(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ヒト胚性幹細胞から誘導された内胚葉及び膵内胚葉細胞を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20220922BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20220922BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0735
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020519844
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2018065779
(87)【国際公開番号】W WO2018229179
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-01-28
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】501357201
【氏名又は名称】ヘルムホルツ ツェントゥルム ミュンヘン ドイチェス フォルシュングスツェントゥルム フューア ゲズントハイト ウント ウムヴェルト (ゲーエムベーハー)
(73)【特許権者】
【識別番号】519445554
【氏名又は名称】ミルテニー・バイオテック・ベー・ファオ・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】MILTENYI BIOTEC B.V. & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リッケルト,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】マハダルカル,パラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ノーベル,ゼバスティアン・マティアス
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/070014(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/131568(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/030166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)膵前駆細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、膵前駆細胞上の細胞表面マーカーに結合するリガンドに曝す工程
であって前記細胞表面マーカーは、CD177である、及び
(b)多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された
細胞個体群のリガンドに結合しない細胞から、膵前駆細胞を分離し、これにより、該膵前駆細胞を精製する工程
を含む、膵前駆細胞を精製する方法。
【請求項2】
膵前駆細胞が、FOXA2、SOX17、CER1、及び/又はCXCR4、好ましくはCER1を発現している、請求項1の方法。
【請求項3】
前記細胞個体群を、
(i)CD51に結合するリガンドに曝し細胞表面上のCD51発現細胞の個体群の細胞を濃縮する及び/又は(ii)CD275に結合するリガンドに曝し、細胞表面上のCD275発現細胞を枯渇される工程(c)をさらに含む、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記リガンドが抗体又はその結合断片である、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
前記抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、請求項4の方法。
【請求項6】
前記リガンドが標識とコンジュゲートしている、請求項1~5のいずれか一項の方法。
【請求項7】
前記マーカーの発現が、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって検出される、請求項1~6のいずれか一項の方法。
【請求項8】
前記マーカーの発現がフローサイトメトリーによって検出される、請求項1~7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
前記分離工程が、アフィニティクロマトグラフィーを含む、請求項1~8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
前記分離工程が、フローサイトメトリーを含む、請求項1~8のいずれか一項の方法。
【請求項11】
前記膵前駆細胞がヒト
細胞である、請求項1~10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
組成物に含まれる細胞の少なくとも50%が、CD177陽性である膵前駆細胞を含む、精製された組成物。
【請求項13】
前記膵前駆細胞が、膵前駆細胞上のCD177に結合するリガンドに結合する、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記膵前駆細胞がヒト
細胞である、請求項12又は13の組成物。
【請求項15】
前記リガンドが捕捉用媒体上に固定されている、請求項1~11のいずれか一項の方法。
【請求項16】
前記リガンドが捕捉用媒体上に固定されている、請求項12~14のいずれか一項の組成物。
【請求項17】
捕捉用媒体がビーズを含む、請求項15の方法。
【請求項18】
前記リガンドが磁性試薬にコンジュゲートしている、請求項1~11のいずれか一項の方法。
【請求項19】
前記方法によって得ることのできる精製された細胞組成物
に含まれる細胞の少なくとも50%が、膵前駆細胞
である、請求項1~11のいずれか一項の方法。
【請求項20】
多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群から膵前駆細胞を精製するための、膵前駆細胞上の細胞表面マーカーであるCD177に結合するリガンドの使用
であって、前記膵前駆細胞が、内胚葉(DE)、前方胚性内胚葉(ADE)、又は後方腸管(PGT)及び/又は腹側前腸(VFG)の段階で精製される、前記使用。
【請求項21】
膵前駆細胞が細胞表面上にCD177を含む、請求項1~11
、15又は17~19のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
自己免疫反応による膵島内のβ細胞の破壊は1型糖尿病の原因であるが、2型糖尿病においても、他の機序によって媒介されるものであるが、β細胞の破壊が、疾患の後期段階において起こり得る。しかしながら、これらの疾患、特に1型糖尿病を有する患者は、外からのインシュリンの送達を必要とするが、正しいインシュリン用量の選択は依然として難題であり、血糖コントロール不良となり得る。
【0002】
膵島の再生能は非常に低いので、膵島細胞の移植により、改善された耐糖能及び血糖コントロールをもたらすことができる。しかしながら、膵島細胞の移植は、ドナー臓器への依拠、膵臓から膵島を単離する際の難題、及び免疫抑制薬の生涯におよぶ使用をはじめとする、様々な制約に煩わされる。多能性幹細胞は、ドナー膵島細胞の不足に対する可能性ある解決策をもたらす。
【0003】
多能性幹細胞又は胚性幹細胞から膵前駆細胞又はβ細胞へと分化させるためのいくつかの方法が先行技術において記載されている。例は、Rezania et al., 2014、Pagliuca et al., 2014、D’Amour et al., 2006、又はKroon et al., 2008である。これら全ての方法により、有意な比のβ細胞がもたらされるが、これらの方法によって生成されたβ細胞は未熟であり、奇形種形成のリスクをもたらす可能性のあるいくつかの未分化な多能性幹細胞も含有している場合がある。
【0004】
それ故、より高い比率の膵前駆細胞をもたらす、細胞の亜個体群を、分化中に濃縮することが重要である。膵臓及び膵島の発生中に細胞は様々な中間体を経る。1つの重要な中間体は、前方胚性内胚葉(ADE)の段階である。ここで、膵系統又は例えば肝臓のような他の系統へと発達しつつあるすでに特殊化された亜個体群間で分化することが可能である。特許出願の米国特許出願第2009/0263896A1号及び国際公開公報第2016/170069A1号は、膵内胚葉細胞の濃縮のためのいくつかのマーカーを開示している。しかしながら、こうした特許出願は、膵β細胞への分化の後期段階にある亜個体群を選別する。そうした細胞は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤をアップレギュレートし、細胞補充療法用の大量の細胞を増幅する能力を失っている。細胞が依然として高度に増殖性である前方胚性内胚葉(ADE)段階の膵前駆細胞を選別することは、増幅の問題を克服し、多能性幹細胞からの大量の膵前駆細胞のスケールアップ可能な生産を可能とするだろう。
【0005】
しかしながら、より初期の分化段階における膵臓となる運命を有する胚性内胚葉亜個体群についての新規で信頼性がありかつ好ましくは改善されたマーカーが依然として必要であり、これにより、有利には後続の製造プロセス中においても依然として増殖能を有する、異種細胞個体群の中からの特殊化した膵前駆細胞の選択が理想的に改善される。したがって、本出願の基礎にある技術的問題は、この必要性に対応することである。本発明の発明者らは驚くべきことに、細胞表面マーカーのCD51及び/又はCD177を、胚性内胚葉の段階の将来の膵前駆細胞を濃縮するために使用することができ、一方、細胞表面マーカーのCD275は、肝臓系統の将来の細胞を濃縮するために、又はこのような細胞を枯渇させるために使用することができることを発見した。肝臓系統の細胞の枯渇は、膵前駆細胞へと発達しない細胞を除去するために使用することができ、これにより、膵前駆細胞に発達することのできる細胞を濃縮することができる。さらに、奇形種形成細胞を選別することができ、CD177及びCD275は、様々な細胞株及び様々なプロトコールにおける分化プロセスを評価するためのツールとしての役割を果たし得る。CD177亜個体群はさらに、増加したWNT/平面内細胞極性(planar cell polarity)(PCP)シグナル伝達を示す。CD177+細胞は、膜へのβ-カテニンの移行を示し、したがって、肝臓となる運命よりも膵臓となる運命を促進する(実施例2及び4、
図2C~E、
図4D)。CD177+細胞は、背側膵を効率的に発生し(実施例3及び7、
図3C、D)、より緊密なクラスターを生成し、組織極性を有する(実施例5、
図5E)。それらは、PDX1又はNKX6.1のような膵転写因子のより高度な発現を示し(実施例5及び9、
図5C)、単一ホルモン性細胞を生成する(実施例5及び9、
図5B)。さらに、実施例2、6及び7に示されているように、CD177陽性細胞は、先行技術において公知であるCXCR4陽性細胞(CD184)よりも膵前駆細胞となる確率がより高い細胞個体群を発生する。
【0006】
発明の概要
本明細書に記載の実施態様は、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された膵前駆細胞を精製するための方法、並びに前記の精製された膵前駆細胞を含む組成物、並びに、CD177に対するリガンドと、膵前駆細胞から胚性内胚葉細胞個体群へと分化させるための手段とを含むキットに関する。
【0007】
したがって、本発明は、
(a)膵前駆細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、膵前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドに曝す工程、及び
(b)リガンドに結合しない、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞から、膵前駆細胞を分離し、これにより、該膵前駆細胞を精製する工程(ここでの該膵前駆細胞は好ましくは細胞表面上にCD177を含む)
を含む、膵前駆細胞の精製法に関する。
【0008】
本発明による(特殊化された)膵前駆細胞の精製法の別の利点は、スケールアップ可能な生産システムが可能であることであり得る。分化プロセスの最中、例えば内胚葉(DE)、前方胚性内胚葉(ADE)、又は後方腸管(PGT)の段階における(特殊化された)膵前駆細胞の初期における選択は、少数の細胞個体群の中からの選別を可能とする。次いで、そうした細胞をその後に増幅させ、材料(培地、サイトカインなどを含む)は節約される。これに対し、先行技術は、分化の後期段階において選別する。この点ですでに多くの材料がすでに使用されている。したがって、この中の大部分が廃棄される。それ故、本発明は、膵臓系統細胞のより経済的な製造法を提供する。
【0009】
本発明の方法に従って精製される膵前駆細胞は好ましくは、FOXA2、SOX17、CER1、及び/又はCXCR4、より好ましくはCER1を発現している。
【0010】
本発明の方法は好ましくは、さらなる工程、すなわち、CD51及び/又はCD275に結合するリガンドに該細胞個体群を曝す工程を含む。
【0011】
好ましくは、本発明の方法による膵前駆細胞の精製のために使用されるCD51、CD177及び/又はCD275に結合しているリガンドは、抗体又はその結合断片である。
【0012】
本発明の方法に従って使用されるCD51、CD177及び/又はCD275に結合している抗体又は抗体断片は好ましくは、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
【0013】
好ましくは、本発明の方法による膵前駆細胞の精製のために使用されるCD51、CD177及び/又はCD275に結合しているリガンドは、標識とコンジュゲートしている。
【0014】
好ましくは、細胞表面マーカーのCD51、CD177及び/又はCD275の発現は、本明細書に記載の膵前駆細胞の精製法に従って、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)及び/又はフローサイトメトリーによって検出される。
【0015】
本発明に記載の方法の分離工程は好ましくは、アフィニティクロマトグラフィー及び/又はフローサイトメトリーを含む。
【0016】
本発明の方法に従って精製される膵前駆細胞は好ましくはヒトである。
【0017】
本発明に記載の方法において使用されるリガンド又は本明細書に記載の膵前駆細胞の組成物は好ましくは、捕捉用媒体上に固定されている。該捕捉用媒体は好ましくはビーズを含み、及び/又は、該リガンドは好ましくは磁性試薬にコンジュゲートしている。
【0018】
本発明に従って膵前駆細胞を精製する方法により好ましくは、少なくとも50%の(特殊化された)膵前駆細胞を含む細胞組成物が得られる。
【0019】
本発明の方法に従って精製される組成物は好ましくは、CD177陽性である少なくとも50%の膵前駆細胞を含み、ここでの膵前駆細胞は好ましくは細胞表面上にCD177を含む。好ましくは、本明細書に記載の組成物の膵前駆細胞は、膵前駆細胞上のCD177に結合するリガンドに結合する。本発明の方法に従って精製された膵前駆細胞の組成物、及び/又は膵前駆細胞上のCD177に結合したリガンドに結合した組成物の膵前駆細胞は好ましくはヒトである。
【0020】
さらに、本発明は、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群から、膵前駆細胞(ここでの膵前駆細胞は好ましくは細胞表面上にCD177を含む)を精製するための、膵前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドの使用に関する。
【0021】
本発明はまた、CD177に結合するリガンドと、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から胚性内胚葉細胞の個体群へと分化させるための手段とを含むキットに関する。
【0022】
好ましくは、膵前駆細胞は好ましくは細胞表面上にCD177を含む。
【0023】
上記の方法及び組成物は、インビトロで培養された細胞に関することが理解されるだろう。しかしながら、上記のインビトロで分化された細胞組成物は、インビボにおける適用のためにも使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1-1】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図1-2】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図1-3】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図1-4】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図1-5】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図1-6】異なる胚性内胚葉(DE)を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定のためのスクリーニング設定。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B)既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4に対する、異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定のための設定。C~D)CD275及びCD177は、FOXA2/SOX17陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)における明確に異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮する。E)CD177陽性の胚性内胚葉(DE)及びCD275陽性の胚性内胚葉(DE)は、CXCR4(CD184)陽性の胚性内胚葉(DE)とは異なることを示す、4日目に選別された胚性内胚葉(DE)亜個体群の主成分(PCA)分析。F)分化から4日後に1.5倍超でアップレギュレートされた遺伝子から生じたGOタームの遺伝子オントロジー分析。
【
図2-1】非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)の経路は、CD177+亜個体群において変動的に調節されている。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化と、磁気細分離(MACS)を使用した選別の図示。B)全ての亜個体群においてFOXA2及びSOX17の類似した発現を示すが、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXの点では明確に異なるプロファイルを示した、mRNAの定量。C)CXCR4の亜個体群及びCD275の亜個体群と比較して、CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)亜個体群においてWNT/PCP標的遺伝子のアップレギュレーションを示したマイクロアレイプロファイリング。D~E)CD177陽性胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子(DVL2、ROR2、CELSR1)及びリガンド(WNT5A及びWNT4)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。F~G)CD275陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較して、CD177の陽性の胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子であるp-JNKのリン酸化を示したウェスタンブロット分析。
【
図2-2】非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)の経路は、CD177+亜個体群において変動的に調節されている。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化と、磁気細分離(MACS)を使用した選別の図示。B)全ての亜個体群においてFOXA2及びSOX17の類似した発現を示すが、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXの点では明確に異なるプロファイルを示した、mRNAの定量。C)CXCR4の亜個体群及びCD275の亜個体群と比較して、CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)亜個体群においてWNT/PCP標的遺伝子のアップレギュレーションを示したマイクロアレイプロファイリング。D~E)CD177陽性胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子(DVL2、ROR2、CELSR1)及びリガンド(WNT5A及びWNT4)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。F~G)CD275陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較して、CD177の陽性の胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子であるp-JNKのリン酸化を示したウェスタンブロット分析。
