(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ロイコトリエンA4ヒドロラーゼの阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 211/34 20060101AFI20220922BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20220922BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20220922BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220922BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C07D211/34
A61K31/445
A61K31/4545
A61P29/00
C07D413/14 CSP
(21)【出願番号】P 2019530404
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 US2017065571
(87)【国際公開番号】W WO2018107153
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520462193
【氏名又は名称】セルタクシー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイネスタッド、カート
(72)【発明者】
【氏名】ギルフォード、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】カークランド、トム
(72)【発明者】
【氏名】バーット、ロパ
(72)【発明者】
【氏名】スプリングマン、エリック
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513681(JP,A)
【文献】国際公開第2007/079078(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008年,Vol. 18,3895-3898
【文献】International Journal of Drug Discovery,2010年,Volume 2, Issue 2,20-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I-A):
【化1】
を有し、
式中、
R
1a
は、水素、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアリール、又は任意に置換されたヘテロアリールであり、
Y
は、水素、又は任意に置換されたアルキル
であり、
Z
は、
【化2】
であ
る、
単一の立体異性体として、もしくは立体異性体の混合物としての化合物、
又はその薬学的に許容される塩、アンモニウムイオン、もしくはN-オキシド。
【請求項2】
R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項3】
1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボン酸で
ある請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
下記表中の化合物のうちのいずれかの式のものである、請求項
1に記載の化合物。
【表1-1】
【表1-2】
【請求項5】
R
1aがハロゲンであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化4】
【請求項6】
R
1aが-Clであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化5】
【請求項7】
R
1aがハロゲンであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化6】
【請求項8】
R
1aが-Clであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化7】
【請求項9】
R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化8】
【請求項10】
R
1aが
【化9】
であり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化10】
【請求項11】
R
1aが
【化11】
であり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化12】
【請求項12】
R
1aが-Hであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化13】
【請求項13】
R
1aが-Hであり、Zが下記である、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【化14】
【請求項14】
薬学的に許容される賦形剤及び治療に有効な量の請求項
1に記載の化合物
又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2016年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/432,231号明細書の利益及びこの仮特許出願に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、ロイコトリエンA4ヒドロラーゼ阻害剤として適しており炎症性障害の治療に有用な置換アミン及び誘導体を含む化合物を記載する。
【0003】
背景技術
ロイコトリエンB4(LTB4)は、好中球、単球、マクロファージ、T細胞及びB細胞を含む炎症細胞の強力な炎症促進性活性化因子である。LTB4による免疫細胞プライミング及び活性化は、走化性、接着、フリーラジカル放出、脱顆粒及びサイトカイン放出を促進し得る。LTB4は、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、乾癬及びアテローム性動脈硬化症を含む多くの炎症性疾患状態の拡大に重要な役割を果たす。
【0004】
強皮症性肺疾患患者から得られた気管支肺胞洗浄液では、LTB4濃度が上昇している。このため、LTB4の生合成又はLTB4に対する細胞の応答を阻害する治療剤は、これらの炎症症状の治療に有用であり得る。
【0005】
アラキドン酸(AA)からのLTB4の生合成は、以下の3つの酵素の作用を含む:膜脂質からAAを放出するホスホリパーゼA2(PLA2)、不安定なエポキシドロイコトリエンA4(LTA4)を形成する5-リポキシゲナーゼ(5-LO)、及びLTB4を形成するロイコトリエンA4ヒドロラーゼ(LTA4-h)。
【0006】
LTA4-hは、M1クラスのメタロヒドロラーゼの単量体、可溶性、69kDの二官能性亜鉛依存性金属酵素である。LTA4-hは、2つの反応、すなわち、LTA4をLTB4に変換する立体特異的エポキシドヒドロラーゼ反応、及び発色基質のペプチダーゼ切断を触媒する。LTA4-h活性の阻害剤によるLTB4産生の減少は、広範囲の疾患に対する治療的可能性を有する。前臨床試験では、LTA4-h阻害剤が有効な抗炎症剤であり、ひいては、炎症などのロイコトリエンを介する症状を予防及び/又は治療する能力を提供することが示されている。LTA4-h阻害剤は、例えば、米国特許第7,737,145号明細書及び米国特許出願公開第2010/0210630A1号明細書に開示されており、それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
追加のLTA4-h阻害剤を開発することは有利であろう。
【0008】
発明の概要
本開示による化合物は、LTA4-hの活性を阻害し、したがって、LTA4-h活性の阻害によって改善される疾患及び障害を治療するための薬剤として有用である。
【0009】
一態様では、本開示は、単一の立体異性体として、もしくは立体異性体の混合物としての式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形体、クラスレート、アンモニウムイオン、N-オキシドもしくはプロドラッグを提供し、
【化1】
【0010】
式中、
【0011】
R1aは、水素、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、シアノ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキルアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロシクリルアルキル、任意に置換されたアミジニル、任意に置換されたグアニジニル、-R13-OR10、-R13-C(=O)OR10、又はR13-C(=O)R10であり、
【0012】
R3は、直接結合、-O-、-R12-O-、-O-R12-、-O-R12-O-、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルケニレン鎖、又は任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキニレン鎖、-R13-C(=O)R13、-O-R13-C(=O)R13、-R13-O-R13-C(OH)-R13、又はNR13-であり、
【0013】
Yは、水素、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、シアノ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキルアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、又は任意に置換されたヘテロシクリルアルキルであり、
【0014】
【0015】
各R10は独立して、水素、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、又は任意に置換されたヘテロシクリルアルキルであり、
【0016】
各R12は独立して、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルケニレン鎖、又は任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキニレン鎖であり、
【0017】
各R13は独立して、直接結合、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルケニレン鎖、又は任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキニレン鎖であり、
【0018】
それは単一の立体異性体として、もしくは立体異性体の混合物として、
【0019】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形体、クラスレート、アンモニウムイオン、N-オキシドもしくはプロドラッグ、である。
【0020】
別の態様では、本開示は医薬組成物を提供し、この組成物は、治療有効量の上記の式(I)の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0021】
別の態様では、本開示は、哺乳動物のLTA4-h活性を阻害することによって改善される疾患又は障害を治療する方法を提供し、この方法は、それを必要とする哺乳動物に上記の式(I)の化合物の治療有効量を投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例示的な実施形態の詳細な説明を以下の開示に記載する。
【0023】
本明細書で使用される場合、単語「a」及び「an」は、特に指示がない限り、1つ以上を含むことを意図する。例えば、「化合物(a compound)」とは、そのような化合物のうちの1つ以上を指す。
【0024】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、反対の指定がない限り、以下の用語は以下に示された意味を有する。
「アミノ」とは、-NH2ラジカルを指す。
「シアノ」とは、-CNラジカルを指す。
「ヒドロキシ」とは、-OHラジカルを指す。
「ニトロ」とは、-NO2ラジカルを指す。
「オキソ」とは、=Oラジカルを指す。
【0025】
「アルキル」とは、炭素原子及び水素原子のみからなり、不飽和を含有せず、単結合によって分子の残部に結合している直鎖又は分岐の炭化水素鎖ラジカルを指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子又は1~6個の炭素原子を有する。アルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなどが挙げられる。任意に置換されたアルキル基は、以下に詳細に記載される1つ以上の置換基で置換されたアルキル基であり得る。好適な置換基の非限定的な例には、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)が挙げられ、式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ又はアルキル基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は特に別途定義されていない限り無置換である。
