(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素の分離のためのポリアミン付加金属-有機骨格
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20220922BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220922BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220922BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20220922BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20220922BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220922BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20220922BHJP
C07C 65/105 20060101ALI20220922BHJP
C07C 211/14 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B01J20/22 A ZAB
B01J20/30
B01J20/34 E
B01J20/34 F
B01D53/62
B01D53/81
B01D53/04 220
B01D53/04 230
B01D53/047
C07C65/105
C07C211/14
(21)【出願番号】P 2020523309
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 US2018058287
(87)【国際公開番号】W WO2019089649
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-01
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・シー・ウエストン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エム・ファルコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・アール・ロング
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン・ジェイ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ディ・マーテル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジェイ・ミルナー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・エル・シーゲルマン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0158013(US,A1)
【文献】国際公開第2015/126945(WO,A1)
【文献】特表2015-504000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106348(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246584(US,A1)
【文献】国際公開第2017/059130(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 53/02-53/12
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
C07B 31/00-61/00,63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素吸着用の活性化吸着材料であって、
複数の金属カチオンおよび複数のポリトピック有機リンカーを含む金属-有機骨格と、
複数のポリアミン配位子と、を含み、
前記複数のポリアミン配位子中のそれぞれのポリアミン配位子が以下を含み、
【化1】
X
1およびX
2が、前記複数の金属カチオン中のそれぞれの第1および第2の金属カチオンであり、
Yが、
【化2】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2が、それぞ
れ炭素であり、
i、j、k、x、y、およびzが、それぞれ独立して、0、1、または2であり、
mが、2、3、または4であり、
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、および
R
18
が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換
アリールオキシ、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシであり、
前記複数のポリアミン配位子中の前記ポリアミン配位子の少なくとも20パーセント
のそれぞれが、(i)前記複数の金属カチオン中の第1の金属カチオンに第1のアミンによって付加されたアミン、
かつ(ii)前記金属-有機骨格の前記複数の金属カチオン中の第2のカチオンに第2のアミンによって付加されたアミンである、
活性化吸着材料。
【請求項2】
前記複数のポリアミン配位子中の前記ポリアミン配位子の少なくとも80パーセント
のそれぞれが、(i)前記複数の金属カチオン中の第1の金属カチオンに第1のアミンによって付加されたアミン、
かつ(ii)前記金属-有機骨格の前記複数の金属カチオン中の第2の金属カチオンに第2のアミンによって付加されたアミンである、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項3】
前記複数の金属カチオン中の各金属カチオンが、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnである、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項4】
Yが、
【化3】
式中、
iおよびjがそれぞれゼロであるか、
iが1であり、jがゼロであるか、
iが1であり、jが1であるか、または
iが1であり、jが2である、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項5】
Yが、
【化4】
kおよびxがゼロであり、
mが2である、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項6】
Yが、
【化5】
kおよびxがそれぞれ1であり、
mが3または4である、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項7】
Yが、
【化6】
yおよびzがそれぞれ2である、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項8】
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、および
R
15
が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換n-アルキル、または置換もしくは非置換分岐鎖アルキルである、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項9】
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、および
R
15
が、Hである、請求項
8に記載の活性化吸着材料。
【請求項10】
前記複数の金属
カチオン中の各金属
カチオン(X)が、Mgである、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項11】
前記ポリトピック有機リンカーが、
4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc
4-)、
4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc
4-)、
2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc
4-)、または
3,3’ジオキシド-ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc
4-)である、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項12】
前記複数のポリアミン配位子中の各ポリアミン配位子が、
ジエチレントリアミン、
N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、
ビス(3-アミノプロピル)アミン、
N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、
トリエチレンテトラミン、
N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、
1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタン、
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、または
テトラエチレンペンタミンである、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項13】
前記複数のポリアミン配位子の前記金属-有機骨格への積載が80パーセント~120パーセントであ
り、
100パーセントの積載は、2つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子に対応する、
請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項14】
前記吸着材料が、段差形状のCO
2吸着プロファイル又は脱着プロファイルを示す、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項15】
前記吸着材料が、単一のまたは複数の段差形状のCO
2吸着又は脱着プロファイルを示す、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項16】
前記吸着材料が、140℃超においてCO
2吸着段差を含むCO
2吸着プロファイルを示す、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項17】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化7】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項18】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化8】
式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、およびR
28が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項19】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化9】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項20】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化10】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、およびR
25が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択され、
R
22が、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項21】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化11】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、およびR
25が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択され、
R
22が、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項22】
前記吸着材料が、0.9以下
:1.5のポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比を有
し、
ポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比が0.50:1.0とは、前記複数の金属カチオンにおける2つの金属カチオンあたり1つのポリアミン配位子を意味する、
請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項23】
前記吸着材料が、40℃で、100ミリバール超のCO
2圧力において、3ミリモル/g超のCO
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのN
2圧力において、0.25ミリモル/g未満のN
2を吸着する、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項24】
前記吸着材料が、40℃で、100ミリバール超のCO
2圧力において、3ミリモル/g超のCO
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのO
2圧力において、0.25ミリモル/g未満のO
2を吸着する、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項25】
前記吸着材料が、40℃で、100ミリバール超のCO
2圧力において、3ミリモル/g超のCO
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのCH
4圧力において、0.25ミリモル/g未満のCH
4を吸着する、請求項1に記載の活性化吸着材料。
【請求項26】
煙道ガスからCO
2を減少させるための方法であって、
(a)前記煙道ガスを、請求項1に記載の活性化吸着材料と接触させて、前記煙道ガスからCO
2を可逆的に吸着し、それによってCO
2に富む吸着材料を生成することと、
(b)再生プロセスを使用して、CO
2に富む前記吸着材料から前記CO
2の大部分を除去することと、を含む、方法。
【請求項27】
前記再生プロセスが、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記再生プロセスが、前記吸着材料の再利用のために、CO
2に富む前記吸着材料に蒸気を適用し、それによって前記
吸着材料からのCO
2の脱着をもたらすことを含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項29】
バイオガス、天然ガス、または埋立地ガスからCO
2を除去する方法であって、前記バイオガス、天然ガス、または埋立地ガスを、請求項1に記載の活性化吸着材料と接触させて、前記バイオガスからCO
2を可逆的に吸着し、それによってCO
2に富む吸着材料と、純度98%を超えるメタンである残留ガスと、を生成する、除去する方法。
【請求項30】
前記方法が、再生プロセスを使用して、CO
2に富む吸着材料から前記CO
2の大部分を除去することをさらに含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記再生プロセスが、前記吸着材料の再利用のために、CO
2に富む活性化吸着材料に蒸気を適用し、前記
吸着材料からのCO
2の脱着をもたらすことを含む、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
前記再生プロセスが、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせである、請求項
30に記載の方法。
【請求項33】
発生源によって生成されたガスから二酸化炭素を分離する方法であって、請求項1に記載の活性化吸着材料に前記ガス中の前記二酸化炭素を曝露することを含み、それによって前記二酸化炭素が、前記吸着材料中に可逆的に分離される、方法。
【請求項34】
前記二酸化炭素が、前記吸着材料の再利用のために、前記
吸着材料からのCO
2の脱着をもたらす、前記活性化吸着材料に蒸気を適用することを含む再生プロセスによって、前記活性化吸着材料から可逆的に分離される、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
前記二酸化炭素が、再生プロセスによって前記活性化吸着材料から可逆的に分離される、請求項
33に記載の方法。
【請求項36】
前記再生プロセスが、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせである、請求項
34に記載の方法。
【請求項37】
二酸化炭素吸着用の活性化吸着材料を合成する方法であって、
(A)金属-有機骨格上に複数のポリアミン配位子をグラフトすることであって、前記金属-有機骨格が、複数の金属カチオンおよび複数のポリトピック有機リンカーを含み、前記グラフトすることが、一定量の前記金
属-有機骨格を、溶媒で希釈された前記
複数のポリアミン配位子を含む溶液へ曝露し、それによって非活性化吸着材料を形成することを含み、
前記複数のポリアミン配位子における各ポリアミン配位子が、
【化12】
式中、
Yが、
【化13】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2が、それぞ
れ炭素であり、
i、j、k、x、y、およびzが、それぞれ独立して、0、1、または2であり、
