(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】コンデンサモジュール
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20220922BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20220922BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01G4/228 J
H01G2/02 101E
H01G4/228 S
H01G4/38 A
(21)【出願番号】P 2021164216
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2018217473の分割
【原出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591040373
【氏名又は名称】ルビコン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 高久
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-011056(JP,A)
【文献】特開2007-324311(JP,A)
【文献】特開2006-319027(JP,A)
【文献】特開2012-105541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0362898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/228
H01G 2/02
H01G 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極とを有する第1コンデンサ素子と、第3電極と第4電極とを有する第2コンデンサ素子と、第1端子、第1連結部、第1接続片及び第2接続片を有する第1バスバーと、第2端子、第2連結部、第3接続片及び第4接続片を有する第2バスバーと、前記第1連結部と前記第2連結部とに介在する第1絶縁部材とを備え、
前記第1バスバーにおける前記第1端子、前記第1接続片及び前記第2接続片は、片側がそれぞれ前記第1連結部に接続されており、前記第1接続片における前記第1連結部との接続側の反対側が前記第1電極に接続されており、前記第2接続片における前記第1連結部との接続側の反対側が前記第3電極に接続されており、
前記第2バスバーにおける前記第2端子、前記第3接続片及び前記第4接続片は、片側がそれぞれ前記第2連結部に接続されており、前記第3接続片における前記第2連結部との接続側の反対側が前記第2電極に接続されており、前記第4接続片における前記第2連結部との接続側の反対側が前記第4電極に接続されており、
前記第1バスバーと前記第2バスバーとを介して前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子とが並設されており、
前記第1端子から前記第1接続片までの第1電路長(L1)と、前記第3接続片から前記第2端子までの第3電路長(L3)との総和(L1+L3)と、前記第1端子から前記第2接続片までの第2電路長(L2)と、前記第4接続片から前記第2端子までの第4電路長(L4)との総和(L2+L4)とが等しくなる(L1+L3=L2+L4)ように前記第1連結部と前記第2連結部とが形成されていることで、前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分される構成になっていることを特徴とするコンデンサモジュール。
【請求項2】
前記第1バスバーと前記第2バスバーは、いずれも一枚の板金が折り曲げ形成されていること
を特徴とする請求項1記載のコンデンサモジュール。
【請求項3】
前記第1連結部は、前記第1接続片との接続側の幅が前記第1端子との接続側の幅よりも大きく設定されており、且つ、前記第2連結部は、前記第4接続片との接続側の幅が前記第2端子との接続側の幅よりも大きく設定されており、
前記第1連結部と前記第2連結部とは互いに平行になるように配設されており、前記第1接続片と前記第3接続片とは互いに向かい合って配設されており、且つ、前記第2接続片と前記第4接続片とは互いに向かい合って配設されていること
を特徴とする請求項1または2記載のコンデンサモジュール。
【請求項4】
前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子は、いずれもフィルムコンデンサであること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のコンデンサモジュール。
【請求項5】
前記第1絶縁部材は、板状、シート状又はフィルム状であり、且つ、前記第1連結部と前記第2連結部の両方に平行な平面部を有し、前記平面部は、前記第1連結部よりも大きく設定されており、且つ、前記第2連結部よりも大きく設定されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のコンデンサモジュール。
【請求項6】
前記第1コンデンサ素子及び前記第2コンデンサ素子が収納されるケースと、前記ケースに充填される充填樹脂とをさらに備え、
前記ケースの樹脂充填側に、前記第1端子と前記第2端子とが所定間隔で面一になるように配設されていること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載のコンデンサモジュール。
【請求項7】
前記第1連結部の一部が前記ケースの樹脂充填側から突出しており、且つ、前記第2連結部の一部が前記ケースの樹脂充填側から突出していること
を特徴とする請求項6記載のコンデンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や産業機器における電力変換装置に、一例として、フィルムコンデンサが用いられている。大電力に対応するには大容量のコンデンサ素子が複数必要となるため、複数のコンデンサ素子の一方側の電極同士を一方のバスバー(電極板)によって接続し、また、他方側の電極同士を他方のバスバー(電極板)によって接続してコンデンサモジュールを構成する。一例として、インテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module:略称はIPM)に、コンデンサモジュールが直接取り付けられて用いられる。
