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  • 特許-排ガス浄化用触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20220922BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B01J23/42 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021510073
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2019000496
(87)【国際公開番号】W WO2020040372
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0096970
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LX HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】98, Huam-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハナ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,キョンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンイル
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホジン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン,ウォンジ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246107(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001962(WO,A1)
【文献】特開2001-009279(JP,A)
【文献】特表2013-507238(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属;アルミナ支持体粒子;及び前記アルミナ支持体粒子の表面上に担持されたTiO2半導体粒子;とを含む排ガス浄化用触媒であり、
前記排ガス浄化用触媒は、複合ナノ粒子を含み、
前記複合ナノ粒子は、前記貴金属を担持した前記TiO 2 半導体粒子であり、
前記複合ナノ粒子に含まれた貴金属は、前記排ガス浄化用触媒に含まれた貴金属全体のうち少なくとも90重量%を占める、排ガス浄化用触媒
【請求項2】
前記アルミナ支持体粒子100重量部に対して、前記TiO2半導体粒子を20~50重量部含む、
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記複合ナノ粒子の直径は、前記アルミナ支持体粒子の表面に示された気孔の平均直径よりも大きい、
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記複合ナノ粒子の平均直径は、10nm~500nmである、
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記アルミナ支持体粒子の平均直径は、0.5μm~50μmである、
請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記貴金属は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含む、
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記排ガス浄化用触媒は、前記TiO2半導体粒子を100重量部及び前記貴金属を1~50重量部含む、
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排ガスには一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC,Total hydrocarbon)、窒素酸化物(NOX)等、環境や人体に有害な物質が含有されている。最近、世界的に環境意識が高まり、これら排ガス成分を二酸化炭素、窒素、酸素、水などに変換して排出するために使用される排ガス処理用触媒の性能向上が一層求められている。
【0003】