【
図2-3】非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)の経路は、CD177+亜個体群において変動的に調節されている。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化と、磁気細分離(MACS)を使用した選別の図示。B)全ての亜個体群においてFOXA2及びSOX17の類似した発現を示すが、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXの点では明確に異なるプロファイルを示した、mRNAの定量。C)CXCR4の亜個体群及びCD275の亜個体群と比較して、CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)亜個体群においてWNT/PCP標的遺伝子のアップレギュレーションを示したマイクロアレイプロファイリング。D~E)CD177陽性胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子(DVL2、ROR2、CELSR1)及びリガンド(WNT5A及びWNT4)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。F~G)CD275陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較して、CD177の陽性の胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子であるp-JNKのリン酸化を示したウェスタンブロット分析。
【
図2-4】非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)の経路は、CD177+亜個体群において変動的に調節されている。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化と、磁気細分離(MACS)を使用した選別の図示。B)全ての亜個体群においてFOXA2及びSOX17の類似した発現を示すが、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXの点では明確に異なるプロファイルを示した、mRNAの定量。C)CXCR4の亜個体群及びCD275の亜個体群と比較して、CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)亜個体群においてWNT/PCP標的遺伝子のアップレギュレーションを示したマイクロアレイプロファイリング。D~E)CD177陽性胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子(DVL2、ROR2、CELSR1)及びリガンド(WNT5A及びWNT4)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。F~G)CD275陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較して、CD177の陽性の胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子であるp-JNKのリン酸化を示したウェスタンブロット分析。
【
図2-5】非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)の経路は、CD177+亜個体群において変動的に調節されている。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化と、磁気細分離(MACS)を使用した選別の図示。B)全ての亜個体群においてFOXA2及びSOX17の類似した発現を示すが、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXの点では明確に異なるプロファイルを示した、mRNAの定量。C)CXCR4の亜個体群及びCD275の亜個体群と比較して、CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)亜個体群においてWNT/PCP標的遺伝子のアップレギュレーションを示したマイクロアレイプロファイリング。D~E)CD177陽性胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子(DVL2、ROR2、CELSR1)及びリガンド(WNT5A及びWNT4)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。F~G)CD275陽性の胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較して、CD177の陽性の胚性内胚葉(+DE)における、WNT/PCP標的遺伝子であるp-JNKのリン酸化を示したウェスタンブロット分析。
【
図3-1】亜個体群の濃縮は、腹側の膵前駆細胞と背側の膵前駆細胞を識別することができる。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離(MACS)を使用した選別、その後のさらなる後方腸管への分化の図示。B)CD177+細胞、CXCR4+細胞、及びCD275+細胞における、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17の発現。PDX1の発現は、膵前駆細胞の形成を示すことが示される。C)CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較してCD275陽性の胚性内胚葉(+DE)の方が、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17のより高い発現を示した、mRNA定量。D)CD275+及びCXCR4+と比較した、CD177+における背側膵前駆細胞遺伝子(ノギン、MNX1、PTCH1)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。E)CD177+細胞と比較してCD275+細胞の方がSOX17のより高い発現を示した代表的なFACSプロット。
【
図3-2】亜個体群の濃縮は、腹側の膵前駆細胞と背側の膵前駆細胞を識別することができる。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離(MACS)を使用した選別、その後のさらなる後方腸管への分化の図示。B)CD177+細胞、CXCR4+細胞、及びCD275+細胞における、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17の発現。PDX1の発現は、膵前駆細胞の形成を示すことが示される。C)CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較してCD275陽性の胚性内胚葉(+DE)の方が、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17のより高い発現を示した、mRNA定量。D)CD275+及びCXCR4+と比較した、CD177+における背側膵前駆細胞遺伝子(ノギン、MNX1、PTCH1)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。E)CD177+細胞と比較してCD275+細胞の方がSOX17のより高い発現を示した代表的なFACSプロット。
【
図3-3】亜個体群の濃縮は、腹側の膵前駆細胞と背側の膵前駆細胞を識別することができる。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離(MACS)を使用した選別、その後のさらなる後方腸管への分化の図示。B)CD177+細胞、CXCR4+細胞、及びCD275+細胞における、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17の発現。PDX1の発現は、膵前駆細胞の形成を示すことが示される。C)CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較してCD275陽性の胚性内胚葉(+DE)の方が、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17のより高い発現を示した、mRNA定量。D)CD275+及びCXCR4+と比較した、CD177+における背側膵前駆細胞遺伝子(ノギン、MNX1、PTCH1)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。E)CD177+細胞と比較してCD275+細胞の方がSOX17のより高い発現を示した代表的なFACSプロット。
【
図3-4】亜個体群の濃縮は、腹側の膵前駆細胞と背側の膵前駆細胞を識別することができる。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離(MACS)を使用した選別、その後のさらなる後方腸管への分化の図示。B)CD177+細胞、CXCR4+細胞、及びCD275+細胞における、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17の発現。PDX1の発現は、膵前駆細胞の形成を示すことが示される。C)CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)と比較してCD275陽性の胚性内胚葉(+DE)の方が、腹側膵前駆細胞マーカーSOX17のより高い発現を示した、mRNA定量。D)CD275+及びCXCR4+と比較した、CD177+における背側膵前駆細胞遺伝子(ノギン、MNX1、PTCH1)のアップレギュレーションを確認したqPCR分析。E)CD177+細胞と比較してCD275+細胞の方がSOX17のより高い発現を示した代表的なFACSプロット。
【
図4-1】CD177+亜個体群は特殊化された膵前駆細胞であるが、CD275+亜個体群は肝でプライミングされた前駆細胞である。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離を使用した選別、その後の膵前駆細胞へのさらなる分化の図示。B)肝前駆細胞マーカー(HHEX、AFP、TTR)及び膵前駆細胞マーカー(PDX1)の発現を示したqPCRによる定量。C)CD177+細胞及びCD275+細胞におけるPDX1の免疫蛍光染色の代表的画像。D)CD177+細胞(膜)、CD275+細胞(細胞質及び核)、及びCXCR4+細胞(膜)における、β-カテニン局在化を示した、免疫細胞化学的染色の代表的画像。E~F)細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275+細胞及びCD177+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析。
【
図4-2】CD177+亜個体群は特殊化された膵前駆細胞であるが、CD275+亜個体群は肝でプライミングされた前駆細胞である。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離を使用した選別、その後の膵前駆細胞へのさらなる分化の図示。B)肝前駆細胞マーカー(HHEX、AFP、TTR)及び膵前駆細胞マーカー(PDX1)の発現を示したqPCRによる定量。C)CD177+細胞及びCD275+細胞におけるPDX1の免疫蛍光染色の代表的画像。D)CD177+細胞(膜)、CD275+細胞(細胞質及び核)、及びCXCR4+細胞(膜)における、β-カテニン局在化を示した、免疫細胞化学的染色の代表的画像。E~F)細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275+細胞及びCD177+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析。
【
図4-3】CD177+亜個体群は特殊化された膵前駆細胞であるが、CD275+亜個体群は肝でプライミングされた前駆細胞である。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離を使用した選別、その後の膵前駆細胞へのさらなる分化の図示。B)肝前駆細胞マーカー(HHEX、AFP、TTR)及び膵前駆細胞マーカー(PDX1)の発現を示したqPCRによる定量。C)CD177+細胞及びCD275+細胞におけるPDX1の免疫蛍光染色の代表的画像。D)CD177+細胞(膜)、CD275+細胞(細胞質及び核)、及びCXCR4+細胞(膜)における、β-カテニン局在化を示した、免疫細胞化学的染色の代表的画像。E~F)細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275+細胞及びCD177+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析。
【
図4-4】CD177+亜個体群は特殊化された膵前駆細胞であるが、CD275+亜個体群は肝でプライミングされた前駆細胞である。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離を使用した選別、その後の膵前駆細胞へのさらなる分化の図示。B)肝前駆細胞マーカー(HHEX、AFP、TTR)及び膵前駆細胞マーカー(PDX1)の発現を示したqPCRによる定量。C)CD177+細胞及びCD275+細胞におけるPDX1の免疫蛍光染色の代表的画像。D)CD177+細胞(膜)、CD275+細胞(細胞質及び核)、及びCXCR4+細胞(膜)における、β-カテニン局在化を示した、免疫細胞化学的染色の代表的画像。E~F)細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275+細胞及びCD177+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析。
【
図4-5】CD177+亜個体群は特殊化された膵前駆細胞であるが、CD275+亜個体群は肝でプライミングされた前駆細胞である。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化及び磁気細胞分離を使用した選別、その後の膵前駆細胞へのさらなる分化の図示。B)肝前駆細胞マーカー(HHEX、AFP、TTR)及び膵前駆細胞マーカー(PDX1)の発現を示したqPCRによる定量。C)CD177+細胞及びCD275+細胞におけるPDX1の免疫蛍光染色の代表的画像。D)CD177+細胞(膜)、CD275+細胞(細胞質及び核)、及びCXCR4+細胞(膜)における、β-カテニン局在化を示した、免疫細胞化学的染色の代表的画像。E~F)細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275+細胞及びCD177+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析。
【
図5-1】CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β細胞への分化の図示。B)CD177+細胞及びCXCR4+細胞を使用することによって生成された、INS(インシュリン)+細胞、GCG(グルカゴン)+細胞、及びINS/GCG二重陽性細胞の比率を示したグラフ表示。C)膵転写因子PDX1及びNKX6.1、並びにインシュリン(INS)ホルモン及びグルカゴン(GLU)ホルモンについて陽性である細胞の比率を示した代表的なFACSプロット。D)CD177+細胞及びCXCR4+細胞から生成されたβ細胞における、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2のような膵転写因子の発現を示したqPCR分析。CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞における、より多くのインシュリン(INS)及びより少ないグルカゴン(GCG)の発現を示したmRNA定量。成熟マーカーMAFAも、CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞においてアップレギュレートされている。E)CXCR4+亜個体群と比較して小さくコンパクトな構造を示したCD177+亜個体群の代表的な画像。
【
図5-2】CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β細胞への分化の図示。B)CD177+細胞及びCXCR4+細胞を使用することによって生成された、INS(インシュリン)+細胞、GCG(グルカゴン)+細胞、及びINS/GCG二重陽性細胞の比率を示したグラフ表示。C)膵転写因子PDX1及びNKX6.1、並びにインシュリン(INS)ホルモン及びグルカゴン(GLU)ホルモンについて陽性である細胞の比率を示した代表的なFACSプロット。D)CD177+細胞及びCXCR4+細胞から生成されたβ細胞における、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2のような膵転写因子の発現を示したqPCR分析。CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞における、より多くのインシュリン(INS)及びより少ないグルカゴン(GCG)の発現を示したmRNA定量。成熟マーカーMAFAも、CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞においてアップレギュレートされている。E)CXCR4+亜個体群と比較して小さくコンパクトな構造を示したCD177+亜個体群の代表的な画像。
【
図5-3】CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β細胞への分化の図示。B)CD177+細胞及びCXCR4+細胞を使用することによって生成された、INS(インシュリン)+細胞、GCG(グルカゴン)+細胞、及びINS/GCG二重陽性細胞の比率を示したグラフ表示。C)膵転写因子PDX1及びNKX6.1、並びにインシュリン(INS)ホルモン及びグルカゴン(GLU)ホルモンについて陽性である細胞の比率を示した代表的なFACSプロット。D)CD177+細胞及びCXCR4+細胞から生成されたβ細胞における、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2のような膵転写因子の発現を示したqPCR分析。CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞における、より多くのインシュリン(INS)及びより少ないグルカゴン(GCG)の発現を示したmRNA定量。成熟マーカーMAFAも、CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞においてアップレギュレートされている。E)CXCR4+亜個体群と比較して小さくコンパクトな構造を示したCD177+亜個体群の代表的な画像。
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図5-4】CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β細胞への分化の図示。B)CD177+細胞及びCXCR4+細胞を使用することによって生成された、INS(インシュリン)+細胞、GCG(グルカゴン)+細胞、及びINS/GCG二重陽性細胞の比率を示したグラフ表示。C)膵転写因子PDX1及びNKX6.1、並びにインシュリン(INS)ホルモン及びグルカゴン(GLU)ホルモンについて陽性である細胞の比率を示した代表的なFACSプロット。D)CD177+細胞及びCXCR4+細胞から生成されたβ細胞における、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2のような膵転写因子の発現を示したqPCR分析。CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞における、より多くのインシュリン(INS)及びより少ないグルカゴン(GCG)の発現を示したmRNA定量。成熟マーカーMAFAも、CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞においてアップレギュレートされている。E)CXCR4+亜個体群と比較して小さくコンパクトな構造を示したCD177+亜個体群の代表的な画像。
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図5-5】CD177陽性の胚性内胚葉(+DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する。A)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β細胞への分化の図示。B)CD177+細胞及びCXCR4+細胞を使用することによって生成された、INS(インシュリン)+細胞、GCG(グルカゴン)+細胞、及びINS/GCG二重陽性細胞の比率を示したグラフ表示。C)膵転写因子PDX1及びNKX6.1、並びにインシュリン(INS)ホルモン及びグルカゴン(GLU)ホルモンについて陽性である細胞の比率を示した代表的なFACSプロット。D)CD177+細胞及びCXCR4+細胞から生成されたβ細胞における、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2のような膵転写因子の発現を示したqPCR分析。CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞における、より多くのインシュリン(INS)及びより少ないグルカゴン(GCG)の発現を示したmRNA定量。成熟マーカーMAFAも、CXCR4+細胞と比較してCD177+細胞においてアップレギュレートされている。E)CXCR4+亜個体群と比較して小さくコンパクトな構造を示したCD177+亜個体群の代表的な画像。
