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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ケアプラン作成支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20220922BHJP
【FI】
G16H50/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021039498
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2018533450の分割
【原出願日】2017-08-07
(65)【公開番号】P2021099867
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2016155859
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500131321
【氏名又は名称】セントケア・ホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】関根 竜哉
(72)【発明者】
【氏名】篠澤 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】浜田 宏一
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-258978(JP,A)
【文献】特表2005-508556(JP,A)
【文献】特開2002-163359(JP,A)
【文献】特表2008-532104(JP,A)
【文献】特開2016-099656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者に対して行ったアセスメントの結果の入力を受け付ける入力受付部と、
複数の候補ケアプランを記憶する記憶部と
前記被介護者に前記候補ケアプランを実行した後の前記被介護者の要介護度の変化を判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果をもとに確率的推論モデルを変更する処理変更部と、
前記被介護者への前記候補ケアプランの実施により、前記被介護者の状況が改善する確率を出力する確率出力部と、を有し、
前記確率出力部は、前記確率的推論モデルに前記アセスメントの結果および前記候補ケアプランを入力して、前記被介護者の要介護度が改善する確率を出力する、
ケアプラン作成支援システム。
【請求項2】
前記確率出力部は、前記候補ケアプランの実施数に対する、前記候補ケアプランによって要介護度が改善した被介護者の割合を、前記改善する確率として算出する、請求項1に記載のケアプラン作成支援システム。
【請求項3】
前記判定部による判定の結果をもとに、前記候補ケアプランにより前記被介護者の要介護度が改善する確率を新たに算出する確率算出部を有し、
前記処理変更部は、前記確率的推論モデルが出力する前記被介護者の要介護度が改善する確率が、前記確率算出部が算出した確率に近づくように、前記確率的推論モデルを変更する、
請求項1または2に記載のケアプラン作成支援システム。
【請求項4】
前記確率出力部は、前記被介護者の必要介護度が改善する確率を出力する、請求項1~のいずれか1項に記載のケアプラン作成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケアプラン作成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴、排せつおよび食事などを含む日常生活に他者の介護または支援を受ける要支援者または要介護者(以下、まとめて「被介護者」ともいう。)への介護計画を、ケアプランという。ケアプランには、具体的な介護サービスの内容、および上記介護サービスを提供する日時を定めたサービス計画スケジュールが含まれる。
【0003】
ケアプランは、通常、ケアマネジャーによって、被介護者の状況に基づいて認定される要介護度に応じて定められる介護給付を考慮して作成される。要介護度の認定を受けようとする者が要介護認定の申請をすると、申請を受けた介護保険者は、認定調査機関の認定調査員に、申請者の身体状況などを調査させる。上記調査は、予め設定された項目について、2またはそれ以上の選択肢から申請者の状況にあったものを選択したり、テキストで項目を入力したりする方法で行われる。この調査結果は、コンピュータなどに入力されて、定められた算出法による要介護度の一次判定に用いられる。介護保険者は、その設置機関である介護認定審査会に、上記一次判定、それ以外の被介護者の特記事項および主治医の意見書などに基づいて申請者の要介護度を認定させる。このようにして認定された要介護度によって、その被介護者への介護給付の上限が定められる。
【0004】
介護給付の上限が定まった後、ケアマネジャーは、上記介護給付を考慮して、その被介護者に適したケアプランを作成する。このとき、ケアマネジャーまたはその委託を受けた者は、ケアプラン作成時の被介護者の状態を新たに評価(以下、単に「アセスメント」ともいう。)する。その後、ケアマネジャーは、評価された被介護者の現在の状況(以下、単に「アセスメント結果」ともいう。)をもとに、上記ケアプランの作成を行う。
【0005】
特許文献1~特許文献6には、ケアプラン作成を効率化することや、ケアマネジャーの力量によるケアプランの質の低下を抑制して提供されるケアプランを均質化することなどを目的として、アセスメント結果からのケアプランの作成を支援するための方法および上記方法を実施するためのシステムが提案されている。
【0006】
ところで、近年進展する少子高齢化などの理由により、被介護者の数は増加傾向にある。また、介護によって要介護度が改善される事例は非常に少ないため、被介護者の数の増加に伴って、要介護度が高い被介護者の数も増加しつつある。介護給付に必要な資金の一部は、社会保障費の一種である介護給付費によって賄われるが、被介護者一人あたりの介護給付費は、要介護度が高いほど高額になる。そのため、被介護者の増加、およびそれに伴う要介護度が高い被介護者の数の増加により、介護給付費も年ごとに増加している。例えば、我が国における65歳以上のいわゆる高齢者の人口は、2015年の約3400万人(人口3.7人に1人)に対して、2025年には約3650万人(人口3.3人に1人)に増加すると見込まれ、介護給付費は、2015年の10.1兆円に対して、2025年には21兆円になると見込まれている。
