。様々な用途において、SiO濃度は、ガラス組成物が1750℃以下の溶融温度を有するように調整される。様々な実施形態では、SiOのモル%は約73~約77モル%、あるいは約74%~約76モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内であってよい。
【0025】
Alは、本明細書に記載のガラスを作製するために使用される別のガラス形成剤である。Alのモル%を高めると、ガラスのアニール点及び弾性率を改善できる。様々な実施形態では、Alのモル%は、約3%~約6モル%、あるいは約4~約6モル%、又は約5~約6モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内であってよい。他の実施形態では、Alのモル%は、約5~6モル%、又は0~約5モル%、又は0~約2モル%、又は約6モル%未満、又は約5モル%未満であってよい。
【0026】
は、ガラス形成剤、及び溶融を補助して溶融温度を低下させるフラックスの両方である。これは液相線温度及び液相粘度の両方に影響を及ぼす。Bを増加させることによって、ガラスの液相粘度を上昇させることができる。これらの効果を達成するために、1つ以上の実施形態のガラス組成物は、0.1モル%以上のB濃度を有してよいが、いくつかの組成物は、無視できる量のBを有してよい。SiOに関して上述したように、ガラスの耐久性は、ディスプレイ用途には非常に重要である。耐久性は、アルカリ土類酸化物の濃度を上昇させることによってある程度制御でき、またB含有量を増大させることによって大幅に低減できる。アニール点はBの増大に従って低下するため、B含有量を低く維持することが役立つ場合が多い。従って様々な実施形態では、Bのモル%は、約0%~約4%、あるいは約0%~約3%、又は約0%~約2%、約1%~約4%、又は約2%~約4%、及びこれらの間の全ての部分範囲内であってよい。
【0027】
ガラス形成剤(SiO、Al及びB)に加えて、本明細書に記載のガラスは、アルカリ土類酸化物も含む。一実施形態では、少なくとも3つのアルカリ土類酸化物がガラス組成物の要素であり、これらは例えばMgO、CaO及びBaO、並びに任意にSrOである。アルカリ土類酸化物は、ガラスに、溶融、焼成、成形及び最終的な使用に重要な様々な特性を提供する。
【0028】
本開示の特定の実施形態に関して、複数のアルカリ土類酸化物を、これらが実際には単一の組成成分であるものとして扱ってよい。これは、粘弾性、液相線温度及び液相関係に対するこれらの影響が、ガラス形成酸化物SiO、Al及びBに比べて、定量的に互いに同等であるためである。しかしながら、アルカリ土類酸化物CaO、SrO及びBaOは、長石鉱物、特にアノーサイト(CaAlSi)及びセルシアン(BaAlSi)、並びにこれらのストロンチウム担持固溶体を形成し得るが、MgOは、これらの結晶中に相当な度合いで関与することはない。従って、長石鉱物が液相中に既に存在する場合、MgOの更なる添加は、結晶に対してこの液体を安定させることによって液相線温度を低下させる役割を果たすことができる。同時に、粘度曲線は典型的にはより急峻になり、低温粘度に影響をほとんど又は全く与えることなく、融点が低下する。
【0029】
本発明者らは、少量のMgOの添加は、高いアニール点を保持したまま、融点の低下によって溶融に、そして液相線温度の低下及び液相粘度の上昇によって成形に便益をもたらすことができることを発見した。様々な実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約6モル%、又は約2モル%~約4モル%、又は約1モル%~約5モル%、又は約2モル%~約5モル%、又は約3モル%~約5モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内のMgOを含む。
【0030】
いずれの特定の動作理論によって束縛されるものではないが、ガラス組成物中に存在する酸化カルシウムが、低い液相線温度(高い液相粘度)、高いアニール点及び弾性率、並びにディスプレイ及び導光板用途に最も望ましい範囲のCTEを生成できると考えられる。これはまた、耐化学性にも良好に寄与し、他のアルカリ土類酸化物に比べて、バッチ材料として比較的安価である。しかしながら、高い濃度においては、CaOは密度及びCTEを上昇させる。更に、十分に低いSiO濃度では、CaOはアノーサイトを安定させることにより、液相粘度を低下させ得る。従って1つ以上の実施形態では、CaO濃度を2~5モル%とすることができる。様々な実施形態では、ガラス組成物のCaO濃度は、約2モル%~約4.5モル%、又は約2.4モル%~約4.5モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内である。
【0031】
SrO及びBaOはいずれも、低い液相線温度(高い液相粘度)に寄与できる。これらの酸化物及びその濃度は、CTE及び密度の上昇並びに弾性率及びアニール点の低下を回避するように選択できる。SrO及びBaOの相対比率のバランスを取ることによって、ガラスをダウンドロープロセスで成形できるような物理的特性及び液相粘度の好適な組み合わせを得ることができる。様々な実施形態では、上記ガラスは、SrOを、約2~約6モル%、又は約2モル%~約5.5モル%、又は約2.5~約5モル%、3モル%~約5モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内の量で含む。1つ以上の実施形態では、上記ガラスは、BaOを、約0~約5モル%、又は1~約4モル%、又は0~約4モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内の量で含む。
【0032】
以上の成分に加えて、本明細書に記載のガラス組成物は、ガラスの様々な物理的属性、溶融属性、清澄属性及び成形属性を調整するために、様々な他の酸化物を含むことができる。このような他の酸化物の例としては、限定するものではないが、TiO、MnO、V、Fe、ZrO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、Y、La及びCeO、並びに他の希土類酸化物及びリン酸塩が挙げられる。一実施形態では、これらの酸化物の量は、2.0モル%以下とすることができ、合計濃度は5.0モル%以下とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、ZnOを、約0~約3.5モル%、又は約0~約3.01モル%、又は約0~約2.0モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内の量で含む。他の実施形態では、ガラス組成物は:約0.1モル%~約1.0モル%の酸化チタン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ジルコニウム;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化スズ;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化モリブデン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化セリウム;及びこれらの間の全ての部分範囲内の、上で列挙した遷移金属酸化物のうちのいずれを含む。本明細書に記載のガラス組成物はまた、バッチ材料に関連する、並びに/又はガラスの製造に使用される溶融、清澄及び/若しくは成形設備によってガラスに導入される、様々な汚染物質を含み得る。ガラスはまた、酸化スズ電極を用いたジュール溶融の結果として、及び/又は例えばSnO、SnO、SnCO、SnC等のスズ含有材料のバッチ形成によって、SnOも含有し得る。
【0033】
本明細書に記載のガラス組成物は、いくつかのアルカリ構成成分を含有してよく、例えばこれらのガラスはアルカリ非含有ガラスではない。本明細書中で使用される場合、「アルカリ非含有ガラス(alkali‐free glass)」は、合計アルカリ濃度が0.1モル%以下のガラスであり、この合計アルカリ濃度は、NaO、KO及びLiO濃度の総和である。いくつかの実施形態では、ガラスは、約0~約3.0モル%、約0~約2.0モル%、約0~約1.0モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内のLiOを含む。他の実施形態では、ガラスは、約0モル%~約5モル%、約0モル%~約4モル%、約0~約3モル%、約0.1~約3モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内のNaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラスは、約2~約8.0モル%、約2~約7.0モル%、約2.5~約7.0モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内のKOを含む。例示的実施形態では、KOはNaOよりも多い。いくつかの実施形態では、合計アルカリ酸化物(RO)は、約7モル%未満又は約6モル%未満であり、KO>NaOである。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス組成物は、以下の組成的特徴:(i)最大0.05~1.0モル%のAs濃度;(ii)最大0.05~1.0モル%のSb濃度;(iii)最大0.25~3.0モル%のSnO濃度のうちの1つ以上の又は全てを有することができる。
【0035】
Asは、ディスプレイガラスのための有効な高温清澄剤であり、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、Asは、その優れた清澄特性により、清澄に使用される。しかしながらAsは有毒であり、ガラス製造プロセス中に特別な取り扱いを必要とする。従って特定の実施形態では、清澄は、有意量のAsを用いずに実施され、即ち完成品のガラスは最大0.05モル%のAsを有する。一実施形態では、ガラスの清澄においてAsを故意に使用しない。このような場合、完成品のガラスは典型的には、バッチ材料及び/又はバッチ材料の溶融に使用される設備中に存在する汚染物質により、最大0.005モル%のAsを有することになる。
【0036】
Asほどの毒性はないが、Sbもまた有毒であり、特別な取り扱いを必要とする。更にSbは、清澄剤としてAs又はSnOを使用したガラスに比べて密度を上昇させ、CTEを上昇させ、アニール点を低下させる。従って特定の実施形態では、清澄は、有意量のSbを用いずに実施され、即ち完成品のガラスは最大0.05モル%のSbを有する。別の実施形態では、ガラスの清澄においてSbを故意に使用しない。このような場合、完成品のガラスは典型的には、バッチ材料及び/又はバッチ材料の溶融に使用される設備中に存在する汚染物質により、最大0.005モル%のSbを有することになる。
【0037】
