(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】コンプレッサー装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/12 20060101AFI20220922BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B60C23/12
F04B39/00 107D
(21)【出願番号】P 2019527896
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2017080388
(87)【国際公開番号】W WO2018096110
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】102016122737.4
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】518090052
【氏名又は名称】カーテー プロジェクテントビクルングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン ツィベリディス
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-039013(JP,A)
【文献】特開2013-049413(JP,A)
【文献】特開2015-127506(JP,A)
【文献】特開2007-278796(JP,A)
【文献】特開平11-139118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00-99/00
B60B 21/00-37/12
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハブ(18)に取付け可能な車両用ホイールのタイヤのタイヤ内腔(24)に圧力媒体を供給するコンプレッサー装置(10)であって、前記ホイールハブ(18)は、回転軸(29)の周りに回転可能であるようにホイールキャリア(16)に
取付可能となっており、
該コンプレッサー装置(10)は、コンプレッサー部材(36)の並進運動によって容積が変化可能な少なくとも1つのハブ側圧縮室(40、42)を備え、該圧縮室(40、42)の体積が減少する
ことによって、前記タイヤ内腔に導かれる圧力媒体を
加圧することができ、該コンプレッサー装置(10)は、トランスミッション(33
)を備え、該トランスミッション(33)は、ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)とハブ側トランスミッション部分(34)との相互作用によって、ホイールキャリア側とホイールハブ側との
間の回転運動を前記コンプレッサー部材(36)の振動並進運動に変換するように構成され、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)は、円筒カム(52)を備
えており、
前記ハブ側トランスミッション部分(34)が、径方向(66)の並進運動によって、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)と相互作用する位置と、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)と相互作用しない位置との間で移動可能に設けられていることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、
前記円筒カム(52)は溝状のカムトラック(50)を
具備することを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ハブ側トランスミッション部分(34)は、プランジャー出力部を備えることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項4】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記コンプレッサー部材(36)の並進運動
が前記回転軸(29)の方向におい
て行われることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ハブ側トランスミッション部分(34)は、前記円筒カム(52)に係合す
る鉛筆形の係合要素(48)を備え
ているコンプレッサー装置。
【請求項6】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ハブ側トランスミッション部分(34)は、前記円筒カム(52)に係合する係合要素(48)を備え、該係合要素(48)は、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)に面する端部(70)において、径方向(66)に見て広がるような断面を有することを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項7】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記円筒カム(25)は、少なくとも1つのカムフランク(72)を有し、該カムフランク(72)は、少なくとも径方向(66)に見て回転軸に向かう経路の部分領域に延在することを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項8】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)は、溝状のカムトラック(50)を有し、該カムトラック(50)は、2つの対向するカムフランク(72)を有し、該カムフランク(72)は、それぞれ少なくとも径方向(66)に見て回転軸に向かう経路の部分領域に延在することを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項9】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記コンプレッサー部