mが、2、3、または4であり、
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、および
R
18
が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換
アリールオキシ、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシである
、
(B)少なくとも165℃の温度で、少なくとも4時間、不活性環境に前記非活性化吸着材
料を供して、それによって前記吸着材料を活性化することであって、前記活性化された吸着材料における複数のポリアミン配位子の少なくとも20パーセントのポリアミン配位子
のそれぞれが、(i)前記複数の金属カチオン中の第1の金属カチオンに第1のアミンによって付加されたアミン、
かつ(ii)前記金属-有機骨格の前記複数の金属カチオン中の第2のカチオンに第2のアミンによって付加されたアミンである、ことと、を含
み、
前記不活性環境が、前記非活性化吸着材料に吹き付けられるアルゴンガス、窒素ガス、又はそれらの組み合わせの流れである、
方法。
【請求項38】
前記溶媒が、トルエン、水、メタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ペンタン、2-ブタノン、トリクロロエチレン、メチル-t-ブチルエーテル、ヘプタン、ジエチルエーテル、またはそれらの混合物である、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
前記活性化された吸着材料が、110パーセント以下のポリアミン配位子積載を有
し、
100パーセントの積載は、2つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子に対応する、
請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記温度が少なくとも190℃である、請求項
37に記載の方法。
【請求項41】
前記複数の金属カチオン中の各金属カチオンが、独立して、Mg、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnである、請求項
37に記載の方法。
【請求項42】
Yが、
【化14】
式中、
iおよびjがそれぞれゼロであるか、
iが1であり、jがゼロであるか、
iが1であり、jが1であるか、または
iが1であり、jが2である、請求項
37に記載の方法。
【請求項43】
Yが、
【化15】
式中、
kおよびxがゼロであり、
mが2または3である、請求項
37に記載の方法。
【請求項44】
Yが、
【化16】
kおよびxがそれぞれ1であり、
mが2、3、または4である、請求項
37に記載の方法。
【請求項45】
Yが、
【化17】
yおよびzがそれぞれ2である、請求項
37に記載の方法。
【請求項46】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2が、それぞれ独立して、炭素である、請求項
37に記載の方法。
【請求項47】
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、および
R
18
が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換n-アルキル、または置換もしくは非置換分岐鎖アルキルである、請求項
37に記載の方法。
【請求項48】
各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、および
R
18
がHである、請求項
47に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の金属
カチオン中の各金属
カチオン(X)が、Mgである、請求項
37に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリトピック有機リンカーが、
4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc
4-)、
4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc
4-)、
2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc
4-)、または
3,3’ジオキシド-ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc
4-)である、請求項
37に記載の方法。
【請求項51】
前記複数のポリアミン配位子中の各ポリアミン配位子が、
ジエチレントリアミン、
N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、
ビス(3-アミノプロピル)アミン、
N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、
トリエチレンテトラミン、
N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、
1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタン、
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、または
テトラエチレンペンタミンである、請求項
37に記載の方法。
【請求項52】
前記活性化された吸着材料が、段差状のCO
2吸着プロファイル又は脱着プロファイルを示す、請求項
37に記載の方法。
【請求項53】
前記活性化された吸着材料が、単一のまたは複数の段差形状のCO
2吸着プロファイル又は脱着プロファイルを示す、請求項
37に記載の方法。
【請求項54】
前記活性化された吸着材料が、140℃超においてCO
2吸着段差を含むCO
2吸着プロファイルを示す、請求項
37に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化18】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項
37に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化19】
式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27、およびR
28が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項
37に記載の方法。
【請求項57】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化20】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される、請求項
37に記載の方法。
【請求項58】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化21】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、およびR
25が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択され、
R
22が、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される、請求項
37に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリトピック有機リンカーが、下式を有し、
【化22】
式中、
R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、およびR
25が、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択され、
R
22が、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される、請求項
37に記載の方法。
【請求項60】
CO
2ならびにN
2、CH
4、H
2O、およびO
2のうちの少なくとも1つを含む多成分ガス混合物からCO
2を除去するための方法であって、
請求項1に記載の活性化吸着材料と前記多成分ガス混合物を接触させて、前記多成分ガス混合物からCO
2を可逆的に吸着して、それによってCO
2に富む吸着材料、およびCO
2が枯渇した残留ガスを生成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年10月31日に出願された、「Polyamine-Appended Metal-Organic Frameworks for Carbon Dioxide Separations」と題された米国仮特許出願第62/579,717号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、CO2捕捉用途のための金属-有機骨格上にグラフトされたポリアミン配位子を含む吸収剤に関する。
【背景技術】
【0003】
熱電発電所での化石燃料の燃焼から生成された二酸化炭素((CO2))は、おそらく地球規模の気候変動の主な一因である。Pachauri and Meyer,Climate Change 2014:Synthesis Report.Contribution of Working Groups I,II and III to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change,International Government Panel on Climate Change,Geneva,Switzerland,2014を参照されたい。したがって、CO2が、大気中に放出される前に、煙道ガスの他の成分(主にN2、O2、およびH2O)から分離される、化石燃料火力発電所の煙道ガス流からのCO2の点源燃焼後捕捉および隔離(CCS)が、世界のCO2排出を最小化するための重要な戦略として提案されている。Pachauri and Meyer,Ibid.,Chu,2009,Science 325,p.1599,and Haszeldine,2009,Science 325.p.1647を参照されたい。さらに、この分野の研究者は、自動車および飛行機の排出物などの発生源からのCO2寄与に対処するために、大気中の過剰CO2を低減する空気捕捉技術を点源CCSに補足する必要があると予測している。Lackner et al.,2012,PNAS 109(33),p.13156を参照されたい。
【0004】
そのため、CO2に固有の吸着剤に対する必要性が存在する。この必要性により、吸着の分野における重要な研究に繋がった。世界中の多くの研究者が、非常に特異的で高性能の吸着剤を開発するための研究に従事している。大規模で長期間使用するためには、最小限の再生エネルギーを有する高性能吸着剤を開発することが重要である。現在、多くの再生方法が研究されている。そのような方法としては、熱再生、蒸気再生、圧力スイング再生、真空再生、マイクロ波再生、超音波再生、化学再生、酸化再生、および生体再生が挙げられる。これらの再生方法とは別に、熱化学再生、電気化学など、これらの方法の複合効果も調査されている。Cabal et al.,2009,J Hazard Matter 166,p.1289を参照されたい。本明細書で使用されるとき、「再生」という用語は、脱着を指すために使用される。
【0005】
再生プロセスでは、次の要因(精製の程度、混合物の成分への分離、吸着剤の安定性、吸着成分の回収の程度、およびエネルギー消費)が設置性能の有効性に影響する。そのため、好適な再生方法で求められているのは、(i)吸着された化合物(複数可)の高度な脱着、(ii)使用済み吸着剤の最小限の侵食または機械的破壊、(iii)使用済み再生剤の簡単なアクセスおよび生態学的安全性、および(iv)脱着物からの、回収または除去された化合物の分離の容易さである。Shah et al.,2013,Chem Sci Trans.2,p.1078.を参照されたい。これらの考慮事項を念頭に置いて、ほとんどの工業設備はすでに製造プロセスの一部として蒸気運転および保守ユニットを有するため、蒸気再生は多くの再生プロセスで広く普及しており、安価である。その結果、そのような蒸気資源を再生のために利用することができる。
【0006】
CCS用途に最も技術に適した材料は、低コスト、湿潤条件下での効果的な性能、およびN2よりもCO2に関する選択性が高いため、アミン水溶液である。例えば、いくつかのそのような例では、発電所からの排気はアミン水溶液の流動床を通過する。Boot-Handford et al.,2014,Energy Environ.Sci.7,p.130,Bhown and Freeman,2011,Environ.Sci.Technol.45,p.8624;and Rochelle,2009,Science 325,p.1652を参照されたい。しかしながら、これらの吸着剤には、低い作業容量(約2重量%)、腐食性、および熱劣化(アミン溶液再生時)など、多くの欠点に見舞われる。Boot-Handford,2014,Fennell,Energy Environ.Sci.7,p.130;and Fredriksen and Jens,2013,Energy Procedia 37,p.1770;およびGouedard et al.,2012,Int.J.Greenhouse Gas Control,10,p.244を参照されたい。特に、CO2吸収剤の工業的再生に必要とされる少なくとも高容積目盛りについて、これまでの水性アミンはそのような熱劣化のために不十分であった。
【0007】
多孔性固体吸着剤はまた、アミン水溶液と比較して安定性が高く、再生エネルギーが低い可能性があるため、CO2吸着剤の用途を対象とする。Drage,2012,J.Mater.Chem.22,p.2815を参照されたい。これらの好ましい特性は、CCSのための吸着剤としての研究につながっている。選択したレビューについては、Lee and Park,2015,Ind.Eng.Chem.23,p.1,Samanta et al.,2012,Ind.Eng.Chem.Res.51,p.1438、およびChoi et al.,2009,ChemSusChem,2,p.796を参照されたい。残念ながら、これらの材料のほとんどにおけるCO2吸着は、煙道ガス中に存在する水によって損なわれ、CO2結合部位は不動態化され、かつ/または材料が劣化する。Woerner et al.,2016,J.Phys.Chem.C 120,p.360;Kim et al.,2016,Energy Environ.Sci.9,p.1803;Mason et al.,2015,J.Am.Chem.Soc.137,p.4787;およびWang and LeVan,2010、J.Chem.Eng.Data 55,p.3189を参照されたい。
【0008】
アミンが付加したシリカなどのアミン官能化多孔質固体は、湿潤条件下で高いCO2/N2選択性を維持しながら、両クラスの材料の最も良いところを兼ね備えている。選択したレビューについては、Lee and Park.,2015,Ind.Eng.Chem.23,p.1;Samanta et al.,2012,Ind.Eng.Chem.Res.51,p.1438;Choi et al.,2009,ChemSusChem 2,p.796;Kim et al.,2016,Energy Environ.Sci.9,p.1803;Mason et al.,2015,J.Am.Chem.Soc.137,p.4787;Unveren et al.,2017,Petroleum 3,p.37;Didas et al.,2014,J.Phys.Chem.Lett.5,p.4194;Bacsik et al.,2011,Langmuir 27,p.11118;Sayari and Belmabkhout,2010,J.Am.Chem.Soc.132,p.6312;Serna-Guerrero et al., 2008, Ind.Eng.Chem.Res.47,p.9406.を参照されたい。しかしながら、これらの吸着剤の多くの見落とされがちな欠点の1つは、CO2吸着時のH2Oの著しい共吸着であり、それは、水がCO2と一緒にベッドから脱着される再生時の寄生エネルギーコストの一因である。Mason et al.,2015,J.Am.Chem.Soc.137,p.4787;Veneman et al.,2014,Energy Procedia 63,p.2336; Xu et al.,2005,Ind.Eng.Chem.Res.44,p.8113;and Franchi et al.,2005,Ind.Eng.Chem.Res.44,p.8007を参照されたい。
【0009】
金属-有機骨格は、多孔質構造を正確に制御し、吸着剤の特性の微調整を可能にするポリトピック有機リンカーによって接続された金属ノードからなる多孔質固体のクラスである。Zhou et al.,2012,Chem.Rev.112,p.673;Furukawa et al.,2013,Science 341,p.123044;and Eddaoudi et al.,2002,Science 295,p.469を参照されたい。多くの金属-有機骨格がCCSに関して評価されている。選択されたレビューについては、以下を参照されたい。Yu et al.,2017,Chem.Rev.,(DOI:10.1021/acs.chemrev.6b0062);Sabouni et al.,2014,Environ.Sci.Pollut.Res.21p.5427;Sumida et al.,2012,Chem.Rev.112,p.724;Liu et al.,2012,Greenhouse Gasses Sci.Technol.2,p.239;Li et al.,2011,Coord.Chem.Rev.255,p.1791;and D’Alessandro et al.,2010,Angew.Chem.Int.Ed.,49,p.6058.