かかる排ガス処理用触媒に関する課題の一つとして、触媒老化現象を防止して、触媒寿命を向上させることが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一具現例は、貴金属の凝集による触媒老化現象を防止し、耐久性を確保しつつ、触媒性能を向上させた排ガス浄化用触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一具現例において、貴金属;アルミナ支持体粒子;及び前記アルミナ支持体粒子の表面上に担持されたTiO2半導体粒子;とを含む排ガス浄化用触媒を提供する。
【発明の効果】
【0006】
前記排ガス浄化用触媒は、貴金属の凝集及び成長による触媒老化現象を防止して、触媒寿命を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一具現例による排ガス浄化用触媒の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、本発明の具現例を詳説する。但し、これは例示として提示するものであって、これによって、本発明が制限されるものではなく、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0009】
本発明の一具現例において、貴金属;アルミナ支持体粒子;及び前記アルミナ支持体粒子の表面上に担持されたTiO2半導体粒子;とを含む排ガス浄化用触媒を提供する。
【0010】
前記排ガス浄化用触媒は、TiO2半導体粒子をアルミナ支持体粒子の表面上に担持させた新規な粒子構造を有する。
【0011】
前記貴金属は、前記TiO2半導体粒子に担持することができる。本明細書において、前記貴金属を担持させた前記TiO2半導体粒子を複合ナノ粒子と称する。
【0012】
前記排ガス浄化用触媒では、前記複合ナノ粒子が、前記アルミナ支持体粒子に担持され、特に、前記アルミナ支持体の表面に担持される。
【0013】
前記排ガス浄化用触媒では、前記複合ナノ粒子は、前記アルミナ支持体粒子に担持され、前記複合ナノ粒子は、貴金属がTiO2半導体粒子に担持されている構造である。これは、貴金属が、前記TiO2半導体粒子を中間担持媒体として、前記アルミナ支持体粒子に担持された構造である。このように、前記排ガス浄化用触媒は、前記TiO2半導体粒子が、中間担持媒体として含まれることにより、前記TiO2半導体粒子に担持された貴金属は、前記アルミナ支持体粒子の表面上に均一に分散された状態を維持することになり、特に、ナノ粒子状態を良好に維持することができるようになる。
【0014】
もし、前記貴金属は、前記TiO2半導体粒子ではない、前記アルミナ支持体粒子に直接担持されると、高温の走行環境で発生する高温の排ガスによって、貴金属粒子等が互いに凝集するか成長しやすくなる。また、高温の排ガスによって、アルミナ支持体の多孔性表面構造が崩壊して、担持された貴金属粒子が埋込まれるか損失して、触媒反応の表面積が減るようになる。
【0015】
これに反して、前記TiO2半導体粒子に担持された貴金属は、自動車排ガスのような、高温の排ガスに長時間暴露しても、貴金属粒子間の凝集及び成長が抑制される。よって、前記排ガス浄化用触媒は、貴金属の凝集及び成長による触媒老化現象を防止して、触媒寿命を向上させる。また、前記複合ナノ粒子を表面に担持した前記アルミナ支持体粒子は、高温の排ガス環境における表面構造の崩壊を抑制するのに有利な構造を形成する。
【0016】
結局、前記排ガス浄化用触媒は、かかる構造を有することにより、貴金属をさらに良好に分散させて維持することができるようになり、触媒作用時、高温環境による貴金属の凝集を防止するか、又は、アルミナ支持体粒子の表面構造の変形による性能低下を効果的に防止することができる。
【0017】
図1は、本発明の一具現例による前記排ガス浄化用触媒の模式図である。
【0018】
図1において、前記排ガス浄化用触媒10は、貴金属1とTiO2半導体粒子2で形成された複合ナノ粒子4と、前記複合ナノ粒子4が、アルミナ支持体粒子3の表面上に担持された構造を示す。
【0019】
一具現例において、前記排ガス浄化用触媒10は、前記アルミナ支持体粒子3の100重量部に対して、前記TiO2半導体粒子2を20~50重量部含んでいてもよく、具体的には、前記アルミナ支持体粒子3の100重量部に対して、前記TiO2半導体粒子2を30~40重量部含んでいてもよい。
【0020】
前記排ガス浄化用触媒10は、上記範囲を超えて、前記TiO2半導体粒子2を含みすぎるようになると、下記のような問題が発生し得る。