【
図6-1】新規なCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の同定。A)添加された増殖因子及び低分子を示した、ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B~C)異種個体群を示したCXCR4+/CD117+細胞(b)及び見かけ上は同質なFOXA2+/SOX17+(c)胚性内胚葉(DE)の代表的なFACSプロット。D~E)FOXA2及びSOX17についての、CXCR4+/CD117high細胞、CXCR4+/CD117mid細胞、及びCXCR4+/CD117low細胞の遺伝子発現プロファイル(全ての遺伝子についてn=3つの生物学的レプリケート、1つの点あたりn=2の技術的レプリケート)。F~G)CER1及びHHEXについて、CXCR4+/CD117high細胞、CXCR4+/CD117mid細胞、及びCXCR4+/CD117low細胞の遺伝子発現プロファイル(全ての遺伝子についてn=3つの生物学的レプリケート、1つの点あたりn=2の技術的レプリケート)。
*は、試料間の有意性を示す。平均値±標準偏差、
**p<0.05。
【
図6-2】新規なCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の同定。A)添加された増殖因子及び低分子を示した、ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)への分化の図示。B~C)異種個体群を示したCXCR4+/CD117+細胞(b)及び見かけ上は同質なFOXA2+/SOX17+(c)胚性内胚葉(DE)の代表的なFACSプロット。D~E)FOXA2及びSOX17についての、CXCR4+/CD117high細胞、CXCR4+/CD117mid細胞、及びCXCR4+/CD117low細胞の遺伝子発現プロファイル(全ての遺伝子についてn=3つの生物学的レプリケート、1つの点あたりn=2の技術的レプリケート)。F~G)CER1及びHHEXについて、CXCR4+/CD117high細胞、CXCR4+/CD117mid細胞、及びCXCR4+/CD117low細胞の遺伝子発現プロファイル(全ての遺伝子についてn=3つの生物学的レプリケート、1つの点あたりn=2の技術的レプリケート)。
*は、試料間の有意性を示す。平均値±標準偏差、
**p<0.05。
【
図7-1】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群の分子プロファイリングは、明確に異なるサインを明らかとする。A~C)CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CD275+の胚性内胚葉(DE)個体群(B)、CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(C)、及びCD275+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(A)において、選択され有意に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)タームの棒グラフ。D)CXCR4+、CD177+、及びCD275+において発現変動する遺伝子を示したヒートマップ。E~F)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群の細胞質内(C)及び核内(N)におけるβ-カテニンの核分画(E)及び定量(F)。
【
図7-2】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群の分子プロファイリングは、明確に異なるサインを明らかとする。A~C)CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CD275+の胚性内胚葉(DE)個体群(B)、CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(C)、及びCD275+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(A)において、選択され有意に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)タームの棒グラフ。D)CXCR4+、CD177+、及びCD275+において発現変動する遺伝子を示したヒートマップ。E~F)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群の細胞質内(C)及び核内(N)におけるβ-カテニンの核分画(E)及び定量(F)。
【
図7-3】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群の分子プロファイリングは、明確に異なるサインを明らかとする。A~C)CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CD275+の胚性内胚葉(DE)個体群(B)、CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(C)、及びCD275+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(A)において、選択され有意に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)タームの棒グラフ。D)CXCR4+、CD177+、及びCD275+において発現変動する遺伝子を示したヒートマップ。E~F)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群の細胞質内(C)及び核内(N)におけるβ-カテニンの核分画(E)及び定量(F)。
【
図7-4】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群の分子プロファイリングは、明確に異なるサインを明らかとする。A~C)CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CD275+の胚性内胚葉(DE)個体群(B)、CD177+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(C)、及びCD275+の胚性内胚葉(DE)個体群対CXCR4+の胚性内胚葉(DE)個体群(A)において、選択され有意に濃縮された遺伝子オントロジー(GO)タームの棒グラフ。D)CXCR4+、CD177+、及びCD275+において発現変動する遺伝子を示したヒートマップ。E~F)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群の細胞質内(C)及び核内(N)におけるβ-カテニンの核分画(E)及び定量(F)。
【
図8-1】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)は、PDX1+膵前駆細胞へと効率的に分化する。A~B)PDX1の細胞内FACS分析(A)並びにPDX1high細胞及びPDX1low細胞の比率を示した、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)の定量(B)。C~D)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)における、PDX1high細胞及びPDX1low細胞の免疫蛍光染色(D)及び分析(C)。尺度バー50μm。E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β様細胞への分化中におけるCD177+、CD275+、及びCXCR4+の発現。F)肝分化プロトコール。G)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群における、初期肝前駆細胞マーカーであるHHEX、TTR、及びAFPの発現のqPCRによる定量。
【
図8-2】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)は、PDX1+膵前駆細胞へと効率的に分化する。A~B)PDX1の細胞内FACS分析(A)並びにPDX1high細胞及びPDX1low細胞の比率を示した、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)の定量(B)。C~D)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)における、PDX1high細胞及びPDX1low細胞の免疫蛍光染色(D)及び分析(C)。尺度バー50μm。E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β様細胞への分化中におけるCD177+、CD275+、及びCXCR4+の発現。F)肝分化プロトコール。G)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群における、初期肝前駆細胞マーカーであるHHEX、TTR、及びAFPの発現のqPCRによる定量。
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図8-3】CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)は、PDX1+膵前駆細胞へと効率的に分化する。A~B)PDX1の細胞内FACS分析(A)並びにPDX1high細胞及びPDX1low細胞の比率を示した、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)の定量(B)。C~D)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導された膵前駆細胞(PP)における、PDX1high細胞及びPDX1low細胞の免疫蛍光染色(D)及び分析(C)。尺度バー50μm。E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から膵β様細胞への分化中におけるCD177+、CD275+、及びCXCR4+の発現。F)肝分化プロトコール。G)濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群における、初期肝前駆細胞マーカーであるHHEX、TTR、及びAFPの発現のqPCRによる定量。
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図9】GATA6及びSOX2の発現に基づいた、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から誘導された膵前駆細胞の特徴付け。A)後方前腸マーカーのGATA6及びPDX1の共発現についての、濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から誘導された膵前駆細胞の免疫蛍光染色。尺度バー50μm。
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図10】CDX2及びPTF1Aの発現に基づいた、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から誘導された膵前駆細胞の特徴付け。A)腸マーカーのCDX2及びPDX1の共発現についての、濃縮された前方胚性内胚葉(+ADE)亜個体群から誘導された膵前駆細胞の免疫蛍光染色。尺度バー50μm。B)外分泌膵マーカーのPTF1A及びPDX1の共発現についての、濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から誘導された膵前駆細胞の免疫蛍光染色。尺度バー、50μm。
【
図11-1】WNT分泌阻害は、膵分化を促進する。A)WNT分泌阻害はIWP2を使用してS2段階で実施される、膵前駆細胞への分化のプロトコールの概観。B~D)IWP2を用いての処置前(B、C)(尺度バー、50μm)及び処置後(B、D)(尺度バー、20μm)においてCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量(B)及び免疫細胞化学(C~D)。E~F)細胞周期から細胞が出たことを明らかとする、様々な前方胚性内胚葉(ADE)サブセットにおけるEdU+細胞についてのEdUによる染色(E)及び定量(F)。尺度バー、80μm。(G)様々な前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群におけるS4及びS5の段階におけるNGN3のmRNA分析。(n=3、生物学的レプリケート)。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。
【
図11-2】WNT分泌阻害は、膵分化を促進する。A)WNT分泌阻害はIWP2を使用してS2段階で実施される、膵前駆細胞への分化のプロトコールの概観。B~D)IWP2を用いての処置前(B、C)(尺度バー、50μm)及び処置後(B、D)(尺度バー、20μm)においてCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量(B)及び免疫細胞化学(C~D)。E~F)細胞周期から細胞が出たことを明らかとする、様々な前方胚性内胚葉(ADE)サブセットにおけるEdU+細胞についてのEdUによる染色(E)及び定量(F)。尺度バー、80μm。(G)様々な前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群におけるS4及びS5の段階におけるNGN3のmRNA分析。(n=3、生物学的レプリケート)。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。
【
図11-3】WNT分泌阻害は、膵分化を促進する。A)WNT分泌阻害はIWP2を使用してS2段階で実施される、膵前駆細胞への分化のプロトコールの概観。B~D)IWP2を用いての処置前(B、C)(尺度バー、50μm)及び処置後(B、D)(尺度バー、20μm)においてCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量(B)及び免疫細胞化学(C~D)。E~F)細胞周期から細胞が出たことを明らかとする、様々な前方胚性内胚葉(ADE)サブセットにおけるEdU+細胞についてのEdUによる染色(E)及び定量(F)。尺度バー、80μm。(G)様々な前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群におけるS4及びS5の段階におけるNGN3のmRNA分析。(n=3、生物学的レプリケート)。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。
【
図12-1】CD177+の濃縮された胚性内胚葉(DE)細胞は、NKX6.1+/INS+β様細胞を効率的に生成する。A)PDX1、NKX6.1、及びNEUROD1の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたS6細胞のqPCRによる遺伝子発現。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。B~C)PDX1とNKX6.1(B)及びNKX6.1とインシュリン(INS)(C)の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞の代表的なFACSプロット。D)様々な転写因子及び膵ホルモンを発現している、細胞の比率について、S6段階の細胞のFACSによる定量。E~F)(E)PDX1とC-ペプチド、及び(F)NKX6.1とINSについて、濃縮されたCD177陽性胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性胚性内胚葉(+DE)から誘導されたS6の細胞の代表的な免疫蛍光染色。核内DAPI染色も同様に示されている。尺度バー、50μm。G)ヒト膵島と比較して、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2などの膵内分泌転写因子について、選別された亜個体群から誘導されたβ様細胞のmRNAの定量。H)濃縮された亜個体群から生成されたβ様細胞内における膵ホルモンであるインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)のmRNA転写物の定量。I)多ホルモン性細胞をマークするインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)の発現について、濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から生成された段階6の細胞の代表的なFACSプロット。
【
図12-2】CD177+の濃縮された胚性内胚葉(DE)細胞は、NKX6.1+/INS+β様細胞を効率的に生成する。A)PDX1、NKX6.1、及びNEUROD1の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたS6細胞のqPCRによる遺伝子発現。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。B~C)PDX1とNKX6.1(B)及びNKX6.1とインシュリン(INS)(C)の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞の代表的なFACSプロット。D)様々な転写因子及び膵ホルモンを発現している、細胞の比率について、S6段階の細胞のFACSによる定量。E~F)(E)PDX1とC-ペプチド、及び(F)NKX6.1とINSについて、濃縮されたCD177陽性胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性胚性内胚葉(+DE)から誘導されたS6の細胞の代表的な免疫蛍光染色。核内DAPI染色も同様に示されている。尺度バー、50μm。G)ヒト膵島と比較して、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2などの膵内分泌転写因子について、選別された亜個体群から誘導されたβ様細胞のmRNAの定量。H)濃縮された亜個体群から生成されたβ様細胞内における膵ホルモンであるインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)のmRNA転写物の定量。I)多ホルモン性細胞をマークするインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)の発現について、濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から生成された段階6の細胞の代表的なFACSプロット。
【
図12-3】CD177+の濃縮された胚性内胚葉(DE)細胞は、NKX6.1+/INS+β様細胞を効率的に生成する。A)PDX1、NKX6.1、及びNEUROD1の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたS6細胞のqPCRによる遺伝子発現。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。B~C)PDX1とNKX6.1(B)及びNKX6.1とインシュリン(INS)(C)の発現についての、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ細胞の代表的なFACSプロット。D)様々な転写因子及び膵ホルモンを発現している、細胞の比率について、S6段階の細胞のFACSによる定量。E~F)(E)PDX1とC-ペプチド、及び(F)NKX6.1とINSについて、濃縮されたCD177陽性胚性内胚葉(+DE)及びCXCR4陽性胚性内胚葉(+DE)から誘導されたS6の細胞の代表的な免疫蛍光染色。核内DAPI染色も同様に示されている。尺度バー、50μm。G)ヒト膵島と比較して、PDX1、NKX6.1、及びNKX2.2などの膵内分泌転写因子について、選別された亜個体群から誘導されたβ様細胞のmRNAの定量。H)濃縮された亜個体群から生成されたβ様細胞内における膵ホルモンであるインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)のmRNA転写物の定量。I)多ホルモン性細胞をマークするインシュリン(INS)及びグルカゴン(GCG)の発現について、濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から生成された段階6の細胞の代表的なFACSプロット。
【