【0010】
特に、アミン官能化(Sumida et al.,2012,Chem.Rev.112,p.724;Lin et al.,2016,RSC Adv.6,p.32598;Qiao et al.,2016,Chem.Commun.52,p.974;Liao et al.,2016,Chem.Sci.7,p.6528;Fracaroli et al.,2014,J.Am.Chem.Soc.136,p.8863;Cao et al.,2013,J.Environ.Sci.25,p.2081;Montoro et al.,2012,J.Mater.Chem.22,p.10155;Liu et al.,2012,Chem.Soc.Rev.41,p.2308)金属-有機骨格は、水の共吸着を潜在的に最小限に抑えながら、水の存在下でCO2を捕捉する能力があるため、これらの用途に有望である。
【0011】
有望なアプローチは、アミン系配位子を金属-有機骨格にグラフトすることである。例えば、金属-有機骨格Mg
2(dobpdc)(dobpdc
4-=4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート、
図1)のアルキルエチレンジアミン付加変異体は、それらの固有の段差形状のCO
2吸着等温線により有望である(
図2)。McDonald et al.,2012,J.Am.Chem.Soc.134,p.7056;Long et al.,“Alkylamine functionalized metal-organic frameworks for composite gas separations,”、2013年4月25日に公開された国際公開第2013059527(A1)号、およびMcDonald et al.,2015,Nature 519,p.303を参照されたい。これらの段差形状の等温線により、最小限の温度変動(約50℃)で高い作業容量(>3ミリモル/g)を実現できる。広範な機械的研究により、この材料(およびMn、Fe、Co、Znの同族体)の固有の段差形状のCO
2吸着段差は、骨格の細孔に沿ったアンモニウムカルバメート鎖の協同形成に起因することが明らかになった。McDonald et al.,2015,Nature 519,p.303を参照されたい。この研究に基づいて、Mg
2(dobpdc)のいくつかの他のアルキルエチレンジアミン付加変異体が記述され、研究されているが、これらのジアミン付加材料の少しだけが、おそらく単一のM-N結合を介して材料につながれていることのために、炭素捕捉用途の吸着/脱着サイクルに必要な安定性を持っている。Jo et al.ChemSusChem,10,p.541;Lee et al.,2015,Chem Sci.6,p.3697;Lee et al.,2014,Energy Environ.Sci.7,p.744;and Siegelman et al.,2017,J.Am.Chem.Soc.2017,139,p.10526を参照されたい。例えば、ジアミン付加材料に一般的に関連する1つの欠点は、アミンの揮発性である。Milner et al.,2018,Chem.Sci.2018,9,p.160を参照されたい。
【0012】
また、Mg2(dobdc)(dobdc4-=2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート)などの他の金属-有機骨格へのジアミンよりも大きいポリアミンのグラフト化が報告されているが、これらの材料の複数の金属部位への個々のアミン系配位子の、特に秩序だった配置内での配位は確実に実証されていない。Su et al.,2017,ACS Appl.Mater.Interfaces 9,p.11299;Darunte et al.,2016,ACS Sustain.Chem.Eng. 4,p.5761;Li et al.,2016, ChemSusChem 9,p.2832;Lin et al.,2013,Sci.Rep.3,1859;Cao,2013,J.Environ.Sci.25,2081;and Yan et al.,2013,Chem.Commun.49,p.6873.を参照されたい。加えて、これらの前述の材料はいずれも、段差形状のCO2吸着プロファイルを有しない。また、これまで、これらの前述のポリアミン荷電金属<-有機骨格材料に提供されたデータは、そのような材料を蒸気系再生プロセスに適切にするであろう活性化条件がまだ解明されていないことを示す。
【0013】
したがって、当技術分野で必要なのは、ポリアミン金属-有機骨格であり、ポリアミンが複数の金属部位への配位を通じて金属-有機骨格にグラフトされ、それにより段差形状のCO2吸着プロファイルを示し、低い分圧でのCO2の効果的な捕捉を可能にする(例えば、石炭煙道ガスからCO2捕捉のために15ミリバールのCO2分圧以下、または天然ガス煙道ガスからのCO2捕捉のための40℃以上の温度の4ミリバールのCO2分圧以下、または空気からの炭素捕捉のための25℃の400ppmのCO2分圧以下で発生する約40℃以上の温度段差)。また、当技術分野で必要とされるのは、工業規模での蒸気系再生プロセスで使用するのに十分に安定なポリアミン官能化金属-有機骨格である。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、トリアミン、テトラミン、およびペンタミンなどのポリアミンを、Mg2(dobpdc)および関連する金属-有機骨格に、複数の金属部位への配位を通してグラフトする手順を提供することにより、上記の欠点に対処し、アミン揮発を大幅に減少させる。結果として得られたポリアミン付加骨格は、協働してCO2を吸着して、段差形状のCO2吸着プロファイルをもたらす。さらに、これらの材料は、水蒸気の存在下でCO2吸着段差を維持し、これらのポリアミン材料は、潜在的に蒸気に対して安定であるため、湿潤ガス流からの炭素捕捉を非常に有望にする。
【0015】
本開示の一態様は、金属-有機骨格上にグラフトされたポリアミン配位子を含み、かつ段差形状のCO2吸着および脱着プロファイルを示す活性化吸収剤を提供する。このような吸着剤は、CO2の捕捉など、幅広い技術的用途を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、開示された金属-有機骨格は、Mg、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnなどの金属カチオンと配位したポリトピック有機リンカーで構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、開示された金属-有機骨格は、Be、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHfなどの金属カチオンと配位したポリトピック有機リンカーで構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、開示された金属-有機骨格は、2つ以上の異なる金属カチオン(例えば、MgおよびCa)を含む。いくつかの実施形態では、開示された金属-有機骨格は、3つ以上の異なる金属カチオンを含む。いくつかの実施形態では、開示された金属-有機骨格は、単一のタイプの金属カチオンである。ポリトピック有機リンカーの例としては、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート、および3,3-ジオキシドビフェニル-4,4-ジカルボキシレートが挙げられる。
【0019】
本開示の別の態様は、開示された吸収剤にポリアミンを充填するための方法を提供する。開示された充填方法には、有機溶媒中の金属-有機骨格上にポリアミン配位子をグラフトして、非活性化吸着剤(細孔に存在する過剰なポリアミンを有する)を形成し、その後、非活性化吸着剤を高温の不活性ガス流に供し、または60~80℃でトルエンなどの非配位性溶媒で非活性化吸着剤を洗浄し、それによって、吸収剤を活性化する(骨格中に存在する2つの金属ごとに1つのポリアミンのポリアミン積載を得る)ことを含む。
【0020】
本開示の一態様は、金属-有機骨格を含む吸着材料を提供する。金属-有機骨格は、(i)複数の金属カチオンおよび(ii)複数のポリトピック有機リンカーを含む。吸着材料は、複数の配位子をさらに含む。いくつかの非限定的な実施形態では、吸着材料は、0.3以下
:1(例えば0.25
:1、4つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子を意味する)、0.4以下
:1(例えば0.35
:1)、0.5以下
:1(例えば、0.45
:1)、0.6以下
:1(例えば、0.50
:1、2つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子を意味する)、0.7以下
:1(例えば、0.6
:1)、0.7以下
:1(例えば、0.65
:1)、0.8以下
:1(例えば、0.75
:1、4つの金属部位あたり3つのポリアミン配位子を意味する)、または0.9以下
:1(例えば、0.85
:1)のポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、吸着材料は、0.3以下
:1.5(例えば0.25
:1.5)、0.4以下
:1.5(例えば0.35
:1.5)、0.5以下
:1.5(例えば、0.45
:1.5)、0.6以下
:1.5(例えば、0.50
:1.5)、0.7以下
:1.5(例えば、0.6
:1.5)、0.7以下
:1.5(例えば、0.65
:1.5)、0.8以下
:1.5(例えば0.75
:1.5)、または0.9以下
:1.5(例えば0.85
:1.5)のポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比は、上記に参照されない何らかの比である。複数のポリアミン配位子中のそれぞれのポリアミン配位子は以下を含む:
【化1】
この式では、X
1およびX
2はそれぞれ、複数の金属カチオン中の第1および第2の金属カチオン(例えば、Be、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHf)である。さらに、Yは、
【化2】
Z
1、Z2、Z3、Z4、Z5、Q
1、およびQ
2は、それぞれ独立して、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、またはセレンである。値i、j、k、x、y、およびzという値は、それぞれ独立して、0、1、または2であり、mは2、3、または4である。各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、およびR
18の各例が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アーリオキシ(arlyoxy)、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシである。
【0021】
本開示の別の態様は、煙道ガスからCO2を除去し、煙道ガスを本開示の任意の吸着材料と接触させて、煙道ガスからCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料を生成し、次いで、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分を除去する方法を提供する。
【0022】
本開示の別の態様は、バイオガスからCO2を除去するための方法を提供する。本方法は、バイオガスを本開示の任意の吸着材料と接触させて、バイオガスからCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料および98パーセントを超える純粋なメタンである残留ガスを生成することを含む。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分を除去することをさらに含む。
【0023】
本開示の別の態様は、炭化水素貯留層からCO2を除去するための方法を提供する。本方法は、炭化水素貯留層を本開示の任意の吸着材料と接触させて、炭化水素貯留層からCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料を生成することを含む。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分を除去することをさらに含む。
【0024】
本開示のさらに別の態様は、発生源によって生成された二酸化炭素を隔離する方法を提供する。この方法は、二酸化炭素を本開示の吸着材料に曝露することを含み、それによって、二酸化炭素は、吸着材料に可逆的に隔離される。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料を生成することをさらに含む。
【0025】
本開示の別の態様は、複数のポリアミン配位子が金属-有機骨格上のグラフトされる、吸着材料を合成する方法を提供する。金属-有機骨格は、複数の金属カチオンおよび複数のポリトピック有機リンカーを含む。グラフト化は、溶媒で希釈されたポリアミン配位子を含む溶液に一定量の金属-有機骨格を曝露して、それによって非活性化吸着材料を形成することを含む。各ポリアミン配位子は、下式を有する。
【化3】
式中、Yは、
【化4】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2は、それぞれ独立して、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、またはセレンであり、i、j、k、x、y、およびzは、それぞれ独立して、0、1、または2であり、mは2、3、または4である。さらに、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、およびR
18の各例が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換
アリールオキシ、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシである。いくつかの実施形態では、非活性化(例えば、細孔中に過剰なポリアミンが存在する)吸着材料は、高温ガスの不活性流に供され(例えば、少なくとも165℃、少なくとも190℃、少なくとも210℃、または190℃~250℃の温度で)、これによって、吸着材料を活性化する(2つの金属ごとに1つのポリアミン、骨格内の3つの金属ごとに1つのポリアミン、または骨格内の4つの金属ごとに1つのポリアミンのポリアミン積載を得る)。いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、60℃~180℃の温度で弱配位または非配位溶媒で洗浄され、それによって吸着材料を活性化する。弱配位または非配位溶媒の代表的かつ非限定的な例としては、トルエン、クロロベンゼン、パラフィン、ハロゲン化パラフィンなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、60℃超の温度の真空下に置かれ、それによって吸着材料を活性化する。いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、(i)高温(例えば、少なくとも165℃の温度)でのガスの不活性流と、それに続く(ii)60℃超の温度で真空下に置かれ、それによって吸着材料を活性化することとの1つ以上のサイクルに供される。いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス、またはそれらの混合物が再充填サイクルで使用される複数の排気-再充填サイクルに供される。いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス、またはそれらの混合物が再充填サイクルで使用される、60℃超などの高温下での複数の排気-再充填サイクルに供される。いくつかの実施形態では、吸着材料は、120%以下のポリアミン配位子積載を有する場合に活性化されると特徴付けられ、100%の積載は、2つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子に対応する。
【0026】
吸着材料の合成に戻ると、いくつかの実施形態では、溶媒はトルエンである。いくつかの実施形態では、溶媒は、トルエン、水、メタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ペンタン、2-ブタノン、トリクロロエチレン、メチル-t-ブチルエーテル、ヘプタン、ジエチルエーテル、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、ガスの不活性流は、窒素ガス、アルゴンガス、またはそれらの混合物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、活性化吸着材料は、110パーセント以下のポリアミン配位子積載を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、複数の金属イオン中の各金属イオンは、Mg、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnである。
【0029】
本発明の別の態様は、CO2ならびにN2、H2O、およびO2のうちの少なくとも1つを含む多成分ガス混合物からCO2を除去するための方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載の吸着材料と前記多成分ガス混合物を接触させて、前記多成分ガス混合物からCO2を可逆的に吸着して、それによってCO2に富む吸着材料、およびCO2が枯渇した残留ガス(多成分ガス混合物中に残存する10%未満のv/vCO2、多成分ガス混合物中に残存する5%未満のv/vCO2、多成分ガス混合物中に残存する2%未満のv/vCO2、多成分ガス混合物中に25℃で1000ppm未満、多成分ガス混合物中に25℃で500ppm未満など(枯渇時))を生成することと、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】CO
2の段差形状吸着を示す吸着剤を生成するための、金属-有機骨格Mg
2(dobpdc)(dobpdc
4-=4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート)(パネルA)、および骨格の開放Mg
2+部位への付加アルキルエチレンジアミン(パネルB)の構造を示す。
【
図2】本開示による、高い作業能力が達成されることを可能にする(パネルB)段差形状の吸着等温線(パネルA)につながるMg
2のアルキルエチレンジアミン付加変異体(dobpdc)中のアンモニウムカルバメート鎖の協同形成を示す。
【