As及びSbによる清澄に比べて、スズによる清澄(即ちSnOによる清澄)は効果が低いものの、SnOは、既知の有害な特性を有しない汎用性の高い材料である。またSnOは、このようなガラスのためのバッチ材料のジュール溶融において酸化スズ電極を用いることにより、長年にわたってディスプレイの構成要素であった。ディスプレイガラス中にSnOが存在しても、液晶ディスプレイの製造におけるこれらのガラスの使用に、いずれの既知の悪影響は引き起こされなかった。しかしながら、SnOの濃度が高いことは、ディスプレイガラス中の結晶質の欠陥の形成をもたらし得るため、好ましくない。一実施形態では、完成品のガラス中のSnOの濃度は、0.25モル%以下、約0.07~約0.11モル%、約0~約2モル%、約0~約3モル%、及びこれらの間の全ての部分範囲内である。
【0038】
スズによる清澄は、単独で、又は他の清澄技法と組み合わせて使用できる。例えばスズによる清澄を、ハロゲン化物による清澄、例えば臭素による清澄と組み合わせることができる。他の可能な組み合わせとしては、限定するものではないが、スズによる清澄に、硫酸塩、硫化物、酸化セリウム、機械的バブリング、及び/又は真空による清澄を追加したものである。これらの他の清澄技法は、単独で用いることを想定できる。特定の実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Alの比及び個々のアルカリ土類の濃度を上述の範囲内に維持することにより、清澄プロセスの実施が容易になり、またより効果的になる。
【0039】
様々な実施形態では、ガラスはROを含んでよく、ここでRはLi、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上であり、xは2であるか、又はRはZn、Mg、Ca、Sr若しくはBaであり、xは1である。いくつかの実施形態では、RO-Al>0である。他の実施形態では、0<RO-Al<15であり、いくつかの例示的実施形態では、10<RO-Al<15である。いくつかの実施形態では、RO/Alは、0~10、0~5、1超、又は3.5~4.5、又は2~6、又は3~5、及びこれらの間の全ての部分範囲内である。更なる実施形態では、Al-ROは、<5、<0、-3~2、又は-2~0.5、及びこれらの間の全ての部分範囲内である。これらの比は、ガラス物品の製造可能性の確立、及びガラス物品の透過性能の決定において、重要な役割を果たす。
【0040】
1つ以上の実施形態において、上述のように、例示的なガラスは、ガラスマトリクス中にある場合に可視光吸収を生成する元素を、低濃度で有し得る。このような吸収剤としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCu等の遷移元素、並びにCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er及びTmを含む、f軌道が部分的に充填された希土類元素が挙げられる。これらのうち、ガラス溶融に使用される従来の原材料中に最も豊富なのは、Fe、Cr及びNiである。鉄は、SiO源である砂の一般的な汚染物質であり、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムの原材料源中の典型的な汚染物質でもある。クロム及びニッケルは典型的には、通常のガラス原材料中に低濃度で存在するが、砂の様々な鉱石にも存在し得、低濃度に制御しなければならない。更に、クロム及びニッケルは:例えば原材料又はカレットを粉砕する際のステンレス鋼との接触によって;鋼鉄で内張りされたミキサ若しくはスクリューフィーダの溶出によって;又は溶融ユニット自体の構造の鋼鉄との意図しない接触によって、導入され得る。いくつかの実施形態における鋼鉄の濃度は、具体的には50ppm未満、より具体的には40ppm未満、又は25ppm未満とすることができ、Ni及びCrの濃度は、具体的には5ppm未満及びより具体的には2ppm未満とすることができる。更なる実施形態では、上で列挙した他の全ての吸収剤の濃度は、それぞれ1ppm未満であってよい。様々な実施形態では上記ガラスは、1ppm以下のCo、Ni及びCr、あるいは1ppm未満のCo、Ni及びCrを含む。様々な実施形態では、遷移元素(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCu)はガラス中に、0.1重量%以下で存在してよい。いくつかの実施形態では、Fe、Cr、及び/又はNiの濃度は、<約50ppm、<約40ppm、<約30ppm、<約20ppm、又は<約10ppmとすることができる。
【0041】
他の実施形態では、300nm~650nmの吸収を引き起こさず、<約300nmの吸収帯域を有する、特定の遷移金属酸化物の添加により、成形プロセスによるネットワーク欠陥が防止され、またインクの硬化時のUV曝露後の色中心(例えば300nm~650nmの光の吸収)が防止されることが分かった。これは、ガラスネットワーク中の遷移金属酸化物による結合が、ガラスネットワークの基本的な結合を光に破壊させることなく、光を吸収するためである。従って例示的実施形態は、UV色中心の形成を最小化するために、以下の遷移金属酸化物のうちのいずれの1つ又は組み合わせを含むことができる:約0.1モル%~約4.0モル%の酸化亜鉛;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化チタン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化バナジウム;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ニオブ;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化マンガン;約0.1モル%~約2.0モル%の酸化ジルコニウム;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ヒ素;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化スズ;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化モリブデン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化アンチモン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化セリウム;及びこれらの間の全ての部分範囲内の、上で列挙した遷移金属酸化物のうちのいずれ。いくつかの実施形態では、例示的なガラスは、0.1モル%~約4.0モル%未満又は以下の、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化ヒ素、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化アンチモン、及び酸化セリウムのいずれの組み合わせを含有できる。
【0042】
ガラスマトリクス中の鉄の価数及び配位状態は、ガラスのバルク組成によっても影響され得る。例えば鉄の酸化還元比を、溶融ガラスにおいて、高温の空気中で平衡となった系SiO‐KO‐Alで検査した。Fe3+としての鉄の割合は、比KO/(KO+Al)と共に増大することが分かり、これは実用面において、短い波長におけるより良好な吸収を意味する。このマトリクス効果を調査すると、比(LiO+NaO+KO+RbO+CsO)/Al及び(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)/Alもまた、ボロシリケートガラスにおいて透過を最大化するために重要となり得ることが分かった。従って上述のROの範囲に関して、所与の鉄含有量に対して、例示的な波長における透過を最大化できる。これは部分的には、Fe2+の比率が高いことによるものであり、また部分的には、鉄の配位環境に関連するマトリクス効果によるものである。
【0043】
ガラスの粗度
図3は、LGPのRMS粗度に対する、dB/mを単位とする推定光漏れを示すグラフである。図3を参照すると、光がLGPの表面上で何度も跳ね返るため、表面散乱がLGPにおいてある役割を果たすことを示すことができる。図3に示す曲線は、LGPのRMS粗度の関数としての、dB/mを単位とする光漏れを示す。図3は、1dB/m未満を達成するには、表面品質は約0.6nmRMSより良好である必要があることを示している。このレベルの粗度は、フュージョンドロープロセス又はフロートガラスと、これに続く研磨とを用いて達成できる。このようなモデルは、粗度がランバート散乱表面のような挙動を示すことを想定しており、これは、本発明者らが高い空間周波数の粗度のみを考慮していることを意味する。従って粗度は、パワースペクトル密度を考慮して算出されるものとし、約20マイクロメートル-1より大きい周波数のみを考慮するものとする。表面粗度は:原子間力顕微鏡(AFM);Zygo製のもの等の市販のシステムを用いた白色光干渉法;又はKeyenceが提供するもの等の市販のシステムを用いたレーザ共焦点顕微鏡によって測定してよい。表面からの散乱は、表面粗度以外が同一の複数の試料を調製し、各試料の内部透過率を下記のようにして測定することによって測定できる。試料間の内部透過率の差は、粗面によって誘発される散乱損失に起因し得る。
【0044】
UV加工
例示的なガラスの加工において、紫外(UV)光を使用することもできる。例えば、光抽出用特徴部分は、ガラス上の白色印刷ドットによって作製されることが多く、UVはインクを乾燥させるために使用される。また、抽出用特徴部分は、何らかの特別な構造をその上に備えたポリマー層で作製でき、重合のためにUVへの曝露を必要とする。ガラスのUV曝露は透過率に大きく影響することが分かっている。1つ以上の実施形態によると、LGP用のガラスのガラス加工中にフィルタを用いて、約400nm未満の全ての波長を排除できる。可能性のある1つのフィルタは、その時に曝露されているガラスと同一のガラスを使用することからなる。
【0045】
ガラスのうねり
ガラスのうねりは、周波数がはるかに小さい(mm以上の範囲である)という点で、粗度とは多少異なる。従ってうねりは、角度が極めて小さいため、光の抽出に寄与しないが、抽出用特徴部分の効率を変更する。というのは、上記効率は光導体の厚さの関数であるためである。光抽出効率は一般に、導波路の厚さに反比例する。従って、高周波数画像輝度の変動を5%未満(これはヒトの閃光知覚分析によって得られたヒトの知覚の閾値である)に維持するために、ガラスの厚さは、5%未満の範囲で一定である必要がある。例示的実施形態は、0.3μm未満、0.2μm未満、1μm未満、0.08μm未満、又は0.06μm未満のA側うねりを有することができる。
【0046】
図4は、2mm厚のLGPに結合された2mm厚のLEDに関して、LGPとLEDとの間の距離の関数として、予想される結合(フレネル損失なし)を示すグラフである。図4を参照すると、ある例示的実施形態における光の入射は、1つ以上の発光ダイオード(LED)の直ぐそばにLGPを配置することを伴う場合が多い。1つ以上の実施形態によると、LEDからLGPへの光の効率的な結合は、ガラスの厚さ以下の厚さ又は高さを有するLEDの使用を伴う。よって1つ以上の実施形態によると、LEDからLGPまでの距離を制御することによって、LED光の入射を改善できる。図4は、2mm厚のLGPに結合された高さ2mmのLEDを想定して、上記距離の関数として、予想される結合(フレネル損失なし)を示す。図4によると、結合を>約80%に維持するためには、上記距離は<約0.5mmとするべきである。従来のLGP材料のようなPMMA等のプラスチックを使用する場合、LGPをLEDに物理的に接触させるのは多少問題がある。まず、材料の膨張を許容するために、最小限の距離が必要となる。またLEDは大きく温度が上昇する傾向を有し、物理的に接触した場合にPMMAがそのTg(PMMAに関しては105℃)に近づいてしまう場合がある。PMMAをLEDと接触させた場合に測定された温度上昇は、LEDの直近において約50℃であった。従ってPMMA LGPに関しては、最小限の空隙が必要となり、これは図4に示すように結合を劣化させる。ガラスLGPを利用する本主題の実施形態によると、ガラスのTgがはるかに高いため、ガラスが加熱されることは問題ではなく、またガラスは、LGPを1つの追加の熱放散メカニズムとすることができるほど十分に大きい熱伝導率を有するため、物理的接触は実際には有利になり得る。