材は、環状ピストン(36)を含むことを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項10】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記回転軸(29)に沿って見て、前記ハブ側トランスミッション部分(34)の前記円筒カム(52)との接触部の前後にそれぞれ圧縮室(40、42)が設けられることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項11】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)は、前記ハブ側トランスミッション部分(34)の径方向内方に配置されることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項12】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)は、前記ハブ側トランスミッション部分(34)の径方向外方に配置されることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項13】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記回転軸(29)に関して
径方向に対向する2つのハブ側トランスミッション部分(34)を備えることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項14】
請求項
13に記載のコンプレッサー装置(10)であって、該コンプレッサー装置(10)は、連結機構(54)を備え、該連結機構(54)によって、前記ハブ側トランスミッション部分(34)を前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)と相互作用させることができることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項15】
請求項
14に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記連結機構(54)は、前記ハブ側トランスミッション部分(34)が前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)と相互作用しない位置に付勢されるように構成され
ており、それにより該コンプレッサー装置は、圧力媒体が前記タイヤ内腔に必要になったときのみに作動することを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項16】
請求項
15に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記連結機構(54)は、空気式、磁気式または電気機械式に作動可能であることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項17】
請求項
15に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記連結機構(54)は、前記タイヤ内腔(24)からの圧力媒体によって作動可能であることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項18】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、
前記連結機構(54)と
前記タイヤ内腔(24)との間には、前記タイヤ内腔(24)からの圧力媒体が接するカップリングバルブ(70、310)が
連通するように設けられ、該カップリングバルブ(70、310)は、タイヤ圧力閾値を下回ると開き、それにより、前記連結機構(54)は、前記タイヤ内腔(24)からの圧力媒体によって作動し、前記ハブ側トランスミッション部分(34)を前記ホイールキャリア側トランスミッション部分(44)と相互作用させることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項19】
請求項
18に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記カップリングバルブ(70)は
、前記タイヤ圧力閾値を超えるタイヤ圧力目標値を上回ると閉じ、それにより、前記連結機構(54)に圧力媒体を作用させることが中止され
、前記カップリングバルブ(70、310)またはリリーフバルブ(74、320)は、タイヤ圧力目標値を上回ると、前記連結機構(54)の排気を行うことを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項20】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、該コンプレッサー装置(10)は、前記タイヤ内腔(24)における圧力媒体の圧力、温度および/または湿度の測定および/または表示を行う装置(210)を備え
、該装置(210)は、前記圧力媒体導管(22)を介して前記タイヤ内腔(24)に接続可能であることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項21】
請求項
1に記載のコンプレッサー装置(10)であって、圧力媒体入口側が、フィルター(200)に接続
されていることを特徴とするコンプレッサー装置。
【請求項22】
請求項
21に記載のコンプレッサー装置(10)であって、前記フィルター(200)を清掃するために、前記タイヤ内腔(24)からの、或いは、該コンプレッサー装置(10)による送達を介した圧力媒体を用いるように構成されることを特徴とするコンプレッサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のタイヤのタイヤ内腔に圧力媒体を供給するコンプレッサー装置に関する。ここで、タイヤのタイヤ内腔は、ホイールハブに取付け可能な車両用ホイールの一部であり、ホイールハブは、回転軸の周りに回転可能であるようにホイールキャリアにおいて支持されている。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤのタイヤ内腔に、例えば圧縮空気等の圧力媒体を満たすために、タイヤバルブを車両用ホイールに設け、このタイヤバルブを介して圧力媒体をタイヤ内腔に導入することができることが既知である。
【0003】
乗用車、トラックまたは商用車両等の車両では、タイヤバルブは、通常、タイヤが取り付けられるリムの領域に配置されるため、外側から簡単にアクセス可能である。
【0004】
