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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】超音波媒介神経刺激
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
A61N7/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021509975
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2019000941
(87)【国際公開番号】W WO2020039257
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/722,509
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508154863
【氏名又は名称】インサイテック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボートマン, コビ
(72)【発明者】
【氏名】ビテック, シュキ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533526(JP,A)
【文献】特表2011-527931(JP,A)
【文献】特表2013-519495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0151142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束超音波を使用して、少なくとも1つの脳疾患または障害に関連付けられた少なくとも1つの標的領域内の神経活動を刺激するためのシステムであって、前記システムは、
複数のトランスデューサ要素を備えている超音波トランスデューサと、
コントローラと
を備え、
前記コントローラは、
(a)第1の一続きの超音波パルスを前記標的領域に伝送することと、
(b)前記超音波パルスから生じる前記標的領域における前記神経活動示す生理学的パラメータの測定値をもたらすことと、
(c)記測定値に少なくとも部分的に基づいて前記複数のトランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第1のパラメータ値を調節することにより、前記神経活動の標的目標を達成すること
(d)前記一続きの超音波パルスに前記標的領域において焦点を作成させることと、
(e)前記焦点における温度の測定値をもたらすことと、
(f)前記温度の測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のトランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第2のパラメータ値を調節することにより、前記標的領域への損傷を回避することと
を行うように構成されている、システム。
【請求項2】
前記システムは、前記標的領域における前記生理学的パラメータを測定するための監視システムをさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記監視システムは、fMRI、ASL MRI、EEG、またはfNIRSのうちの少なくとも1つを備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記生理学的パラメータは、前記標的領域における血流の変化または組織中の化学物質の変化のうちの少なくとも一方を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記標的領域の複数のサブ領域における前記焦点の操向をもたらすようにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、複数の標的領域における前記焦点の連続的な操向をもたらすようにさらに構成されており、前記複数の標的領域のそれぞれは、脳疾患または障害に関連付けられており、複数の異なる標的領域は、複数の異なる脳疾患または障害に関連付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2のパラメータ値は、周波数、位相、振幅、またはアクティブ化持続時間のうちの少なくとも1つを備えている、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを備え、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記超音波トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、前記標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して伝送させるようにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記超音波トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、前記標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に複数の超音波パルスの一続きを実質的に同時に伝送させるようにさらに構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記超音波トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して伝送させるようにさらに構成されており、前記第1および第2の標的領域は、複数の異なる脳疾患または障害に関連付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記超音波トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に複数の超音波パルスの一続きを実質的に同時に伝送させるようにさらに構成され、前記第1および第2の標的領域は、複数の異なる脳疾患または障害に関連付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記生理学的パラメータの測定値と前記標的目標とを比較することと、
前記標的目標が満たされるまで、(a)第1の一続きの超音波パルスを前記標的領域に伝送することと、(b)前記超音波パルスから生じる前記標的領域における前記神経活動を示す生理学的パラメータの測定値をもたらすことと、(c)前記測定値に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のトランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第1のパラメータ値を調節することとを繰り返すことと