【0026】
「アルケニル」とは、炭素原子及び水素原子のみからなり、少なくとも1つの二重結合を含有し、2~12個の炭素原子、実施形態では2~8個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している直鎖又は分岐の炭化水素鎖ラジカル基、例えば、エテニル、プロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ペント-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどを指す。本明細書中で別途具体的に述べない限り、アルケニル基は、以下の置換基のうちの1つによって任意に置換されていてもよい:シアノ、ニトロ、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は特に別途定義されていない限り無置換である)。
【0027】
「アルキニル」とは、炭素原子及び水素原子のみからなり、少なくとも1つの三重結合を含有し、場合により少なくとも1つの二重結合を含有し、2~12個の炭素原子、実施形態では2~8個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している直鎖又は分岐の炭化水素鎖ラジカル基、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどを指す。本明細書中で別途具体的に述べない限り、アルキニル基は、以下の置換基のうちの1つによって任意に置換されていてもよい:シアノ、ニトロ、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は特に別途定義されていない限り無置換である)。
【0028】
「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とは、分子の残部をラジカル基に連結し、炭素及び水素のみからなり、不飽和を含有せず、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の二価炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合し、単結合を介してラジカル基に結合している。アルキレン鎖の分子の残部及びラジカル基への結合点は、アルキレン鎖内の1個の炭素を介するか、鎖内の任意の2個の炭素を介するものであり得る。本明細書中で別途具体的に述べない限り、アルキレン鎖は、以下の置換基のうちの1つによって任意に置換されていてもよい:ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は特に別途定義されていない限り無置換である)。
【0029】
「アルケニレン」又は「アルケニレン鎖」とは、分子の残部をラジカル基に連結し、炭素及び水素のみからなり、少なくとも1つの二重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の二価炭化水素鎖、例えば、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレンなどを指す。アルケニレン鎖は、二重結合又は単結合を介して分子の残部に結合し、二重結合又は単結合を介してラジカル基に結合している。アルケニレン鎖の分子の残部及びラジカル基への結合点は、鎖内の1個の炭素又は任意の2個の炭素を介するものであり得る。本明細書中で別途具体的に述べない限り、アルケニレン鎖は、以下の置換基のうちの1つによって任意に置換されていてもよい:ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は別途指示されない限り無置換である)。
【0030】
「アルキニレン」又は「アルキニレン鎖」とは、分子の残部をラジカル基に連結し、炭素及び水素のみからなり、少なくとも1つの三重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の二価炭化水素鎖、例えば、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。アルキニレン鎖は、単結合を介して分子の残部に結合し、二重結合又は単結合を介してラジカル基に結合している。アルキニレン鎖の分子の残部及びラジカル基への結合点は、鎖内の1個の炭素又は任意の2個の炭素を介するものであり得る。本明細書中で別途具体的に述べない限り、アルキニレン鎖は、以下の置換基のうちの1つによって任意に置換されていてもよい:アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルケニル、シアノ、ニトロ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、オキソ、トリメチルシリル、-OR15、-OC(=O)-R15、-N(R15)2、-C(=O)R15、-C(=O)OR15、-C(=O)N(R15)2、-N(R15)C(=O)OR15、-N(R15)C(=O)R15、-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びS(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つ以上のハロ基で任意に置換された)、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、上記の各置換基は別途指示されない限り無置換である)。
【0031】
「アルコキシ」とは、式-ORaのラジカルを指し、式中、Raは、上記定義の1~12個の炭素原子を含有するアルキルラジカルである。アルコキシラジカルのアルキル部分は、アルキルラジカルについて上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0032】
「アルコキシアルキル」とは、式-Ra-O-Raのラジカルを指し、式中、各Raは独立して上記定義のアルキルラジカルである。酸素原子は、いずれかのアルキルラジカル中の任意の炭素に結合していてもよい。アルコキシアルキルラジカルの各アルキル部分は、アルキル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0033】
「アミジニル」とは、式Rx-C(=NRx)-N(Rx)2のラジカルを指し、式中、各Rxは独立して、本明細書で定義の直接結合、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0034】
「アリール」とは、水素及び炭素のみからなり、6~19個の炭素原子を含有する芳香族単環式又は多環式炭化水素環系を指し、ここで環系は部分的又は完全に飽和していてもよい。アリール基には、限定するものではないが、フルオレニル、フェニル及びナフチルなどの基が挙げられる。本明細書中で別途具体的に述べない限り、用語「アリール」又は接頭辞「ar-」(「アラルキル(aralkyl)」など)は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、ニトロ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R16-OR15、-R16-OC(=O)-R15、-R16-N(R15)2、-R16-C(=O)R15、-R16-C(=O)OR15、-R16-C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)C(=O)OR15、-R16-N(R15)C(=O)R15、-R16-N(R15)C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びR16-S(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、各R16は独立して、直接結合又は直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはアルケニレン鎖である。)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたアリールラジカルを含むことを意図する。
【0035】
「アラルキル」とは、式-RaRbのラジカルを指し、式中、Raは上記定義のアルキルラジカルであり、Rbは上記定義の1つ以上のアリールラジカル、例えばベンジル、ジフェニルメチルなどである。アリールラジカルは、上記のように任意に置換されていてもよい。
【0036】
「アラルケニル」とは、式-RcRbのラジカルを指し、式中、Rcは上記定義のアルケニルラジカルであり、Rbは上記定義の1つ以上のアリールラジカルである。アラルケニルラジカルのアリール部分は、アリール基について上述したように任意に置換されていてもよい。アラルケニルラジカルのアルケニル部分は、アルケニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0037】
「アラルキニル」とは、式-RdRbのラジカルを指し、式中、Rdは上記定義のアルキニルラジカルであり、Rbは上記定義の1つ以上のアリールラジカルである。アラルキニルラジカルのアリール部分は、アリール基について上述したように任意に置換されていてもよい。アラルキニルラジカルのアルキニル部分は、アルキニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0038】
「アリールオキシ」とは、式-ORbのラジカルを指し、式中、Rbは上記定義のアリール基である。アリールオキシラジカルのアリール部分は、上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0039】
「アラルキルオキシ」とは、式-ORbのラジカルを指し、式中、Rbは上記定義のアラルキル基である。アラルキルオキシラジカルのアラルキル部分は、上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0040】
「アンモニウムイオン」とは、上で定義したように任意に置換されたアルキル基による窒素の追加の置換により正電荷を含有する本開示の化合物内の窒素を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「クラスレート」とは、錯体が固体形態で取り扱われ得、含まれる構成成分(又は「ゲスト」分子)がその後溶媒の作用によって又は溶融によって放出されるように、包接錯体として気体、液体又は化合物を固定する物質を指す。用語「クラスレート」は、本明細書では「包接分子」という句又は「包接錯体」という句と区別なく使用される。本開示で使用されるクラスレートはシクロデキストリンから調製される。シクロデキストリンは、様々な分子とクラスレート(すなわち包接化合物)を形成する能力を有することが広く知られている。例えば、J.L.Atwood、J.E.D.Davies及びD.D.MacNicol編、Inclusion Compounds、London、Orlando、Academic Press、1984;Goldberg,I.、「The Significance of Molecular Type,Shape and Complementarity in Clathrate Inclusion」、Topics in Current Chemistry(1988)、第149巻第2~44頁;Weber,E.ら、「Functional Group Assisted Clathrate Formation-Scissor-Like and Roof-Shaped Host Molecules」、Topics in Current Chemistry(1988)、第149巻第45~135頁;及びMacNicol,D.D.ら、「Clathrates and Molecular Inclusion Phenomena」、Chemical Society Reviews(1978)、第7巻第1号第65~87頁を参照されたい。シクロデキストリンクラスレートへの変換は、ある種の化合物の安定性及び溶解性を増大させ、それにより薬剤としてそれらを使用するのを容易にすることが知られている。例えば、Saenger,W.、「Cyclodextrin Inclusion Compounds in Research and Industry」、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1980)、第19巻第344~362頁;米国特許第4,886,788号明細書(Schering A G);米国特許第6,355,627号明細書(Takasago);米国特許第6,288,119号明細書(Ono Pharmaceuticals);米国特許第6,110,969号明細書(Ono Pharmaceuticals);米国特許第6,235,780号明細書(Ono Pharmaceuticals);米国特許第6,262,293号明細書(Ono Pharmaceuticals);米国特許第6,225,347号明細書(Ono Pharmaceuticals);及び米国特許第4,935,446号明細書(Ono Pharmaceuticals)を参照されたい。
【0042】
