(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】化膿性汗腺炎の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220922BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220922BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P17/00
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2019543800
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 IB2018000209
(87)【国際公開番号】W WO2018150265
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520431719
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテク,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Janssen Biotech,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】キム,スタンレー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ギアマレロス-ブーブリス,エヴァンゲロス,ジェイ.
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】Study NCT02643654 Submitted Date: October 9, 2016 (v3),2016年10月,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02643654?V_3=View#StudyPageTop
【文献】JAMA Dermatol.,2016年01月,152(1),p. 52-59,doi: 10.1001/jamadermatol.2015.3903
【文献】J Drugs Dermatol.,14(6),2015年,p. 560-4
【文献】J Invest Dermatol.,2017年11月10日,138(4),p. 795-801,doi: 10.1016/j.jid.2017.10.030
【文献】Skin Pharmacol Physiol.,2016年,29(3),p. 161-167,doi: 10.1159/000446812. Epub 2016 Jun 29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化膿性汗腺炎に関連する病変を有するヒト対象における化膿性汗腺炎の処置のための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、
モノクローナル抗IL-1α抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含
み、前記モノクローナル抗IL-1α抗体は、MABp1であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の医薬組成物において、前記抗体の用量は、1~20mg/kg体重であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記対象のHiSCRスコアは、前記医薬組成物の投与後に改善されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記対象の化膿性汗腺炎病変のメジアン径は、前記医薬組成物の投与後に低減されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記対象の化膿性汗腺炎病変に関連する前記対象の疼痛は、前記医薬組成物の投与後に低減されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記対象の新たな化膿性汗腺炎病変までの時間は、前記医薬組成物の投与後に増大されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記ヒト対象における前記化膿性汗腺炎は、腫瘍壊死因子アルファ阻害剤での処置後に消散していないことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか一項に記載の医薬組成物において、前記処置は、炎症性病変、例えば、小結節、膿瘍又は排液性瘻孔の数及び/又はサイズを低減させることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年2月16日に提出された「Treatment of Hidradenitis Suppurativa」という名称の米国仮特許出願第62/459,841号明細書の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府支援研究に関する声明
該当せず。
【0003】
本発明は、概して、医学、皮膚科学及び免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、化膿性汗腺炎を処置するための、インターロイキン-1α(IL-1α)に特異的に結合する抗体(Ab)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