タイヤバルブは、タイヤ圧力を、特に手動で、制御、場合によっては補正することができるように、例えばホースによって、車両外部の圧力媒体源に接続することができる。
【0005】
さらに、車両用タイヤのタイヤ内腔の圧力媒体充填を自律的に行うことができる車両側圧力媒体供給システムが既知である。これに関して、車両側に設けられた中央圧力媒体源、例えばコンプレッサーまたはアキュムレーターから、ホイールまで、圧力媒体導管が設けられ、タイヤ内腔へと続くことが既知である。ホイールキャリア等の車両に対して回転しない部材から、走行動作時に回転するホイールへの移行部において、いわゆるロータリージョイントが実現され、それにより、走行中、すなわちホイールが回転する場合でも、圧力媒体充填が可能になる。このようにして、タイヤ圧力を、例えば、変化する積載率、路面および周囲温度に適合させることができ、或いは、例えば拡散によって漏れを補償することができる。
【0006】
既知のシステムの問題は、車両外部の圧力媒体源においてそれぞれ保持され、全てのタイヤ内腔における圧力を、労力をかけて試験しなければならないことである。ロータリージョイントを介して圧力媒体をタイヤ内腔に送達する既知の車両側圧力媒体源では、圧力媒体に対するロータリージョイントの動作安全性が問題となる。ロータリージョイントは、非常に高いコストをかけなければ、車両の寿命を長らえさせるように丈夫で長寿命に作製することができず、そのため、費用がかさみ不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、車両の総寿命にわたって信頼性がありメンテナンスが少なくて済むように、タイヤ内腔への圧力媒体の充填を保証するコンプレッサー装置を創出することである。
【0008】
この場合、コンプレッサー装置は自動的に動作することが好ましい。「自動的に」とは、ここでは、車両外部の圧力媒体源を保持、使用する必要がないことと理解される。本発明に係るコンプレッサー装置の動作の開始は自律的に行うことができるが、ただし、車両内に任意に構成された調整装置若しくは制御装置を介して、或いは、運転者による制御信号に基づいて行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、請求項1に記載のコンプレッサー装置によって解決される。本発明に係るコンプレッサー装置は、コンプレッサー装置が、コンプレッサー部材の並進運動によって容積が変化可能な少なくとも1つのハブ側圧縮室を備え、圧縮室の容積の減少によって、タイヤ内腔に導かれる圧力媒体を圧力下に置くことができ、コンプレッサー装置は、トランスミッション、好ましくはカムトランスミッションを備え、トランスミッションは、ホイールキャリア側トランスミッション部分とハブ側トランスミッション部分との相互作用によって、ホイールキャリア側とホイールハブ側との回転運動がコンプレッサー部材の振動並進運動に変換されるように構成され、ホイールキャリア側トランスミッション部分は、円筒カムを備えることを特徴とする。
【0010】
そのようなコンプレッサー装置は、純粋に機械的に可能な構成に基づいて、非常に丈夫に構成することができるという利点を有する。圧縮室をハブ側に配置することによって、圧力下にある圧力媒体が車両用ホイールの回転部分に直接提供されるため、圧力媒体に対するロータリージョイントは不要になる。換言すれば、圧力媒体は、使用位置、すなわち回転するタイヤ内腔に直接提供される。
【0011】
圧力媒体に対するロータリージョイントは、構成が難しく、信頼性があり長期にわたり機能するような実現が技術的に困難である。そうした圧力媒体ロータリージョイントの実現は、車両用ホイールの領域における悪条件により、ここでは汚染および衝撃負荷が予想されることから、更に困難になる。本発明に係るコンプレッサー装置により、コンプレッサー装置が取り付けられた車両の走行動作時、常に十分な圧力下の圧力媒体が利用可能になり、従って、常にタイヤの十分な充填を保証することが可能である。
【0012】
コンプレッサー部材の並進運動が少なくとも部分的に回転軸の方向において、好ましくは完全に回転軸の方向において行われる場合が有利である。それにより、コンプレッサー装置は、容積の大きい圧縮室とともに、径方向に、すなわち、回転軸の方向に対して直交方向に特に省スペースに実現することができる。
【0013】
本願の文脈において、「ハブ側」および「ハブ側部品」とは、ホイールハブに対して回転しないように配置された部品のことと理解される。従って、そのような部品は、ホイールハブに直接または間接的に接続され、ホイールハブのホイールキャリアに対する回転時、ホイールハブとともに回転するようになっている。ホイールキャリアは、車両に固定されている。そのため、ホイールキャリア側およびホイールキャリア側の部品は、ホイールキャリアに対して回転しない。従って、ホイールまたはホイールハブの回転時、ホイールキャリア側部品、例えば車両の車室と、ホイールまたはタイヤ、ホイールハブ、および、更なるハブ側部品との間の回転相対運動が行われる。
【0014】
従って、ホイールキャリア側トランスミッション部分は、車両に設けられた状態において、完全に回転しないようにホイールキャリア側部品に接続される。車両の走行動作時、ホイールキャリア側トランスミッション部分のいずれの部分も回転しない。ハブ側部品のみが回転し、詳細には、ハブ側トランスミッション部分が、完全に回転軸周りに回転する。
【0015】
従って、ハブ側トランスミッション部分は、車両の走行動作時に回転するハブ側部品に関して常に回転しない。ホイールキャリア側トランスミッション部分は、コンプレッサー装置が動作中の場合、ただし好ましくは常に、いずれの場合でも車両またはホイールキャリア側部品とともに回転しない。
【0016】
ホイールキャリア側トランスミッション部分は、完全に固定されて動かず、従って、ホイールキャリア側に対して回転運動も並進運動もせずに配置されることが好ましい。
【0017】
本発明に係るコンプレッサー装置は、車両の各ホイールに配置され、それにより、車両の全てのホイールが、常にそれぞれのタイヤ内腔における十分な圧力を供給されることが好ましい。各ホイールはそれに応じて固有の圧力媒体供給を伴うので、圧力媒体供給のためのロータリージョイントは不要である。
【0018】
上述のコンプレッサー装置が組み込まれた車両も本発明の主題である。
【0019】
ホイールキャリア側トランスミッション部分が溝状のカムトラックを有することが特に有利である。
【0020】