図13-1】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図13-2】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図13-3】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図13-4】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図13-5】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図13-6】CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する。A)2日間と3日間を比較した分化プロトコールの概略。B)2日間及び3日間の設定におけるCD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、CD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)、及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から生成されたPDX1+/NKX6.1+の比較。C)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)に由来するクラスターにおいてβ様細胞を生成する分化プロトコールの説明。D)CD177から誘導されたβ様細胞及びCXCR4から誘導されたβ様細胞の形態;DAPI(青色)及びE-カドヘリン(CAD)(緑色)。尺度バー、20μm。グラフは凝集物のサイズ(μm)を示す。E)成熟マーカーのMAFA、GLUT1、及びUCN3についてのβ様細胞の遺伝子発現プロファイル。データは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)と比較した変化倍率として表現される。エラーバーは+/-標準偏差を示す;
*P<0.05、
**P<0.01、対応のない両側t検定。データは18Sに対して正規化された。F、H~I)MAFA(左)、インシュリン(INS)(中央)(挿入図はより高い拡大率の画像を示す)(H)、及びNKX6.1(緑色、核)とGLUT1(緑色、膜)(I)の発現についてのFACSによる定量(F)並びに免疫組織化学。DAPIは、青色で示されている。尺度バーは、低拡大率の画像では50μm、高拡大率の画像では5μmである。G)CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)から誘導されたβ様細胞による、静的なグルコース刺激性ヒトインシュリン分泌(n=4、1つのバッチあたり5つの技術的レプリケートを含む)。データは、基礎インシュリンレベルと比較した変化倍率として表現され、細胞数に対して正規化されている。J~K)CD177陽性の前方胚性内胚葉細胞(+ADE)及びCXCR4陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)細胞から生成されたS7の細胞における、β細胞成熟マーカーであるMAFA(J)及びGLUT1(K)についての代表的なFACSプロット。
【
図14-1】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-2】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-3】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-4】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-5】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-6】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【
図14-7】パラメーターを変化させることによる誘導効率。A~B)ヒト胚性幹細胞(hESC)から胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)への内胚葉分化スキーム。FACSプロット(A)は、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階の、hH1、hMEL1-NKX6.1及びヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)における、CXCR4+/CD177+の亜個体群及びCXCR4+/CD275+の亜個体群の比率(B)を示す。C~E)ヒト胚性幹細胞(hESC)から以前に公開された内胚葉分化プロトコールの適応。F)3つの異なる内胚葉誘導プロトコールを使用して人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導された胚性内胚葉(DE)細胞における、CXCR4を発現している全個体群の比率についてのFACSによる定量(n=3の生物学的レプリケート)。G)以前に公開されたプロトコールを使用して生成された胚性内胚葉(DE)におけるCXCR4+/CD177+を発現している細胞及びCXCR4+/CD275+を発現している細胞の比率についてのFACSによる定量。H)胚性内胚葉(DE)の誘導の最中における、TGF-β及びBMPのシグナル伝達の用量依存的阻害の図示。I~K)経路を全く阻害せずに(I、条件1)、BMP阻害剤であるDMH1を使用したBMPシグナル伝達の高度阻害を用いて(J、条件2)、中程度のBMP阻害及び低度のTGF-βの阻害(K、条件3)を使用して生成された、CD177陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群及びCD275陽性の前方胚性内胚葉(+ADE)の亜個体群の比率を示した円グラフ。
【0025】
詳細な説明
以下の記載は、本発明を理解する際に有用であり得る情報を含む。本明細書において提供された情報のどれもが、先行技術であるか、又は今回特許請求された本発明に関連していることを、あるいは、具体的に又は暗に言及されているどの刊行物もが先行技術であることを認めるものではない。
【0026】
定義
本明細書において表現されている数字の範囲は、示されている終点を含み、記載されている数字の範囲の終点と終点との間の全ての整数を記載していることが理解されるだろう。明確に反対のことを意図しない限り、単数形のクレーム用語は複数形も範囲内である。
【0027】
本明細書において使用する「多能性幹細胞」は、3胚葉を形成する3つのそれぞれの胚細胞系統並びに胚性外細胞を生じることのできる細胞である。そうした胚葉は内胚葉、中胚葉、及び外胚葉である。本発明の脈絡では、膵前駆細胞及び/又は肝前駆細胞を形成する内胚葉系統の細胞が好ましい。しかしながら、多能性細胞は、全生物を産生できなくてもよい。
【0028】
特定の実施態様では、出発物質として使用される多能性細胞は、ヒト胚性幹細胞をはじめとする幹細胞である。本明細書において使用する「胚性」は、単一の接合体から始まり、発生した配偶子細胞以外の多能性細胞又は全能性細胞をもはや全く含まない多細胞構造で終わる、生物の一連の発生段階を指す。配偶子の融合によって誘導された胚に加えて、「胚性」という用語は、体細胞核への導入によって誘導された胚も指す。ヒト胚性幹細胞は、国際公開公報第03/046141号及びYoung 2008に概略が示されているように、破壊を伴うことなく胚から単離され得る。
【0029】
本明細書において使用する「人工多能性幹細胞」(iPSC)は、分化した細胞又は成体細胞から一種の多能性幹細胞へと直接変換されることのできる細胞である。iPSCの作製は、Takahashi et al.2006によって開拓され、胚性幹細胞(ESC)又は多能性幹細胞(PSC)に非常に似ている細胞型を生じる。
【0030】
図5Aは、幹細胞からβ細胞への分化の概観を示す。様々な段階及び応答している細胞個体群は、以下に定義されるだろう。
【0031】
本明細書において使用する「膵前駆細胞」(PP)は一般的に、内分泌前駆細胞へと、さらには膵β細胞へと分化することのできる細胞である。例えば
図5Aを参照されたい。したがって、PPは、前方胚性内胚葉(ADE)、後方腸管(PGT)、PP1、PP2、内分泌細胞(EN)、及びβ幹細胞(SC-β)を含む。本明細書において使用する「胚性内胚葉」(DE)は、腸管、又は例えば膵臓若しくは肝臓のような腸管から誘導される臓器の細胞へと分化することのできる、多能性細胞を指す。特定の実施態様によると、胚性内胚葉細胞、及びそれから誘導された細胞は、哺乳動物細胞であり、好ましい実施態様では、胚性内胚葉及び/又は前方胚性細胞はヒト細胞である。本明細書において使用する「前方胚性内胚葉」(ADE)という語句は、膵系統細胞へと特に発達することのできる胚性内胚葉(DE)の亜個体群を説明し(実施例2参照)、実施例2に概略が示されているような増加したWnt及び非古典的な平面細胞極性(PCP)シグナル伝達によって特徴付けられる。前方胚性内胚葉(ADE)を規定するマーカーとしては、FOXA2、SOX17、及びCER1が挙げられる。前方胚性内胚葉(ADE)の細胞は好ましくは、本発明に従って膵前駆細胞を精製する方法に使用される。好ましくは、膵前駆細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)、胚性内胚葉(DE)、後方腸管(PGT)、及び/又は腹側前腸(VFG)の細胞である。より好ましくは、膵前駆細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)の細胞である。好ましくは、膵前駆細胞は好ましくは、細胞表面上にCD177を含む。
【0032】
本明細書において使用する「後方腸管」(PGT)は、中間体の細胞個体群を指す。それは、マーカーのFOXA2、HNF1α(HNF1A)、HNF4α(HNF4A)の発現によって特徴付けられる。
【0033】
本明細書において使用する2つのさらなる細胞個体群は、「段階1の膵前駆細胞」(PP1)及び「段階2の膵前駆細胞」(PP2)である。それらは、膵系統の発生における中間体の細胞個体群を示す。PP1の典型的なマーカーとしてはFOXA2及びPDX1が挙げられ、PP2の典型的なマーカーとしてはFOXA2、PDX1、及びNKX6.1が挙げられる。
【0034】
膵前駆細胞(PP)は、本明細書において「内分泌細胞」(EN)と称される、ニューロゲニン3(NGN3)を発現している膵系統細胞へとさらに分化することができる。この細胞型の典型的なマーカーとしては、FOXA2、NGN3、及びNKX2.2が挙げられる。
【0035】
本明細書において使用する「膵β細胞」(SC-β)という用語は、ホルモンを分泌することができ、また、インビトロ又はインビボにおいてこのようなホルモンの分泌を刺激又は奏功する様々な薬剤に対して応答性でもある、内分泌細胞を指す。例えば、本明細書において記載されているような「成熟」内分泌細胞は、例えば、グルコースに対して応答性であり、生理学的に適した様式でインシュリンを放出する、細胞である。本明細書において使用する「未熟」という用語は、ホルモンを完全に分泌することができないか、又は他の実施態様では、インビトロでの様々な刺激に因りホルモンを完全に分泌することができない、細胞を指す。
【0036】
本明細書に記載の実施態様の追加の態様に関して、本明細書に記載の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型を、実施例にさらに記載されているように濃縮、枯渇、単離、分離、選別、及び/又は精製することができる。本明細書において使用する「濃縮された」又は「精製された」という用語、すなわち、他の既知の細胞個体群の枯渇に因り濃縮された又は精製されたということは、細胞個体群がいくつかの選択プロセスにかけられ、これにより該個体群が濃縮及び/又は精製されることを示す。また、対象細胞はまた、比較的濃縮及び/又は精製されていると考えられ、すなわち、別の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された型の個体群と比較して、又は元来の若しくは初期の細胞培養液と比較して、特定の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型個体群が有意により多い。すなわち、時に特定の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型の濃縮又は精製は、1つ以上の既知の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型を、別の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型から「枯渇させること」又は「分離すること」又は「選別すること」を含み得る。例えば、いくつかの実施態様では、特定の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型は、それらがリガンド及び/又は薬剤及び/又は抗体及び/又は固相マトリックス若しくは半固相マトリックスに結合させた抗体と結合又は交差反応しないために、濃縮又は精製される。このような濃縮又は精製された個体群は、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)の細胞培養液から「枯渇された」又は「分離された」又は「選別された」と言うことができる。さらなる一例として、このような枯渇させた又は分離させた又は選別された多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)個体群は、標準的なアフィニティクロマトグラフィー法における通過画分に;すなわち別の言い方をすると、非結合画分に認められ得るか又は単離され得る。したがって、特定の実施態様では、既知又は未知の細胞型の培養液を枯渇させることによって、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型を濃縮及び精製することが有利である。このようにして、濃縮された又は精製された細胞個体群は、結合又は付着した抗体を有していない。精製された個体群から抗体を除去する必要が全くないので、細胞療法のための濃縮された又は精製された細胞の使用は改善される。
【0037】
特定の実施態様では、「濃縮された」、「単離された」、「分離された」、「選別された」、「精製された」という用語又はその等価な用語は、特定の細胞表現型を有する、例えば、その細胞表現型に特徴的な特定の細胞マーカーを発現しているか又は特定の細胞マーカー遺伝子を発現していない、所望の細胞系統又は所望の細胞を少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%含有している、細胞培養液又は細胞個体群又は細胞試料を指す。
【0038】
本明細書において使用する「リガンド」は、細胞上のマーカー若しくは標的若しくは受容体若しくは膜タンパク質、又は試料中若しくは溶液中の可溶性分析物に、特異的に結合するか又は交差反応する、部分又は結合パートナーを指す。
【0039】
本明細書において使用する「マーカー」、「エピトープ」、「標的」、「受容体」又はその等価体は、観察又は検出され得る、任意の分子を指し得る。例えば、マーカーは、核酸、例えば特定の遺伝子の転写物、遺伝子のポリペプチド産物、例えば膜タンパク質、又は遺伝子以外の産物を含む。「細胞表面マーカー」は細胞表面に存在するマーカーである。
【0040】
本明細書において使用する「捕捉用媒体」は、細胞個体群試料から分離されることが可能である、任意のマトリックス又は媒体、例えば生理学的に適合性のビーズを指す。このような媒体の特徴としては、屈折率、サイズ、光散乱強度、磁性、又は、独特な蛍光サインを与える蛍光検出用色素を有することが挙げられる。例えば、固相捕捉用媒体のあるサブセットは、安定なコロイド状粒子、例えば、直径約0.05~約10μmの範囲のサイズ(すなわちコロイドのサイズ)のビーズを含む。このようなビーズは、デキストラン、アミノデキストラン、アルデヒド、及び/又は硫酸官能基を含み得る。好ましくは、捕捉用媒体はビーズを含む。
【0041】
CD51は、インテグリンαV及びビトロネクチン受容体αサブユニットとしても知られているが、これは細胞間接着並びに基底膜及び細胞外マトリックスリガンドへの結合に関与しているヘテロ二量体糖タンパク質ファミリーであるインテグリンの一員である。CD51は、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、及び他のタンパク質に対する受容体の一部である。CD51のUniProtアクセッション番号はP06756であり、そのHUGO番号はHGNC:6150である。
【0042】
CD177は、ヒト好中球同種抗原2a(HNA-2a)、NB1糖タンパク質(NB1GP)、又は真性一次性赤血球増多症タンパク質1(PRV-1)としても知られているが、これは好中球の活性化において役割を果たしている、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面糖タンパク質である。該タンパク質は、血小板内皮細胞接着分子-1に結合することができ、好中球の血管外移動の際に機能することができる。そのUniProtアクセッション番号はQ8N6Q3であり、そのHUGO番号はHGNC:30072である。
【0043】
CD275は、誘導性T細胞共刺激因子リガンド(ICOSリガンド)、B7ホモログ2(B7-H2)、B7様タンパク質GI50、又はB7関連タンパク質1(B7RP-1)としても知られているが、これはT細胞特異的細胞表面受容体ICOSに対するリガンドである。T細胞増殖及びサイトカイン分泌のための共刺激シグナルとして作用し;B細胞の増殖及び形質細胞への分化も誘導する。そのUniProtアクセッション番号はO75144であり、そのHUGO番号はHGNC:17087である。
【0044】
実施態様の詳細な説明
本明細書には、細胞表面マーカーと交差反応するリガンドを使用して、様々な多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、及び/又は胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型を同定及び特徴付けするための方法及びキットが記載されている。細胞表面マーカーは、受容体、膜タンパク質、及び/又はエピトープであり得る。好ましい細胞表面マーカーは、CD51、CD177、及びCD275である。好ましくは、同定された及び/又は特徴付けられた細胞型は、膵前駆細胞、好ましくは細胞表面マーカーCD51及び/又はCD177を使用して同定された膵前駆細胞である。さらに本明細書には、本発明に記載の方法又はキットから得られた膵前駆細胞の組成物も記載されている。胚性幹細胞(ESC)は、好ましい実施態様ではヒト胚性幹細胞(hESC)である。多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞の一般的な作製法は、D'Amour 2005、D'Amour 2006、Rezania 2014、Pagliuca 2014、及びKroon 2008に記載されている。本発明の好ましいプロトコールは、Rezania 2014のプロトコールである。このプロトコールはまた、
図5Aにも簡潔に要約されている。
【0045】
したがって、本発明は、
(a)膵前駆細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、膵前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドに曝す工程、及び
(b)リガンドに結合しない多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞から膵前駆細胞を分離し、これにより、該膵前駆細胞を精製する工程
を含む、膵前駆細胞の精製法に関する。
【0046】
本発明の方法はまた、膵系統へと特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)亜個体群などの、膵前駆細胞の亜個体群を精製する方法として理解され得る。膵系統へと特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)亜個体群などの、膵前駆細胞の亜個体群を精製するこの方法は、(a)特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドに曝す工程、及び(b)リガンドに結合しない、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞から、特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)細胞を分離し、これにより、特殊化された(前方(A))胚性内胚葉(DE)細胞を精製する工程を含み得る。膵系統へと特殊化された亜個体群は、好ましくは膵系統細胞へと発達する亜個体群である。
【0047】
読者の簡便性のために、効率的な膵細胞の生成のための細胞表面マーカーCD177を使用した胚性内胚葉(DE)亜個体群を単離する例示的で非限定的な手順が記載されるだろう。
図5Aでは、手順の概観が示されている:まず、多能性幹細胞(PSC)を、Rezania 2014のプロトコールを使用して胚性内胚葉(DE)へと分化させる。第二に、得られた胚性内胚葉(DE)を次いで、CD177陽性細胞について、例えば磁気細胞分離(MACS)により選別する。これらのCD177陽性細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)細胞の亜個体群としても記載され得るが、これは次いで、第三に、膵β細胞へのさらなる分化のために使用される。
【0048】