化膿性汗腺炎(HS)は、慢性の消耗性皮膚疾患であり、アポクリン汗腺に富む領域で出現する小結節は、それらが破裂し、皮膚を通じて膿汁を放出するまで進行性に腫脹する。結果として洞管形成及び瘢痕が生じる。HSは、一般的に抗生物質及び外科的手術で処置するが、頻繁に再発することで患者のクオリティーオブライフが大きく損なわれる。
【発明の概要】
【0005】
IL-1αを特異的に標的とする薬剤がHSを処置するのに有用であるという発見が本明細書で開示される。
【0006】
したがって、ヒト対象においてHS症状の重症度を低減する方法が本明細書に記載される。これらの方法は、薬学的に許容可能な担体と、炎症性病変(例えば、小結節、膿瘍又は排液性瘻孔)の数及び/又はサイズを低減するか、それらの進行を妨げるか、病変によって生じる疼痛を低減するか、又は新たな増悪までの時間を増大させるために有効な量の、IL-1αに選択的に結合する薬剤とを含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み得る。本薬剤は、(例えば、IgG1アイソタイプの)モノクローナル抗体(mAb)、MABp1の相補性決定領域(CDR)又はMABp1を含むmAbなどの抗IL-1α抗体(Ab)であり得る。
【0007】
本発明の別の態様は、薬学的に許容可能な担体と、何らかの標準的な皮膚科学検査により測定した場合、少なくとも約10%(例えば、少なくとも8、9、10、15、17、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%)だけ対象における炎症性病変(例えば、小結節、膿瘍又は排液性瘻孔)の数及び/又はサイズを低減するのに有効な量の抗IL-1α Ab(又はIL-1αに特異的及び/若しくは選択的に結合する他の薬剤)とを含む医薬組成物を対象に投与することにより、ヒト対象においてHSの症状を低減する方法を特徴とする。
【0008】
抗IL-1α Abは、IgG1などのmAbであり得る。抗IL-1α Abは、MABp1と呼ばれるmAb又はMABp1の1つ以上(CDR)を含むmAbであり得る。本医薬組成物は、対象に対して注射、点滴により、皮下に、静脈内に、筋肉内に又は皮内に投与され得る。本明細書に記載の方法において、用量は、少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.2、0.5、0.75、1、2、3、4又は5)mg/kg及び好ましくは1~20mg/kg(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20+/-0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9mg/kg)であり得る。
【0009】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語の全ては、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。生物学用語の一般に理解される定義は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1991;及びLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に見出され得る。医学用語の一般に理解される定義は、Stedman’s Medical Dictionary,27th Edition,Lippincott,Williams&Wilkins,2000に見出され得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「抗体」又は「Ab」は、免疫グロブリン(Ig)、同一若しくは異種性のIgの溶液又はIgの混合物である。「Ab」は、Igの断片及び改変型、例えばFab、Fab’及びF(ab’)2断片;並びにscFv’s、ヘテロコンジュゲートAb及び抗原特異性を付与するためにIg由来CDRを使用する同様の人工的分子も指し得る。「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、1つのクローンB細胞株により発現されるAb又は特定の抗原の特定のエピトープと免疫反応可能な抗原結合部位の1種のみを含有するAb分子の集団である。「ポリクローナルAb」は、不均一Abの混合物である。一般的に、ポリクローナルAbは、抗原の異なるエピトープと免疫反応する異なるAbの少なくとも一部と特定の抗原を結合させる多くの異なるAb分子を含む。本明細書で使用される場合、ポリクローナルAbは、2つ以上のmAbの混合物であり得る。
【0011】
Abの「抗原結合部分」は、AbのFab部分の可変領域内に含有され、Abに対する抗原特異性を付与するAbの部分である(すなわち一般的にAbの重及び軽鎖のCDRにより形成される三次元ポケット)。「Fab部分」又は「Fab領域」は、そのIgの抗原結合部分を含有するパパイン消化Igのタンパク質分解断片である。「非Fab部分」は、Fab部分内でないAbの部分、例えば「Fc部分」又は「Fc領域」である。Abの「定常領域」は、可変領域の外側のAbの部分である。一般に定常領域内に包含されるものは、Abの「エフェクター部分」であり、これは、免疫反応を促進する他の免疫系構成要素への結合に関与するAbの部分である。このように、例えば、補体構成要素又はFc受容体(その抗原結合部分を介さない)に結合するAb上の部位は、Abのエフェクター部分である。
【0012】