を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のパラメータ値は、周波数、位相、振幅、またはトランスデューサアクティブ化持続時間のうちの少なくとも1つを備えている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年8月24日に出願された米国仮特許出願第62/722,509号の優先権および利点を主張し、参照することによってその全体として本明細書に組み込む。
(発明の分野)
【0002】
本発明は、概して、神経刺激のためのシステムおよび方法に関し、より具体的に、集束超音波を使用した神経刺激に関する。
【背景技術】
【0003】
深部脳刺激(DBS)は、電気インパルスが脳内の特定の疾患または障害関連標的に送信される神経外科手術手技である。これらの信号は、異常インパルスを調整し、または、有益なこととして、脳内のある細胞および化学物質に影響を及ぼし、それによって、神経的疾患または障害(例えば、振戦、パーキンソン病、ジストニア、および強迫性障害)を軽減する。典型的に、DBSは、神経刺激装置の埋め込みを伴う3つの医療構成要素有し、3つの医療構成要素は、電気インパルスを制御するために患者の胸部内に埋め込まれるパルス発生器(IPG)と、インパルスを患者の脳の1つまたは2つの核に送達するために患者のそれらに据え付けられる4つの電極と、電極をIPGに接続する延長部である。しかしながら、神経刺激装置埋め込みは、外科手術を要求し、それは、疼痛を伴い得、感染症のリスクをもたらし得る。加えて、神経刺激装置は、バッテリが枯渇するとき、またはデバイスが誤作動する場合、置換される必要があり得る。
【0004】
さらに、埋め込まれると、電極は、脳の固定場所において最大で2つの領域を刺激する。しかしながら、治療有効性を増加させるように、疾患/障害に関連付けられるより多くの領域を刺激することが望ましくあり得る。加えて、患者は、効果的治療のために3つ以上の領域において脳刺激を要求する複数の疾患/障害を示し得る。その結果、所望に応じて刺激される場所を変更する能力を伴う複数の(例えば、3つ以上の)標的場所における脳刺激を促進する非侵襲性アプローチの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、超音波トランスデューサアレイによって印加される経頭蓋集束超音波(すなわち、約20キロヘルツを上回る周波数を有する音響波)を使用して、脳の複数の(例えば、3つ以上の)領域を非侵襲的に刺激するためのシステムおよび方法を提供する。トランスデューサアレイは、平坦または湾曲表面を形成するために「タイル状」にされた複数のトランスデューサ要素を含み得、ドライバ信号の異なる位相を用いて、異なる要素を駆動することによって、要素からのビームが、標的領域に向けられ、焦点に集合的に収束し得る。臨床上有意な温度上昇をもたらさない低強度で提供される焦点における音響圧力が、励起性を効果的に変調し、高空間選択性を伴って、脳の超音波処置された領域を刺激し得る。その結果、複数の超音波処置セッション(例えば、4週間にわたって1週間あたり1時間)は、従来の神経刺激装置(例えば、IPGおよび埋め込み式電極)に匹敵する様式において、標的領域に影響を及ぼし得る(例えば、電気インパルスの調整、その中のある細胞または化学物質の変化等)。
【0006】
種々の実施形態において、トランスデューサ要素から放出される音響波またはパルスの相対的位相は、音響ビームの焦点を操向させるように動的に調節される。これは、所望に応じて、超音波媒介神経刺激が複数の領域(例えば、標的領域内の複数のサブ領域または複数の標的領域)に印加されることを可能にする。加えて、トランスデューサ要素は、複数のサブアレイにグループ分けされ得、各サブアレイ内のトランスデューサ要素の設定(例えば、相対的位相、周波数、および/または振幅)は、焦点を所望の脳領域に作成するように、独立して、かつ別個に、決定されることができる。故に、サブアレイは、複数の焦点を発生させ、実質的に同時に、または連続して(非常に短遅延を有する)、脳内の複数の領域を刺激することができる。このアプローチは、有利なこととして、疾患/障害に特有の脳領域の刺激される体積を増加させ、それによって、治療有効性を向上させ得る。代替として、このアプローチは、異なる疾患/障害に関連する複数の脳領域が同一超音波手技中に刺激されることを可能にし、それによって、複数の疾患/障害の同時治療を可能にし得る。
【0007】
種々の実施形態において、超音波処置された脳領域の神経活動または他の治療効果が、超音波媒介神経刺激中、測定システム(機能的磁気共鳴画像法(fMRI)および/または脳波記録(EEG)等)を使用して、リアルタイムで監視される。トランスデューサ要素の設定は、次いで、標的治療目標(例えば、血流の所望の変化)が達成されることを確実にするように、リアルタイムフィードバックに基づいて調節され得る。
【0008】
故に、種々の実施形態は、複数の(例えば、3つ以上)標的領域が、実質的に同時に、または連続して、治療のために刺激されることを可能にする非侵襲性集束超音波媒介神経刺激を提供する。加えて、超音波の印加中、標的領域の神経活動を監視し、それに基づいて、超音波処置調節のためのリアルタイムフィードバックを提供することによって、効果的かつ効率的治療が、達成され得る。
【0009】
故に、一側面において、本発明は、集束超音波を使用して、1つ以上の脳疾患または障害に関連付けられた1つ以上の標的領域内の神経活動を刺激するためのシステムに関する。種々の実施形態において、システムは、複数のトランスデューサ要素を有する超音波トランスデューサと、(a)第1の一続きの超音波パルス/バーストを標的領域に伝送し、(b)超音波パルス/バーストから生じる標的領域における神経活動を示す生理学的パラメータ(例えば、標的領域における血流の変化または組織中の化学物質の変化)の測定値をもたらし、(c)少なくとも部分的に測定値に基づいて、神経活動の標的目標を達成するように、1つ以上のトランスデューサ要素に関連付けられた第1のパラメータ値(例えば、周波数、位相、振幅、および/またはトランスデューサアクティブ化持続時間)を調節するように構成されたコントローラとを含む。1つの実装において、システムは、標的領域における生理学的パラメータを測定するための監視システム(例えば、fMRI、ASL MRI、EEG、および/またはfNIRS)をさらに含む。
【0010】
加えて、コントローラは、一続きの超音波パルス/バーストをもたらし、焦点を標的領域に作成することと、焦点における温度の測定値をもたらすことと、少なくとも部分的に測定された温度に基づいて、トランスデューサ要素に関連付けられた第2のパラメータ値(例えば、周波数、位相、振幅、および/またはアクティブ化持続時間)を調節し、標的領域への損傷を回避することとを行うようにさらに構成されている。一実施形態において、コントローラは、焦点の操向を標的領域の複数のサブ領域においてもたらすようにさらに構成されている。別の実施形態において、コントローラは、焦点の連続的な操向を複数の標的領域においてもたらすようにさらに構成され、複数の標的領域の各々は、脳疾患または障害に関連付けられ、異なる標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている。
【0011】