【0021】
第一に、アルミナ支持体粒子の表面に担持すべきである前記TiO2半導体粒子が多くなり、これらの固まり及び凝集が発生し得るし、前記貴金属の担持された前記TiO2半導体粒子、つまり、複合ナノ粒子の損失が発生し得て、触媒性能が低下するおそれがある。
【0022】
第二に、塑性及び高温エージング(aging)において、前記TiO2半導体粒子自体の凝集(sintering)が発生する確率が高くなる。それによって、触媒性能が低下するおそれがある。特に、TiO2は、850℃以上の高温で、熱に弱いため、さらに注意する必要がある。
【0023】
第三に、前記TiO2半導体粒子が多くなると、水分に弱くなり、触媒性能が低下する。実際、自動車の走行中にも水分が発生するため、この過程で、触媒性能に悪影響を及ぼし得る。よって、排ガス浄化用触媒に対する性能評価時、水分条件の高温エイジング(hydrothermal aging)を行う実情がある。
【0024】
第四に、コスト上昇のおそれがある。排ガス浄化用触媒の場合、同等の性能を発揮しつつ、その製造コスト、特に、材料費の側面から原価を減らすコストパフォーマンスが重要な側面となる。
【0025】
前記排ガス浄化用触媒は、上記範囲未満に、前記TiO2半導体粒子を少量含むと、下記のような問題が発生し得る。
【0026】
第一に、前述した貴金属粒子の凝集及びアルミナ支持体の多孔性表面構造の変形/崩壊を防ぐ効果を十分に得られないことがある。
【0027】
第二に、排ガス浄化用触媒の総貴金属の割合を所定の水準に合わせて、触媒性能を確保するためには、同じアルミナ支持体の質量において、前記TiO2半導体粒子の割合が低くなるほど、TiO2半導体粒子に担持された貴金属の割合は、高くならなければならない。こうなると、TiO2半導体粒子に担持された貴金属間の間隔が短くなって、金属の凝集する確率が高くなり、それによって、触媒性能が低下するおそれがある。
【0028】
第三に、同様な観点から、TiO2半導体粒子の割合が低くなるにつれて、TiO2半導体粒子に担持された貴金属の割合は、高くならなければならないが、高い割合でTiO2半導体粒子に貴金属を担持することはわりに難しく、工程時間やコストが増加する問題があり得る。
【0029】
前記複合ナノ粒子4は、具体的には、ナノサイズのTiO2半導体粒子2に、より小さなナノサイズの貴金属粒子1が、前記TiO2半導体粒子2の表面に担持された形態であってもよい。
【0030】
前記TiO2半導体粒子2は、約10nm~約500nmの平均直径を有し得るし、具体的には、約20nm~約200nmの平均直径を有し得る。
【0031】
前記複合ナノ粒子4は、主に前記TiO2半導体粒子2の大きさによって、その大きさが決定されるといえるため、前記複合ナノ粒子4も、約10nm~約100nmの平均直径を有し得るし、具体的には、約20nm~約80nmの平均直径を有し得る。
【0032】
前記複合ナノ粒子4及び前記TiO2半導体粒子2の平均直径は、SEM、TEMイメージ分析のような電子顕微鏡の測定によって計算することができる。
【0033】
前記貴金属1は、排ガス浄化反応の触媒作用する。排ガス浄化反応は、排ガスに含まれた一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC,Total hydrocarbon)、窒素酸化物(NOX)などの排ガス成分を二酸化炭素、窒素、酸素、水などに変換させる酸化・還元反応による。前記貴金属1は、このような酸化・還元反応の触媒として作用する。
【0034】
前記貴金属1は例えば、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含んでいてもよい。
【0035】
前記貴金属1は、排ガス浄化反応の種類によって、酸化反応活性触媒用の貴金属又は還元反応活性触媒用の貴金属に分けられる。例えば、酸化反応活性触媒用の貴金属としは、白金(Pt)又はパラジウム(Pd)などがあり、前記貴金属は、一酸化炭素を二酸化炭素に、炭化水素を二酸化炭素及び水に酸化させる酸化反応を活性化させることができる。
【0036】
また、還元反応活性触媒用の貴金属としては、ロジウムなどがあり、前記貴金属を利用して、窒素酸化物を二酸化炭素及び窒素に還元させる反応を活性化させることができる。
【0037】
貴金属1の種類を用途に合わせて選択することができる。例えば、低温で優れた活性を示す白金(Pt)は、ディーゼルなどのように相対的に低い温度の排ガスを発生させる環境で優れた触媒性能を具現することができる。
【0038】