溝状のカムトラックをホイールキャリア側トランスミッション部分に設けることによって、ハブ側トランスミッション部分の形状係合によるガイドを簡単な様式で実現することが可能であり、それにより、ホイールキャリア側とハブ側との間の、すなわちホイールとともに回転する部品との回転運動が、常に制御されて変換されることが確実になる。さらに、これにより、ハブ側トランスミッション部分を簡単な構築形態で構成することができる。
【0021】
さらに、ハブ側トランスミッション部分がプランジャー出力部を含む場合が有利である。これにより、簡単かつ正確に規定された様式で、コンプレッサー部材の振動並進運動が確実になる。
【0022】
好ましい一実施形態において、コンプレッサー装置は、ハブ側トランスミッション部分が、円筒カムに係合する、好ましくは溝状のカムトラックに係合する鉛筆形の係合要素を有するように形成される。ハブ側トランスミッション部分をそのように実施することにより、ハブ側トランスミッション部分とホイールキャリア側トランスミッション部分との間の効果的な力伝達および運動変換が可能になる。
【0023】
本発明に係るコンプレッサー装置の更なる好ましい実施形態において、ハブ側トランスミッション部分は、円筒カムに係合する係合要素を有し、係合要素は、ホイールキャリア側トランスミッション部分に面する端部に、軸方向に広がる断面を有する。それにより、係合要素がホイールキャリア側トランスミッション部分の円筒カムに、圧力を受けず、略摺動式に係合することが可能になる。
【0024】
本発明に係るコンプレッサー装置の更に好ましい一実施形態は、円筒カムが、少なくとも径方向に見て回転軸に向かう経路の部分領域に延在する少なくとも1つのカムフランクを有することを特徴とする。
【0025】
対応して形成されたカムフランクにより、ハブ側トランスミッション部分とホイールキャリア側トランスミッション部分との滑らかな係合が可能になる。さらに、先程記載したカムフランクと、上述したような断面が広がった係合要素との組合せが特に好ましい。
【0026】
さらに、ホイールキャリア側トランスミッション部分は、溝状のカムトラックを有し、カムトラックは、2つの対向するカムフランクを有し、カムフランクは、それぞれ少なくとも径方向に見て回転軸に向かう経路の部分領域に延在することが好ましい。そのように延在するカムフランクは、ハブ側トランスミッション部分と相互作用するホイールキャリア側トランスミッション部分の滑らかな係合だけでなく、自己調心作用も可能にする。ハブ側トランスミッション部分と先程記載したカムトラックとが係合することで、ハブ側トランスミッション部分は略正しい係合位置へと押される。
【0027】
コンプレッサー部材が環状ピストンを含む実施形態も好ましい。
【0028】
それにより、この実施形態では、環状ピストンの周方向範囲全体を、圧縮室を提供するのに利用することができるため、最小の設置空間要件で最大限達成可能な送達率が実現される。
【0029】
また、回転軸に沿って見て、それぞれハブ側トランスミッション部分の円筒カムとの接触部の前後に圧縮室が設けられることを特徴とする実施形態が有利である。これにより、高い送達率が可能である。コンプレッサー部材は振動並進運動を行うので、この実施形態では、圧力媒体を送達するのに、往復運動を利用することができる。
【0030】
更なる好ましい一実施形態は、ホイールキャリア側トランスミッション部分が、ハブ側トランスミッション部分の径方向内方に配置されることを特徴とする。
【0031】
これにより、簡単な省スペースの方法で、ホイールキャリア側トランスミッション部分をホイールキャリアに接続することができるとともに、ホイールキャリア側トランスミッション部分の周りに、ハブ側トランスミッション部分を省スペースに配置することができる。また、この実施例では、ホイールキャリア側トランスミッション部分の径方向外方に環状ピストンを構造上簡単に配置することもでき、それにより、環状ピストンを実現する大きな周面が利用可能であることから、この実施形態は、環状ピストンとして構成されるコンプレッサー部材と組み合わせて特別な利点を提供する。
【0032】
ホイールキャリア側トランスミッション部分をハブ側トランスミッション部分の径方向外方に配置することも可能である。これにより、連結機構用の接続部の中央配置を実現することができる。
【0033】
さらに、ハブ側トランスミッション部分がホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用しない位置に付勢されることを特徴とする実施形態も有利である。これにより、本発明に係るコンプレッサー装置は、タイヤ内腔における圧力媒体が必要とされる場合にのみ動作することが確実になる。このために、ハブ側トランスミッション部分は、制御インパルスによって、ホイールキャリア側トランスミッション部分と係合させることができる。この制御インパルスが与えられない場合、ハブ側トランスミッション部分は、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用しない位置に自動的に戻る。これにより、自動車は、追加のエネルギーコストを伴わずに更に動作することができる。さらに、コンプレッサー装置が不要であれば、コンプレッサー装置の摩耗は生じない。
【0034】
ハブ側トランスミッション部分が、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用する位置に空気式、磁気式、電気式または電気機械式に移行可能である実施形態も有利である。それにより、必要に応じて、単純な制御インパルスによってコンプレッサー装置の動作を開始することができる。ここでは、ハブ側トランスミッション部分の空気式の移行が特に好ましい。
【0035】
ハブ側トランスミッション部分が、好ましくは専ら径方向の並進運動によって、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用する位置に移行可能であることが好ましい。ハブ側トランスミッション部分は、空気または磁気により簡単に駆動することができる。
【0036】