本発明の方法における膵前駆細胞の精製のために、膵前駆細胞は、膵系統へと特殊化された前方胚性内胚葉(ADE)細胞であってもよいが、これは表面上にCD177を発現しているはずである。表面上にCD177を発現していない膵前駆細胞は、本発明によって包含されない。
図8Eに示されているように、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)、後方腸管(PGT)、又は腹側前腸(VFG)の段階における膵前駆細胞は、CD177を発現している。したがって、膵前駆細胞の精製は好ましくは、胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)、後方腸管(PGT)、又は腹側前腸(VFG)の段階、より好ましくは胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の段階、あるいは最も好ましくは前方胚性内胚葉(ADE)の段階で実施される。これは、膵系統の細胞に非常に初期に、すなわち、細胞の運命が先行技術において公知のマーカーによって決定され得る前に、分化する傾向のある、妥当な亜個体群の選別を可能とする。
【0049】
したがって、1つの好ましい実施態様では、膵前駆細胞は前方胚性内胚葉(ADE)の細胞である。別の実施態様では、膵前駆細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)及び/又は後方腸管(PGT)の細胞である。別の好ましい実施態様では、膵前駆細胞は、胚性内胚葉(DE)、前方胚性内胚葉(ADE)、後方腸管(PGT)、及び/又はVFG(腹側前腸)の細胞である。
【0050】
本発明は、胚性内胚葉(DE)又は前方胚性内胚葉(ADE)の段階で膵前駆細胞を単離する場合に特に有用である。ここでは、膵系統に分化する傾向のある(前方(A))胚性内胚葉(DE)亜個体群と、他の細胞型、例えば肝系統へと分化する傾向のある他の亜個体群との間のCD177の発現差が最も高い(
図8Eも参照)。しかしながら、後方腸管(PGT)又は腹側前腸(VFG)の細胞もCD177及びCD275を発現する。したがって、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)、胚性内胚葉(DE)、後方腸管(PGT)、及び/又は腹側前腸(VFG)の細胞である。1つの好ましい実施態様では、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞は、前方胚性内胚葉(ADE)の細胞である。
【0051】
膵前駆細胞、又はより正確には、膵系統に特殊化された前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群の精製を、本発明の目的であると理解することができる。それ故、本発明の方法に従って精製された膵前駆細胞は好ましくは、FOXA2、SOX17、CXCR4、及び/又はCER1を発現する。より好ましくは、本発明の方法に従って精製された膵前駆細胞は、CER1を発現する。あるいは、本発明の方法に従って精製された膵前駆細胞は、FOXA2、SOX17、及び/又はCXCR4を発現していてもよい。先行技術において公知のマーカーである、CXCR4
+(CD184)細胞と比較して増加したCD177
+細胞のPDX1の発現が、前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群のさらなる分化後に観察された(実施例5、
図5C)。本発明の方法に従って精製された膵前駆細胞は、膵臓及び十二指腸のホメオボックス遺伝子1(PDX1)を発現し得る。
【0052】
1つの実施態様では、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群を、CD51及び/又はCD275に結合するリガンドとさらに接触させる。細胞の分離法に応じて、分化のために使用されるリガンドの順序は変更される。好ましい環境では、肝系統の細胞となる傾向のあるCD275を発現している細胞(実施例4及び7を参照)を、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群から枯渇させることができる。この脈絡における枯渇は、所望ではない細胞型にしか分化することができない個体群からのそのような細胞の、除去を意味する。それによって、膵系統の細胞が濃縮される。別の好ましい環境では、CD177に加えて、細胞表面マーカーCD51が、膵系統細胞の濃縮のために使用される。フローサイトメトリーでは、3つ全てのマーカーを同時に適用することができるが、磁性ビーズによる選別(磁気細胞分離(MACS))のような他の精製法では、枯渇及び濃縮は、2つ以上の別々の工程で行なわれなければならない。
【0053】
本発明の好ましい実施態様では、リガンドは、抗体又は抗体断片である。抗体又は抗体断片は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合(免疫反応)する抗原結合部位を含有している分子を含む。このような抗体又は断片は、任意の天然の供給源に由来するポリクローナル抗体、並びにクラスIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEの天然の又は組換え型のモノクローナル抗体、ハイブリッド誘導体、並びに抗体断片、例えば、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、ヒト化抗体又はヒト抗体、抗体の相補性決定領域を含有している組換え型の又は合成の構築物、そのFc抗体断片、一本鎖Fv抗体断片(scFv)、所望の細胞表面受容体に結合する、抗体の機能的に等価な結合特徴を保持するに十分な相補性規定領域(CDR)を共有している、合成抗体又はキメラ抗体の構築物、並びにファージディスプレイによって生成された結合断片を含む。特定のクラスは、IgG1、IgG2、及びその他などの、その上にサブクラスも有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はκ鎖であっても、又はλ鎖であってもよい。モノクローナル抗体は、全てが特有な親細胞のクローンである、同一な免疫細胞によって作られた抗体である。モノクローナル抗体は、同じエピトープに結合するという点から、一価の親和性を有することができる。これとは対照的に、ポリクローナル抗体は、複数のエピトープに結合し、これは通常、いくつかの異なる形質細胞系統によって作られる。本発明の好ましい実施態様では、抗体はモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体である。
【0054】
本発明のリガンド、好ましくは抗体は好ましくは、それらの検出を容易にするための標識とコンジュゲートしているか又は結合している。1つの実施態様では、そうした標識は、当技術分野において標準的に使用される放射性、蛍光、磁気、発光、化学発光、生物学的若しくは酵素学的なタグ、又は標識を含む。いくつかの実施態様では、標識は、単独で又は他の分子若しくはタンパク質と協奏して作用しながら、シグナルを与えることのできる低化学分子であり得、このシグナルは直接的に又は間接的に検出可能である。特に好ましい実施態様は、磁性ビーズへのリガンドの結合である。抗体などのポリペプチドにコンジュゲート又は結合させることのできる検出可能な標識の非制限的な例としては、放射性標識、例えば3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、76Br、86Y、99Tc、111In、123I、125I、又は177Lu、酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、フルオロフォア、クロモフォア、化学発光剤、キレート複合体、色素、コロイド状金、又はラテックス粒子が挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
リガンドは、抗体の他に、ムテイン又は他の結合性分子、例えば人工アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、核酸アプタマー、アフィマー、アフィボディ、アフィリン、アフィチン(ナノフィチン(nanofitin))、アルファボディ、アンチカリン(anticalin)、アビマー、フィノマー(fynomer)、クニッツドメインペプチド、又はモノボディであってもよい。
【0056】
本発明の別の実施態様では、標識はまた、基質と相互作用して検出可能なシグナルを発生する酵素;又は、抗体との結合によって、若しくは適切に標識されたリガンドとの結合によって、検出することのできるタンパク質であってもよい。様々な酵素系、例えば、グルコースオキシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリホスファターゼ(AP)、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼと連動したヘキソキナーゼがアッセイにおいて作動して比色定量シグナルを顕現する。使用され得る他の標識系としてはナノ粒子又は量子ドットが挙げられる。
【0057】
細胞におけるCD51、CD177、及び/又はCD275の発現は、様々な方法を用いて検出され得る。本発明の1つの実施態様では、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、ノザンブロット、マイクロアレイ、ポリメラーゼ連鎖反応、及び/又は定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)が検出のために使用される。本発明の好ましい実施態様では、フローサイトメトリーが、CD51、CD177、及び/又はCD275の発現の検出のために使用され、本発明の別の好ましい実施態様では、qPCRがCD51、CD177、及び/又はCD275の発現の検出のために使用される。
【0058】
本明細書において使用する「定量ポリメラーゼ連鎖反応」(qPCR)又は「リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」(リアルタイムPCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応に基づいた検査技術を指す。それは、PCRの最中に、すなわち、従来のPCRのようにその終了時ではなくリアルタイムで、標的化DNA分子の増幅をモニタリングする。リアルタイムPCRは定量的に(定量リアルタイムPCR)及び半定量的に、すなわち、特定量のDNA分子より上/下において(半定量リアルタイムPCR)使用され得る。リアルタイムPCRでPCR産物を検出するための2つの一般的な方法は当業者には公知である:どのような二本鎖DNAにインターカレートする非特異的蛍光色素、又は、プローブとその相補的配列のハイブリダイゼーション後にのみ検出が可能となる蛍光リポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブ。
【0059】
組織特異的遺伝子産物の発現はまた、mRNAレベルで、ノザンブロット分析、ドットブロットハイブリダイゼーション分析によって、又は標準的な増幅法において配列特異的プライマーを使用した逆転写酵素により開始されるポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって検出され得る。
【0060】
細胞表面マーカーの発現、すなわち、細胞の染色強度は、フローサイトメトリーによってモニタリングされ得、ここではレーザーは蛍光色素の量的レベルを検出する(これは、特定の試薬、例えば抗体に結合した細胞表面マーカーの量に比例する)。染色の絶対レベルは、具体的な蛍光色素及び試薬調製物により異なり得るが、データを、対照に対して正規化することができる。選択されたパラメーターの解読値は、例えば細胞表面分子に対する蛍光抗体の使用を通しての、1回の分析の最中に同時に又は順番に解読することができる。一例として、これらを、様々な蛍光色素、蛍光ビーズ、タグ、例えば量子ドットなどでタグ化することができる。
【0061】
いくつかの実施態様では、任意の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞型又は多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群における任意のマーカーの発現レベルは、標準化された又は正規化された対照マーカーと比較して、少なくとも約4倍高く、少なくとも約6倍高く、少なくとも約8倍高く、少なくとも約10倍高く、少なくとも約15倍高く、少なくとも約20倍高く、少なくとも約40倍高く、少なくとも約80倍高く、少なくとも約100倍高く、少なくとも約150倍高く、少なくとも約200倍高く、少なくとも約500倍高く、少なくとも約750倍高く、少なくとも約1000倍高く、少なくとも約2500倍高く、少なくとも約5000倍高く、少なくとも約7500倍高く、又は少なくとも約10,000倍高い。この脈絡におけるマーカーは、CD51、CD177、及び/又はCD275を含むだけでなく、本明細書において定義されているような細胞個体群用の細胞表面マーカーも含む。
【0062】
本発明の方法に従って使用される細胞の多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)又は多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞は、任意の哺乳動物から得ることができる。いくつかの実施態様では、細胞は、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、及び/又は生産動物に由来する。好ましい実施態様では、該細胞はヒトに由来する。
【0063】
本発明による分離工程のための実施態様は、本明細書に記載のもの、例えば抗体でコーティングされた磁性ビーズ(MACS)、アフィニティクロマトグラフィー、及び固体マトリックス若しくは固相捕捉用媒体、例えばプレート、カラムなどに付着させた抗体を用いた「パンニング」、又は他の簡便で利用可能な技術を含む。正確な分離をもたらす技術としては、細胞表面及び細胞内のパラメーター並びに形状変化及び粒度を測定するのに有用な、並びに、抗体に連結される試薬又はプローブに連結される試薬として使用されるビーズの分析に有用な、フローサイトメトリー法が挙げられる。フローサイトメトリーを用いて得られたそうしたデータを使用して、当業者は亜個体群を同定し得、次いで、特定の亜個体群を単離し得る。好ましくは、これらのデータは、CD51、CD177、及び/又はCD275の発現に基づいて、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された亜個体群の中から膵前駆細胞を選別するために使用され得る。MACS及びフローサイトメトリーの使用が実施例において例示されている。
【0064】
本明細書に記載の本発明の1つの実施態様では、アフィニティクロマトグラフィーが、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞の精製に使用される。アフィニティクロマトグラフィーは、抗原と抗体間、酵素と基質間、又は受容体とリガンド間の相互作用などの、高度に特異的な相互作用に基づいた、生化学的混合物の分離法である。それは、分子特性、例えば細胞表面マーカーの発現などを活用することによって、混合物内の生物学的分子又は細胞亜個体群を精製するために使用される一種のクロマトグラフィー検査技術である。リガンド、例えば生物学的巨大分子、例えば抗体又はその断片、酵素、及び/又は他のタンパク質は、数種類の異なる結合及び相互作用を通して高い特異性で他の分子と相互作用する。このような相互作用は、水素結合、イオン性相互作用、ジスルフィド橋、疎水性相互作用などを含む。アフィニティクロマトグラフィーの高い選択性は、所望の分子が固定相との相互作用を可能とすることによって引き起こされ、カラム内に捕捉されるようになり、これにより、相互作用せず最初に溶出されるであろう所望ではない物質から分離される。本発明の好ましい実施態様では、分離工程は、アフィニティクロマトグラフィーを含む。
【0065】
本発明のさらなる実施態様では、フローサイトメトリーが、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群の精製のために使用される。本発明の好ましい実施態様では、分離工程は、フローサイトメトリーを含む。例えば表面マーカーの発現の検出のために使用されるフローサイトメトリーに加えて、それは、特定の亜個体群の分離を可能とし、蛍光活性化細胞選別(FACS)と称されることの多い装置と組み合わせることができる。それは、各細胞の特異的な光散乱及び蛍光の特徴に基づいて、生物学的細胞の異種混合物を2つ以上の容器に、一度に一細胞ずつ、選別するための方法を提供する。それは、個々の細胞に由来する蛍光シグナルの迅速で客観的で数量的な記録、並びに、特に関心の高い細胞の物理的分離をもたらすので、有用な科学装置である。
【0066】
細胞懸濁液は、狭くて急速に流れている液体流の中心に取り込まれる。流動は、それらの直径に関して細胞と細胞の間が大きく分離されるように配置される。振動機序は、細胞の流れが壊れて個々の液滴になることを引き起こす。システムは、一滴あたり細胞が一つを超える確率が低くなるように調整される。流れが壊れて液滴になる直前に、流動は蛍光測定ステーションを通過し、そこで関心対象の各細胞の蛍光特徴が測定される。流れが壊れて液滴になるまさにその点に荷電用リングが配置される。蛍光強度が測定される直前にリングの底部に電荷が配置され、流れから壊れて液滴になると、反対の電荷が液滴上に捕捉される。次いで、荷電した液滴は、それらの荷電に基づいて容器内へと液滴の向きを変える静電偏向システムを通って落下する。システムによっては、荷電は流れに直接かけられ、離脱した液滴は、流れと同じ符号の電荷を保持している。次いで、流れは、液滴が離脱した後に中性に戻る。特定の亜個体群の検出のために、リガンド、好ましくは抗体は、標識、好ましくは本明細書に記載のような蛍光標識を含む。各細胞表面マーカーが異なる標識で標識されている場合、本明細書に記載の異なる細胞個体群間で識別し、これにより、所望の亜個体群を濃縮することが可能である。
【0067】
細胞個体群の中の特定の亜個体群を単離する目的のために、以下の実施態様において要約されている、磁気細胞選別(MACS)を使用し得る:1つの実施態様では、リガンドは捕捉用媒体上に固定される。捕捉用媒体は好ましくはビーズを含み、特に好ましい実施態様では、ビーズは磁性である。好ましい実施態様では、リガンドは磁性ビーズにコンジュゲートしている。
【0068】
1つの実施態様では、本明細書に記載のリガンド、薬剤、及び/又は抗体は、磁性試薬に直接的に又は間接的にコンジュゲートしている。「磁性試薬」は、直接的結合/共有結合による結合又は間接的結合を介して、リガンドと反応することのできる粒子である。本明細書において使用する「磁性試薬」内の「磁性」という用語は、全ての亜型の磁性粒子(これは当業者には周知である方法を用いて調製され得る)、特に強磁性粒子、超常磁性粒子、及び常磁性粒子を指す。好ましくは、磁性試薬は、磁性ビーズである。磁性試薬への直接的なコンジュゲーションは、当技術分野において公知であるような、様々な化学的連結基の使用によって達成される。いくつかの実施態様では、抗体は、側鎖アミノ基又はスルフヒドリル基及びヘテロ官能性架橋試薬を通して磁性試薬に結合している。多くのヘテロ官能性化合物を、実体への連結に利用することができる。例えば、少なくとも、抗体上に反応性スルフヒドリル基、及び磁性粒子上に反応性アミノ基を有する、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP)、又は4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)を使用することができる。磁気分離装置の一例は、国際公開公報第90/07380号、PCT/US96/00953、及び欧州特許第438520号に記載されている。精製された細胞個体群を、任意の適切な培地、好ましくはStemMACS IPS Brew(ミルテニー・バイオテク社)に収集することができる。次いで、膵前駆細胞を、さらなる分化のためにStemMACS IPS-Brew培地中に播種してもよい。
【0069】
