(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】保全先行型のり枠部材、保全先行型のり枠、及び保全先行型のり枠の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
E02D17/20 103Z
E02D17/20 104C
(21)【出願番号】P 2021068378
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591228731
【氏名又は名称】イビデングリーンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】吉野 英次
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-050444(JP,U)
【文献】実開昭60-148354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
のり枠の表面に沿って配置する
、下部を開放した側面視略コ字状又は側面視弧状の係合部と、
前記係合部の一方の下端から係合部の内側方向に水平に突設する係止部と、
前記係合部に突設するフック状
であり、斜面に打設したアンカー部材に係合した連結部材を係合するための連結部と、を有する、
保全先行型のり枠部材。
【請求項2】
前記係合部は、幅方向中央から突設する補強リブを有する、
請求項1に記載の保全先行型のり枠部材。
【請求項3】
前記係合部の他方の下端から係合部の外側方向に水平に突設する固定部を有することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の保全先行型のり枠部材。
【請求項4】
斜面に設けたのり枠に請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の保全先行型のり枠部材を係合し、
前記保全先行型のり枠部材より上方の前記斜面に打設したアンカー部材に一方の端部を係合し、他方の端部を前記保全先行型のり枠部材の前記連結部に係合した連結部材を介して、前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結することを特徴とする、
保全先行型のり枠。
【請求項5】
請求項
4に記載の保全先行型のり枠において、
前記連結部材は、緊張状態ではなく、弛んだ状態で前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結することを特徴とする、
保全先行型のり枠。
【請求項6】
斜面にのり枠用の型枠を設置し、
前記型枠に請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の保全先行型のり枠部材を係合し、
前記型枠にモルタルを吹き付けてのり枠を造成し、
前記保全先行型のり枠部材より上方の前記斜面に打設したアンカー部材と、前記保全先行型のり枠部材とを、連結部材を介して連結することを特徴とする、
保全先行型のり枠の構築方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の保全先行型のり枠の構築方法において、
前記連結部材は、緊張状態ではなく、弛んだ状態で前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結することを特徴とする、
保全先行型のり枠の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全先行型のり枠部材、保全先行型のり枠、及び保全先行型のり枠の構築方法に関し、特に、背面空洞化によるのり枠の滑落を予め防止する保全先行型のり枠部材、保全先行型のり枠、及び保全先行型のり枠の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
斜面の安定を図るために、斜面上に格子状のコンクリート製ののり枠を造成することが広く行われている。
一般的なのり枠は、斜面上に金網製の型枠を設置し、そこにモルタルを吹き付けて造成する、吹付のり枠工により行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
吹付のり枠工は50年ほど前から施工されているが、施工後数十年経過したのり枠において、地盤の風化による土砂化や脆弱化、雨水や湧水による流出等により、のり枠と地盤との間の隙間が生じる背面空洞化が発生している。
背面空洞化が進むと、のり枠と地盤との付着がなくなり、のり面の保護機能が損なわれるだけでなく、その自重によりのり枠が滑落してしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、予めのり枠に固定することで背面空洞化によるのり枠の滑落を防止する保全先行型のり枠部材と、保全先行型のり枠、及び保全先行型のり枠の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の保全先行型のり枠部材は、のり枠の表面に沿って配置する、下部を開放した側面視略コ字状又は側面視弧状の係合部と、係合部の一方の下端から係合部の内側方向に水平に突設する係止部と、前記係合部に突設するフック状であり、斜面に打設したアンカー部材に係合した連結部材を係合するための連結部と、を有する。
前記係合部は、幅方向中央から突設する補強リブを有してもよい。
前記係合部の他方の下端から係合部の外側方向に水平に突設する固定部を有してもよい。
【0006】
本発明の保全先行型のり枠は、斜面に設けたのり枠に本発明の保全先行型のり枠部材を係合し、前記保全先行型のり枠部材より上方の前記斜面に打設したアンカー部材に一方の端部を係合し、他方の端部を前記保全先行型のり枠部材の前記連結部に係合した連結部材を介して、前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結する。
前記連結部材は、緊張状態ではなく、弛んだ状態で前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結してもよい。
