(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】CTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20220922BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220922BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
G01N23/046
A61B6/03 320X
A61B6/03 373
G01T7/00 A
(21)【出願番号】P 2021518535
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2019105147
(87)【国際公開番号】W WO2020125080
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】201811542627.4
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515221794
【氏名又は名称】ヌクテック カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511031733
【氏名又は名称】チンファ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】No. 1, Qinghua Yuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チンピン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ユンダ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ラ
(72)【発明者】
【氏名】リ,リアン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ティアォ
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105758873(CN,A)
【文献】特表2015-532974(JP,A)
【文献】特開2016-070752(JP,A)
【文献】特表2018-529083(JP,A)
【文献】特開2016-029367(JP,A)
【文献】中国実用新案第204479498(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
A61B 6/00 - A61B 6/14
G01T 1/00 - G01T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTシステムに用いられる検出装置であって、
所定の軌跡に沿って配列されている複数列の高エネルギー検出器を含む高エネルギー検出器アセンブリと、
前記高エネルギー検出器アセンブリに積層して設けられ、前記所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の低エネルギー検出器を含む低エネルギー検出器アセンブリと、を備え、
前記低エネルギー検出器アセンブリは、前記高エネルギー検出器アセンブリよりも放射線源に近い位置に配置されており、
前記低エネルギー検出器の列数は前記高エネルギー検出器の列数よりも少なく、
各列の前記低エネルギー検出器は、何れも1列の前記高エネルギー検出器を覆って
おり、任意の隣接する2列の前記高エネルギー検出器は、密接に設けられている検出装置。
【請求項2】
前記低エネルギー検出器により覆われている、任意の隣接する2列の前記高エネルギー検出器の間に、前記低エネルギー検出器により覆われていない少なくとも1列の前記高エネルギー検出器が設けられている、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記低エネルギー検出器により覆われている前記高エネルギー検出器と、前記低エネルギー検出器により覆われていない前記高エネルギー検出器とは、前記所定の軌跡に沿って交互に配列されている、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
任意の隣接する2列の前記低エネルギー検出器の間には、何れも第2の予め設定されたピッチがある、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第2の予め設定されたピッチは、5~80mmであり、又は、
前記第2の予め設定されたピッチは、30~50mmである、
請求項
4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記所定の軌跡は円弧である請求項1に記載の検出装置。
【請求項7】
CTシステムに用いられる検出装置であって、
積層して設けられた1層目の検出器アセンブリと、2層目の検出器アセンブリと、...、N層目の検出器アセンブリとを含み、前記Nは2よりも大きい整数であり、
ここで、前記1層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の第1の検出器を含み、前記2層目の検出器アセンブリは、前記所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第2の検出器を含み、...、前記N層目の検出器アセンブリは、前記所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第Nの検出器を