【0003】
バスバーを配設したことで、コンデンサモジュールにおける等価直列インダクタンス(Equivalent series inductance:略称はESL)が増加するため、サージ電圧が増大して半導体素子の破壊や不要輻射ノイズの増加を招くという問題がある。
【0004】
そこで、バスバー同士の電流方向を互いに逆方向として相互インダクタンスを小さくすることによってESLを低減し、サージ電圧を抑制する取り組みがなされている。
【0005】
従来、2つのコンデンサ素子を並設し、端子部が略同一平面に位置するように折曲形成した一対の電極板を、絶縁体を介して重ね合わせて前記コンデンサ素子に接続した構造のケース入りコンデンサ(特許文献1:特開2007-324311号公報)が提案されており、また、正極バスバー及び負極バスバーは、モールド材の外に存在する露出部からケースの開口側に配置されたコンデンサ素子の一方の電極の近傍まで絶縁部材を介在させた状態で互いに対向配置されると共に、コンデンサ素子の側面において互いに対向しないよう配置され、ケースの壁面とコンデンサ素子の側面とが対向する箇所まで絶縁部材が延在した状態で、各コンデンサ素子がモールド材に埋設した構造の平滑コンデンサモジュール(特許文献2:特許第4655020号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-324311号公報
【文献】特許第4655020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の電極板は、接続片同士が互いに離れた位置に配設されており、端子部における折曲形成された部分がずれた状態で配設されている。特許文献2記載のバスバーについても同様に、中間部同士が互いに離れた位置に配設されている。そのため、各バスバーにおいて、電流が多く流れる部分の重なりが小さくなってしまい、ESLの増加抑制対策が不十分である。さらに、特許文献1と特許文献2に記載の構造の場合、隣り合うコンデンサ素子同士が互いの発熱の影響を受けやすく、発熱によって隣り合うコンデンサ素子の両方がコンデンサ特性の低下を招く虞がある。
【0008】
それに加えて、特許文献1記載の電極板は、加工精度上、外部接続用端子同士が同一平面に位置していない。また、特許文献2記載のバスバーは、構造上、外部接続用端子同士に段差が生じている。そのため、コンデンサモジュールの外部接続用端子を外部電源や外部機器等に接続する際に、段差を解消するためのスペーサ等が必要になるなど、実装に適していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、外部接続用端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように各バスバーを配設することで、バスバー同士の相互インダクタンスを小さくしてESLの増加を抑制した構造とし、尚且つ、隣り合うコンデンサ素子の発熱を外部に効率的に放熱可能な構造のコンデンサモジュールを提供することを目的とする。
【0010】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
本発明のコンデンサモジュールは、第1電極と第2電極とを有する第1コンデンサ素子と、第3電極と第4電極とを有する第2コンデンサ素子と、第1端子、第1連結部、第1接続片及び第2接続片を有する第1バスバーと、第2端子、第2連結部、第3接続片及び第4接続片を有する第2バスバーと、前記第1連結部と前記第2連結部とに介在する第1絶縁部材とを備え、前記第1バスバーにおける前記第1端子、前記第1接続片及び前記第2接続片は、片側がそれぞれ前記第1連結部に接続されており、前記第1接続片における前記第1連結部との接続側の反対側が前記第1電極に接続されており、前記第2接続片における前記第1連結部との接続側の反対側が前記第3電極に接続されており、前記第2バスバーにおける前記第2端子、前記第3接続片及び前記第4接続片は、片側がそれぞれ前記第2連結部に接続されており、前記第3接続片における前記第2連結部との接続側の反対側が前記第2電極に接続されており、前記第4接続片における前記第2連結部との接続側の反対側が前記第4電極に接続されており、前記第1バスバーと前記第2バスバーとを介して前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子とが並設されており、前記第1端子から前記第1接続片までの第1電路長(L1)と、前記第3接続片から前記第2端子までの第3電路長(L3)との総和(L1+L3)と、前記第1端子から前記第2接続片までの第2電路長(L2)と、前記第4接続片から前記第2端子までの第4電路長(L4)との総和(L2+L4)とが等しくなる(L1+L3=L2+L4)ように前記第1連結部と前記第2連結部とが形成されていることで、前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分される構成になっていることを特徴とする。前記第1バスバーと前記第2バスバーは、いずれも一枚の板金が折り曲げ形成されていることが好ましい。一例として、前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子は、いずれもフィルムコンデンサである。一例として、前記第1絶縁部材は、板状、シート状又はフィルム状であり、且つ、前記第1連結部と前記第2連結部の両方に平行な平面部を有し、前記平面部は、前記第1連結部よりも大きく設定されており、且つ、前記第2連結部よりも大きく設定されている。一例として、前記第1コンデンサ素子及び前記第2コンデンサ素子が収納されるケースと、前記ケースに充填される充填樹脂とをさらに備え、前記ケースの樹脂充填側に、前記第1端子と前記第2端子とが所定間隔で面一になるように配設されている。一例として、前記第1連結部の一部が前記ケースの樹脂充填側から突出しており、且つ、前記第2連結部の一部が前記ケースの樹脂充填側から突出している。
【0012】
この構成によれば、バスバーにおける各端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように第1バスバーと第2バスバーとが配設される。よって、第1バスバーと第2バスバーとの相互インダクタンスが小さくなってESLが低減できる。さらに、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子とが互いに近接する部分は特に温度が上昇しやすい部分であるので、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子との間に第1連結部と第2連結部とを配設することで、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子とが互いに近接する部分の発熱を、第1バスバーと第2バスバーとの両方から外部に効率的に放熱できる。
