(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】平面コイルアセンブリの製造方法及びこれを備えたセンサーヘッド
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20220922BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20220922BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220922BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01F41/04 C
G01L3/10 303Z
H01F17/00 D
H01F17/04 F
(21)【出願番号】P 2020555805
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059162
(87)【国際公開番号】W WO2019197500
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102018108869.8
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018114785.6
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516181424
【氏名又は名称】トラファグ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRAFAG AG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 11, CH-8608 Bubikon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェルゼンツ,アナトル
(72)【発明者】
【氏名】リースリング,ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】シュヴィエルツ,セバスチャン
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0302967(US,A1)
【文献】特開2010-192889(JP,A)
【文献】特開2013-138146(JP,A)
【文献】特開2013-058755(JP,A)
【文献】特開2017-199766(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016122172(DE,A1)
【文献】特開2011-082371(JP,A)
【文献】特開2008-141203(JP,A)
【文献】特開2004-212375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L3/00-G01L3/26
H01F41/00-H01F1/04
H01F41/08
H01F41/10-H01F41/10
H01F17/00-H01F21/12
H01F27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の平面コイルユニット(10)が重ね合わされた平面コイルアセンブリ(32)を製造するための
製造方法であって、nは1より大きい自然数であり、下記a)及びb)を含
み、ステップa)は下記のステップa6)~a7)及びa10)を含み、下記d)及び下記6.1~6.3のすべてを特徴とする製造方法。
a)コンピュータ支援製造により、電気絶縁材料から作られた厚みd
i,IMの絶縁材料層(14)の上に、導電体から作られて平面コイル厚さd
i,PSを有する少なくとも1つの平面コイル(12)を製造することによって、i番目の平面コイルユニット(10)を作成する。ここで、iは1からnに等しい。
b)平面コイル(12)同士の間に絶縁材料層(14)を挟み込むようにして、平面コイルユニット(10)を積層して配置する。
ここで、厚みd
i,PSおよびd
i,IMは、下式を満たすように選択される。
a6)平面コイルユニット(10)ごとの、絶縁材料層(14)上への少なくとも1つの平面コイル(12)のコンピュータ支援製造。ここでの絶縁材料は、プリント回路基板のベース材料、プリプレグ層、及び合成樹脂材料を含む、絶縁材料の群から選択される。
a7)互いに分離された複数のコイルトラックを有する少なくとも1つの平面コイル(12)の製造。
a10)マルチファイラー(多重巻き)コイル(20)における、入れ子になったコイル(20a)の一方は、磁気発生器コイルとして使用し、他方は、測定コイルとして使用する。
d)平面コイルユニット(10)における重ね合わされた平面コイル(12)の中心を通る少なくとも1つの貫通開口部(26)を形成する。
6.1 少なくとも1つの貫通開口部(26)にて、少なくとも1つの貫通接続(24)を使用して、重ね合わされた平面コイル(12)を電気的に接続する。
6.2 磁束集束器を少なくとも1つの貫通開口部(26)に挿入する。
6.3 ステップa)の前、および/または、ステップb)の前またはステップb)の後に、絶縁材料層(14)が貫通開口部(26)の各領域に備えられるように、ステップd)を実行する。
【請求項2】
n個の平面コイルユニット(10)が重ね合わされた平面コイルアセンブリ(32)を製造するための製造方法であって、nは1より大きい自然数であり、下記a)及びb)を含み、ステップa)は下記のステップa6)~a7)及びa9)を含み、下記d)及び下記6.1~6.3のすべてを特徴とする製造方法。
a)コンピュータ支援製造により、電気絶縁材料から作られた厚みd
i,IM
の絶縁材料層(14)の上に、導電体から作られて平面コイル厚さd
i,PS
を有する少なくとも1つの平面コイル(12)を製造することによって、i番目の平面コイルユニット(10)を作成する。ここで、iは1からnに等しい。
b)平面コイル(12)同士の間に絶縁材料層(14)を挟み込むようにして、平面コイルユニット(10)を積層して配置する。
ここで、厚みd
i,PS
およびd
i,IM
は、下式を満たすように選択される。
a6)平面コイルユニット(10)ごとの、絶縁材料層(14)上への少なくとも1つの平面コイル(12)のコンピュータ支援製造。ここでの絶縁材料は、プリント回路基板のベース材料、プリプレグ層、及び合成樹脂材料を含む、絶縁材料の群から選択される。