【0007】
また、被介護者の数の増加、および要介護度が高い被介護者の数の増加は、社会的にも大きな影響を与える。例えば、近親者の介護のために離職を余儀なくされる、いわゆる介護離職などの問題も顕在化しており、これらの問題は、被介護者や被介護者に関係する人の生活の質を低下させたり、労働力を減少させたりして、社会的な損失をももたらしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-149499号公報
【文献】特開2000-3404号公報
【文献】特開2000-3391号公報
【文献】特開2001-101279号公報
【文献】特開2006-146410号公報
【文献】特開2010-205263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、被介護者の増加によって財政的、社会的な負担が大きくなりつつあり、これらの負担を抑制することが求められる。特に、要介護度が高くなると介護給付費の額も社会的な負担の量も大きくなるため、要介護度が高い被介護者の数の増加を抑制することが望ましい。しかし、要介護度が高い被介護者の数を減らす有効な方法は、未だ確立されていない。
【0010】
例えば、ケアプランを工夫して、被介護者の要介護度を改善していけば、要介護度が高い被介護者の数の増加が抑制できると考えられる。しかし、要介護度を改善させることができたケアプランの例はわずかであり、また、状況の異なる他の被介護者にこれらの例を適用しても、同様に要介護度の改善が期待できるとは限らない。
【0011】
また、上記ケアプランの工夫を実行していくためには、ケアプラン作成の効率化や、作成されたケアプランの均質化が重要になると考えられる。これに対し、特許文献1~特許文献6には、ケアプランの作成をコンピュータに支援させることで、ケアプラン作成の効率化や、作成されたケアプランの均質化といった目的が達成されると記載されている(以下、ケアプランの作成を支援するシステムを単に「ケアプラン作成支援システム」ともいう。ケアプラン作成支援システムは、ケアマネジャーによるケアプランの作成に有用な情報を出力できるシステムであればよく、ケアプランに含めるべき介護サービスのみを出力する機能のみを有していてもよいし、上記介護サービスを提供する日時を定めたサービス計画スケジュールを同時に出力する機能を有してもよい。)。しかし、これらの文献では、要介護度を改善できるようなケアプランの作成について何ら考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、要介護度の改善が期待できる、推奨されるケアプランを、個々の被介護者の状況にあわせて出力することで、ケアプランの作成を支援可能なケアプラン作成支援システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態は、被介護者に対して行ったアセスメントの結果の入力を受け付ける入力受付部と、複数の候補ケアプランを記憶する記憶部と、前記被介護者に前記候補ケアプランを実行した後の前記被介護者の要介護度の変化を判定する判定部と、前記判定部による判定の結果をもとに確率的推論モデルを変更する処理変更部と、前記被介護者への前記候補ケアプランの実施により、前記被介護者の状況が改善する確率を出力する確率出力部と、を有し、前記確率出力部は、前記確率的推論モデルに前記アセスメントの結果および前記候補ケアプランを入力して、前記被介護者の要介護度が改善する確率を出力する、ケアプラン作成支援システムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、要介護度の改善が期待できる、推奨されるケアプランを、個々の被介護者の状況にあわせて出力することで、ケアプランの作成を支援可能なケアプラン作成支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、ケアプラン作成支援システムによる処理の一例を表すフローチャートである。
図3図3は、ケアプランの出力(ステップS100)に含まれる具体的な処理を表すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態における中間ユニットの構成を示す模式図である。
図5図5は、学習処理(ステップS200)に含まれる具体的な処理を表すフローチャートである。
図6図6は、本発明の他の実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明のさらに他の実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明のさらに他の実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に関するケアプラン作成支援システム100の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るケアプラン作成支援システム100は、処理部として機能するケアプラン出力部110、判定部120、確率算出部130および処理変更部140と、記憶媒体として機能する記憶部150と、表示部160と、入力部170と、を備えている。
【0017】
なお、ケアプラン作成支援システム100は、図示しないが、例えば、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などの作業用メモリ、および通信回路を備える。この場合、上記した各処理部の機能は、CPUが制御プログラム(本発明の「ケアプラン作成支援プログラム」に対応)を実行することにより実現される。前記ケアプラン出力部、前記判定部、前記確率算出部および前記処理変更部による処理を実行するためのプログラムの少なくとも一部はサーバに保存されているが、後述する第4の実施形態のように、上記プログラムの少なくとも一部はクラウドサーバに保存されていてもよい。
【0018】
ケアプラン出力部110は、予め設定されたケアプランを用いて被介護者に介護を行った(以下、単に「ケアプランを提供した」ともいう。)ときに前記被介護者の要介護度が改善する確率を、予め設定されたケアプランごとに取得し、上記取得された確率がより高いケアプランを推奨されるケアプランとして出力する処理部である。例えば、ケアプラン出力部110は、入力された被介護者の被介護者の状況を、確率的推論モデル(以下、単に「ケアプラン出力支援モデル」)に入力することにより、予め設定されたケアプランを提供したときに前記被介護者の要介護度が改善する確率を取得する。なお、確率的推論モデルとは、入力値に対して所定の演算を行うことで、予め定めた属性(本実施形態ではケアプランの種類)ごとの推論値(本実施形態では要介護度が改善する確率)を出力する推論モデルである。その後、ケアプラン出力部110は、前記ケアプランごとに出力された要介護度が改善する確率を参照して、例えば上記要介護度が改善する確率がより高いケアプランを選択するなどして、前記被介護者に推奨されるケアプランを出力する処理部である。