いくつかの実施形態において、超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを含み、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を有する。コントローラは、トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、連続して、または実質的に同時に、それぞれ、複数の超音波パルスの一続きを標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に伝送させるようにさらに構成され得る。加えて、または代替として、コントローラは、トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、連続して、または実質的に同時に、複数の超音波パルスの一続きを、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に伝送させるようにさらに構成され得、第1および第2の標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられる。いくつかの実施形態において、コントローラは、測定された生理学的パラメータを標的目標に対して比較し、標的目標が満たされるまで、ステップ(a)-(c)を繰り返すようにさらに構成される。
【0012】
別の側面において、本発明は、1つ以上の脳疾患または障害に関連付けられた1つ以上の標的領域内の神経活動を刺激する方法に関する。種々の実施形態において、方法は、複数のトランスデューサ要素を有する超音波トランスデューサから、第1の一続きの超音波パルス/バーストを標的領域に伝送することと、超音波パルス/バーストから生じる標的領域における神経活動を示す生理学的パラメータ(例えば、標的領域における血流の変化または組織中の化学物質の変化)を測定することと、少なくとも部分的に測定値に基づいて、神経活動の標的目標を達成するように、1つ以上のトランスデューサ要素に関連付けられるパラメータ値(例えば、周波数、位相、振幅、および/またはトランスデューサアクティブ化持続時間)を調節することとを含む。1つの実装において、方法は、一続きの超音波パルス/バーストもたらし、焦点を標的領域に作成することと、焦点における温度の測定値をもたらすことと、少なくとも部分的に測定された温度に基づいて、トランスデューサ要素に関連付けられた第2のパラメータ値(例えば、周波数、位相、振幅、および/またはアクティブ化持続時間)を調節し、標的領域への損傷を回避することとをさらに含む。
【0013】
種々の実施形態において、超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを含み、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を有し、方法は、トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、連続して、または実質的に同時に、複数の超音波パルスの一続きを、それぞれ、標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に伝送させることをさらに含む。加えて、または代替として、方法は、トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、連続して、または実質的に同時に、複数の超音波パルスの一続きを、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に伝送させることをさらに含み、第1および第2の標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「臨床上有意」は、例えば、組織への損傷の発生を誘起することに先立って、臨床医によって有意と見なされる組織に及ぼされる望ましくない効果を有する(時として、所望の効果を欠いている)ことを意味する。加えて、用語「約」、「概ね」、「十分に」、および「実質的に」は、±10%、いくつかの実施形態において、±5%を意味する。本明細書の全体を通して、「一例」、「ある例」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の言及は、例と関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本技術の少なくとも1つの例に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通した種々の箇所における語句「一例では」、「ある例では」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の出現は、必ずしも全てが同一の例を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、本技術の1つ以上の例において、任意の好適な様式で組み合わせられ得る。本明細書に提供される見出しは、便宜上のためだけのものであり、請求される技術の範囲または意味を限定または解釈することを意図していない。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
集束超音波を使用して、少なくとも1つの脳疾患または障害に関連付けられた少なくとも1つの標的領域内の神経活動を刺激するためのシステムであって、前記システムは、
複数のトランスデューサ要素を備えている超音波トランスデューサと、
コントローラと
を備え、
前記コントローラは、
(a)第1の一続きの超音波パルスを前記標的領域に伝送することと、
(b)前記超音波パルスから生じる前記標的領域における前記神経活動示す生理学的パラメータの測定値をもたらすことと、
(c)少なくとも部分的に前記測定値に基づいて、前記神経活動の標的目標を達成するように、前記トランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第1のパラメータ値を調節することと
を行うように構成されている、システム。
(項目2)
前記標的領域における前記生理学的パラメータを測定するための監視システムをさらに備えている、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記監視システムは、fMRI、ASL MRI、EEG、またはfNIRSのうちの少なくとも1つを備えている、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記生理学的パラメータは、前記標的領域における血流の変化または組織中の化学物質の変化のうちの少なくとも一方を備えている、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記コントローラは、
前記一続きの超音波パルスに前記標的領域において焦点を作成させることと、
前記焦点における温度の測定値をもたらすことと、
少なくとも部分的に前記測定された温度に基づいて、前記トランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第2のパラメータ値を調節し、前記標的領域への損傷を回避することと