a7)互いに分離された複数のコイルトラックを有する少なくとも1つの平面コイル(12)の製造。
a9)互いに軸対称または点対称に配置された、平面コイルユニットごとの、少なくとも第1、第2、第3および第4の測定平面コイルと、中央の磁気発生器平面コイルとの製造。
d)平面コイルユニット(10)における重ね合わされた平面コイル(12)の中心を通る少なくとも1つの貫通開口部(26)を形成する。
6.1 少なくとも1つの貫通開口部(26)にて、少なくとも1つの貫通接続(24)を使用して、重ね合わされた平面コイル(12)を電気的に接続する。
6.2 磁束集束器を少なくとも1つの貫通開口部(26)に挿入する。
6.3 ステップa)の前、および/または、ステップb)の前またはステップb)の後に、絶縁材料層(14)が貫通開口部(26)の各領域に備えられるように、ステップd)を実行する。
【請求項3】
下記c)を特徴とする請求項1
または2に記載の
製造方法。
c)平面コイルユニット(10)における重ね合わされた複数の平面コイル(12)を電気的に接続することで
、少なくとも1つの磁気コイルを形成する。
【請求項4】
ステップb)において、厚さd
i,IMを有する単一の絶縁材料層(14)のみが、いずれの平面コイル(12)同士の間にも配置される、請求項1
~3のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項5】
磁場を発生させるための発電コイルと、測定体に誘起される磁場の変化を測定するための少なくとも第1および第2の測定コイルとを含む、トルクまたは応力センサー用のセンサーヘッドを製造する方法であって、磁気発生器コイルおよび測定コイルを製造するために、請求項1~
4のいずれかに記載の方法を実行することを含む
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の平面コイルユニットが積層されて配置された平面コイルアセンブリを製造する方法に関する。本発明はまた、平面コイルアセンブリを製造する方法を実施することによって、トルクセンサー用または応力センサー用のセンサーヘッドを製造するプロセスに関する。最後に、本発明は、そのような方法によって得られるセンサーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は、磁場の変化を捉えることによってシャフトのトルクを測定することができる、トルクトランスデューサないしはトルクセンサーのためのセンサーヘッドについての特に有利な製造に関する。磁場の変化に基づいてシャフトのトルクを検出する、このようなトルクセンサー、およびその科学的根拠は、下記の文献D1~D9(非特許文献1、及び特許文献1~8)に記載されている。
【0003】
特に、D4(DE 30 31 997 A1;特許文献3)に記載されているトルクトランスデューサの設計は、シャフトやその他の測定ポイントのトルクを測定するのに特に効果的であることが証明されています。
【0004】
このような応力センサーまたはトルクセンサーのためのセンサーヘッドを製造するのに特に有利な方法は、下記の文献D10(特許文献9)に記述され示されている。
【0005】
この文献によると、磁場を生成するための発生器コイル、ならびに磁場の変化を測定するための測定コイルは、積層されて配置され、ビアホールないしはスルーホールを通じて互いに接続された複数の平面コイルによって形成される。したがって、文献D10(特許文献9)は、n個の重ね合わされた平面コイルユニットを含む平面コイルアセンブリを製造するための方法を記載している。ここで、nは、1より大きい自然数であり、この方法は、ステップa)及びb)を含む。
【0006】
a)コンピュータを用いて、電気絶縁材料から作製された厚みdi,IMの絶縁材料層の上に、導電体から作製された、平面コイル厚さdi,PSを有する少なくとも1つの平面コイルを製造することにより、i番目の平面コイルユニットを作成する。ここで、iは1からnに等しい。
【0007】
b)平面コイル同士の間に絶縁材料層を挟み込むようにして、平面コイルユニットを積層して配置する。
【0008】
平面コイルアセンブリ―を作成する方法は、下記の文献D11~13(特許文献10~12)からも知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】D1: HINZ, Gerhard; VOIGT, Heinz; BOLL, R.; OBERSHOTT, K. J. (publisher):Chapter 4 - Magnetoelastic sensors. In: Sensors: Magnetic Sensors. Weinheim [u. a.]: VCH-Verl.-Ges., 1989 (Sensors: A comprehensive survey; 5). Page 97-152 - ISBN 3-527-26771-9
【特許文献】
【0010】
【文献】D2:US 3 311 818 A
【文献】D3:EP 0 384 042 A2
【文献】D4:DE 30 31 997 A1
【文献】D5:US 3 011 340 A
【文献】D6:US 4 135 391 A
【文献】D7:DE 10 2009 008 074 A1
【文献】D8:WO 2012/152515 A1
【文献】D9:DE 85 11 143 U1
【文献】D10:WO2018 / 019859
【文献】D11:EP 2 107 577 A1
【文献】D12:WO 2010/065113 A1
【文献】D13:WO 2011/138232 A1
【文献】D14:WO 2011/152994 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の特に好ましい実施形態は、可撓性プリント回路基板の使用法およびそれらの用途を提供する。このことについては、特に、文献D14(特許文献13)が引用・参照される。
【0012】
本発明は、トルクセンサーまたは応力センサーのセンサーヘッドとして使用するための平面コイルアセンブリを製造する方法について、低コストで製造しつつ、より正確な測定が可能であるように改善するという課題に基づいている。
【0013】
この課題を解決すべく、本発明は、請求項1の各ステップを含む方法を提供する。さらなる態様によれば、本発明は、さらなる独立請求項にしたがう、平面コイルアセンブリの製造方法を用いてセンサーヘッドを製造する方法を提供する。本発明はまた、そのようなセンサーヘッドの製造方法によって得られるセンサーヘッドを提供する。