「シクロデキストリン」とは、α(1-4)結合によって互いに結合している少なくとも6つのグルコピラノース単位からなる環状オリゴ糖を指す。オリゴ糖環は、トーラスの狭い末端にあるグルコース残基の第一級ヒドロキシル基とともにトーラスを形成する。第二級グルコピラノースヒドロキシル基は、広い方の末端に位置する。シクロデキストリンは、疎水性分子をそれらの空洞内に結合させることによって水溶液中で疎水性分子と包接錯体を形成することが示されている。そのような錯体の形成は、蒸発の喪失から、酸素、可視光及び紫外線による攻撃から、ならびに分子内及び分子間反応から「ゲスト」分子を保護する。そのような錯体はまた、錯体が温かい湿った環境に遭遇するまで揮発性物質を「固定」するのに役立ち、その時点で、錯体が溶解し、ゲスト分子とシクロデキストリンとに解離する。本開示の目的のために、6-グルコース単位を含有するシクロデキストリンがα-シクロデキストリンとして明記されるのに対して、7及び8個のグルコース残基を有するシクロデキストリンはそれぞれβ-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンとして指定される。シクロデキストリンの命名法に対する最も一般的な代替法は、これらの化合物をシクロアミロースとして命名することである。
【0043】
「シクロアルキル」とは、炭素原子及び水素原子のみからなり、縮合又は架橋環系を含み得、3~15個の炭素原子を有し、実施形態では3~10個の炭素原子を有し、飽和又は不飽和であり、単結合により分子の残部に結合している安定な非芳香族単環式又は多環式炭化水素ラジカルを指す。単環式ラジカルには、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。多環式ラジカルには、例えば、アダマンチン、ノルボルナン、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。本明細書中に特に明記しない限り、用語「シクロアルキル」は、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、ニトロ、オキソ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R16-OR15、-R16-OC(=O)-R15、-R16-N(R15)2、-R16-C(=O)R15、-R16-C(=O)OR15、-R16-C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)C(=O)OR15、-R16-N(R15)C(=O)R15、-R16-N(R15)C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びR16-S(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、各R16は独立して、直接結合又は直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはアルケニレン鎖である。)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたシクロアルキルラジカルを含むことを意図する。
【0044】
「シクロアルキルアルキル」とは、式-RaReのラジカルを指し、式中、Raは上記定義のアルキルラジカルであり、Reは上記定義のシクロアルキルラジカルである。アルキルラジカル及びシクロアルキルラジカルは、上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0045】
「シクロアルキルアルケニル」とは、式-RcReのラジカルを指し、式中、Rcは上記定義のアルケニルラジカルであり、Reは上記定義のシクロアルキルラジカルである。アルケニルラジカル及びシクロアルキルラジカルは、上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0046】
「シクロアルキルアルキニル」とは、式-RdReのラジカルを指し、式中、Rdは上記定義のアルキニルラジカルであり、Reは上記定義のシクロアルキルラジカルである。アルキニルラジカル及びシクロアルキルラジカルは、上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0047】
「グアニジニル」とは、式(Rz)2N-C(=NRz)-N(Rz)2のラジカルを指し、式中、各Rzは独立して、本明細書で定義の直接結合、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。
【0048】
「ハロ」とは、ブロモ、クロロ、フルオロ又はヨードを指す。
【0049】
「ハロアルキル」とは、上で定義したように1つ以上のハロラジカルによって置換された上記定義のアルキルラジカル、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1-ブロモメチル-2-ブロモエチルなどを指す。ハロアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0050】
「ハロアルケニル」とは、上で定義したように1つ以上のハロラジカルによって置換された上記定義のアルケニルラジカルを指す。ハロアルキルラジカルのアルケニル部分は、アルケニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0051】
「ハロアルキニル」とは、上で定義したように、1つ以上のハロラジカルによって置換された上記定義のアルキニルラジカルを指す。ハロアルキルラジカルのアルキニル部分は、アルキニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0052】
「ヘテロシクリル」とは、2~12個の炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子とからなる安定な3~18員の非芳香族環ラジカルを指す。本明細書中で別途具体的に述べない限り、ヘテロシクリルラジカルは、縮合又は架橋環系を含み得る単環式、二環式、三環式又は四環式環系であり得る。ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素又は硫黄原子は任意に酸化されていてもよい。窒素原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロシクリルラジカルは部分的に又は完全に飽和していてもよい。そのようなヘテロシクリルラジカルの例には、限定するものではないが、アゼピニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル、ヘキサヒドロ-1H-1,4-ジアゼピニル、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキシラニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられる。本明細書中で別途具体的に述べない限り、用語「ヘテロシクリル」は、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、オキソ、チオキソ、ニトロ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R16-OR15、-R16-OC(=O)-R15、-R16-N(R15)2、-R16-C(=O)R15-R16-C(=O)OR15、-R16-C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)C(=O)OR15、-R16-N(R15)C(=O)R15、-R16-N(R15)C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びR16-S(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、各R16は独立して、直接結合又は直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはアルケニレン鎖である。)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換された上記定義のヘテロシクリルラジカルを含むことを意図する。
【0053】
「N-ヘテロシクリル」とは、少なくとも1個の窒素を含有し、ヘテロシクリルラジカルの分子の残部への結合点がヘテロシクリルラジカル中の窒素原子を介するものである上記定義のヘテロシクリルラジカルを指す。N-ヘテロシクリルラジカルは、ヘテロシクリルラジカルについて上述したように任意に置換されていてもよい。
【0054】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、式-RaRfのラジカルを指し、式中、Raは上記定義のアルキルラジカルであり、Rfは上記定義のヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは窒素原子でアルキルラジカルに結合していてもよい。ヘテロシクリルアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロシクリルアルキルラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0055】
「ヘテロシクリルアルケニル」とは、式-RcRfのラジカルを指し、式中、Rcは上記定義のアルケニルラジカルであり、Rfは上記定義のヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは窒素原子でアルケニルラジカルに結合していてもよい。ヘテロシクリルアルケニルラジカルのアルケニル部分は、アルケニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロシクリルアルケニルラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0056】
「ヘテロシクリルアルキニル」とは、式-RdRfのラジカルを指し、式中、Rdは上記定義のアルキニルラジカルであり、Rfは上記定義のヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは窒素原子でアルキニルラジカルに結合していてもよい。ヘテロシクリルアルキニルラジカルのアルキニル部分は、アルキニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロシクリルアルキニルラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0057】
「ヘテロアリール」とは、1~13個の炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子とからなる3~18員の完全又は部分的芳香族環ラジカルを指す。本開示の目的のために、ヘテロアリールラジカルは、縮合又は架橋環系を含み得る単環式、二環式、三環式又は四環式環系であり得る。ヘテロアリールラジカル中の窒素、炭素又は硫黄原子は任意に酸化されていてもよい。窒素原子は任意に四級化されていてもよい。その例には、限定するものではないが、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ-[1,2,5]-オキサジアゾリル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、インドリジニル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル及びチオフェニル(すなわちチエニル)が挙げられる。本明細書中で別途具体的に述べない限り、用語「ヘテロアリール」は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、シアノ、オキソ、チオキソ、ニトロ、オキソ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R16-OR15、-R16-OC(=O)-R15、-R16-N(R15)2、-R16-C(=O)R15、-R16-C(=O)OR15、-R16-C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)C(=O)OR15、-R16-N(R15)C(=O)R15、-R16-N(R15)C(=O)N(R15)2、-R16-N(R15)S(=O)tR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)tOR15(式中、tは1又は2である)、-R16-S(=O)pR15(式中、pは0、1又は2である)及びR16-S(=O)tN(R15)2(式中、tは1又は2である)(式中、各R15は独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、各R16は独立して、直接結合又は直鎖もしくは分岐のアルキレンもしくはアルケニレン鎖である。)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換された上記定義のヘテロアリールラジカルを含むことを意図する。
【0058】
「N-ヘテロアリール」とは、少なくとも1個の窒素を含有し、ヘテロアリールラジカルの分子の残部への結合点がヘテロアリールラジカル中の窒素原子を介するものである上記定義のヘテロアリールラジカルを指す。N-ヘテロアリールラジカルは、ヘテロアリールラジカルについて上述したように任意に置換されていてもよい。