を行うようにさらに構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記コントローラは、前記標的領域の複数のサブ領域における前記焦点の操向をもたらすようにさらに構成されている、項目5に記載のシステム。
(項目7)
前記コントローラは、複数の標的領域における前記焦点の連続的な操向をもたらすようにさらに構成され、前記複数の標的領域の各々は、脳疾患または障害に関連付けられ、異なる標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている、項目5に記載のシステム。
(項目8)
前記第2のパラメータ値は、周波数、位相、振幅、またはアクティブ化持続時間のうちの少なくとも1つを備えている、項目5に記載のシステム。
(項目9)
前記超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを備え、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を備えている、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記コントローラは、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、前記標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して伝送させるようにさらに構成されている、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記コントローラは、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、前記標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に複数の超音波パルスの一続きを実質的に同時に伝送させるようにさらに構成されている、項目9に記載のシステム。
(項目12)
前記コントローラは、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して伝送させるようにさらに構成され、前記第1および第2の標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている、項目9に記載のシステム。
(項目13)
前記コントローラは、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に複数の超音波パルスの一続きを実質的に同時に伝送させるようにさらに構成され、前記第1および第2の標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている、項目9に記載のシステム。
(項目14)
前記コントローラは、
前記測定された生理学的パラメータを前記標的目標に対して比較することと、
前記標的目標が満たされるまで、ステップ(a)-(c)を繰り返すことと
を行うようにさらに構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目15)
前記第1のパラメータ値は、周波数、位相、振幅、またはトランスデューサアクティブ化持続時間のうちの少なくとも1つを備えている、項目1に記載のシステム。
(項目16)
少なくとも1つの脳疾患または障害に関連付けられた少なくとも1つの標的領域内の神経活動を刺激する方法であって、前記方法は、
複数のトランスデューサ要素を備えている超音波トランスデューサから、第1の一続きの超音波パルスを前記標的領域に伝送することと、
前記超音波パルスから生じる前記標的領域における前記神経活動示す生理学的パラメータを測定することと、
少なくとも部分的に前記測定値に基づいて、前記神経活動の標的目標を達成するように、前記トランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられたパラメータ値を調節することと
を含む、方法。
(項目17)
前記生理学的パラメータは、前記標的領域における血流の変化または組織中の化学物質の変化のうちの少なくとも一方を備えている、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記一続きの超音波パルスをもたらし、前記標的領域において焦点を作成することと、
前記焦点における温度の測定値をもたらすことと、
少なくとも部分的に前記測定された温度に基づいて、前記トランスデューサ要素のうちの少なくとも1つに関連付けられた第2のパラメータ値を調節し、前記標的領域への損傷を回避することと
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを備え、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を備え、前記方法は、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、前記標的領域の第1および第2の異なるサブ領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して、または実質的に同時に伝送させることをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記超音波トランスデューサは、複数のサブアレイを備え、各サブアレイは、複数のトランスデューサ要素を備え、前記方法は、前記トランスデューサの第1および第2の異なるサブアレイに、それぞれ、第1および第2の異なる標的領域に複数の超音波パルスの一続きを連続して、または実質的に同時に伝送させることをさらに含み、前記第1および第2の標的領域は、異なる脳疾患または障害に関連付けられている、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面において、同様の参照文字は、概して、異なる図全体を通して同一の部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本発明の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明の種々の実施形態は、以下の図面を参照して説明される。
【0016】
図1A図1Aは、本発明の種々の実施形態による、例示的超音波システムを図式的に描写する。
【0017】
図1B図1Bは、種々の実施形態による、複数の焦点を複数の標的領域に発生させるためのトランスデューサ要素の例示的構成を描写する。
【0018】
図1C図1Cは、種々の実施形態による、複数の焦点を標的領域内の複数のサブ領域内に発生させるためのトランスデューサ要素の例示的構成を描写する。
【0019】
図2図2は、本発明の種々の実施形態による、例示的MRIシステムを図式的に描写する。
【0020】
図3A図3Aは、種々の実施形態による、1つ以上の脳疾患/障害を治療するための超音波/パルスによって刺激される1つ以上の脳領域を描写する。
【0021】
図3B図3Bは、種々の実施形態による、標的領域への超音波パルス/波の印加および超音波印加に応答した標的領域内の組織の測定値を描写する。