【0047】
図5は、LEDからガラスLGPへの結合メカニズムの模式図である。図5を参照すると、LEDがランバート発光体に近いものであり、かつガラスの屈折率が約1.5であると仮定した場合、角度αは(1/1.5のように)41.8°未満に留まり、角度βは48.2°超(90-α)にとどまることになる。全内部反射(TIR)角度は約41.8°であるため、これは、全ての光が導光体の内部に留まり、結合が100%に近いことを意味している。LED入射の平面において、入射面はある程度の拡散を引き起こし得、これは光がLGP内に伝播する角度を増大させる。この角度がTIR角度より大きくなる場合、光はLGPから漏れて結合損失を引き起こし得る。しかしながら、重大な損失を導入しないための条件は、光が散乱する角度を48.2-41.8=+/-6.4°(散乱角<12.8°)とすることである。よって1つ以上の実施形態によると、LGPの複数の縁部を鏡面研磨することによって、LED結合及びTIRを改善してよい。いくつかの実施形態では、4つの縁部のうちの3つを鏡面研磨する。当然のことながら、これらの角度は単なる例であり、本明細書に添付の請求項の範囲を限定しないものとする。というのは、例示的な散乱角は、<20°、<19°、<18°、<17°、<16°、<14°、<13°、<12°、<11°、又は<10°とすることができるためである。更に、反射における例示的な拡散角度は、限定するものではないが、<15°、<14°、<13°、<12°、<11°、<10°、<9°、<8°、<7°、<6°、<5°、<4°、又は<3°とすることができる。
【0048】
図6は、表面トポロジから算出された、予想される角度エネルギ分布を示すグラフである。図6を参照すると、研削のみが施された縁部の典型的なテクスチャが図示されており、粗度振幅は比較的大きい(1nm程度)が、空間周波数は比較的小さく(20マイクロメートル程度)、これにより散乱角が小さくなる。更にこの図は、表面トポロジから算出された、予想される角度エネルギ分布を示す。確認できるように、散乱角は半値全幅(FWHM)12.8°より大幅に小さくすることができる。
【0049】
表面の定義に関して、表面は、例えば表面プロファイルの導関数を得ることによって算出できる、局所的な勾配分布θ(x,y)によって特性決定できる。ガラスの角度偏向は、一次近似で:
θ’(x,y)=θ(x,y)/n
として算出できる。従って表面粗度に関する条件は、θ(x,y)<n*6.4°であり、2つの隣接する縁部においてTIRが得られる。
【0050】
図7は、ガラスLGPの2つの隣接する縁部における光の全内部反射を示す模式図である。図7を参照すると、第1の縁部130に入射した光は、上記入射縁部に隣接する第2の縁部140及び上記入射縁部に隣接する第3の縁部150に入射させることができ、第2の縁部140は第3の縁部150と対向している。第2及び第3の縁部はまた、低い粗度も有してよく、これにより入射光は第1の縁部に隣接するこれら2つの縁部から全内部反射(TIR)する。これらの界面において光が拡散又は部分的に拡散する場合、光はこれらの縁部それぞれから漏れる場合があり、これにより、画像内のこれらの縁部が暗く見える。いくつかの実施形態では、光は、第1の縁部130に沿って位置決めされたLEDのアレイ200から、第1の縁部130に入射させてよい。LEDは、光入射縁部から0.5mm以内の距離に配置してよい。1つ以上の実施形態によると、LEDは、ガラスシートの厚さ以下の厚さ又は高さを有してよく、これにより導光板100に対する効率的な光結合が提供される。図1を参照して議論したように、図7は光が入射する単一の縁部130を示しているが、例示的実施形態100の縁部のうちの1つ以上に光を入射させることができるため、請求対象である主題はそのように限定されないものとする。例えばいくつかの実施形態では、第1の縁部130及びその反対側の縁部の両方に光を入射させることができる。更なる実施形態は、第1の縁部130及び/又はその反対側の縁部ではなく、第2の縁部140及びその反対側の縁部150に光を入射させてよい。1つ以上の実施形態によると、2つの縁部140、150は、反射において6.4°未満の拡散角度を有してよく、従って粗度に関する条件は、θ(x,y)<6.4/2=3.2°で表される。
【0051】
LCDパネルの剛性
LCDパネルの1つの属性は、全体の厚さである。より薄い構造を作製するための従来の試みにおいては、十分な剛度の欠如が重大な問題となっていた。しかしながら、ガラスの弾性率はPMMAの弾性率よりも大幅に大きいため、例示的なガラスLGPによって剛度を増大させることができる。いくつかの実施形態では、剛度の観点から最大の便益を得るために、パネルの全ての要素を縁部において一体に結合させることができる。
【0052】
図8は、1つ以上の実施形態による、LGPを備える例示的なLCDパネルの断面図である。図8を参照すると、パネル構造体500のある例示的実施形態が提供されている。この構造体は、バックプレート550上に設置されたLGP100を備え、上記バックプレート550を通して光を移動させて、LCD又は観察者に向かって再配向できる。構造要素555によって、LGP100をバックプレート550に付着させ、LGPの背面とバックプレートの面との間に間隙を形成してよい。反射及び/又は拡散フィルム540をLGP100の背面とバックプレート550との間に位置決めすることによって、再循環した光をLGP100へと戻るように送ることができる。複数のLED、有機発光ダイオード(OLED)、又は冷陰極蛍光管(CCFL)を、LGPの光入射縁部130に隣接して位置決めしてよく、LEDはLGP100の厚さと同一の幅を有し、LGP100と同一の高さである。他の実施形態では、LEDはLGP100の厚さより大きな幅及び/又は高さを有する。従来のLCDは、白色光を生成するために色変換用りん光体を用いてパッケージングされたLED又はCCFLを採用する場合がある。1つ以上のバックライトフィルム570を、LGP100の前面に隣接して位置決めしてよい。LCDパネル580もまた、構造要素585を用いてLGP100の前面の上方に位置決めしてよく、また1つ以上のバックライトフィルム570を、LGP100とLCDパネル580との間の間隙内に配置してよい。そして、LGP100からの光は、フィルム570を通過でき、このフィルム570は、高角度光を後方散乱させ、かつ低角度光を再循環のために反射フィルム540に向かって戻るように反射させることができ、前方に(例えばユーザに向かって)光を集中させる役割を果たすことができる。ベゼル520又は他の構造部材は、組立体の複数の層を所定の位置に保持できる。液晶層(図示せず)を用いてよく、これは電気光学材料を含んでよく、その構造は、電場の印加によって回転して、これを通過するいずれの光の偏光回転を引き起こす。他の光学部品としては、例えばプリズムフィルム、偏光子、又はTFTが一部の例として挙げられる。様々な実施形態によると、本明細書に開示されている角度光フィルタを、透明ディスプレイデバイスでは透明導光板とペアにすることができる。いくつかの実施形態では、LGPを上記構造体に(光学的に透明な接着剤(OCA)又は圧力感受性接着剤(PSA)を用いて)結合させることができ、ここでLGPは、パネルの構造要素のうちのいくつかと光学的に接触した状態で配置される。換言すれば、光の一部が接着剤を通って導光体から漏れる場合がある。この漏れた光は、これらの構造要素によって散乱させられる又は吸収される場合がある。上述のように、LEDがLGPに連結される第1の縁部、及び光をTIRにおいて反射する必要がある2つの隣接する縁部は、これらを適切に準備すれば、この問題を回避できる。
【0053】
LGPの例示的な幅及び高さは一般に、各LCDパネルのサイズに依存する。なお、本主題の実施形態は、小型(対角線<40インチ(1.016m))ディスプレイか大型(対角線>40インチ(1.016m))ディスプレイかにかかわらず、いずれのサイズのLCDパネルに適用できる。LGPの例示的な寸法としては、対角線20インチ(0.508m)、30インチ(0.762m)、40インチ(1.016m)、50インチ(1.27m)、60インチ(1.524m)、又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
図9は、別の実施形態による、LGPを備える例示的なLCDパネルの断面図である。図9を参照すると、更なる実施形態は反射層を利用できる。いくつかの実施形態では、LGPとエポキシとの間に、例えば銀又は反射性インクのインクジェット印刷を用いてガラスを金属化することによって、反射表面を挿入することにより、損失を最小化できる。他の実施形態では、高反射性フィルム(Enhanced Specular Reflectorフィルム(3M製)等)をLGPに積層してよい。
【0055】
図10は、更なる実施形態による、接着パッドを備えるLGPを示す模式図である。図10を参照すると、連続した接着剤の代わりに接着パッドを使用でき、ここでは複数のパッド600が一連の暗色の正方形として図示されている。よって、構造要素に光学的に接続されるLGPの表面を制限するために、図示されている実施形態は、50mm毎に5×5mmの正方形のパッドを採用することによって、十分な接着を提供でき、ここで抽出される光は4%未満である。当然のことながら、パッド600は円形又は別の多角形状であってもよく、いずれの配列又は間隔で設けてもよく、上述の説明は本明細書に添付されている請求項の範囲を制限しないものとする。
【0056】
色ずれの補正