含み、
前記第1の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、前記第2の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、...、前記第Nの検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーとは順次に減少し、
前記1層目の検出器アセンブリ、前記2層目の検出器アセンブリ、...、及び前記N層目の検出器アセンブリは、この順序で放射線源からの距離が遠くなるように配設されており、
k+1層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数は、k層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数よりも少なく、k=1、2、...、N-1であり、
前記k+1層目の検出器アセンブリにおける各列の検出器は、何れも前記k層目の検出器アセンブリにおける1列の検出器を覆って
おり、任意の隣接する2列の前記第1の検出器は、密接に設けられている検出装置。
【請求項8】
被検体がCTシステムに出入りするためのスキャンチャネルと、前記スキャンチャネルの周りを回転するスリップリングと、前記スリップリングに接続されている放射線源と、前記放射線源に対向して設けられており、且つ前記スリップリングに接続されている検出装置と、を備えた前記CTシステムであって、
前記検出装置は、請求項1から
7のいずれか1項に記載の装置である、
CTシステム。
【請求項9】
前記検出装置から出力されたデータ信号に基づいて前記被検体のCT画像を再構成するデータ処理モジュールを更に備える、
請求項
8に記載のCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年12月17日に提出された「CTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置」という名称の中国特許出願201811542627.4の優先権を主張しており、その出願の全体が参照として本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願は、放射線検出の分野に関し、特にCTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、放射線撮影に基づくコンピュータ断層撮影技術は、安全検査、特に荷物中の疑わしい物品の検査に広く使用されている。放射線撮影によるCT技術では、CTデータ再構成によって断層内の被走査物体の特徴分布データを得ることができ、特徴データを解析することで、荷物によく見られる疑わしい物品を識別することができる。
【0004】
現在、広く使われているデュアルエネルギーCTシステムは2層検出器構成を採用して、2種類のエネルギーによる投影データを取得することで、被検体を識別する。しかし、現在のCTシステムにおける2層検出器構成は、せいぜい2種類のエネルギーによる投影データのみを取得し、材料に対する識別可能性を制限している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例は、マルチエネルギーによる投影データを利用することにより、材料に対する識別可能性を向上させるCTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置を提供している。
【0006】
本願の実施例の1つの側面によれば、CTシステムに用いられる検出装置を提供しており、当該装置は、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の高エネルギー検出器を含む高エネルギー検出器アセンブリと、高エネルギー検出器アセンブリに積層して設けられ、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の低エネルギー検出器を含む低エネルギー検出器アセンブリと、を備え、低エネルギー検出器の列数は前記高エネルギー検出器の列数よりも少なく、各列の低エネルギー検出器は、何れも1列の高エネルギー検出器を覆っている。
【0007】
一つの実施例では、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器は、密接に設けられている。
【0008】
一つの実施例では、複数列の高エネルギー検出器は、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている。
【0009】
一つの実施例では、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器の間には、何れも第1の予め設定されたピッチがある。
【0010】
一つの実施例では、低エネルギー検出器により覆われている、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器の間に、低エネルギー検出器により覆われていない少なくとも1列の高エネルギー検出器が設けられている。
【0011】
一つの実施例では、低エネルギー検出器により覆われている高エネルギー検出器と、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器とは、所定の軌跡に沿って交互に配列されている。
【0012】
一つの実施例では、任意の隣接する2列の低エネルギー検出器の間には、何れも第2の予め設定されたピッチがある。
【0013】