【0022】
図4図4は、種々の実施形態による、1つ以上の疾患/障害に関連付けられる1つ以上の脳領域内の神経活動を刺激するための例示的アプローチを図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aは、患者の脳内の神経活動を刺激し、それによって、神経学的疾患または障害を治療するために、集束音響エネルギービームを発生させ、患者の脳内の標的領域101にそれを送達するための例示的超音波システム100を図示する。種々の実施形態において、システム100は、トランスデューサ要素104の位相アレイ102と、位相アレイ102を駆動するビーム形成器106と、ビーム形成器106と通信するコントローラ108と、入力電子信号をビーム形成器106に提供する周波数発生器110とを含む。
【0024】
アレイ102は、患者の頭部を包囲するために好適な湾曲(例えば、球状または放物線)形状を有し得るか、または、1つ以上の平面または別様に成形された区分を含み得る。その寸法は、数ミリメートル~数十センチメートルで変動し得る。アレイ102のトランスデューサ要素104は、例えば、圧電セラミック、圧電複合材料、または、概して、電気エネルギーを音響エネルギーに変換することが可能な任意の技法を使用する任意の材料から作製され得、アレイ102のトランスデューサ要素104は、要素104間の機械的結合を減衰させるためにシリコーンゴムまたは別の材料(空気を含む)内に搭載され得る。トランスデューサ要素104への最大出力伝達を保証するために、要素104は、入力コネクタインピーダンスに合致する50Ωにおける電気共鳴のために構成され得る。
【0025】
トランスデューサアレイ102は、ビーム形成器106に結合され、ビーム形成器106は、個々のトランスデューサ要素104を駆動し、それによって、トランスデューサ要素104は、集束超音波ビームまたは場を集合的に生産する。n個のトランスデューサ要素に関して、ビーム形成器106は、n個の駆動回路を含み得、各々は、増幅器118と、位相/時間遅延回路120とを含むか、または、それらから成り、各駆動回路は、トランスデューサ要素104のうちの1つを駆動する。ビーム形成器106は、典型的に、0.1MHz~10MHzの範囲内の高周波(RF)入力信号を周波数発生器110から受信し、周波数発生器110は、例えば、Stanford Research Systemsから利用可能なモデルDS345発生器であり得る。入力信号は、ビーム形成器106のn個の増幅器118および遅延回路120のためのn個のチャネルに分割され得る。いくつかの実施形態において、周波数発生器110は、ビーム形成器106と統合される。高周波発生器110およびビーム形成器106は、トランスデューサアレイ102の個々のトランスデューサ要素104を同一周波数であるが、異なる位相および/または異なる振幅で駆動するように構成される。
【0026】
ビーム形成器106によって与えられる増幅または減衰係数α-αおよび位相シフトa-aは、超音波エネルギーを標的領域101上に伝送し、集束させ、トランスデューサ要素104と標的領域101との間に位置する組織内に誘発される波歪を考慮する役割を果たす。介在組織から生じるビーム収差を補償し、所望の特性を有する焦点を所望の場所に発生させるためのアプローチが、例えば、2017年7月19日に出願された国際出願第PCT/IB2017/000990号(その開示全体は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供される。
【0027】
増幅係数および位相シフトは、コントローラ108によって算出され、コントローラ108は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、結線接続、または任意のそれらの組み合わせを通して、コンピュータ機能を提供し得る。例えば、コントローラ108は、標的領域101において所望の焦点または任意の他の所望の空間音響場パターンを取得するために必要な位相シフトおよび増幅係数を決定するために、従来の様式において、過度の実験を伴わずに、ソフトウェアでプログラムされる汎用または特殊目的デジタルデータプロセッサを利用し得る。ある実施形態において、算出は、トランスデューサ要素104間に位置する組織の特性(例えば、構造、厚さ、密度等)および音響エネルギーの伝搬に及ぼすそれらの効果についての詳細な情報に基づく。そのような情報は、撮像機122から取得され得る。撮像機122は、例えば、磁気共鳴画像診断(MRI)デバイス、コンピュータ断層撮影(CT)デバイス、陽電子放射断層撮影(PET)デバイス、単一光子放射断層撮影(SPECT)デバイス、または超音波検査デバイスであり得る。画像取得は、3次元(3D)であり得るか、または、代替として、撮像機122は、標的領域および/またはその周囲領域の3次元画像を再構成するために好適な2次元(2D)画像の組を提供し得る。撮像機122は、トランスデューサ動作を促進する同じコントローラ108を使用して動作させられ得、代替として、コントローラ108と相互通信する別個のコントローラによって別個に制御され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、トランスデューサアレイ102は、連続して、複数の標的領域または標的領域内の複数のサブ領域を刺激するように、超音波操向ビームを機械的または電気的に発生させるように構成され得る。これは、有利なこととして、疾患/障害に特有の領域の刺激される体積を増加させ、それによって、その治療有効性を向上させ得る。加えて、または代替として、このアプローチは、異なる疾患/障害に関連する種々の脳領域が刺激されることを可能にし、それによって、同一手技において、治療を複数の疾患/障害に提供し得る。一実施形態において、トランスデューサ要素104は、機械的に操向され、すなわち、標的領域に対して物理的に移動させられる。機械的操向は、特に、トランスデューサアレイ102が、頭蓋骨(例えば、約30cm以上の直径)よりかなりに大きいとき、十分な移動自由度を提供するために好適である。代替として、ビームは、トランスデューサ要素104から放出される音響波/パルスの相対的位相を調整することによって、電子的に操向され得る。そのような電子操向によって提供される制御の程度は、個々のトランスデューサ要素104のサイズに反比例する。例えば、概して、超音波ビームを効果的に操向させるために、アレイによって放出される音響エネルギーの波長、好ましくは、波長の半分と同程度に小さいトランスデューサ要素104のサイズを有することが概ね望ましい。したがって、多くの場合に集束超音波システムのために使用されるような波長約2ミリメートル(2mm)を有する音響エネルギーを用いるとき、類似サイズ、すなわち、約2mmまたはそれ未満の断面を有するトランスデューサ要素104が、効果的操向のために必要とされるであろう。電子操向は、トランスデューサアレイ102の物理的移動が要求されず、操向が迅速に生じるので、好ましい。
【0029】