【0059】
「ヘテロアリールアルキル」とは、式-RaRgのラジカルを指し、式中、Raは上記定義のアルキルラジカルであり、Rgは上記定義のヘテロアリールラジカルである。ヘテロアリールアルキルラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロアリールアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0060】
「ヘテロアリールアルケニル」とは、式-RcRgのラジカルを指し、式中、Rcは上記定義のアルケニルラジカルであり、Rgは上記定義のヘテロアリールラジカルである。ヘテロアリールアルケニルラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロアリールアルケニルラジカルのアルケニル部分は、アルケニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0061】
「ヘテロアリールアルキニル」とは、式-RdRgのラジカルを指し、式中、Rdは上記定義のアルキニルラジカルであり、Rgは上記定義のヘテロアリールラジカルである。ヘテロアリールアルキニルラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。ヘテロアリールアルキニルラジカルのアルキニル部分は、アルキニル基について上で定義したように任意に置換されていてもよい。
【0062】
「ヒドロキシアルキル」とは、1つ以上のヒドロキシ(-OH)基によって置換された上記定義のアルキルラジカルを指す。ヒドロキシアルキルラジカルがヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)に結合している場合、ヒドロキシ基は、ヘテロ原子に直接結合しているアルキル基中の炭素に結合することはできない。
【0063】
「ヒドロキシイミノアルキル」とは、ヒドロキシイミノ(=NOH)基によって置換された上記定義のアルキルラジカルを指す。
【0064】
「多形体」とは、本開示の化合物の多形形態を指す。固体は、非晶形又は結晶形で存在する。結晶形の場合、分子は三次元格子部位に配置されている。化合物が溶液又はスラリーから再結晶化する場合、様々な空間的格子配置で結晶化し得、この特性を「多形性」と呼び、その様々な結晶形をそれぞれ「多形体」と呼ぶ。所与の物質の様々な多形形態は、溶解性及び解離、真密度、結晶形状、圧密挙動、流動特性及び/又は固体状態安定性などの1つ以上の物理的特性に関して互いに異なり得る。2つ(又はそれ以上)の多形形態で存在する化学物質の場合、不安定な形態は一般に、十分な期間の後に所与の温度で熱力学的に比較的安定な形態に転換する。この転換が急速でない場合、熱力学的に不安定な形態は「準安定な」形態と呼ばれる。一般に、安定な形態は、最も高い融点、最も低い溶解度、及び最大の化学的安定性を示す。ただし、準安定な形態でも、通常の保存条件下で、市販形態での使用を可能にするのに十分な化学的及び物理的安定性を示し得る。この場合、準安定な形態は、安定性は低いが、溶解度の向上又は優れた経口バイオアベイラビリティーなど、安定な形態のものよりも望ましい特性を示し得る。
【0065】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下又は加溶媒分解によって、本開示の生物学的に活性な化合物に変換され得る化合物を示すことを意図する。したがって、用語「プロドラッグ」とは、薬学的に許容される本開示の化合物の代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与した場合に不活性であり得るが、インビボで本開示の活性化合物に変換される。プロドラッグは、例えば血液中の加水分解によって、典型的にはインビボで急速に変換されて本開示の親化合物を生じる。プロドラッグ化合物は、多くの場合、哺乳動物生物に対して、溶解性、組織適合性又は遅延放出という利点をもたらす(Bundgard,H.、Design of Prodrugs(1985)、第7~9頁、第21~24頁(Elsevier、Amsterdam)を参照されたい)。
【0066】
プロドラッグに関する考察は、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHiguchi,T.ら、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Series、第14巻、及びBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987に記載されている。
【0067】
用語「プロドラッグ」はまた、そのようなプロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合に、インビボで本開示の活性化合物を放出する任意の共有結合した担体を含むことを意図する。本開示の化合物のプロドラッグは、ルーチンの操作又はインビボのいずれかで修飾が切断されて本開示の親化合物を生じるように、本開示の化合物に存在する官能基を修飾することによって調製され得る。プロドラッグは、本発明の化合物のプロドラッグを哺乳動物対象に投与した際に切断されてそれぞれ遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基又は遊離メルカプト基を形成する任意の基にヒドロキシ基、アミノ基又はメルカプト基が結合している本開示の化合物を含む。プロドラッグの例には、限定するものではないが、本開示の化合物中のアルコール又はアミン官能基のアセタート、ホルマート及びベンゾアート誘導体などが挙げられる。
【0068】
「安定な化合物」及び「安定な構造」は、反応混合物から有用な程度の純度まで単離し、有効な治療剤に製剤化するのに耐えるのに十分堅固な化合物を示すことを意図する。
【0069】
「哺乳動物」は、ヒト及び家畜、例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギなどを含む。実施形態では、本開示の目的のために、哺乳動物はヒトである。
【0070】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、その後に説明される状況の事象が発生してもしなくてもよいこと、及びその説明が上記事象又は状況が発生した場合と発生しない場合とを含むことを意図する。例えば、「任意に置換されたアリール」は、アリールラジカルが置換されていても置換されていなくてもよいこと、ならびにその説明が置換されたアリールラジカル及び置換を有しないアリールラジカルの両方を含むことを意図する。
【0071】
「薬学的に許容される賦形剤」には、限定するものではないが、ヒト又は家畜に対する使用が許容されるものとして米国食品医薬品局による承認を受けている任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒又は乳化剤が挙げられる。
【0072】
「薬学的に許容される塩」は、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含む。
【0073】
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的又は他の点で望ましくないものではなく、無機酸、例えば、限定するものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸、例えば、限定するものではないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、樟脳酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などを用いて形成される塩を指す。
【0074】
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的又は他の点で望ましくないものではない塩を指す。これらの塩は、遊離酸への無機塩基又は有機塩基の付加から調製される。無機塩基から誘導される塩には、限定するものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられる。実施形態では、無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩には、限定するものではないが、第一級、第二級及び第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられる。特に有用な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0075】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物と、生物学的に活性な化合物を哺乳動物、例えばヒトに送達するために当技術分野で一般に認められている媒体との製剤を指す。そのような媒体には、あらゆる薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤が挙げられる。
【0076】
「溶媒和物」とは、本開示の化合物の1つ以上の分子を溶媒の1つ以上の分子とともに含む集合体を指す。溶媒は水であり得、その場合、溶媒和物は水和物であり得る。あるいは、溶媒は有機溶媒であり得る。したがって、本開示の化合物は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物として、ならびに対応する溶媒和形態として存在し得る。本開示の化合物は真の溶媒和物であり得るが、他の場合には、本開示の化合物は、単に偶発的な水を保持し得るか、水と何らかの偶発的な溶媒との混合物であり得る。
【0077】
「治療有効量」とは、ヒトなどの哺乳動物に投与した際に、以下に定義されるように、ヒトなどの哺乳動物の目的の疾患又は症状の治療を達成するのに十分である本開示の化合物の量を指す。「治療有効量」に相当する本開示の化合物の量は、例えば、使用される特定の化合物の活性;化合物の代謝安定性及び作用時間の長さ;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別及び食事;投与の様式及び時間;排泄速度;薬物の組合せ;特定の障害又は症状の重症度;ならびに治療を受けている対象に応じて異なるが、当業者が自身の知識及び本開示を考慮することによって日常的に決定され得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」は、目的の疾患又は症状を有するヒトなどの哺乳動物の目的の疾患又は症状の治療を包含し、以下を含む。
(i)特に、哺乳動物に症状の素因があるが、未だ罹患していると診断されていない場合に、そのような哺乳動物に疾患又は症状が発現するのを予防すること;
(ii)疾患又は症状を抑制すること、すなわち、その発現を阻止すること;
(iii)疾患又は症状を軽減すること、すなわち、疾患又は症状を退行させること;又は
(iv)疾患又は症状を安定させること。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」及び「症状」は区別なく使用され得るか、特定の疾患又は症状が既知の原因物質を有しない(したがって病因は未だ解明されていない)ため、疾患としてではなく、望ましくない症状又は症候群としてのみ認識されており、臨床医によって多かれ少なかれ特定の一連の症状が確認されているという点で異なり得る。
【0080】
本開示の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩は、1つ以上の不斉中心を含有し得、したがって、絶対立体化学の観点から(R)-もしくは(S)-として、又はアミノ酸では(D)-もしくは(L)-として定義され得る鏡像異性体、ジアステレオ異性体及び他の立体異性体を生じ得る。本開示は、あらゆるそのような可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことを意図する。光学的に活性な(+)と(-)、(R)-と(S)-又は(D)-と(L)-の異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製され得るか、例えば、限定するものではないが、キラルカラムを用いるHPLCなどの従来の技術を使用して分割され得る。本明細書に記載の化合物がオレフィン二重結合又は他の幾何学的非対称の中心を含有する場合、特に明記しない限り、化合物がE及びZ幾何異性体の両方を含むことが意図される。同様に、あらゆる互変異性形態も含まれることが意図される。
【0081】
「立体異性体」とは、同じ結合によって結合した同じ原子から構成されているが、異なる三次元構造を有し、互換性のない化合物を指す。本開示は、様々な立体異性体及びその混合物を企図し、それらの分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
【0082】
「互変異性体」とは、分子のある原子から同じ分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本開示は、任意の上記化合物の互変異性体を含む。
【0083】
医薬組成物及び投与