一つの実施例では、第2の予め設定されたピッチは、5~80mmであり、又は、第2の予め設定されたピッチは、30~50mmである。
【0014】
一つの実施例では、所定の軌跡は円弧である。
【0015】
本願の実施例のもう1つの側面によれば、CTシステムに用いられる検出装置を提供する。当該装置は、積層して設けられた1層目の検出器アセンブリと、2層目の検出器アセンブリと、...、N層目の検出器アセンブリとを含み、前記Nは2よりも大きい整数であり、ここで、前記1層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の第1の検出器を含み、2層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第2の検出器を含み、...、N層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第Nの検出器を含み、第1の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、第2の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、...、第Nの検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーとは順次に減少し、k+1層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数は、k層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数よりも少なく、k=1、2、...、N-1であり、k+1層目の検出器アセンブリにおける各列の検出器は、何れもk層目の検出器アセンブリにおける1列の検出器を覆っている。
【0016】
本願の実施例の更にもう1つの側面によれば、CTシステムを提供する。当該CTシステムは、被検体がCTシステムに出入りするためのスキャンチャネルと、スキャンチャネルの周りを回転するスリップリングと、スリップリングに接続されている放射線源と、放射線源に対向して設けられており、且つスリップリングに接続されている検出装置と、を備えて、検出装置は、本願の実施例に係る装置である。
【0017】
一つの実施例では、CTシステムは、検出装置から出力されたデータ信号に基づいて被検体のCT画像を再構成するデータ処理モジュールを更に備える。
【0018】
本願の実施例に係るCTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置によれば、検出装置は、高エネルギー検出器アセンブリと、高エネルギー検出器アセンブリに積層して設けられた低エネルギー検出器アセンブリと、を備え、高エネルギー検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の高エネルギー検出器を含み、低エネルギー検出器アセンブリは、前記所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の低エネルギー検出器を含み、低エネルギー検出器の列数は高エネルギー検出器の列数よりも少なく、各列の低エネルギー検出器は、何れも1列の高エネルギー検出器を覆っているため、放射線源から放出する放射線は検出装置を透過する3種類の方式を有することができる。これにより、3種類のエネルギーによる投影画像を取得することができ、材料に対する識別可能性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本願の例示的な実施例の特徴、利点及び技術効果について説明する。
【0020】
【
図1】は、本発明のいくつかの実施例に係るCTシステムの概略構成図である。
【
図2】は、本願の一実施例に係るCTシステムに用いられる検出装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】は、本願のいくつかの実施例によって提供される単列の検出器の構成を示す模式図である。
【
図5】は、
図2の検出装置における低エネルギー検出器及び高エネルギー検出器のエネルギー応答曲線を示す図である。
【
図6】は、本願の他の実施例に係る検出装置を示す側面図である。
【
図7】は、本願のさらに別の実施例に係る検出装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面及び実施例を参照して、本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び添付図面は、本願の原理を例示的に説明するために使用されているが、本願の範囲を限定するものではない。即ち、本願は、記載された実施例に限定されるものではない。
【0022】
なお、本明細書において、第1及び第2等の関係用語は、一方のエンティティ又は操作と他方のエンティティ又は操作とを区別するために用いられるものであり、必ずしもこれらのエンティティ又は操作の間にそのような実際の関係又は順序が存在する必要をすることではなく、それを暗示することではない。さらに、「備える」、「含む」、又はその任意の他の変形体は、非排他的なものを包含することを意図しており、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置がそれらの要素だけでなく、また、明示的に記載されていない他の要素、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の要素も含まれる。さらに限定されるものがない場合に、「...を含む」という文言によって限定される要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置内に他の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0023】