図3】本開示による、「合成したままの」ポリアミン積載(パネルA)および「活性化後」(パネルB)の予備的な概略図を示す。六角形は、金属-有機骨格の単一の細孔を表し、六角形の縁部は有機リンカーを表し、頂点は金属部位を表す。破線は、骨格内の金属部位へのアミン配位子の配位を示す。
【
図4】本開示による、100%積載(2つの金属部位あたり1つのポリアミン))につながる過剰のポリアミンの熱除去を示す、Mg
2(dobpdc)のポリアミン付加変異体(402)の代表的な乾燥N
2分解プロファイルを示し、比較のために、代表的なジアミン付加Mg
2(dobpdc)骨格(404)のための分解プロファイルが含まれる。
【
図5】EMM-53(Zn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Zn
2(dobpdc))の単結晶構造を示す。骨格の孔軸(c軸)から見下ろした図は、ポリアミンが、順序付けられた様式で、金属部位に隣接して配位し、16.722オングストロームに及ぶ。水色、赤色、灰色、青色、および白色の球体は、それぞれZn、O、C、N、およびHを表す。
【
図6】EMM-53(3-3-3-Zn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン-Zn
2(dobpdc))の単結晶構造を示す。骨格の孔軸(c軸)から見下ろした図は、ポリアミンが、順序付けられた様式で、金属部位に隣接して配位し、10、481オングストロームに及ぶ。水色、赤色、灰色、青色、および白色の球体は、それぞれZn、O、C、N、およびHを表す。
【
図7】本開示の実施形態による、テトラミンの各分子が、CO
2の2つの分子を捕捉し、六角形チャネルの二隅に沿ってアンモニウムカルバメート鎖を形成し、内部リンカーが2つの鎖を接続する、CO
2吸着の後のテトラミンのための想定される配位モードを示す
【
図8】EMM-53(2-2-2)(テトラエチレンペンタミン-Mg
2(dobpdc)のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却、806)および脱着(加熱、808)等圧線を示す。吸着は、適度なヒステリシスを備えた2段差のCO
2を通じて進行する。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線802および804は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図9】
図8におけるEMM-53(2-3-2)(N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却、906)および脱着(加熱、908)等圧線を示し、EMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))と比較してより顕著なヒステリシスを有する二段差CO
2吸着を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線902および904は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図10】EMM-53(3-2-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,2-エチレンジアミン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却、1006)および脱着(加熱、1008)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1002および1004は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図11】EMM-53(3-3-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1102および1104は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図12】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。この試料は、中程度のCO
2捕捉能力を備えた高温で2つのCO
2吸着段差を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1202および1204は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図13】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための20%CO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1302および1304は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図14】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための15%CO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1402および1404は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図15】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための4%CO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1502および1504は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図16】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための0.4%CO
2吸着下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。0.1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図17】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための400ppmのCO
2下、大気圧での熱重量吸着等圧線を示す。0.1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図18】EMM-53(3-2)(N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1802および1804は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図19】EMM-53(3-3)(ビス(3-アミノプロピル)アミン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線1902および1904は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図20】EMM-53(3-4)(N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2002および2004は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図21】EMM-53(2-2-2-2)(テトラエチレンペンタミン)-Mg
2(dobpdc)のための純粋なCO
2下、大気圧での熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。
図21によって示される試料は、高温で段差形状のCO
2吸着を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2102および2104は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図22A-22C】純粋なCO
2下で、大気圧でのEMM-55(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(pc-dobpdc)、pc-dobpdc
4-=3,3’-ジオキシドビフェニル-4,4’ジカルボキシレート、pc=パラカルボキシレート)(パネルA)、EMM-55(2-3-2)(N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(pc-dobpdc))(パネルB)、およびEMM-55(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(pc-dobpdc))(パネルC)のための熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線をそれぞれ示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2202および2204は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図23】純粋なCO
2下のEMM-54(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dotpdc)(dotpdc
4-=4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート))のための熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。このポリアミン付加骨格では、段差形状のCO
2吸着が依然として観察されている。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2302および2304は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図24】純粋なCO
2下で、大気圧でのEMM-54(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dotpdc))(パネルA)およびEMM-54(2-3-2)(N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dotpdc))(パネルB)のための熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2402および2404は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図25A-25B】純粋なCO
2下で、大気圧でのEMM-53(3-3-3-Mn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン-Mn
2(dobpdc))(パネルA)およびEMM-53(Mn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mn
2(dobpdc))(パネルB)のための熱重量吸着(冷却)および脱着(加熱)等圧線をそれぞれ示す。このポリアミン付加骨格では、段差形状のCO
2吸着が観察されている。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2502および2504は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図26】本開示の実施形態による、75分間で最低30℃までの吸着、および75分間で最高180℃までの脱着を有する、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2下で吸着/脱着サイクリング(温度線2602)を示す。
【
図27】代表的なジアミン付加金属-有機骨格、N,N’-ジエチルエチレンジアミン-(dobpdc)のための、15分間60℃での4%CO
2下でのサイクリング吸着および5分間160℃での純粋なCO
2下での脱着(温度線2702)を示す。
【
図28】乾燥かつ湿潤条件下でのEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc)のための純粋なCO
2等圧線の比較を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線2852および2854は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。1℃/分の温度上昇率が使用された。
【
図29】180℃で12時間、流れる湿潤N
2下に保持される前(2902)および後(2904)に、湿潤条件下でEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2吸着等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、点線2952および2954は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図30】135℃の蒸気の下で3時間保持した後に採取したEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための純粋なCO
2等圧線を示す。この材料の元の純粋なCO
2等圧線は、比較のために示されている。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3002および3004は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図31】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc)のための湿潤サイクリングを示す。吸着は、60℃の湿潤4%CO
2下で約8分間、脱着は、135℃の湿潤NN
2下で約8分間である。CO
2の容量は、サイクリング全体でかなり安定しており、サイクリング後のポリアミン積載は100%であった。
【
図32】5および12時間の蒸気下で処理した後に採取したEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための等圧線を示す。純粋なCO
2等圧線は、吸着が実線で、脱着が点線で示されている。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3252および3254は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図33】75℃でのEMM-53(3-2)(N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3302および3304は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図34】75℃でのEMM-53(3-3)(ビス(3-アミノプロピル)アミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3402および3404は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図35】75℃でのEMM-53(3-4)(N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3502および3504は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図36】75℃でのEMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3602および3604は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図37】75℃でのEMM-53(3-2-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,2-エチレンジアミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3702および3704は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図38】100~120℃の温度範囲で、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3852および3854は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図39】Mg
2(dobpdc)のジアミン付加変異体中のCO
2吸着のための-Δh
吸着と-Δs
吸着との間の相関のプロット上の低圧段差(3902と標識した)および高圧段差(3904と標識した)のための吸着のEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))の微分エンタルピーおよび微分エントロピーを示す。Siegelman,2017,J.Am.Chem.Soc.139,p.13541を参照されたい。
【
図40A-40B】開示の実施形態による、x軸に絶対圧(パネルA)および相対圧(パネルB)を示して、30~60℃の温度範囲で、それぞれEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のH
2O吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。
【
図41】乾燥N
2、乾燥CO
2、およびシミュレートされた湿潤CO
2の雰囲気下、EMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))のIRスペクトルを示す。領域4102および4104は、それぞれ、本開示の実施形態による、CO
2吸着時の診断C=O(1650~1700cm
-1)およびC-N(1320~1340cm
-1)を表す。
【
図42】乾燥N
2、乾燥CO
2、およびシミュレートされた湿潤CO
2の雰囲気下、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のIRスペクトルを示す。領域4202は、本開示の実施形態による、CO
2の吸着時の診断C-N(1320~1340cm
-1)ストレッチを表している。
【
図43】CO
2雰囲気で、蒸気での処理後に投与されたEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のIRスペクトルを示す。領域4302は、CO
2の吸着時の診断C-N(1320~1340cm
-1)ストレッチを表す。
【
