(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】植物育成用半導体発光装置、並びに照明方法及び設計方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20220922BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220922BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20220922BHJP
F21V 3/08 20180101ALI20220922BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220922BHJP
F21Y 113/10 20160101ALN20220922BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
H01L33/50
F21V33/00 400
F21V3/08
F21Y115:10
F21Y113:10
(21)【出願番号】P 2021519416
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018736
(87)【国際公開番号】W WO2020230742
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019090603
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 義英
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163053(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126681(WO,A1)
【文献】特開2016-111190(JP,A)
【文献】特開2016-202072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
H01L 33/50
F21V 33/00
F21V 3/08
F21Y 115/10
F21Y 113/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、を含む植物育成用半導体発光装置であって、
前記半導体発光装置から出射する光は、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)
及び(ii)を満たす、植物育成用半導体発光装置。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値I
Rを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値I
BGを有し、且つI
BG/I
Rの値が0.1以上0.3以下を満たす
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記I
BG
と、波長555nmにおける発光強度I
555
と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【請求項2】
前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルは、更に、以下の(iii)を満たす、請求項
1に記載の植物育成用半導体発光装置。
(iii)波長400nm以上500nm以下の領域に発光極大値I
Bを有し、0.8≦I
B/I
R≦1.3を満たす
【請求項3】
前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルは、更に、以下の(iv)を満たす、請求項
1に記載の植物育成用半導体発光装置。
(iv)波長650nm以上の領域に発光極大値I
Rを有する
【請求項4】
前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルは、更に、以下の(v)を満たす、請求項
1に記載の植物育成用半導体発光装置。
(v)発光極小値I
BGの波長λI
BGnmから波長555nmの範囲において、波長555nmにおける発光強度I
555が発光強度の最大値である
【請求項5】
前記赤色蛍光体は、窒化物蛍光体を含む、請求項1から
4のいずれか1項に記載の植物育成用半導体発光装置。
【請求項6】
前記赤色蛍光体は、半値幅が75nm以上である赤色蛍光体を含む、請求項1から
5の
いずれか1項に記載の植物育成用半導体発光装置。
【請求項7】
前記緑色蛍光体は、ピーク波長が510nm以上540nm以下であり、且つ半値幅が100nm以上120nm以下である緑色蛍光体を含む、請求項1から
6のいずれか1項に記載の植物育成用半導体発光装置。
【請求項8】
少なくとも青色半導体発光素子と蛍光体と含む半導体発光装置から出射する光により植物を照射する照明工程、を含む照明方法であって、
前記照明工程において、前記半導体発光装置から出射する光が植物を照明した際に、前記植物の位置で測定した光が-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)及び(ii)を満たす、照明方法。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値I
Rを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値I
BGを有し、且つI
BG/I
Rの値が0.1以上0.3以下を満たす
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記I