本願をより良く理解するために、以下、本発明の実施例に係るCTシステム及びCTシステムに用いられる検出装置について図面を参照して詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本願の開示の範囲を限定するものではない。
【0024】
図1は、本願の実施例に係るCTシステムの概略構成図である。
図1に示すように、CTシステムは、スキャンチャネル1と、放射線源2と、検出装置3と、スリップリング4と、制御装置5と、データ処理装置6とを備えている。
【0025】
本願の実施例では、被検体は、スキャンチャネル1を通って搬送方向Vに沿ってCTシステムに出入りする。
【0026】
放射線源2は、スリップリングに接続されており、放射線ビームを放出するためのものである。放射線源2は、汎用の各種の型番のX線機や加速器であってもよいし、放射性同位体や同期放射光源等の、X線やγ線を放出することができる装置であってもよい。
【0027】
検出装置3は、放射線源2に対向して設けられており、且つスリップリング4に接続されている。検出装置3は、被検体を透過した放射線源2からの放射線ビームを受光する。
【0028】
スリップリング4は、スキャンチャネル1の周りを回転する。なお、スリップリング4の回転軸線は、スキャンチャネル1における被検体を搬送する搬送方向Vと略平行である。スリップリング4は、予め設定されたスキャンパラメータに基づいて回転し、放射線源2及び検出装置3を駆動して被検体の周りを回転させることで、被検体に対する回転スキャンを完成する。
【0029】
制御装置5は、放射線源2からの放射線の放射を制御し、且つ検出装置3から出力されるデータ信号の収集を制御する。また、制御装置5は、スキャンチャネル1及びスリップリング4の動作を制御するためにも用いられる。
【0030】
データ処理装置6は、検出装置3が被検体を走査する過程で発生するデータ信号に基づいて処理を行うことで、被検体のCT画像を再構成する。
【0031】
図2は、本願の一実施例に係る検出装置3の構成を示す模式図である。
図2を参照すると、検出装置3は、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の高エネルギー検出器311を含む高エネルギー検出器アセンブリ31と、高エネルギー検出器アセンブリ31に積層して設けられており、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列された複数列の低エネルギー検出器321を含む低エネルギー検出器アセンブリ32と、を備える。
【0032】
ここで、低エネルギー検出器アセンブリ32は、放射線源2に近い側に設けられており、高エネルギー検出器アセンブリ31は、放射線源2から遠い側に設けられている。つまり、放射線源2から放出された放射線は、まず低エネルギー検出器321に入射する。
【0033】
引き続き
図2を参照すると、高エネルギー検出器アセンブリ31は、
図2に矢印のある破線で示す円弧軌跡Nに沿って配列されているエリアアレイの高エネルギー検出器311を含む。ここで、エリアアレイの高エネルギー検出器は、複数列の高エネルギー検出器311を含み、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器311が密接に設けられている。換言すれば、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器311のピッチは、ゼロに限りなく近い。選択可能に、エリアアレイの各高エネルギー検出ユニットの中心は、放射線源2の焦点を円心とする円弧に分布していてもよい。
【0034】
選択可能に、複数列の高エネルギー検出器が配列される所定の軌跡は、搬送方向Vに平行な直線である。
【0035】
図3は、本願の実施例によって提供される単列の検出器の構成を示す模式図である。ここで、単列の検出器は、単列の低エネルギー検出器であってもよいし、単列の高エネルギー検出器であってもよい。
図3に示すように、単列の検出器は、複数の検出ユニットが所定の軌跡に沿って配列されて形成されている。ここで、各検出ユニットは、1つのデータを個別に出力する。選択可能に、複数の検出ユニットは、連続的に配列されてもよいし、離間して配列されてもよい。
【0036】
本願の実施例では、各列の高エネルギー検出器は、所定の軌跡に沿って配列されている複数の高エネルギー検出ユニットを含む。
図2を参照すると、複数の高エネルギー検出ユニットが、
図2の円弧軌跡Mに沿って配列されている。選択可能に、各列の高エネルギー検出器内の複数の高エネルギー検出ユニットは、直線に沿って配列されてもよい。
【0037】
本願の実施例では、高エネルギー検出器における高エネルギー検出ユニットの配列軌跡は、スキャンチャネルの搬送方向Vと略平行な直線であってもよい。つまり、複数の高エネルギー検出ユニットは、スキャンチャネルの搬送方向に沿って配列されている。高エネルギー検出器における高エネルギー検出ユニットの配列軌跡は、放射線源の焦点を円心とする円弧であってもよい。
【0038】
本願の実施例では、低エネルギー検出器アセンブリ32は、
図2の円弧軌跡Nが間隔を空けて配列された複数列の低エネルギー検出器321を含む。選択可能に、隣接する2つの低エネルギー検出器321のピッチは、等しくてもよく、等しくなくてもよい。
【0039】