【0014】
有利な実施形態は、サブクレームの対象である。
【0015】
一態様によれば、本発明は、n個の重ね合わされた平面コイルユニットを含む平面コイルアセンブリを製造するための方法であって、下記a)及びb)を含む方法を提供する。ここで、nは、1より大きい自然数である。
【0016】
a)コンピュータ支援製造(computer-aided manufacturing; CAM)により、電気絶縁材料から作られた厚みdi,IMの絶縁材料層の上に、導電体から作られて平面コイル厚さdi,PSを有する少なくとも1つの平面コイルを製造することによって、i番目の平面コイルユニットを作成する。ここで、iは1からnに等しい。
【0017】
b)平面コイル同士の間に絶縁材料層を挟み込むようにして、平面コイルユニットを積層して配置する。
【0018】
ここで、厚みd
i,PSおよびd
i,IMは、下式を満たすように選択される。
ここで、
は平面コイルの厚さd
i,PSの総計であり、
は絶縁材料層の厚さd
i,IMの総計である。
【0019】
換言すれば、個々の平面コイルによって形成される少なくとも1つのコイルについての全厚の60%から90%は、導電体材料によって形成されており、これに伴い、全厚の40%から10%のみが絶縁材料によって形成される。
【0020】
好ましくは、この方法は、互いに重ね合わされた、平面コイルユニットの平面コイルを電気的に接続することで、少なくとも1つの磁気コイルを形成することを含む。
【0021】
ステップb)において、厚さdi,IMを有する単一の絶縁材料層のみが、いずれの平面コイル同士の間にも配置されることが好ましい。
【0022】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a1)平面コイルユニットごとの、1つの平面にある複数の平面コイルについてのコンピュータ支援製造。
【0023】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a2)平面コイルユニットごとの、1つの平面にある複数の平面コイルについての対称的なコンピュータ支援製造。
【0024】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a3)互いに対称で相異なる平面コイルユニットの平面コイルについてのコンピュータ支援製造。
【0025】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a4)コンピュータ支援製造により、平面コイルユニットの平面コイルと、複数の平面コイルユニットの平面コイルとを対称的に作成する。
【0026】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a5)少なくとも1つの平面コイルをリソグラフィーで製造することにより、コンピュータ支援製造を実施する。
【0027】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a6)プリント回路基板ベース材料、プリプレグ層、および合成樹脂材料を含む絶縁材料の群から選択される絶縁材料の層の上での、平面コイルユニットごとの、少なくとも1つの平面コイルのコンピュータ支援製造。
【0028】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a7)互いに分離されたいくつかのコイルトラックを有する少なくとも1つの平面コイルを製造する。
【0029】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a8)、互いに点対称に配置された、平面コイルユニットごとの、少なくとも第1、第2、および第3の測定平面コイルと、一つの中央の発生器コイルとを製造する。
【0030】
ステップa)は、以下のステップを含むことが好ましい。
a9)中央の発生器平面コイルと、互いに軸対称または点対称に配置された、平面コイルユニットごとの、少なくとも第1、第2、第3、および第4の測定平面コイルと、中央の発生器平面コイルとを製造する。
【0031】
この方法の特に好ましい実施形態は、以下の特徴を有する。
d)平面コイルユニットにおける重ね合わされた平面コイルの中心を通る少なくとも1つの貫通開口部を作成する。
【0032】
好ましくは、この方法は、以下のステップを含む。
少なくとも1つの貫通開口部に接する少なくとも1つの貫通接続によって、重ね合わされた平面コイルを電気的に接続する。
【0033】
好ましくは、この方法は、以下のステップを含む。
磁束収束器を少なくとも1つの貫通開口部に挿入する。
【0034】
好ましくは、この方法は、以下のステップを含む。
ステップa)の前、および/または、ステップb)の前またはステップb)の後に、絶縁材料層が、貫通開口部の各領域に備えられるように、ステップd)を実行する。
【0035】
さらなる態様によれば、本発明は、トルクセンサー用または応力センサー用のセンサーヘッドを製造するための方法を提供し、このセンサーヘッドは、磁場を生成するための発生器コイルと、被測定体に誘導される磁場の変化を測定するための、少なくとも第1および第2の測定コイルとを含んでおり、発生器コイルおよび測定コイルを製造するための上記の実施形態のいずれかによる方法を実行することを含む。
【0036】
本発明はさらに、そのようなセンサーヘッドの製造方法によって取得可能なセンサーヘッドを提供する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態は、平面コイルアセンブリを製造するための改善された方法を提供する。特に好ましくは、新しいPCBコイル技術が使用される。「PCB」は「プリント基板」の略である。したがって、プリント回路基板技術を用いたコイルを製造方式が特に提供される。
【0038】
好ましくは、平面コイルは、可撓性のプリント回路基板上に製造される。
【0039】
好ましくは、複数の平面コイルは、可撓性プリント回路基板の1つの平面上に一共に製造される。
【0040】
一般的な考え方は、コンピュータ支援製造によってコイルを生産するという考え方は一般的である。コンピュータ支援製造とは、CADデータを使用して直接に生産を行う生産プロセスであると理解される。特に好ましくは、リソグラフィープロセスがこの目的のために用いられるのであり、この際、CADデータから得られるパターンからの露光が、特にはプリント回路基板といった、基材または基板に行われるのであり、このようにして、複数の層が選択的に成膜されるか、または除去される。