【0007】
本発明の保全先行型のり枠の構築方法は、斜面にのり枠用の型枠を設置し、前記型枠に本発明の保全先行型のり枠部材を係合し、前記型枠にモルタルを吹き付けてのり枠を造成し、前記保全先行型のり枠部材より上方の前記斜面に打設したアンカー部材と、前記保全先行型のり枠部材とを、連結部材を介して連結する。
前記連結部材は、緊張状態ではなく、弛んだ状態で前記アンカー部材と前記保全先行型のり枠部材を連結してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)のり枠に保全先行型のり枠部材を設けてアンカー部材に連結するため、背面空洞化が進んでものり枠が滑落することがない。
(2)保全先行型のり枠部材の係合部は、吹き付け前に型枠に容易に固定することができる。
(3)のり枠の造成時から保全先行型のり枠部材を設けてのり枠の滑落を防止するため、安全性の高い保全先行型ののり枠構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施例1の保全先行型のり枠の構築方法の説明図
【
図5】その他の実施例の保全先行型のり枠部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の保全先行型のり枠部材及び保全先行型のり枠を詳細に説明する。
【0011】
[実施例1]
(1)保全先行型のり枠
本発明の保全先行型のり枠は、保全先行型のり枠部材1を、斜面に設けた断面略矩形状ののり枠2に係合するものである(
図1)。そして、斜面の上方には、従来から知られている工法によりアンカー部材3を打設し、その連結部31に一方の端部を係合した連結部材4の他方の端部を保全先行型のり枠部材1の連結部6に連結して構成する。
保全先行型のり枠部材1はのり枠2と一体に係合されており、連結部材4を介してアンカー部材3に連結しているため、のり枠2の背面空洞化が進行し、のり枠2と地盤との付着がなくなっても、アンカー部材3と連結部材4によりのり枠2を支持し、のり枠2の滑落を防止する。
連結部材4は、ワイヤーやチェーン等の高強度の部材であり、緊張状態ではなく、弛んだ状態でアンカー部材3と保全先行型のり枠部材1を連結しておくことで、地盤の変状に対してのり枠2が移動しても、徐々にその荷重が連結部材4及びアンカー部材2に作用することで、のり枠2を安定して支持することができる。
本実施例において、保全先行型のり枠部材1をのり枠2の格子毎に設けるが、保全先行型のり枠部材1を設ける間隔やその個数は、のり枠2の大きさや重量に合わせて適宜選択できる。
【0012】
(2)保全先行型のり枠部材
保全先行型のり枠部材1は、下部を開放した側面視略コ字状の係合部5と、係合部5の下端から係合部の内側方向に水平に突設する係止部51と、係合部5に突設するU字フック状の連結部6と、を有する鋼製の部材である(
図2)。
係合部5及び係止部51は、鋼板を略コ字状に折曲して構成する。
係止部51を設けた係合部5の下端と逆側の下端には、係合部5の外側方向に水平に固定部52を突設してもよい。固定部52は平板状であり、その中央にアンカー孔521を形成する。
また、係合部5はのり枠2を支持する際には荷重が作用する。このため、幅方向の中央から突設する補強リブ53を形成して変形を抑制してもよい。
【0013】
(3)保全先行型のり枠部材とのり枠の係合
保全先行型のり枠部材1の係合部5は、断面視略コ字状ののり枠2の表面に沿って位置する(
図3)。
のり枠2は従来行われている吹付のり枠工により造成するものであり、本実施例においては、型枠パネル21内部に鉄筋22を配筋して構成する。
保全先行型のり枠部材1の係止部51は、斜面の下側の型枠パネル21の下部から差し込まれ、のり枠2の下部に位置し、保全先行型のり枠部材1とのり枠2を一体に係合する。
また、保全先行型のり枠部材1の固定部52のアンカー孔521にアンカーピン7を挿通し、斜面に打ち込むことで、のり枠2の造成前であっても保全先行型のり枠部材1が型枠パネル21から外れて、斜面に沿って落下することを防止することができる。
【0014】
(4)保全先行型のり枠の構築方法
のり枠2の造成にあたって、間にスペーサ23を設けて対向した型枠パネル21を斜面上に配置する。型枠パネル21間には鉄筋22を配筋する。
そして、型枠パネル21の下部に保全先行型のり枠部材1の係止部51を差し込み、対向する型枠パネル21を跨いで保全先行型のり枠部材1を配置する。係止部51は保全先行型のり枠部材1の一方にしか設けていないため容易に保全先行型のり枠部材1を配置することができる。また、保全先行型のり枠部材1の固定部52のアンカー孔521にアンカーピン7を挿通して斜面に打ち込む。
次に、型枠パネル21間にモルタルを吹き付けて、のり枠2を造成する。
のり枠2を造成した後、保全先行型のり枠部材1より上方の斜面に打設したアンカー部材3の連結部31と、保全先行型のり枠部材1の連結部6に、連結部材4を連結する。連結部材4は緊張状態ではなく、弛んだ状態でアンカー部材3と保全先行型のり枠部材1を連結する。この工程は、のり枠2の造成前に行ってもよい。
このように、のり枠2の造成時から保全先行型のり枠部材1を設けてのり枠2の滑落を防止するため、安全性の高い、保全先行型ののり枠構造となる。
【0015】
[その他の実施例]
上述の実施例1では、保全先行型のり枠部材1の係合部5は、のり枠2の断面略矩形状に合わせて側面視略コ字状としたが、例えば側面視弧状とする等、のり枠の形状に合わせて適宜形状を選択してもよい(
図5)。
【符号の説明】
【0016】
1 保全先行型のり枠部材
2 のり枠、21 型枠パネル、22 鉄筋、23 スペーサ
3 アンカー部材、31 連結部
4 連結部材
5 係合部、51 係止部、52 固定部、521 アンカー孔、53 補強リブ
6 連結部
7 アンカーピン
【要約】
【課題】予めのり枠に固定することで背面空洞化によるのり枠の滑落を防止する保全先行型のり枠部材を提供する。
【解決手段】のり枠2の表面に沿って配置する係合部5と、係合部5の一方の下端から係合部5の内側方向に水平に突設する係止部51と、係合部5に突設するフック状の連結部6と、を有する、保全先行型のり枠部材1。
【選択図】
図1