【0019】
判定部120は、上記被介護者の現在の要介護度が、上記被介護者の過去の要介護度よりも改善したか否かを判定する処理部である。たとえば、判定部120は、ケアプラン出力部110から出力されたケアプランを用いて被介護者に介護が行われた後の上記被介護者の要介護度が改善したか否かを判定する。なお、判定部120は、別途ケアマネジャーが作成したケアプランを用いて被介護者に介護が行われた後の上記被介護者の要介護度が改善したか否かを判定してもよい。
【0020】
確率算出部130は、判定部120による判定の結果を用いて、前記予め設定されたケアプラン(特には、ケアプラン出力得110が出力したケアプラン)により介護が行われたときに被介護者の要介護度が改善する確率を新たに算出する処理部である。たとえば、確率算出部130は、記憶部150に格納されたレコードのうち、被介護者の状況および介護に用いられたケアプランが同一であるレコードの総数、および上記レコードに含まれる、要介護度が改善したと判定されたレコードの数、を求め、上記レコードの総数に対する、上記要介護度が改善したと判定されたレコードの数の割合を算出して、算出された割合を、上記被介護者の要介護度が改善する確率とする。
【0021】
処理変更部140は、前記被介護者の過去の状況と、前記被介護者の過去の状況から作成されて前記被介護者に過去に提供されたケアプランと、前記判定部120による判定の結果との組み合わせを教師データとして、前記ケアプラン出力支援モデルを変更する処理部である。具体的には、処理変更部140は、被介護者の状況をケアプラン出力部110に入力したときにあるケアプランについて取得される確率が、同一の被介護者の状況とケアプランとの組み合わせについて確率算出部130により算出された確率に近づくように、前記ケアプラン出力支援モデルを変更する。
【0022】
これらの処理部による処理の詳細は後述する。
【0023】
ケアプラン作成支援システム100は、上記ケアプラン出力支援モデルを、学習処理によって変更することを一つの特徴とする。学習処理によれば、過去のデータに含まれる特徴を機械的に抽出して、類似の特徴を有する入力に対して類似の結果を出力するように、ケアプラン出力支援モデルを変更することが可能である。そのため、ある被介護者の状況に対して、提供したケアプランごとに要介護度が改善したか否かを判定し、これらのデータ(被介護者の状況、ケアプラン、および上記ケアプランごとの上記判定結果)を用いて上記学習処理をすることで、類似する特徴を有する状況に対しても、要介護度が改善する確率が高いケアプランを出力できるように、ケアプラン出力支援モデルを変更できる。これにより、ケアプラン作成支援システム100は、様々な状況を有する個々の被介護者に対しても、上記被介護者の状況の特徴に応じて、要介護後が改善する確率がより高いケアプランを推奨されるケアプランとして出力することが可能である。また、このようなデータを多数用意して上記学習処理を繰り返し行うことで、任意の被介護者の状況に対して要介護度が改善する確率がより高いケアプランを出力できる精度も高まっていく。
【0024】
記憶部150は、書き込みおよび読み出しが可能な記憶媒体である。
【0025】
記憶部150は、データベースなどの記憶媒体とすることができる。記憶部150には、被介護者情報、日付または日時、上記被介護者の状況、ケアプラン、上記被介護者の要介護度、および上記ケアプランを用いて介護が行われた後の要介護度または上記ケアプランを提供した結果としての要介護度の変化、が紐付けられたレコードを格納する。上記レコードには、一意なレコード番号が付与されていてもよい。
【0026】
上記日付または日時は、被介護者にアセスメントを行った日付または日時である。
【0027】
上記被介護者情報は、介護を受ける被介護者を一意に特定するための情報であり、被介護者に固有のID番号、被介護者の氏名、性別および生年月日などを含むことができる。
【0028】
上記被介護者の状況は、ケアマネジャーまたはその委託を受けた者による上記被介護者へのアセスメントによって得られたアセスメント結果とすることができる。また、上記被介護者の状況としては、サービスの利用状況に関する概況調査や特記事項についての調査結果、疾患名などの主治医意見書に記載された内容を用いてもよい。
【0029】
上記ケアプランは、上記被介護者の状況からケアマネジャーが作成し、上記被介護者に提供したケアプランである。
【0030】
上記被介護者の要介護度は、上記ケアプランを作成したときの、介護認定審査会が認定したその被介護者の要介護度である。
【0031】
上記ケアプランを用いて介護が行われた後の要介護度は、同一の被介護者に対してケアプランを提供した後に、介護認定審査会によって改めて認定された、その被介護者の要介護度である。
【0032】
上記要介護度の変化は、判定部120による判定によって定められる、集計可能なデータである。例えば、要介護度の改善が見られたと判定されたケアプランを含むレコードには「1」が、要介護度の改善が見られなかったと判定されたケアプランを含むレコードには「0」が付与される。
【0033】
記憶部150には、初期設定時に、確率算出部130による上記確率の算出が可能な数の上記レコードが予め用意されて格納されている。
【0034】
表示部160は、ケアマネジャーが携帯するスマートフォン、PC、TVなどの表示装置であって、ケアプラン出力部110から入力される表示制御信号に従って、推奨されるケアプランを表示する。表示部160は、表示されたケアプランを見たケアマネジャーが、その被介護者に提供するケアプランを作成するために、用いることができる。
【0035】
入力部170は、テンキー、スタートキーなどの各種操作キー、音声受信部、またはカメラなどの映像受信部などを備え、ユーザーによる各種の入力操作を受け付けて、入力データを生成し、生成された入力データをケアプラン出力部110および判定部120に出力する。入力部170は、受信コネクタなどの、他の媒体から電気的に出力された入力データを受信してケアプラン出力部110および判定部120に出力可能に構成された、各種の信号受信機器であってもよい。入力部170から出力された入力データは、ケアプラン出力部110に出力されてケアプランの出力に用いられるとともに、判定部120に出力されて、確率算出部130および処理変更部140によるケアプラン出力支援モデルの変更に用いられる。