【0041】
コンピュータ支援製造により、複数の平面コイルは、大量に、同一の品質とまったく同一の構造を有するように生産することができる。このことは、特には上記の文献D1~D10(非特許文献1、及び特許文献2~9)に従ってセンサーヘッドに使用されるようにして、複数のコイルを同時に使用する場合に、以下でより詳細に説明される利点を有する。
【0042】
例えばD10またはD11(特許文献10または11)から知られているように、プリント回路基板技術で平面コイルアセンブリを製造するための1つの方法は、折り畳みコイルの形態に個々の平面コイルを重ね合わせることを含む。この目的のために、コイルはフレキシブルプリント回路基板上に製造され、次に折りたたまれて、平面コイルが重ね合わされて配置される。その結果、平面コイルの間ごとに、プリント回路基板(PCB)のベース材料で作られた絶縁材料の少なくとも2つの層が存在する。
【0043】
これに対し、本発明によると、次のことが想定されている。すなわち、平面コイルを形成する導電性材料の厚さと、これらの間に挿入される絶縁材料の厚さとの比が、請求項1にて特定されているように予め設定されている。このことから、平面コイルが重ね合わされた領域には、絶縁性材料よりも顕著に多い量の導電材料が備えられる。このことから、特に小さい空間にて、特に高い磁力を発生させることができる。このことは、特には、コンピュータ支援製造によって可能になっている。コンピュータ支援製造により、導電性材料および絶縁性材料の配置を、非常に正確に再現可能であるように予め設定可能である。
【0044】
特に好ましい実施形態では、これに関して、平面コイル同士の間ごとに、絶縁材料の1つの層のみが存在するようになっている。絶縁材料として、例えば、プリプレグベースの電気絶縁材料が差し込まれる。
【0045】
特に好ましいアプローチでは、複数の平面コイルが、層ごとに、1つの平面にて同時に生成され、次に、この層が重ね合わされて平面コイルアセンブリを形成する。特に、このようにして、発生器コイルの層を形成するための第1の平面コイル、第1の測定コイルの層を形成するための第2の平面コイル、および第2の測定コイルの層を形成するための第3の平面コイルが同時に製造される。好ましくは、平面ごとに3つ、4つ、または5つの平面コイルが製造される。このようにして、文献D1~D10(非特許文献1及び特許文献1~9)にて詳細に説明されている種々のコンセプトのセンサーヘッドが、プリント回路基板(PCB)コイル技術を使用して構築されるようにする。したがって、異なるコイルの平面コイルユニットは、1つのプロセスで構造形成されて位置決めされる。製造工程では、コイルのサポート部と、機械的な高精度のホルダー部とが一体に形成される。
【0046】
好ましくは、プロセスは次のステップを含む。
リソグラフィーによる、平面コイルを使用した対称的な構築。
【0047】
コンピュータ支援製造により、特にはリソグラフィーにより、設計による対称性の破れはほとんどない。たとえば、対称的に構築された平面コイルまたは平面コイルの束を相互に接続して、完全にバランスの取れたブリッジ回路を形成することができる。特には、対称をなすように構築された平面コイルユニットを重ね合わせて相互に接続し、Hブリッジ回路を形成することができる。このようにして、非常にバランスの取れたブリッジ回路を構築でき、さらには、小さな信号についても非常に正確な測定が可能になる。手巻きのコイルまたは個別に配置されたコイルは、製造公差に起因する対称性の違いを示し、不均衡なブリッジにつながる可能性がある。
【0048】
好ましくは、コイルの内側(特に平面コイルのらせん状に配置されたトラックの内側)に貫通接続が備えられることで、いずれも重ね合わされている個々の平面コイルを、ひとまとめのコイルに接続する。コイル内でも貫通接続を使用することにより、いわゆる埋め込みビアを回避でき、平面コイルの高い製造コストを回避できる。
【0049】
貫通部または貫通開口部での貫通接続のコンセプトは別個独立の発明であり、請求項1に記載された厚さの特定がなくても請求可能である。
【0050】
好ましくは、文献D10(特許文献9)に好ましい実施形態として記載されているようなアセンブリが想定されている。これによれば、少なくとも1つの発生器コイルが中央に備えられ、その周りに複数の測定コイルが星形に配置されている。好ましくは、発生器の周りでの、1つまたは複数のコイルの点対称の配置構成が想定されている。一実施形態において、センサーヘッドは、コイルアセンブリに関して点対称である。
【0051】
可能な限り薄くコンパクトな平面コイルを製造するために、内層コア間に1つの中間層(例えば、プリプレグ)のみを使用することが特に好ましい。
【0052】
好ましくは、内層コアは、約40μmのオーダーの厚さの絶縁材料の層を有し、その上面および下面に、リソグラフィーでの露光及び表面構造形成が行われた、特には銅といった、導電性材料の層を有する。
【0053】
リソグラフィー処理に続いて、内層コアは、好ましくは、それらの間の絶縁体としてプリプレグ中間層を用いて、相互に正確に合わせつつ積み重ねられる。
【0054】
したがって、重ね合わされた平面コイルユニットの層が生成され、それらは真空プレスでひとまとめにされて積層される。
【0055】
真空プレスで積層した後、中間層は、好ましくは30μmおよび70μmの厚さを有し、好ましくは約50μmのオーダーにある。
【0056】
特に好ましい実施形態では、接点(コンタクト)パッドおよび接点(コンタクト)は非強磁性材料で構成される。特に、接点、接点パッド、および接続、特にはんだ付け接続などは、ニッケルを含まないようにして実現される。ニッケルは磁性を帯びており、したがって磁場を非対称的に方向付けしうるので、構成中にニッケルを使用しないことが好ましい。センサーにおける通常の電気的接触では、通常、ニッケルがパッドに適用され(たとえば、Cu-Ni-Au配置で)、腐食に対して長期的に接続を安定させる。このようなことは、本発明の好ましい実施形態では行われない。さらには、コイルの接触が、非磁性材料を使用して行われる。
【0057】
好ましくは、センサーヘッドは、コイル巻線の周りに、専ら、断続した導体帯線または導体領域を備える。たとえば、コイルの周りにおける銅の領域が断続している。コイル巻線の周りの断続銅導体には、コイルの周りの渦電流が回避されるという利点がある。したがって、好ましくは、渦電流損失を最小限に抑えるべく、コイルの周りには、閉じた導体帯線がない。
【0058】
以下では、本発明の好ましい実施形態およびそれらの利点をより詳細に説明する。