【0013】
前記第1連結部は、前記第1電極と前記第2電極との電極間方向における、前記第1接続片との接続側の幅が前記第1端子との接続側の幅よりも大きく設定されており、且つ、前記第2連結部は、前記第3電極と前記第4電極との電極間方向における、前記第4接続片との接続側の幅が前記第2端子との接続側の幅よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、第1コンデンサ素子及び第2コンデンサ素子の大容量化(サイズアップ)に対応しつつ、第1端子及び第2端子を、第1コンデンサ素子及び第2コンデンサ素子から離れた位置まで引き出して延設することで、第1端子及び第2端子と外部との接続が容易にできるとともに、第1連結部の第1端子との接続側と、第2連結部の第2端子との接続側とで、互いの電流方向をより確実に逆方向とすることができる。
【0014】
前記第1連結部と前記第2連結部とは互いに平行になるように配設されており、前記第1接続片と前記第3接続片とは互いに向かい合って配設されており、且つ、前記第2接続片と前記第4接続片とは互いに向かい合って配設されていることが好ましい。この構成によれば、第1バスバーと第2バスバーにおける各電路長が短くなってESLやESRが低減できる。例えば、前記第1接続片と前記第3接続片とは互いに平行になるように配設されており、且つ、前記第2接続片と前記第4接続片とは互いに平行になるように配設されている。この構成によれば、第1バスバーと第2バスバーにおける各電路長が最も短くなってESLやESRが低減できる。なお、ここで、接続片が平行になるように配設されているとの表記は、対向する接続片同士が略平行に配設されていることを指しており、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±5 [°]以内であり、好ましくは基準値±2.5[°]以内であり、さらに好ましくは基準値±1[°]以内である。
【0015】
前記第1端子から前記第1接続片までの第1電路長と、前記第3接続片から前記第2端子までの第3電路長との総和、及び、前記第1端子から前記第2接続片までの第2電路長と、前記第4接続片から前記第2端子までの第4電路長との総和、が等しくなるように前記第1連結部と前記第2連結部とが形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分される。このことにより、第1バスバーと第2バスバーとの相互インダクタンスを最小にすることが可能な構成となり、ESLが低減できる。なお、ここで、電路長の総和が等しくなるように形成されているとの表記は、電路長の総和が略同一長さに配設されていることを指しており、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±10[%]以内であり、好ましくは基準値±5[%]以内であり、さらに好ましくは基準値±2[%]以内である。
【0016】
前記第1バスバー及び前記第2バスバーは導体であり、一例として、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ニッケル、それらの合金、それらのめっき加工品、その他既知の導電性材料からなる。前記第1バスバー及び前記第2バスバーは、一例として、板状であり、プレス加工、レーザー加工、金型加工、その他既知の成形加工によって形成される。前記第1バスバー及び前記第2バスバーは、一例として、一枚の金属板から形成される。
【0017】
前記第1絶縁部材は、一例として、絶縁紙、絶縁性樹脂、絶縁性高分子、絶縁性ゲル、その他既知の絶縁性材料からなる。一例として、前記第1絶縁部材は、板状、シート状又はフィルム状であり、且つ、前記第1連結部と前記第2連結部のいずれかないしは両方に平行な平面部を有する。この構成によれば、絶縁耐力を確保しつつ、第1バスバーと第2バスバーとの位置合わせ等の組立作業が容易にできる。板状、シート状又はフィルム状の第1絶縁部材は、プレス加工、レーザー加工、金型加工、その他既知の成形加工によって形成される。一例として、前記第1絶縁部材は、前記第1接続片または前記第2接続片が貫通する第1貫通穴と、前記第3接続片または前記第4接続片が貫通する第2貫通穴とが形成されている。これにより、第1バスバーと第2バスバーとの位置合わせ等の組立作業が容易にできる。一例として、前記第1絶縁部材は、前記第1連結部と前記第2連結部のいずれのサイズよりも大きいサイズの板状、シート状又はフィルム状に形成される。これにより、沿面の絶縁耐力も得られる。
【0018】
前記第1コンデンサ素子、前記第2コンデンサ素子、前記第1バスバー、前記第2バスバー及び前記第1絶縁部材の組み合わせが複数備わっており、第3端子、第3連結部及び前記第1コンデンサ素子の数と対応した数の第5接続片を有する第3バスバーと、第4端子、第4連結部及び前記第2コンデンサ素子の数と対応した数の第6接続片を有する第4バスバーと、前記第3連結部と前記第4連結部とに介在する第2絶縁部材と、をさらに備え、前記第3バスバーにおける前記第3端子及び前記第5接続片は、片側がそれぞれ前記第3連結部に接続されており、前記第5接続片における前記第3連結部との接続側の反対側がそれぞれ前記第1電極又は前記第2電極に接続されており、前記第4バスバーにおける前記第4端子及び前記第6接続片は、片側がそれぞれ前記第4連結部に接続されており、前記第6接続片における前記第4連結部との接続側の反対側がそれぞれ前記第4電極又は前記第3電極に接続されており、前記第3連結部と前記第4連結部とは、前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子とに亘って配設されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第3端子と第4端子、及び、第5接続片と第6接続片の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように第3連結部と第4連結部とが配設される。よって、第3バスバーと第4バスバーの相互インダクタンスが小さくなってESLが低減できる。一例として、多相のインバータ回路で、複数の第1端子と第2端子の対を出力側の複数のパワー半導体にそれぞれ接続し、第3端子と第4端子の対を入力側に接続して使用することが可能なコンデンサモジュールとすることができる。また、一例として、多相の昇圧コンバータ回路で、複数の第1端子と第2端子の対を入力側の複数のパワーモジュールにそれぞれ接続し、第3端子と第4端子の対を出力側に接続して使用することが可能なコンデンサモジュールとすることができる。上記以外の回路においても、複数の第1端子と第2端子の対を回路の一方の側に接続し、第3端子と第4端子の対を回路の他方の側に接続して使用することが可能なコンデンサモジュールとすることができる。上記の構成とすることで、各種回路に使用可能な、コンパクト且つESLが低減されたコンデンサモジュールとすることができる。