本発明の1つの実施態様では、磁気細胞選別が、細胞個体群の中の亜個体群の分離のために使用される。細胞を磁気的に分離する方法は、例えばインビトロジェン社、ステムセルテクノロジーズ社、セルプロ社(シアトル)、又はアドバンスト・マグネティクス社(ボストン)から市販されている。例えば、モノクローナル抗体を、ダイナール(Dynal)M450のような磁性ポリスチレン粒子又は類似した磁性粒子と直接結合させることができ、これを例えば細胞分離のために使用することができる。ダイナビーズ技術はカラムベースではなく、その代わりに細胞の付着したこれらの磁性ビーズは、試料管内で液相の動態を持ち、マグネティックラック上に管を置くことによって細胞が単離される。しかしながら、試料から細胞を濃縮、選別、及び/又は検出するための好ましい実施態様では、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、例えば多糖による有機コーティングを有するコロイド状の超常磁性微粒子と共に使用される(磁気活性化細胞選別(MACS(登録商標))技術(ミルテニー・バイオテク社、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ))。これらの粒子(ナノビーズ又はマイクロビーズ)はモノクローナル抗体又はその抗原結合断片に直接コンジュゲートされていても、あるいは、抗免疫グロブリン、アビジン、又は抗ハプテン特異的マイクロビーズと共に使用されてもよい。MACS(登録商標)技術は、細胞を、特定の表面抗原に対して指向される抗体又はその抗原結合断片でコーティングされた磁性ナノ粒子と共にインキュベートすることによって、細胞の分離を可能とする。これにより、この抗原を発現している細胞の、磁性ナノ粒子への付着が引き起こされる。その後、細胞溶液を、強い磁場に置かれたカラムに移す。この工程では、(抗原を発現している)細胞はナノ粒子に付着し、カラム上に留まり、一方、他の(抗原を発現していない)細胞は通過する。この方法を用いて、細胞を、特定の抗原(群)に対して正に又は負に分離することができる。正の選択では、磁性カラムに付着している、関心対象の抗原(群)を発現している細胞は、カラムを磁場から取り除いた後に、洗い流されて別の容器に入る。負の選択では、使用される抗体は、関心対象ではない細胞上に存在することが知られている、表面抗原(群)に対して指向されている。細胞/磁性ナノ粒子溶液をカラムに適用した後、これらの抗原を発現している細胞はカラムに結合し、通り抜ける画分は関心対象の細胞を含有しているのでそれを収集する。これらの細胞は、ナノ粒子に結合させた抗体によって標識されていないので、それらは「手付かずのまま」である。手順は、直接的な磁気標識を使用して行なっても、又は間接的な磁気標識を使用して行なってもよい。直接的な標識では、特異的な抗体を磁性粒子に直接結合させる。直接的な磁気標識が可能ではないか又は所望ではない場合に、間接的な標識が簡便な代替選択肢である。任意の細胞表面マーカーに対して指向される、一次抗体、特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、一次抗体の組合せをこの標識戦略に使用することができる。一次抗体は、コンジュゲートされていないか、ビオチニル化されているか、又はフルオロフォアがコンジュゲートされているかのいずれかであり得る。その後、磁気標識が抗免疫グロブリンマイクロビーズ、抗ビオチンマイクロビーズ、又は抗フルオロフォアマイクロビーズを用いて達成される。上記のプロセスはまた、CliniMACS(登録商標)(ミルテニー・バイオテク有限会社、ドイツ)又はCliniMACS(登録商標)Prodigy(ミルテニー・バイオテク有限会社、ドイツ)などの閉じた系で実施されてもよい。
【0070】
本明細書において使用する「閉じた系」という用語は、新規物質の導入などの培養プロセスを実施している間、並びに細胞の増殖、分化、活性化、遺伝子改変、及び/又は分離などの細胞培養工程を実施している間に、細胞培養液の汚染のリスクを低減する、任意の閉じた系を指す。このような系は、適正製造基準下(GMP)又はGMPに似た条件(「無菌」)下での操作を可能とし、これにより、臨床的に適用可能な細胞組成物が得られる。閉じた系の一例はCliniMACS Prodigy(登録商標)(ミルテニー・バイオテク有限会社、ドイツ、国際公開公報第2009/072003号)である。
【0071】
本明細書において使用する「自動化された方法」又は「自動化されたプロセス」という用語は、装置及び/又はコンピューター及びコンピューターソフトウェア(さもなければ、操作者によって手動で実施されるだろう又は実施され得る)の使用を通して、自動化された任意のプロセスを指す。自動化されている方法(プロセス)は、ヒトの介入の必要性がより少なく、ヒトが実現するのに必要な時間がより短い。場合によっては、方法の少なくとも1つの工程が、ヒトの支援又は介入を全く伴わずに実施される場合に該方法は自動化されている。優先的には、該方法の全ての工程が、ヒトの支援又は介入を伴うことなく実施される場合に該方法は自動化されている。
【0072】
本発明に従って膵前駆細胞を精製する方法により、本発明の1つの実施態様において、CD51及び/又はCD177陽性である、膵前駆細胞を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%含む、細胞組成物が得られる。好ましい実施態様では、該組成物は、少なくとも50%のCD177陽性細胞を含む。続いて、この組成物を、膵β細胞の生成のために使用することができる。好ましくは、該組成物に含まれる細胞、好ましくは膵前駆細胞はヒトである。さらなる実施態様では、該組成物は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%のCD275陰性膵前駆細胞を含む。好ましい実施態様では、該組成物は、CD275陰性である、少なくとも50%の膵前駆細胞を含む。好ましくは、該組成物に含まれる細胞はヒトである。
【0073】
別の実施態様では、膵前駆細胞の組成物は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%のCD275陽性細胞を含む。肝特異的細胞表面マーカーのCD275について選別された、この特定の実施態様では、膵前駆細胞は、むしろ肝前駆細胞と見なされるべきである。それ故、このような組成物は、肝系統の細胞を生成するために使用することができる。したがって、本発明はまた、
(a)肝前駆細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、肝前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの、細胞表面マーカーはCD275である)に結合するリガンドに曝す工程、及び
(b)リガンドに結合しない、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞から、肝前駆細胞を分離し、これにより、該肝前駆細胞を精製する工程
を含む、肝前駆細胞の精製法に関する。
【0074】
肝前駆細胞の精製法は好ましくは、さらなる工程、すなわち、CD51及び/又はCD177に結合するリガンドに、該細胞個体群を曝す工程を含む。
【0075】
好ましくは、本発明の方法に従って肝前駆細胞を精製するために使用されるCD51、CD177、及び/又はCD275に結合しているリガンドは、抗体又はその結合断片である。
【0076】
肝前駆細胞を精製する方法に従って使用されるCD51、CD177、及び/又はCD275に結合している抗体又は抗体断片は好ましくは、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
【0077】
好ましくは、CD51、CD177、及び/又はCD275に結合し、本発明の方法に従って肝前駆細胞を精製するために使用されるリガンドは、標識にコンジュゲートしている。
【0078】
好ましくは、細胞表面マーカーのCD51、CD177、及び/又はCD275の発現は、本明細書に記載の肝前駆細胞を精製する方法に従って、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)及び/又はフローサイトメトリーによって検出される。
【0079】
肝前駆細胞を精製する方法の分離工程は好ましくは、アフィニティクロマトグラフィー及び/又はフローサイトメトリーを含む。
【0080】
本発明の方法に従って精製される肝前駆細胞は好ましくはヒトである。
【0081】
本明細書に記載の肝前駆細胞又は肝前駆細胞の組成物を精製する方法に記載の方法に使用されるリガンドは好ましくは、捕捉用媒体上に固定されている。捕捉用媒体は好ましくはビーズを含み、及び/又はリガンドは好ましくは磁性試薬にコンジュゲートしている。
【0082】
本発明に従って肝前駆細胞を精製する方法により好ましくは、少なくとも50%の肝前駆細胞を含む細胞組成物が得られる。
【0083】
肝前駆細胞を精製する方法に従って精製される組成物は好ましくは、CD275陽性である少なくとも50%の肝前駆細胞を含む。好ましくは、本明細書に記載の組成物の肝前駆細胞は、肝前駆細胞上のCD275に結合するリガンドに結合する。本発明の方法に従って精製される肝前駆細胞の組成物及び/又は肝前駆細胞上のCD275に結合するリガンドに結合する組成物の肝前駆細胞は好ましくはヒトである。
【0084】
さらに、本発明は、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群から肝前駆細胞を精製するための、肝前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD275である)に結合するリガンドの使用に関する。
【0085】
本発明はまた、CD275に結合するリガンドと、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞を、肝前駆細胞個体群へと分化させるための手段とを含む、キットにも関する。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の方法によって作製された組成物に含まれる膵前駆細胞は、細胞表面上のCD51、CD177、及び/又はCD275に結合するリガンドに結合する。好ましくは、該組成物の膵前駆細胞は、細胞表面上のCD177に結合するリガンドに結合する。より好ましい実施態様では、該組成物に含まれる細胞はヒトである。
【0087】
本発明は、さらなる実施態様において、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された個体群及び/又は組成物から、膵前駆細胞を精製するための、細胞表面マーカーに結合するリガンドの使用に関する。好ましくは、表面マーカーは、CD51、CD177、及び/又はCD275である。1つ以上の表面マーカーが存在していてもよい。より好ましい表面マーカーはCD177である。好ましい実施態様は、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群から膵前駆細胞を精製するための、膵前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドの使用を指す。
【0088】
さらなる実施態様では、本発明は、
(a)膵前駆細胞を含む、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞個体群を、膵前駆細胞上の細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD177である)に結合するリガンドに曝す工程、及び
(b)リガンドに結合しない、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び/又は胚性幹細胞から誘導された細胞から、膵前駆細胞を分離し、これにより、該膵前駆細胞(ここでの膵前駆細胞は好ましくは表面上にCD177を含む)を精製する工程
を含む、膵前駆細胞を精製するための、細胞表面マーカー(ここでの細胞表面マーカーはCD51、CD177及び/又はCD275、好ましくはCD177である)に結合するリガンドの使用に関する。
【0089】
キット
本発明はまた、CD177に結合するリガンドと、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、及び/又は胚性幹細胞(ESC)を、胚性内胚葉(DE)、膵前駆細胞(PP1及び/又はPP2)、及び/又はブドウ糖濃度依存的にインシュリンを産生することのできる膵β細胞の個体群へと分化させるための手段とを含む、キットにも関する。
【0090】
本明細書において使用する「分化させるための手段」又は「分化のための手段」は、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、及び/又は胚性幹細胞(ESC)から、胚性内胚葉(DE)、膵前駆細胞(PP)、及び/又はブドウ糖濃度依存的にインシュリンを産生することのできる膵β細胞の個体群への分化を誘導することのできる、様々な細胞培地(基礎培地又は補足培地)を含む。
【0091】
本明細書において「基礎培地」は、培養中の細胞増殖を支持するのに効果的なアミノ酸、ビタミン、塩、及び栄養分の溶液を指すが、通常はこれらの化合物は、追加の化合物が補足されなければ細胞増殖を支持しないだろう。栄養分は、炭素源、好ましくは糖、より好ましくは細胞によって代謝され得るブドウ糖、並びに、細胞が生存するのに必要とされる他の化合物を含む。これらは、細胞自身が合成することのできない化合物である。多くの様々な基礎培地が当業者には公知である。本発明によって言及される好ましい基礎培地は、MCDB131培地、IPS-Brew培地、及び/又はBLAR培地である。
【0092】
好ましい実施態様では、基礎培地に様々な増殖刺激因子及び分化刺激因子が補足されることにより「補足培地」が形成される。様々な補足物質が当業者には公知である。好ましい補足物質を以下の表1に列挙する:
【0093】
【0094】
補足培地は、基礎培地と、当業者には公知である1つ及び/又はそれ以上の補足物質、好ましくは表1の補足物質との組合せによって作製され得る。追加の実施態様では、基礎培地に追加するための予め混合された補足物質を使用してもよい。さらなる実施態様は、液体、好ましくは水の添加によって補足培地を形成することのできる、乾燥粉末形態の簡便なブレンド又は補足成分を含む。本発明によるキットは、特定の実施態様では、基礎培地、補足培地、及び/又は予め混合された補足物質を含む。
【0095】
好ましい実施態様では、キットは、上記で教義された成分、例えば、試料中の細胞標的に結合する少なくとも1つの可溶性リガンド、試料中の可溶性分析物に結合する少なくとも1つの可溶性リガンド、又は少なくとも1つの競合する可溶性分析物(好ましくは標識されている);及び可溶性分析物に直接結合するか、可溶性分析物に間接的に結合するか、又は可溶性分析物に結合した可溶性リガンドに結合する、固相捕捉用媒体を含有している。該キットはまた、特定のアッセイを実施するための説明書、様々な希釈液及び緩衝液、並びに、シグナル発生試薬、例えばフルオロフォア、酵素基質、補因子、及び発色原も含む。他の成分としては、比色定量のためのインジケーター図表、使い捨て手袋、除染説明書、スティック状アプリケーター又は容器、及び試料調製用カップを含み得る。
【0096】
別の実施態様では、多能性幹細胞(PSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、及び/又は胚性幹細胞(ESC)から、胚性内胚葉(DE)、膵前駆細胞(PP)、及び/又はブドウ糖濃度依存的にインシュリンを産生することのできる膵β細胞への分化を誘導することのできる細胞培地は、StemMACS IPS-Brew培地(ミルテニー・バイオテク社)である。膵β細胞の分化のためのサイトカインの補足された、この細胞培地を用いて、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)を、胚様体フォーマットを使用して分化させてもよい。
【0097】
1つの実施態様では、上記のイムノアッセイの実施に有用なキットは、一成分として、細胞マーカー又は細胞標的に結合しかつ第一の検出可能な標識と会合している複数の第一のリガンドに会合した、固体マトリックス又は固相捕捉用媒体を含む。該キットはさらに、第二、第三、及び/又は第四の細胞マーカー又は細胞標識及び/又は可溶性分析物に結合することのできる第二、第三、及び/又は第四のリガンドを含む。第二、第三、及び/又は第四のリガンドは、第二、第三、及び/又は第四の検出可能な標識と会合している。
【0098】
このようなキットは、特定の細胞型又は結合した成分又は可溶性抗原又はその分析物を濃縮、単離、枯渇、分離、選別、精製、及び/又はそのレベルを決定するために、多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)の個体群、及び/又は多能性幹細胞(PSC)/人工多能性幹細胞(iPSC)/胚性幹細胞(ESC)から誘導された細胞個体群試料を評価するのに有用である。このような診断用キットは、本明細書に記載の実施態様の色素、リガンド、捕捉用媒体、及び他の成分を含有している。このようなキットはまた、上記に例示されているか、実施される予定の具体的なアッセイの他の成分に予め付着されているか、又は選択された成分、例えば基質に付着させるために別々に提供された標識を含有している。あるいは、このようなキットは、このような組成物の単純な混合物、又は単純な混合物を調製するための手段を含有していてもよい。
【0099】
参考文献
本明細書に引用されている全ての文書及び特許文書の内容は、参照によりその全体が組み入れられる。
【0100】
【0101】
実施例
以下の実施例は本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと捉えられるべきではない。実施例は、説明の目的で含まれ、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0102】
材料及び方法
特記しない限り、以下の方法及び材料が使用された:
【0103】
細胞入手源
ヒト膵島は、インフォームドコンセントの下でルドベック研究所C11(ウプサラ、スウェーデン)から入手した。H9ヒト胚性幹細胞(hESC)株は、WiCell研究所(マディソン、ウィスコンシン州)から入手した。Mel1-NKX6.1-GFP及びMel1-INS-GFPは、オーストラリア幹細胞研究センター(クレイトン、ヴィクトリア州)から入手した。エピソームの初期化されたiPS細胞株は、MODY-4患者の対照群から研究室において作製された(ギブコ社のヒトエピソームiPS細胞、カタログ番号A18945、ライフテクノロジーズ社、カリフォルニア州)。両方の細胞株は、セルラインジェネティクス社(マディソン、ウィスコンシン州)によって本物であることが証明され、ロンザ社のMycoAlertマイコプラズマ検出キット(ロンザ社、カタログ番号LT07-418)を使用することによってマイコプラズマを含まないことが確認された。ヒト胚性幹(hES)細胞株を、ロベルト・コッホ研究所の許可の下で使用した。
【0104】
インビトロにおけるヒト多能性幹細胞から膵β様細胞への分化
H9細胞、Mel1-NKX6.1-GFP細胞、及びiPS細胞を、StemMACS iPS-Brew培地(ミルテニー・バイオテック社、ドイツ、カタログ番号130-104-368)中で1:30に希釈されたGeltrex(インビトロジェン社、イギリス、カタログ番号A1413302)上で培養した。約70~80%の集密度で、培養液を、Mg2+及びCa2+を含まない1×DPBS(インビトロジェン社、カタログ番号14190)で濯ぎ、その後、0.5mMのEDTA(アプリケム社、カタログ番号12604-021)と共に37℃で2~3分間インキュベートした。単一の細胞をiPS-Brewで濯ぎ、1,300rpmで3分間遠心分離にかけた。得られた細胞ペレットを、Y-27632(10μM;シグマアルドリッチ社:ミズーリ州、カタログ番号Y0503)の補足されたiPS-Brew培地中に懸濁し、単一細胞懸濁液をGeltrexでコーティングされた表面上に約1.5~2×105個の細胞/cm2で播種した。培養液にiPS-Brew培地を毎日フィードし、播種から24時間後に分化が始まり、その結果、開始時に約90%の集密度が得られた。細胞を初日に、0.5%のBSA(シグマ社、カタログ番号10775835001)、100ng/mlのアクチビンA(ペプロテック社、カタログ番号120-14-300)、及び25ng/mlのWNT3A(ペプロテック社、カタログ番号315-20)の補足されたMCDB131培地を使用して胚性内胚葉へと分化した。次の2日間かけて、細胞を、0.5%のBSA及び100ng/mlのアクチビンAの補足されたMCDB131を用いて処理した。β細胞への分化については、Rezania, et.al; 2014のβ細胞分化プロトコールを使用した14。要するに、細胞を、0.5%のBSA、50ng/mlのFGF7(ペプロテック社、カタログ番号100-19-100)、及び0.25mMのビタミン(Vit)C(シグマ社、カタログ番号120-14-300)の補足されたMCDB131を用いて2日間かけて原始腸管へと分化させた。後前腸への分化のために、細胞をさらに、1×グルタマックス(ギブコ社、カタログ番号A12860-01)、2%のBSA(カタログ番号10775835001)、0.25mMのビタミン(Vit)C(シグマ社、カタログ番号A4544-25G)、50ng/mlのFGF7、0.25μMのSANT-1(シグマ社、カタログ番号S4572-5MG)、1μMのレチノイン酸(シグマ社、カタログ番号R2625-50MG)、100nMのLDN193189(シグマ社、カタログ番号04-0074)、1:200のITS-X(ギブコ社、カタログ番号51500-056)及び200nMのTPB(メルク・ミリポア社、カタログ番号565740-1MG)の補足されたMCDB131培地に2日間曝した。WNT阻害実験だけのために、1.25μMのIWP2(トクリス社、カタログ番号3533-10)を培養液に加えた。次いで、細胞をさらに、1×グルタマックス、10mMの最終ブドウ糖濃度、2%のBSA、0.25mMのビタミン(Vit)C、2ng/mlのFGF7、0.25μMのSANT-1、0.1μMのレチノイン酸、200nMのLDN193189、1:200のITS-X、及び100nMのTPBの補足されたMCDB131を使用して3日間かけて膵内胚葉へと分化させた。膵内分泌前駆体の誘導のために、細胞を次に、1×グルタマックス、20mMの最終ブドウ糖濃度、2%のBSA、0.25μMのSANT-1、0.05μMのレチノイン酸、100nMのLDN193189、1:200のITS-X、1μMのT3(シグマ社、カタログ番号T6397-100MG)、10μMのALK5阻害剤II(エンゾライフサイエンス社、カタログ番号ALX-270-445-M005)、10μMの硫化亜鉛(シグマ社、カタログ番号SI Z0251-100G)、及び10μg/mlのヘパリン(シグマ社、カタログ番号H3149)の補足されたMCDB131培地に3日間曝した。最後の工程の内分泌前駆細胞を、1×グルタマックス、20mMの最終ブドウ糖濃度、2%のBSA、100nMのLDN193189、1:200のITS-X、1μMのT3、10mMのALK5阻害剤II、10μMの硫化亜鉛、100nMのγセクレターゼ阻害剤XX(メルク社、カタログ番号565789)の補足されたMCDB131に最初の7日間のみ曝し、7~15日目の間は10μg/mlのヘパリンに曝すことによってホルモン陽性細胞を生成した。β様細胞の成熟のために、以前の段階の細胞を、2%のBSA、1:200のITS-X、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、10μMの硫化亜鉛、1mMのN-アセチルシステイン(シグマ社、カタログ番号A9165)、10μMのトロロックス(EMD、カタログ番号648471)、2μMのR428(セレックケム社、カタログ番号S2841)、及び10mg/mlのヘパリンを用いて15日間かけて処理した。