純粋な形態又は適切な医薬組成物での本開示の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩の投与は、同様の有用性を提供するために認められている薬剤の投与様式のいずれかを介して実施することができる。本開示の医薬組成物は、本開示の化合物と適切な薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを組み合わせることによって調製することができ、固体、半固体、液体又は気体形態の製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア及びエアロゾルに製剤化され得る。そのような医薬組成物を投与する典型的な経路には、限定するものではないが、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、経直腸、経膣及び鼻腔内が挙げられる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術を含む。本開示の医薬組成物は、組成物を患者に投与した時点で、その中に含有される有効成分が生物学的に利用可能となるように製剤化される。対象又は患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり、例えば、錠剤は単一投与単位であり得、エアロゾル形態の本開示の化合物の容器は、複数の投与単位を保持し得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、明らかであろう。例えば、The Science and Practice of Pharmacy、第20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science、2000)を参照されたい。投与される組成物は、いずれの場合も、本開示の教示に従って目的の疾患又は症状を治療するために、治療有効量の本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩を含有するであろう。
【0084】
本開示の医薬組成物は、固体又は液体の形態であり得る。一態様では、担体は微粒子状であり、そのため組成物は、例えば錠剤又は粉末形態である。担体は液体であり得、組成物は、例えば経口シロップ剤、注射用液体又はエアロゾルであり、これは、例えば吸入投与に有用である。
【0085】
経口投与を目的とする場合、医薬組成物は固体又は液体形態であり、本明細書では、半固体、半液体、懸濁液及びゲルの形態は固体又は液体のいずれかと見なされる形態に含まれる。
【0086】
医薬組成物は、経口投与用の固体組成物として、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、チューインガム、カシェなどの形態に製剤化されてもよい。そのような固体組成物は、典型的には1つ以上の不活性希釈剤又は食用担体を含有する。さらに、以下のうちの1つ以上が存在してもよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotexなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖又はサッカリンなどの甘味剤;ハッカ、サリチル酸メチル又はオレンジ香味料などの香味剤;及び着色剤。
【0087】
医薬組成物は、カプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコール又は油などの液体担体を含有してもよい。
【0088】
医薬組成物は、液体、例えばエリキシル、シロップ、溶液、乳濁液又は懸濁液の形態であり得る。液体は、2つの例として、経口投与用又は注射による送達用であり得る。経口投与を目的とする場合、特定の組成物が、本発明の化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及び風味増強剤のうちの1つ以上を含有する。注射による投与を意図した組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0089】
本開示の液体医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液又は他の類似の形態であるかどうかにかかわらず、以下のアジュバントのうちの1つ以上を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水、例えば、生理食塩水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム、溶媒又は懸濁媒としての役割を果たし得る合成モノグリセリド又はジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセタート、シトラート又はホスファートなどの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はブドウ糖などの張度調整剤。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回用量バイアルに封入することができる。生理食塩水は特に有用なアジュバントである。注射用医薬組成物は無菌である場合に有用である。
【0090】
非経口又は経口投与のいずれかを目的とした本開示の液体医薬組成物は、好適な投与量が得られるような量の本開示の化合物を含有すべきである。典型的には、この量は、組成物中少なくとも0.01%の本開示の化合物である。経口投与を目的とする場合、組成物の重量の0.1~約70%になるように、この量を変化させてもよい。一部の経口医薬組成物は、約4%~約50%の本開示の化合物を含有する。本開示による一部の医薬組成物及び製剤は、非経口投与単位が希釈前に0.01~10重量%の化合物を含有するように調製される。
【0091】
本開示の医薬組成物は局所投与を目的としてもよく、その場合、担体は溶液、乳濁液、軟膏又はゲル基剤を好適に含み得る。基剤は、例えば、以下のうちの1つ以上を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、希釈剤、例えば、水及びアルコール、ならびに乳化剤及び安定剤。局所投与用の医薬組成物中には、増粘剤が存在してもよい。経皮投与を目的とする場合、組成物は、経皮パッチ又はイオン導入装置を含み得る。局所製剤は、約0.1~約10%w/v(単位体積当たりの重量)の濃度の本開示の化合物を含有し得る。
【0092】
本開示の医薬組成物は、例えば、直腸内で融解し薬物を放出する坐剤の形態での直腸投与を目的としてもよい。直腸投与用組成物は、好適な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有してもよい。そのような基剤には、限定するものではないが、ラノリン、カカオ脂及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0093】
本開示の医薬組成物は、固体又は液体投与単位の物理的形態を改変する様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、有効成分の周りにコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック及び他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、有効成分をゼラチンカプセルに入れてもよい。
【0094】
固体又は液体形態の本開示の医薬組成物は、本開示の化合物に結合し、それによって化合物の送達を補助する薬剤を含み得る。この性能で作用し得る好適な薬剤には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、タンパク質又はリポソームが挙げられる。
【0095】
本開示の医薬組成物は、エアロゾルとして投与することができる投与単位からなり得る。エアロゾルという用語は、コロイド状の性質のものから加圧パッケージからなるシステムまで及ぶ様々なシステムを表すために使用されている。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによるものであるか、有効成分を分配する好適なポンプシステムによるものであってもよい。本開示の化合物のエアロゾルは、有効成分を送達するために、単相性、二相性又は三相性のシステムで送達され得る。エアロゾルの送達は、必要な容器、アクチベーター、弁、サブ容器などを含み、これらは一緒になってキットを形成し得る。当業者であれば、過度の実験を実施することなく、好適なエアロゾルを決定し得る。
【0096】
本開示の医薬組成物は、製薬分野で周知の方法によって調製され得る。例えば、本開示の化合物と滅菌蒸留水とを組み合わせて溶液を形成することによって、注射による投与を目的とした医薬組成物を調製することができる。界面活性剤を加えて、均質な溶液又は懸濁液の形成を促進してもよい。界面活性剤は、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用して水性送達系中での化合物の溶解又は均質な懸濁を容易にする化合物である。
【0097】
本開示の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩は治療有効量で投与され、治療有効量は様々な要因に応じて変化し、当業者によって日常的に決定され得る。一般に、治療上有効な1日用量は、(70kgの哺乳動物では)約0.001mg/kg(すなわち0.7mg)~約100mg/kg(すなわち7.0g)である。実施形態では、治療上有効な用量は、(70kgの哺乳動物では)約0.01mg/kg(すなわち7mg)~約50mg/kg(すなわち3.5g)である。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量は、(70kgの哺乳動物では)約1mg/kg(すなわち70mg)~約25mg/kg(すなわち1.75g)である。
【0098】
また、本開示の化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、1つ以上の他の治療剤の投与と同時に、その前に、又はその後に投与され得る。そのような併用療法は、本開示の化合物及び1つ以上の追加の活性剤を含有する単一の医薬投与用製剤を投与することと、それ自体の別個の医薬投与用製剤として本開示の化合物と各活性剤とを投与することとを含む。例えば、錠剤又はカプセルなどの単一の経口投与用組成物として本開示の化合物及び他の活性剤を患者に一緒に投与することができるか、別個の経口投与用製剤として各剤を投与することができる。別個の投与用製剤を使用する場合、本開示の化合物及び1つ以上の追加の活性剤は、本質的に同じ時間に、すなわち同時に、又は時間をずらして別個に、すなわち順次に投与することできる。併用療法はこれらのレジメンをいずれも含むと理解される。
【0099】
本明細書に記載の化合物と組み合わせて利用され得る薬剤のクラスの例には、限定するものではないが、抗菌剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、抗喘息薬、抗コレステロール剤、CFTRモジュレーター、CNS薬、抗うつ剤、抗炎症薬、心血管薬、診断用薬、交感神経作動薬、コリン作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗悪性腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、酵素及びそれらの組合せが挙げられる。
【0100】
本明細書に記載の化合物の有用性
本開示の化合物は、LTA4-h活性の阻害剤であり、したがって、LTA4-h活性の阻害によって改善される疾患及び障害の治療に有用である。そのような疾患及び症状には、炎症性及び自己免疫性の障害ならびに肺及び気道の炎症が挙げられる。
【0101】
したがって、該化合物は、哺乳動物、特にヒトの以下の疾患又は障害の治療に有用である:急性又は慢性炎症、アナフィラキシー反応、アレルギー反応、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、化学的及び非特異的な刺激性接触皮膚炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、クローン病に関連する瘻孔、嚢炎、敗血症性又は内毒素性ショック、出血性ショック、ショック様症候群、癌の免疫療法によって引き起こされる毛細血管漏出症候群、急性呼吸窮迫症候群、外傷性ショック、免疫及び病原体による肺炎、免疫複合体を介する肺損傷及び慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病及び術後外傷を含む)、消化性潰瘍、虚血再灌流障害に関連する疾患(急性心筋虚血及び梗塞、急性腎不全、虚血性腸疾患及び急性出血性又は虚血性脳卒中を含む)、免疫複合体を介する糸球体腎炎、自己免疫疾患(インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、骨関節炎及び全身性エリテマトーデスを含む)、急性及び慢性臓器移植拒絶反応、移植動脈硬化及び線維症、心血管障害、(高血圧、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、重症下肢虚血、末梢動脈閉塞性疾患及びレイノー症候群を含む)、糖尿病の合併症(糖尿病性腎症、ニューロパチー及び網膜症を含む)、眼障害(黄斑変性症及び緑内障を含む)、神経変性障害(脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳炎及びHIV認知症の遅発性神経変性を含む)、関節炎痛を含む炎症性及び神経因性疼痛、歯肉炎を含む歯周病、耳感染症、片頭痛、良性前立腺肥大症ならびに癌(限定するものではないが、白血病及びリンパ腫、前立腺癌、乳癌、肺癌、悪性黒色腫、腎細胞癌、頭頚部腫瘍及び大腸癌を含む)。