Abなどのタンパク質分子を指す場合、「精製」は、このような分子に天然に付随する構成要素から分離することを意味する。一般的に、それに天然に付随する非Abタンパク質又は他の天然有機分子が含まれず、それが少なくとも約10重量%(例えば、9%、10%、20%、30%40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%及び100%)である場合、Ab又はタンパク質は、精製されている。純度は、何らかの適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析により測定され得る。化学合成されるタンパク質又はそれが天然で生じる細胞型以外の細胞型で産生される他の組み換えタンパク質は、「精製されている」。
【0013】
「結合する(bind)」、「結合する(binds)」又は「~と反応する」とは、試料中で1つの分子が特定の第2の分子を認識し、それに接着するが、試料中の他の分子を実質的に認識しないか又はそれに接着しないことを意味する。一般に、別の分子に「特異的に結合する」AbのKdは、他の分子に対して約105、106、107、108、109、1010、1011又は1012リットル/モルを超える。第1の分子に「選択的に結合する」Abは、第1のエピトープで第1の分子に特異的に結合するが、第1のエピトープを有さない他の分子に特異的に結合しない。例えば、IL-1アルファに選択的に結合するAbは、IL-1アルファ上のエピトープに特異的に結合するが、(そのエピトープを有さない)IL-1ベータに特異的に結合しない。
【0014】
「治療的有効量」は、処置される動物又はヒトにおいて医学的に所望される効果を生じさせることが可能な量である(例えば、疾患又は疾患の症状の寛解又は予防)。
【0015】
本明細書に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用し得るが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される特許、特許出願及び刊行物の全ては、その全体において参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めて本願が優先される。さらに、以下に記載の特定の実施形態は、単なる例示であり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、プラセボ群の10%に対して、MABp1での処置に割り当てられた患者の60%が第12週にポジティブなHiSCRを達成し;MABp1下でのポジティブなHiSCRに対するオッズ比(OR)が13.50(95%信頼区間:1.19~152.51;p=0.035)であったことを示すグラフである。
【
図2】
図2は、MABp1の臨床的有効性が第24週まで(すなわち処置停止後12週間)維持されたことを示すグラフであり、プラセボで処置した患者でポジティブなHiSCRスコアを有した者はいなかった(0%)が、それに対してMABp1で処置した患者では10名中4名(40%)であった。
【
図3】
図3は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる全患者における総AN(炎症性小結節及び膿瘍の合計)数の%変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFaに曝露されていない患者における総AN数の%変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる、以前の抗TNFa処置が奏効しなかった患者における総AN数の%変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFaに曝露されていない患者における疾患活動性の%変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる、全患者における視覚アナログスケール(VAS)の%変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、MABp1又はプラセボでの処置開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFaに曝露されていない患者における新たな増悪までの中央時間を示すグラフである。
【
図9】
図9は、MABp1又はプラセボでの処置開始から12週間後の全患者における病変深度の変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、MABp1又はプラセボでの処置開始から12週間後の、以前の抗TNFa処置が奏効しなかった患者における病変深度の変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、MABp1又はプラセボで処置した患者において、病変深度が少なくとも20%低下した患者数を示すグラフである。
【
図12】
図12は、MABp1又はプラセボで処置した患者において、病変深度が少なくとも20%低下した患者数を示すグラフであり、この患者集団は、(i)抗TNFαに以前曝露されていない者、及び(ii)以前の抗TNFa処置が奏効しなかった者であった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、対象において皮膚科学的病態の1つ以上の症状の寛解を含め、HSにおいて皮膚炎症を低減するための組成物及び方法を包含する。以下に記載の好ましい実施形態は、これらの組成物及び方法の適応を例示する。それにも関わらず、これらの実施形態の記載から、本発明の他の態様は、以下で提供される記載に基づいてなされ得且つ/又は実施され得る。
【0018】
一般的な方法