【0036】
図2は、ケアプラン作成支援システム100による処理の一例を表すフローチャートである。ケアプラン作成支援システム100は、被介護者の状況に関するデータの入力を受けて、所定の確率的推論モデルに基づいてその被介護者への推奨されるケアプランを出力する(ステップS100)。そして、ケアプラン作成支援システム100は、被介護者の要介護度が改善する確率がより高いケアプランを出力できるように上記確率的推論モデルを変更するための学習処理を行う(ステップS200)。
【0037】
なお、図2にはケアプランの出力(ステップS100)の後に学習処理(ステップS200)を行う態様が記載されているが、学習処理(ステップS200)の後にケアプランの出力(ステップS100)を行ってもよく、また、ケアプランの出力(ステップS100)と学習処理(ステップS200)とを並行して同時に行ってもよい。
【0038】
以下、ケアプラン作成支援システム100による処理に用いられる入力データについて説明し、その後、ケアプランの出力(ステップS100)および学習処理(ステップS200)に含まれるより具体的な処理を説明する。
【0039】
(入力データ)
入力データは、ケアプランを新たに作成するために、被介護者に対して行ったアセスメントに関する情報であり、被介護者情報、上記被介護者に行ったアセスメントの日付または日時、上記被介護者の状況、および上記アセスメントの日付または日時における被介護者の要介護度を含む。入力データに含まれる被介護者情報と、記憶部150が格納する被介護者情報とは、互いに同一の項目のみからなることが好ましいが、判定部120による被介護者の同一の判定が可能である限り、一部の項目のみが重複していてもよい。
【0040】
上記被介護者の状況は、複数の調査項目について、「はい(Y)」または「いいえ(N)」の2つ、または3つ以上の選択肢から、被介護者の状況に最もよく適合するものを選択した結果とすることができる。上記複数の調査項目および選択肢の種類は特に限定されず、任意に定めることができ、例えば、要介護度の認定に用いるために定められた調査項目および選択肢を用いることができる。上記要介護度の認定おける調査には、概況調査および基本調査が含まれるが、これらのいずれかまたは両方を用いてもよいし、基本調査の項目および選択肢(2015年7月時点では74項目)のみを用いてもよい。このとき、要介護度の認定基準が変更されたときは、それに合わせて上記調査項目および選択肢も変更可能であることが好ましい。また、上記被介護者の状況は、上記概況調査の結果や、主治医意見書などの内容をテキストで入力するようにしてもよい。
【0041】
例えば、2015年7月時点での要介護度の認定に用いる調査項目は、「左上肢の麻痺(「あり」および「なし」からの選択)」や「寝返り(「つかまらないでできる」、「何かにつかまればできる」および「できない」からの選択)」などの被介護者の身体機能・起居動作に関わる項目、「移動(「介助されていない」、「見守り等が必要」、「一部介助が必要」および「全介助が必要」からの選択)」などの被介護者の生活機能に関わる項目、「意思の伝達(「調査対象者が意思を他者に伝達できる」、「ときどき伝達できる」、「ほとんど伝達できない」および「できない」からの選択)」や「生年月日や年齢を言うこと(「できる」および「できない」からの選択)」などの被介護者の認知能力に関わる項目、「物を盗られたなどと被害的になる(「ない」、「ときどきある」および「ある」からの選択)」などの被介護者の精神・行動障害に関わる項目、「金銭の管理(「解除されていない」、「一部解除されている」および「全解除されている」からの選択)」や「日常の意思決定(「できる(特別な場合でもできる)」、「特別な場合を除いてできる」、「日常的に困難」および「できない」からの選択)」などの社会生活への適応に関わる項目、ならびに「透析(「あり」および「なし」からの選択)」などの過去14日に受けた医療に関わる項目、などの74項目からなる。これらの項目はそのまま用いてもよいし、いくつか選択して用いてもよいし、任意に他の項目を登録して用いてもよい。
【0042】
なお、入力の手間を省く観点からは、被介護者の状況の項目数は、5個以上20個以下、さらには5個以上15個以下とすることができる。このときの被介護者の状況は、被介護者に対して行う日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の評価(モニタリング)時に用いられる調査項目からなることが好ましい。上記ADLの評価時に用いられる調査項目としては、バーセル指数、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)が定めたパフォーマンスステータス、機能的自立度評価表(FIM)などの評価方法で用いられる評価項目などを用いることができる。
【0043】
(ステップS100:ケアプランの出力)
ケアプランの出力(ステップS100)において、ケアプラン出力部110は、入力された被介護者の状況をケアプラン出力支援モデルに入力して、ケアプランごとに、要介護度が改善する確率を取得する。その後、ケアプラン出力部110は、上記ケアプランごとに出力された要介護度が改善する確率から、上記被介護者に推奨するケアプランを出力し、表示部160に表示する。
【0044】
上記ケアプランは、介護サービスを少なくとも含む。介護サービスは、被介護者に対して行う具体的な介護サービスの内容である。上記介護サービスは、介護事業者が提供可能なものから選択すればよい。なお、上記ケアプランは、具体的な介護サービスの内容のほかに、および上記介護サービスを提供する日時を定めたサービス計画スケジュールを含んでいてもよい。
【0045】
図3は、ケアプランの出力(ステップS100)に含まれる具体的な処理を表すフローチャートである。
【0046】
まず、ケアプラン出力部110は、被介護者の状況をケアプラン出力支援モデルに入力して、ケアプランごとに、要介護度が改善する確率を取得する(ステップS310)。その後、ケアプラン出力部110は、上記要介護度が改善する確率が高い1または複数のケアプランを、推奨するケアプランとして出力する(ステップS320)。例えば、ケアプラン出力部110は、出力された確率が高いケアプラン(たとえば、確率が最も高いケアプランまたは確率が上記10位の出力ユニットに対応するケアプランなど)を、推奨するケアプランとして出力する。