同様に、ハブ側トランスミッション部分が、好ましくは専ら径方向周りの回転運動によって、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用する位置に移行可能であることが有利である。また、ハブ側トランスミッション部分は、空気式または電気式若しくは電気機械式に簡単に駆動することができる。これは、ハブ側トランスミッション部分の僅かな移動経路のみをカバーすればよいという利点を有する。特に、この実施形態では、ハブ側トランスミッション部分を、ホイールキャリア側トランスミッション部分に係合するプレート状の係合部分とともに形成することが有利である。プレート状の係合部分は、そのプレート状の延在部が、コンプレッサー装置の非作動位置において、実質的に円筒カムの経路に対して略平行に向くことができ、コンプレッサー装置の動作の開始のために、係合部分が円筒カムの経路に対して実質的に直交に延在する位置に、回転により移行することができる。
【0037】
コンプレッサー装置が、回転軸に関して真正面に対向する2つのハブ側トランスミッション部分を備える場合が有利である。これにより、運動変換を特に均一に行うことができる。対向する双方のハブ側トランスミッション部分は、共通の圧力室を介して、空気により駆動可能であり、それにより、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用する位置に移行可能であることが好ましい。
【0038】
コンプレッサー装置が連結機構を備え、この連結機構により、ハブ側トランスミッション部分をホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用させることができる場合が有利である。コンプレッサー装置は、必要に応じて、簡単な方法で作動させることができる。
【0039】
連結機構は、ハブ側トランスミッション部分が、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用しない位置に付勢されるように形成される場合が有利である。コンプレッサー装置は、この付勢に起因して、自動的に非作動位置に戻る。
【0040】
連結機構は、好ましくは空気により作動可能であり、アキュムレーターまたはタイヤ内腔からの圧力を連結に利用することができる。
【0041】
従って、連結機構は、タイヤ内腔からの圧力媒体によって作動可能であることが好ましい。
【0042】
連結機構とタイヤ内腔との間には、タイヤ内腔からの圧力媒体が接するカップリングバルブが流動的に設けられ、このカップリングバルブは、タイヤ圧力閾値を下回ると開き、それにより、連結機構は、タイヤ内腔からの圧力媒体によって作動し、ハブ側トランスミッション部分をホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用させる場合が有利である。これにより、タイヤの自動的な充填が保証される。換言すれば、タイヤ内腔における圧力が圧力閾値を下回ると、上記カップリングバルブが開き、空気により駆動可能なハブ側トランスミッション部分が、ホイールキャリア側トランスミッション部分と相互作用する位置に移行し、それにより、コンプレッサー部材が振動並進運動に移行し、コンプレッサー装置が、圧縮室からの圧力媒体をタイヤ内腔に送達し始める。
【0043】
好ましくはタイヤ圧力閾値を超えるタイヤ圧力目標値を上回ると、バルブが閉じ、それにより、連結機構に圧力媒体を作用させることが中止され、好ましくは、カップリングバルブまたはリリーフバルブは、タイヤ圧力目標値を上回ると、連結機構の排気を行う場合が有利である。その結果、コンプレッサー装置は自動的かつ迅速にオフになる。ここでは、タイヤ圧力閾値と目標圧力との間に差がある場合、すなわち、目標圧力がタイヤ圧力閾値よりも高い場合が特に好ましい。カップリングバルブが開くと、そのためいくらかのヒステリシスが生じる。例えば、カップリングバルブは、タイヤ圧力が値xに満たない場合に開くことができ、タイヤ圧力が値1、1xを超える場合には再び閉じることができる。
【0044】
コンプレッサー装置は、タイヤ内腔における圧力媒体の圧力、温度および/または湿度の測定および/または表示を行う装置を備え、好ましくは、この装置は、圧力媒体導管を介してタイヤ内腔に接続可能である場合が有利である。コンプレッサー装置は、いずれにしてもタイヤ内腔に接続されており、タイヤ内腔における圧力媒体の状態に関する測定データを簡単な様式で送ることができる。
【0045】
コンプレッサー装置は、圧力媒体入口側がフィルターに接続される場合が有利である。これにより、コンプレッサー装置の排気が汚染されることが回避される。
【0046】
コンプレッサー装置は、フィルターの清掃のために、タイヤ内腔からの或いはコンプレッサー装置による送達を介した圧力媒体を利用するように構成されることが有利である。フィルターを備えるコンプレッサー装置は、こうして略自発的に清掃される。
【0047】
本発明の更なる特徴、使用可能性および利点は、図面に基づいて説明される本発明の実施例の以下の記載から明らかになる。これらの特徴は、明示的に言及されていなくても、単独および種々の組合せの双方において、本発明の本質とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係るコンプレッサー装置の設置状態の概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図6】本発明の他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図7】本発明の他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図8】本発明の他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図9】本発明の更に他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図10】本発明の更に他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図11】本発明の更に他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図12】本発明の更に他の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図13】本発明の更なる実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図14】本発明の更なる実施形態によるコンプレッサー装置の図である。
【
図15】本発明の別の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。。