【0020】
前記第1コンデンサ素子の一方側に前記第2コンデンサ素子が配設されていて前記第1コンデンサ素子の他方側に別の前記第1コンデンサ素子が配設されている構成、又は、前記第2コンデンサ素子の一方側に前記第1コンデンサ素子が配設されていて前記第2コンデンサ素子の他方側に別の前記第2コンデンサ素子が配設されている構成を含んでおり、隣り合う前記第5接続片同士と前記第6接続片同士とはそれぞれ先端側が互いに逆向きに配設されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第1絶縁部材が介在しない位置で隣り合って配設されるのは第1コンデンサ素子同士又は第2コンデンサ素子同士であるので、互いに同電位となって絶縁部材を介在させなくて済み、絶縁部材が削減できて、絶縁スペースの分小型化できる。
【0022】
前記第3端子から前記第5接続片までのそれぞれの第5電路長の総和、及び、前記第6接続片から前記第4端子までのそれぞれの第6電路長の総和、が等しくなるように前記第3連結部と前記第4連結部とが形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分される。このことにより、第3バスバーと第4バスバーの相互インダクタンスを最小にすることが可能な構成となり、ESLが低減できる。なお、ここで、電路長が等しくなるように形成されているとの表記は、電路長がそれぞれ略同一長さに配設されていることを指しており、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±10[%]以内であり、好ましくは基準値±5[%]以内であり、さらに好ましくは基準値±2[%]以内である。
【0023】
前記第3連結部と前記第4連結部とは、それぞれ折り曲げられて、前記第1コンデンサ素子の平面側と側面側、及び、前記第2コンデンサ素子の平面側と側面側に配設されていることが好ましい。この構成によれば、第3端子と第5接続片とのそれぞれの第5電路の合流部分のエリアが確保され、また、第4端子と第6接続片とのそれぞれの第6電路との合流部分のエリアが確保されるので、ESRが低減できる。
【0024】
前記第3バスバー及び前記第4バスバーは導体であり、一例として、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ニッケル、それらの合金、それらのめっき加工品、その他既知の導電性材料からなる。前記第3バスバー及び前記第4バスバーは、一例として、板状であり、プレス加工、レーザー加工、金型加工、その他既知の成形加工によって形成される。前記第3バスバー及び前記第4バスバーは、一例として、一枚の金属板から形成される。
【0025】
前記第2絶縁部材は絶縁体であり、一例として、絶縁紙、絶縁性樹脂、絶縁性高分子、絶縁性ゲル、その他既知の絶縁性材料からなる。一例として、前記第2絶縁部材は、板状、シート状又はフィルム状であり、且つ、前記第2連結部または前記第3連結部に平行な平面部を有することが好ましい。この構成によれば、絶縁耐力を確保しつつ、第3バスバーと第4バスバーとの位置決め等の組立作業が容易にできる。板状、シート状又はフィルム状の第2絶縁部材は、プレス加工、レーザー加工、金型加工、その他既知の成形加工によって形成される。
【0026】
前記第1端子と前記第2端子とが面一になるように配設されており、且つ、前記第3端子と前記第4端子とが面一になるように配設されていることが好ましい。この構成によれば、外部電源や外部機器等に接続する際に、スペーサ等は不要となるので、実装に適した構成となる。なお、ここで、面一になるように配設されているとの表記は、端子がそれぞれ略同一平面上に配設されていることを指しており、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±0.5[mm]以内であり、好ましくは基準値±0.25[mm]以内であり、さらに好ましくは基準値±0.1[mm]以内である。
【0027】
前記第1コンデンサ素子の静電容量と前記第2コンデンサ素子の静電容量とが等しくなるように設定されていることが好ましい。この構成によれば、第1コンデンサ素子と第2コンデンサ素子のそれぞれに対して、均等に電圧及び電流が配分され、動作が安定する。そして、対をなしている前記第1コンデンサ素子と前記第2コンデンサ素子の静電容量の和は、すべてのコンデンサ素子の対について等しくなるように設定されていることが好ましい。この構成によれば、すべてのコンデンサ素子の対に対して、均等に電圧及び電流が配分され、動作が安定する。なお、ここで、静電容量が等しくなるように設定されているとの表記は、コンデンサ素子がそれぞれ略同一静電容量値であることを指しており、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±10[%]以内であり、好ましくは基準値±5[%]以内であり、さらに好ましくは基準値±2[%]以内である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、バスバーにおける各端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように各バスバーが配設され、バスバー同士の相互インダクタンスを小さくしてESLの増加を抑制した構造となり、サージ電圧が抑制できる。尚且つ、第1バスバーと第2バスバーとを介して、隣り合う第1コンデンサ素子及び第2コンデンサ素子からの発熱を外部に効率的に放熱できるので動作が安定する。よって、ESLを抑制しつつ動作が安定し、大電力に対応した構造のコンデンサモジュールが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明の実施形態のコンデンサモジュールを示す概略の斜視図である。