【0102】
該化合物は、固形腫瘍の治療に使用される上皮成長因子(EGF)又は上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼの阻害剤によって誘発される毛包炎の治療にも有用である。臨床試験では、そのような治療の主な用量制限副作用として、毛包炎(顔面、胸部及び上背部に重度の挫瘡様の皮膚発疹が現れる毛包の炎症)が明らかにされている。このような毛包炎は好中球の浸潤と関連しており、活性化された好中球によって分泌された生成物が炎症の原因であることを示唆している。本開示の化合物は、好中球又は好酸球を介する炎症を阻害するため、そのような毛包炎を治療するのに有用であり、これにより、治療される癌患者の生活の質を改善するだけでなく、EGF阻害剤もしくはEGFRキナーゼ阻害剤の投与量の増加又は治療期間の延長を可能にし、所望の阻害剤の有効性を改善する。
【0103】
該化合物は、限定するものではないが、喘息、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、細気管支炎、閉塞性細気管支炎(器質化肺炎を伴うものを含む)、気道のアレルギー性炎症(鼻炎及び副鼻腔炎を含む)、好酸球性肉芽腫、肺炎、肺線維症、結合組織病の肺症状、急性又は慢性肺損傷、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、及び好酸球浸潤を特徴とする肺のその他の非感染性炎症性障害など、哺乳動物、特にヒトの肺及び呼吸器の炎症性障害の治療にも有用である。
【0104】
例えば、本開示の化合物は、肺又は組織の好酸球を介する炎症、肺の好中球を介する炎症、肺のリンパ球を介する炎症、気道過敏症ならびに気道及び血管の炎症の抑制に有用である。
【0105】
該化合物は、哺乳動物、特にヒトの心筋梗塞又は心筋梗塞に対する易罹患性、一過性脳虚血発作、一過性単眼盲、脳卒中又は脳卒中の易罹患性、跛行、末梢動脈閉塞性疾患又は末梢動脈閉塞性疾患に対する易罹患性、及び急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞又はST上昇型心筋梗塞など)の治療にも有用である。該化合物は、哺乳動物の心筋梗塞、脳卒中又は末梢動脈閉塞性疾患のリスクを低下させ、二次心筋梗塞又は脳卒中のリスクを低下させる方法にも有用である。
【0106】
該化合物は、動脈内(例えば冠動脈内)の血流を回復させるために治療(血管形成術、ステント、冠動脈バイパス移植など)を必要とする哺乳動物、特にヒトのアテローム性動脈硬化症の治療にも有用である。
【0107】
該化合物は、インビトロアッセイ及びインビボアッセイの両方でロイコトリエンB4の合成を阻害するのにも有用である。
【0108】
本明細書に記載の化合物の試験
以下の3つのアッセイを含む、本明細書に記載の化合物の試験:LTA4ヒドロラーゼ均一時間分解蛍光アッセイ、ペプチダーゼアッセイ及び全血アッセイ。
【0109】
LTA4ヒドロラーゼ均一時間分解蛍光アッセイ
LTA4ヒドロラーゼ均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイで本発明の化合物を試験して、LTA4からLTB4への加水分解を阻害するそれらの能力を特定した。アッセイでは、産生されたLTB4の量を分析する。
【0110】
LTA4 HTRFアッセイは、LTA4からLTB4への酵素的変換と、それに続くHTRFアッセイによるLTB4生成物の定量とを含む二段階アッセイである。
【0111】
LTA4からLTB4への酵素的変換は、本発明の化合物の非存在下又は存在下で、50mM HEPES(pH7.5)、0.5%BSA(脂肪酸を含まない)、18nM組換えヒトLTA4ヒドロラーゼ、150nM LTA4、1%DMSOを含有する反応混合物中、周囲温度で384ウェルプレート中で行った。10分のインキュベーション後、インキュベーション混合物を50mMホスファート、0.1%カゼイン緩衝液(pH7.0)で10倍希釈することにより反応を停止させた。
【0112】
遊離LTB4が、ユウロピウムクリプテート(ドナー)により標識された抗LTB4モノクローナル抗体についてLTB4-XL665コンジュゲート(アクセプター)と競合し、それによって蛍光エネルギー移動を阻害するHTRFアッセイにより、形成されたLTB4を定量した。
【0113】
LTB4 HTRF 384ウェルアッセイは、LTB4サンプル又は標準をLTB4-XL665コンジュゲート(7.5ng/ウェル)及び抗LTB4モノクローナル抗体-ユウロピウムクリプテートコンジュゲート(0.5ng/ウェル)とともに、50mMホスファート、0.4M KF及び0.1%カゼイン、緩衝液(pH7.0)中、周囲温度で2時間インキュベートすることによって行った。RubyStarプレートリーダー(BmG Labtechnologies Inc.、NC)を用いて同時に620nm及び665nmでプレートを読み取り、665nm/620nmのシグナル比を得た。エネルギー移動の結果は、[(サンプルのシグナル比-陰性対照のシグナル比)/(陰性対照のシグナル比)]×100%に等しいデルタF(%)として表した。陰性対照は、LTB4又はLTB4-XL665を含まない対照サンプルであった。
【0114】
サンプルのLTB4濃度は、4パラメータ適合式を用いてLTB4標準曲線から計算した。本発明の特定の化合物に関するIC50値を決定するために、このアッセイに、8つの連続希釈化合物濃度(1:3.16希釈)を使用した。本発明の化合物を含まないか、参照化合物を含む対照を同じアッセイプレート中で並行して操作した。
【0115】
本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、100μM未満、いくつかの実施形態では1μM未満、いくつかの実施形態では100nM未満、いくつかの実施形態では75nM未満、いくつかの実施形態では50nM未満、いくつかの実施形態では25nM未満、いくつかの実施形態では10nM未満、いくつかの実施形態では5nM未満のIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0116】
実施形態では、本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、0.01nM~10μM、実施形態では0.1nM~100nM、いくつかの実施形態では0.5nM~75nM、いくつかの実施形態では1nM~50nM、いくつかの実施形態では5nM~25nMのIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0117】
ペプチダーゼアッセイ
本発明の化合物について、Kull,F.ら、The Journal of Biological Chemistry 1999、274(49):34683-34690に記載されているものと同様の方法を使用することによってペプチダーゼ活性の阻害を測定した。特に、該化合物のペプチダーゼ活性は、以下の反応において下記に示されるように、L-アラニン-p-ニトロアニリドからL-アラニン及び高着色ニトロアニリンへの加水分解の阻害によって測定した。
【化3】
【0118】
要約すると、本発明の化合物の非存在下又は存在下で、50mM HEPES(pH7.5)、100mM KCL、1%DMSO中のL-アラニン-p-ニトロアニリド(1mM)とともに酵素(29nM)を周囲温度で1時間インキュベートした。酢酸(1%)を加えて反応を停止させた。Victor 2プレートリーダー(Wallac)を用いて、405nmでの吸光度の増加によって着色ニトロアニリンの形成を測定した。酵素を用いていない対照インキュベーションの吸光度を差し引くことによって、基質の自発的加水分解を補正した。
【0119】
実施形態では、本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、100μM未満、いくつかの実施形態では1μM未満、いくつかの実施形態では100nM未満、いくつかの実施形態では75nM未満、いくつかの実施形態では50nM未満、いくつかの実施形態では25nM未満、いくつかの実施形態では10nM未満、いくつかの実施形態では5nM未満のIC50値でペプチダーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0120】
実施形態では、本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、0.01nM~10μM、いくつかの実施形態では0.1nM~100nM、いくつかの実施形態では0.5nM~75nM、いくつかの実施形態では1nM~50nM、いくつかの実施形態では5nM~25nM、いくつかの実施形態では0.1nM~5nM、いくつかの実施形態では1nM~3nMのIC50値でペプチダーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0121】
本発明の化合物は、本明細書に記載のLTA4ヒドロラーゼ及び/又はペプチダーゼアッセイの両方で試験した際に、100μM未満、いくつかの実施形態では1μM未満、いくつかの実施形態では100nM未満、いくつかの実施形態では75nM未満、いくつかの実施形態では50nM未満、いくつかの実施形態では25nM未満、いくつかの実施形態では10nM未満のIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性及び/又はペプチダーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0122】
本発明の化合物は、本明細書に記載のLTA4ヒドロラーゼ及び/又はペプチダーゼアッセイの両方で試験した際に、0.01nM~10μM、実施形態では0.1nM~100nM、いくつかの実施形態では0.5nM~75nM、いくつかの実施形態では1nM~50nM、いくつかの実施形態では1nM~25nM、いくつかの実施形態では1nM~10nMのIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性及び/又はペプチダーゼ活性を阻害する能力を示した。
【0123】
全血アッセイ
Penning,T.D.ら、J.Med.Chem(2000)、43(4):721-735に記載されているものと同様の方法で、ヒト、マウス、ラット又はイヌの全血を用いる全血アッセイでのLTA4ヒドロラーゼ阻害剤としての能力について本発明の化合物を試験した。このアッセイでは、カルシウムイオノフォアにより刺激した際にLTB4放出を阻害する能力について化合物を試験した。ELISAによって上清中のLTB4濃度を測定した。
【0124】
本発明の化合物は、カルシウムイオノフォアの添加時に、試験した全種の全血からLTB4の放出又は産生を用量依存的に阻害した。
【0125】
実施形態では、本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、100μM未満、いくつかの実施形態では10μM未満、いくつかの実施形態では1μM未満、いくつかの実施形態では500nM未満、いくつかの実施形態では250nM未満、いくつかの実施形態では125nM未満、いくつかの実施形態では100nM未満、いくつかの実施形態では75nM未満のIC50値で全血中のLTB4の産生を阻害する能力を示した。
【0126】
実施形態では、本発明の化合物は、このアッセイで試験した際に、0.01nM~10μM、いくつかの実施形態では0.1nM~1μM、いくつかの実施形態では0.5nM~500nM、いくつかの実施形態では1nM~250nM、いくつかの実施形態では5nM~125nM、いくつかの実施形態では50nM~100nMのIC50値でLTB4の放出を阻害する能力を示した。
【0127】
本発明の化合物は、本明細書に記載の3つすべてのアッセイ、すなわちLTA4ヒドロラーゼアッセイ、ペプチダーゼアッセイ及び/又は全血アッセイで試験した際に、100μM未満、いくつかの実施形態では1μM未満、いくつかの実施形態では100nM未満、いくつかの実施形態では75nM未満のIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性、ペプチダーゼ活性及び/又は全血中のLTB4の産生を阻害する能力を示した。
【0128】
本発明の化合物は、本明細書に記載のLTA4ヒドロラーゼ及び/又はペプチダーゼアッセイの両方で試験した際に、0.01nM~10μM、実施形態では0.1nM~100nM、いくつかの実施形態では0.5nM~75nM、いくつかの実施形態では1nM~100nM、いくつかの実施形態では2nM~75nMのIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性及び/又はペプチダーゼ活性ならびに全血中のLTB4の産生を阻害する能力を示した。
【0129】
例示的な実施形態
本開示は、上記の概要に記載されるように、単一の立体異性体として、又は立体異性体の混合物としての式(I)の化合物、及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形体、クラスレート、アンモニウムイオン、N-オキシド又はプロドラッグを記載する。
【化4】
【0130】