【0059】
本発明は、特に誘導性部分・部材の製造に関する。誘導性部分・部材は、磁場を発生させることを特徴とする。これらのインダクタは、センサーおよびアクチュエータとして、目的に合うように、使用される。
【0060】
磁気環境の変化は、好ましくはセンサーによって記録される。
【0061】
好ましくは、アクチュエータに使用される場合、磁気環境の変化が誘発される。
【0062】
発明の可能な使用の一形態では、2つの用途についても、1つのシステムで実施することができる。この場合、好ましくは、磁気伝達経路の変化を評価する。
【0063】
磁場は、導体ループに印加された電流によって生成される。従前のセンサーヘッドでは、導体ループは、たとえば巻かれたワイヤー線によって形成されていた。本発明では、導体ループは、平面的に、好ましくはプリント回路基板にて、複数の層に形成されて、所望の磁場を生成するための適切なターン数(巻数)を実現する。
【0064】
コンピュータ支援製造の利点は、データによって与えられるコイルの輪郭の決定と、これと結びついた、全体的なパフォーマンスにおける再現性である。たとえば、平面コイルは、プリント回路基板技術を使用して構築される。有利なことに、コイルについてのリソグラフィーの輪郭決定は、全体的な性能の再現性を与える。さらに、プリント回路基板技術を使用して製造された製品は、非常に優れた拡張性・可変適用性(scalability)を有して大量生産ができる。
【0065】
好ましくは、プリント回路基板技術を使用するコイルの設計における、種々の特別な特徴を備えており、これらの特徴は、用途および製造可能性の観点から全体的なパフォーマンスを改善する。
【0066】
平面コイルを重ねて形成するコイルの好ましい設計では、磁気伝導性材料を使用して磁場を強化する。たとえば、フェライトがコイルに挿入される。これらは、典型的には、コイルを通り抜けるように配置される。
【0067】
この目的のために、貫通開口部がコイルに備えられることが好ましい。
【0068】
一方、コイルをプリント回路基板技術で実現する場合、貫通接続には、従前、より大きな領域が必要であった。これにより、巻線に使用できるスペースが小さくなっているのであり、言い換えれば、貫通接続と、場合によって、突き抜けるように配置される、磁場を強化するための磁気伝導性材料は、平面図にて、コイル線の箇所に備えられるコイル線のウィンドウ領域に重大な制限をもたらす。
【0069】
一実施形態では、貫通接続は、磁場を強化するのに使用される磁性導電性材料のための貫通孔からずらして配置される。貫通接続は、好ましくは、磁気伝導性材料のための貫通開口部の壁に沿って延びる。これにより、表面に必要な面積を大幅に削減できる。
【0070】
特に好ましい実施形態では、コイルの構成において特別な対称性が備えられる。このことは、複数の平面コイルについての並列的なコンピュータ支援製造によって特に容易に達成できる。
【0071】
センサー用途またはアクチュエータ用途のコイルの場合、システムを形成するためのコイルの相互接続は、多くの場合、前面にある。この場合、コイルの特に高度な対称性が有利である。特に差動測定用途の場合、測定用途のための測定信号の対称性は前面にある。この場合、設計データ中におけるコイルの幾何学的形状・特徴をマッピングすることによって、測定効果の対称性に対し、事前に影響を与えることができる。
【0072】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態は、以下のステップを備える。
測定効果についての予め設定された対称性に依存するCADデータ処理システムによるコイルの設計。
【0073】
平面コイルにも奥行き(深さ寸法)があるので、ミラー対称性、点対称性、軸対称性に影響を与える可能性がある。
【0074】
したがって、方法の好ましい実施形態は、以下のステップを含む。
平面コイルの設計におけるミラー対称性、点対称性、および軸対称性の少なくとも1つの形式の選択。
【0075】
本発明によれば、そのような対称性は、データに基づく方法により製造されるコイルによって、プロセスに依存せずに確実に実現できる。
【0076】
達成された対称性により、出力信号も非常に狭い帯域に保持される。多くの場合、このようにして初めて、多くの用途で差分実行方法を実現できる。平面コイルは、いずれもが、モノフィラメント構造を持つモノフィラーコイルでありうる。平面コイルの製造、及び、リソグラフィー製造データといった、対応する製造データへのコイルの幾何学的形状・特徴のマッピングにより、バイファイラー(二重巻き)コイルおよび多重フィラメントのコイル(マルチファイラーコイル)をも設計する自由度を実現できる。たとえば、バイファイラーコイルまたは複数のフィラメントを持つコイルを使用して、差動センサーを構築するのに用いることができる。たとえば、複数の差動センサーが、磁気発生器用の複数フィラメントのコイルとして備えられうる。
【0077】
さらに、コイルスタックにおける巻線方向を入れ子(互い違い)にすることにより、磁気残留物を形成することができ、これは、例えば、小さな磁気変化にて、極端なセンサー出力信号に応答する。これにより目立ったフィールドが外部に伝播することなく、距離センサーとして、または、材料センサーとして使用できるセンサーが実現される。
【0078】
この測定は、測定対象とは反対側の磁気基準ターゲットによっても補助されうる。
【0079】
特に好ましい実施形態では、外側表面要素(外側の表面に位置する部分・部材)は、コイルアセンブリの外側または平面コイルの周りにセクター化され、その結果、それぞれのコイルの周りまたはその領域の周りに、閉じた導体ループが形成されない。このような設計の利点については、以下で詳しく説明する。
【0080】
磁場はコイルによって誘導される。磁力線は、コイルの中心から垂直に伸び、外側で閉じているのが特徴である。このことから、外側に位置する表面要素にさえも磁気が浸見込む。交流磁場を使用すると、隣接する導電性領域に渦電流が発生しうるのであり、この渦電流は、実際の磁場に対抗する独自の磁場を形成する。
【0081】
この影響は、外側表面要素を適切にセクター化することによって打ち消すことができる。強力なセクター化(たとえば2つより多い、5つより多い、8つより多い、または10より多いセクターを形成するための、複数の断続部)により、磁場に高周波が発生する。対照的に、閉じた外側表面要素は、高周波挙動を弱める。
【0082】