また、特に、高温での安全性が重要であるパラジウム(Pd)は、ガソリンなどのように、高い温度の排ガスを発生させる環境で優れた触媒性能及び寿命を示すことができる。
【0039】
また、前記貴金属1は、合金の形態で担持されて、さらに向上した酸化・還元反応で優れた効果を示すことができる。
【0040】
例えば、前記貴金属1として、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の合金は、酸化反応活性をさらに向上させることができる。
【0041】
そして、前記貴金属1は、酸化反応活性触媒用の貴金属である白金(Pt)又はパラジウム(Pd)と、還元反応活性触媒用の貴金属であるロジウム(Rh)との合金であってもよいし、このような合金の形態で、優れた排ガス処理性能と耐被毒性を示して、触媒寿命を向上させることができる。
【0042】
また、前記ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)などが、前記ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などと合金の形態で、前記TiO2半導体粒子2に担持して形成された複合ナノ粒子4は、触媒の剛性、耐久性、耐被毒性などの物理的・化学的特性を向上させることができる。
【0043】
前記貴金属1は、例えば、光蒸着法により、前記TiO2半導体粒子2に担持されて形成された粒子状であってもよく、その平均粒径は、数ナノメートル(nm)水準に形成されうるし、例えば、約0.1nm~約30nmであってもよく、具体的には、約1nm~約20nmであってもよい。
【0044】
前記貴金属1の平均直径は、SEM、TEMイメージ分析のような電子顕微鏡の測定によって計算することができる。
【0045】
前記貴金属1粒子の粒径は、前記TiO2半導体粒子2の粒径に比べて非常に小さいし、前記貴金属1粒子は、上記範囲の粒径を有することにより、前記TiO2半導体粒子2の表面に好適な含量で光蒸着されて、優れた触媒活性を示すことができる。光蒸着方法により、前記ナノサイズの半導体粒子2の表面に、より小さなナノサイズの貴金属1粒子を均一に分散させて担持することができる。
【0046】
前記貴金属1は、上記範囲の平均粒径を有し、前記TiO2半導体粒子2に均一に分散されて、排ガス浄化反応の酸化・還元反応に対する触媒作用が向上する。また、高温の排ガス環境でも、貴金属1の成長及び凝集などを大きく抑制することができる。
【0047】
具体的には、前記貴金属1の平均粒径は、上記範囲未満である場合、オストヴァルト熟成(Ostwald Ripening)によって、貴金属の凝集及び成長を加速化し得るし、上記範囲を超える場合には、反応表面積が減少して、排ガス処理能力が低下し得る。
【0048】
したがって、上記範囲の平均粒径を有する、貴金属1を含む前記排ガス処理用触媒は、触媒活性の広い表面積を維持して、触媒性能をさらに向上させることができる。
【0049】
前記複合ナノ粒子4は、別途熱処理することなく、光照射によって、小さなナノサイズの貴金属1を高い割合で、均一にナノサイズのTiO2半導体粒子2に担持することができる。このように製造されて、前記貴金属1の広い表面積を確保することができるため、優れた触媒性能を付与することができ、優れた熱的安全性を示し、高温の環境で優れた触媒寿命を付与することができる。
【0050】
前記排ガス浄化用触媒は、細孔サイズによって、貴金属1を物理的に担持するアルミナのような担体ではなく、前記TiO2半導体粒子2に直接貴金属1を担持した複合ナノ粒子4を含み、別途熱処理することなく、光照射して、貴金属1をTiO2半導体粒子2に担持させることができ、高温の環境で、貴金属1の凝集及び成長を抑制して、表面積を広く維持し、優れた触媒寿命を付与することができる。
【0051】
例えば、前記TiO2半導体粒子2の有するバンドギャップエネルギーよりも大きな光を照射して、原子価電子帯にある電子が、励起して、伝導帯へ遷移し、原子価電子帯には正孔が残されて、電子正孔対が生成されるようにすることができる。このように形成された電子は、貴金属を還元させ、前記TiO2半導体粒子2に、均一に小さな貴金属ナノ粒子に分散させることができる。
【0052】
前記排ガス浄化用触媒10は、前記貴金属1を、前記TiO2半導体粒子100重量部に対して、約1重量部~約50重量部の含量で含んでいてもよい。例えば、前記貴金属を、前記半導体ナノ粒子固形分100重量部に対して、約1重量部~約32重量部の含量で含んでいてもよい。
【0053】