BGと、波長555nmにおける発光強度I
555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【請求項9】
少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含む波長変換層と、を備えた植物育成用半導体発光装置から出射する光のスペクトルを設計する方法であって、
前記半導体発光装置から出射する光が、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)及び(ii)を満たすように、前記波長変換層を調製するステップ、を含む、設計方法。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値I
Rを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値I
BGを有し、且つI
BG/I
Rの値が0.1以上0.3以下を満たす
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記I
BGと、波長555nmにおける発光強度I
555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を効率よく育成するための半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内で野菜や花卉などの植物等を育てる植物工場では、効率良く植物を育成するために、白色蛍光灯、ナトリウム電球、LED等を用いて植物等に対して光を照射する。そして、植物の光合成は、植物に含まれる葉緑体により行われ、主に波長域400nm~700nmの光が使用される。
【0003】
上記光合成に使用される波長域の光のうち、特に長波長側の赤色領域でエネルギー変換効率が高いとされており、青色領域と赤色領域の光を適切なものとすることで、光合成に好適な光を発する光源が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方で、植物の生長を優先するため赤色用発光ダイオードを多く用いる植物育成用の照明装置では、赤色発光ダイオードからの赤色光が植物に照射されるため、人間の目には植物が黒ずんで見えるという問題があった。このような問題に対し、白色用発光ダイオードと赤色用発光ダイオードを有し、赤色用発光ダイオードから発する光の放射エネルギーが、白色用発光ダイオードから発する光の放射エネルギーの1/2以下となるように制御することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-122722号公報
【文献】特開2011-200204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献2の技術では、白色用発光ダイオードの光の放射エネルギーが大きいため、光合成に寄与しない領域の光が多く含まれ、植物の効率的な育成には改善の余地があった。また、赤色LEDは白色LEDと比較して劣化が早いため、長時間の使用により、照明装置から照射される光から、光合成に寄与する赤色光を失ってしまうことがあった。
本発明は、植物を効率的に育成できることと、植物の成長度合いを把握するための色の見えと、を両立できる新たな植物育成用半導体発光装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ね、半導体発光装置から出射する光のスペクトルにおいて、緑色領域にある程度発光強度を持たせ、且つその発光強度変化をなだらかにすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の一形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、を含む植物育成用半導体発光装置であって、
前記半導体発光装置から出射する光は、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)を満たす、植物育成用半導体発光装置、である。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値IRを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値IBGを有し、且つIBG/IRの値が0.1以上0.3以下を満たす
【0009】
また、本発明の別形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、を含む植物育成用半導体発光装置であって、
前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルが以下の(ii)を満たす、植物育成用半導体発光装置、である。
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記IBGと、波長555nmにおける発光強度I555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【0010】
また、前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルは、更に、以下の(iii)及び/又は(iv)を満たすことが好ましい。更に以下の(v)を満たすことが好ましい。
(iii)波長400nm以上500nm以下の領域に発光極大値IBを有し、0.8≦IB/IR≦1.3を満たす
(iv)波長650nm以上の領域に発光極大値IRを有する
(v)発光極小値IBGの波長λIBGnmから波長555nmの範囲において、波長555nmにおける発光強度I555が発光強度の最大値である