【
図2】
図2は
図1のコンデンサモジュールにおけるケースを取付ける前の状態を示す概略の斜視図である。
【
図4】
図4Aは第3バスバーを示す概略の斜視図であり、
図4Bは第4バスバーを示す概略の斜視図である。
【
図5】
図5Aはコンデンサ配置の第1形態を示す概略の斜視図であり、
図5Bはコンデンサ配置の第1形態における概略の展開図である。
【
図6】
図6Aは第2バスバーを示す概略の斜視図であり、
図6Bは第1バスバーを示す概略の斜視図である。
【
図7】
図7Aはコンデンサ配置の第2形態を示す概略の斜視図であり、
図7Bはコンデンサ配置の第2形態における概略の展開図である。
【
図8】
図8Aは第2バスバーを示す概略の斜視図であり、
図8Bは第1バスバーを示す概略の斜視図である。
【
図9】
図9Aはコンデンサ配置の第3形態を示す概略の斜視図であり、
図9Bはコンデンサ配置の第3形態における概略の展開図である。
【
図11】
図11Aはコンデンサ配置の第4形態を示す概略の斜視図であり、
図11Bはコンデンサ配置の第4形態における概略の展開図である。
【
図13】
図13はコンデンサモジュールの適用例を示す概略の回路図である。
【
図14】
図14は本実施形態のコンデンサモジュールの他の例を示す概略の斜視図である。
【
図15】
図15は実施例のコンデンサモジュールを示す概略の斜視図である。
【
図16】
図16Aは比較例1のコンデンサモジュールを示す概略の斜視図であり、
図16Bは比較例2のコンデンサモジュールを示す概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態のコンデンサモジュール1の例を示す概略の斜視図である。
図2は、
図1のコンデンサモジュール1におけるケース20を取付ける前の状態を示す概略の斜視図である。
図3は、
図2の状態となる前の状態を示す概略の展開図である。コンデンサモジュール1は、一例として、第1コンデンサ素子11、第2コンデンサ素子12、第1バスバー31、第2バスバー32及び第1絶縁部材41の組み合わせが複数備わっており、さらに第3バスバー、第4バスバー及び第2絶縁部材が備わっており、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とがケース20に収納されて充填樹脂22が充填されている構成である。
【0031】
ここで、コンデンサモジュール1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。コンデンサモジュール1を実際に使用する際には、これらの向きに限定されず、どのような向きで使用しても支障ない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0032】
コンデンサモジュール1は、ケース20の樹脂充填側(
図1のY方向矢印の反対側)に、第1端子31aと第2端子32aとが面一になるように所定間隔で配設されており、また、ケース20の樹脂充填側と直交する側(
図1のX方向矢印側)に、第3端子33aと第4端子34aとが面一になるように所定間隔で配設されている。
【0033】
ケース20は、一例として、アルミニウム等の金属や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)等の耐熱性樹脂からなる。充填樹脂22は、一例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の耐熱性樹脂からなる。
【0034】
第1コンデンサ素子11は、片側に第1電極11aが配設されており、第1電極11aが配設された側の反対側に第2電極11bが配設されている。第2コンデンサ素子12は、片側に第3電極12aが配設されており、第3電極12aが配設された側の反対側に第4電極12bが配設されている。第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とは、一例として、蒸着フィルム(メタライズドフィルム)を誘電体としたフィルムコンデンサである。第1電極11a、第2電極11b、第3電極12a及び第4電極12bは、一例として、溶射金属電極である。一例として、第1コンデンサ素子11の静電容量と、第2コンデンサ素子12の静電容量とは等しい。一例として、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とは同じものである。
【0035】
第1コンデンサ素子11、第2コンデンサ素子12、第1バスバー31、第2バスバー32及び第1絶縁部材41の組み合わせは、一例として、
図5Aに示すコンデンサ配置の第1形態51、
図7Aに示すコンデンサ配置の第2形態52、
図9Aに示すコンデンサ配置の第3形態53、
図11Aに示すコンデンサ配置の第4形態54が挙げられる。第1形態51、第2形態52、第3形態53、第4形態54はいずれも、第1バスバー31と第2バスバー32とを介して第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とが並設されている構成となっている。
【0036】
第1バスバー31及び第2バスバー32は、導電性の金属板からなり、一例として、プレス加工によって形成される。第1バスバー31は、第1端子31a、第1連結部31b、第1接続片31c及び第2接続片31dを有する。第2バスバー32は、第2端子32a、第2連結部32b、第3接続片32c及び第4接続片32dを有する。
【0037】
第1絶縁部材41は、第1連結部31bと第2連結部32bとに介在する。第1絶縁部材41は、一例として、絶縁紙、絶縁性樹脂、絶縁性高分子、絶縁性ゲル、その他既知の絶縁性材料からなる。一例として、第1絶縁部材41は、板状、シート状又はフィルム状であり、且つ、第1連結部31bと第2連結部32bのいずれかないしは両方に平行な平面部を有する。
【0038】
本実施形態におけるコンデンサ配置の第1形態~第4形態について以下に説明する。
【0039】
(コンデンサ配置の第1形態)
図5Aはコンデンサ配置の第1形態51を示す概略の斜視図であり、
図5Bはコンデンサ配置の第1形態51における概略の展開図であり、
図6Aは第2バスバー32を示す概略の斜視図であり、
図6Bは第1バスバー31を示す概略の斜視図である。