特に好ましい実施形態の場合、コイルの近くで使用されるすべての材料は、センサーコイルとして使用されるために、それらの磁気的挙動により選択される。特に、接触する導電体材料は、それらが強磁性でないように選択される。たとえば、はんだ付け面としてニッケル-金を使用することは、多くの場合推奨されない。堆積プロセスでのニッケルのアモルファス形成のために、フェライト箔が生じ得るからである。このフェライトにより、予期しない残留磁気が発生し、測定信号にヒステリシスが生じる。このようなヒステリシスは、接触または接続の材料としての強磁性材料を一貫して低減または回避することによって低減または回避することができる。
【0083】
プリント回路基板(PCB)上に製造されたコイル部分・部材の接続を適切に設計することにより、追加のピンまたは接点、またはプラグ/ソケットシステムを用いることなしに行うことも可能である。例えば、接触パッドは、プリント回路基板部材上に直接に備えられる。そのような接触パッドは、例えば、エッジ部に備えられうる。この場合、直角状に、または一つの平面に、特にはメイン平面、またはエッジ面の一つの平面に、備えられうる。一実施形態では、そのような接触パッドは、プリント回路基板部の主たるエッジの切り欠き部(切り取り部)の内部に備えられる。
【0084】
プリント回路基板(PCB)上に製造されたコイル部分・部材に直接に接続することにより、追加のピンや接点、またはその他のプラグ/ソケットシステムを不要にすることもできる。これにより、部分・部材の総数が減るだけでなく、未使用の部分・部材にも障害が発生しないため、システム全体の寿命が延びる。
【0085】
好ましい実施形態においては、接続パッドのところで、追加的に表面領域を仕切ることによって、電気的および機能的な試験のための試験パッドが、追加で予め備えられる。この試験パッドについて、はんだ付け領域では、試験接触が行われていない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】重ね合わされた複数の平面コイルからなる、平面コイルの束ね合わせ(平面コイル束)を形成するための平面コイルのCADプリントアウト(CADイメージ)であり、貫通接続の位置も示されている。
【
図2】別の、特に好ましい実施形態についての
図1と同様のCADプリントアウトである。
【
図4】リソグラフィープロセスの第1のステップで処理された内層コアについての模式図である。
【
図5】リソグラフィープロセスの第2のステップで処理された内層コアについての模式図である。
【
図6】リソグラフィープロセスに従って処理された内層コアの模式図である。
【
図7】コイルを製造するためのさらなるプロセスステップの模式図である。
【
図8】複数のデバイスユニットからなる内層コアの模式図である。
【
図9】内層コアの一つのデバイスユニットについての模式図である。
【
図11a】モノファイラー(一重巻き)およびマルチファイラー(多重巻き)平面コイルのCADプリントアウトについての相異なる実施形態(1)である。
【
図11b】モノファイラー(一重巻き)およびマルチファイラー(多重巻き)平面コイルのCADプリントアウトについての相異なる実施形態(2)である。
【
図11c】モノファイラー(一重巻き)およびマルチファイラー(多重巻き)平面コイルのCADプリントアウトについての相異なる実施形態(3)である。
【
図11d】モノファイラー(一重巻き)およびマルチファイラー(多重巻き)平面コイルのCADプリントアウトについての相異なる実施形態(4)である。
【
図12】応力センサーまたはトルクセンサー用のセンサーヘッドを形成するための誘導性部材を示す、相異なる側からの写真である。この誘導性部材は、複数の平面コイルユニットが積層されて配置された平面コイルアセンブリを含む。
【
図13】さらなる実施形態による、応力センサーまたはトルクセンサーのセンサーヘッドのための誘導性部材についての上方および下方からの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
一実施例について、添付の図面を参照して、以下に、より詳細に説明する。
【0088】
以下には、平面コイルユニット10が重ね合わされた平面コイルアセンブリ32を製造するための方法についての相異なる実施形態が、
図1~7を参照して詳細に説明される。この方法で、複数の平面コイルユニット10が製造される。平面コイルユニット10では、少なくとも1つの平面コイル12、または、好ましくは複数の平面コイル12が、コンピュータ支援製造によって、絶縁材料層14上の1つの平面上に、共に製造される。
【0089】
本発明の特に好ましい構成では、リソグラフィープロセスがコンピュータ支援製造に使用され、基板、特に可撓性プリント回路基板16の表面が、CADデータから生成されたパターンに従って露光される。次に、露光された領域、または露光されなかった領域が、エッチング除去されて、可撓性プリント回路基板16の絶縁材料層14の上に、導電体のパターンとしての平面コイル12を形成する。
【0090】
好ましくは、複数の平面コイル12が、共通の、好ましくは可撓性のプリント回路基板16の上に同時に作成される。このように形成された平面コイルユニット10について、好ましくは機械によって、またCADの助けを借りて積層配置することにより、各平面コイル12は、コンピュータの助けを借りて、正確に位置決めされて重ね合わされる。このようにして、複数の平面コイル12が重ね合わされて形成されたコイル20が形成される。ここで、重ね合わされ平面コイル12のターン(巻線)22は、いずれも、貫通接続24によって互いに接続される。
【0091】
図1は、CADデータからのプリントアウト(イメージ)の第1の例示的な実施形態を示し、平面コイル12の1つの設計、および、絶縁材料層14上の貫通接続24の配置について示している。
【0092】
コイル20の磁場を強化するために、強磁性材料で作られた磁束集束器(図示せず)をコイル20の内部に挿入する。したがって、強磁性材料を受け入れるために、コイル20の内部に貫通開口部26が備えられる。
【0093】
図1に示す実施形態では、外側貫通接続24aはコイル20の外側に備えられ、内側貫通接続24bはコイル20の内側に備えられている。貫通開口部26は、内側貫通接続24bがあるリング部分(リング領域)の内側に備えられている。平面コイル12のターン(巻き線部)22を配置することができる面領域は、外側の貫通接続24aが配置されるリング部分と、内側の貫通接続24bが配置される内側リング部分との間に配置される。ターン22は、コンピュータ支援製造(CAM)によって、残りの中間領域に最適に配置される。その結果、個々のターン22の間には、最小の間隔が残るのであり、ターン22を配置可能な面領域は、導電体18からなる材料でもって最適に覆われる。