いくつかの実施形態において、トランスデューサアレイ102は、実質的に同時に、複数の焦点を発生させるように構成される。例えば、図1Bを参照すると、コントローラ108は、トランスデューサ要素104を複数のサブアレイ150-154に動的にグループ分けし得、各サブアレイは、トランスデューサ要素104の1または2次元アレイ(すなわち、行または行列)を備えているか、または、それから成る。トランスデューササブアレイ150-154は、別個に制御可能であり得、すなわち、それらの各々は、他のサブアレイの周波数、振幅、および/または位相から独立した周波数、振幅、および/または位相において、超音波を放出することが可能である。例えば、各サブアレイは、その中の要素104の相対的位相を調節することによって、焦点を標的領域156-160のうちの1つ上に作成し得る。その結果、複数の標的領域156-160は、続いて、または実質的に同時に、集束超音波によって刺激され得る。同様に、図1Cを参照すると、各サブアレイは、独立して、焦点を単一標的領域内のサブ領域162-166のうちの1つ上に作成するように制御され得る。サブアレイ150-154のグループ分けは、要素104間および/または要素104とサブ領域/標的領域との間の幾何学的関係を規定する1つ以上の標的化基準(例えば、操向角度および/または照準線)によって、動的に決定され得る。標的化基準は、サブ領域/標的領域の物理的場所、サブ領域/標的領域の数、サブ領域/標的領域および要素104に介在する組織の解剖学的特徴等も考慮し得る。本明細書に提供されるトランスデューササブアレイの構成は、例証のみのためのものであり、本発明が、そのような構成に限定されないことに留意されたい。当業者は、多くの変形例が、可能であり、したがって、本発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0030】
超音波媒介神経刺激を実施するために、超音波手技に先立って、ある精度を伴って、標的領域の場所を決定することが必要である。故に、種々の実施形態において、撮像機122が、最初にアクティブにされ、標的領域、ある場合、周囲非標的領域の画像を入手する。例えば、組織体積は、3D画像または一連の2D画像スライスに基づいて、3Dのボクセルの組(すなわち、立体ピクセル)として表され得、組織体積は、標的領域および/または非標的領域を含み得る。図2は、例示的撮像機、すなわち、MRI装置202を図示する。装置202は、円筒形電磁石204を含み得、それは、必要な静的磁場を電磁石204のボア206内に発生させる。医療手技中、患者は、移動可能な支持架台208上のボア206の内側に設置される。患者内の着目領域210(例えば、患者の頭部)が、撮像領域212内に位置付けられ得、電磁石204は、実質的に均質場を発生させる。円筒形磁場勾配コイル213の組も、ボア206内に提供され、患者を包囲し得る。勾配コイル213は、所定の大きさの磁場勾配を所定の時間に3つの相互直交方向に発生させる。場勾配を用いることで、異なる空間場所が、異なる歳差周波数に関連付けられ、それによって、MR画像にその空間分解能を与えることができる。撮像領域212を包囲するRF送信機コイル214が、RFパルスを撮像領域212の中に放出し、患者の組織に磁気共鳴(MR)応答信号を放出させる。未加工MR応答信号は、RFコイル214によって感知され、MRコントローラ216に通され、MRコントローラ216は、次いで、MR画像を算出し、MR画像は、ユーザに表示され得る。代替として、別個のMR送信機および受信機コイルが、使用され得る。MRI装置202を使用して取得された画像は、放射線科医および医師に患者の生体構造の異なる組織間の視覚的コントラストおよび従来のX線技術を用いて可視化可能でない詳細な内部ビューを提供し得る。入手された画像は、次いで、従来の画像分析ソフトウェアを実装し、標的/非標的組織の場所および/または解剖学的特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)を決定するコントローラによって分析される。
【0031】
MRIコントローラ216は、パルスシーケンス、すなわち、磁場勾配およびRF励起パルスの相対的タイミングおよび強度および応答検出周期を制御し得る。MR応答信号は、従来の画像処理システムを使用して、増幅され、調整され、未加工データにデジタル化され、さらに、当業者に公知の方法によって、画像データのアレイに変換される。画像データ基づいて、刺激されるべき標的領域が、識別される。画像処理システムは、MRIコントローラ216の一部であり得るか、または、MRIコントローラ216と通信する別個のデバイス(例えば、画像処理ソフトウェアを含む汎用コンピュータ)であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、集束超音波トランスデューサシステム100は、MRI装置202のボア206内に配置される。加えて、超音波システム100は、MR画像内の標的領域に対するトランスデューサ位置および向きを決定するためのMR追跡コイルまたは他のマーカを含み得る。要求されるトランスデューサ要素位相および振幅の算出に基づいて、トランスデューサアレイは、超音波を標的に集束させるように駆動される。
【0033】
種々の実施形態において、MRI装置202は、超音波媒介刺激中、標的/非標的領域における血流の変化をリアルタイムで検出するための血液酸素レベル依存(BOLD)造影剤と併せて使用される(この技法は、多くの場合、「機能的磁気共鳴画像法」、または、「fMRI」と称される)。典型的に、標的領域が刺激されると、その中の神経活動は、増加し、それは、次いで、追加の血液が酸素化されるようにし、それによって、血流の変化を発生させる。血流変化は、fMRIによって検出され得るBOLD信号変化をもたらし得る。故に、fMRIは、超音波の印加時、標的/非標的領域への刺激効果に対するフィードバックを提供し得る。
【0034】
例えば、図3Aを参照すると、パーキンソン病を治療するために、集束超音波が、1つ以上の特定の標的領域(例えば、視床下核302および/または淡蒼球内節304)に印加され得る。fMRIは、アクティブにされ、超音波手技中、血流が増加した領域の画像を入手し得る。画像は、標的領域内の神経活動が、血流中に(例えば、10%を上回る)変化を生じさせるために十分に刺激されている一方、非標的領域内の神経活動が、望ましくない効果を回避するために、十分に変わらない(例えば、5%未満)ままであることを検証するために利用され得る。加えて、BOLD信号は、分析され、刺激の強度が所望の目標を達成するかどうかを決定し得る。例えば、集束超音波の印加に先立って、パーキンソン病の治療に成功した深部脳刺激から生じる標的領域におけるBOLD信号の変化が、最初に、例えば、公知の文献から入手され得、このBOLD信号変化は、メモリ内に記憶され、超音波治療のための標的目標として設定され得る。図3Bを参照すると、標的への超音波パルス/波のシーケンス302の印加中、標的におけるBOLD信号304が、リアルタイムで測定され得る。描写されるように、超音波処置中のBOLD信号306の振幅は、2つの超音波処置パルス/波/バースト間で測定されたBOLD信号308のそれらより大きい。したがって、一実施形態において、2つのパルス/波/バースト間のBOLD信号308の振幅が、最初に、平均され、ベースラインレベルを取得し、超音波処置中のBOLD信号306の振幅は、次いで、ベースラインレベルに対して比較され、それらの間の変化310を決定する。測定されたBOLD変化310は、次いで、例えば、上で説明されるように文献から決定された標的目標に対して比較され得る。測定されたBOLD変化が、標的目標より小さい場合、後続パルス内の超音波処置の振幅、周波数、および/または持続時間は、増加させられ得る。代替として、超音波焦点が、(例えば、いくつかの実施形態において、標的の異なるサブ領域間の持続的操向の過程において)標的の異なるサブ領域に向けられ得、これは、標的領域におけるBOLD信号の変化を効果的に増加させ、それによって、所望の目標を達成し得る。