従来の免疫学的及び分子生物学的技術を含む方法を本明細書に記載する。免疫学的方法(例えば、抗原-Ab複合体の検出及び局在のためのアッセイ、免疫沈降、免疫ブロッティングなど)は、当技術分野で一般に公知であり、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wiley&Sons,New Yorkなどの方法論の専門書に記載される。分子生物学の技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New Yorkなどの専門書に詳細に記載されている。Abの方法は、Handbook of Therapeutic Abs,Dubel,S.,ed.,Wiley-VCH,2007に記載されている。医学的処置の一般的な方法は、McPhee and Papadakis,Current Medical Diagnosis and Treatment 2010,49th Edition,McGraw-Hill Medical,2010;及びFauci et al.,Harrison’s Principles of Internal Medicine,17th Edition,McGraw-Hill Professional,2008に記載されている。皮膚科学における方法は、James et al.,Andrews’Disease of the Skin:Clinical Dermatology-Expert Consult,11th Ed.,Saunders,2011;及びBurns et al.,Rook’s Textbook of Dermatology,8th Ed.,Wiley-Blackwell,2010に記載されている。
【0019】
処置
本明細書に記載の組成物及び方法は、対象における状態の少なくとも1つの特徴を改善する(例えば、小結節の数及び/若しくはサイズ、膿瘍若しくは排液性瘻孔を低減するか、又はそれらの進行を妨げる)ために有効な抗IL-1α Abの量を含む医薬組成物を対象に投与することにより、哺乳動物対象におけるHSに対して有用となる。哺乳動物対象は、ヒトを含むHSに罹患している何れかであり得る。ヒト対象は、男性、女性、成人、小児、高齢者(65歳以上)及び他の疾患を有する者であり得る。特に好ましい対象は、(i)疾患が進行しているか又は他の抗炎症剤(例えば、TNFα阻害剤)若しくは抗菌剤での処置後に反応がなかった者;(ii)HSの家族歴がある者;(iii)他の抗炎症剤(例えば、TNFα阻害剤)又は抗菌剤が適切ではない者;及び(iv)それらの病変から採取した膿汁中でIL-1αが100、200、300、400、500又は1000pg/mLよりも高い者である。治療抗体の以前の投与のためにヒト抗ヒト抗体反応を発現している対象は、抗IL-1αAbがMABp1などの真のヒトAb(例えば、ヒト対象において天然に発現されるもの)である場合に好ましい。
【0020】
IL-1αを標的とする抗体及び他の薬剤
IL-1αに特異的に結合し、対象においてHSの特徴を低減する何らかの適切なタイプのAbを使用し得る。例えば、使用される抗IL-1α Abは、mAb、ポリクローナルAb、mAbの混合物若しくはAb断片又はscFvなどの改変Ab様分子であり得る。AbのKaは、好ましくは、少なくとも1×109M-1以上(例えば、9×1010M-1、8×1010M-1、7×1010M-1、6×1010M-1、5×1010M-1、4×1010M-1、3×1010M-1、2×1010M-1又は1×1010M-1よりも大きい)。好ましい実施形態において、本発明は、(i)ヒトIL-1αに対して非常に高い結合親和性(例えば、少なくともナノ又はピコモル濃度)を示す抗原結合可変領域と、(ii)定常領域とを含む完全ヒトmAbを利用する。ヒトAbは、好ましくは、IgG1であるが、IgM、IgA若しくはIgE又はサブクラス、例えばIgG2、IgG3又はIgG4などの異なるアイソタイプであり得る。特に有用なmAbの一例は、MABp1、2011年10月11日発行の米国特許第8,034,337B2号明細書に記載のIL-1α特異的なIgG1 mAbである。他の有用なmAbは、少なくとも1つであるが、好ましくはMABp1のCDRの全てを含むものである。CDRは、Ofran et al.,J.Immunol.,181:6230,2008;及びAntibody Engineering Volume 2,2d edition,Konterman and Dubel(eds),Springer,2010に記載のものなどの公知の方法に従って決定され得る。IL-1αに特異的に結合するAb及びそれらの製造の方法は、例えば、米国特許第9,545,411号明細書において詳細に記載されている。
【0021】
上記のIL-1α特異的なAbが本明細書に記載の方法での使用に好ましい一方、一部の場合、IL-1αを特異的に標的とする他の薬剤を、それらの投与がHSの特徴の改善につながる限り使用し得る。これらの他の薬剤としては、抗IL-1α Abの産生を引き起こすワクチン、IL-1αに結合するタンパク質又はペプチド及びIL-1αを特異的に標的とする低有機分子が挙げられ得る。IL-Ιβに特異的に結合しないものが好ましく、なぜなら、そのような物質の使用によってHSの症状が悪化することが報告されているからであり(例えば、Tekin et al.,Indian J Dermatol Venereol Leprol 2017;83:615-7)、他の研究者らは、IL-1βが治癒及び修復を促進することを報告している(例えば、Bersudsky et al.,Gut.2014 Apr;63(4):598-609)。
【0022】
医薬組成物及び方法
抗IL-1α Ab組成物(及びIL-1αを特異的に標的とする他の薬剤)は、投与方式及び経路及び標準的薬務に基づいて選択される薬学的に許容可能な担体(例えば、滅菌食塩水)中で投与され得る。薬学的に許容可能な担体及び医薬処方物の一覧は、この分野の標準的教科書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences及びUSP/NFにおいて見ることができる。本組成物を安定化し、且つ/又は保ち、且つ/又は対象へのそれらの投与を促進するために他の物質を本組成物に添加し、他の工程をとり得る。