【0040】
図6Aに示すとおり、第2バスバー32における第2端子32a、第3接続片32c及び第4接続片32dは、片側がそれぞれ第2連結部32bに接続されている。また、
図6Bに示すとおり、第1バスバー31における第1端子31a、第1接続片31c及び第2接続片31dは、片側がそれぞれ第1連結部31bに接続されている。コンデンサ配置の第1形態51における第1連結部31bと第2連結部32bとは略平行に配されており、第1端子31aと第2端子32aとは先端が逆向きで略平行に配されており、第1接続片31cと第4接続片32dとは先端が逆向きで略平行に配されており、且つ、第2接続片31dと第3接続片32cとは先端が逆向きで略平行に配されている。この構成により、第1バスバー31と第2バスバー32における各電路長が短くなってESLが低減できる。
【0041】
第1接続片31c、第2接続片31d、第3接続片32c又は第4接続片32dと、第1電極11a、第2電極11b、第3電極12a又は第4電極12bとは、はんだ付け、導電接着剤、その他既知の接続方法によって電気接続される。
【0042】
図6Aに示す電流Iaは、第2バスバー32における第2端子32aと第3接続片32cとの第3電路L3と、第2端子32aと第4接続片32dとの第4電路L4とが合流するエリアの電流である。
図6Bに示す電流Iaは、第1バスバー31における第1端子31aと第1接続片31cとの第1電路L1と、第1端子31aと第2接続片31dとの第2電路L2とが合流するエリアの電流である。
図6Aに示す電流Iaと
図6Bに示す電流Iaとの電流方向は互いに逆方向となる。なお、第1電路L1、第2電路L2、第3電路L3、第4電路L4は、図中の破線で例示している。
【0043】
本実施形態は、第1電路L1と第3電路L3との総和、及び、第2電路L2と第4電路L4との総和、が等しくなるように第1連結部31bと第2連結部32bとが形成されている。この構成によれば、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分され、動作が安定する。そして、第1バスバー31と第2バスバー32との相互インダクタンスを最小にすることが可能な構成となり、ESLが低減できる。
【0044】
図5Aと
図5Bに示すとおり、第1接続片31cにおける第1連結部31bとの接続側の反対側が第1電極11aに接続されており、第2接続片31dにおける第1連結部31bとの接続側の反対側が第3電極12aに接続されており、第3接続片32cにおける第2連結部32bとの接続側の反対側が第2電極11bに接続されており、且つ、第4接続片32dにおける第2連結部32bとの接続側の反対側が第4電極12bに接続されている。そして、第1バスバー31と第2バスバー32とを介して第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とが並設されている。
【0045】
この構成によれば、バスバーにおける各端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように第1バスバー31と第2バスバー32とが配設される。よって、第1バスバー31と第2バスバー32との相互インダクタンスが小さくなってESLが低減できる。さらに、第1コンデンサ素子11の発熱を、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12との間に配設された第1連結部31bを介して第1バスバー31から外部に放熱できる。尚且つ、第2コンデンサ素子12の発熱を、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12との間に配設された第2連結部32bを介して第2バスバー32から外部に放熱できる。よって、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の発熱を、第1バスバー31及び第2バスバー32から外部に効率的に放熱できるので動作が安定する。よって、ESLを抑制しつつ動作が安定し、大電力に対応した構造となる。
【0046】
図5Bと
図6Aに示すとおり、第2連結部32bは、第3電極12aと第4電極12bとの電極間方向(図中のZ方向)における、第4接続片32dとの接続側の幅W21が第2端子32aとの接続側の幅W22よりも大きく設定されている(W21>W22)。また、第1連結部31bは、第1電極11aと第2電極11bとの電極間方向(図中のZ方向)における、第1接続片31cとの接続側の幅W11が第1端子31aとの接続側の幅W12よりも大きく設定されている(W11>W12)。この構成によれば、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の大容量化(サイズアップ)に対応しつつ、第1端子31a及び第2端子32aを、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12から離れた位置に延設することで外部との接続が容易にできる。尚且つ、第1連結部31bの第1端子31aとの接続側と、第2連結部32bの第2端子32aとの接続側とで、互いの電流方向をより確実に逆方向とすることができる。
【0047】
図5Bの例では、第1絶縁部材41は、第1連結部31bと第2連結部32bのいずれのサイズよりも大きいサイズの絶縁紙であり、第1連結部31bと第2連結部32bとにそれぞれ平行な平面部を有する。また、第1絶縁部材41は、第2接続片31dが貫通する第1貫通穴41aと、第3接続片32cが貫通する第2貫通穴41bとが形成されている。この構成によれば、絶縁耐力を確保しつつ、第1バスバー31と第2バスバー32との位置合わせ等の組立作業が容易にできる。
【0048】
(コンデンサ配置の第2形態)
図7Aはコンデンサ配置の第2形態52を示す概略の斜視図であり、
図7Bはコンデンサ配置の第2形態52における概略の展開図であり、
図8Aは第2バスバー32を示す概略の斜視図であり、
図8Bは第1バスバー31を示す概略の斜視図である。コンデンサ配置の第2形態52における、コンデンサ配置の第1形態51との相違点は、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12との配置(図中のX方向における配置)が左右逆になっており、それに伴って、第1接続片31cと第2接続片31dとの配置が左右逆になっており、且つ、第3接続片32cと第4接続片32dとの配置が左右逆になっている。