【0011】
また、前記赤色蛍光体は、窒化物蛍光体を含むことが好ましく、半値幅が75nm以上である赤色蛍光体を含むことが好ましい。更に、前記緑色蛍光体は、ピーク波長が510nm以上540nm以下であり、且つ半値幅が100nm以上120nm以下である緑色蛍光体を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の別の形態は、少なくとも青色半導体発光素子と蛍光体と含む半導体発光装置から出射する光により植物を照射する照明工程、を含む照明方法であって、
前記照明工程において、前記半導体発光装置から出射する光が植物を照明した際に、前記植物の位置で測定した光が-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)及び(ii)を満たす、照明方法。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値IRを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値IBGを有し、且つIBG/IRの値が0.1以上0.3以下を満たす
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記IBGと、波長555nmにおける発光強度I555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【0013】
また、前記半導体発光装置と植物との距離が10cm~60cmであって、前記半導体発光装置がSMD構成であることが好ましく、前記半導体発光装置と植物との距離が60cm~2mであって、前記半導体発光装置がCOB構成であることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の別の形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含む波長変換層と、を備えた植物育成用半導体発光装置から出射する光のスペクトルを設計する方法であって、
前記半導体発光装置から出射する光が、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)及び(ii)を満たすように、前記波長変換層を調製するステップ、を含む、設計方法である。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値IRを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値IBGを有し、且つIBG/IRの値が0.1以上0.3以下を満たす
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記IBGと、波長555nmにおける発光強度I555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【発明の効果】
【0015】
本発明により、植物を効率的に育成できることと、植物の成長度合いを把握するための色の見えと、を両立できる新たな植物育成用半導体発光装置を提供できる。
また、赤色半導体発光素子を使用せず、赤色蛍光体を使用することから、長時間使用しても、スペクトルバランスを維持することができる。また、1種類の半導体発光素子のみを使用するため、駆動回路をシンプルにできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】半導体発光装置1の出射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図1b】半導体発光装置2の出射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図1c】半導体発光装置7の出射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図1d】半導体発光装置8の出射光のスペクトルを示すグラフである。
【
図2】(a)半導体発光装置1から出射する光で照射した発育途中のミニトマトと、(b)半導体発光装置7から出射する光で照射した発育途中のミニトマトの写真である(図面代用写真)。
【
図3】高圧ナトリウムランプ(HPS)、半導体発光装置1及び7を用いてリーフレタスを照射し、その発育を評価した結果を示すグラフである。図中(a)は葉の重量の推移を示し、図中(b)は葉の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の一形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、を含む植物育成用半導体発光装置であって、
前記半導体発光装置から出射する光は、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが以下の(i)を満たす、植物育成用半導体発光装置、である。
(i)波長600nm以上の領域に発光極大値IRを有し、波長450nm以上500nm以下の領域に発光極小値IBGを有し、且つIBG/IRの値が0.1以上0.3以下を満たす
また、本発明の別形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体と、赤色蛍光体と、を含む植物育成用半導体発光装置であって、
前記半導体発光装置から出射する光のスペクトルが以下の(ii)を満たす、植物育成用半導体発光装置、である。
(ii)縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記IBGと、波長555nmにおける発光強度I555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす
【0018】
青色半導体発光素子は、通常発光ピーク波長域が430nm以上490nm以下である半導体発光素子である。青色半導体発光素子は、発光ピーク波長の下限が435nmであってよく、440nmであってよい。発光ピーク波長の上限は480nm以下であってよく、475nm以下であってよく、470nm以下であってよい。半導体発光装置は青色半導体発光素子を1つだけ有してもよく、複数有してもよい。複数有する場合、青色半導体発光素子が線状に配列されていてもよく、面状に配列されていてもよく、配列は規則性を有していても、アトランダムであってもよい。
【0019】
緑色蛍光体は、通常発光ピーク波長域が490nm以上570nm以下である蛍光体である。発光ピーク波長は495nm以上であってよく、500nm以上であってよく、510nm以上であってよい。また560nm以下であってよく、550nm以下であってよく、540nm以下であってよい。
緑色蛍光体の半値幅は特段限定されないが、半値幅が60nm以上であってよく、70nm以上であってよく、80nm以上であってよく、90nm以上であってよく、100nm以上であってよい。また130nm以下であってよく、120nm以下であってよく、115nm以下であってよく、110nm以下であってよい。
【0020】
赤色蛍光体は、通常発光ピーク波長域が590nm以上700nm以下である蛍光体である。発光ピーク波長は600nm以上であってよく、610nm以上であってよい。また680nm以下であってよく、660nm以下であってよい。
赤色蛍光体の半値幅は特段限定されないが、半値幅が1nm以上であってよく、2nm以上であってよく、また15nm以下であってよく、10nm以下であってよい。別の例では、半値幅が70nm以上であってよく、75nm以上であってよく、80nm以上であってよく、90nm以上であってよく、また120nm以下であってよく、115nm以下であってよく、110nm以下であってよく、100nm以下であってよい。
【0021】
緑色蛍光体の具体例としては、Ce3+を付活剤としたアルミン酸塩、Ce3+を付活剤としたイットリウムアルミニウム酸化物、Eu2+付活アルカリ土類ケイ酸塩結晶、Eu2+付活アルカリ土類ケイ酸窒化物を母体とする緑色蛍光体がある。これらの緑色蛍光体は、通常、青色半導体発光素子を用いて励起可能である。
【0022】
Ce3+付活アルミン酸塩蛍光体の具体例には、下記一般式(2)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
Ya(Ce,Tb,Lu)b(Ga,Sc)cAldOe (2)
(一般式(2)において、a、b、c、d、eが、a+b=3、0≦b≦0.2、4.5≦c+d≦5.5、0.1≦c≦2.6、および10.8≦e≦13.4を満たす。)
なお、一般式(2)で表されるCe3+付活アルミン酸塩蛍光体をG-YAG蛍光体と呼ぶ。
【0023】
Ce3+付活イットリウムアルミニウム酸化物系蛍光体の具体例には、下記一般式(3)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
Lua(Ce,Tb,Y)b(Ga,Sc)cAldOe (3)
(一般式(3)において、a、b、c、d、eが、a+b=3、0≦b≦0.2、4.5≦c+d≦5.5、0≦c≦2.6、および10.8≦e≦13.4を満たす。)
なお、一般式(3)で表されるCe3+付活イットリウムアルミニウム酸化物系蛍光体をLuAG蛍光体と呼ぶ。
【0024】
その他、下記一般式(4)および下記一般式(5)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
M1
aM2
bM3
cOd (4)
(一般式(4)において、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、cおよびdが、2.7≦a≦3.3、1.8≦b≦2.2、2.7≦c≦3.3、11.0≦d≦13.0を満たす。)
なお、一般式(4)で表される蛍光体をCSMS蛍光体と呼ぶ。
【0025】
なお、上記式(4)において、M1は2価の金属元素であるが、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Mg、Ca、又はZnであるのが更に好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。また、M1は他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
M2は3価の金属元素であるが、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Al、Sc、Y、又はLuであるのが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。また、M2はCeを含むことを必須とし、M2は他の3価の金属元素を含んでいてもよい。
M3は4価の金属元素であるが、少なくともSiを含むことが好ましい。Si以外の4価の金属元素M3の具体例としては、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Ti、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種であるのがより好ましく、Snであることが特に好ましい。特に、M3がSiであることが好ましい。また、M3は他の4価の金属元素を含んでいてもよい。
【0026】