【0023】
例えば、Ab組成物を凍結乾燥させ(Draber et al.,J.Immunol.Methods.181:37,1995;及びPCT/米国特許出願公開第90/01383号明細書を参照されたい);ナトリウム及び塩素イオンを含む溶液中で溶解させ;アルブミン、グルコース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール及びグリシンなどの1つ以上の安定化剤を含む溶液中で溶解させ;(例えば、0.45及び/又は0.2ミクロンフィルターを使用して)ろ過し;ベータ-プロピオラクトンと接触させ;及び/又は殺菌剤を含む溶液(例えば、界面活性剤、有機溶媒及び界面活性剤と有機溶媒との混合物中で溶解させ得る。
【0024】
何らかの適切な技術によってAb組成物を動物又はヒトに投与し得る。一般的に、このような投与は、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内導入)である。本組成物は、例えば、局所適用により、標的部位(例えば、皮膚)に直接投与することもできる。送達の他の方法、例えばリポソーム送達又は本組成物を含浸させた装置からの拡散は、当技術分野で公知である。本組成物は、単回ボーラス、複数回注射又は連続点滴によって(例えば、静脈内に又は腹膜透析により)投与され得る。
【0025】
治療的有効量は、処置される動物又はヒトにおいて医学的に好ましい結果を生じさせることが可能な量である。抗IL-1αAb組成物の有効量は、皮膚炎症の1つ以上の症状の改善により測定した場合、患者において臨床的な有効性を示す量である。医学の技術分野で周知のとおり、何れかのある動物又はヒトに対する投与量は、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与しようとする特定の組成物、性別、投与の時間及び経路、総体的健康状態及び同時に投与される他の薬物を含め、多くの要因に依存する。好ましい用量は、1~20mg/kg体重(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20+/-0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9mg/kg体重)の範囲である。一部の場合、単回投与は、皮膚炎症のエピソードを回復させることにおいて有効である。他の場合、例えば週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、月に2回、3週間に1回、1か月に1回、2か月に1回又は(病変が再発する場合)必要に応じて投与が反復して行われ得る。
【0026】
併用処置
IL-1□に選択的に結合する薬剤で処置したHS患者に他の薬剤も投与し得る。例えば、このような患者は、副腎皮質ステロイド、レチノイド、レゾルシノール、ホルモン及び生物製剤、例えばアダリムマブ又はインフリキシマブなどで処置され得る。抗菌剤も使用され得る。特に、1つ以上のHS病変においてS.アウレウス(S.aureus)コロニー形成又は感染を有するか又は有する疑いがある患者において、S.アウレウス(S.aureus)を標的とする抗生物質又は他の薬剤を使用し得る。S.アウレウス(S.aureus)をオプソニン化する抗体の使用は、特に有用であると考えられる。この使用に対する好ましい抗S.アウレウス(S.aureus)は、S.アウレウス(S.aureus)タンパク質A(SpA)に特異的に結合するFab領域パラトープと、SpAに結合しないFc領域とを有するものであり、S.アウレウス(S.aureus)の抗体中和SpAの発現にもかかわらず、S.アウレウス(S.aureus)細菌のオプシナイゼーション(opsinization)を媒介可能である。これらは、米国特許第9,416,172号明細書に記載されている(例えば、その明細書でPA8-G3と呼ばれる抗体)。
【実施例】
【0027】
実施例1 - HS患者における、MABp1、インターロイキン-1αを標的とするTrue Human(商標)抗体の安全性及び有効性の二重盲検ランダム化プラセボ対照臨床試験
現在フォローアップされている者からHS患者をスクリーニングした。組み入れ基準は、以下のとおりであった:患者により提供される書面のインフォームドコンセント;年齢18歳以上;HSの診断;Hurley II若しくはIIIステージ疾患のHS又はHurley Iステージの急速進行性HS;身体におけるHSと一致する3個以上の炎症性小結節の存在;次の少なくとも1つ:a)何らかの抗TNFα、レジメンでの処置が以前に奏効しなかったこと;b)何らかの抗TNFα、レジメンでの処置下で以前再発したこと;又はc)皮下アダリムマブ処置を受ける意志がないこと。
【0028】
除外基準は、以下のとおりであった:全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ又は血清陰性炎症性関節炎の病歴;過去4週間(又は5半減期の何れか長い方)以内の何らかの生物製剤又は治験薬での処置;ヒト、ヒト化、キメラ又はマウスモノクローナル抗体に対する重篤なアレルギー又はアナフィラキシー反応の病歴;過去4週間の何らかの生(弱毒化)ワクチンの投与;抗カルジオリピン症候群と適合する反復性の静脈血栓症又は塞栓症の病歴;何らかの現在の重篤な細菌感染、すなわち肺炎、心内膜炎、急性腎盂腎炎及び腹腔内感染;トランスアミナーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ又はビリルビンの何れかの値が>2×正常上限であることとして定義される肝機能不全;悪性の血液又は固形腫瘍、動脈高血圧、肝硬変、HIV感染及びB又はC型肝炎ウイルス感染の病歴;脱髄性の障害を模倣するエピソード歴又は多発性硬化症の確定的診断;1.5mg/dlを上回る何らかのクレアチニン値;過去3週間にわたり1mg/kg超のプレドニゾン又は均等物を毎日摂取することとして定義される副腎皮質ステロイドの摂取;好中球<1000個/mm3として定義される好中球減少症;妊娠又は授乳;結核(不顕性又は活動性)の病歴;第0日の前28日以内の大きい外科手術。