【
図16】本発明の別の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。。
【
図17】本発明の別の実施形態によるコンプレッサー装置の図である。。
【
図18】フィルターを備えるコンプレッサー装置の概略図である。
【
図19】カップリングバルブを備えるコンプレッサー装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
一連の図面において、対応する部材および要素には、同じ参照符号が付されている。
【0050】
図1において、本発明に係るコンプレッサー装置10の設置位置が概略的に示されている。コンプレッサー装置は、
図1では、網掛け領域によって単に概略的に示されている。
【0051】
リムには参照符号12が付されている。ブレーキディスクには参照符号14が付され、ホイールキャリアには参照符号16が付され、ホイールハブには参照符号18が付され、ホイールベアリングには参照符号20が付されている。
【0052】
コンプレッサー装置10からは、タイヤ内腔24に向かって、圧力媒体導管22が延在する。タイヤ自体は、
図1には示されていない。
【0053】
ホイールハブ受け部26の領域において、リムは、シール剤を供給するための概略的に示されたポート28を有する。ここでは、ポート28は任意のものである。
【0054】
回転軸29は、一点鎖線で示されており、参照符号29が付されている。
図1に示されている実施形態において、圧力媒体導管22は、リム12の材料を通って延在する。圧力媒体導管22の一部は、ブレーキディスク14の中空のブレーキディスク固定ねじによって実現されることが有利である。
【0055】
圧力媒体導管22が少なくとも部分的にリム12の材料を通って延在する一般的なリムと組み合わせたコンプレッサー装置も、本願の意味において独立した発明である。
【0056】
図2は、本発明に係るコンプレッサー装置10の第1の実施形態を側面図で示している。コンプレッサー装置10は、第1のハブ側ハウジング部分30および第2のハブ側ハウジング部分32を有する。
【0057】
図3において、
図2のコンプレッサー装置10の、矢印IIIの方向から見た回転軸29に沿った断面が示されている。
【0058】
トランスミッションには、参照符号33が付され、カムトランスミッションとして構成されている。ハブ側トランスミッション部分には参照符号34が付されている。
図3では、コンプレッサー装置10が複数のハブ側トランスミッション部分34を備えることが見て取れる。ハブ側トランスミッション部分34には、環状ピストン36が接続され、この環状ピストン36は、コンプレッサー部材38をなす。ハブ側トランスミッション部分34は、そのリニアガイド軸受によって、トランスミッション33のプランジャー出力部を形成する。
【0059】
環状ピストン36の形態のコンプレッサー部材38は、第1の圧縮室40および第2の圧縮室42を画定する。
【0060】
ハブ側トランスミッション部分34は、ホイールキャリア側トランスミッション部分44と相互作用することができるように係合する。ハブ側トランスミッション部分34は、第1のハブ側ハウジング部分においてスロット形状の凹部46内に支持される。スロット形状の凹部46内に支持されることにより、ハブ側トランスミッション部分34は、単に回転軸29の方向に沿って第1のハブ側ハウジング部分30に対して並進運動することができる。
【0061】
ハブ側トランスミッション部分34は、既に述べたように、ホイールキャリア側トランスミッション部分44と係合する。この場合、それぞれのハブ側トランスミッション部分34の係合部分48が、ホイールキャリア側トランスミッション部分にあるカムトラック50に係合する。カムトラック50は、円筒カム52の一実施形態である。
【0062】
図4において、
図2、3のコンプレッサー装置が断面斜視図で示され、
図5においては、
図4と同様の斜視図で示されている。
図5では、ハブ側トランスミッション部分34のうちの1つのみが示され、環状ピストン36および第2のハブ側トランスミッション部分34および第1のハブ側ハウジング部分30は、それぞれ示されていない。そのため、
図5では、カムトラック50の経路が特に明確に見て取れる。
【0063】
図4において、コンプレッサー装置10の動作モードが示されている。ホイールキャリア側トランスミッション部分44とハブ側部品との回転相対運動は、参照符号54の付された曲線矢印によって示されている。カムトラック50がその周方向経路にわたって回転軸29の方向における位置を変え、ホイールキャリア側トランスミッション部分44が回転軸29に沿ってハブ側部品に対して並進運動することが阻止されることで、ハブ側トランスミッション部分34は、ホイールキャリア側トランスミッション部分44の回転によって、二方向矢印56で示される方向に沿って前後に回転軸29に沿って動く。
【0064】
図6は、本発明に係るコンプレッサー装置10の代替的な一実施形態を示している。
【0065】
図6~
図8による実施形態は、ハブ側トランスミッション部分34がホイールキャリア側トランスミッション部分44と連結可能であるという点で、先行の実施形態1~5とは異なる。ハブ側トランスミッション部分34とホイールキャリア側トランスミッション部分44とを連結するために、トランスミッション部分側圧力媒体チャンバー60に圧力媒体を作用させることにより、ハブ側トランスミッション部分34がホイールキャリア側トランスミッション部分44の方向に動く。ハブ側トランスミッション部分34およびトランスミッション部分側圧力媒体チャンバー60は、連結機構62の一部分を形成する。
【0066】
トランスミッション部分側圧力室60に圧力媒体がこれ以上作用しなくなると、ハブ側トランスミッション部分34は、圧力ばね64によって付勢位置にそれぞれ付勢されているため、
図7の右側に示されているような付勢された位置に戻る。
【0067】
図7の左側に示されているハブ側トランスミッション部分34は、ホイールキャリア側トランスミッション部分44に係合し、ホイールキャリア側トランスミッション部分44と相互作用する。ホイールキャリア側トランスミッション部分44と係合させるためには、ハブ側トランスミッション部分34を、径方向66においてホイールキャリア側トランスミッション部分44に対して動かす。
【0068】
ハブ側トランスミッション部分34は、ホイールキャリア側トランスミッション部分に面する端部70において、その断面が径方向66に見て広がるように構成される。