【0035】
標的領域および/または非標的領域における測定されたBOLD変化が、標的目標より大きい場合、後続パルス内の超音波処置の振幅および/または持続時間は、変わらないままであるか、または、いくつかの実施形態において、安全性を確実にするために低減させられ得る。当然ながら、超音波振幅および/または印加持続時間を調節するためのfMRIのこの例示的使用が、例証目的のためのものにすぎず、神経活動に関連する生理学的条件を示す任意の信号が、用途に対して適宜、任意の超音波パラメータ(例えば、振幅、アクティブ化およびアクティブ化解除、周波数、操向角度等)を調節するためのフィードバックとして使用され得ることが強調される。
【0036】
いくつかの実施形態において、超音波処置中の標的領域の温度が、標的領域への損傷を回避するために、例えば、MRI装置202を使用して、リアルタイムで監視される。測定された温度に基づいて、要素104から放出される超音波/パルスの相対的位相および/または振幅は、焦点における音響エネルギーから生じる温度上昇が所定の閾値を超えないように調節され得る。MR測温のために利用可能な種々の方法のうち、陽子共鳴周波数(PRF)シフト法は、多くの場合、温度変化に対するその優れた線形性、組織タイプからの近独立性、および高空間および時間的分解能を伴う温度マップ入手に起因して、選択される方法である。PRFシフト法は、水分子中の陽子のMR共鳴周波数が温度に伴って線形に変化する現象を利用する。温度に伴う周波数変化は、バルク水に関して、わずか-0.01ppm/℃、組織中において、約-0.0096~-0.013ppm/℃とわずかであるので、PRFシフトは、位相に敏感な撮像方法を用いて典型的に検出され、方法において、撮像は、2回実施され(温度変化に先立って、ベースラインPRF位相画像を入手するための1回と、次いで、温度変化後またはその間の第2の位相画像を入手するための1回)、それによって、温度の変化に比例する小さい位相変化を捕捉する。温度変化のマップが、次いで、ボクセル毎の方式で、ベースライン画像と治療画像との間の位相差を決定し、静的磁場の強度(一般に、1.5Tまたは3T)および(例えば、勾配リコールエコーの)エコー時間(TE)等の撮像パラメータを考慮しながら、PRF温度依存性に基づいて、位相差異を温度差に変換することによって、MR画像から算出され得る。種々の代替または高度な方法が、患者運動、磁場ドリフト、およびPRFベースの温度測定値の正確度に影響を及ぼす、他の要因を補償するために使用され得、当業者に公知の好適な方法は、例えば、マルチベースラインおよび無基準測温を含み、過度の実験を伴わずに実装される。
【0037】
加えて、または代替として、磁気的に標識された動脈血液の水陽子を内因性トレーサとして使用する動脈スピン標識化(ASL)MRIが、血流変化を直接測定するために実装され得る。動脈血液水は、撮像される標的/非標的領域に供給される流動血液中の水陽子を反転または飽和させるRFパルスを印加することによって、磁気的に標識され得る。ある遅延期間後、標識された血液は、撮像される領域の中に流動し、標識された血液水中の流入反転スピンが、総組織磁化、その結果、MR信号および画像強度を改変し得る。この時間中、MR信号および画像(タグ画像と呼ばれる)が、入手され得る。タグ画像を対照画像(動脈血液が標識されていない)から減算することによって、移行時間における標的/非標的領域内の各ボクセルに送達される動脈血液の量が、決定されることができる。このアプローチは、したがって、ASL(動脈スピン標識化)が、超音波媒介刺激から生じる血流変化を定性的に測定することを可能にする。
【0038】
上で説明されるBOLD信号の測定値と同様、従来の深部脳刺激から生じる効果的治療に対応する標的領域におけるASL信号振幅が、超音波手技に先立って入手され得、この振幅は、標的目標として設定される。超音波処置中、標的領域におけるASL信号は、リアルタイムで測定され、標的目標に対して比較されることができる。再び、測定されたASL信号の振幅が標的目標より小さい場合、次のパルスにおける超音波処置の振幅および/または持続時間は、増加させられ得る。加えて、または代替として、超音波焦点は、(例えば、いくつかの実施形態において、上で説明されるように、標的領域の異なるサブ領域間の操向の過程において)標的の異なるサブ領域に向けられ、神経活動を向上させ、それによって、ASL信号を向上させ得る。標的領域における測定されたASL信号が標的目標より大きい場合、超音波処置の振幅および/または持続時間は、変わらないままである、またはいくつかの実施形態において、安全性を確実にするために低減させられ得る。
【0039】
fMRIおよび/またはASLは、脳生理学の他の尺度と組み合わせられ得る。例えば、再び図2を参照すると、複数の電極216が、超音波媒介神経刺激中、患者の頭皮に沿って設置され、脳の電気活動を監視し得る(この技法は、多くの場合、「脳波記録」、すなわち、「EEG」と称される)。代替として、機能的近赤外分光法(fNIRS)が、採用され得る。再び、EEG信号、fNIRS信号は、単独で、またはfMRIおよび/またはASLと組み合わせて、他のアプローチ(例えば、従来の深部脳刺激)を使用して決定された標的目標に対して比較され得、それに基づいて、超音波パラメータ(例えば、振幅、印加持続時間、位相、周波数、操向角度等)が、治療有効性および安全性を確実にするように調節され得る。いくつかの実施形態において、これらのフィードバック信号は、連続して、または実質的に同時に、上で説明されるように、標的の複数のサブ領域および/または複数の標的領域を刺激すべきかどうかを決定するために利用される。
【0040】
概して、超音波媒介神経刺激は、数セッション(例えば、4週間にわたって1週間に1時間)(但し、いくつかの実施形態において、超音波処置のより多くのセッションが、要求され得る)後、疾患/障害を効果的に治療し得、このアプローチは、したがって、有利なこととして、深部脳刺激に対する従来のアプローチによって要求される神経刺激装置の侵襲性埋め込みの必要性を取り除く。加えて、トランスデューサ要素から放出される音響波/パルスの相対的位相の調節によって、集束超音波ビームは、1つ以上の標的領域の種々の場所に動的に操向され得る。これは、1つの疾患/障害の治療有効性を増加させること、または複数の疾患/障害が同一手技において治療されることを可能にし得る。さらに、トランスデューサ要素を複数のサブアレイにグループ分けすることによって、標的の複数のサブ領域および/または複数の標的領域は、実質的に同時に、または連続して、刺激されることができる。再び、このアプローチは、有利なこととして、治療有効性を向上させること、および/または、同一超音波手技中、異なる疾患/障害が治療されることを可能にし得る。