【0049】
(コンデンサ配置の第3形態)
図9Aはコンデンサ配置の第3形態53を示す概略の斜視図であり、
図9Bはコンデンサ配置の第3形態53における概略の展開図であり、
図10Aは第2バスバー32を示す概略の斜視図であり、
図10Bは第1バスバー31を示す概略の斜視図である。コンデンサ配置の第3形態53における、コンデンサ配置の第1形態51との相違点は、第2コンデンサ素子12の配置(図中のZ方向における配置)が上下逆の配置になっており、それに伴って、第2接続片31dの配置が上下逆になっており、且つ、第4接続片32dの配置が上下逆になっている。
【0050】
(コンデンサ配置の第4形態)
図11Aはコンデンサ配置の第4形態54を示す概略の斜視図であり、
図11Bはコンデンサ配置の第4形態54における概略の展開図であり、
図12Aは第2バスバー32を示す概略の斜視図であり、
図12Bは第1バスバー31を示す概略の斜視図である。コンデンサ配置の第4形態54における、コンデンサ配置の第3形態53との相違点は、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の配置(図中のZ方向における配置)が上下逆の配置になっており、それに伴って、第1接続片31c及び第2接続片31dの配置が上下逆になっており、且つ、第3接続片32c及び第4接続片32dの配置が上下逆になっている。補足すると、上述した第1形態51、第2形態52、第3形態53、第4形態54のいずれか1種以上の構成において、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の配置を、図中のY方向及びZ方向に平行な平面に沿って90度回動した配置にし、それに伴って、第1接続片31c、第2接続片31d、第3接続片32c及び第4接続片32dの配置を、同じ方向に同様の角度で回動した配置にする場合がある。なお、ここで、同様の角度との表記は、製造上の許容公差を含んでいる。許容公差は、一例として基準値±5 [°]以内であり、好ましくは基準値±2.5[°]以内であり、さらに好ましくは基準値±1[°]以内である。
【0051】
引き続き、コンデンサモジュール1について以下に説明する。
【0052】
図2と
図3に示す例では、コンデンサモジュール1は、第3端子33a側から左側(図中X方向矢印の反対側)に向かって、コンデンサ配置の第1形態51、コンデンサ配置の第2形態52、コンデンサ配置の第1形態51が順に配設されている。そして、3つの第1コンデンサ素子11及び3つの第2コンデンサ素子12の上側(図中Z方向矢印側)に向かって、第3バスバー33、第2絶縁部材42、第4バスバー34が順に配設されている。
【0053】
図4Aは第3バスバー33を示す概略の斜視図であり、
図4Bは第4バスバー34を示す概略の斜視図である。
図4Aに示すとおり、第3バスバー33における第3端子33aと、3つの第5接続片33cとは、片側がそれぞれ第3連結部33bに接続されている。また、
図4Bに示すとおり、第4バスバー34における第4端子34aと、3つの第6接続片34cとは、片側がそれぞれ第4連結部34bに接続されている。
【0054】
そして、第5接続片33cにおける第3連結部33bとの接続側の反対側が第1電極11aに接続されており、第6接続片34cにおける第4連結部34bとの接続側の反対側が第4電極12bに接続されており、第3連結部33bと第4連結部34bとは、複数の第1コンデンサ素子11と複数の第2コンデンサ素子12とに亘って配設されている。
【0055】
第5接続片33c又は第6接続片34cと、第1電極11a、第2電極11b、第3電極12a又は第4電極12bとは、はんだ付け、導電接着剤、その他既知の接続方法によって電気接続される。
【0056】
図4Aに示す電流Idは、第3バスバー33における第3端子33aと第5接続片33cとの複数の第5電路L51、L52、L53が合流するエリアの電流である。
図4Bに示す電流Idは、第4バスバー34における第4端子34aと第6接続片34cとの複数の第6電路L61、L62、L63が合流するエリアの電流である。
図4Aに示す電流Idと
図4Bに示す電流Idとの電流方向は互いに逆方向となる。なお、第5電路L51、L52、L53、第6電路L61、L62、L63は、図中の破線で例示している。
【0057】
本実施形態は、第5電路L51、L52、L53の総和、及び、第6電路L61、L62、L63の総和、が等しくなるように第3連結部33bと第4連結部34bとが形成されている。この構成によれば、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12のそれぞれに対して等長配線になり、均等に電流配分され、動作が安定する。そして、第3バスバー33と第4バスバー34との相互インダクタンスを最小にすることが可能な構成となり、ESLが低減できる。
【0058】
図2と
図3とに示す例では、第1コンデンサ素子11の一方側に第2コンデンサ素子12が配設されていて、第1コンデンサ素子11の他方側に別の前記第1コンデンサ素子が配設されている構成を含んでおり、また、第2コンデンサ素子12の一方側に第1コンデンサ素子11が配設されていて、第2コンデンサ素子12の他方側に別の第2コンデンサ素子12が配設されている構成を含んでおり、隣り合う第5接続片33c同士は先端側が互いに逆向きに配設されており、また、隣り合う第6接続片34c同士は先端側が互いに逆向きに配設されている。この構成によれば、第1絶縁部材41が介在しない位置で隣り合って配設されるのは第1コンデンサ素子11同士又は第2コンデンサ素子12同士であるので、互いに同電位となって絶縁部材を介在させなくて済み、絶縁部材が削減できて、絶縁スペースの分小型化できる。
【0059】
第3バスバー33及び第4バスバー34は、導電性の金属板からなり、一例として、プレス加工によって形成される。第3連結部33bと第4連結部34bとは、それぞれ折り曲げられて、第1コンデンサ素子11の平面側と側面側、及び、第2コンデンサ素子12の平面側と側面側に配設されている。この構成によれば、第3端子33aと第5接続片33cとのそれぞれの第5電路L51、L52、L53の合流部分のエリアが確保され、また、第4端子34aと第6接続片34cとのそれぞれの第6電路L61、L62、L63との合流部分のエリアが確保されるので、ESRが低減できる。
【0060】
図13はコンデンサモジュール1の適用例を示す概略の回路図である。