図44】EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン<-Mg
2(dobpdc))(排気され、1バールのCO
2で投与した)のための300Kでの粉末X線回折パターン(λ=0.45236Å)を示す。
【
図45】本開示の実施形態による、40℃でのEMM-53(N,N’-Bis(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のCO
2、CH
4、O
2、およびN
2吸着等温線を示す。他のガスに対するCO
2の選択性が示されている。
【
図46】本開示の実施形態による、12時間の100℃の気流下で処理の前後に採取したEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のための吸着等圧線を示す。本開示の実施形態に従って、各ポリアミンは、(i)2つのCO
2分子および(ii)1つCO
2分子を捕捉することができれば、線4652および4654は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【
図47】本開示の実施形態による、30sccmの乾燥下、約1バールでシミュレート天然ガス煙道ガス(N
2中4%CO
2)および60~125℃の範囲の外側カラム温度で、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のためのCO
2破過プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.導入
最近、
図1のパネルAに示されるMg
2+部位で囲まれた一次元六角形チャネルを有する金属-有機骨格であるMg
2(dobpdc)(dobpdc
4-=4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート)の開放Mg
2+部位にアルキルエチレンジアミンおよび1,3-ジアミノプロパンを、合成後に付加することによって調製される、ジアミン付加金属-有機骨格の新しいクラスが評価されている。McDonald et al.,2015,Nature 519,p.303;Drisdell et al.,2015,Phys Chem Chem Phys 17,p.2144;McDonald,2012,J.Am.Chem.Soc. 134,p.7056;Jo et al.,2017,ChemSusChem 10,p.541;Lee et al.,2015,Chem.Sci.6,p.3697;Lee et al.,2014,Energy Environ.を参照されたい。Sci.7,p.744;and Milner et al.,2017,J.Am.Chem.Soc.139,p.13541を参照されたい。
図1、パネルBは、これらの材料のジアミン官能化を示す。
【0032】
ここでは、ポリアミン(特にトリアミン、テトラミン、ペンタミン)を、Mg2(dobpdc)および関連する金属-有機骨格に、複数の金属部位への配位を通してグラフトし、それによってアミンの揮発を大幅に減少させる手順を提供する。これらのポリアミンは骨格にグラフトされ、次いで、臨界温度で加熱され、それによって骨格内の複数の金属部位に配位されたポリアミンを有する所望の付加物の形成が可能になる。結果として得られたポリアミン付加骨格は、おそらくカルバミン酸アンモニウム鎖の形成を介してCO2を協同的に吸着し、段差形状のCO2吸着プロファイルをもたらす。さらに、これらの材料は、水蒸気の存在下でCO2吸着段差を維持し、これらのポリアミン材料は、潜在的に蒸気に対して安定であるため、それらを湿潤ガス流からの炭素捕捉を非常に有望にする。
【0033】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、かかる実施形態は変化し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されよう。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じである。値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値と、その指定範囲の任意の他の指定値または介在値とは、本発明に包含される、ことが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は独立して、そのより小さい範囲に含まれ得、また、本発明に包含され、指定範囲内の任意の具体的に除外された制限値に従う。指定範囲が制限値の一方または両方を含む場合、それらの含まれた制限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。特定の範囲は、「約」という用語が先行する数値で本明細書に示される。「約」という用語は、その後に続く正確な数字およびその用語の後に続く数字に近いか、またはほぼその数字である数字を文字通り支持するために本明細書で使用される。ある数字が、具体的に引用されている数字に近いか、またはほぼその数字であるかを決定する際に、その近いかまたはほぼ引用されていない数字は、提示されている文脈において、具体的に引用されている数字と実質的に等価を提供する数字であり得る。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。さらに、引用された各刊行物、特許、または特許出願は、刊行物が引用されたものに関連する主題を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、出願日より前のその開示のためのものであり、本明細書に記載の発明が、先行発明のためにかかる刊行物に先行する権利が与えられていない、ことを認めるものと解釈するべきではない。さらに、提示される公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、別個に確認する必要があり得る。
【0034】
請求項はいかなる選択的な要素も除外するように作成することができることに留意されたい。そのため、この記載は、請求項要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「だけ」、「のみ」などの排他的な用語の使用に対して先の記載として役立つことを意図している。本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書に記載され、例示されている個々の実施形態は、それぞれ、別個の構成要素および特徴を有しており、この構成要素および特徴は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、またはそのような特徴と組み合わせてもよい。あらゆる列挙された方法は、列挙されたイベントの順序、または論理的に可能な他の順序で実行してよい。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料も本発明の実施または試験に使用してもよいが、代表的な例示的な方法および材料をここに記載する。
【0035】
本発明を説明する際には、以下の用語が、使用され、以下に示されるように、定義される。
【0036】
II.定義
置換基が、左から右に書かれたそれらの従来の化学式によって明記される場合、その構造は、任意選択的に、右から左へ構造を書くことによって生じることになる化学的に同一の置換基も包含し、例えば、-CH2O-は、任意選択的に-OCH2-とも列挙することが意図される。
【0037】
「アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、完全飽和、一価不飽和、または多価不飽和であってもよく、指定された炭素原子数を有する(すなわち、C1~C10は1~10個の炭素を意味する)、二価、三価、および多価ラジカルを含み得る、直鎖、分枝鎖もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2、4-ペンタジエニル、3-(1、4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。「アルキル」という用語は、特に断りのない限り、以下により詳細に定義されるアルキルの誘導体を任意に含むことも意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と称される。例示的なアルキル基は、モノ不飽和C9~10、オレオイル鎖、または二不飽和C9~10、12~13リノエイル(linoeyl)鎖が挙げられる。
【0038】
「アルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、<-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるがこれに限定されないアルカンから誘導される金属ラジカルを意味し、さらに「ヘテロアルキレン」として以下に記載される基を含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、本発明では10個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0039】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残部に結合したアルキル基を指す。
【0040】
「アリールオキシ」および「ヘテロアリールオキシ」という用語は、それらの従来の意味で使用され、酸素原子を介して分子の残部に結合されたそれらのアリールまたはヘテロアリール基を指す。
【0041】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、記載の数の炭素原子と、O、N、Si、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定な直鎖、分枝鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、窒素および硫黄原子は、任意選択的に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化されてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、N、およびSならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基が分子の残部に結合している位置に配置されてもよい。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、および-CH=CH-N(CH3)-CHが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3などの最大2個のヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される金属ラジカルを意味し、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって非限定的に例示される。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は、鎖末端のいずれかまたは両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。またさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の配向は、連結基の式が書かれている方向によって暗示されない。例えば、式<-CO2R’-は、-C(O)OR’および-OC(O)R’の両方を表す。
【0042】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式バージョンを表す。加えて、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残部に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、それらに限定されない。さらに例示的なシクロアルキル基としては、ステロイド、例えばコレステロールおよびその誘導体が挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それら自体または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1~C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2、2、2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを非限定的に含むことを意味する。
【0044】
「アリール」という用語は、特に明記しない限り、一緒に縮合しているかまたは共有結合している単環または多環(好ましくは、1~3環)であり得る多価不飽和芳香族置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、S、Si、およびBから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(または環)を指し、窒素および硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素原子(複数可)は、任意選択的に四級化される。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニル、およびトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上述のアリールおよびヘテロアリール環系の各々の置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。
【0045】
簡潔にするために、「アリール」という用語は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用するとき、上で定義したようにアリール環、ヘテロアリール環、およびヘテロアレーン環を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基がアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)に結合しているラジカルを含むことを意味し、これらのアルキル基には、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)で代置されているアルキル基が含まれる。
【0046】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)の各々は、任意選択的に、示された種の置換形態および非置換形態の両方を含むことを意味する。これらの種の例示的な置換基を以下に示す。
【0047】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば称されるそれらの基を含む)のための置換基は、概して「アルキル基置換基」と称され、それらは、0~(2m’+1)(式中、m’は、かかるラジカル中の炭素原子の総数である)の範囲の数で、H、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、ハロゲン、-SiR’R”R”’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NRC(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN、および-NO2から選択されるが、それらに限定されない様々な基のうちの1つ以上であることができる。R’、R”、R’’’、およびR’’’’は各々好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば、1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換アルキル基、アルコキシ基、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が1つを超えるR基を含むとき、例えば、これらの基のうちの1つを超える基が存在するとき、R基の各々は独立して、各R’、R”、R’’’、およびR’’’’基であるように選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合されるとき、それらは、窒素原子と組み合わさって、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを非限定的に含むことを意味する。置換基の上記の考察から、当業者は、「アルキル」という用語は、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)などの水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解するであろう。これらの用語は、例示的な「置換アルキル」および「置換ヘテロアルキル」部分の成分である例示的な「アルキル基置換基」と考えられる基を包含する。
【0048】
アルキルラジカルについて説明した置換基と同様に、アリールヘテロアリールおよびヘテロアレーン基のための置換基は、概して「アリール基置換基」と称される。その置換基は、例えば、0から、芳香環系における開原子価の総数までの範囲の数で、例えば、炭素またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を介してヘテロアリールまたはヘテロアレーン核に付加された基から選択され、それらの基は、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R”’、-OC(O)R’、-C(O)R’、CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NRC(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN、および-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1~C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1~C4)アルキルを含むが、それらに限定されない。上記の基の各々は、ヘテロアレーンまたはヘテロアリール核に直接またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を介して結合され、R’、R”、R’’’、およびR’’’’は好ましくは独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が1つを超えるR基を含むとき、例えば、これらの基のうちの1つを超える基が存在するとき、R基の各々は独立して、各R’、R”、R’’’、およびR’’’’基であるように選択される。