【0041】
図4は、種々の実施形態による、1つ以上の疾患/障害に関連付けられる1つ以上の脳領域内の神経活動を刺激するためのアプローチを図示するフローチャートである。第1のステップ402において、神経刺激のための標的領域および/または非標的領域の情報(場所、解剖学的特性、および/または材料特性等)が、例えば、撮像機(例えば、MRI)122を使用して最初に入手される。第2のステップ404において、超音波パラメータ(例えば、振幅、位相、周波数、操向角度、印加持続時間等)が、1つ以上の焦点を標的領域内の1つ以上のサブ領域または1つ以上の標的領域に発生させるように、ステップ402において入手された標的/非標的情報に基づいて決定される。複数の焦点が、連続して、または実質的に同時に、発生させられ得る。標的領域における音響圧力は、それへの損傷を伴わずに、刺激を生じさせ得る。例えば、超音波から生じる温度上昇は、臨床上有意に対応する閾値を下回り得る。第3のステップ406において、超音波トランスデューサ要素が、ステップ404において決定されたパラメータに基づいてアクティブにされる。第4のステップ408において、測定システム(例えば、fMRI、EGG、ASL MRI、fNIRS)が、アクティブにされ、超音波手技中、標的/非標的領域における刺激効果(例えば、血流変化)を監視する。第5のステップ410において、測定された結果に基づいて、超音波パラメータが、必要に応じて調節される。例えば、測定された結果は、他のアプローチ(例えば、従来の深部脳刺激)を使用して決定された所望の標的目標に対して比較され得る。測定された結果が、標的目標より小さい場合、次の超音波パルスにおける超音波処置の振幅および/または持続時間は、増加させられ得る。加えて、または代替として、超音波焦点は、標的の異なるサブ領域に向けられ、神経活動を向上させ得る。標的および/または非標的領域における測定された結果が、標的目標を超える場合、超音波処置の振幅および/または持続時間は、変わらないままであるか、または、いくつかの実施形態において、安全性を確実にするために低減させられ得る。ステップ406-410は、所望の標的目標が達成されるまで、繰り返され得る。
【0042】
一般に、1つ以上の脳疾患/障害に関連付けられる標的領域内の1つ以上のサブ領域または1つ以上の標的領域内の神経活動を刺激するための機能性は、撮像機122のコントローラおよび/または管理システム124の超音波システム100内に統合されるか、または別個の外部コントローラまたは他の算出エンティティまたは複数のエンティティによって提供されるかどうかにかかわらず、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせにおいて実装される1つ以上のモジュール内に構造化され得る。そのような機能性は、例えば、撮像機122を使用して入手された標的および/または非標的領域の撮像データを分析すること、標的/非標的組織の場所および/または解剖学的特性(例えば、タイプ、特性、構造、厚さ、密度等)を決定すること、超音波トランスデューサに波/パルス/バーストのシーケンスを標的領域に伝送させること、超音波パルス/バーストから生じる標的領域における神経活動示す温度および/または生理学的パラメータを測定すること、少なくとも部分的に測定値に基づいて、トランスデューサ要素に関連付けられるパラメータ値を調節すること、焦点を標的領域内の複数のサブ領域または複数の標的領域に操向すること、トランスデューサ要素を複数のサブアレイに動的にグループ分けすること、連続して、または実質的に同時に、複数の超音波パルスの一続きを標的領域の異なるサブ領域または異なる標的領域に異なるサブアレイに伝送させること、測定された生理学的パラメータを所望の標的目標に対して比較すること、および/または、上で説明されるように、標的目標が満たされるまで、温度および/または生理学的パラメータの測定および超音波パラメータ値の調節を反復的に実施することを含み得る。
【0043】
加えて、上で説明されるようなトランスデューサアレイ102または種々のサブアレイ内のトランスデューサ要素104を駆動するための超音波パラメータの値は、撮像機122内の制御設備と別個であるか、または、撮像機122内の制御設備とともに統合されたシステム制御設備の中に組み合わせられ得る超音波コントローラ108内で決定され得る。コントローラ108は、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせ内に実装される、1つ以上のモジュールを含み得る。機能が1つ以上のソフトウェアプログラムとして提供される実施形態に関して、プログラムは、PYTHON、FORTRAN、PASCAL、JAVA(登録商標)、C、C++、C#、BASIC、種々のスクリプト言語、MATLAB(登録商標)、および/またはHTML等のいくつかの高レベル言語のうちのいずれかで書かれてもよい。加えて、ソフトウェアは、標的コンピュータ上に常駐するマイクロプロセッサにダイレクトされるアセンブリ言語で実装されることができ、例えば、ソフトウェアは、IBM PCまたはPCクローン上で起動するように構成される、場合、Intel80x86アセンブリ言語で実装され得る。ソフトウェアは、限定ではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、ジャンプドライブ、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、EEPROM、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはCD-ROMを含む、製造品上で具現化され得る。ハードウェア回路を使用する実施形態は、例えば、1つ以上のFPGA、CPLD、またはASICプロセッサを使用して実装され得る。
【0044】
さらに、本明細書で使用される用語「コントローラ」は、広義に、上で説明されるような任意の機能性を実施するために利用される全ての必要ハードウェア構成要素および/またはソフトウェアモジュールを含み、コントローラは、複数のハードウェア構成要素および/またはソフトウェアモジュールを含み得、機能性は、異なる構成要素および/またはモジュール間に分散されることができる。
【0045】
本明細書に採用される用語および表現は、限定ではなく、説明の用語および表現として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され、説明される特徴の任意の均等物またはその一部を除外するいかなる意図も存在しない。加えて、本発明のある実施形態を説明することによって、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることが、当業者に明白となるであろう。故に、説明される実施形態は、あらゆる点で例証的にすぎず、制限的ではないものとして考慮されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4