【0105】
前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群の選別
分化4日目(胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE))に、分化した試料を収集し、表面マーカーについて染色した。表面マーカーの染色のために、100μlの容量のMCDB1+0.5%BSA中1×106個の細胞あたり10μlの抗体(Ab)(APC)にコンジュゲートしている)を加えた。細胞を、暗闇で氷上で15分間かけて染色した。抗体を磁気で標識するために、染色された細胞をPBSで3回洗浄して抗体を除去し、その後、計1000万個の細胞あたり20μLの抗APCマイクロビーズを含む80mlのMCDB131+0.5%BSA培地中に懸濁した。細胞を37℃で15分間インキュベートした。細胞を、1~2mlのPBSで洗浄し、次いで、500μLのMCDB131+0.5%BSA中、最大20×106個の細胞となるまで懸濁し、磁気選別に進めた。前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群の磁気選別のために、LSカラムを磁気選別装置に入れた。カラムをPBS 3mlで濯いだ。細胞懸濁液をカラムにアプライし、標識されていない細胞を含有している通過画分は廃棄した。次いで、カラムを3mlのPBSで3回洗浄した。カラムを分離装置から取り出し、それを5mlの培地で流すことによって、抗体陽性細胞を収集した。次いで、細胞を、10μMのY化合物の補足されたiPS-Brew培地に、2~10×103個の細胞の播種密度で、超低接着丸底96ウェルプレートの1ウェルに播種して、さらなる分化及び染色のために、IBIDチャンバーの1ウェル中に凝集物すなわち4×105個の細胞を形成した。
【0106】
定量qPCR分析及び遺伝子プロファイリング
分化した細胞における遺伝子発現を、Taqmanアレイ(アプライドバイオシステムズ社)によって評価した。データを、発現スイートソフトウェア(アプライドバイオシステムズ社)を使用して分析し、ΔΔCt法を使用して未分化ヒト胚性幹細胞(hESC)に対して正規化した。
【0107】
免疫蛍光染色及びウェスタンブロット
免疫細胞化学のために、細胞又は凝集物を4%のPFAで固定した。次いで、細胞に、遮断緩衝液中0.5%のサポニンを使用して透過性処理を行なった。ウェスタンブロットのために、細胞を、選別直後にRIPA緩衝液中で解離した。細胞溶解液をSDS-PAGEによって分割し、PVDF膜(バイオラッド社)に転写し、抗体と共にインキュベートした。タンパク質のバンドを、HRPにコンジュゲートさせた抗体及び化学発光試薬(ミリポア社)を使用して可視化した。該バンドを、ImageJを用いて定量した。
【0108】
フローサイトメトリー分析
ヒト胚性幹細胞(hESC)及び分化した細胞を解離し、単一細胞懸濁液を調製した。細胞を固定し、透過性処理を行ない、胚性内胚葉(DE)、膵内胚葉、膵前駆細胞、及びホルモン陽性マーカーについて染色した。FACSゲーティングを、アイソタイプ抗体を使用して決定した。
【0109】
静的なグルコース刺激性インシュリン分泌
生成されたβ様細胞の静的なグルコース刺激性インシュリン分泌(GSIS)が、以前に記載されたプロトコールに基づいて実施された14、56。簡潔に言えば、5つの凝集物(合計で1,00,000個の細胞)を拾い上げ、KRBH緩衝液(脱イオン水中でありかつ滅菌ろ過された、129mM NaCl、4.8mM KCl、2.5mM CaCl2、1.2mM MgSO2、1mM Na2HPO4、1.2mM KH2PO4、5mM NaHCO3、10mM HEPES、及び0.1%BSA)で3回濯ぎ、次いで、KRBH緩衝液中で37℃で1時間かけて平衡化した。次いで、凝集物を、2.8mMのグルコースの添加されたKRBH緩衝液中で室温で60分間インキュベートした。上清を収集し、凝集物を、16.7mMのグルコースの添加されたKRBH緩衝液中に60分間かけて移した。上清を再度収集した。実験終了時に、細胞凝集物を解離して単一細胞とし、細胞数を計数して、GSISを正規化した。メルコディア社のヒトインシュリンELISAキット(メルコディア社、カタログ番号10-1113-01)を使用して、製造業者のプロトコールに従って上清試料中のインシュリン含量を測定した。
【0110】
アフィメトリックスマイクロアレイ分析
遺伝子プロファイリングのために、全RNAを、miRNeasyミニキット(キアゲン社、カタログ番号217004)を使用して抽出し、RNAの完全性を、アジレント社の2100バイオアナライザー(アジレント社のRNA6000ピコキット)を使用して確認し、高い品質のRNAのみ(RIN>7)をマイクロアレイ分析のために使用した。全RNA(5ng)を、Encoreビオチンモジュール(ニュージェネレーション社)と組み合わせたOvation Pico WTAシステムV2を使用して増幅した。増幅されたcDNAを、アフィメトリックス社のヒト遺伝子ST2.0アレイ(アフィメトリックス社、902113)にハイブリダイズさせた。染色及び走査(GeneChipスキャナー3000 7G)を、Encoreビオチンプロトコールにおいて示唆されているような小さな改変を含むアフィメトリックス社の発現プロトコールに従って実施した。発現コンソール(v.1.4.1.46、アフィメトリックス社)を品質制御のために使用した。全てのその後のコンピューター分析は、バイオコンダクタパッケージを使用してRで実施された。発現データは、オリゴパッケージ(バージョン1.42.0)を使用してRMAで正規化し、プローブセットを、パッケージhugene20sttranscriptcluster.db(バージョン8.7.0)を使用してアノテーション付けした。発現変動分析は、リマパッケージ(バージョン3.34.9)を使用して実施し、多重検定のためにP値をベンジャミン・ホックベルグ補正によって調整した。未調整p値が、0.01の閾値より低く、変化倍率が1.5以上であった場合に、遺伝子は発現変動したと判断された。機能的エンリッチメントは、HOMERを使用して実施された57。全てのマイクロアレイデータは、アクセッション番号GSE113791(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE113791)下でGEOから入手可能である。
【0111】
画像分析
画像は、ライカ社のSP5共焦点顕微鏡及びツァイス社のLSM880エアリースキャン共焦点顕微鏡を用いて取得した。ライカ社の共焦点顕微鏡によって撮影された画像を、ライカ社のLAS AF Liteを使用して分析した。ツァイス社の共焦点顕微鏡によって撮影された画像を、ツァイス社のZenブルーソフトウェアを使用して分析した。
【0112】
統計分析
全ての数値は、少なくとも3回の独立した実験から特別に指定されない限り、平均値±標準偏差として示される。統計学的有意性は、P<0.05として定義される。試料サイズは、図の説明文に提供されている。全ての統計は、グラフパッドプリズムソフトウェア7(グラフパッドソフトウェア社、ラホヤ、カリフォルニア州)を使用して実施された。数値は、各実験について指示されているように対応のない又は対応のあるt検定を使用して比較された。簡潔に言えば、分化の全期間におよぶ(S1~S7)遺伝子発現の分析は、対応のないt検定を使用して実施された。対応のない両側t検定を使用して、CD177から誘導されたβ様細胞と、CXCR4から誘導されたβ様細胞との間でホルモン含量を比較した。全てのqPCRデータは、対応のない両側t検定によって比較された。CXCR4の前方胚性内胚葉(ADE)細胞、CD177の前方胚性内胚葉(ADE)細胞、及びCD275の前方胚性内胚葉(ADE)細胞から誘導されたPDX1+細胞の発現レベル間の比較を、一元分散分析を使用して実施した。治験者は、本発明者らの治験において処置群に対して盲検的ではなく、試料サイズを決定するために統計学的検定は全く使用されなかった。
【0113】
実施例1:異なる胚性内胚葉を濃縮する新規な表面マーカー抗体の同定
計画の主な仮説は、胚性内胚葉(DE)において異なる亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーを発見することであった。インビボにおいて、胚性内胚葉は、TGFβ及びWnt3Aの勾配シグナルを用いてパターン形成され、その後、このパターン形成は次に、様々な器官を発生することが知られている。最初の目的は、このパターン形成効果が、インビトロにおいても存在しているかどうかを解明することであった。最初の実験のために、2つの既知の胚性内胚葉(DE)マーカーであるFOXA2及びCXCR4を使用して、分化プロセスを評価した。
【0114】
インビトロにおける胚性内胚葉(DE)の生成のために、ヒト胚性幹細胞(hESC)を、集密となるまでIPS-Brew培地(多能性培地)中でフィーダーフリー条件でgeltrex上で培養した。次に、培地を、20ng/mlのWnt3a及び100ng/mlのアクチビンA(AA)の補足された分化用培地(MCDB1+1×グルタマックス+0.5%BSA)へと1日目に交換した。2日目から4日目に、細胞を、100ng/mlのアクチビンA(AA)の補足された分化用培地で処理した。分化スキームを
図1Aに示す。
【0115】
翌日、細胞をEDTAを用いてトリプシン処理し、ミルテニー社のプレート上に200,000個の細胞/ウェルの播種密度で置き、表面抗体及びCXCR4を用いて暗闇で室温で15分間かけてまず染色した。15分後、細胞をPBSで洗浄し、次いで細胞内FOXA2の染色のために4%PFAで固定した。次いで、細胞を、遮断溶液と共に0.5%トリトンXを用いて透過性処理を30分間以内で行ない、次いで、一次FOXA2抗体を細胞に1時間かけて加えた。二次抗体の染色を次に30分間かけて行ない、その後、細胞を洗浄し、FACS分析をミルテニー・バイオテク社のMACS Quantを使用して実施した。
図1Bは、既知の胚性内胚葉(DE)のマーカーであるFOXA2及びCXCR4に対して異なる胚性内胚葉(DE)亜個体群を濃縮することのできる、新規な表面マーカーの同定についてのスクリーニング設定を示す。CD177及びCD275という2つのマーカーが、明確に異なる胚性内胚葉(DE)の亜個体群のマーカーとして同定された(
図1C)。
【0116】
胚性内胚葉(DE)における新規抗体の分布を確認するために、ヒト胚性幹細胞(hESC)をまず、上記のプロトコールを使用して胚性内胚葉(DE)へと分化させ、その後、細胞を、FOXA2及びSOX17又はCXCR4(FOXA2、SOX17、及びCXCR4は全て胚性内胚葉(DE)をマークする)と共にCD177又はCD275について染色した。胚性内胚葉(DE)においてCD177又はCD275によってマークされた細胞の定量は、FACSを使用して実施された。結果は、CD177及びCD275が、CXCR4+胚性内胚葉(DE)の個体群及びFOXA2+/SOX17+胚性内胚葉(DE)の個体群のどちらにおいても、異なる前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群であることを示す(
図1D)。
【0117】
PCA(主成分分析)のために、ヒト胚性幹細胞(hESC)をまず4日間かけて、上記の分化プロトコールを使用して胚性内胚葉(DE)へと分化させ、その後、細胞を、CD177、CD275、及びCXCR4(対照)を用いて染色し、磁気標識(ミルテニー・バイオテク社)を使用して選別した。RNAを、製造業者のプロトコールを使用して細胞から単離した。マイクロアレイ分析は、アフィメトリックスアレイを使用してドイツ研究センターヘルムホルツ協会(Helmholtz Zentrum)で実施された。PCA分析は、CD177の亜個体群とCXCR4の亜個体群とCD275の亜個体群の間の有意な分子的差異を明らかとする(
図1E)。これはさらにGO分析においても明白であり、この分析でもそれらはシグナル伝達経路の発現変動を示す(
図1F)。
【0118】
実施例2:CD177
+亜個体群における、非古典的WNT/PCP経路は、変動的に調節されている
胚性内胚葉(DE)の亜個体群のさらなる特徴付けのために、ヒト胚性幹細胞(hESC)を胚性内胚葉(DE)へと分化させ、次いで、それらをCD177、CD275、及びCXCR4で染色した後にMACSで細胞を選別した。次いで、これらの細胞を、マイクロアレイ、qPCRによる定量、及びウェスタンブロットにかけて、亜個体群における特異的な差異を見つけ出した。分化及び選別を示すスキームを
図2Aに示す。
【0119】
胚性内胚葉マーカーであるFOXA2及びSOX17をまず、全RNAレベルについて確認した。亜個体群間のFOXA2のレベルとSOX17のレベルとの差異は全く観察されなかった。次に、前方胚性内胚葉マーカー(ADE)、例えばケルベロス(Cerberus)1(CER1)及びHHEX(造血で発現するホメオボックスタンパク質)を分析した。インビボにおいて、その後、形成された胚性内胚葉(DE)の内胚葉は前側及び後側へとパターン形成される。前側は肺、肝、及び膵などの器官を発生し、一方、後側は腸を発生する。膵臓は本発明の脈絡においてより関心が高いので、前方胚性内胚葉(ADE)マーカーのCER1及びHHEXについてのみ確認した。CD177+胚性内胚葉(DE)はCER1亜個体群において濃縮され、一方、CD275+胚性内胚葉(DE)はHHEX亜個体群において濃縮され、一方、CXCR4+胚性内胚葉(DE)は全胚性内胚葉(DE)をマークすることが観察された(
図2B)。
【0120】
次に、これらの亜個体群において変動的に調節されている様々なシグナル伝達経路をマイクロアレイに基づいて分析した。WNT/PCP経路の標的遺伝子、例えばDVL2、ROR2、及びJNKは全て、マイクロアレイにおいて、CD275+胚性内胚葉(DE)及びCXCR4+胚性内胚葉(DE)の亜個体群と比較して、CD177+胚性内胚葉(DE)の亜個体群において高度に発現されていたことが分かった(
図2C)。MACSにより濃縮されたCD177+個体群、CD275+個体群、及びCXCR4+個体群の三方比較における、遺伝子オントロジー(GO)及び遺伝子発現変動分析は、内胚葉パターン形成及び増殖の調節、並びに膵細胞となる運命への特殊化に関与する、経路に関連した遺伝子の濃縮を示した(
図7A~D)。これらは、活性化FGFR1経路のTGF-β下流シグナル伝達の正の調節、MAPKカスケードの正の調節、レチノイン酸(RA)により媒介されるシグナル伝達、並びに、古典的及び非古典的WNT/平面細胞極性(PCP)シグナル伝達の調節を含んでいた。qPCRによるこれらの遺伝子の定量は、CXCR4+胚性内胚葉(DE)及びCD275+胚性内胚葉(DE)と比較して、CD177+胚性内胚葉(DE)における、全てのWNT/PCPシグナル伝達成分、例えばDVL2、ROR2、WNT5a、及びWNT4の有意な発現を示し、このことは、CD177+胚性内胚葉(DE)における活性なWNT/PCPシグナル伝達を示す(
図2D、2E)。CD177+胚性内胚葉(DE)におけるWNT/PCPシグナル伝達の標的であるJNKのリン酸化は、これらの細胞におけるWNT/PCP経路の活性化を確認する(
図2F及び
図2G)。対照的に、古典的リガンドであるWNT3A及びその標的遺伝子であるAXIN2の発現は、CD275+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群においてアップレギュレートされていた(
図7E)。β-カテニンの核への移行は、古典的WNT活性化の特徴であり、したがって、本発明者らは、単離された亜個体群における免疫蛍光及び核分画によって、核内及び細胞質内のβ-カテニンの分布について試験した。β-カテニンの蓄積は、CD275+個体群及びCXCR4+個体群の核画分において観察され(
図7F)、CD275+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群の免疫蛍光染色において核に蓄積している明瞭な兆候が観察された(
図4D)。これらの結果は、CD275+前方胚性内胚葉(ADE)の前駆細胞が、古典的なWNT-β-カテニンシグナル伝達を受け、肝臓となる運命へと特殊化され得、一方、CD177+前方胚性内胚葉(ADE)の前駆細胞は、非古典的なWNT/PCPシグナル伝達を受け、膵臓となる運命へと特殊化され得ることを示唆する。
【0121】
実施例3:亜個体群の濃縮は、腹側の膵前駆細胞と背側の膵前駆細胞を識別することができる
WNT/PCP経路は、膵臓の発生中に主要な役割を果たすことが知られているので、インビトロにおいて様々な膵臓発生段階においてこれらの異なる胚性内胚葉(DE)の亜個体群の分化能を探索することを決断した。このために、ヒト胚性幹細胞(hESC)を胚性内胚葉(DE)へと分化させ、次いで、新規抗体を使用してCD177
+の胚性内胚葉(DE)の亜個体群、CD275
+の胚性内胚葉(DE)の亜個体群、及びCXCR4
+の胚性内胚葉(DE)の亜個体群について選別した。次いで、これらの亜個体群をさらに、Rezania et.al, 2014のプロトコールを使用して、まず原始腸管へと分化させ、その後、膵前駆細胞(PP)へと分化させた。実験スキームを
図3Aに示す。
【0122】
インビボにおける膵臓の発生プロセス中に、原始腸管は腹側前腸内胚葉及び背側前腸内胚葉を発生する。腹側前腸内胚葉は、肝臓及び膵臓の両方の前駆細胞を発生し、一方、背側前腸内胚葉は、膵前駆細胞のみを発生する。SOX17は、腹側前腸内胚葉のマーカーである。CD177
+細胞では、SOX17の発現は、胚性内胚葉(DE)段階の間にピークに達し、細胞が原始腸管へと入るにつれて低下することが観察された。興味深いことに、CD177
+細胞では、SOX17の発現は、分化が膵前駆細胞の段階へと進むにつれて次第に低下する。しかしながら、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞では、胚性内胚葉(DE)段階における初回ピーク後に、SOX17の発現は、原始腸管において低下し、その後、膵前駆細胞の形成中に維持され、このことは、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞は、CD177
+細胞と比較して、より多くの腹側前腸内胚葉細胞を生成することを示唆する(
図3B)。PDX1の発現は、膵前駆細胞の分化を評価するための対照として使用される。
図3EのFACSデータは、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞と比較して、CD177
+細胞においてよりSOX17の発現が低いことを明らかとする。
【0123】
CD177
+細胞がより多くの背側膵前駆細胞を生成するかどうかを識別するために、腹側(
図3C)及び背側の膵遺伝子(
図3D)を、qPCRを使用して評価した。運動ニューロン及び膵ホメオボックス1(MNX1)、Patched1(PTCH1)、及びノギン(NOG)などの有意により高いレベルの背側膵マーカーが、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞と比較して、CD177
+細胞において観察され、このことは、CD177
+細胞が、背側膵前駆細胞を発生するが、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞は腹側膵前駆細胞を発生することを示す。
【0124】
実施例4
CD177
+亜個体群は、特殊化された膵前駆細胞であり、一方、CD275
+亜個体群は肝臓でプライミングされる前駆細胞である
最後の図において、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞は腹側膵前駆細胞を発生するが、CD177
+細胞は背側膵前駆細胞を発生することが確認されているので、これらの亜個体群における肝臓のサインを調べることを決断した。このために、細胞をまず、胚性内胚葉(DE)へと分化させ、その後、抗体に基づいて選別し、その後、これらの細胞をさらに、Rezania et.al, 2014のプロトコールを使用して、膵前駆細胞の段階へと分化させた。実験設定の概観を
図4Aに示す。
【0125】
膵前駆細胞の段階へと分化させた後、qPCR分析のために、全RNAを単離し、cDNAへと転写した。mRNAの定量は、HHEX、TTR、及びAFPなどの肝前駆細胞マーカー遺伝子が、CD177
+細胞と比較して、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞において有意にアップレギュレートされ(
図4B)、一方、膵前駆細胞マーカーのPDX1は、CD177
+細胞においてより多く発現されたことを示し(
図4B、C)、このことから、本発明者らは、CD275
+細胞及びCXCR4
+細胞は、腹側前腸内胚葉を発生し、その後、腹側の膵臓及び肝臓を発生し、一方、CD177