式中、R1a、R3、Y及びZは、上記の概要に記載の通りである。
【0131】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
3が-O-であり、Zが下記であり、
【化5】
【0132】
R1a及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0133】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
3が-O-であり、Zが下記であり、
【化6】
【0134】
R1a及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0135】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
3が-O-であり、Zが下記であり、
【化7】
【0136】
R1a及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0137】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
3が-O-であり、Zが下記であり、
【化8】
【0138】
R1a及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0139】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aがハロであり、Zが下記であり、
【化9】
【0140】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0141】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aがハロであり、Zが下記であり、
【化10】
【0142】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0143】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aがハロであり、Zが下記であり、
【化11】
【0144】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0145】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aがハロであり、Zが下記であり、
【化12】
【0146】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0147】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記であり、
【化13】
【0148】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0149】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記であり、
【化14】
【0150】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0151】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記であり、
【化15】
【0152】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0153】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Zが下記であり、
【化16】
【0154】
R3及びYなどの残りの置換基が概要に記載の通りであるものを含む。
【0155】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Yが水素であり、Zが下記であり、
【化17】
【0156】
R3が概要に記載の通りであるものを含む。
【0157】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Yが水素であり、Zが下記であり、
【化18】
【0158】
R3が概要に記載の通りであるものを含む。
【0159】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Yが水素であり、Zが下記であり、
【化19】
【0160】
R3が概要に記載の通りであるものを含む。
【0161】
実施形態では、式(I)の化合物は、R
1aが任意に置換されたヘテロアリールであり、Yが水素であり、Zが下記であり、
【化20】
【0162】
R3が概要に記載の通りであるものを含む。
【0163】
追加の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、単一の立体異性体として、もしくは立体異性体の混合物としての式(I-A)の化合物
【化21】
【0164】
式中、
【0165】
R1aは、水素、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、シアノ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキルアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロシクリルアルキル、-R13-OR10、-R13-C(=O)OR10、又はR13-C(=O)R10であり、
【0166】
Yは、水素、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、シアノ、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキルアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、又は任意に置換されたヘテロシクリルアルキルであり、
【0167】
【0168】
各R10は独立して、水素、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルキル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアリールアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、又は任意に置換されたヘテロシクリルアルキルであり、
【0169】
各R13は独立して、直接結合、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖、任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルケニレン鎖、又は任意に置換された直鎖もしくは分岐のアルキニレン鎖である。)
【0170】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形体、クラスレート、アンモニウムイオン、N-オキシドもしくはプロドラッグ。
【0171】
実施形態では、式(I-A)の化合物は、以下の表Iに提供されるいくつかの例を含む。
【化23】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0172】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、表2中の以下の化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【表2】
【0173】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)安息香酸又は1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボン酸を含む。
【0174】
本開示の化合物は特定の実施形態を参照して記載されているが、本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更が加えられ得、等価物が置換され得ることが当業者によって理解されるべきである。
本明細書に記載の化合物の調製
【0175】
以下の反応スキームは、単一の立体異性体、又は立体異性体の混合物としての式(I)の化合物
【化24】
【0176】
(式中、R1a、R3、Y及びZは上記の概要に記載されている)、及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、多形体、アンモニウムイオン、N-オキシド又はプロドラッグを製造する方法を例示する。以下の説明では、示された式の置換基及び/又は変数の組合せは、そのような寄与が安定な化合物をもたらす場合にのみ許容されることが理解される。
【0177】
以下に記載される方法では、中間体化合物の官能基が好適な保護基によって保護される必要があり得ることもまた当業者によって理解されるであろう。そのような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト及びカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシのための好適な保護基には、トリアルキルシリル又はジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられる。アミノ、アミジノ及びグアニジノのための好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトのための好適な保護基には、-C(-O)-R”(式中、R”はアルキル、アリール又はアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸のための好適な保護基には、アルキルエステル、アリールエステル又はアリールアルキルエステルが挙げられる。
【0178】
保護基は、当業者に公知であり得る標準的な技術及び本明細書に記載される標準的な技術に従って付加又は除去されてもよい。
【0179】
当業者にはこのほか、本開示の化合物のこのような保護誘導体自体は薬理学的活性を有し得ないが、哺乳動物に投与され、その後体内で代謝されて薬理学的に活性な本発明の化合物を形成し得ることが理解されるであろう。したがって、そのような誘導体は「プロドラッグ」として記載され得る。本明細書に記載の化合物のあらゆるプロドラッグは本開示の範囲内に含まれる。
【0180】
当業者には、本明細書に記載の方法と同様の方法によって、又は当業者に公知の方法によって、本明細書に記載の化合物を製造することができることが理解される。また当業者には、適切な出発成分を使用し、必要に応じて合成のパラメータを修正することにより、下記と同様の方法で、以下に具体的に例示されていない式(I)の他の化合物を製造できることも理解される。一般に、本開示の化合物の合成で最初の出発物質として使用される化合物は、周知であり、例えば、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis、Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI及びFluorochem USAなどから市販されている。最初の出発物質として使用される化合物が市販されていない場合に限り、その化合物は、提供された特定の参考文献を使用して、又は当業者によって一般的に使用されている及び/又は一般的な参考文献に見出される標準的な手順によって容易に合成され得る(例えば、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers Inc.、1989;Compendium of Organic Synthetic Methods、第1巻~第10巻、1974~2002、Wiley Interscience;Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure、第5版、Wiley Interscience、2001;Advanced Organic Chemistry、第4版、B部、Reactions and Synthesis、Kluwer Academic/Plenum Publishers、2000など、及びその中で引用されている参考文献を参照されたい)。
【0181】
以下の反応スキーム及び例では、以下の一般的な略語が使用される。
【0182】
t-ブトキシカルボニルにはBoc
【0183】
ジクロロメタンにはCH2Cl2
【0184】
1,2-ジクロロエタンにはClCH2CH2Cl
【0185】
N,N-ジメチルホルムアミドにはDMF
【0186】
ジエチルエーテルにはEt2O
【0187】
ヒューニッヒ塩基には(iPr)2NEt
【0188】
アセトニトリルにはMeCN
【0189】
メタノールにはMeOH
【0190】
水酸化ナトリウムにはNaOH
【0191】
ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドにはNaBh(OAc)3
【0192】
ジエチルアニリンにはPH-NEt2
【0193】
トリフルオロ酢酸にはTFA
反応スキームI
【化25】
【0194】
化合物(A)及び/又は(B)は、市販されている、及び/又は当業者に公知の方法によって調製することができる。(A)~(E)の化合物では、各R1a、R3及びYは、本明細書の概要に記載の通りである。(B)の化合物では、ZaはZの第1の部分を表す。例えば、実施形態では、Zaは、Zの第1の部分として、ピペリジニルなどの任意に置換されたN-ヘテロシクリルを表す。(Za+Zb=Z)