M2に含まれるCeのM2全体に占める割合の下限は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。また、M2に含まれるCeのM2全体に占める割合の上限は、0.10以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。更に、M1元素に含まれるMgのM1全体に占める割合の下限は0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましい。一方、上限は0.30以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。
【0027】
M1
aM2
bM3
cOd (5)
(一般式(5)において、M1は少なくともCeを含む付活剤元素、M2は2価の金属元素、M3は3価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、cおよびdが、0.0001≦a≦0.2、0.8≦b≦1.2、1.6≦c≦2.4、および3.2≦d≦4.8を満たす。)
なお、一般式(5)で表される蛍光体をCSO蛍光体と呼ぶ。
【0028】
なお、上記式(5)において、M1は、結晶母体中に含有される付活剤元素であり、少なくともCeを含む。また、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された少なくとも1種の2~4価の元素を含有させることができる。
M2は2価の金属元素であるが、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Mg、Ca、又は、Srであるのが更に好ましく、M2の元素の50モル%以上がCaであることが特に好ましい。
M3は3価の金属元素であるが、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、Yb、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Al、Sc、Yb、又はLuであるのが更に好ましく、Sc、又はScとAl、又はScとLuであるのがより一層好ましく、M3の元素の50モル%以上がScであることが特に好ましい。
M2及びM3は、それぞれ2価及び3価の金属元素を表すが、M2及び/又はM3のごく一部を1価、4価、5価のいずれかの価数の金属元素としてもよく、さらに、微量の陰イオン、たとえば、ハロゲン元素(F、Cl、Br、I)、窒素、硫黄、セレンなどが、化合物の中に含まれていてもよい。
【0029】
さらに、Eu2+付活アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とする蛍光体の具体例には、下記一般式(6)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
(BaaCabSrcMgdEux)SiO4 (6)
(一般式(6)においてa、b、c、dおよびxが、a+b+c+d+x=2、1.0≦a≦2.0、0≦b<0.2、0.2≦c≦1,0、0≦d<0.2および0<x≦0.5を満たす。)
なお、一般式(6)で表されるアルカリ土類ケイ酸塩蛍光体をBSS蛍光体と呼ぶ。
【0030】
さらに、Eu2+付活アルカリ土類ケイ酸窒化物を母体とする蛍光体の具体例には、下記一般式(7)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)3Si6O12N2 (7)
なお、一般式(7)で表される蛍光体をBSON蛍光体と呼ぶ。
一般式(7)において選択できる2価金属元素(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)のうち、BaとSrとEuの組合せとすることが好ましく、さらには、Baに対するSrの比率は10~30%とすることがより好ましい。
【0031】
また、その他、(Y1-uGdu)3(Al1-vGav)5O12:Ce,Eu(但し、u及びvはそれぞれ0≦u≦0.3、及び0≦v≦0.5を満たす。)で表されるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(これをYAG蛍光体と呼ぶ。)や、Ca1.5xLa3-XSi6N11:Ce(但し、xは、0≦x≦1)で表されるランタン窒化ケイ素蛍光体(これをLSN蛍光体と呼ぶ。)などの黄色蛍光体を含んでもよい。また、Eu2+付活サイアロン結晶を母体とするSi6-zAlzOzN8-z:Eu(ただし0<z<4.2)で表される狭帯域緑色蛍光体(これをβ-SiAlON蛍光体と呼ぶ)やCa8MgSi4O16Cl2:Eu(これをクロロシリケート蛍光体と呼ぶ。なお、クロロシリケート蛍光体と結晶構造が同一で、元素の一部が置換された蛍光体も、クロロシリケート蛍光体に含まれる)を含んでもよい。更に、Sr3Si13Al3O2N21:Eu2+蛍光体や、(Ca,Sr)Ga2S4:Eu2+蛍光体を含んでもよい。
【0032】
緑色蛍光体は、1種類の緑色蛍光体のみを用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
赤色蛍光体の具体例としては、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、青色半導体発光素子を用いて励起可能である。
【0034】
アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、CaAlSiN3:Euで表される蛍光体(これをCASN蛍光体と呼ぶ)、(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN3:Euおよび/または(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Euで表される蛍光体(これをSCASN蛍光体と呼ぶ)、(CaAlSiN3)1-x(Si2N2O)x:Eu(ただし、xは0<x<0.5)で表される蛍光体(これをCASON蛍光体と呼ぶ)、(Sr,Ca,Ba)2AlxSi5-xOxN8-x:Eu(ただし0≦x≦2)で表される蛍光体、Euy(Sr,Ca,Ba)1-y:Al1+xSi4-xOxN7-x(ただし0≦x<4、0≦y<0.2)で表される蛍光体が挙げられる。
【0035】
その他、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体も挙げられる。Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体は、Mn4+を付活剤とし、アルカリ金属、アミンまたはアルカリ土類金属のフッ化物錯体塩を母体結晶とする蛍光体である。母体結晶を形成するフッ化物錯体には、配位中心が3価金属(B、Al、Ga、In、Y、Sc、ランタノイド)のもの、4価金属(Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Re、Hf)のもの、5価金属(V、P、Nb、Ta)のものがあり、その周りに配位するフッ素原子の数は5~7である。
【0036】
具体的には、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体は、アルカリ金属のヘキサフルオロ錯体塩を母体結晶とするA2+xMyMnzFn(AはNaおよび/またはK;MはSiおよびAl;-1≦x≦1かつ0.9≦y+z≦1.1かつ0.001≦z≦0.4かつ5≦n≦7)などが挙げられる。この中でも、AがK(カリウム)またはNa(ナトリウム)から選ばれる1種以上で、MがSi(ケイ素)またはTi(チタン)またはGe(ゲルマニウム)であるもの、例えば、K2SiF6:Mn(これをKSF蛍光体と呼ぶ)、この構成元素の一部(好ましくは10モル%以下)をAlとNaで置換したK2Si1-xNaxAlxF6:Mn(これをKSNAF蛍光体と呼ぶ)などが挙げられる。
【0037】
その他、下記一般式(8)で表される蛍光体、および下記一般式(9)で表される蛍光体も挙げられる。
(La1-x-yEuxLny)2O2S (8)
(一般式(8)において、x及びyはそれぞれ0.02≦x≦0.50及び0≦y≦0.50を満たす数を表し、LnはY、Gd、Lu、Sc、Sm及びErの少なくとも1種の3価希土類元素を表す。)
なお、一般式(8)で表される酸硫化ランタン蛍光体をLOS蛍光体と呼ぶ。
(k-x)MgO・xAF2・GeO2:yMn4+ (9)
(一般式(9)において、k、x、yは、各々、2.8≦k≦5、0.1≦x≦0.7、0.005≦y≦0.015を満たす数を表し、Aはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、またはこれらの混合物である。)
なお、一般式(9)で表されるジャーマネート蛍光体をMGOF蛍光体と呼ぶ。
【0038】
また、その他、SrSi7Al3O2N13:Eu2+蛍光体や、CaS:Eu2+蛍光体を含んでもよい。
【0039】
赤色蛍光体は、1種類の赤色蛍光体のみを用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本実施形態の半導体発光装置では、上記緑色蛍光体及び赤色蛍光体に加え、その他の蛍光体を含んでもよい。その他の蛍光体としては、青色蛍光体、黄色蛍光体、橙色蛍光体、などが挙げられる。
【0041】
本実施形態の半導体発光装置が出射する光のスペクトルは、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし得る。Duvが-0.050を下回ると、植物が赤色に見えたり、黒ずんで見えたりする場合がある。一方で、-0.030を上回ると、光合成に寄与しない波長域の光強度が高くなり、植物を効率良く育成することが困難となる場合がある。
【0042】
本実施形態の半導体発光装置は上記要件(i)及び/又は(ii)を充足し得る。
上記要件(i)は、青色領域と緑色領域との間に、発光スペクトルのボトムピーク(発光極小値:IBG)が存在し、ボトムピークの発光強度が、赤色領域のピーク強度(発光極大値:IR)に対して、10%以上30%以下であることを意味する。12.5%以上であってよく、15%以上であってよい。また、27.5%以下であってよく、25%以下であってよい。(i)を満たすことで、緑色領域にある程度のスペクトル強度を有するため、植物が赤色に見えること及び黒ずんで見えることがなく、植物の生育を確認することができる。
【0043】
上記要件(ii)は、上記青色領域と緑色領域との間のボトムピーク波長から、555nmの波長までのスペクトルの変化がなだらかであることを意味する。すなわち、縦軸(Y)を、スペクトルの発光ピーク強度を100%とした相対発光強度(%)とし、横軸(X)を波長(nm)としたグラフにおいて、前記IBGと、波長555nmにおける発光強度I555と、を結ぶ直線の傾きaが0<a≦0.004を満たす。傾きaの上限値は、0.0038以下であってよく、0.0036以下であってよく、0.0034以下であってよく、0.0032以下であってよく、0.003以下であってよい。
このように緑色領域、特に視感度が最大となる555nmまでの領域のスペクトルに急な変化がないことで、Duvの値が特定の範囲となりやすく、また植物が赤色に見えること及び黒ずんで見えること、を防止することができる。
【0044】
本実施形態の半導体発光装置は、更に、以下の(iii)を満たすことが好ましい。
(iii)波長400nm以上500nm以下の領域に発光極大値IBを有し、0.8≦IB/IR≦1.3を満たす