【0049】
アリール環、ヘテロアレーン環、またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-T-C(O)-(CRR’)q-U-の置換基で置き換えてもよく、式中、TおよびUは独立して、-NR-、-O-、-CRR’-、または単結合であり、qは、0~3の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-A-(CH2)r-B-の置換基で置き換えられ得、式中、AおよびBは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-、または単結合であり、rは、1~4の整数である。そのようにして形成された新しい環の単結合のうちの1つは、任意選択的に、二重結合で置き換えてもよい。あるいは、アリール環、ヘテロアレーン環、またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式<-(CRR’)s-X-(CR”R’”)d-の置換基で置き換えてもよく、式中、sおよびdは独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR’-である。置換基R、R´、R´´、およびR´´´は、好ましくは独立して、水素または置換もしくは非置換(C1~C6)アルキルから選択される。これらの用語は、例示的な「アリール基置換基」と考えられる基を包含し、それは、例示的な「置換アリール」「置換ヘテロアレーン」および「置換ヘテロアリール」部分の成分である。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「アシル」という用語は、カルボニル残基、C(O)Rを含有する置換基を表している。Rの例示的な種としては、H、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「縮合環系」という用語は、少なくとも2つの環を意味し、各環は、別の環と共通の少なくとも2個の原子を有する。「縮合環系」は、芳香環ならびに非芳香環を含み得る。「縮合環系」の例は、ナフタレン、インドール、キノリン、クロメンなどである。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)、ホウ素(B)およびリン(P)が含まれる。
【0053】
記号「R」は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0054】
本明細書に開示される化合物はまた、かかる化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含有することもできる。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識することができる。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0055】
「塩(複数可)」という用語には、本明細書に記載の化合物に見出される特定の配位子または置換基に応じて、酸または塩基の中和によって調製された化合物の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有するとき、塩基付加塩は、かかる化合物の中性形態を、純粋なまたは好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることによって、得ることができる。塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸一水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸一水素酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸から誘導される酸付加塩、ならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒性の有機酸から誘導される酸付加塩、が挙げられる。本発明のある特定の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換させることを可能にする塩基官能基および酸官能基の両方を含有する。塩の水和物も含まれる。
【0056】
「-COOH」は、この用語が使用される場合、-C(O)O-および-C(O)O-X+を任意選択的に含むことを意味しており、式中、X+はカチオン性対イオンである。同様に、式-N(R)(R)を有する置換基は、-N+H(R)(R)および-N+H(R)(R)Yを任意選択的に含むことを意味しており、式中、Y-はアニオン性対イオンを表している。発明の例示的なポリマーは、プロトン化カルボキシル部分(COOH)を含む。発明の例示的なポリマーは、脱プロトン化カルボキシル部分(COO-)を含む。発明の様々なポリマーは、プロトン化カルボキシル部分および脱プロトン化カルボキシル部分の両方を含む。
【0057】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に示されない場合、各中心は独立して、R配置またはS配置またはそれらの混合物であり得ることが理解される。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であっても、立体異性体混合物であってもよい。加えて、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生成する1つ以上の二重結合(複数可)を有する本明細書に記載の任意の化合物において、各二重結合は独立して、EまたはZであってもよく、それらの混合物であってもよい、ことが理解される。同様に、記載した任意の化合物において、すべての互変異性形態も含まれることが意図されていることが理解される。
【0058】
以下は、本開示の特定の実施形態の実施例である。実施例は、例示目的のみのために提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0059】
III.組成物
本開示の一態様は、金属-有機骨格を含む吸着材料を提供する。金属l-有機骨格は、(i)複数の金属カチオンおよび(ii)複数のポリトピック有機リンカーを含む。吸着材料は、複数の配位子をさらに含む。いくつかの実施形態では、吸着材料は、0.3以下
:1(例えば0.25
:1、4つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子を意味する)、0.4以下
:1(例えば0.35
:1)、0.5以下
:1(例えば、0.45
:1)、0.6以下
:1(例えば、0.50
:1、2つの金属部位あたり1つのポリアミン配位子を意味する)、(0.7以下
:1(例えば、0.6
:1)、0.7以下
:1(例えば、0.65
:1)、(0.8以下
:1(例えば0.75
:1、4つの金属部位あたり3つのポリアミン配位子を意味する)、または(0.9以下
:1(例えば0.85
:1)のポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミン配位子:金属-有機骨格金属カチオン積載比は、上記に参照されない何らかの比である。複数のポリアミン配位子中のそれぞれのポリアミン配位子は以下を含む:
【化5】
この式において、X
1およびX
2はそれぞれ、複数の金属カチオン(例えば、Mg、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、またはZn)中の第1および第2の金属カチオンである。さらに、Yは、
【化6】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2は、それぞれ独立して、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、またはセレンである。値i、j、k、x、y、およびzという値は、それぞれ独立して、0、1、または2であり、mは2、3、または4である。各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、およびR
18の各例が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アーリオキシ(arlyoxy)、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシである。
【0060】
いくつかの実施形態では、複数のポリアミン配位子の少なくとも20パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも80パーセント、または少なくとも98パーセントは、それぞれ(i)複数の金属カチオン中の第1の金属カチオンに対するそれぞれのポリアミン配位子の第1のアミンによって付加されたアミン、および(ii)金属-有機骨格の複数の金属カチオン中の第2の金属カチオンに対するそれぞれのポリアミン配位子の第2のアミンによって付加されたアミンである。
【0061】
いくつかの実施形態では、Yは、
【化7】
(a)iおよびjはそれぞれゼロであるか、(b)iは1であり、jはゼロであるか、(c)iは1であり、jは1であるか、または(d)iは1であり、jは2である。
【0062】
iおよびjがそれぞれゼロであるこのような実施形態の例は次のとおりである。
【化8】
ジエチレントリアミンの場合、Z
1、Z
2、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、iはゼロであり、jはゼロであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10はそれぞれ水素である。
【0063】
iが1であり、jがゼロであるこのような実施形態の例は次のとおりである。
【化9】
N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Q
1およびQ
2はそれぞれ炭素であり、iは1であり、jはゼロであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、およびR
12はそれぞれ水素である。
【0064】
iが1であり、jが1であるこのような実施形態の例は次のとおりである。
【化10】
ビス(3-アミノプロピル)アミンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、iは1であり、jは1であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11R
12、R
13、およびR
14はそれぞれ水素である。
【0065】
iが1であり、jが2であるこのような実施形態の例は次のとおりである。
【化11】
N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、iは1であり、jは2であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、およびR
12はそれぞれ水素であり、R
13およびR
14の2つの例の各例は水素である。
【0066】
あるいは、いくつかの実施形態では、Yは、
【化12】
kおよびxはゼロであり、mは2または3である。そのような実施形態の例は、
【化13】
トリエチレンテトラミンの場合、Z
1、Z
2、Z
4、Q
1およびQ
2はそれぞれ炭素であり、kはゼロであり、xはゼロであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10はそれぞれ水素であり、R
13およびR
142つの例の各例は水素であり、mは2である。そのような実施形態の別の例は、
【化14】
N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンの場合、Z
1、Z
2、Z
4、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、kはゼロであり、xはゼロであり、mは3であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10はそれぞれ水素であり、R
13およびR
14の3つの例の各例は水素である。
【0067】
あるいは、いくつかの実施形態では、Yは、
【化15】
kおよびxはそれぞれ1であり、mは2、3、または4である。そのような実施形態の例は、
【化16】
1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、kは1であり、xは1であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ水素であり、R
13およびR
14の2つの例の各例は水素であり、mは2である。そのような実施形態の別の例は、
【化17】
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、kは1であり、xは1であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ水素であり、R
13およびR
14の3つの例の各例は水素であり、mは3である。そのような実施形態の別の例は、
【化18】
N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタンの場合、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、kは1であり、xは1であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ水素であり、R
13およびR
14の4つの例の各例は水素であり、mは4である。
【0068】
あるいは、いくつかの実施形態では、Yは、
【化19】
yおよびzはそれぞれ2である。そのような実施形態の例は、
【化20】
テトラエチレンペンタミンの場合、Z
1、Z
2、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2はそれぞれ炭素であり、yは2であり、zは2であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
15、R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ水素であり、R
11、R
12、R
13、およびR
14の2つの例の各例は水素である。
【0069】
Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Q1、およびQ2は、それぞれ独立して、炭素である。いくつかの実施形態では、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、およびR18の各例は、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換n-アルキル、または置換もしくは非置換分岐鎖アルキルである。いくつかのそのような実施形態では、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、およびR18の各例は、Hである。
【0070】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート
(dotpdc4-)、2,5-ジオキシベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、または3,3’ジオキシド-ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-)である。
【0071】
いくつかの実施形態では、複数のポリアミン配位子中の各ポリアミン配位子は、ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、またはテトラエチレンペンタミンである。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数のポリアミン配位子の金属-有機骨格への積載は、5パーセント~500パーセント、20パーセント~250パーセント、25パーセント~200パーセント、80パーセント~120パーセント、90パーセント~110パーセント、95パーセント~105パーセント、または98パーセント~102パーセントである。本明細書で使用する場合、100パーセントの積載は、骨格内の2つの金属あたり1つのポリアミン分子を表す。
【0073】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、単一段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、単一段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。
【0074】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、大気圧で純粋なCO2下で段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態において、吸着材料は、大気圧で純粋なCO2下で段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、大気圧で純粋なCO2下で単一段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、大気圧で純粋なCO2下で単一段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。
【0075】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、広範囲のCO2分圧(例えば、CO2が唯一のガスまたは混合ガスの一部である場合)において、広範囲の全大気圧(例えば、0.1気圧~10気圧)にわたって段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では脱着材料は、広範囲のCO2分圧(例えば、CO2が唯一のガスまたは混合ガスの一部である場合)において、広範囲の全大気圧(例えば、0.1気圧~10気圧)にわたって段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、広範囲のCO2分圧(例えば、CO2が唯一のガスまたは混合ガスの一部である場合)において、広範囲の全大気圧(例えば、0.1気圧~10気圧)にわたって単一の段差形状のCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では脱着材料は、広範囲のCO2分圧(例えば、CO2が唯一のガスまたは混合ガスの一部である場合)において、広範囲の全大気圧(例えば、0.1気圧~10気圧)にわたって単一の段差形状のCO2脱着プロファイルを示す。