選択可能に、隣接する2列の低エネルギー検出器のピッチは等しい。低エネルギー検出器31の間のピッチは、5~80mm、10~70mm、20~60mm、30~50mm、35~45mm、36~40mm、又は38mmとしてもいい。具体的には、被検体のニーズに応じて設定することができる。
【0040】
ここで、各列の低エネルギー検出器は、所定の軌跡に沿って配列されている複数の低エネルギー検出ユニットを含む。
図2を参照すると、各列の低エネルギー検出器内の複数の低エネルギー検出ユニットも、
図2の円弧軌跡に沿って配列されている。選択可能に、各列の低エネルギー検出器における複数の低検出ユニットは、搬送方向Vに平行な直線に沿って配列されてもよい。
【0041】
本願の実施例では、低エネルギー検出器321の列数は高エネルギー検出器311の列数よりも少なく、各列の低エネルギー検出器321は1列の高エネルギー検出器311を覆っている。低エネルギー検出器321の列数は高エネルギー検出器311の列数よりも少ないため、高エネルギー検出器アセンブリには、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器と、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器とが含まれている。
【0042】
図4は、
図2の検出装置を示す側面図である。
図5は、
図2における低エネルギー検出器及び高エネルギー検出器のエネルギー応答曲線を示す図である。
図4に示すように、CTシステムを使用する場合、
図2における検出装置を用いることで、放射線源1からのX線は、X線が低エネルギー検出器321に直接入射して沈着される方式と、低エネルギー検出器321を透過したX線が、再び低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器に入射して沈着される方式と、X線が、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器に直接入射して沈着される方式との検出装置を透過する3つの方式がある。
【0043】
ここで、低エネルギー検出器321の列数は、高エネルギー検出器311の列数よりも少ないため、高エネルギー検出器アセンブリには、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器が含まれておる。従って、X線は、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器に直接沈着されている。
【0044】
各列の低エネルギー検出器321は1列の高エネルギー検出器321を覆っているため、低エネルギー検出器を透過した放射線は、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器に沈着されている。
【0045】
図5に示すように、実線は低エネルギー検出器の第1のエネルギー応答曲線を示し、破線は低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器の第2のエネルギー応答曲線を示し、一点鎖線は、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器の第3のエネルギー応答曲線を示している。
【0046】
図4及び
図5を参照すると、X線が低エネルギー検出器に沈着された後、低エネルギー検出器321の第1のエネルギー応答は、低エネルギー領域において顕著である。
【0047】
X線が、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器に直接沈着される場合、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器の第3のエネルギー応答は、高エネルギー領域において顕著である。
【0048】
X線が低エネルギー検出器を透過して低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器に沈着された後、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器は第1のエネルギー応答と異なる第2のエネルギー応答を有し、第2のエネルギー応答は、第1のエネルギー応答と第3のエネルギー応答との乗積である。
図5を参照すると、第2のエネルギー応答は、低エネルギー領域と高エネルギー領域との間の中間エネルギー領域において顕著である。
【0049】
引き続き
図5を参照すると、低エネルギー検出器と、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器と、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器との3種類の検出器のそれぞれについて、沈着割合が最大である光子のエネルギーは異なる。
【0050】
つまり、低エネルギー検出器の第1のエネルギー応答のピークに対応するエネルギー、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器の第2のエネルギー応答のピークに対応するエネルギー、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器の第3のエネルギー応答のピークに対応するエネルギーは、順次に増加する。
【0051】
従って、本願の実施例に係る検出装置を用いたCTシステムは、被検体の3種類のエネルギーによる投影データを取得することができる。3種類のエネルギーによる投影画像は、2種類のエネルギーによる投影画像と比較して、被走査材料の減衰係数関数をより正確に表現し、材料に対する識別可能性がより高い。