前記排ガス浄化用触媒10は、前述した前記アルミナ支持体粒子3と、前記TiO2半導体粒子2との間の含量比と、前記TiO2半導体粒子2と、前記貴金属1との間の含量比によって、前記排ガス浄化用触媒10のうち、所定の貴金属1の含量を有するように調節することができ、同じ貴金属1の含量に比べて、酸化・還元反応に関与して、著しく向上した排ガス処理能を示すことができる。また、高温の排ガス環境下でも、前記貴金属が成長、凝集、埋込み及び内部拡散することを大きく抑制して、少ない含量の貴金属を含んでいても、優れた触媒寿命を示すことができる。
【0054】
前記排ガス浄化用触媒10は、アルミナ支持体粒子3を含み、広い表面積を有しており、酸化・還元反応にさらに円滑に関与して、排ガスを処理することができる。
【0055】
前記アルミナ支持体粒子3は、約0.5μm~約50μmの平均粒径を有する粒子であってもよく、具体的には、前記アルミナ支持体粒子3は、約0.5μm~約10μmの平均粒径を有する粒子であってもよい。
【0056】
前記アルミナ支持体粒子3の平均直径は、SEM、TEMイメージ分析のような電子顕微鏡の測定によって計算することができる。
【0057】
前記アルミナ支持体粒子3は、前述した貴金属1を担持したTiO2半導体粒子2、つまり、前記複合ナノ粒子4を支持する支持体であって、熱的安全性を付与して、前記複合ナノ粒子4を高温の環境でも円滑に支持する支持体の役割が可能である。
【0058】
前記排ガス浄化用触媒10は、前記アルミナ支持体粒子3を含み、前記複合ナノ粒子4が効果的に分散配置されるようにすることができ、その結果、前記貴金属1を効果的に分散するようにし、かつ、貴金属1の凝集及び成長を抑制して、高温排ガス環境でも、貴金属1の分散状態を良好に維持して、触媒寿命をさらに向上させることができる。
【0059】
前記アルミナ支持体粒子3は、酸化アルミニウム(Al23)を含んでいてもよい。
【0060】
前記アルミナ支持体粒子3は、多孔性構造を有し得るため、気孔を含むものの、前記複合ナノ粒子4の直径は、前記アルミナ支持体粒子3の表面に示された気孔の平均直径よりも大きいため、前記アルミナ支持体粒子3の表面に担持され、内部の気孔に担持されない(図1参照)。
【0061】
具体的には、前記アルミナ支持体粒子3の表面に示された気孔の平均直径は、10nm以下であってもよい。
【0062】
前記複合ナノ粒子4は、前記アルミナ支持体粒子3の表面に担持されるため、前記複合ナノ粒子4のうち、前記貴金属1も、前記アルミナ支持体粒子3の表面上に分散された構造を有するようになる。前記アルミナ支持体粒子3の内部気孔に分散された貴金属は、高温の排ガス環境で、互いに凝集するか成長しやすいものの、前記アルミナ支持体粒子3の表面に担持された前記複合ナノ粒子4のうちの貴金属1は、このような凝集及び成長を顕著に抑制することができる。
【0063】
一具現例において、前記複合ナノ粒子4に含まれた貴金属1は、前記排ガス浄化用触媒10に含まれた貴金属1全体のうちの少なくとも90重量%を占め得る。他に言えば、前記排ガス浄化用触媒10は、前記アルミナ支持体粒子3の内部気孔に担持された貴金属の含量が非常に低いか、存在しない場合があり、具体的には、前記排ガス浄化用触媒10に含まれた貴金属全体の含量の10重量%未満であってもよい。
【0064】
前記排ガス浄化用触媒10は、別途処理することなく、例えば、光照射することなく、酸化・還元反応を活性化させることができる。具体的には、前記排ガス浄化用触媒10は、触媒として活性を有するために、別途UVなどの光照射がなくても、下記のように、酸化・還元反応に関与して、排ガスに含まれた一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC,Total hydrocarbon)、窒素酸化物(NOX)などを二酸化炭素、窒素、酸素、水などに変換させることができる。
【0065】
i)一酸化炭素の酸化反応:CO+O2=>CO2
ii)炭化水素の酸化反応:CX2X+2+O2=>CO2+H2
iii)窒素酸化物の還元反応:NO+CO=>CO2+N2
【0066】
以下では、前記排ガス浄化用触媒10の製造方法について説明する。前記排ガス浄化用触媒10は、TiO2半導体粒子2を含む懸濁液に貴金属前駆体を混合して、混合物を形成するステップ;前記混合物に光を照射して、貴金属1を担持させたTiO2半導体粒子2の複合ナノ粒子4を製造するステップ;前記複合ナノ粒子4にアルミナ支持体粒子3を混合して、水性組成物を製造するステップ;及び前記水性組成物を乾燥及び塑性して、前記排ガス浄化用触媒10を製造するステップ;とを含めて製造される。