【0076】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、140℃超においてCO2吸着段差を含むCO2吸着プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、吸着材料は、160℃超においてCO2吸着段差を含むCO2吸着プロファイルを示す。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、下式を有する(dobpdc
4-)の類似体である:
【化21】
v式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24は、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、下式を有する(dotpdc
4-)の類似体である:
【化22】
式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R、およびR
28は、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、下式を有する(pc-dobpdc
4-)の類似体である:
【化23】
式中、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、およびR
24は、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、下式を有し、
【化24】
式中、R
19、R
20、R
21、R
23、R
24,およびR
25は、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換メチルから選択され、R
22は、置換もしくは非置換アリール、ビニル、アルキニル、および置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0081】
IV.合成方法
本開示の別の態様は、複数のポリアミン配位子が金属-有機骨格上のグラフトされる、吸着材料を合成する方法を提供する。金属-有機骨格は、複数の金属カチオンおよび複数のポリトピック有機リンカーを含む。グラフトすることは、溶媒で希釈されたポリアミン配位子を含む溶液に一定量の金属-有機骨格を曝露して、それによって非活性化吸着材料を形成することを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、金属-有機骨格を任意選択的に最初に加熱し(例えば、真空条件下またはN2またはArを12時間流して160℃で)、吸着水および配位水または他の配位溶媒を除去する方法によって調製される。次に、金属-有機骨格は、ポリアミンで充填された無水有機溶媒を含む溶液に溶解され、それによって非活性化吸着材料を形成する。いくつかの実施形態では、溶液は、無水有機溶媒に対して20%(v/v)のポリアミンである。いくつかの実施形態では、溶液は、無水有機溶媒に対して10%(v/v)~40%(v/v)のポリアミンである。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、(v/v)基準ではなく当量(w/v)基準で無水有機溶媒に溶解される。いくつかの実施形態では、結果として得られた生成物は、窒素保護下で3時間以上乾燥される。
【0083】
いくつかの実施形態では、各ポリアミン配位子は下式を有し、
【化25】
式中、Yは、
【化26】
Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Q
1、およびQ
2は、それぞれ独立して、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、硫黄、またはセレンであり、i、j、k、x、y、およびzは、それぞれ独立して、0、1、または2であり、mは2、3、または4である。さらに、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、およびR
18の各例が、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換
アリールオキシ、または置換もしくは非置換ヘテロアリールオキシである。
【0084】
いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、少なくとも165℃の温度でガスの不活性流に供され、それによって吸着材料を活性化する。
【0085】
いくつかの代替実施形態では、非活性化吸着材料は、少なくとも165℃で60℃~80℃の温度で弱配位または非配位溶媒で洗浄され、それによって吸着材料を活性化する。弱配位または非配位溶媒の代表的かつ非限定的な例としては、トルエン、クロロベンゼン、パラフィン、ハロゲン化パラフィンなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
いくつかの代替実施形態では、非活性化吸着材料は、60℃超の温度の真空下に置かれ、それによって吸着材料を活性化する。
【0087】
いくつかの代替実施形態では、非活性化吸着材料は、(i)少なくとも165℃の温度でのガスの不活性流と、それに続く(ii)60℃超の温度で真空下に置かれ、それによって吸着材料を活性化することとの1つ以上のサイクルに供される。
【0088】
いくつかの代替実施形態では、非活性化吸着材料は、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス、またはそれらの混合物が再充填サイクルで使用される複数の排気-再充填サイクルに供され、それによって吸着材料を活性化する。
【0089】
いくつかの代替実施形態では、非活性化吸着材料は、アルゴンまたは窒素などの不活性ガス、またはそれらの混合物が再充填サイクルで使用される、60℃超などの高温下での複数の排気-再充填サイクルに供され、それによって吸着材料を活性化する。
【0090】
いくつかの実施形態では、吸着材料は、120パーセント以下のポリアミン配位子積載を有する場合に活性化されると特徴付けられる。いくつかの実施形態では、複数の金属イオン中の各金属イオンは、Mg、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnである。
【0091】
いくつかの実施形態では、溶媒は無水である。いくつかの実施形態では、溶媒はトルエンである。いくつかの実施形態では、溶媒は、トルエン、メタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ペンタン、2-ブタノン、トリクロロエチレン、メチル-t-ブチルエーテル、ヘプタン、ジエチルエーテル、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、ガスの不活性流は、アルゴンまたは窒素ガス、またはそれらの混合物である。
【0092】
開示された方法では、溶媒和含浸法からの非活性化された吸着材料は、次いで、少なくとも165℃の温度で不活性環境に供され、それによって吸着材料を活性化する。いくつかのそのような実施形態では、活性化吸着材料は、120パーセント以下のポリアミン配位子積載を有する。本明細書で使用する場合、100パーセントの積載は、骨格内の2つの金属あたり1つのポリアミン分子を表す。いくつかの実施形態では、活性化吸着材料は、110パーセント以下のポリアミン配位子積載を有する。いくつかの実施形態では、湿式含浸法からの非活性化吸着材料は、少なくとも190℃、少なくとも210℃、または190℃~250℃の温度で不活性環境に供される。
【0093】
いくつかの実施形態では、非活性化吸着材料は、少なくとも165℃の温度で、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、または少なくとも12時間、不活性環境に供され、それによって吸着材料を活性化する。
【0094】
V.技術用途
本開示の一態様では、開示された吸着材料に関するいくつかの技術用途を提供する。
【0095】
かかる用途の1つは、石炭煙道ガスなどの発電所排気ガスからの炭素捕捉である。おそらく地球規模の気候変動の一因となっている二酸化炭素(CO2)の大気レベルでの増加は、発電所などの点源からのCO2排出を削減するための新しい戦略の根拠となっている。特に、石炭火力発電所は、世界の人為的エネルギー供給のCO2排出の46%を担っている。参照により本明細書に組み込まれるCO2Emissions from Fuel Combustion Highlights,”2016 Edition,International Energy Agency,Paris,Franceを参照されたい。したがって、周囲圧力および40℃において、石炭煙道ガスから、すなわち、CO2(15~16%)、O2(3~4%)、H2O(5~7%)、N2(70~75%)、および微量不純物(例えば、SO2、NOx)からなるガス流から、炭素を捕捉するための新しい吸着剤の開発に関しては依然として継続した必要性が存在する。参照により本明細書に組み込まれる、Planas et al.,2013,「The Mechanism of Carbon Dioxide Adsorption in an Alkylamine-Functionalized Metal-Organic Framework」,J.Am.Chem.Soc.135,pp.7402-7405を参照されたい。特に、温度スイング吸着プロセスの場合、吸着剤は、次の特性を有するべきである:(a)再生エネルギーコストを最小化するために、最小の温度スイングを有する高い作業容量、(b)石炭煙道ガスの他の成分を超えるCO2に関する高い選択性、(c)煙道ガス条件下でのCO2の高い捕捉率(最適には90%)、(d)湿潤条件下での効果的な性能、および(d)湿潤条件下での吸着/脱着サイクルに対する長期安定性。
【0096】
別のそのような用途は、粗バイオガス、天然ガス、または埋立地ガスなどのバイオガスからの炭素捕捉である。例えば、有機物の分解によって生成されるCO2/CH4混合物であるバイオガスは、従来の化石燃料源に取って代わる可能性のある再生可能な燃料源である。粗バイオガス混合物からのCO2の除去は、この有望な燃料源をパイプライン品質のメタンにアップグレードする最も困難な態様のうちの1つである。したがって、吸着剤を使用して、高い作業容量および最小の再生エネルギーによって高圧CO2/CH4混合物からCO2を選択的に除去することは、エネルギー分野における用途のために天然ガスの代わりにバイオガスを使用するコストを大幅に削減する可能性を有する。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の任意の吸着材料とCO2およびCH4を含むバイオガス、天然ガス、埋立地ガス、または非再生可能ガスを接触させて、バイオガスからCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料、および80%を超える純粋なメタン、90%を超える純粋なメタン、または98パーセントを超える純粋なメタンである残留ガスを生成することを含む。いくつかのこのような実施形態では、本方法は、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分(例えば、吸着材料に結合したCO2の少なくとも50%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも60%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも70%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも80%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも90%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも95%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも99%)を、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して除去する。
【0097】
開示された組成物(吸着材料)を使用して、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分(例えば、吸着材料に結合したCO2の少なくとも50%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも60%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも70%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも80%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも90%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも95%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも99%)を、温度スイング吸着法または真空スイング吸着法を使用して除去することができる。例示的な温度スイング吸着法および真空スイング吸着法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/059527(A1)号に開示されている。
【0098】
本開示の別の態様は、天然ガス煙道ガスなどの煙道ガスからCO2を除去するための方法を提供する。そのような実施形態では、煙道ガスを本開示の任意の吸着材料と接触させて、煙道ガスからCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料を生成し、次いで、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分(例えば、吸着材料に結合したCO2の少なくとも50%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも60%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも70%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも80%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも90%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも95%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも99%)を、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して除去する。
【0099】
本開示の別の他の態様は、天然ガス煙道ガスなどの煙道ガスからCO2を削減するための自動車および飛行機の排出物などの発生源からのCO2寄与に対処するために、大気中の過剰CO2を低減する空気捕捉方法を提供する。いくつかのこのような実施形態では、大気を本開示の任意の吸着材料と接触させて、空気からCO2を可逆的に吸着し、それによってCO2に富む吸着材料を生成し、次いで、CO2に富む吸着材料からCO2の大部分(例えば、吸着材料に結合したCO2の少なくとも50%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも60%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも70%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも80%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも90%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも95%、吸着材料に結合したCO2の少なくとも99%)を、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して除去する。
【0100】
本開示のさらに別の態様は、発生源によって生成された二酸化炭素を隔離する方法を提供する。この方法は、二酸化炭素を本開示の吸着材料に曝露することを含み、それによって、二酸化炭素は、吸着材料に可逆的に隔離される。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料を生成することをさらに含む。
【0101】
本開示のさらに別の態様は、多成分ガス混合物から二酸化炭素を隔離する方法を提供する。いくつかのこのような実施形態では、多成分ガス混合物は、CO2、ならびにN2、H2O、およびO2うちの少なくとも一つを含む。この方法は、多成分ガス混合物を本開示の吸着材料に曝露することを含み、それによって、多成分ガス混合物内の二酸化炭素の少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、または少なくとも80パーセントが吸着材料に可逆的に隔離される。いくつかのそのような実施形態では、本方法は、温度スイング吸着法、真空スイング吸着法、圧力スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、CO2に富む吸着材料を生成することをさらに含む。
【0102】
VI.実施例
本開示では、ポリアミンを制御された方法で金属-有機骨格にグラフトし、複数のM-N結合の存在による熱安定性の向上を可能にしながら、アンモニウムカルバメート鎖の協同形成に必要な構造規則性を維持した。この戦略に従って、表1に示したポリアミンを、1mLのそれぞれのポリアミンおよび4mLのトルエン(20%v/v溶液になる)で充填した20mLのバイアルに約10mgの金属-有機骨格を浸漬することによって、Mg
2(dobpdc)骨格に正常にグラフトされた。
【表1】
【0103】