【0094】
図2は、
図1と同様の図であり、
図1に示す実施形態よりも好ましい平面コイル12の実施形態を示している。
【0095】
図2に示す実施形態において、少なくとも内側貫通接続24bは、貫通開口部26と平面コイル12との間のリング部分ではなく、貫通開口部26の縁に直接備えられている。したがって、貫通接続24bは、貫通開口部26の内側に延びている。
【0096】
上記に代えて、または上記ととともに、外側貫通接続24aは、平面コイル12の周りの外側リング部分の領域内ではなく、絶縁材料層14の外側に備えられることが想定される。
【0097】
このことにより、平面コイル12のターン22に使用できる表面領域は、
図1の実施形態よりもかなり大きくなる。さらに、貫通開口部の直径について、
図1の実施形態に比べて、平面コイル12のトータルの表面領域を増加させることなく、大幅に大きくすることができる。これにより、コイル20内に大量の強磁性材料を配置することが可能になる。
【0098】
方法の一実施形態において、個々の平面コイルユニット10は、それぞれが、絶縁材料層14とその上に配置された少なくとも1つまたは複数の平面コイル12を、特には
図2の実施形態にしたがって備えており、CADデータに基づくコンピュータ制御下で正確に位置決めして積層される。この積層は、いずれの平面コイル12同士の間にも、単一の絶縁材料層14ののみが備えられるように行われる。この絶縁材料層14は、例えばプリプレグから形成される。
【0099】
リソグラフィープロセスを
図3~6に示す。内層コア40はリソグラフィーで処理される。内層コア40は、通常、エポキシ樹脂と、ガラス布の内層42とを含んでなる。内層コア40の上面側および下面側には、導体材料層44が配置されている。
【0100】
リソグラフィープロセスの第1のステップでは、
図4に示されるように、感光性フィルム46およびフォトマスクフィルム48が、被露光体50の両面を覆うように配置される。
【0101】
その後、被露光体50に露光が行われる。この際、感光性フィルム46は、露光された箇所にて硬化され、一方、感光性フィルム46における露光されなかった箇所は、硬化されないままである。
【0102】
露光に引き続いて、
図5に示すように、フォトマスクフィルム48と、感光性フィルム46の非露光領域が除去される。
【0103】
次のエッチングプロセスにおいて、露出した導体材料44は、通常、アルカリ性溶液を使用して最終的にエッチング除去されるのであり、また、残りの硬化した感光性フィルム46が除去される。
図6に示すように、エポキシ樹脂及びガラス布から形成された層42と、その上配置された導体材料44のパターンとを含む構造52が残る。
【0104】
図7においては、
図6の構造52が複数積層され、ここでは2層が、好ましくは3~15層が積層される。プリプレグ中間層54が上記の構造52の間に広げられて充填される。このように積層された構造52は、最終的にプレスで押し合わされる。このようにして、絶縁材料と導体材料の層が、複数交互に生成される。
【0105】
通常、
図3~8にて示唆されるように、共通の内層コア40上に複数のデバイスユニット56が生成される。これにより、多量の個数までの量産が可能になる。
【0106】
大面積のリソグラフィー処理の後、内層コア40が個々のデバイスユニット56に切断される。個々のデバイスユニット56には、
図9に示すように、通常、複数のコイル20が配置され、好ましくは3つまたは5つのコイル20が配置される。
【0107】
図10は、コイル20を通る断面の写真を示しており、コイル20は、本発明の方法の一実施形態に従って製造されている。貫通開口部26を備えたコイルの中心が左側に示され、個々の平面コイル12、及び、それらの間の絶縁材料を見てとれる。この積層された平面コイル12の束ね合わせは、例えば、キャリア基板として機能するプリント回路基板(剛性のプリント回路基板要素38)の開口部内に配置される。製造は、本明細書に記載のプロセスに従って行うことができる。その結果、
図10に見られるように、平面コイルユニットの層が生成され、それらは重ね合わされて層状に配置される。導電体18から形成された個々の平面コイルユニットの間には、いずれも、絶縁材料の層が備えられ、この絶縁材料の層は、例えば、40~50μmの厚さを有する。
【0108】
本発明によると、コンピュータ支援製造(CAM)によって、常に、正確に同じ具合に平面コイル12を製造し、及び/または、コンピュータ支援積層配置によって、常に、個々の平面コイル12についての相互のシンメトリー性(均整)を達成し、並びに、個々の平面コイル12の間の絶縁材料層を格段に薄くした実施形態を達成する。コンピュータ支援積層配置は、コンピュータを用いて重ね合わせて正確な位置決めすることによって、または、平面コイルユニット10を層状に重ね合わさるように製造することによって達成されうる。
【0109】
n個積層された平面コイルユニット10における、i番目の平面コイルユニット10の導電体18についての平面コイル厚さd
i,PSと、i番目の平面コイルユニット10の絶縁材料層14の層厚さd
i,IMとは、次のように選択される。すなわち、好ましくは、平面コイル厚さd
i,PSが、絶縁材料の層厚さd
i,IM以上であるように(より大きいか、または等しいように)選択される。いずれの場合も、厚さd
i,PSおよび厚さd
i,IMは次のように選択される。
【0110】
ここで、
は平面コイルの厚さd
i,PSの総計であり、
は絶縁材料層の厚さd
i,IMの総計である。
【0111】
このことから次のとおりとなっている。平面コイル12のターン(巻線部)22が配置されている表面領域上にて、をもたらし、コイルの束ね合わせの全体にわたって見て、導電体18の材料(例えば、銅)の割合が、絶縁体材料層14の絶縁材料と比較して大きい。このことにより、より小さな体積にて、コイル20に与えられた同じ電流で、より大きな電流密度、したがって、より強い磁場を生成できる。
【0112】
コイル20のコンピュータ支援製造(CAM)はまた、
図11aに示されるようにモノファイラー(一重巻き)方式で、並びに、
図11b~11dに示されるようにマルチファイラー(多重巻き)で、個々の平面コイル20を製造する代替・選択実施形態を提供する。
【0113】
このようにして、互いに電気的に絶縁され、種々の方法で相互接続することができる、1つの巻線スパイラルまたは複数の巻線スパイラルを有する平面コイル12を製造することができる。