【0047】
その後、ケアプラン出力部110は、出力されたケアプランを表示制御信号として表示部160に出力し、上記ケアプランを表示部160に表示させる(ステップS330)。このとき、後述する第3の実施形態のようにケアプランが変更された場合は、ステップS310に戻って、ケアプラン出力部110は、修正されたケアプランを表示部160に表示させる。
【0048】
最後に、ケアプラン出力部110は、入力データに含まれる被介護者情報、日付または日時、被介護者の状況および要介護度、ならびに出力または変更されたケアプランを、記憶部150に新規レコードとして登録する(ステップS340)。
【0049】
上述したケアプラン出力支援モデルは、被介護者の状況の入力に対して、予め設定されたケアプランの種類ごとに、一定の推論値を出力する確率的推論モデルであり、処理変更部140によって変更可能に構成されている。上記推論値は、入力された状況を有する被介護者に、それぞれのケアプランを提供したときに、上記被介護者の要介護度が改善する確率である。ケアプラン出力支援モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、ボルツマンマシンおよび決定木などを含む。
【0050】
以下、ケアプラン出力支援モデルがニューラルネットワークを含む場合におけるケアプラン出力支援モデルの構成を例示する。
【0051】
上記ニューラルネットワーク(以下、単に「プラン出力ネットワーク」ともいう。)は、複数の入力ユニットからなる入力層、それぞれが複数の中間ユニットからなる1または複数の中間層、および複数の出力ユニットからなる出力層を有する。プラン出力ネットワークは、入力層側から出力層側にかけて複数の中間層を有する、N個の層を有する多階層のニューラルネットワークであり、それぞれの中間層が有する中間ユニットは、ひとつ前の階層の中間層に含まれる1または複数の中間ユニット(または入力ユニット)から受けた情報を、次の階層の中間層に含まれる1または複数の中間ユニット(または出力ユニット)に出力する。プラン出力ネットワークが有する層の数(N)は、3個以上であればよく、アセスメント項目の数などに応じて任意に定めることができる。例えば、上記層の数(N)は3個以上25個以下とすることができ、5個以上20個以下であることが好ましく、8個以上16個以下であることがより好ましい。
【0052】
上記入力層(N=1)は、被介護者の状況が含む調査項目と同じ数の上記入力ユニットを有する。上記入力ユニットは、上記複数の調査項目のいずれかに対応し、上記調査項目が有する各選択肢に対応する入力値を、そのまま1または複数の中間ユニットに出力する。
【0053】
上記中間層(N=k(1<k<N))は、それぞれ任意の数の上記中間ユニットを有する。上記中間ユニットは、前階層の中間層が有する1または複数の中間ユニット(または入力層が有する1または複数の入力ユニット)からの出力を受けて、次階層の中間層が有する何れかまたは複数の中間ユニット(または出力層が有する出力ユニット)に出力する。上記中間層は、当該中間層に含まれる中間ユニットが前階層の中間ユニット(または入力ユニット)のすべてと結合する全結合層でもよいし、当該中間層に含まれる中間ユニットが前階層の中間ユニット(または入力ユニット)の一部とのみ結合する畳み込み層でもよい。
【0054】
このとき、図4に示すように、第k層の中間ユニットZは、第k-1層の中間ユニット(図では4個)からの出力w1、w2、w3およびw4を受け取る。その後、中間ユニットZは、式(1)に示すように、各出力に所定の重みy1、y2、y3およびy4をそれぞれ乗じた値の合算値に、所定のバイアスbをさらに加算した値u1を算出する。なお、上記重みおよびバイアスは、処理変更部140によって変更可能である。
u1=w1×y1+w2×y2+w3×y3+w4×y4+b・・・(1)
【0055】
中間ユニットはさらに、上記u1に所定の活性化関数fを適用して得られる値z1を、第k+1層の中間ユニット(または出力ユニット)に出力する。活性化関数fの種類は特に限定されず、シグモイド関数、ロジスティック関数、正規化線形関数(Rectified Linear Unit: ReLU)およびソフトマックス関数などを用いることができる。これらのうち、中間ユニットが有する活性化関数fは、出力の精度を高めつつ、処理の高速化も図る観点から、ReLuが好ましい。
【0056】
上記出力層(N=N)は、予め設定された、出力可能なケアプランの数と同じ数の上記出力ユニットを有する。それぞれの出力ユニットは、1または複数の第N-1の中間ユニットからの出力を受け取り、上記中間ユニットと同様の処理を行って得られた値を、上記入力層に入力された被介護者の状況に対する推論値(要介護度が改善する確率)として出力する。なお、このとき出力ユニットが有する活性化関数fは、すべての出力ユニットから出力された推論値の合計が1となり、出力された推論値をそのまま確率分布をして用いることができるため、ソフトマックス関数が好ましい。
【0057】
このとき、上記出力ユニットのそれぞれを、予め設定されたケアプラン出力部110が出力可能なケアプランのそれぞれに、一対一で対応させる。そして、上記それぞれの出力ユニットが出力した推論値を、それぞれのケアプランを提供したときに上記状況を有する被介護者の要介護度が改善する確率と見なす。そのため、ケアプラン出力部110は、上記推論値がより大きい出力ユニットに対応するケアプランを、上記状況を有する被介護者に推奨されるケアプランとして選択し、出力することができる。
【0058】
なお、上記中間層および出力層における各ユニットの重みおよびバイアスは、初期設定時に、過去の被介護者の状況と、その被介護者に対してケアマネジャーが選択したケアプランとの組み合わせを教師データとして、処理変更部140による学習処理により予め設定されることが好ましい。
【0059】
(ステップS200:学習処理)
学習処理(ステップS200)において、判定部120、確率算出部130および処理変更部140は、上述したケアプラン出力支援モデルを学習処理によって変更する。具体的には、判定部120は、入力データに含まれる要介護度が、記憶部150に登録されている同一の被介護者の過去の要介護度から改善したか否かを判定する。その後、確率算出部130は、記憶部150に含まれる被介護者の状況とケアプランの任意の組み合わせについて、上記判定の結果から、上記組み合わせを構成する被介護者の状況を有する被介護者に対して上記ケアプランを提供したときに要介護度が改善する確率を算出する。その後、処理変更部140は、上記組み合わせを構成する被介護者の状況およびケアプランと、その組み合わせについての要介護度が改善する確率とを教師データとして、ケアプラン出力支援モデルを変更する。例えば、処理変更部140は、前記ニューラルネットワークに上記被介護者の状況を入力したときに、それぞれの出力ユニットから出力される推論値が、その出力ユニットに対応するケアプランを提供したときの要介護度が改善する確率として算出された値に近づくように、各中間ユニットおよび出力ユニットの重みおよびバイアスの値を変更する。