【0067】
具体的には、前記TiO2半導体粒子2は、前記懸濁液中に約0.1wt%~約50wt%の含量で含まれていてもよい。例えば、約0.5wt%~約20wt%の含量で含まれていてもよい。前記TiO2半導体粒子2の含量が、上記範囲未満である場合、十分な量の貴金属が担持されたTiO2半導体粒子2を確保しにくく、これによって、製造工程回数が増加して、製造単価が上昇する問題があり得る。また、上記範囲を超える場合には、照射する光の浸透が難しくなって、光反応が十分に行われず、貴金属の形状及び分布を調節することができない問題があり得る。
【0068】
前記貴金属前駆体は、PtCl2、H2PtCl6、PdCl2、Na2PdCl4、K2PdCl4、H2PdCl4、RhCl3、Na3RhCl6、K3RhCl6、H3RhCl6、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含んでいてもよい。
【0069】
例えば、前記貴金属前駆体は、PtCl2、H2PtCl6などのPt前駆体、PdCl2、Na2PdCl4、K2PdCl4、H2PdCl4などのPd前駆体、RhCl3、Na3RhCl6、K3RhCl6、H3RhCl6などのRh前駆体などを含んでいてもよい
【0070】
前記混合物は、犠牲剤をさらに含んでいてもよい。犠牲剤は、光照射によって、TiO2半導体粒子2で発生した正孔を除去して、TiO2半導体粒子2で発生した電子が、貴金属を効率よく還元させるようにすることができる。これによって、触媒活性を高めることができる。
【0071】
前記犠牲剤は、TiO2半導体粒子2を含む懸濁液に、貴金属前駆体を混合した混合物100重量部に対して、約0.1重量部~約50重量部の含量で含まれていてもよい。具体的には、前記犠牲剤の含量は、上記範囲未満である場合、貴金属が十分に還元されない問題があり、上記範囲を超える場合には、貴金属の還元を制御することができず、貴金属の粒度分布及び分散度がばらつく問題があり、ほとんどの犠牲剤は、環境に有害な物質であることから、使用が制限される。
【0072】
前記犠牲剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ギ酸、酢酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つを含んでいてもよい。
【0073】
前記混合物に光を照射して、貴金属を担持したTiO2半導体粒子2、つまり、複合ナノ粒子4を製造する。前述したように、前記排ガス浄化用触媒10は、別途熱処理することなく、光照射によって、貴金属1をTiO2半導体粒子2に、均一に小さなナノ粒子に分散させることができる。例えば、前記光は、約0.5時間~約10時間照射されうる。
【0074】
上記のように得られた複合ナノ粒子4に、アルミナ支持体粒子3を混合して、水性組成物を製造する。
【0075】
前記水性組成物は、乾燥させた後、約300℃~約700℃の温度条件下で塑性することができる。
【0076】
前記製造方法により、前記貴金属1は、より小さなナノサイズで均一にTiO2半導体粒子2に分散され、結果として、前記排ガス浄化用触媒10は、貴金属の分散度が向上する特性を有し得る。
【0077】
本発明の一具現例は、前記排ガス浄化用触媒10を利用して、自動車排ガスを処理する方法を提供する。
【0078】
前記排ガス浄化用触媒10は、別途処理することなく、例えば、光照射することなく、酸化・還元反応を活性化させることができる。具体的には、前記排ガス浄化用触媒10は、触媒として活性を有するために、別途UVなどの光照射がなくても、酸化・還元反応に関与して、排ガスに含まれた一酸化炭素(CO)、炭化水素(THC,Total hydrocarbon)、窒素酸化物(NOX)などを二酸化炭素、窒素、酸素、水などに変換させることができる。
【0079】
また、前記排ガス浄化用触媒10は、高温の排ガス環境下でも、貴金属の成長、凝集、埋込み及び内部拡散などが大きく抑制されて、少ない含量の貴金属を含んでいても、優れた触媒寿命を示すことができる。
【0080】
例えば、前記排ガス浄化用触媒10は、約750℃の高温で、約24時間エージング(aging)処理した後も、前記触媒粒子に含まれた貴金属粒子の直径の大きさを約5nm~約80nmに維持することができる。
【0081】
以下では、本発明の実施例及び比較例を記載する。かかる下記の実施例は、本発明の一実施例に過ぎないし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例)