【0114】
これにより、同心円状に配置されたコイル20a、20bの製造が可能になり、これらコイルは異なる具合に接触を行うことができる。例えば、マルチファイラー(多重巻き)コイル20の異なる重ね巻き性(ファイラ性)は、差動測定に使用される。別の例示的な実施形態では、入れ子になったコイル20aの一方は、磁気発生器コイルとして使用でき、他方は、測定コイルとして使用することができる。さらに別の例示的な実施形態では、複数の入れ子になったコイルを差動測定に使用することができる。さらに別の実施形態では、相異なる、入れ子になったコイルを、ブリッジ回路の相異なる要素として使用することができる。
【0115】
図12は、誘導性部材(inductive element)30の第1の実施例を示し、この誘導性部材30は、第1のコイル20a、第2のコイル20b、および第3のコイル20cを形成すべく、前述の方法に従って製造された平面コイルアセンブリ32を有する。
【0116】
誘導性部材30は、アクチュエータまたはセンサーの一部として使用することができる。特に、誘導性部材30は、文献D1~D10に記載されているタイプのトルクセンサーまたは応力センサーにおけるセンサーヘッドの必須部分・部材として使用することができる。その場合、センサーヘッドは依然として強磁性増強材を含む。センサーヘッドの設計に関する詳細については、D10が引用・参照される。
【0117】
センサーヘッドに使用する場合、第1のコイル20aは、例えば磁気発生器コイルとして使用して、例えば回転シャフトといった、応力の印加について測定される部材・部分にて磁場を生成するのに使用することができる。また、磁場の変化、特には応力の影響下での磁場の方向の変化を測定するにあたり、第2のコイル20bは、ための第1の測定コイルとして機能し、第3のコイル20cは第2の測定コイルとして機能する。
【0118】
図12に見られるように、コイル20a、20b、20cは、いずれも、それぞれに重ね合わされた平面コイル12によって形成されており、磁気増強のための材料が貫通して差し込まれ得る開口部26を備えている。また、複数の貫通接続24、24bが、各貫通開口26の内壁に備えられている。誘導性部材30のさらなる実施形態が、
図13および14に示されており、ここでは、第1のコイル20a、第2のコイル20b、および第3のコイル20cに加えて、第4のコイル20dおよび第5のコイル20eが備えられている。第2~第5のコイル20b~20eは、第1のコイル20aの周りに分布するようにして備えられている。第4のコイル20dは第3の測定コイルを形成することができ、第5のコイル20eは第4の測定コイルを形成することができる。
【0119】
測定コイル(例えば、第2~第5のコイル20b~20e)の相互接続は、ドイツ特許出願DE 10 2017 112 913.8に詳細に記載および示されているように行うことができる。このドイツ特許出願が、さらなる詳細に関して明示的に引用・参照される。
【0120】
特に、この場合の測定コイルは、発電コイルとして機能する第1のコイル20aの周りに、いわゆるX配置で配置されている。
【0121】
個々のコイル20、および/または、誘導性部材30に備えられる任意の他の電子構成要素の電気的接続のための接触パッド34bは、好ましくは、誘導性部材30の少なくとも1つの外縁エッジ部に配置される。
【0122】
図12に示す例示的な実施形態では、接触パッドは片側に配置されている。
図13および
図14に示される誘導性部材30の例示的な実施形態では、接触パッド34は、誘導性部材30の互いに向き合う両側にて、長方形の切り取り部(凹部)36の内部に備えられる。詳細Aによって示されるように、接触パッドの1つは、試験パッドとして形成することができる。
【0123】
図12および13にしたがうセンサーヘッドに使用される誘導性部材30を製造するための方法についての好ましい実施形態は、文献D11(特許文献10)で説明されている基本原理から知られるように、個々のコイル20、20a~20eのための空洞が、剛性のプリント回路基板要素38に形成されていることが想定されている。
【0124】
コイル20a~20eの個々の層を形成する個々の平面コイル12は、上述のように、可撓性プリント回路基板16上に平面コイルユニット10としてまとめて製造されるのであり、それぞれに複数の平面コイルを有するn個の平面コイルユニット10が、コンピュータ制御下で積層されて配置されるか、またはコンピュータ制御下で積層されて製造される。したがって、個々の平面コイル12から形成されたコイル20、20a~20eが積層された平面コイルアセンブリ32が形成される。
【0125】
本発明の一実施形態では、個々のコイルは、カッティングパンチによってまとめて切り出され、剛性プリント回路基板部材38の個々の空洞に移送される。
【0126】
本発明の別の実施形態では、平面コイルユニット10を層状に重ね合わして形成される平面コイルアセンブリ32が、誘導性部材30として使用され、その結果、剛性のプリント回路基板部材38は必要とされない。
【0127】
図1および2に示されるように、コイル20は、例えば、平面コイル12あたりにトータルで4~100個のターンから(4~100の巻き数で)、例えば15個のターンから製造することができる。ここで、n = 8の層が重ねられて用いられる。好ましくは、nは3~15の範囲にある。
【0128】
図1に示すように、ターン(巻線)の表面領域の内側と外側にあるリング部分で貫通接続を使用する場合、輪郭の箇所の銅の量は、たとえば、典型的には0.3mmに設定できる。
【0129】
図2に示すように、貫通接続が輪郭の箇所に備えられる場合、ターン(巻線)22による表面の使用割合は、大幅に改善される。
【符号の説明】
【0130】
10 平面コイルユニット
12 平面コイル
14 絶縁材料層
16 フレキシブルプリント回路基板
18 導電体
20 コイル
20a 第1のコイル
20b 第2のコイル
20c 第3のコイル
20d 第4のコイル
20e 第5のコイル
22 ターン(巻線部)
24 貫通接続
24a 外部貫通接続
24b 内部貫通接続
26 貫通開口
30 誘導性部材
32 平面コイルアセンブリ
34 コンタクトパッド
36 休憩
38 リジッド(剛性)プリント回路基板部材
40 内層コア
42 エポキシ樹脂とガラス布の層
44 導体材料
46 感光フィルム
48 フォトマスクフィルム
50 被露光体
52 (
図6の)構造
54 プリプレグ中間層
56 デバイスユニット