【0052】
本願の実施例において、低エネルギー検出器アセンブリと高エネルギー検出器アセンブリとの間に他のデバイスが設けられていないというのは、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器に放射線源からの放射線が直接沈着されることを実現すると共に、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器に放射線源からの放射線が沈着されることを実現するためであり、さらに、2層の検出器アセンブリを利用して3種類のエネルギーによる投影データを得ることで、材料に対する識別可能性を向上させることを実現することができる。
【0053】
一例として、2つの異なる材料A及び材料Bについて、材料Aの減衰係数関数にK-edgeのジャンプが存在し、材料Bの減衰係数関数にK-edgeのジャンプが存在しないが、全体としては材料Aの減衰係数関数に近い。ここで、K-edgeは原子のK殻の電子の結合エネルギーである。光子エネルギーがK-edgeを超えると、原子のK殻の電子と光子との作用のために、光電効果を生じ、原子の減衰係数関数はジャンプを生じる。
【0054】
X線エネルギースペクトルに明らかなエネルギー拡張が存在するため、2種類のエネルギーによる投影データから再構成された材料Aの減衰係数は、X線エネルギースペクトルにおける材料Aの減衰係数関数の平均、即ち等価減衰係数であり、これは、再構成された材料Bの等価減衰係数に非常に近く、即ち、材料Aと材料Bとを2種類のエネルギーによる投影データから識別することができない。
【0055】
本願の実施例が提供する検出装置は3種類のエネルギーによる投影データを提供することができ、3種類のエネルギーによる投影データは3つの異なるエネルギースペクトルでの等価減衰係数を与えることができ、2種類のエネルギーによる等価減衰係数と比較し、もう一つの1次元データを用ることで、K-edgeのジャンプが存在するかどうかを表現することができる。これにより、材料Aと材料Bを分けることができ、即ち材料に対する識別可能性を向上させることができる。
【0056】
本願の実施例では、低エネルギー検出器アセンブリ32が放射線源2に近い側に設けられるが、高エネルギー検出器アセンブリ31が放射線源2に近い側に設けられないというのは、放射線源からの放射線が低エネルギー検出器アセンブリを透過して低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器に入ることを実現するためであり、さらに、第2のエネルギー応答を有する投影データを得ることができる。
【0057】
高エネルギー検出器アセンブリ31が放射線源2に近い側に設けられているが、低エネルギー検出器アセンブリ32が放射線源2から遠い側に設けられると、3種類のエネルギーによる投影データを取得することができない。一般的に、高エネルギー検出器の厚さは大きいため、放射線中の全ての光子が高エネルギー検出器に完全に沈着される。高エネルギー検出器アセンブリ31が放射線源2に近い側に設けられていると、高エネルギー検出器により覆われた低エネルギー検出器に光子が入射しなくなり、2種類のエネルギーによる投影データのみを取得する。
【0058】
高エネルギー検出器用結晶は一般的に厚いため、放射線源2から遠い側に設けられた高エネルギー検出器アセンブリは、放射線源から放射されるX線光子を完全に吸収し、従って、本願の実施例における検出装置は、検出効率が高く、画像ノイズが小さく、且つ透過力が強い。
【0059】
本願の実施例では、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器は第2のエネルギー応答を有し、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器は第3のエネルギー応答を有する。被検体の画質をさらに向上させ、又、高エネルギー検出器アセンブリにおける第3のエネルギー応答を有する投影データの均一性及び正確性を向上させるために、高エネルギー検出器アセンブリ内の高エネルギー検出ユニットをキャリブレーション(Calibration)又は較正することができる。
【0060】
一例として、まず、低エネルギー検出器により覆われていないときの、高エネルギー検出器における複数の高エネルギー検出ユニットがそれぞれ出力する第1のデータを取得し、次に、低エネルギー検出器を高エネルギー検出器に覆うことで、低エネルギー検出器により覆われたときの、高エネルギー検出器における複数の高エネルギー検出ユニットがそれぞれ出力する第2のデータ、及び低エネルギー検出器における複数の低エネルギー検出ユニットがそれぞれ出力する第3のデータを取得する。そして、複数の第1のデータ、複数の第2のデータ及び複数の第3のデータに基づいて、第1のデータと第2のデータ及び第3のデータとの関係が確立される。
【0061】
具体例として、第1のデータを引数とし、第2のデータと第3のデータを従属変数として、第1のデータと第2のデータ、第3のデータとの関係を確立し、これにより、第2のデータと第3のデータとの重み付け加算を用いて第1のデータを推定する際に、第2のデータに対応する重みと第3のデータに対応する重みとが求められる。
【0062】
検出装置において、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器における各高エネルギー検出ユニットは、予め定められた第2のデータの重みと第3のデータの重みとに基づいて、高エネルギー検出ユニットを覆う低エネルギー検出ユニットの第3データと該高エネルギー検出ユニットの第2データを重み付け加算することで、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器における、各高エネルギー検出ユニットが低エネルギー検出器により覆われていないときの推定投影データを推定する。