実施例1
ルチル型二酸化チタン(TiO2、TEMイメージ分析によって得た平均粒径50nm)粉末を水に分散して、0.5wt%懸濁液を製造した。前記ルチル型二酸化チタン懸濁液を継続して攪拌しつつ、H2PtCl6前駆体をルチル型二酸化チタン固形分100重量部に対して、Ptの含量が8重量部となるように、その含量を調節して混合し、10分間攪拌した。犠牲剤として、メチルアルコールをルチル型二酸化チタンを含む懸濁液に、H2PtCl6前駆体を混合した混合物100重量部に対して、10重量部で投入した後、継続して攪拌した。その後、ルチル型二酸化チタンと貴金属前駆体とが含まれた混合物を継続して攪拌しつつ、紫外線を約2時間照射して、光照射を施した。光照射が終了した混合物を乾燥して、Ptの担持されたTiO2半導体粒子の複合ナノ粒子を製造した。
【0083】
前記複合ナノ粒子で担持されたPt粒子に対して、TEMイメージ分析によって得た平均粒径は、3nmであった。
【0084】
別途、アルミナ支持体粒子(Al23、TEMイメージ分析によって得た平均粒径5μm)を準備した。
【0085】
前記得られた複合ナノ粒子と、前記アルミナ支持体粒子とを混合して、水性組成物を製造してから乾燥させた後、500℃で塑性して、排ガス浄化用触媒を製造した。複合ナノ粒子と、前記アルミナ支持体粒子との混合比は、最後に得られる排ガス浄化用触媒のうち、Pt粒子の含量が2wt%となるように、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて調節した。
【0086】
前記得られた排ガス浄化用触媒に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて、TiO2半導体粒子とアルミナ支持体粒子との質量比を測定した結果、アルミナ支持体粒子100重量部に対して、TiO2半導体粒子は、34重量部であった。
【0087】
実施例2
実施例1における複合ナノ粒子製造時、ルチル型二酸化チタン固形分100重量部に対して、Ptの含量が12重量部となるように、その含量を調節して混合し、複合ナノ粒子を製造した点を除いて(すなわち、複合ナノ粒子のうち、Pt担持量が増加する)、同じ方法により複合ナノ粒子を製造した。
【0088】
次いで、実施例1と同じアルミナ支持体粒子を準備した後、前記複合ナノ粒子と混合した後、実施例1と同じ方法により排ガス浄化用触媒を製造した。このとき、最後に製造される排ガス浄化用触媒のうち、Pt粒子の含量が2wt%となるように、複合ナノ粒子と、前記アルミナ支持体粒子との混合比をICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて調節した。
【0089】
前記得られた排ガス浄化用触媒に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて、TiO2半導体粒子とアルミナ支持体粒子との質量比を測定した結果、アルミナ支持体粒子100重量部に対して、TiO2半導体粒子は、21重量部であった。
【0090】
実施例3
実施例1における複合ナノ粒子製造時、ルチル型二酸化チタン固形分100重量部に対して、Ptの含量が16重量部となるように、その含量を調節して混合し、複合ナノ粒子を製造した点を除いて(すなわち、複合ナノ粒子のうち、Pt担持量が増加する)、同じ方法により複合ナノ粒子を製造した。
【0091】
次いで、実施例1と同じアルミナ支持体粒子を準備した後、前記複合ナノ粒子と混合した後、実施例1と同じ方法により排ガス浄化用触媒を製造した。このとき、最後に製造される排ガス浄化用触媒のうち、Pt粒子の含量が2wt%となるように、複合ナノ粒子と、前記アルミナ支持体粒子との混合比を、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて調節した。
【0092】
前記得られた排ガス浄化用触媒に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて、TiO2半導体粒子とアルミナ支持体粒子との質量比を測定した結果、アルミナ支持体粒子100重量部に対して、TiO2半導体粒子は、15重量部であった。
【0093】
実施例4
実施例1における複合ナノ粒子製造時、ルチル型二酸化チタン固形分100重量部に対して、Ptの含量が5重量部となるように、その含量を調節して混合し、複合ナノ粒子を製造した点を除いて(すなわち、複合ナノ粒子のうち、Pt担持量が減少する)、同じ方法により複合ナノ粒子を製造した。