従来のガラスでは、鉄濃度の低減によって吸収及び黄色の色ずれを最小化していたが、これを完全に排除するのは困難であった。伝播距離約700mmについてPMMAで測定されるΔx、Δyは、0.0021及び0.0063であった。本明細書に記載の組成範囲を有する例示的なガラスでは、色ずれΔyは<0.015であり、例示的な実施形態では0.0021未満、及び0.0063未満であった。例えばいくつかの実施形態では、色ずれは、0.007842として測定され、他の実施形態では0.005827として測定された。他の実施形態では、ある例示的なガラスシートは、0.015未満、例えば約0.001~約0.015(例えば約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.011、0.012、0.013、0.014、又は0.015)の色ずれΔyを備えることができる。他の実施形態では、透明基板は、0.008未満、約0.005未満、又は約0.003未満の色ずれを備えることができる。色ずれは、所与の照明源に関する色測定のためのCIE1931規格を用いて、長さLに沿ったx及び/又はy色度座標の変動を測定することによって、特性決定できる。例示的なガラス導光板に関して、色ずれΔyは、Δy=y(L)-y(L)として報告でき、ここでL及びLは、発光源(例えばLED等)から離れるパネル又は基板の方向に沿ったZ位置であり、L-L=0.5mである。本明細書に記載の例示的な導光板は、Δy<0.015、Δy<0.005、Δy<0.003、又はΔy<0.001を有する。導光板の色ずれは、導光板の光吸収を測定し、上記光吸収を用いて0.5mにわたるLGPの内部透過率を算出し、得られた透過率曲線に、Nichia NFSW157D‐E等のLCDバックライトに使用される典型的なLED光源を乗算することによって推定できる。そしてCIE等色関数を用いて、このスペクトルの(X,Y,Z)3刺激値を算出できる。次にこれらの値をこれらの合計で正規化して、(x,y)色度座標を提供する。0.5mでのLGPの透過率を乗算したLEDスペクトルの(x,y)値と、元々のLEDスペクトルの(x,y)値との間の差が、光導体材料の色ずれへの寄与の推定値である。残りの色ずれに対処するために、複数の例示的な解決策を実装できる。一実施形態では、光導体の青色塗装を採用できる。光導体を青色に塗装することにより、赤色及び緑色の吸収を人工的に増大させることができ、また青色の光の抽出を増大させることができる。従って、色吸収の差分がどの程度存在するかが分かっていれば、青色の塗装のパターンを逆算して適用でき、これによって色ずれを補償できる。1つ以上の実施形態では、浅い表面散乱特徴部分を採用することにより、波長に依存する効率で光を抽出できる。一例として、正方形の格子は、光路差が波長の半分に等しい場合に最大効率を有する。従って、青色を優先的に抽出するために、例示的なテクスチャを使用でき、主要な光抽出用テクスチャにこれを加えることができる。更なる実施形態では、画像処理を利用することもできる。例えば、光が入射する縁部付近において青色を減衰させる、画像フィルタを適用できる。これには、正しい白色を維持するためにLED自体の色をシフトさせる必要があり得る。更なる実施形態では、画素のジオメトリを使用し、パネル内のRGB画素の表面比を調整して、光が入射する縁部から離間した位置において青色画素の表面を増大させることによって、色ずれに対処できる。
【0057】
実施例及びガラス組成物
よって、これまでに記載した例示的組成を用いて、約600℃~約700℃、約600℃~約670℃及びこれらの間の全ての部分範囲内の歪み点を達成できる。一実施形態では、歪み点は約547℃であり、別の実施形態では、歪み点は約565℃である。例示的なアニール点は、約650℃~約725℃、及びこれらの間の全ての部分範囲内となり得る。ガラスの例示的な軟化点は、約880℃~約960℃、及びこれらの間の全ての部分範囲内である。例示的なガラス組成の密度は、約2.5gm/cc@20℃~約2.7gm/cc@20℃、約2.513gm/cc@20℃~約2.7gm/cc@20℃、又は約2.5gm/cc@20℃~約2.613gm/cc@20℃及びこれらの間の全ての部分範囲内となり得る。例示的実施形態に関するCTE(0~300℃)は、約30×10-7/℃~約95×10-7/℃、約55×10-7/℃~約64×10-7/℃、又は約55×10-7/℃~約80×10-7/℃及びこれらの間の全ての部分範囲内となり得る。一実施形態ではCTEは約55.7×10-7/℃であり、別の実施形態では、CTEは約69×10-7/℃である。
【0058】
本明細書に記載の特定の実施形態及び組成は、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、更には95%超の、400~700nmでの内部透過を提供した。内部透過率は、試料を透過する光を、ソースから放出された光と比較することで測定できる。広帯域の非コヒーレント光は、試験対象の材料の端部に円筒形で集束し得る。遠方から放出された光は、分光光度計に結合された積分球ファイバによって集めることができ、これは試料データを形成する。基準データは、試験中の材料をシステムから取り除き、積分球を集束用光学素子の直前で並進移動させ、この装置を通る光を基準データとして集めることによって得られる。そして、所与の波長における吸収率は:
【0059】
【数1】
【0060】
によって得られる。0.5mにわたる内部透過率は:
透過率(%)=100×10-吸収率×0.5/10
によって得られる。よって、本明細書に記載の例示的実施形態は、長さ500mmにおいて、85%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、更には95%超の、450nmにおける内部透過率を有することができる。本明細書に記載の例示的実施形態はまた、長さ500mmにおいて、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、更には96%超の、550nmにおける内部透過率を有することができる。本明細書に記載の更なる実施形態は、長さ500mmにおいて、85%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、更には95%超の、630nmにおける内部透過率を有することができる。
【0061】
1つ以上の実施形態では、LGPは少なくとも約1270mmの幅及び約0.5mm~約3.0mmの厚さを有し、LGPの透過率は500mmあたり少なくとも80%である。様々な実施形態では、LGPの厚さは約1mm~約8mmであり、導光板の幅は約1100mm~約1300mmである。
【0062】
1つ以上の実施形態では、LGPを強化できる。例えば、LGP用に使用される例示的なガラスシートに、中程度の圧縮応力(CS)、大きな圧縮層深さ(DOL)及び/又は中程度の中心張力(CT)といった特定の特徴を与えることができる。ある例示的なプロセスは、イオン交換可能なガラスシートを調製することにより、ガラスを化学強化するものである。続いてガラスシートをイオン交換プロセスに供することができ、その後必要であれば、ガラスシートをアニールプロセスに供することができる。当然のことながら、イオン交換ステップで得られるレベルのガラスシートのCS及びDOLが望まれている場合、アニールステップは不要である。他の実施形態では、酸エッチングプロセスを用いて、適当なガラス表面上のCSを増大させることができる。イオン交換プロセスは、ガラスシートを、約400~500℃である1つ以上の第1の温度において、及び/又は約1~24時間、例えば限定するものではないが約8時間である第1の期間にわたって、KNO、好ましくは比較的純粋なKNOを含む溶融塩浴に供するステップを伴ってよい。他の塩浴組成も可能であり、このような代替例を考慮することは当業者の技術レベルの範囲内であることに留意されたい。よってKNOの開示は、添付の請求項の範囲を限定しないものとする。このような例示的なイオン交換プロセスは、ガラスシートの表面の初期CS、ガラスシート内への初期DOL、及びガラスシート内の初期CTを生成できる。続いてアニーリングにより、所望の通りに最終CS、最終DOL及び最終CTを生成できる。
【実施例
【0063】
以下の実施例は、本主題による方法及び結果を例示するために記載されている。これらの実施例は本明細書において開示される主題の全ての実施形態を包括することを意図したものではなく、代表的な方法及び結果を例示することを意図したものである。これらの実施例は、当業者に明らかである本開示の均等物及び変形例を除外することを意図したものではない。
【0064】
数字(例えば量、温度等)に関して正確性を保証するよう努力したが、多少の誤差及びばらつきを考慮する必要がある。別段の指示がない限り、温度は℃で示されるか又は周囲温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。組成自体は酸化物ベースのモル%で与えられ、100%に正規化されている。記載されるプロセスから得られる生成物の純度及び収率を最適化するために用いることができる、例えば成分濃度、温度、圧力並びに他の反応範囲及び条件といった反応条件の、多数の変形例及び組み合わせが存在する。このようなプロセス条件を最適化するためには、合理的な通例の実験しか必要とならない。
【0065】
本明細書及び以下の表に記載されるガラスの特性は、ガラスの分野における慣用の技法に従って決定した。よって、温度範囲25~300℃にわたる線形の熱膨張係数(CTE)は、×10-7/℃で表され、アニール点は℃で表される。これらは、ファイバ伸長技法(それぞれASTM規格E228‐85及びC336)によって決定できる。密度(グラム/cm)は、アルキメデス法(ASTM C693)によって測定された。(ガラス溶融物が200ポアズの粘度を示す温度として定義される)融点(℃)は、回転シリンダ粘度法(ASTM C965‐81)で測定された高温粘度データへのフルチャーの式のフィットを採用し、またアニール点から融点までの全範囲に関するフルチャーの式のフィットを改善するために、ビーム曲げ法で測定された1013.18Pの低温粘度点を含めて、算出した。
【0066】
ガラスの液相線温度(℃)は、ASTM C829‐81の標準勾配ボート液相線法を用いて測定した。これは:白金ボートに粉砕したガラス粒子を入れるステップ;温度勾配領域を有する炉内に上記ボートを置くステップ;24時間にわたって適切な温度範囲でボートを加熱するステップ;及びガラスの内部に結晶が現れる最高温度を顕微鏡検査によって決定するステップを伴う。より詳細には、ガラス試料をPtボートから1片として取り出し、偏光顕微鏡を用いて試験して、Pt及び空気との界面に接して形成された結晶、並びに試料の内部に形成された結晶の、位置及び性質を同定する。炉の温度勾配は非常によく知られているため、位置に対する温度は5~10℃以内で十分に推定できる。試料の内部に結晶が観察された温度を、(対応する試験期間に対する)ガラスの液相線温度を表すものと解釈する。場合によっては、試験をより長時間(例えば72時間)実施して、よりゆっくりと成長する相を観察する。液相粘度(ポアズ)は、液相線温度と、フルチャーの式の係数とから決定された。
【0067】
本明細書中の表の例示的なガラスは、90重量%が米国規格の100メッシュふるいを通過するように粉砕した市販の砂をシリカ源として用いて調製された。アルミナがアルミナ源であり、ペリクレースがMgO源であり、石灰岩がCaO源であり、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム又はこれらの混合物がSrO源であり、炭酸バリウムがBaO源であり、酸化スズ(IV)がSnO源であった。原材料を完全に混合し、気体酸素炉内に懸架した白金容器内に装填し、まず1500℃で4時間溶融させ、その後、溶融物を水に入れて冷却した。回収したガラスの粒を乾燥させ、第2ラウンドの溶融のためにPtるつぼに再装填した。第2の溶融を、1550~1650℃の温度で一晩実施した。ガラスの二重溶融により、均質性が保証される。ガラスをステンレス鋼製のテーブル上に注ぎ、厚さ約1cmのパテを形成する。得られたガラスのパテをアニール点又はアニール点付近でアニールした後、様々な実験法に供して、物理的属性、粘度属性及び液相属性を決定した。