【0069】
カム溝によって形成されているカムトラック52は、2つのカムフランク72を有し、双方のカムフランク72は、径方向に見て回転軸に向かって延在する。従って、カムフランク72は、
図7の断面図において、すなわち、径方向66に沿った断面において、厳密に径方向66には延在しないことを意味する。換言すれば、カムトラック52の内法は、径方向外方に増大する。
【0070】
先程概説したように、カムトラック52およびハブ側トランスミッション部分34の係合部分48を斜めに構成することにより、ホイールキャリア側トランスミッション部分44に対するハブ側トランスミッション部分34の緩やかな連結および分離が可能になる。
【0071】
図9、10は、コンプレッサー装置10の代替的な一実施形態を示している。この実施形態では、ハブ側トランスミッション部分34は、回転可能な球状の係合要素48によって鉛筆形に形成されている。
【0072】
ホイールキャリア側トランスミッション部分44は、カムトラック50として形成された円筒カム52を含む。カムトラックは、段差部76を有する。段差部76は、急な段差ではなく、第1の拡張領域78からカムトラックの奥のより狭い領域80への緩やかな移行を呈する。
【0073】
図9に特によく示されているように、環状の圧縮室40は、チェックバルブを備える。第1のタイプのチェックバルブ82は、圧縮室40に対して、環状ピストンの送出動作の際に空気が流出することができるように設けられ、一方、第2のタイプのチェックバルブ84は、環状ピストンの吸引動作の際に圧縮室40内に空気を吸引することができるように設けられる。
【0074】
図10は、
図9のコンプレッサー装置10を、周方向に90度回転した断面において示している。90度回転した断面であるので、段差部76は、もはやカムトラック50の下側ではなく上側に配置されている。
図9、10に示されているこの双方の角度の間の断面では、段差部76は、カムトラック50の上側および下側の双方に低減した形で形成され、ハブ側トランスミッション部分の緩やかな連結が常に保証されるようになっている。
【0075】
ハブ側トランスミッション部分34をカムトラック50に連結する工程は、
図11、12において概略的に示されている。
【0076】
ハブ側トランスミッション部分34の連結動作は、矢印86によって象徴的に示されている。ハブ側トランスミッション部分34の径方向内方に向かう動きを通して、ハブ側トランスミッション部分34は、径方向内方に向かう動き86に加えて、参照符号88の付された矢印によって示される回転軸の方向へも動く。
【0077】
この動きは、環状ピストン38の動きをもたらす。これに続いてハブ側トランスミッション部分34に対するホイールキャリア側トランスミッション部分44の回転相対運動によって生じるハブ側トランスミッション部分34の動きは、環状ピストン36に伝達され、これは、圧縮室40からの圧力媒体の送出をもたらす。
【0078】
図13は、本発明に係るコンプレッサー装置10の更なる代替的な一実施形態を示している。
図13、14に示されている実施形態において、円筒カム52は、カムトラック50の代わりに、隆起円筒カム90として構成されている。
【0079】
また、隆起円筒カム90は、回転軸29の方向に見ると、コンプレッサー装置が圧力媒体を送達する場合、それぞれハブ側トランスミッション部分34によって上下から係合する。この送達状態は、
図14に示されており、一方、
図13は、ハブ側トランスミッション部分34が隆起円筒カム90に対して離間した配置にある、コンプレッサー装置10の解放位置を示している。
【0080】
ハブ側トランスミッション部分34は、ばねによって、
図13に示されている位置に付勢されている。コンプレッサー装置10を送達状態に移行させるために、矢印95の方向において圧力チャンバー96内に圧力媒体を導入する。これにより、ハブ側トランスミッション部分34が隆起円筒カム90に向かって動き、
図14に示されているように、隆起円筒カム90を把持する。この状態は、ハブ側トランスミッション部分34に圧力室96を介して圧力媒体が作用する限り持続する。
【0081】
ハブ側トランスミッション部分34が隆起円筒カム90に接触している場合、矢印98によって示されているように、環状ピストンが前後に動く。圧力媒体は、環状の圧縮室を介して送達される。この場合、出口方向に開放するチェックバルブ82が開き、圧力媒体が矢印100の方向に流れる。ピストンが吸引フェーズにある場合、矢印102によって示されているように、入口方向に開放するチェックバルブ84を介して周囲空気が吸引される。
【0082】
ハブに固定された部品、すなわちハブ側部品に対するホイールキャリア側トランスミッション部分44の回転は、
図14において矢印104によって示されている。
【0083】
図15は、本発明に係るコンプレッサー装置10の更なる一実施形態を示している。
【0084】
この実施形態では、円筒カム52は、
図13、14の実施形態におけるように、隆起円筒カム90として構成される。しかし、
図15~
図17の実施形態の隆起円筒カム90は、
図13、14の隆起円筒カム90とは、隆起円筒カム90の径方向外方に円盤部110を有するという点で異なっている。
【0085】
円盤部110の表面は、回転方向29に見て、それぞれ1つの平面に延在し、一方、隆起円筒カムの表面は、回転方向29において上記平面から周方向に沿って上下に延在する。
【0086】
ハブ側トランスミッション部分34は、隆起円筒カム90を、回転方向29に見て、それぞれ上側および下側から把持する転動体112を有する鉗子のように、それぞれ形成されている。
【0087】
転動体112が隆起円筒カム90の円盤部110に接触している場合、ハブ側トランスミッション部分34は回転軸29の方向に変位しないため、コンプレッサー部材36の動きは生じない。
【0088】
ここで、
図16において矢印116によって示されているように、圧力媒体が圧力室114に導入される場合、ハブ側トランスミッション部分34は、転動体112とともに径方向内方に動き、それにより、転動体112は、円盤部110から隆起円筒カム90上へと押される。
【0089】