【0029】
HSの診断は、2nd Conference of the HS foundation in San Franciscoにより設定された次の基準に基づいた:思春期後の疾患発症;アポクリン汗腺に富む皮膚の少なくとも2つの領域の病変;及び患部からの膿汁の排膿なし/ありの反復性の疼痛のあるおできの病歴。患者が本試験にふさわしいとみなした場合、次の手順を行った:記録-病歴及び投薬の徹底的な検討;徹底的な身体検査;皮膚ツベルクリン検査(直径が5mmを下回るものは何れも陰性とみなす);胸部X線;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)に対する血清学的検査;血清クレアチニン;及び肝臓生化学検査。正常範囲内の患者のみを本試験に登録した。患者を1:1でランダムに割り当て、プラセボ又はMABp1(XBiotech USA,Inc.)の何れかを静脈内投与した。独立した生物統計学者がランダム化割り付けを確立した。最大7回の点滴に対して、12週間にわたり14日(+/-1日)ごとに、すなわち第0週(ベースライン)、第2週、第4週、第6週、第8週、第10週及び第12週に、治験薬又は適合するプラセボを1時間の点滴で静脈内投与した。MABp1の用量は、7.5mg/kgであった。
【0030】
XILONIX(商標)は、安定化等張緩衝液(pH6.4)中の50mg/mL MABp1の無菌注射用液体製剤である。各10mL血清バイアルは、6mLの処方物を含有し、20mmの灰色のブロモブチルストッパー及びフリップオフアルミニウムシールで密封する。生成物は、2~8℃で保管したが、室温が認められる場合があった。薬物生成物の正確な組成を下記に示す。
【0031】
同じ手順及びMABp1薬物生成物を製造するために使用したバッチ記録に従い、プラセボ生成物を製造した。プラセボ剤型は、pH6.2~6.5の滅菌等張処方緩衝液である。各10mLのI型ホウケイ酸ガラス血清バイアルは、6mLの処方緩衝液を含有し、20mm Daikyo Flurotecブチルゴムストッパー及びフリップオフアルミニウムシールで密封する。生成物は、正立で2~8℃で保管し、室温が認められる場合があった。プラセボ生成物の正確な組成を下記の表に示す。
【0032】
点滴前に一般的な食塩水の100mLバッグ中でXILONIX(商標)を希釈した。次の計算を使用して、各試験の対象に対して希釈しようとする薬物生成物の体積を決定した。
50mg/mL薬物生成物、7.5mg/kg用量:
(体重は、小数点第1位で四捨五入して整数にした)
7.5mg/kgでの70kg対象の場合の例:
Vd=10.5mL(小数点第2位を四捨五入)
【0033】
適切なシリンジを使用して、計算した体積(Vd)を対象の割り当てられたバイアルから引き抜いた。計算した薬物と同量の食塩水を100mLバッグから除去した。次に、一般的な食塩水(0.9%NaCl)の100mL IVバッグに計算した体積を注入し、その結果、100mLの最終的な総体積を得た。次に、バッグを穏やかに10回転倒撹拌することによって薬物生成物を混合した。点滴セットラインを準備した後、1時間にわたり(60+/-15分間)100mLの希釈薬物生成物を送達するように送達ポンプをプログラムし、点滴反応の徴候について対象を監視した。患者は、第0週、第2週、第4週、第6週、第8週、第10週、第12週、第16週、第20週及び第24週に来院した。全来院時に次の手順を行った。
【0034】
患者に対して、mm単位で視覚アナログスケール(VAS)を用いてそれらの疾患の重症度の評価を提供するように求めた。患者に対して、0は、疾患活動性がないことに相当し、100は、疾患活動性がそれまでに感じたなかで最悪であると説明した。患者に対して、患者の疾患に関する患者の全体的な印象に対する1つのスコア及び患者が感じる身体的な痛みに関する別のスコアを提供するように求めた。治験責任医師は、患者に対して、患部での患者の疾患及び疼痛感の増悪の頻度を提供するように求めた。患者に対して以下のDLQIスコアを与え、第0週、第12週及び第24週にのみそれに記入するように患者に求めた。
【0035】
皮膚科学クオリティーオブライフ指標(DQLI)。各質問に対して0(なし)~3(重大な問題)で点数を付ける。
【0036】
治験責任医師は、それぞれ個々に患部から次のもの:瘻孔の数;小結節又は膿瘍の数;瘢痕の数;次のように:0、なし、1、軽度;2、中程度;3、重度で0~3で点数化した炎症の程度に関するそれらの印象;mm単位での各病変の2つの最大径をカウントし、その領域の写真を撮影した。上記に基づき、各来院時に次の2つのスコアを評価した:化膿性汗腺炎臨床反応(HiSCR)スコア及び医師総合評価(PGA)スコア。HiSCRに対して、患者を達成者又は非達成者として定義した。ポジティブなHiSCRスコアを達成する確率は、2回目の来院時から開始し、これは、ベースラインと比較した場合の炎症性病変数(膿瘍及び炎症性小結節の合計)の≧50%減少及びHSにおける膿瘍又は排液性瘻孔の増加がないこととして定義した。