【0094】
次いで、実施例1と同じアルミナ支持体粒子を準備した後、前記複合ナノ粒子と混合した後、実施例1と同じ方法により排ガス浄化用触媒を製造した。このとき、最後に製造される排ガス浄化用触媒のうち、Pt粒子の含量が2wt%となるように、複合ナノ粒子と、前記アルミナ支持体粒子との混合比をICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて調節した。
【0095】
前記得られた排ガス浄化用触媒に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いて、TiO2半導体粒子とアルミナ支持体粒子との質量比を測定した結果、アルミナ支持体粒子100重量部に対して、TiO2半導体粒子は、70重量部であった。
【0096】
比較例1
アルミナ支持体粒子(Al23、TEMイメージ分析によって得た平均粒径5μm)を水に分散して、水溶液を製造した。前記水溶液を継続して攪拌しつつ、H2PtCl6前駆体をAl23固形分97.6重量部に対して、Ptの含量が2.4重量部となるように投入した。Pt前駆体の含まれたAl23水溶液を、60℃の温度下で2時間攪拌した。攪拌が終了した水溶液を、80℃の温度下で24時間乾燥し、550℃の温度下で2時間塑性して、Ptの担持されたAl23粒子として排ガス浄化用触媒を製造した。前記得られた排ガス浄化用触媒に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma)を用いてPtの含量を測定した結果、Ptの含量は、2wt%であった。
【0097】
評価
実験例1:浄化性能評価
実施例1-4及び比較例1の排ガス処理用触媒の排ガス処理性能を評価するために、自動車排ガス浄化性能評価設備(Gas Chromatograph Analyzer,ABB Ltd.)を利用して処理性能を評価した。実施例1-4及び比較例1の排ガス処理用触媒それぞれに対して、総流量5L/minのうち、1000ppmの一酸化炭素条件下で(窒素Balance)、反応温度約50℃~約500℃で、一酸化炭素の酸化反応(CO+O2->CO2)のLight Off Temperature(LOT評価)を行った。LOT・℃)とは、浄化率が50%に至った時の温度を測定したものであって、LOT値が低い触媒粒子であればあるほど、浄化性能の良い触媒と判断する。
【0098】
具体的な評価方法は、次のとおりである。
【0099】
評価しようとする触媒試料は、同一量の貴金属(2wt%Pt)を含み、ペレット(Pellet)状に加工して(大きさ:600μm~1000μm)、試験及び評価した。浄化性能評価のための反応における反応温度を50℃で、10℃/minの速度に昇温して、500℃まで上昇させて行った。このとき、COを含む類似排ガスは、5000cc/min注入され、Infrared Photometerを活用して、ガス濃度をリアルタイムで検出する(代表的には、CO)。注入ガスの成分は、下記の表1のとおりである。
【0100】
【表1】
【0101】
測定済みLOTの結果を表2に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例1-4及び比較例1の排ガス浄化用触媒のうち、TiO2半導体粒子の含量は変わるものの、排ガス浄化用触媒のうち、Ptの含量がほぼ一定に含まれるようにした。表2の複合ナノ粒子のうち、TiO2半導体粒子100重量部に対して、Pt担持量(重量部)が決定されるようにした。
【0104】
実験例2:水分に対する脆弱性評価
実験例1と対比して、評価条件において、10wt%の水分を追加して評価した点を除いて、実験例1と同じ方法により排ガス浄化用触媒の浄化性能を評価した。10wt%水分は、ポンプとMass Flow Controllerを介して投入される水を、350℃の温度に気化して(Evaporizer)、水蒸気の形態で他の排ガス類似成分と共に投入した。
【0105】
評価の結果を下記の表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
以上のように、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、次の請求範囲に定義する本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0108】
1 貴金属
2 TiO2半導体粒子
3 アルミナ支持体粒子
4 複合ナノ粒子
10 排ガス浄化用触媒
図1