【0068】
これらの方法は独自のものではなく、本明細書中の表のガラスは、当業者には公知の標準的な方法を用いて調製できる。このような方法としては、連続溶融プロセスで実施されるもの等の連続溶融プロセスが挙げられ、連続溶融プロセスで使用される溶融器は、ガスによって加熱されるか、電力によって加熱されるか、又はこれらの組み合わせによって加熱される。
【0069】
例示的なガラスの製造に適した原材料としては:SiO源としての市販の砂;Al源としてのアルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナの水和形態、並びに様々なアルミノケイ酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物;B源としてのホウ酸、無水ホウ酸及び酸化ホウ素;MgO源としてのペリクレース、ドロマイト(CaO源でもある)、マグネシア、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、並びにマグネシウムケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物;CaO源としての石灰石、アラゴナイト、ドロマイト(MgO源でもある)、ウォラストナイト、並びにカルシウムケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物;並びにストロンチウム及びバリウムの酸化物、炭酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物が挙げられる。化学清澄剤が望ましい場合、スズを:SnOとして;別の主要なガラス成分(例えばCaSnO)との混合酸化物として;又はSnO、シュウ酸スズ、ハロゲン化スズ又は当業者に公知の他のスズ化合物としての酸化形態で、添加できる。
【0070】
本明細書中の表のガラスは清澄剤としてSnOを含有できるが、ディスプレイ用途に十分な品質のガラスを得るために、他の化学清澄剤も採用してよい。例えば例示的なガラスは、清澄を促進するための意図的な添加物として、As、Sb、CeO、Fe、及びハロゲン化物のうちのいずれの1つ又は組み合わせを採用してよく、これらのうちのいずれを、実施例に示されているSnO化学清澄剤と併用してよい。これらのうち、As及びSbは一般に有害な材料として認識されており、ガラス製造の過程で又はTFTパネルの加工において生成され得るもの等の廃棄物流中で、制御を受ける。従って、As及びSbの濃度を、個別に又は合わせて、0.005モル%以下に制限することが望ましい。
【0071】
例示的なガラスに意図的に組み込まれる元素に加えて、周期表中の略全ての安定な元素が、原材料の低レベルの汚染によって、製造プロセス中の耐火物及び貴金属の高温溶出によって、又は完成品のガラスの属性の微調整のための、低レベルでの意図的な導入によって、ガラス中にある程度のレベルで存在する。例えばジルコニウムが、富ジルコニウム耐火物との相互作用によって、汚染物質として導入される場合がある。更なる例としては、白金及びロジウムが、貴金属との相互作用によって導入される場合がある。更なる例としては、鉄が原材料中の微量要素として導入される場合があり、又は気体の包有の制御を増進するために意図的に添加される場合がある。更なる例としては、マンガンが、色を制御するため又は気体の包有の制御を増進するために導入される場合がある。
【0072】
水素は、ヒドロキシル陰イオンOHの形態で不可避的に存在し、その存在は、標準的な赤外線分光法によって確認できる。溶解したヒドロキシルイオンは、例示的なガラスのアニール点に有意な非線形の影響を及ぼすため、所望のアニール点を得るためには、主要な酸化物成分の濃度を調整して補償する必要があり得る。ヒドロキシルイオン濃度は、原材料の選択及び溶融システムの選択によってある程度制御できる。例えばホウ酸は、ヒドロキシルの主要な源であり、ホウ酸を酸化ホウ素で置換することは、完成品のガラス中のヒドロキシル濃度を制御する有用な方法となり得る。同様の理由付けが、ヒドロキシルイオン、水和物、又は物理吸着された若しくは化学吸着された水分子を含む化合物を含む、可能性のある他の原材料にも当てはまる。溶融プロセスにバーナを用いる場合、ここでもまたヒドロキシルイオンが、天然ガス及び関連する炭化水素の燃焼による燃焼産物によって導入され得るため、溶融に使用するエネルギをバーナから電極にシフトして補償することが望ましい場合がある。あるいはその代わりに、主要な酸化物成分を調整する反復プロセスを採用して、溶解したヒドロキシルイオンの有害な影響を補償してもよい。
【0073】
硫黄は天然ガス中に存在することが多く、また同様に、多くの炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び酸化物原材料中の微量成分である。硫黄はSOの形態において、厄介な気体包有の源となり得る。富SO欠陥が形成される傾向は、原材料中の硫黄レベルを制御することによって、及び相対的に還元された低レベルの多価陽イオンをガラスマトリクス中に組み込むことによって、管理できる。理論によって束縛されることを望むものではないが、富SO気体包有は主に、ガラス中に溶解した硫酸塩(SO=)の還元によって発生すると思われる。例示的なガラスのバリウム濃度の上昇により、溶融の早期におけるガラス中での硫黄の保持が増大すると思われるが、上述のように、バリウムは、低い液相線温度、従って高いT35k-Tliq及び高い液相粘度を得るために必要である。原材料中の硫黄レベルを低いレベルに意図的に制御することは、ガラス中に溶解した(おそらく硫酸塩としての)硫黄を減少させる有用な手段である。特に硫黄は、好ましくはバッチ材料中で200ppm重量未満、より好ましくはバッチ材料中で100ppm重量未満である。
【0074】
還元された多価イオンを用いて、例示的なガラスがSOブリスターを形成する傾向を制御することもできる。理論によって束縛されることを望むものではないが、これらの要素は、硫酸塩の還元のための起電力を抑制する潜在的な電子供与体としての挙動を有する。硫酸塩の還元は、SO=→SO+O+2e-といった半反応式で記述でき、ここでe-は電子を表す。この半反応に関する「平衡定数(equilibrium constant)」は、Keq=[SO][O][e-]2/[SO=]であり、角括弧は化学活性を表す。理想的には、反応を推進して、SO、O及び2e-から硫酸塩を生成したい。硝酸塩、過酸化物又は他の富酸素原材料の添加は、手助けになり得るものの、溶融の早期における硫酸塩の還元(これはそもそも、これらの添加の便益と反作用し得る)に対して不利に作用する場合もある。SOは大半のガラス中での可溶性が極めて低く、従ってガラス溶融プロセスへの添加は現実的でない。電子は、還元された多価イオンによって「添加」できる。例えば第1鉄(Fe2+)に関する適当な電子供与半反応は、2Fe2+→2Fe3++2e-として表される。
【0075】
この電子の「活性(activity)」は、硫酸塩還元反応を左へと進めて、ガラス中でSO=を安定させることができる。好適な還元された多価イオンとしては、限定するものではないが、Fe2+、Mn2+、Sn2+、Sb3+、As3+、V3+、Ti3+、及び当業者に公知の他のイオンが挙げられる。各場合において、ガラスの色に対する有害な影響を回避するために、又はAs及びSbの場合には、エンドユーザによるプロセスにおける廃棄物の管理が複雑になるような高いレベルでこれらの成分を添加することを回避するために、これらの成分の濃度を最小化することが重要となり得る。
【0076】
例示的なガラスの主要な酸化物成分、及び上述の微量の構成成分に加えて、ハロゲン化物は、原材料の選択によって導入される汚染物質として、又はガラス中の気体包有を排除するために使用される意図的な成分として、様々なレベルで存在し得る。清澄剤として、ハロゲン化物を約0.4モル%以下のレベルで組み込むことができるが、一般には、オフガス処理装置の腐食を回避するために、可能であれば更に低いレベルでの使用が望ましい。いくつかの実施形態では、個々のハロゲン化物要素の濃度は、個々のハロゲン化物に関して約200ppm重量未満、又は全てのハロゲン化物要素の合計に関して約800ppm重量未満である。
【0077】
これらの主要な酸化物成分、微量の成分、多価イオン及びハロゲン化物清澄剤に加えて、所望の物理的特性、ソラリゼーション特性、光学的特性又は粘弾性特性を達成するために、他の無色の酸化物成分を低濃度で組み込むと有益となり得る。このような酸化物としては、限定するものではないが、TiO、ZrO、HfO、Nb、Ta、MoO、WO、ZnO、In、Ga、Bi、GeO、PbO、SeO、TeO、Y、La、Gd、及び当業者に公知の他の酸化物が挙げられる。例示的なガラスの主要な酸化物成分の相対比を調整することにより、このような無色酸化物を、アニール点、T35k-Tliq又は液相粘度に許容できない影響を及ぼすことなく、最大約2モル%~3モル%のレベルまで添加できる。例えばいくつかの実施形態は、UV色中心の形成を最小化するために、以下の遷移金属酸化物のうちのいずれの1つ又は組み合わせを含むことができる:約0.1モル%~約4.0モル%の酸化亜鉛;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化チタン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化バナジウム;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ニオブ;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化マンガン;約0.1モル%~約2.0モル%の酸化ジルコニウム;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ヒ素;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化スズ;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化モリブデン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化アンチモン;約0.1モル%~約1.0モル%の酸化セリウム;及びこれらの間の全ての部分範囲内の、上で列挙した遷移金属酸化物のうちのいずれ。いくつかの実施形態では、例示的なガラスは、0.1モル%~約4.0モル%未満又は超の、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化ヒ素、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化アンチモン、及び酸化セリウムのいずれの組み合わせを含有できる。
【0078】
いくつかの例示的実施形態は、約74~77モル%のSiO、約3~6モル%のAl、約4~7モル%のRO(ただしそのうちの0~2モル%はNaOである)、約0~3.5モル%のB、約0~1.7モル%のZrO、約11~16モル%のRO、及び約0~4モル%のZnOを含む、ガラス物品又はシートを含む。
【0079】