PGAの場合、このスコアは、a)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性小結節の総数が0であり、非炎症性小結節の総数が0である場合、なし;b)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性小結節の総数が0であり、非炎症性小結節がある場合、ごく軽症;c)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性小結節の総数が1~4である場合、又は膿瘍若しくは排液性瘻孔が1個あり、炎症性小結節が全くない場合、軽症;d)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性小結節の総数が5以下である場合、又は膿瘍若しくは排液性瘻孔が1個あり、炎症性小結節が1個以下である場合、中等症及び;e)膿瘍又は排液性瘻孔の総数が2~5であり、炎症性小結節の総数が5~10である場合、重症;及びf)膿瘍又は排液性瘻孔が5個より多い場合、極めて重症として分類した。
【0037】
疾患活動性。これは、各患者の全患部のスコアの合計として定義される。次の式によって各領域を評価した:(mm単位での各患部における2つの最大径の掛け算)×(各病変の炎症の程度)。
【0038】
改定Sartoriusスコア。これは、次のように記録されたデータを用いた、各患部に対する個別のスコアの合計である:a)関与する1解剖学的領域あたり3点;b)各瘻孔に対して6点及び各小結節又は膿瘍に対して1点;c)各患部の2つの関連する病変間の最長距離が<5cmである場合には1点;それが5~10cmである場合には3点;それが>10cmである場合には9点;及びd)隣接する正常皮膚から病変が明瞭に分離していない場合には9点及び明瞭な分離がある場合には0点。
【0039】
第12週での処置群と対照薬プラセボ群との間のポジティブなHiSCRスコアの達成の違いにより、HiSCRスコア化による中程度~重度HSの患者におけるMABp1の有効性を評価した。第24週での処置群と対照薬プラセボ群との間のHiSCRスコアの達成の違いにより、ポジティブなHiSCRスコア化による中程度~重度HSの患者におけるMABp1の長期有効性を評価した。アダリムマブ下で以前に奏効しなかったか又は再発があった患者に対して、且つ以前アダリムマブ処置を受けなかった患者に対して別個に分析を行った。全ての治験来院時において使用したスコアの全て(HiSCR、PGA、DLQI、疾患活動性、疾患に対するVAS、疼痛に対するVAS及び改定Sartoriusスコア)の比較により、中程度~重度HS患者におけるMABp1の短期及び長期有効性を評価した。アダリムマブ下で以前に奏効しなかったか又は再発があった患者に対して、且つ以前アダリムマブ処置を受けなかった患者に対しても別個に分析を行った。2つの処置群間で第0週から新たな増悪までの時間を比較することにより、新たな増悪までの時間に対するMABp1の効果を評価した。アダリムマブ下で以前に奏効しなかったか又は再発があった患者に対して、且つ以前アダリムマブ処置を受けなかった患者に対して別個に分析を行った。2つの試験群間のHiSCRの比較は、フィッシャーの直接検定により行った。各治験来院に対する重症度スコアの比較は、ノンパラメトリックな統計により行った。2つの群間の新たな増悪までの時間の比較は、ログランク検定により行った。
【0040】
結果。
図1~12は、本試験の結果を示す。MABp1で処置した患者は、対照薬よりもポジティブなHiSCRスコアの有意に優れた評価を達成した。MABp1での処置は、有意差があった:第24週にポジティブなHiSCRスコアを上昇させ;総AN数を減少させ(以前の抗TNF曝露がない患者においてより顕著);疾患に対するVASを減少させ;以前に抗TNF曝露がない患者において新たな増悪までの時間を増大させ;身体全体の病変のUS深度を顕著に低下させた(以前に抗TNFの失敗がない患者においてより顕著)。
【0041】
実施例2
化膿性汗腺炎(HS)に対する処置としてのMABp1を評価する研究者主導ランダム第二相試験からのトップライン結果から、この試験がその主要評価項目に合っていることが示され、このことから、治療12週間後に対照と比較してHS患者の顕著な改善が明らかになった(それぞれ60%対10%の応答率(p=0.035))。
【0042】
抗TNFα療法の対象ではないHS患者におけるMABp1、インターロイキン-1アルファ(IL-1α)を標的とするTrue Human(商標)抗体の安全性及び有効性を評価するために、20名の患者の二重盲検プラセボ対照試験を設計した。患者をランダムに1:1に分けて、MABp1又はプラセボの何れかを2週間ごとに12週間にわたり投与した。本試験の患者に対して、12週に化膿性汗腺炎臨床応答(HiSCR)スコアを使用して有効性の一次評価を行い、フォローアップ相により継続して、治療なしでさらに12週間後に再発までの時間を評価した。有効性の目安には、HiSCRスコアの評価、HS患者において有効性を評価するための有効な方法並びにクオリティーオブライフ評価及び超音波診断評価が含まれる。
【0043】
プラセボ群では10%であったことと比較して、MABp1での処置に割り当てられた治療患者の60%が第12週でポジティブなHiSCRを達成した(
図1)。MABp1下でのポジティブなHiSCRに対するオッズ比(OR)は、13.50であった(95%信頼区間:1.19-152.51;p=0.035)。治療下でHiSCRスコアの主要な構成要素である総AN数が最初の12週間にわたり減少した(
図3)。MABp1の臨床効果は、第24週まで、すなわち処置停止後12週間まで維持された。その時点で、