図13は、三相インバータ回路の例であり、直流電源E1と絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:略称はIGBT)との間に平滑用のコンデンサとしてコンデンサモジュール1が基板実装されている。ここでは、コンデンサモジュール1における第3端子33aが直流電源E1のプラス側に接続されて、第4端子34aが直流電源E1のマイナス側に接続される。また、コンデンサモジュール1における第1端子31aがIGBT71のコレクタ側に接続されて、第2端子32aがIGBT71のゲート側に接続される。そして、駆動回路70からの制御信号によって三相交流負荷であるモータM1が駆動される。ここで第3端子33aからの電流Idは、3つに分流された電流Iaとなって3つの第1端子31aそれぞれから位相を120度ずつずらしてモータM1に通電される。
【0061】
引き続き、コンデンサモジュール1の他の例であるコンデンサモジュール10について以下に説明する。
【0062】
図14は、コンデンサモジュール10を示す概略の斜視図である。コンデンサモジュール10は、第1コンデンサ素子11、第2コンデンサ素子12、第1バスバー31、第2バスバー32及び第1絶縁部材41の組み合わせが一つ備わっており、一例として、上述した第1形態51、第2形態52、第3形態53、第4形態54のいずれか1種の構成が適用できる。そして、第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とがケース21に収納されて充填樹脂22が充填されており、ケース21の樹脂充填側(
図14のY方向矢印の反対側)に、第1端子31aと第2端子32aとが面一になるように所定間隔で配設されている。コンデンサモジュール10は、一例として、単相インバータ回路やコンバータ回路に適用される。
【0063】
上述した本実施形態によれば、バスバーにおける各端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように各バスバーが配設され、バスバー同士の相互インダクタンスを小さくしてESLの増加を抑制した構造となり、サージ電圧が抑制できる。尚且つ、隣り合う第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の発熱を、第1バスバー31及び第2バスバー32から外部に効率的に放熱できるので動作が安定する。よって、ESLを抑制しつつ動作が安定し、大電力に対応した構造となる。
【0064】
続いて、コンデンサモジュール10の実施例について、以下に説明する。
【0065】
[実施例]
実施例は、
図15に示すコンデンサ配置の第2形態52を有するコンデンサモジュール10である。第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とは、同じ静電容量のフィルムコンデンサである。第1バスバー31と第2バスバー32とは銅の板金からなる。
【0066】
[比較例1]
比較例1は、
図16Aに示すコンデンサ配置の形態151を有するコンデンサモジュールである。比較例1は、バスバー131が、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の手前側(図中のY方向矢印の反対側)の電極と接続されており、また、バスバー132が、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の奥側(図中のY方向矢印側)の電極と接続されている。そして、バスバー131の端子の平坦面とバスバー132の端子の平坦面とが略同一平面に位置するように折曲形成されている。上記以外は実施例1と同じ条件である。
【0067】
[比較例2]
比較例2は、
図16Bに示すコンデンサ配置の形態152を有するコンデンサモジュールである。比較例2は、バスバー133が、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の手前側(図中のY方向矢印の反対側)の電極と接続されており、また、バスバー134が、第1コンデンサ素子11及び第2コンデンサ素子12の奥側(図中のY方向矢印側)の電極と接続されている。そして、バスバー133の端子の平坦面とバスバー134の端子の平坦面とが絶縁部材141を介して上下(図中のZ方向)に重なって位置するように折曲形成されている。上記以外は実施例1と同じ条件である。
【0068】
上述の実施例と比較例1~2の各コンデンサモジュールについて、インピーダンスアナライザを用いてESLを測定し比較した。周波数10[MHz]におけるESLの比較結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1に示すように、実施例は、比較例1~2に比べてESLが大幅に抑制された結果となった。実施例1は、ESLが比較例1の0.04倍であり、比較例2の約0.13倍であった。
【0071】
表1の結果から、実施例のように、第1バスバー31と第2バスバー32とを介して第1コンデンサ素子11と第2コンデンサ素子12とが並設されている構成としたことで、バスバーにおける各端子の直近までバスバー同士の電流方向が互いに逆方向となるように各バスバーが配設され、バスバー同士の相互インダクタンスが小さくなってESLが抑制された構造となったものと考えられる。
【0072】
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1、10 コンデンサモジュール
11 第1コンデンサ素子
11a 第1電極
11b 第2電極
12 第2コンデンサ素子
12a 第3電極
12b 第4電極
21 ケース
22 充填樹脂
31 第1バスバー
31a 第1端子
31b 第1連結部
31c 第1接続片
31d 第2接続片
32 第2バスバー
32a 第2端子
32b 第2連結部
32c 第3接続片
32d 第4接続片
33 第3バスバー
33a 第3端子
33b 第3連結部
33c 第5接続片
34 第4バスバー
34a 第4端子
34b 第4連結部
34c 第6接続片
41 第1絶縁部材
42 第2絶縁部材
51 第1形態(コンデンサ配置の第1形態)
52 第2形態(コンデンサ配置の第2形態)
53 第3形態(コンデンサ配置の第3形態)
54 第4形態(コンデンサ配置の第4形態)
L1 第1電路長
L2 第2電路長
L3 第3電路長
L4 第4電路長
L51、L52、L53 第5電路長
L61、L62,L63 第6電路長
W11、W12、W21、W22 幅