【0195】
化合物(C)は、ペンダント-Boc基によって保護されている。化合物(C)をTFAなどの強酸と混合して-Bocを除去し、それによって脱保護化合物(D)を形成してもよい。化合物(D)はハロ-Zb-PGと混合され、ここでハロは多くの場合臭素(Br-)であり、PGは保護基、例えばメチル基を表し、ZbはZの第2の部分を表す。例えば、実施形態では、Zbは、Zの第2の部分として、任意に置換されたアラルキル又は任意に置換されたN-ヘテロシクリル、例えばピペリジニルを表す。
【0196】
実施形態では、スキームIのZ
aは、
【化26】
を表す。
【0197】
実施形態では、スキームIのZ
bは、
【化27】
を表す。
【0198】
実施形態では、スキームIのZ
aは
【化28】
を表し、スキームIのZ
bは
【化29】
を表す。
【0199】
実施形態では、スキームIのZ
aは
【化30】
を表し、スキームIのZ
bは
【化31】
を表す。
【0200】
本明細書に記載され、上記の反応スキームに具体的に開示されていない他の化合物も、適切な出発物質を用いて同様に調製され得ることが理解される。
反応スキームII
【化32】
【0201】
化合物(A)及び/又は(B)は、市販されている、及び/又は当業者に公知の方法によって調製することができる。(A)~(E)の化合物では、各R1a、R3及びYは、本明細書の概要に記載の通りである。(B)の化合物では、ZaはZの第1の部分を表す。例えば、実施形態では、Zaは、Zの第1の部分として、ピペリジニルなどの任意に置換されたN-ヘテロシクリルを表す。(Za+Zb=Z)
【0202】
化合物(C)は、ペンダント-Boc基によって保護されている。化合物(C)をTFAなどの強酸と混合して-Bocを除去し、それによって脱保護化合物(D)を形成してもよい。化合物(D)はハロ-Zb-PGと混合され、ここでハロは多くの場合臭素(Br-)であり、PGは保護基、例えばメチル基を表し、ZbはZの第2の部分を表す。例えば、実施形態では、Zbは、Zの第2の部分として、任意に置換されたアラルキル又は任意に置換されたN-ヘテロシクリル、例えばピペリジニルを表す。
【0203】
実施形態では、スキームIIのZ
aは、
【化33】
を表す。
【0204】
実施形態では、スキームIIのZ
bは、
【化34】
を表す。
【0205】
実施形態では、スキームIIのZ
aは
【化35】
を表し、スキームIIのZ
bは
【化36】
を表す。
【0206】
実施形態では、スキームIIのZ
aは
【化37】
を表し、スキームIIのZ
bは
【化38】
を表す。
【0207】
本明細書に記載され、上記の反応スキームに具体的に開示されていない他の化合物も、適切な出発物質を用いて同様に調製され得ることが理解される。
【0208】
遊離塩基又は酸形態で存在する上記で調製した本開示の化合物はいずれも、適切な無機又は有機塩基又は酸を用いて処理することによって、それらの薬学的に許容される塩に変換され得る。上記で調製した化合物の塩は、標準的な技術によってそれらの遊離塩基又は酸形態に変換され得る。本明細書に記載の化合物の多形体、非晶形、無水物、水和物、溶媒和物及び塩はいずれも、本開示の範囲内にあると意図されることが理解される。さらに、エステル基を含有する本開示の化合物はいずれも、当業者に公知の方法又は本明細書に記載の方法によって、対応する酸に変換することができる。
【0209】
本明細書に記載のシクロデキストリンクラスレートを調製するために、上記の概要で定義した式(I)の化合物を、薬理学的に許容される溶媒、例えばアルコール、好ましくはエタノール中、ケトン中、例えばアセトン又はエーテル、例えばジエチルエーテル中に溶解し、20℃~80℃でα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリン、好ましくはβ-シクロデキストリンの水溶液と混合することができる。又は、それらの塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩)の水溶液の形での上記の概要で定義した式(I)の化合物の酸をシクロデキストリンと混合し、溶解後に等量の酸(例えば、HCl又はH2SO4)と混合して、対応するシクロデキストリンクラスレートを得ることができる。
【0210】
この時点で、又は冷却後に、対応するシクロデキストリンクラスレートは結晶形態で分離する。しかし、シクロデキストリンの水溶液を用いて処理することにより、周囲温度でかなり長時間撹拌(例えば、1時間から14日間)することによって、上記の概要で定義した式(I)の油状及び結晶性化合物を対応するシクロデキストリンクラスレート形態に変換することも可能である。次いで、溶媒を吸引除去し、乾燥することにより、固体の易流動性結晶としてクラスレートを単離することができる。
【0211】
シクロデキストリン及び水の好適な量を選択することにより、再現可能な含有量の有効物質を有する化学量論的組成で新しいクラスレートを得ることが可能である。クラスレートは、乾燥吸湿性形又は水含有であるが、吸湿性の低い形で使用することができる。シクロデキストリンと式(I)の化合物との典型的なモル比は、2:1(シクロデキストリン:化合物)である。
【0212】
以下の例は、式(I)の化合物を製造する方法を例示する。
例
例1
Zがi)である化合物の調製。
【化39】
【0213】
4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-Bocの調製
ジクロロエタン中の4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシアニリン(1当量)及び1-Boc-ピペリドン(1当量)の撹拌溶液に、トリアセトキシボロヒドリド(2当量)を加えた。出発アニリンがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-Bocを得た。
【0214】
4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジンの調製
ジクロロメタン中の4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-Bocの撹拌溶液にトリフルオロ酢酸を加えた。出発Boc保護アミンがなくなるまで反応物を撹拌した。アルキルブロミドがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、水酸化ナトリウム水溶液により中和し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジンを得た。
【0215】
メチルN-(2-ブロモアセチル)ピペリジン-4-カルボキシラートの調製
塩化メチレン中のブロモアセチルブロミド(1当量)及びジエチルアニリン(1.2当量)の撹拌溶液に、メチルピペリジン-4-カルボキシラート(1当量)の塩化メチレン溶液を加えた。出発アミンがなくなるまで反応混合物を周囲温度で撹拌した。反応物を水で希釈した。有機相を1N HCl、水及びブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して、メチルN-(2-ブロモアセチル)ピペリジン-4-カルボキシラートを得た。
【0216】
メチル1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボキシラートの調製
0℃に冷却したジエチルエーテル中の4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン(1当量)の撹拌溶液に、メチルN-(2-ブロモアセチル)ピペリジン-4-カルボキシラート(1当量)のジエチルエーテル溶液を加えた。出発アルキルブロミドがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、ジエチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、メチル1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボキシラートを得た。
【0217】
1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボン酸の調製
メタノール中の水酸化ナトリウム水溶液(1N)の撹拌溶液に、メチル1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボキシラートを加えた。出発エステルがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、塩酸水溶液(1N)により中和し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、1-(2-(4-((4-(4-(オキサゾール-2-イル)フェノキシ)フェニル)アミノ)ピペリジン-1-イル)アセチル)ピペリジン-4-カルボン酸を得た。
【0218】
例1の化合物は、以下を阻害する能力を示した:2.1nMのIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性、7.1nMのIC50値でペプチダーゼ活性、及び62nMのIC50値で全血中のLTB4の産生。
【0219】
例2
Zがii)である化合物の調製。
【化40】
を
【化41】
に置き換えて、例1と同じ反応順序を実施する。
例3
Zがiv)である化合物の調製。
【化42】
【0220】
3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)-1-Boc-ピペリジンの調製
1,2-ジクロロエタン中の1-Boc-ピペリジン-3-カルボキシアルデヒド(1当量)及び4-クロロフェノキシアニリン(1当量)の撹拌溶液に、トリアセトキシボロヒドリド(2当量)を加えた。出発アニリンがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)-1-Boc-ピペリジンを得た。
【0221】
3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジンの調製
ジクロロメタン中の3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)-1-Boc-ピペリジン(1当量)の撹拌溶液にトリフルオロ酢酸を加えた。出発物質がなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、水酸化ナトリウム水溶液(1N)により中和し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジンを得た。
【0222】
メチル4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)ベンゾアートの調製
アセトニトリル中の3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン(1当量)及びヒューニッヒ塩基(1.1当量)の撹拌溶液に、4-ブロモメチルベンゾアート(1当量)のアセトニトリル溶液を加えた。出発アルキルブロミドがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、ジエチルエーテルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、メチル4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)ベンゾアートを得た。
【0223】
4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)安息香酸の調製
メタノール中の塩酸の撹拌溶液に、メチル4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)ベンゾアートを加えた。出発エステルがなくなるまで反応物を撹拌した。反応物を水で希釈し、塩酸水溶液(1N)により中和し、酢酸エチルを用いて抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮して、4-((3-(((4-(4-クロロフェノキシ)フェニル)アミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)安息香酸を得た。
【0224】
例3の化合物は、以下を阻害する能力を示した:1.8nMのIC50値でLTA4ヒドロラーゼ活性、22nMのIC50値でペプチダーゼ活性、及び100nMのIC50値で全血中のLTB4の産生。
【0225】
例4
Zがiii)である化合物の調製。
【化43】
を
【化44】
に置き換えて、例3と同じ反応順序を実施する。
本発明をその特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく様々な変更が加えられ得、等価物が置換され得ることが当業者によって理解されるべきである。さらに、本発明の目的、精神及び範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、単数又は複数のプロセス工程を適合させるために、多くの修正が加えられ得る。そのような修正はいずれも、添付の特許請求の範囲内に収まるよう意図されている。