上記要件(iii)は、半導体発光装置から出射する光のスペクトルにおいて、青色領域の発光ピーク強度(発光極大値IB)と赤色領域の発光ピーク強度(発光極大値:IR)が略同一であることを示す。このようなスペクトルであると、光合成を行う葉緑体の光受容体クロロフィルaとクロロフィルbとの光の吸収バランスがよく、光合成を効率よく行うことができる。
なお、上記IB/IRは0.8以上1.2以下であることが好ましく、また1.0以下、即ち発光極大値IRがスペクトル全域における発光最大値となることが好ましい。
【0045】
本実施形態の半導体発光装置は、更に、以下の(iv)を満たすことが好ましい。
(iv)波長650nm以上の領域に発光極大値IRを有する
上記要件(iv)は、半導体発光装置から出射するスペクトルが、650nm以上の長波長領域に発光極大値IRを有することを意味する。光合成に寄与する光の波長は400nm~700nmと考えられているが、700nmを超える長波長領域の光についても、光合成に寄与することを本発明者らは確認した。そのため、700nm以上の領域においても発光強度を有するスペクトルとするため、650nm以上の長波長領域に発光極大値IRを有することが好ましい。
【0046】
本実施形態の半導体発光装置は、更に、以下の(v)を満たすことが好ましい。
(v)発光極小値IBGの波長λIBGnmから波長555nmの範囲において、波長555nmにおける発光強度I555が発光強度の最大値である
上記要件(v)は、半導体発光装置から出射するスペクトルが、発光極小値IBGの波長λIBGnmから波長555nmの範囲において、長波長になるに従って強度が低下することなく、当該領域中にトップピークを有さないことを意味する。上記領域にトップピークがある場合、励起光のエネルギーの多くが緑色蛍光体に吸収発光されてしまうことで、青色光及び赤色光のエネルギー、強度が相対的に低くなってしまい、光合成に必要な光のエネルギーが相対的に減少して、光合成の効率が向上しない傾向にある。
【0047】
上記Duvの条件、並びに(i)乃至(v)の条件を充足するスペクトルを出射する半導体発光装置とするためには、広帯域の緑色蛍光体と広帯域の赤色蛍光体とを含むことが好ましく、広帯域の緑色蛍光体としてLuAGを用いることがより好ましい。広帯域の緑色蛍光体を用いることで、500nm~600nmの中波長領域である程度の発光強度を有するスペクトルを形成しやすく、また中波長領域に広くある程度の発光強度を有することで、色の見えの再現性への寄与が大きい。
また、広帯域の赤色蛍光体として窒化物蛍光体であるSCASN蛍光体またはCASN蛍光体を用いると、600nm以上の長波長領域(赤色領域)に大きな発光強度を有するスペクトルを形成しやすく、また光合成に必要な赤色領域のエネルギー量が、赤色半導体発光素子を赤色領域の発光源として用いた場合と比較して大きくなり、植物の育成により好ましい。
【0048】
上記説明した半導体発光装置の構成は特段限定されず、通常、基板上に半導体発光素子を実装し、各種蛍光体を混合した封止樹脂(以下に説明する、波長変換層の一形態である)で半導体発光素子を封止した構成を有する。なお、封止樹脂は、以下に説明する波長変換層の一形態である。
基板は、典型的にはセラミック基板やアルミ基板が用いられ、アルミ基板とガラスエポキシ基板とを積層した積層基板であってもよく、特段限定されない。
基板の形状も特段限定されず、典型的には正方形や長方形などの矩形であり、このような基板上に矩形、円形、楕円形などの発光領域(波長変換領域、または封止領域)を有する。
【0049】
半導体発光装置の形態は、砲弾型のLEDであってよく、SMD(表面実装デバイス)であってよく、COB(チップオンボード)であってよい。
植物工場やグリーンハウスに植物照射用として設置する際に、多くの光を照射するためにSMDを複数個並べて配置する場合には、駆動回路が煩雑になる傾向にある。そのため、単一回路で複数の半導体発光装置を駆動可能であり、また同様の出力とする場合により軽量となるCOB構成とすることが好ましい。
【0050】
一方で、SMD構成はその配光特性から、植物との距離が近い環境においては植物照射用としてより好ましい。半導体発光装置と植物との距離が近い場合には、高出力であるCOB構成とすると、発光領域の中心に近い部分の光強度が強くなり、植物に対して照射光が不均一になる場合がある。そのため、半導体発光装置と植物との距離が、凡そ10cm~60cm程度の場合には、半導体発光装置を発光面の小さいSMD構成として照明することが好ましい。
他方、上記のとおり、COB構成は高出力であることから、半導体発光装置と植物との距離が60cm~2m程度の場合には、半導体発光装置をCOB構成として照明することが好ましい。
【0051】
また、広範囲の植物に対して光を照射するために、長手方向に長尺である矩形の基板に、半導体発光素子を並べて配置した長尺COB構成とすることも好ましい。一例としては、長手方向に半導体発光素子を5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、規則的に、又はアトランダムに配置してよく、所望の照明範囲により適宜設定することができる。
更には、SMD構成であっても、COB構成であっても、半導体発光素子の実装面上に銀などの反射膜を備えることが、半導体発光装置の光放射光率を向上させるため、好ましい。
【0052】
本実施形態の半導体発光装置は、植物照射用の半導体発光装置として好ましく用いられ、外光をシャットアウトした閉鎖型植物工場で使用してもよく、太陽光と半導体発光装置を併用するグリーンハウスで使用してもよい。
本実施形態の半導体発光装置は、光合成植物全般の発育に有効であり、例えば野菜、果物、葉物、芝生、育苗を含む。また、温暖化などの環境変化に対応するための新種苗の育成(穀物の育苗)への適用も可能である。