実験中、一部のガラスを0.025~0.05モル%のレベルの鉄でドープして、光透過率を研究室規模で測定できるように十分な吸収率を導入した。吸収率の測定を、少なくとも厚さが異なる複数の試料に対して実施して、必要な精度を達成し、また以下で測定されかつ更に詳述される透過率値のために、測定された吸収率を、14ppmのFeを含むガラス中の経路長50cmに関してICPで測定された鉄含有量の助けを借りて正規化した。許容可能な透過率値を達成するためには、不純物レベルは、Fe、Cr及びNiの合計で<60ppm程度と、極めて低くなければならないことが分かった。いくつかの実施形態では、不純物レベルはFe<20ppm、Cr<5ppm、及びNi<5ppmとなるべきである。
【0080】
実験中、吸収率(従って透過率)の変化の大部分は、ガラスの酸化還元の変化に関連していることがわかった。酸化還元の変化により、Sn4+/Sn2+比が変化し、これは更に、ガラス中の他の多価イオンの酸化還元状態を定義する。全ての多価元素の中でスズの含有量が最も高いため、これがマスターとして機能して、他の酸化還元比はスズによって定義されることになる。可視波長での吸収率に最も影響する不純物は、鉄であることが分かった。というのは、Fe2+は赤外波長中にその吸収率ピークを有するものの、その末端は赤色及び緑色波長に達するためである。Fe3+はUV波長中にその吸収率ピークを有し、可視スペクトルの青色末端に影響を及ぼすことになるが、これはFe2+の影響に比べると極めて小さい。よって例示的実施形態では、より酸化されたガラス溶融物を有することが好ましい。
【0081】
ガラス溶融物の酸化状態は、ガラス溶融物中の全ての酸化物によって制御され、例えばアルカリイオンによりSnOはSnOよりも安定したものとなり、従ってより酸化された溶融物をもたらす。従って、組成を変更することにより、ガラス中の鉄の酸化還元状態に影響を及ぼすことができ、可視波長において鉄が誘発する吸収を最小化できる。当然のことながら、他の酸化物も吸収を誘発し、NiO及びCrは原材料中に不純物として存在するため、これらも考慮対象となる。例えばNiOは、組成によって大きく変化し得る430nm~630nmの吸収帯域を有し、Crは450nm及び650nmに吸収率ピークを有する。図11は、独立してFe、NiO、及びCrでドープされた例示的なガラス組成物の透過率値を示すグラフである。図11を参照すると、鉄が青色及び赤色の透過率を低下させた一方で、ニッケル及びクロムは共に450nmにおいて大きな影響を有することを観察できる。NiOの影響は、RO修飾ガラスに比べてRO修飾ガラスにおいてより大きいため、例示的なガラス中のNiOの量を低減することが非常に重要である。
【0082】
SiOが多く、74モル%超であり、これに対応してAl及びBのモル%が小さい、例示的実施形態では、アルカリ土類酸化物は主要な改質剤となり、液相‐液相分離が問題となる。ROが少ないほど、相分離傾向が高まる傾向がある。従ってアルカリ土類酸化物の混合物を利用することによって、例示的なガラスにおける相分離を抑制できる。アルカリ、例えばKO、LiO、NaOの利用により、複数のプラスの効果を観察できる(以下の表1及び図12を参照)。図12は、様々なROタイプを含む例示的なガラス組成物の透過率値を示すグラフであり、表1は、ある固定されたベースガラスに関する、アルカリ改質剤のバリエーションを提供する。表1及び図12を参照すると、上述のような効果としては、液相線温度の低下、液相粘度の上昇、及び全ての波長における透過率の改善が挙げられ、これは部分的には、ガラスの特性によって左右される、ガラスの酸化還元状態の変化を原因とする。
【0083】
【表1】
【0084】
更なる実施形態では、アルミナ対アルカリ比の影響を、Al/ROの比のみに変動が導入され、かつガラス組成の残りの部分に関しては全く同一となるようにバッチ処理された、複数のガラスのセット(表2及び図13を参照)を用いて比較した。図13は、表2のガラスに関する透過率値を示すグラフであり、表2は、ベースガラス中の0.79~1.28のAl/ROの変動を提供する。
【0085】
【表2】
【0086】
図13及び表2を参照すると、合計8モル%がAl及びROのために使用され、そのうち1モル%がNaOとして維持された。Al/RO=1に関して透過率は緑色及び赤色波長(550nm及び630nm)において最高となったことを観察できるが、450nm(青色)ではこれらの曲線が重なっている(図13を参照)。液相粘度はAl/RO=1に関して最高となったが、依然として必要な1MPからは遠く離れていた。他のものに関して使用された72時間に比べて、これは24時間しか測定されていないため、このガラスに関しては人工的に低くなった液相線温度が与えられる。一般に液相線温度は、24時間の測定に比べて72時間の測定では10~50℃高くなる。これにより、Al/RO=1のガラスがAl/RO<1のガラスに近くなる。
【0087】
他の実施形態では、アルカリ土類イオンのタイプがガラスの複数の特性に影響を及ぼすことが観察された。RO(例えばBaO)が多いと、液相線温度が低下し、等粘性温度が低下することがよく知られている。これは、以下の表3において提供するベースガラス組成に関しても観察された。しかしながら、アルカリ土類改質剤の特性もまた、ガラス物品の測定される透過率に対して大きな影響を有することが分かった。図14は、様々なアルカリ土類を有するガラスに関する透過率値を示すグラフである。図14を参照すると、赤色及び緑色光透過率の低下を、鉄の酸化還元状態の指標であるROサイズの増大と共に観察できる。均一に分布したRO(例えばBaO、SrO、MgO、CaO)を有するいくつかの例示的なガラスが好ましいものとなり得る。いくつかの実施形態では、複数の改質剤の混合物を利用することにより、結晶化傾向を低減する効果が得られるが、実際にはBaOは液相線温度を比較的大きく抑制するため、使用には適しているものの同時に赤色透過率が低くなる。よって結局の所、全てを混合したものを使用すれば、透過率を低減する又は高密度を提供するために、BaOが多すぎず、また相分離を促進できるよう、MgO又はCaOが多すぎない状態となる、良好な妥協点が得られる。BaOをSrOとしてバッチ処理した他の例示的なガラスも好ましい。BaOの1つの利点は、表3の最後の2つの例を比較することで観察でき、(BaOを有する)H1は、(SrOを有する)I1に比べて100℃低い液相線温度を有し、従って相当高い液相粘度を有する。
【0088】
【表3】
【0089】
上述のように、Al=ROとすることにより、低い吸収率及び比較的高い液相粘度が提供された。以下の表4並びに図15A及び15Bに示すように、ROを犠牲にしてAl+ROの合計量を増大させると、液相線温度が低下し、液相粘度が上昇し、200P及び35kPの等粘性温度が1700~約1200℃に維持されることを観察できる。また、ホウ素含有ガラスでは、Al+ROを増大させると、ガラスの透過率に極めてわずかな変化が導入されることも観察されたが、ホウ素非含有ガラスでは全ての波長における改善が観察された(図15A及び15Bを参照)。この現象は、Alの増加、及び大きなROの量の減少の両方に関連する。
【0090】
【表4】
【0091】
いくつかの実施形態では、SiOの代わりに中程度の量のZrOを添加すると、液相線温度にはほとんど影響がないまま200P温度が低下したことが分かり、これは液相粘度の上昇という複合的な影響を有する(表5を参照)。しかしながら、ZrOを添加しすぎると液相線温度が劇的に上昇することが分かった(表5の最後の例)。また、ZrOを添加した場合に、35kP温度が一定のまま200P温度だけが低下したことが観察され、従ってT(200P-35kP)は低下し、これは、成形中に除去する必要がある熱が少ないことを意味し、これにより、更に高い流量が実現される。以下の表6は、SiO又はROの代わりにZrOを添加した場合の差異も示す。後者の場合、改質剤がガラスから除去され、200P温度及び35kP温度の両方が上昇し、その一方でこれらの差は依然として低減され、液相線温度に影響せず、これにより、極めて高い液相粘度が実現される。ZrOの添加によって透過率はほとんど又は全く影響されなかったことが観察された(影響は、青色波長における透過率の減少である(図16A及び16Bを参照))。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
BaOの代わりにZnOをZrO含有ガラスに添加した場合、液相はZrSiOに変化し、液相線温度は200~300℃だけ上昇することも分かった。ZrOを含まないガラス中でBaOをZnOに置換すると、その影響は概ねマイナスであり、例えば35kP、200Pの両方及びT(200P-35kP)が上昇し、また液相線温度、緑色及び赤色の透過率が改善され、これは最大RO量が減少したため予想されるものである。
【0095】
一般に、ROの含有量が大きいガラスほど、融合線のブリスター形成の量が多くなり、アルカリ非含有ガラス(例えば微小なROレベル)はブリスターをほとんど形成しないことが観察されている。1以上のRO/RO値を有するガラスは、成形用部材(例えばアイソパイプ)上に溢れさせたときに、相当な量のブリスター形成をもたらすことが分かった。しかしながら、RO/RO比が1未満の例示的なガラスは、このようなブリスターの生成の削減に対してプラスの影響を有する。いくつかの実施形態では、RO/ROは0.3から1.0未満までである。他の実施形態では、RO/ROは0.38~0.53である。
【0096】
上述の知識を組み合わせて、可視波長において極めて透明であり、かつフュージョン成形に好ましい粘度を有する、例示的な組成物を開発した。一般に、高い流量を実現するために、約1200℃以上の35kP温度、約1700℃以下の200P温度、及び可能な限り小さいT(200P)-T(35kP)が必要となる。以下の表7において提供される例示的なガラスは、50cmの長さにわたって測定した場合に550nmにおいて>94%の透過率、50cmの長さにわたって測定した場合に450nmにおいて>92%の透過率、及び630nmにおいて可能な限り高い、好ましくは86%を超える透過率を有する。これらの属性は、SiO>70モル%、>73モル%、70~80モル%、73~80モル%、及び73~77モル%のSiOを有するガラス組成物を用いて達成できることが分かった。このガラス組成物は、<8モル%、<6モル%、2~6モル%、又は4~6モル%といった、より低いAlモル%を有することができる。例示的なガラス組成物はまた、<6モル%、0~6モル%、0~3.5モル%、又は0~4モル%のB成分を含む。
【0097】
例示的なガラス組成物は、いくつかの実施形態では、<5モル%、<4モル%、若しくは0~3モル%のNaO、<9モル%、<8モル%、0~9モル%、0~8モル%、2~7モル%、若しくは2.5~7モル%のKO、又は<2モル%、<1.5モル%、若しくは0~1.5モル%のLiOといったアルカリ酸化物改質剤を含むことができる。他の実施形態では合計ROは約4~7モル%であり、そのうち0~2モル%はNaOである。例示的実施形態では、KO>NaOであり、Al-(NaO+KO)=-2~0.5である。
【0098】