【0060】
なお、上記過去の要介護度、ならびに後述する過去の被介護者の状況および過去のケアプランは、記憶部150に登録されている同一の被介護者のレコードのうち、入力データの日付または日時から所定の期間だけ過去に遡った時点のレコードに含まれる、要介護度、被介護者の状況およびケアプランである。具体的には、当該レコードに含まれるアセスメントの日付または日時に登録された日付または日時が、入力データに含まれるアセスメントの日付または日時から所定の期間だけ遡った時点となるようなレコードに含まれる項目を、上記過去の要介護度、過去のケアプランおよび過去の被介護者の状況とする。上記所定の期間は、ケアプランを作成した後、新たにケアプランを作成し直すまでの期間とすることができ、例えば6ヶ月とすることができる。
【0061】
図5は、学習処理(ステップS200)に含まれる具体的な処理を表すフローチャートである。判定部120は、入力データに含まれる被介護者情報と、記憶部150に登録されている被介護者情報とを照合し、入力データと同一の被介護者のレコードが記憶部150に登録されているか否かを判定する(ステップS510)。
【0062】
判定の結果、同一の被介護者のレコードが登録されていた場合(ステップS510:YES)、判定部120は、その被介護者への過去のケアプランを用いて介護が行われた後の上記被介護者の要介護度の変化(要介護度が改善したか否か)を評価する(ステップS520)。具体的には、判定部120は、入力データに含まれる被介護者の要介護度(現在の要介護度)と、記憶部150に登録されている同一の被介護者の過去のレコードに含まれる要介護度とを比較して、上記現在の要介護度が上記過去の要介護度よりも改善した(低くなった)か否かを判定する。なお、同一の被介護者のレコードが登録されていない場合(ステップS510:NO)、その入力データは学習処理に用いることができないため、図5における処理は終了する。
【0063】
平成28年7月時点で、我が国における要介護度は、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4および要介護5の7段階からなり、前者ほど要介護度が低く、後者ほど要介護度が高いと判断される。そのため、要介護度が後者の分類からより前者の分類に移行したとき、例えばある被介護者の過去の要介護度が「要介護3」であるが入力データに含まれる要介護度が「要介護2」であるとき、その被介護者の要介護度は改善したと判定される。
【0064】
この判定結果は、記憶部150に含まれる同一の被介護者のレコードのうち、上記評価に用いた過去の被介護者の状況および過去のケアプランを含むレコードに、項目「要介護度の変化」の値として登録される(ステップS530)。
【0065】
その後、確率算出部130は、記憶部150に項目「要介護度の変化」の値が新たに登録されたレコードの数をカウントする(ステップS540)。その結果、所定数以上のデータが新たに登録されたと判定した場合(ステップS540:YES)に、確率算出部130は被介護者の要介護度が改善される確率を求める(ステップS550)。例えば、確率算出部130は、記憶媒体150に格納されたレコードのうち、被介護者の状況および介護に用いられたケアプランが同一であるレコードの総数、および上記レコードに含まれる、要介護度が改善したと判定されたレコードの数を求め、上記レコードの総数に対する、上記要介護度が改善したと判定されたレコードの数の割合を算出する。所定数以上のデータが新たに登録されたと判定されなかった場合(ステップS540:NO)、図5における処理は終了する。
【0066】
その後、処理変更部140は、学習処理を行って、ケアプラン出力支援モデルを変更する(ステップS560)。
【0067】
例えば、処理変更部140は、上述したプラン出力ネットワークに上記被介護者の状況を入力したときに上記ケアプランに対応する出力ユニットから出力される推論値が、上記求められた割合となるように、上記プラン出力ネットワークを変更する。
【0068】
具体的には、処理変更部140は、上記被介護者の状況を入力したときに上記プラン出力ネットワークが出力する推論値と、上記算出された割合との差(誤差)を求める。次に、処理変更部140は、上記誤差が小さくなるように、上記プラン出力ネットワークの各中間ユニットおよび出力ユニットのいずれかが有する重みおよびバイアス(上述した図4の例では、y1、y2、y3、y4およびb)の1つまたは複数の値を変更する。
【0069】
評価ネットワークおよびプラン出力ネットワークの変更の方法は特に限定されず、誤差逆伝播法を用いた勾配降下法などの公知の方法を用いることができる。また、勾配降下法において上記誤差を表すために用いられる誤差関数の種類も特に限定されず、二乗誤差および交差エントロピー式などの公知の式を用いることができる。
【0070】
このような構成とすれば、上記プラン出力ネットワークを含むケアプラン出力支援モデルの実行を含む処理によってケアプラン出力部110が出力するケアプランは、被介護者の要介護度が改善する確率が高いものとなる。特に、多数の入力データを入力して多数回の学習処理を行うことで、任意の被介護者の状況を有する被介護者に対して、要介護度が改善する確率が高い上記組み合わせを構成するケアプランを選択して被介護者に提供することができる。
【0071】
また、ケアプランの作成をコンピュータに支援させることで、ケアプラン作成の効率化や、作成されたケアプランの均質化といった目的も達成され得る。
【0072】
なお、従来のケアプラン作成方法において、作成されたケアプランの質の改善を妨げていた要因の一つとして、当該ケアプランに含まれるケアプランを提供された被介護者の活気があるかないかなどの、観察者の主観によって変動されやすい判断基準によって、当該ケアプランの選択の良否が評価されていたことが挙げられる。これに対し、要介護度が改善するか否かという客観的に大小が判定可能な評価基準によってケアプランを評価すれば、ケアプランの評価に影響する観察者の主観を極力排除することができる。