+細胞は、背側前腸内胚葉及び背側膵前駆細胞を発生すると考えた。
【0126】
肝細胞は、細胞周期から逸脱する膵前駆細胞と比較して高度に増殖性であるので、本発明者らは、β-カテニンの発現又はWNT3Aのサイン、並びにこれらの特定の亜個体群の細胞周期プロファイルを分析した。WNT3Aシグナル伝達経路は、細胞の増殖を増強する。これは、肝前駆細胞において特に当てはまる。β-カテニンの代表的な免疫蛍光染色は、CD177
+細胞におけるβ-カテニンの膜への移行を示すが、一方、CD275
+細胞においては核内及び細胞質内により多く局在する(
図4D)。細胞周期状態を示すためにPIについて染色されたCD275
+細胞及びCD177
+細胞の代表的なFACSプロット及びグラフ分析を
図4Eに示す。一般的に、肝前駆細胞を発生するCD275+細胞は、細胞の大半がS期を循環し、高度に増殖性の亜個体群であり、一方、膵前駆細胞を発生するCD177+細胞は、細胞周期から逸脱し、大半の細胞はG1期にあり(
図4F)、このことは本発明者らの仮説を支持する。
【0127】
実施例5:CD177
+胚性内胚葉(DE)は、コンパクトで成熟した単一ホルモン性β細胞をインビトロにおいて生成する
WNT/PCP経路は、胚性内胚葉(DE)のCD177
+亜個体群において活性化されていることが知られているので、これらの細胞から膵β細胞への分化能をさらに調べた。活性化WNT/PCP経路は、インビボにおいて膵β細胞の形成及び成熟を助けることがすでに証明されている。したがって、ヒト胚性幹細胞(hESC)を胚性内胚葉(DE)へと分化させ、CD177及びCXCR4(CD184)を使用して選別し、その後、Rezania et.al, 2014のプロトコールを使用して、膵β細胞へとさらに分化させた。実験設定の概観を
図5Aに示す。
【0128】
段階6において、細胞を、mRNAの定量及びFACSのために収集した。FACSのために、細胞を、膵転写因子のPDX1及びNKX6.1を用いて染色した。CD177
+細胞が、CXCR4+細胞と比較して、より多くのPDX1
+/NKX6.1
+細胞を生成したことが観察された(
図5C)。より興味深いことには、インシュリン(INS)及びグルカゴン(GLU又はGCG)のホルモンについて染色した場合には、CD177
+細胞の大半がインシュリン陽性(INS+)であり、一方、CXCR4
+細胞の大半がインシュリン陽性(INS+)/グルカゴン(GLU+)陽性を示し、このことは、CXCR4
+細胞が多ホルモン性細胞の大半を発生し、一方、CD177
+細胞は単一ホルモン性β細胞を発生することを示す(
図5B)。
【0129】
mRNAによる膵転写遺伝子(例えばPDX1、NKX6.1、NKX2.2)の定量は、CXCR4
+細胞と比較して、CD177
+細胞において、これらの遺伝子のより高度な発現を示した。CD177
+細胞はまた、CXCR4
+細胞と比較して、より高い発現レベルのインシュリン(INS)遺伝子と、より低い発現レベルのグルカゴン(GCG)遺伝子も示した。全ての中で最も興味深い事実は、CXCR4
+β細胞と比較して、CD177
+β細胞における、成熟マーカーであるMAFA(MAF BZIP転写因子A)のより高度な発現である。このようなMAFAの発現は、ヒト膵島におけるその発現レベルと同等であり、このことは、CD177
+細胞において活性化されたWNT/PCPのシグナル伝達は成熟したβ細胞を生成することができることを示す(
図5D)。
【0130】
CD177
+亜個体群を選別する際の別の顕著な特色は、それが、CXCR4
+細胞と比較して、小さくコンパクトな構造を生成したことである。このコンパクトさは、CD177
+細胞における活性化された非古典的WNTシグナル伝達に起因し得、これは細胞内に頂端側・基底膜の極性を確立することができ、これにより、CD177+β細胞の成熟及び自己組織化が補助される(
図5E)。
【0131】
実施例6:新規なCD177+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群及びCD275+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群のさらなる分析
自己組織化及び空間パターン形成が近年、ヒト胚性幹細胞(hESC)を使用して研究されている。現在のヒト胚性幹細胞(hESC)分化プロトコールは、分化4日目(D4)に、1つ又は2つのマーカー遺伝子、すなわちCXCR4又はFOXA2/SOX17によって測定したところ、均質であると思われる胚性内胚葉(DE)個体群を誘発する(
図6a~c)。内胚葉の分化が均質であるかどうかを調べるために、本発明者らはCXCR4(CD184)及びc-KIT(CD117)マーカーの発現に基づいた蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用し、定量PCR(qPCR)によって、誘発された内胚葉を分析した(
図6b及び6d~g)。驚くべきことには、本発明者らは、CD117が、CXCR4+内胚葉のサブセット(63.3%)のみをマークし、CXCR4+/CD117+二重陽性個体群は、CXCR4+/CD117high(21.3%)、CXCR4+/CD117mid(15.4%)、CXCR4+/CD117low(26.6%)、及びCXCR4+/CD177-(15.3%)の亜個体群に分類され得ることを発見した(
図6b)。興味深いことには、本発明者らは、CXCR4+/CD117low亜個体群に対して、選別されたCXCR4+/CD117high亜個体群では、FOXA2及びSOX17の発現レベルは逆であること(
図6d、e)、並びに特定の亜個体群における前方胚性内胚葉(ADE)マーカーであるケルベロス1(CER1)及びHHEXの発現は増加したことを発見した(
図6f、g)。FoxA2及びSox17は、マウス原腸胚形成中の内胚葉において逆の前方/後方の勾配に沿って発現されている。これらの結果は、内胚葉が分子的に不均質であり、インビボにおける内胚葉と同じように、隣接する細胞型相互作用を通して培養中に何らかの種類のパターン情報を受け取ることを示唆する。
【0132】
XM001ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)、H1ヒト胚性幹細胞(hESC)、及びMel1-NKX6.1-eGFP細胞株では、CXCR4+内胚葉誘導効率は90%に達し、それから最大1/3のCD275+の前方胚性内胚葉(ADE)細胞又は2/3のCD177+の前方胚性内胚葉(ADE)細胞が誘導され得る(
図14A、B)。さらなる分析のために、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株を、その優れた膵への分化能のために使用した。本発明者らが3つの以前に確立された内胚葉誘導スキームを比較したところ、本発明者らは、ほぼ同一レベルのCXCR4+胚性内胚葉(DE)の誘導で、2つの前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群の誘導効率において顕著な差異を観察した(
図14C~G)。要するに、これらの結果は、本発明者らが、CXCR4+混合内胚葉個体群中の明確に異なる前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群を識別する、2つの新規表面マーカーを発見したことを示唆した。特に、前方胚性内胚葉(ADE)の分化効率は、化学的誘導スキーム及び細胞株の遺伝子的バックグラウンドに依存し、このことは、分化の初期段階における品質制御が保証されることにより、分化効率は改善されることを意味しており、これは本発明の使用によって実施され得る。
【0133】
前方胚性内胚葉(ADE)の分化効率がインビトロにおいてモルフォゲンによって調節され得るかどうかをさらに試験するために、本発明者らは、阻害剤の実験を実施し、ここでは本発明者らはWNT3A及びアクチビンA(AA)によって内胚葉を初日に誘導し、その後、4日目まで低分子阻害剤のDMH1及びSB431542をそれぞれ使用して、内胚葉分化中にBMP及び/又はTGF-βのシグナル伝達強度を調整した(
図14H)。標準的な分化中では、20ng/mlのWNT3A及び100ng/mlのアクチビンA(AA)は、混合CXCR4+胚性内胚葉(DE)個体群において、35.5%のCD177+前方胚性内胚葉(ADE)及び21%のCD275+前方胚性内胚葉(ADE)を誘導する(
図14I)。高いレベルのTGF-βシグナル伝達(100ng/mlのアクチビンA(AA))及びBMPの阻害(4μMのDMH1)により、CD177+前方胚性内胚葉(ADE)は35%から80.5%まで有意に増加し、一方、CD275+前方胚性内胚葉(ADE)の誘導は僅かに減少した(14%)(
図14J)。一方で、低いレベルのBMP阻害剤(2.5μMのDMH1)及びTGF-βの阻害(1μMのSB431542)は、CD275+胚性内胚葉(DE)の分化を支持し(54.0%)(
図14K)、このことは、異なる量及び品質の前方胚性内胚葉(ADE)がインビトロで誘発され得ることを示唆する。
【0134】
実施例7:CD177+亜個体群は膵前駆細胞へと分化し、CD275+亜個体群は肝前駆細胞へと分化することができる
本発明者らはさらに、インビトロにおいて、人工多能性幹細胞(iPSC)により誘導される膵及び内分泌の分化の最中における、CXCR4、CD177、及びCD275の表面マーカーの発現を詳細に研究した。CD177及びCD275の発現は、前方胚性内胚葉(ADE)の開始及びパターン形成の最中にピークに達し、腸管及び膵前駆細胞の形成中に次第に減少し、ここでのCD177及びCD275の発現はほぼ無視できた(
図8E)。しかしながら、本発明者らは、人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導されるβ様細胞が形成されるまで、膵及び内分泌の分化中にCXCR4の高い発現を観察した。CD177+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群及びCD275+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群における細胞運命特殊化経路の異なる活性化により、優先的な系統の割り当てがなされるかどうかを試験するために、本発明者らは、肝臓及び膵臓となる運命へのインビトロにおける分化能を探索した。肝の分化能を試験するために、本発明者らは、選別された細胞を肝細胞へと分化させ
33、初期肝前駆細胞遺伝子のAFP、TTR、及びHHEXの発現を試験した(
図8G)。顕著には、HHEX、AFP、及びTTRのmRNA転写物の発現は、CD177+から誘導された前駆細胞と比較したところ、CXCR4+から誘導された初期肝前駆細胞及びCD275+から誘導された初期肝前駆細胞において有意にアップレギュレートされていた(
図8G)。他方で、本発明者らが膵への分化能について試験したところ(
図8A)、約68.8%のCD177+前方胚性内胚葉(ADE)がPP1の段階のPDX1+膵前駆細胞へと効率的に分化し、一方、僅か50%のCXCR4+から誘導された内胚葉細胞及び42.3%のCD275+から誘導された内胚葉細胞がPP1段階へと分化したことを発見した(
図8A)。さらに、CD177+から誘導されたPP1細胞は、PP1段階で非常に高いレベルのPDX1を発現した(
図8B、C)。免疫蛍光分析は、これらの所見を実証し、このことは、特殊化された前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群の選別が、膵臓となる運命への分化能を増強することができることを示唆する(
図8C、D)。本発明者らはまた、濃縮された細胞における膵発生に重要な調節因子であるGATA6の発現を分析した。CD177+から誘導されたPPは、CXCR4+から誘導されたPP及びCD275+から誘導されたPPと比較したところ、GATA6及びPDX1の両方のより均一な発現を示した(
図9A)。10個の他の内胚葉から誘導された器官前駆細胞の方向付けされていない生成を除外するために、本発明者らは、PP2の段階で選別されたどの亜個体群にも発現されていなかった、肺(SOX2+)及び腸(CDX2+)マーカーを試験した(
図10A)。さらに、本発明者らは、マーカーとしてPTF1Aを使用して、膵外分泌分化を除外した(
図10B)。要するに、これらの結果は、CD177+前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群が、膵系統へとより均一かつ効率的に分化することを示唆する。
【0135】
実施例8:腸管パターン形成中のWNT3Aの分泌阻害は、膵臓となる運命を促進する
WNT分泌阻害が、膵臓となる運命の誘導を促進するかどうかを試験するために、本発明者らは、胚性内胚葉(DE)の段階においてCD275+亜個体群、CD177+亜個体群、及びCXCR4+亜個体群を濃縮し、それらを2次元でゲルトレックスでコーティングされた皿に播種した(
図11A)。本発明者らは、Wntリガンドのパルミトイル化及び分泌を選択的に阻害する、ポーキュパイン化学物質阻害剤であるIWP2を使用した。IWP2の添加が、前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群から膵臓となる運命への全体的な分化に影響を及ぼすかどうかを確認するために、本発明者らは、選別された前方胚性内胚葉(ADE)亜個体群に、S2の原始腸管形成及びパターン形成の最中にIWP2を添加し、その後、S4のPP2へとさらに分化させた(
図11A)。IWP2を含まない標準的な分化条件下において、PDX1
+/NKX6.1
+についてのFACS分析は、CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)から誘導された約75%の二重陽性PP2細胞を示し、一方、CD275+から誘導された前方胚性内胚葉(ADE)からは僅か約30%、CXCR4+から誘導された胚性内胚葉(DE)からは約45%が生成された(
図11B、C)。IWP2の添加後、CXCR4+(75%)及びCD275+(50%)から誘導されたPDX1
+/NKX6.1
+PP2細胞の比率は劇的に増加し、このことは、WNT分泌阻害が、膵分化を促進することを示唆する(
図11B、D)。CD177+から誘導されたPP2におけるPDX1+/NKX6.1+二重陽性PP2細胞の比率に差は全く観察されず、このことは、CD177+/CER1+前方胚性内胚葉(ADE)前駆細胞は、古典的なWNTシグナル伝達活性化から遮蔽され、これは本発明者らの以前の結果と一致する。古典的なWnt/β-カテニン経路の別の特徴は、細胞増殖をトリガーする細胞周期調節因子の活性化である。EdUパルス標識によるCD177+から誘導されたPP、CD275+から誘導されたPP、及びCXCR4+から誘導されたPPにおける細胞増殖の評価は、CD177+から誘導されたPPの約15%が、EdU陽性であり、比較してCD275+から誘導されたPPでは50%、CXCR4+から誘導されたPPでは60%であったことが明らかとなった(
図11E、F)。膵分化の初期段階の間のNGN3の抑制は、インシュリンとグルカゴンとを発現している多ホルモン性細胞の生成を低減させるのに必須である
39。したがって、本発明者らは、S4のCD177+から誘導されたPP、CD275+から誘導されたPP、及びCXCR4+から誘導されたPP、並びにS5の内分泌前駆細胞(EP)における、NGN3 mRNAの誘導について確認した。NGN3 mRNAは、二次元培養液中のCXCR4+から誘導されたPP2及びEP、並びにCD275+から誘導されたPP2及びEPと比較したところ、CD177+から誘導されたPP2において緊密に調節され、CD177+から誘導されたS5のEPにおいて非常に効率的に誘導されていた(
図11G)。
【0136】
実施例9:CD177+前方胚性内胚葉(ADE)は、幹細胞(SC)から誘導されたβ様細胞を効率的に生成する
CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)が、幹細胞(SC)から誘導されたβ様細胞をより効率的に生成するかどうかを決定するために、本発明者らは、MACSにより濃縮された胚性内胚葉(DE)及び前方胚性内胚葉(ADE)をS6のINS+/NKX6.1+細胞へと分化させた(
図5A)。CXCR4+の濃縮された胚性内胚葉(DE)及びD275+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、S6において、膵及び内分泌マーカー遺伝子のPDX1、NKX6.1、及びNEUROD1の同じように低いmRNAレベルを発現したので(
図12A)、本発明者らは、CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)を、CXCR4+の濃縮された混合胚性内胚葉(DE)と比較することを決めた。重要なβ細胞マーカー遺伝子、例えばPDX1、NKX6.1、NKX2.2のmRNA転写物は、CD177+から誘導されたβ様細胞において比較的高かった(
図12A、G)。約65%のCD177+から誘導されたβ様細胞及びCXCR4+から誘導されたβ様細胞は、PDX1及びNKX6.1タンパク質の両方を合成した(
図12B、D)。PDX1及びNKX6.1のタンパク質レベルは異なっていなかったが、本発明者らは、INS及びGCGのホルモンのmRNA転写物の顕著な差に気付いた(
図12H)。PDX1及びNKX6.1の同等な効力が、CXCR4+から誘導されたβ様細胞と、CD177+から誘導されたβ様細胞との間に観察されたが、Cペプチド+/PDX1+細胞及びINS+/NKX6.1+細胞の発現は、CXCR4+から誘導されたβ様細胞において減少していた(
図12C~F)。S6において、約13.2%のCD177+から誘導されたβ様細胞、及び10.1%のCXCR4+から誘導されたβ様細胞は多ホルモン性細胞であった(
図12D、I)。
【0137】
実施例10:CD177+の濃縮された前方胚性内胚葉(ADE)は、インビトロにおいてより多くのβ様細胞を生成する
続いて、本発明者らは、分化の初期段階の最中に前方胚性内胚葉(ADE)前駆細胞の濃縮が、分化、成熟、及び機能を改善したかどうかを決定した。極性及びコンパクトさの確立は、β様細胞の成熟に重要な役割を果たしているので、本発明者らは、選別された細胞の2次元培養対3次元培養が、膵分化中の重要な転写因子であるPDX1及びNKX6.1の誘導及び発現に影響を及ぼすかどうかを試験することを決定した。それ故、本発明者らは、CD177+胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)細胞及びCXCR4+胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)細胞を選別し、これらを、2次元接着培養液中で又は再凝集後に3次元クラスター中でのいずれかで、膵前駆細胞へとさらに分化させた(
図13A)。選別された及び分化した胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群から誘導されたPDX1+/NKX6.1+PP2の量の間に明白な差は認められなかったが、本発明者らは、3次元培養液中のPDX1+/NKX6.1+二重陽性PP2の量の僅かな増加を観察した(
図13B)。したがって、本発明者らは、3次元において濃縮された胚性内胚葉(DE)/前方胚性内胚葉(ADE)の亜個体群から、S7の幹細胞(SC)から誘導されたβ様細胞へと分化させることを決断した。このために、本発明者らは、CD177+内胚葉個体群及びCXCR4+内胚葉個体群を濃縮し、低接着皿上に該細胞を蒔いて再凝集させ3次元クラスターを形成した。S7への分化は、本発明者らの改変されたプロトコールに基づいて、凝集させた3次元クラスター上で実施された(
図13C)。興味深いことには、CD177+前方胚性内胚葉(ADE)の前駆細胞におけるβ-カテニンの濃縮に沿った(
図4D)、CD177+から誘導されたβ様3次元クラスターにおける、所定のE-カドヘリン陽性(CAD+)接着接合部を有する濃密でコンパクトな凝集物の形成が観察された(
図13D)。まず、CD177+から誘導されたβ様細胞は、成熟したβ細胞転写因子のMAFAを発現していることが確認された。ほぼ60%のCD177+から誘導されたβ様細胞が、INS及びMAFAを発現していた(
図13F、H、J)。CD177+から誘導されたβ様細胞では、本発明者らはまた、上昇したレベルのMAFA、GLUT1、及びUCN3 mRNA転写物を発見した(
図13E)。特に、グルコース輸送体のGLUT1及びUCN3のmRNA発現は、CXCR4+から誘導されたβ様細胞と比較してCD177+から誘導されたβ様細胞において有意により高く、このことは、膵に特殊化された前方胚性内胚葉(ADE)の単離が、異質なCXCR4+混合胚性内胚葉(DE)と比較したところ、より同質なβ様細胞への分化を促進することを意味する(
図13Ee)。FACSによるタンパク質の定量は、約70%のCD177+から誘導されたβ様細胞がGLUT1及びINSを発現したことを確認した(
図13F、K)。免疫細胞化学データは、CD177から誘導されたβ様細胞の膜におけるGLUT1の存在を明らかとし、一方、非常に低いGLUT1の発現が、CXCR4+から誘導されたβ様細胞において認められ、このことは、CD177から誘導されたβ様細胞の改善された成熟状態及び機能状態を示す(
図13F、J)。最後に、本発明者らは、静的なグルコース刺激性インシュリン分泌(GSIS)によって、CD177+から誘導されたβ様細胞及びCXCR4+から誘導されたβ様細胞の機能性を試験した。CD177+から誘導されたβ様細胞は、16.7mMのグルコースを用いての1時間の静的グルコース刺激時に、明らかに改善された応答を示した(
図13G)。