テトラミン付加試料は、アンモニウムカルバメート形成を介して2等量のCO2を原則的に捕捉でき、より高いCO2吸着能力を可能にするのであるが、本明細書に開示される知見の多くは、同様にペンタアミンおよびトリアミン付加材料に適用する。さらに、M2(dobpdc)ファミリー中の他の金属変異体上、ならびに他の関連骨格上の試験は、IRMOF74-II(M2(pc-dobpdc)(pc-dobpdc4-=3,3’-ジオキシド-ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート))およびM2(dotpdc)(dotpdc4-=4,4”-ジオキシドテルフェニル-3,3”-ジカルボキシレート)は、類似の挙動を示し、式中、Mは、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnである。
【0104】
表2は、合成されたままのテトラミン付加Mg
2(dobpdc)試料の代表的なセットの初期分析をまとめたもので、ポリアミン積載が148%~284%に変動したことを示す。
【表2】
【0105】
200%の積載は、アルキルエチレンジアミンの典型的な結合モードと同様に、ポリアミンとオープン金属部位との比率が1:1であることを示唆している。吸着剤の熱安定性の向上につながる、想定される配位モードと一致して、2つの金属部位ごとに1つのポリアミンが存在することを示唆するため、100%の積載が所望される(
図3)。したがって、合成されたままの試料の積載は最適値よりも高くなった。ただし、熱重量分析装置(TGA)でこれらの合成されたままの試料を乾燥N
2下で十分に高い温度に加熱して、弱く結合したアミンを揮発させることによって、100%の所望の積載を得ることができた(
図4)。任意の特定の理論に限定するつもりはないが、特定の温度に達した後、ポリアミンの半分は揮発によって除去され、残りの半分は2つの金属部位に配位し、熱的に除去するにはより高い温度が必要であると仮定する。
【0106】
熱重量分析装置のデータを使用して、Mg
2(dobpdc)の多くのトリアミンおよびテトラミン付加変異体に対して100%のポリアミン積載を達成するために、特定の活性化温度を容易に特定した。さらに、等構造骨格Zn
2(dobpdc)の単結晶X線回折により、ポリアミンがEMM-53(Zn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Zn
2(dobpdc))およびEMM-53(3-3-3-Zn)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン-Zn
2(dobpdc))中のab平面における複数の金属部位に配位し(
図5および6)、当初想定されていた配位モードを支持する強力な証拠を提供することが明らかになった。
【0107】
対応するアルキルエチレンジアミンと同様に、カルバミン酸アンモニウム鎖の形成を介して、CO
2の協同吸着を依然として可能にするはずであるように(
図7)、ここで説明するポリアミン付加骨格内の個々の原子の位置は重要である。これは、多くのタイプの吸着/脱着プロセスに必要とされる高い熱安定性を維持しながら、CO
2の望ましい段差形状吸着がこれらの材料で起こることを可能にするはずである。この目的のために、熱重量分析によるMg
2(dobpdc)のポリアミン付加変異体のCO
2等圧線の評価は、段差形状のCO
2吸着/脱着が代表的な一連のこれらの吸着剤で保持されることを示す(
図8~12)。したがって、ポリアミンをグラフト化した後、高温で活性化する戦略は、段差形状の吸着/脱着プロファイルを持つCO
2吸着剤を調製するのに一般的である。この活性化は、ポリアミンが好ましい配列に再配列するアニーリングプロセスである可能性が高く、このようなアニーリングプロセスは、高温溶媒処理を通しても達成できる。
【0108】
EMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))は、ほぼ100%のテトラミン積載で正常に調製され、純粋なCO
2下でのCO
2捕捉について試験された(
図8)。この試料は、協同メカニズムを示唆する段差形状のCO
2捕捉を示す。興味深いことに、EMM-53(2-2-2)には2つの異なる段差があり、高温の段差は、中程度に鋭く、約130℃で発生することが分かった。低温段差はより広く、約60℃で発生した。トリエチレンテトラミンの積載が100%であることを考慮すると(核磁気共鳴による消化された骨格を分析することによって確認されるように)、高温の段差はテトラミンあたり1つのCO
2分子のCO
2捕捉能力に到達した。低温段差の後、試料はテトラミンあたり2つのCO
2分子のCO
2捕捉能力に到達した。これらのデータは、わずかに異なる温度で形成する単一のテトラミンに対して、2セットのアンモニウムカルバメート鎖の形成を示すと仮定する。EMM-53(2-2-2)のように、EMM-53(2-3-2)(N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))もまた、2段差のCO
2吸着プロファイルを示す(
図9)。高温段差は130℃で発生し、テトラミンあたり1つのCO
2分子のCO
2積載容量に到達する。低温段差は80℃で発生し、テトラミンあたり2つのCO
2分子の総CO
2積載容量に到達した。
【0109】
吸着剤EMM-53(3-2-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,2-エチレンジアミン-Mg
2(dobdpc))およびEMM-53(3-3-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))も、純粋なCO
2下でのCO
2捕捉について評価した(
図10および11)。両方の吸着剤は、段差形状のCO
2捕捉を表示する。吸着剤EMM-53(3-2-3)は、それぞれ140℃および120℃で2つの段差を示した。加えて、EMM-53(3-3-3)は、160℃で単一のCO
2吸着段差を示し、これまでに観察された最高の段差温度を有するテトラミンになる。これは、この材料が煙道ガスまたは空気から低CO
2の分圧を除去するのに非常に効果的であるべきことを示唆している(高CO
2吸着段差温度は低CO
2吸着段差圧力に対応するため)。
【0110】
加えて、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))は、段差形状のCO
2吸着を示す(
図12)。高温段差は、150℃の温度で発生し、テトラミンあたり1CO
2未満の容量に到達する。低温段差は約130℃で発生し、高温段差よりもわずかに低く、各テトラミンの2つのCO
2分子を考慮すると理論上の最大CO
2容量に近づく。EMM-53は、高温および高CO
2容量で急激な段差を示すため、天然ガス煙道ガス、および空気などの低分圧流からCO
2を除去するための非常に有望な吸着剤である(
図13~17を参照)。
【0111】
N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、およびN-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタンなどのトリアミンは、Mg
2(dobpdc)(EMM-53(3-2)、EMM-53(3-3)、およびEMM-53(3-4))に付加され、約100%の積載に活性化される。Mg
2(dobpdc)に付加されたこれらの代表的なトリアミンは、トリアミンあたり約1つのCO
2分子の容量まで段差形状のCO
2吸着を示す(
図18~20)。この挙動は、トリアミンが骨格内のトリアミンごとに1セットのアンモニウムカルバメート鎖のみを形成できるためと考えられる。ペンタミン、テトラエチレンペンタミンも、Mg
2(dobpdc)(EMM-53(2-2-2-2)に正常に付加され、段差形状のCO
2吸着が150℃~かなり高い容量(
図21)までの高温で開始することが観察され、低分圧流からのCO
2の除去に効果的であるべきことを示唆している。
【0112】
代表的なテトラミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、およびN,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタンのセットは、Mg
2(pc-dobpdc)(EMM-55(2-2-2)、EMM-55(2-3-2)、およびEMM-55)、ならびにMg
2(dotpdc)(EMM-54(2-2-2)、EMM-54(2-3-2)、およびEMM-54)に正常に付加された。これらの関連する骨格に付加されたテトラミンの分解プロファイルは、Mg
2(dobpdc)骨格上のものと同様の配位モードを示唆した。Mg
2(pc-dobpdc)骨格では、3つの代表的なテトラミンすべてで約100%の積載が得られ、段差形状のCO
2吸着が観察された(
図22)。Mg
2(dotpdc)がMg
2(dobpdc)と比較して、より大きな細孔環境を有しているが、約100%のテトラミン積載は、依然として代表的テトラミンの全てで達成され、段差形状CO
2捕捉は、EMM-54上で観察された(
図23)。トリエチレンテトラミンおよびN,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンは、おそらくアンモニウムカルバメート鎖を形成するCO
2の挿入を制限するより大きな細孔環境および短いポリアミン長に起因して、この骨格上に段差形状のCO
2捕捉を示さなかった(
図24)。Mg
2(dobpdc)ファミリー中の他の金属変異体におけるポリアミン挙動を試験するために、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミンおよびN,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタンは、Mn
2(dobpdc)(EMM-53(3-3-3-Mn)およびEMM-53(Mn))に付加され、段差形状のCO
2吸着が観察された(
図25)。これらの結果は、ポリアミンが他の骨格で動作し、Mg
2(dobpdc)骨格で見られるものと同様の挙動を示すことを示唆している。
【0113】
これらのポリアミン付加金属-有機骨格の安定性を評価するため、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))上でサイクリング試験を行った。サイクリング試験は、吸着および脱着の両方について、純粋なCO
2下で実施した(
図26)。N
2下での最初の活性化後、試料を30℃に冷却し、次いで、180℃に加熱した後、冷却/加熱サイクルを何度も繰り返した。CO
2容量は、第1のサイクル後にわずかに減少したが、多くのジアミン付加金属-有機骨格とは異なり、容量は残りの6サイクルを通して一定のままであった(
図27)。加えて、EMM-53は、湿潤条件下で高いCO
2吸着段差温度を保持する(
図28)。この吸着剤は、流れる湿潤CO
2下で180℃の温度で12時間保持された場合でも、有意なポリアミン損失を示さない(
図29)。最後に、135℃の蒸気下に3時間放置した後、この材料上でCO
2吸着能力が保持された(
図30)。蒸気下でのこのテトラミン付加材料の安定性は、有利な脱着方法として蒸気を使用する可能性を示唆している。したがって、このテトラミンを2つの別個の金属部位にグラフトすることによって生じる安定性の向上により、それは温度スイング吸着プロセスに非常に有望な吸着剤となる。
【0114】
図31は、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のために湿潤サイクリングを示し、吸着は、約8分間60℃で湿潤4%CO
2行い、脱着は、約8分間135℃で湿潤N
2で行った。図は、CO
2の処理能力がサイクリング全体でかなり安定しており、サイクリング後のポリアミン積載が100%であったことを示す。
【0115】
図32は、5および12時間の蒸気下で処理した後に採取したEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン<-Mg
2(dobpdc))のための等圧線を示す。純粋なCO
2等圧線は、吸着が実線で、脱着が点線で示されている。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、水平の点線3252および点線3254は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0116】
図33は、75℃でのEMM-53(3-2)(N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3302および3304は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0117】
図34は、75℃でのEMM-53(3-3)(ビス(3-アミノプロピル)アミン<-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3402および3404は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0118】
図35は、75℃でのEMM-53(3-4)(N-(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3502および3504は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0119】
図36は、75℃でのEMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3602および3604は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0120】
図37は、75℃でのEMM-53(3-2-3)(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,2-エチレンジアミン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3702および3704は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0121】
図38は、100~120℃の範囲の温度でのEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のCO
2吸着等温線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線3852および3854は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0122】
図39は、Mg
2(dobpdc)のジアミン付加変異体中のCO
2吸着のための-Δh
吸着と-Δs
吸着との間の相関のプロット上の低圧段差(3902)および高圧段差(3094)のための吸着のEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))の微分エンタルピーおよび微分エントロピーを示す。
【0123】
図40は、x軸に絶対圧(
図40A)および相対圧(
図40B)を示して、30℃、40℃、50℃、および60℃で、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のH
2O吸着(黒丸)および脱着(白丸)の等温線を示す。
【0124】
図41は、乾燥N
2(4106)、乾燥CO
2(4108)、およびシミュレートされた湿潤CO
2(4110)の雰囲気下、EMM-53(2-2-2)(トリエチレンテトラミン-Mg
2(dobpdc))の赤外線スペクトルを示す。CO
2吸着時の診断C=O(1650~1700cm
-1)およびC-N(1320~1340cm
-1)ストレッチは、灰色で網掛けされている。
【0125】
図42は、乾燥N
2(4206)、乾燥CO
2(4208)、およびシミュレートされた湿潤CO
2(4210)の雰囲気下、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))の赤外線スペクトルを示す。CO
2の吸着時の診断C-N(1320~1340cm
-1)ストレッチは、灰色で網掛けされている。
【0126】
図43は、CO
2雰囲気で(4304)、蒸気での処理後(4306)に投与されたEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))の赤外線スペクトルを示す。CO
2の吸着時の診断C-N(1320~1340cm
-1)ストレッチは、灰色で網掛けされている(4302)。
【0127】
図44は、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))(排気され(4302)、1バールのCO
2で投与した(4304))のための300Kでの粉末x線回折パターン(λ=0.45236Å)である。
【0128】
図45は、40℃でのEMM-53(N,N’-Bis(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のCO
2、CH
4、O
2、およびN
2吸着等温線を示す。他のガスに対するCO
2の選択性がさらに示されている。
図45に示すように、EMM-53は、40℃で、100ミリバール超のCO
2圧力において、3ミリモル/g超のCO
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのN
2圧力において、0.25ミリモル/g未満のN
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのO
2圧力において、0.25ミリモル/g未満のO
2を吸着し、100ミリバール~1000ミリバールのCH
4圧力で0.25ミリモル/g未満のCH
4を吸着する。
【0129】
図46は、100℃で12時間の気流下で処理する前(4602)および後(4604)に採取したEMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン<-Mg
2(dobpdc))のための吸着等圧線を示す。各ポリアミンは、2つのCO
2分子および1つCO
2分子を捕捉することができれば、線4652および4654は、それぞれ理論的CO
2取り込みを表す。
【0130】
図47は、乾燥30sccmの下、約1バールでシミュレート天然ガス、煙道ガス(N
2中4%CO
2)および60~125℃の範囲の外側カラム温度で、EMM-53(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン-Mg
2(dobpdc))のためのCO
2破過プロファイルを示す(線4702、4704、および4706)。
【0131】
結論
本明細書に記載した実施例および実施形態は、単に例示を目的とし、それを踏まえた様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および権限ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。