【0073】
また、本実施形態のようにケアプラン出力支援モデルを多階層のニューラルネットワークを含んで構成した場合、入力される被介護者の状況に含まれる調査項目のうち、特定のケアプランを提供したときに要介護度が改善する可能性の高いという特徴を有するものが入力されたときに、上記特定のケアプランが出力される確率がより高まるように、ケアプラン出力支援モデルを変更することができる。そのため、上記特徴を有する調査項目を有する類似の被介護者の状況を入力したときも、上記特定のケアプランが高確率で出力されるため、ケアプラン出力部110は、教師データに含まれない(またはデータ個数が少ない)被介護者の状況に対しても、要介護度が改善する確率が高いケアプランを出力することが可能となる。
【0074】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の別の実施形態における、学習処理(ステップS200)に含まれる具体的な処理を表すフローチャートである。本実施形態は、学習処理によるケアプラン出力支援モデルの変更に、ケアプラン出力支援モデルとは別の確率的推論モデルであるケアプラン評価モデルを用いる点で、第1の実施形態と異なる。その他の処理およびシステムの構成は第1の実施形態と同一なので、重複する説明は省略する。
【0075】
ケアプラン評価モデルは、被介護者の状況とケアプランとの組み合わせの入力に対して、そのケアプランの実施によって要介護度が改善する確率を出力する確率的推論モデルであり、学習処理によって変更可能に構成されている。ケアプラン評価モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、ボルツマンマシンおよび決定木などを含んでなる。
【0076】
以下、ケアプラン評価モデルがニューラルネットワーク(以下、単に「評価ネットワーク」ともいう。)を含む場合の構成を例示する。このとき、ケアプラン評価モデルは、複数の入力ユニットからなる入力層、それぞれが複数の中間ユニットからなる1または複数の中間層、および1つの出力ユニットからなる出力層を有する。評価ネットワークは、入力層側から出力層側にかけて複数の中間層を有する、N個の層を有する多階層のニューラルネットワークであり、それぞれの中間層が有する中間ユニットは、ひとつ前の階層の中間層に含まれる1または複数の中間ユニット(または入力ユニット)から受けた情報を、次の階層の中間層に含まれる1または複数の中間ユニット(または出力ユニット)に出力する。評価ネットワークが有する層の数(N)は、3個以上であればよく、被介護者の状況とケアプランとの組み合わせの数などに応じて任意に定めることができる。たとえば、上記層の数(N)は3個以上25個以下とすることができ、5個以上20個以下で在ることが好ましく、8個以上16個以下であることがより好ましい。
【0077】
評価ネットワークは、入力層への入力項目を被介護者の状況とケアプランとの組み合わせとし、出力層から出力される推論値を上記組み合わせに対して要介護度が改善する確率とする以外は、上述したプラン出力ネットワークと同様の構成とすることができる。
【0078】
このとき、確率算出部130は、上述したステップS540において記憶部150に十分な量のデータが新たに登録されたと判定された後(ステップS540:YES)、記憶媒体150に格納されたレコードのうち、被介護者の状況および介護に用いられたケアプランが同一であるレコードの総数、および上記レコードに含まれる、要介護度が改善したと判定されたレコードの数を求め、上記レコードの総数に対する、上記要介護度が改善したと判定されたレコードの数の割合を算出する(ステップS550)。その後、処理変更部140は、上記組み合わせをケアプラン評価モデルに入力したときに、上記割合が出力されるように、評価ネットワークを変更する(ステップS570)。
【0079】
具体的には、処理変更部140は、上記組み合わせを入力したときに上記評価ネットワークが出力する要介護度が改善する確率と、上記算出された割合との差(誤差)を求める。次に、処理変更部140は、上記誤差が小さくなるように、評価ネットワークの各中間ユニットおよび出力ユニットのいずれかが有する重みおよびバイアスの1つまたは複数の値を変更する。
【0080】
その後、処理変更部140は、第1の実施形態と同様の処理によって、プラン出力ネットワークに被介護者の状況を入力したときにそれぞれの出力ユニットが出力する推論値が、その被介護者の状況およびその出力ユニットに対応するケアプランとの組み合わせを入力したときに上記評価ネットワークから出力される要介護度が改善する確率となるように、プラン出力ネットワークを変更する(ステップS560-2)。
【0081】
評価ネットワークおよびプラン出力ネットワークの変更の方法は特に限定されず、誤差逆伝播法を用いた勾配降下法などの公知の方法を用いることができる。また、勾配降下法において上記誤差を表すために用いられる誤差関数の種類も特に限定されず、二乗誤差および交差エントロピー式などの公知の式を用いることができる。
【0082】
このような構成とすれば、実施形態1における「要介護度が改善したレコードの割合」よりも精度を高めた要介護度が改善した確率を、ケアプラン出力支援モデルの変更時に目標とする出力値として用いることができる。そのため、ケアプラン出力支援モデルから出力される、推奨されるケアプランを、より要介護度が改善する確率が高いものとすることができる。
【0083】
なお、このような構成とすれば、上記評価ネットワークからの出力のみを取り出して用いて、その被介護者の予後予測などを行うことも可能である。
【0084】
[第3の実施形態]
図7は、本発明のさらに他の実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係るケアプラン作成支援システム700は、表示部160に表示されたケアプランを変更するケアプラン変更部710を備える。
【0085】
ケアプラン変更部710は、テンキー、スタートキーなどの各種操作キー、音声受信部、またはカメラなどの映像受信部などを備え、出力されたケアプランを変更するためのケアマネジャーによる各種の入力操作を受け付けて、生成された入力データをケアプラン出力部110に送信する。ケアプラン出力部110は、入力データを受信して、出力したケアプランを変更する。なお、図7にはケアプラン変更部710が表示部160とは別に構成された例を示したが、たとえば、表示部160が、タッチパネルなどのように操作部分が表示画面に一体的に構成されたり、ボタンやキーなどのハードキーと接続されて構成されたりして、同時にケアプラン変更部710として機能してもよい。