ここでは、ばね118が、圧力室114内への圧力媒体の圧力がハブ側トランスミッション部分34を完全には径方向内方に押すことができないような強さで、ハブ側トランスミッション部分34を径方向外方に付勢するように構成される。圧力室114内の圧力媒体の圧力は、充填を行うタイヤのタイヤ内腔との接続によって提供される。このために、圧力室114は、或る特定の閾値圧力を下回る場合に開放されるカップリングバルブを介して、タイヤ内腔に接続される。閾値を超える目標圧力に達した場合、このカップリングバルブは閉じ、圧力室114への導管が排気される。
【0090】
図17において、ハブ側トランスミッション部分34が最大撓み状態で隆起円筒カム90に押し付けられている状態が示されている。ハブ側トランスミッション部分34は停止部を有せず、ばね118を介して径方向外方に付勢されるとともに、圧力媒体の作用により径方向内方に押されることから、その位置は正確に与えられるものではなく、それにより、隆起円筒カム90の条痕が摩耗によって形成されることが回避される。ハブ側トランスミッション部分34は、隆起円筒カム90との可変の接触部150を有する。
【0091】
さらに、この実施形態において、ハブ側トランスミッション部分に圧力がかかっていないとき、転動体112が隆起円筒カム90に接触しないように、ハブ側トランスミッション部分34の鉗子状のアームが互いから離れるように動く場合が好ましい。
【0092】
図18に示されているように、コンプレッサー装置10は、概して、フィルター200および制御装置210に接続することができる。この場合、フィルター200は、コンプレッサー装置10の圧力媒体入口または空気入口の前に流動的に配置されるように設けられることが好ましい。
【0093】
フィルター200が詰まった場合、制御装置210は、測定接続部220を介してそれを検出することができる。制御装置210によってフィルター200の詰まりが検出された場合、反対の流れ方向に圧力媒体または空気を作用させることによって、フィルターを清掃することができる。コンプレッサー装置10の通常の動作モードにおいて、空気は、フィルター200を介してコンプレッサー装置10の方向に送達され、そこからタイヤ内腔24へと送達される。清掃工程において、圧力媒体または空気は、タイヤ内腔24から排出されて、フィルター200を通して反対の流れ方向に送達されるか、或いは、コンプレッサー装置10が動作を開始して、反対の流れ方向において、タイヤ内腔24の代わりにフィルター200に圧力媒体を送達する。このために、コンプレッサー装置10は、同様の方法で清掃が可能な更なる空気フィルター240を備える追加の入口230を介して、圧力媒体を吸引する。
【0094】
制御装置210は、タイヤ内腔24における圧力媒体の圧力、温度および/または湿度の測定および/または表示を行うように機能することができ、これらの機能は、制御装置210の更なる機能とは独立していることが有利である。
【0095】
図23において、連結機構54の制御系の例示的な一変形形態が示されている。ただし、連結機構54の作動は、電気式、電磁式または電気機械式のいずれでも行うことができる。このために、車両の主バッテリーから或いは車両に設けられた発電機若しくは別のエネルギー源からの電気エネルギーを、摺動接触によってハブ側に導くことができる。
【0096】
一方、発電機をハブ側に配置し、ハブ側とホイールキャリア側との回転相対運動により電気エネルギーを得ることも考えられる。同様に、アキュムレーターをハブ側に、特にリム1のスポークに配置することも考えられる。
【0097】
コンプレッサー装置10、特にその連結機構54は、連結圧力媒体導管300を介してタイヤ内腔24に接続される。連結圧力媒体導管300には、カップリングバルブ310が配置される。連結圧力媒体導管300において、リリーフバルブ320が更に設けられる。コンプレッサー装置10の圧縮室40、42は、送達のために設けられた圧力媒体導管330を介してタイヤ内腔24に接続される。
【0098】
カップリングバルブ310において、タイヤ内腔24の圧力媒体は、タイヤ内を占める圧力の下にある。タイヤ圧力閾値を下回る場合、カップリングバルブ310は開き、これにより、連結機構54は、タイヤ内腔24からの圧力媒体によって作動し、ハブ側トランスミッション部分34がホイールキャリア側トランスミッション部分44と相互作用するようになる。
【0099】
車両が走行する場合、すなわち、ハブ側とホイールキャリア側との回転相対運動が行われる場合、圧縮室40、42からの圧力媒体が、送達のために設けられた圧力媒体導管330を介して、タイヤ内腔24に送達される。
【0100】
連結圧力媒体導管300および送達のために設けられた圧力媒体導管330は、共通して単一の導管としても構成することができる。
【0101】
好ましくはタイヤ圧力閾値を超えるタイヤ圧力目標値を上回る場合、カップリングバルブ310が閉じ、これにより、連結機構54に圧力媒体を作用させることが中止される。タイヤ圧力目標値を上回る場合、カップリングバルブ310またはリリーフバルブ320を介して連結機構54が排気されることが好ましい。従って、タイヤ内腔24内の圧力媒体目標値に達するとすぐに、コンプレッサー装置10がその動作を直接停止することが保証される。
【0102】
連結機構54のこの動作モードは、本願のコンプレッサー装置10の上記実施形態の全ての実施形態および個々の態様と組合せ可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 コンプレッサー装置
12 リム
14 ブレーキディスク
16 ホイールキャリア
18 ホイールハブ
20 ホイールベアリング
22 圧力媒体導管
24 タイヤ内腔
26 ホイールハブ受け部
28 ポート
29 回転軸
30 第1のハブ側ハウジング部分
32 第2のハブ側ハウジング部分
33 トランスミッション
34 ハブ側トランスミッション部分
36 環状ピストン
38 環状ピストン
40 第1の圧縮室
42 第2の圧縮室
44 ホイールキャリア側トランスミッション部分
46 凹部
48 係合部分
50 カムトラック
52 カムトラック
54 連結機構
60 トランスミッション部分側圧力媒体チャンバー
62 連結機構
66 径方向
70 端部
72 カムフランク
76 段差部
78 第1の拡張領域
80 領域
82 チェックバルブ
84 チェックバルブ
90 隆起円筒カム
96 圧力チャンバー
110 円盤部
112 転動体
114 圧力室
150 接触部
200 フィルター
210 制御装置
220 測定接続部
230 入口
240 空気フィルター
300 連結圧力媒体導管
310 カップリングバルブ
320 リリーフバルブ
330 圧力媒体導管