【0063】
そして、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器における、各高エネルギー検出ユニットに対応する推定投影データは、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器における、他の高エネルギー検出ユニットが出力する投影データと結合することにより、第3のエネルギー応答のみを有する高エネルギー検出器の投影データを構成し、さらに被検体の単一のエネルギー三次元再構成結果を与える。
【0064】
高エネルギー検出器アセンブリにおける高エネルギー検出器の出力データの一致性を向上させることにより、被検体のより多くのデータを得ることができ、データの均一性と画質を向上させて、さらに材料に対する識別可能性をさらに向上させる。
【0065】
図6は、本願の他の実施例に係る検出装置を示す側面図である。
図6に示す検出装置が
図2に示す検出装置と異なる点は、高エネルギー検出器アセンブリにおける複数列の高エネルギー検出器は、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されていることである。
【0066】
ただし、任意の2列の高エネルギー検出器のピッチについては等しくてもよいし、等しくなくてもよい。選択可能に、高エネルギー検出器が出力するデータの空間的均一性及び画質を保つために、任意の隣接する2列の高エネルギー検出器の間に等しい間隔を設けることができる。
【0067】
本願の実施例では、隣接する2列の低エネルギー検出器のピッチがそれぞれ等しく、かつ、隣接する2列の高エネルギー検出器のピッチもそれぞれ等しい場合に、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器が高エネルギー検出器アセンブリに含まれることを保証するために、低エネルギー検出器の列のピッチは高エネルギー検出器の列のピッチよりも大きい。
【0068】
本願の実施例では、データの均一性と画質を保つために、任意の隣接する2列の、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器の間に、少なくとも1列の、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器が設けられている。
【0069】
具体的には、低エネルギー検出器により覆われた高エネルギー検出器と、低エネルギー検出器により覆われていない高エネルギー検出器とは所定の軌跡に沿って交互に配列されることで、第2のエネルギー応答を有する投影データと第3のエネルギー応答を有する投影データとが均一に分布されることを保証でき、さらに、被検体の画質を向上させ、材料に対する識別可能性をさらに向上させる。
【0070】
本願の実施例はさらに検出装置を提供している。該検出装置は、積層して設けられている1層目の検出器アセンブリと、2層目の検出器アセンブリと、...、N層目の検出器アセンブリとを含み、Nは2よりも大きい整数である。
【0071】
ここで、1層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って配列されている複数列の第1の検出器を含み、2層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第2の検出器を含み、...、N層目の検出器アセンブリは、所定の軌跡に沿って間隔を空けて配列されている複数列の第Nの検出器を含む。
【0072】
第1の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、第2の検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーと、...、第Nの検出器のエネルギー応答ピークに対応するエネルギーとは順次に減少する。
【0073】
k+1層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数は、k層目の検出器アセンブリにおける検出器の列数よりも少なく、k=1、2、...、N-1である。
【0074】
k+1層目の検出器アセンブリにおける各列の検出器は、何れもk層目の検出器アセンブリにおける1列の検出器を覆っている。
【0075】
一例として、
図7は、N=3の場合の検出装置の側面図を示す。複数層検出器アセンブリを設けることにより、4種類のエネルギー及び4種類のエネルギー以上の複数種類のエネルギーによる被検体の投影データを取得することができ、材料に対する識別可能性をより向上させることができる。
【0076】
本願の実施例によって提供される3層及び3層以上の検出器アセンブリを含む検出装置は、
図2~
図6に関連して説明した2層の検出器アセンブリを含む検出装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0077】
以上、好適な実施例を挙げて本願を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で種の変更が可能であり、均等なものでその部材を替えることも可能である。特に、構成に矛盾がない限り、各実施例における各技術的特徴を任意に組み合わせることができる。本願は、上記の特定の実施例に限らず、特許請求の範囲に含まれる全ての技術案を含む。