図2で示されるように、ポジティブなHiSCRスコアを有した者は、MABp1で処置した患者では10名のうちの4名(40%)であったことと比較して、プラセボで処置した患者にはいなかった(0%)。MABp1処置では、患者が報告した結果もより良好であった。視覚アナログスケール(VAS)の低下は、プラセボ及びMABp1に割り当てられた患者においてそれぞれ30%(10名中3名)及び70%(10名中7名)で見られた。サブ分析から、これは、抗TNFナイーブ患者間でそれぞれ40%(5名中2名)及び33.3%(3名中1名)であり、抗TNFでの以前の処置が奏効しなかった患者間で20%(5名中1名)及び85.7%(7名中6名)であったことが示された。最初のHS増悪までの中央時間は、プラセボ群で7週間であり、MABp1群で11週間であった。この時間は、群間で有意差がなかった(ログランク:1.98、p=0.159)。しかし、抗TNFナイーブ患者間でサブ分析を行った場合、新たなHS増悪までの中央時間は、プラセボ処置で4週間及びMABp1処置で18.5週間であることが分かった(ログランク検定:4.46;p=0.035;
図8を参照されたい)。疾患活動性の低下は、MABp1で処置した全患者及び第12及び24週でポジティブなHiSCRを達成した全患者で見られた。第12週での評価したスコア、すなわち医師総合評価(PGA)、疾患活動性、改定Sartoriusスコア、疼痛に対するVAS及び皮膚科学ライフクオリティー指標(DLQI)の少なくとも2つの低下がプラセボに割り当てられた患者の40%及びMABp1に割り当てられた患者の80%(80%)で見られた(OR=14.50;95%信頼区間:0.96-218.99;p=0.054)。サブ分析から、これは、抗TNFナイーブ患者間でそれぞれ60%(5名中3名)及び100%(3名中3名)であり、抗TNFでの以前の処置が奏効しなかった患者間で20%(5名中1名)及び71.4%(7名中5名)であったことが示された。皮膚超音波に対する変数の顕著な変化には、総病変血管分布及び総病変深度が含まれ、これは、それぞれ血管分布のグレードの合計及び全ての関与する皮膚領域の最大深度の合計である。両方の変数は、MABp1での処置後に低下した(
図9~12)。総病変深度の20%を超える低下をカットオフポイントとして選択し、これは、MABp1処置患者では77.8%であったのに対して、プラセボに割り当てられた患者では22.2%で見られた(OR=12.25;95%信頼区間1.33~113.06;p=0.027)。以前抗TNFが奏効しなかった患者間で効果が明白であった(
図10)。患部の弾力の顕著な改善も認められた。
【0044】
血清IL-1αは、ブラインド処置の前及び終了時の両方で全患者から採取した血清中で検出下限を下回った。プラセボに割り当てられた6名の患者及びMABp1に割り当てられた7名の患者から処置前に膿汁を採取した。IL-1αの平均±SE濃度は、それぞれ697.2±440.4pg/mL及び772.0±221.7pg/mLであった(マン-ホイットニーU検定によりp=0.412)。MABp1での処置により、血清IL-8が低下した。第12週でのIL-8の30%を超える低下をカットオフ点として選択した。MABp1によるこのカットオフ点に対するORは、13.50であった(95%信頼区間:1.19~152.51;p=0.035)。これは、熱殺菌スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)で刺激された全血から生じるIL-8レベルの変化と一致し、これは、プラセボで処置した患者よりもMABp1で処置した患者の間で顕著に低かった。全血がIL-1α及びヒトβ-デフェンシン(hBD)-2の両方を産生する能力は、プラセボ処置患者の間で正の関連があった。同じ患者の間で、hBD-2産生能は、超音波での病変の皮膚深度の変化と負の相関があった。これらの相関は、MABp1処置患者の間には存在せず、このことから、IL-1αの阻害を通じてもたらされたHSにおけるMABp1のhBD-2関連作用形式が示唆される。
【0045】
安全性 - 治験薬関連の有害事象又は重大な有害事象は、本試験では起こらなかった。
【0046】
第2相二重盲検試験でプラセボ又はMABp1治療剤の何れかを投与するために、ランダム化した全20名の患者に対するiHS4スコアを使用したデータの分析を行った。第12週でのベースラインからのiHS4スコアの少なくとも30%の低下は、ポジティブなHiSCRスコアに対する100%感度と関連した(第二相試験で使用した有効性の目安)。この変化は、プラセボ及びMABp1に割り当てられた患者のそれぞれ1名(10%)及び4名(40%)で見られた(p=0.046)。
【0047】
第二相試験でプラセボに元来割り当てられていた患者に、いわゆるオープンラベル延長(OLE)試験においてMABp1抗体療法での治療を受けさせた。元来プラセボを投与されていた10名の患者のうちの7名を12週間にわたりMABp1で処置した。OLEにおいて使用した主要評価項目には、安全性及び12週間の処置の終了時のHiSCRスコアが含まれた。二重盲検試験の終了時、プラセボを投与された1名の患者のみ(10名中1名又は10%)がHiSCRを達成した。OLE中、5名の患者(7名のうちの5名又は71.4%)がHiSCR反応を達成した(p=0.035)。この試験の盲検部分中、全部で24例のHS増悪があったのに対し、OLE相中、増悪は、1例のみであった。
【0048】
Dr.Giamarellos-Bourboulisは、「データで観察される全体的な奏効率は、私の意見では、HSの処置に対するパイオニア的なものである」、「私は、これらの結果によって本当に励まされ、この壊滅的な状態に対する治療薬としてのMABp1の将来的な使用を非常に楽しみにしている」とコメントした。
【0049】
他の実施形態
本発明をその詳細な記述と一緒に記載してきたが、先行する記載は、例示であり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。他の態様、利点及び改変形態は、以下の特許請求の範囲内にある。