【0053】
また、本発明の別の形態は、少なくとも、青色半導体発光素子と、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含む波長変換層と、を備えた植物育成用半導体発光装置から出射する光のスペクトルを設計する方法であって、
前記半導体発光装置から出射する光が、-0.050≦Duv≦-0.030を満たし、且つそのスペクトルが上記(i)及び(ii)を満たすように、好ましくは上記(iii)乃至(v)のうち少なくとも1つを更に満たすように、前記波長変換層を調製するステップ、を含む、設計方法である。
【0054】
波長変換層の調製は、例えば蛍光体を分散するマトリクスと蛍光体とを混合することで行うことができる。マトリクスは樹脂マトリクスであってよく、ガラスマトリクスであってよく、セラミックマトリクスであってよい。この際に、上記(i)及び(ii)を満たすように、好ましくは上記(iii)乃至(v)のうち少なくとも1つを更に満たすように、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含む蛍光体を選択し、波長変換層中の蛍光体の種類及び含有量を適宜調整する。一例としては、波長変換層中の蛍光体全量に対し、緑色蛍光体を75重量%以上90重量%以下とし、赤色蛍光体を10重量%以上25重量%以下とすることがあげられるが、当業者であれば、用いる蛍光体の特徴、特性に基づいて、波長変換層中の蛍光体の種類及び含有量を適宜調整できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明者らが行った実験結果を示す。
<半導体発光装置1~6及び7~8の製造>
青色発光ダイオード(ピーク波長457nm)、緑色蛍光体(LuAG、ピーク波長515~520nm、半値幅110nm)、赤色蛍光体(半導体発光装置1、4、5はSCASN、ピーク波長620~640nm、半値幅84nm、半導体発光装置2、3、6はCASN、ピーク波長650~655nm、半値幅90~95nm)を用いて、半導体発光装置1乃至半導体発光装置6を製造した。
【0056】
半導体発光装置7として、青色発光ダイオード(ピーク波長451nm)と赤色蛍光体(SCASN、ピーク波長629nm、半値幅84nm)とを用いて、半導体発光装置7を製造した。
半導体発光装置8として、Ra80でCCT4000Kの半導体発光装置8を準備した。
半導体発光装置1、2、7及び8の出射光のスペクトルを
図1に示し、出射光のスペクトルに関する特性パラメータを表1に示す。また、表2に、各半導体発光装置の出射光の演色性評価数を示す。
【0057】
【0058】
【0059】
<色の見え評価>
半導体発光装置1及び7を用いて、発育途中のミニトマト(赤色の果実及び緑色の果実を含む)を照射した際の、色の見えを評価した。
半導体発光装置1は、ミニトマトの赤色の果実及び緑色の果実をクリアに認識することができた。一方で、緑色領域のスペクトルが無い半導体発光装置7では、緑色の果実は赤く、更に赤い果実は黒ずんで見えた。
【0060】
また、表2の演色性評価数から、植物の葉や茎、若い果実など主に緑色の箇所の見えに影響する演色性評価数R3、R4、R11、R14;トマト、パプリカ等の果実など主に赤色の箇所の見えに影響する演色性評価数R9;花房になど主に黄色の箇所の見えに影響する演色性評価数R10、に関し、半導体発光装置1~6及び8は、半導体発光装置7に対して高い演色性評価数であった。
これらより、半導体発光装置1~6及び8は、半導体発光装置7に比べて、植物の成長度合いの把握に必要な色の忠実度がより高いスペクトルの光を出射するといえる。なお、半導体発光装置1から出射する光で照射した発育途中のミニトマトと、半導体発光装置7から出射する光で照射した発育途中のミニトマトの写真を
図2に示す。
【0061】
<発育評価I>
培養液を供給してリーフレタスを栽培する太陽光併用型植物工場において、高圧ナトリウムランプ(HPS)、半導体発光装置1及び7を用いてリーフレタスを照射し、その発育の評価を行った。栽培環境は、室温22℃、湿度50~70%、培養液のpH5.5~6.0、培養液の電導率 EC1.5~2.0mS/cm、PPFD(光合成有効光量子束密度) 230μmol/sec・m
2、ライトタイミング ON/OFF12時間で、35日間栽培した。結果を
図3に示す。
図3より、葉の重量、葉の大きさともに、半導体発光装置1及び7から出射する光を照射したリーフレタスは、従来から屋内植物栽培に広く使用されているHPS光源から出射する光を照射したリーフレタスと比較して高い発育を示した。
上記色の見え評価において、色再現性に大きな違いがあった半導体発光装置1と7との間に、植物の発育では大きな違いはないことが理解できる。
【0062】
<発育評価II>
半導体発光装置2及び8を用いて、上記発育評価Iの方法と同様に、リーフレタスを照射し、その発育の評価を行った。その結果、半導体発光装置2から出射する光を照射したリーフレタスは、半導体発光装置8から出射する光を照射したリーフレタスと比較して、葉の重量で約27%、葉の大きさで約33%高い発育を示した。
上記色の見え評価において、色再現性に大きな違いがなかった半導体発光装置2と8との間に、植物の発育では大きな違いがあることが理解できる。
これは、半導体発光装置8は、緑色領域の出力が大きすぎることで赤色蛍光体の変換効率が減少し赤色領域の光出力が小さくなっているため光合成ロスが発生し、乾燥重量、葉体面積が共に減少したと考えられる。
また、通常700nmより長波長領域の光は光合成光量子束密度の算出には考慮されないが、700nmよりも長波長領域に、より光出力を多く有する半導体発光装置2においても、半導体発光装置7と同等の発育結果を得た。