例示的なガラス組成物は、いくつかの実施形態では、<6モル%、<5モル%、0~6モル%、0~5モル%、又は2~4モル%のMgO、<6モル%、<5モル%、0~6モル%、0~5モル%、又は2.4~4.5モル%のCaOといったアルカリ土類改質剤を含むことができる。更なるアルカリ土類改質剤としては、<6モル%、<5モル%、0~6モル%、0~5モル%、又は2.5~5モル%のSrO、<6モル%、<5モル%、0~6モル%、0~5モル%、又は1~4モル%のBaO、及び<4モル%、<3モル%、0~4モル%、0~3モル%、又は0~2モル%のZrOが挙げられる。合計ROは、約10~20モル%、11~18モル%、11~16モル%、又は11~15モル%とすることができる。例示的な清澄剤としては、限定するものではないが、SnO及びSbが挙げられ、これらは、赤色透過率を改善して青色透過率をわずかに低下させることにより、各透過率曲線の傾斜を変化させることができる。というのは、アンチモンは系の参加状態に影響を及ぼすことにより、透過率に対する主要な影響要因である鉄の酸化状態を変化させるためである。
【0099】
例示的実施形態では、ZnOは、0~4モル%の範囲内で使用できるが、ZrO含有ガラス中では使用できない。ZrOは約0~2モル%又は0~1.7モル%とすることができる。他の実施形態では、Fe、Cr及びNi不純物レベルは、Fe、Cr及びNiの合計で<60ppm程度、他の実施形態ではFe、Cr及びNiの合計で<20ppm程度といった、低いレベルに維持しなければならない。いくつかの実施形態では、上記不純物レベルは、Fe<20ppm、Cr<5ppm、及びNi<5ppmとする。更なる実施形態では、他の着色用元素(例えばCu、V、Co、Mn等)に関する他の不純物レベルは、合計<20ppmとする。
【0100】
表7は、本明細書に記載の高い透過率を有するガラスの例(試料1~12)を示す。
【0101】
【表7-1】
【0102】
【表7-2】
【0103】
上の表に記載されているように、いくつかの実施形態の例示的なガラスは、上記導光板又はガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含むことができ、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、上記ガラスシートは、約74モル%~約77モル%のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)、約0モル%~約4モル%のZnO、及び約0モル%~約1.7モル%のZrOを含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである。いくつかの実施形態では、上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、約5ppm未満のCo、及び約5ppm未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、Al/RO<1である。いくつかの実施形態では、AlはRO+/-0.05に略等しい。いくつかの実施形態では、上記ガラスはBaOを含有せず、SrO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である。いくつかの実施形態では、上記ガラスはBaOを含有し、SrO、BaO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である。いくつかの実施形態では、T35kP温度は1200℃以上である。いくつかの実施形態では、T200P温度は1700℃以下である。いくつかの実施形態では、長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、上記ガラスシートは化学強化される。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.3以上かつ約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、A1-ROは-2~0.5である。
【0104】
他の実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、上記ガラスシートは、約74モル%のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRはLi、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)を含み、A1-ROは約-2~約0.5である。更なる実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記ガラスシートは、約74モル%超のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)を含み、RO/ROは約0.3以上かつ約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである。いくつかの実施形態では、上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、Al/RO<1である。いくつかの実施形態では、AlはRO+/-0.05に略等しい。いくつかの実施形態では、長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである。
【0105】
また更なる実施形態では、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを含む、ガラス物品が提供され、上記ガラスシートは、約74モル%超のSiO、約3モル%~約6モル%のAl、約0モル%~約3.5モル%のB、約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)、約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)を含み、A1-ROは約-2~約0.5であり、RO/ROは約0.3以上約1.0未満である。いくつかの実施形態では、RO/ROは約0.38~約0.53である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは<0.005の色ずれを有する。いくつかの実施形態では、上記ガラス物品は導光板である。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む。
【0106】
本開示の様々な実施形態は、当該特定の実施形態に関連して記載されている特定の特徴、要素又はステップを伴い得ることが理解されるだろう。また、ある特定の特徴、要素又はステップは、ある特定の実施形態に関連して記載されていても、例示されていない組み合わせ又は順列で、相互交換してよく、又は代替実施形態と組み合わせてよいことが理解されるだろう。
【0107】
また本明細書中で使用される場合、用語「上記(the)」、「ある(a又はan)」は「少なくとも1つの(at least one)」を意味し、そうでないことが明示されていない限り、「唯一の(only one)」に限定されてはならないことも理解されたい。従って例えば「あるリング(a ring)」に関する言及は、文脈によってそうでないことが明示されていない限り、2つ以上のこのようなリングを有する例を含む。同様に「複数の(plurality)」又は「アレイ(array)」は、「2つ以上(more than one)」のものを指すことを意図している。従って「複数の液滴(plurality of droplets)」は、2つ以上のこのような液滴、例えば3つ以上のこのような液滴等を含み、また「リングのアレイ(array of rings)は、2つ以上のこのようなリング、例えば3つ以上のこのようなリング等を含む。
【0108】
本明細書において、範囲は、「約(about)」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現されている場合、その例は、上記ある特定の値から、及び/又は上記別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いることにより、値が概数として表現されている場合、上記特定の値は別の態様を形成することが理解されるだろう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関連でも、他方の端点とは独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0109】
本明細書中で使用される場合、用語「略(substantial)」、「実質的に、略(substantially)」及びこれらの変形形態は、記載されている特徴が、ある値又は記載と等しいか又はおおよそ等しいことを記述することを意図している。例えば「略平面状の(substantially planar)」表面は、平面状の又はおおよそ平面状の表面を指すことを意図している。更に、上で定義したように、「略同様の(substantially similar)」は、2つの値が等しいか又はおおよそ等しいことを指すことを意図している。いくつかの実施形態では、「略同様の」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内又は互いの約2%以内の値を指すことができる。
【0110】
そうでないことが言明されていない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、そのステップを特定の順序で実施することを必要とするものとして解釈されることは、全く意図されていない。従って、ある方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していない場合、又はステップをある特定の順序に限定するべきであることが、特許請求の範囲若しくは説明中で具体的に言明されていない場合、いずれの特定の順序が推定されることは全く意図されていない。
【0111】
特定の実施形態の様々な特徴、要素又はステップが、移行句「…を含む/備える(comprising)」を用いて開示される場合があるが、移行句「…からなる(consisting of)」又は「…から本質的になる(consisting essentially of)」を用いて記載され得るものを含む代替実施形態も含意されていることを理解されたい。従って例えば、A+B+Cを備えるデバイスに対して含意されている代替実施形態は、デバイスがA+B+Cからなる実施形態、及びデバイスがA+B+Cから本質的になる実施形態を含む。
【0112】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を本開示に対して実施できることは、当業者には理解されるだろう。本開示の精神及び内容を組み込んだ、本開示の実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ及び変形が、当業者には想起され得るため、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある全てを含むものとして解釈されるものとする。
【0113】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0114】
実施形態1
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、
上記ガラスシートは:
約74モル%~約77モル%のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である);
約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である);
約0モル%~約4モル%のZnO;及び
約0モル%~約1.7モル%のZrO
を含む、ガラス物品。
【0115】
実施形態2
上記ガラスは<0.005の色ずれを有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0116】
実施形態3
上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0117】
実施形態4
上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0118】
実施形態5
上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0119】
実施形態6
上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する、実施形態1に記載のガラス物品。
【0120】
実施形態7
上記ガラス物品は導光板である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0121】
実施形態8
上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである、実施形態7に記載のガラス物品。
【0122】
実施形態9
上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される、実施形態7に記載のガラス物品。
【0123】
実施形態10
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0124】
実施形態11
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0125】
実施形態12
上記ガラスは、約20ppm未満のFe、約5ppm未満のCo、及び約5ppm未満のNiを含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0126】
実施形態13
Al/RO<1である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0127】
実施形態14
AlはRO+/-0.05に略等しい、実施形態1に記載のガラス物品。
【0128】
実施形態15
上記ガラスはBaOを含有せず、SrO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0129】
実施形態16
上記ガラスはBaOを含有し、SrO、BaO、MgO及びCaOのモル%は互いの1.0モル%以内である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0130】
実施形態17
T35kP温度は1200℃以上である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0131】
実施形態18
T200P温度は1700℃以下である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0132】
実施形態19
長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである、実施形態1に記載のガラス物品。
【0133】
実施形態20
上記ガラスシートは化学強化される、実施形態1に記載のガラス物品。
【0134】
実施形態21
O/ROは約0.3以上約1.0未満である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0135】
実施形態22
O/ROは約0.38~約0.53である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0136】
実施形態23
A1-ROは-2~0.5である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0137】
実施形態24
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、上記厚さは上記前面及び上記背面の周りに4つの縁部を形成し、
上記ガラスシートは:
約74モル%のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%のRO(ただしRはLi、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である)
を含み、
A1-ROは約-2~約0.5である、ガラス物品。
【0138】
実施形態25
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、
上記ガラスシートは:
約74モル%超のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である);
約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)
を含み、
O/ROは約0.3以上約1.0未満である、ガラス物品。
【0139】
実施形態26
O/ROは約0.38~約0.53である、実施形態24又は25に記載のガラス物品。
【0140】
実施形態27
上記ガラスは<0.005の色ずれを有する、実施形態24~26のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0141】
実施形態28
上記ガラスは約600℃超の歪み点を有する、実施形態24~27のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0142】
実施形態29
上記ガラスは約650℃超のアニール点を有する、実施形態24~28のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0143】
実施形態30
上記ガラスは約55×10-7/℃~約64×10-7/℃のCTEを有する、実施形態24~29のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0144】
実施形態31
上記ガラスは約2.51gm/cc@20℃~約2.64gm/cc@20℃の密度を有する、実施形態24~30のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0145】
実施形態32
上記ガラス物品は導光板である、実施形態24~31のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0146】
実施形態33
上記導光板の上記厚さは約0.2mm~約8mmである、実施形態32に記載のガラス物品。
【0147】
実施形態34
上記導光板は、フュージョンドロープロセス、スロットドロープロセス又はフロートプロセスで製造される、実施形態32に記載のガラス物品。
【0148】
実施形態35
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む、実施形態24~34のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0149】
実施形態36
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む、実施形態24~34のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0150】
実施形態37
上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む、実施形態24~34のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0151】
実施形態38
Al/RO<1である、実施形態24~37のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0152】
実施形態39
AlはRO+/-0.05に略等しい、実施形態24~37のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0153】
実施形態40
長さが少なくとも500mmの場合の450nmにおける透過率は85%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の550nmにおける透過率は90%以上であるか、長さが少なくとも500mmの場合の630nmにおける透過率は85%以上であるか、又はこれらの組み合わせである、実施形態24~39のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0154】
実施形態41
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は、幅及び高さを有する前面と、上記前面の反対側の背面と、上記前面と上記背面との間の厚さとを有するガラスシートを備え、
上記ガラスシートは:
約74モル%超のSiO
約3モル%~約6モル%のAl
約0モル%~約3.5モル%のB
約4モル%~約7モル%のRO(ただしRは、Li、Na、K、Rb、Csのうちのいずれの1つ以上である);
約11モル%~約16モル%のRO(ただしRは、Mg、Ca、Sr又はBaのうちのいずれの1つ以上である)
を含み、
A1-ROは約-2~約0.5であり、
O/ROは約0.3以上約1.0未満である、ガラス物品。
【0155】
実施形態42
O/ROは約0.38~約0.53である、実施形態41に記載のガラス物品。
【0156】
実施形態43
上記ガラスは<0.005の色ずれを有する、実施形態41に記載のガラス物品。
【0157】
実施形態44
上記ガラス物品は導光板である、実施形態41に記載のガラス物品。
【0158】
実施形態45
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrをそれぞれ約20ppm未満含む、実施形態41に記載のガラス物品。
【0159】
実施形態46
上記ガラスは、Co、Ni、及びCrを合計約20ppm未満含む、実施形態41に記載のガラス物品。
【0160】
実施形態47
上記ガラスは、約20ppm未満のFe、5ppm未満のCo、及び5ppm未満のNiを含む、実施形態41に記載のガラス物品。
【符号の説明】
【0161】
100 例示的実施形態、導光板、LGP
110 第1の面
130 第1の縁部、光入射縁部
140 第2の縁部
150 第3の縁部
200 LEDのアレイ
500 パネル構造体
520 ベゼル
540 反射及び/又は拡散フィルム、反射フィルム
550 バックプレート
555 構造要素
570 バックライトフィルム
580 LCDパネル
585 構造要素
600 パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B