【0086】
変更されたケアプランは、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、記憶部150に登録される。
【0087】
また、同時に、表示部160は、介護事業者のサーバに接続して、出力されたケアプランに含まれる介護サービスの空き状況および利用可能か否かの情報などを表示してもよい。このような構成とすることで、表示された介護サービスの予約ができないと判断される場合などに、ケアマネジャーは、表示部160からケアプランを変更することができる。
【0088】
また、ケアプラン変更部710は、介護事業者のサーバに接続して、上記タッチパネルまたはハードキーなどからの入力により、介護サービスの手配も可能に構成されていてもよい。
【0089】
[第4の実施形態]
図8は、本発明のさらに他の実施形態に関するケアプラン作成支援システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係るケアプラン作成支援システム800は、インターネットを介して様々な機器と連携する仮想化サーバであるクラウドサーバ810を有する。クラウドサーバ810は、上述したケアプラン出力部110、判定部120、確率算出部130および処理変更部140による処理を実行するためのプログラム、ならびに記憶部150などの記憶媒体に記憶されたデータ、などの一部または全部が保存されている。
【0090】
クラウドサーバ810は、介護事業を運営する運営会社、または上記運営会社から委託を受けた委託先(以下、単に「運営会社等830」ともいう。)に保有、管理および運営される。運営会社等830は、クラウドサーバ810に接続可能なPCなどの、1または複数の処理部835からクラウドサーバ810にアクセスして、処理部835に上述した処理を実行させる。
【0091】
このとき、入力部170は、被介護者のアセスメントを行うアセスメント事業者などのグループ820が保有するインターネットと接続可能な機器(例えば、スマートフォン、PC、TVなど)とすることができる。入力部170としての上記機器から入力された入力データは、上記機器からクラウドサーバ810に送信される。このとき、入力部170は、送信後に、被介護者の氏名、生年月日および被介護者の状況などの個人情報を自動に削除する構成とすることが好ましい。
【0092】
また、このとき、表示部160は、ケアプランを作成するケアマネジャーなどのグループ840が保有するインターネットと接続可能な機器(例えば、スマートフォン、PC、TVなど)とすることができる。ケアプラン出力部110が出力したケアプランは、表示部160としての上記機器に送信され、表示される。グループ840が表示部160からケアプランを修正すると、修正されたデータはクラウドサーバ810に送信される。
【0093】
なお、グループ820およびグループ840は同一の事業者または個人であってもよい。
【0094】
なお、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0095】
たとえば、上記各実施形態では、要介護度が1段階変化したものも、2段階以上変化したものも、同様に要介護度が改善したデータとして同様に扱っているが、過去のケアプランによって要介護度が何段回改善したかによって改善の度合いに重みを付けて学習処理に用いてもよい。
【0096】
また、上記各実施形態では、記憶部150はケアプラン作成支援システムに組み込まれた構成要素として記載したが、記憶部150をケアプラン作成支援システムとは独立に構成して、ケアプラン作成支援システムから接続して上記各処理を行うためのデータを参照可能に構成してもよい。このときも、第4の実施形態において、上記記憶部150をクラウドサーバに保存してもよい。
【0097】
また、上記各実施形態では、判定部120による判定の結果を記憶部150に登録し、確率算出部130は登録された判定の結果を用いて要介護度が改善する確率を新たに算出しているが、過去の要介護度および入力データに含まれる要介護度を記憶部150に登録しておき、判定部120は記憶部150に登録されている上記2つの要介護度を比較して前記要介護度の変化の判定を行ってもよい。このときも、記憶部150には前記ケアプランを用いて介護が行われた結果としての要介護度の変化を別途登録してもよい。
【0098】
また、上記第3の実施形態においては、ケアプラン出力部110から複数のケアプランを推奨されるケアプランとして出力し、これらからケアマネジャーが選択した一のケアプランをケアプラン変更部710から入力し、選択されて入力されたケアプランが記憶部150に登録されるようにしてもよい。
【0099】
また、上記各実施形態では、表示部160はケアマネジャーが携帯できるスマートフォンやタブレットPCなどとして記載しているが、事業所などに備え付けのデスクトップPCなどとして、ケアマネジャーがその画面に表示された推奨されるケアプランを確認しながら、ケアプランを作成してもよい。なお、出力部160はケアプランを画面に表示するのみならず、音声として読み上げる態様などであってもよい。
【0100】
本出願は、2016年8月8日出願の日本国出願番号2016-155859号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の特許請求の範囲、明細書および図面に記載された内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のケアプラン作成支援システムによれば、要介護度が改善する確率が高いケアプランを個々の被介護者の状況にあわせて出力することができ、かつ、出力の精度を学習処理によって高めることができる。よって、本発明のケアプラン作成支援システムを用いて作製したケアプランを被介護者に提供すれば、被介護者の要介護度の改善が期待できる。被介護者の要介護度が改善すれば、介護給付費の低減や、介護離職の減少などが見込まれ、被介護者の増加による財政的、社会的な負担の抑制が期待できる。
【符号の説明】
【0102】
100、700、800 ケアプラン作成支援システム
110 ケアプラン出力部
120 判定部
130 確率算出部
140 処理変更部
150 記憶部
160 表示部
170 入力部
710 ケアプラン変更部
810 クラウドサーバ
820 グループ
830 運営会社等
835 処理部
840 グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8