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  • 特許-装飾性のセラミックスの物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】装飾性のセラミックスの物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/56 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
C04B35/56 070
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021527914
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019080898
(87)【国際公開番号】W WO2020114725
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】18211003.1
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルトヴィル,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ファレ,ヤン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-082048(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087092(WO,A1)
【文献】特開昭54-084812(JP,A)
【文献】特開平05-051255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス材料によって作られた装飾性の物であって、
前記セラミックス材料は、炭化物相と、酸化物相からなり
前記炭化物相は、体積比で70~85%の割合の炭化モリブデンを
前記酸化物相は、体積比で15~30%の割合の酸化アルミニウムを
ことを特徴とする装飾性の物。
【請求項2】
セラミックス材料によって作られた装飾性の物であって、
前記セラミックス材料は、炭化物相と、酸化物相からなり
前記炭化物相は、体積比60~80%の割合の炭化モリブデンを
前記酸化物相は、体積比20~40%の割合の酸化アルミニウムを
ことを特徴とする装飾性の物
【請求項3】
セラミックス材料によって作られた装飾性の物であって、
前記セラミックス材料は、炭化物相と、酸化物相からなり
前記炭化物相は、体積比で50~60%の割合の炭化モリブデンを
前記酸化物相は、体積比で40~50%の割合の酸化アルミニウムを含む
ことを特徴とする装飾性の物
【請求項4】
セラミックス材料によって作られた装飾性の物であって、
前記セラミックス材料は、炭化物相と、酸化物相からなり
前記炭化物相は、体積比50~75%の割合の炭化モリブデンを
前記酸化物相は、体積比25~50%の割合の酸化アルミニウムを
ことを特徴とする装飾性の物
【請求項5】
前記炭化物相は、添加物として炭化ニオブ又は炭化タングステンを含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾性の物。
【請求項6】
前記酸化物相は、添加物として酸化クロムを含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾性の物。
【請求項7】
1800よりも大きい硬度HV 30 を有し、
3.5MPa・m1/2 以上の靭性Kicを有する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の装飾性の物。
【請求項8】
CIELAB色空間において、成分L60~85である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の装飾性の物。
【請求項9】
CIELAB色空間において、成分a-1~5であり、成分b-2~5である
ことを特徴とする請求項に記載の装飾性の物。
【請求項10】
CIELAB色空間において、成分aと成分bは、0である
ことを特徴とする請求項に記載の装飾性の物。
【請求項11】
ケースミドル部、ケース裏部、ベゼル、押しボタン、ブレスレットリンク、表盤、針、及び表盤インデックスからなる群から選択される計時器の外側コンポーネントである
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の装飾性の物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性の物に関し、より詳細には、セラミックス複合材料によって作られた計時器用外側コンポーネントに関する。本発明は、さらに、このような装飾性の物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外装部品の多くには複合セラミックス材料が使われている。複合セラミックス材料は、硬度が非常に高く、このことによって、傷がつかないという性質が確実になる。文献においては、大きな割合のアルミナのような酸化物を含み、これに炭化物が添加された複合材料について、主に報告されている。このような複合材料は、例えば、重量比で70%のAl23と、補強材として用いられる30%のTiCとを含む複合材料であることができる。このような複合材料には、ステンレス鋼やサーメットのような他の材料に比べて金属光沢がほとんどないという特徴があり、この特徴は、このような光沢が必要な装飾品には不利になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況で、本発明は、このような金属的な光沢があるように構成している組成を有するセラミックス材料を提案することによって、前記課題を克服することを目的とする。
【0004】
このために、本発明は、大きな割合の炭化物相と、及び少ない割合の酸化物相とを含むセラミックスによって作られた装飾性の物を提供する。具体的には、本発明は、体積比で、50~95%、好ましくは51%~85%、の割合の炭化物相と、及び5~50%、好ましくは15%~49%、の割合の酸化物相とを含むセラミックス材料によって作られた装飾性の物を提供する。
【0005】
好ましくは、炭化物相は、TiC、Mo2C及びNbCから選択される一又は複数の種類の炭化物を含み、酸化物相は、Al23、ZrO2、Cr23及びY23から選択される一又は複数の種類の酸化物を含む。
【0006】
より好ましくは、炭化物相は、大きな割合で、TiC又はMo2Cを含み、酸化物相は、大きな割合のAl23を含み、好ましくは大きな割合のα相のもの、又はα相とγ相の混合物、又はZrO2を含む。この後者のZrO2は、好ましくは、例えばY23を用いて安定化された、安定化ジルコニアである。一実施形態によると、酸化物相は、大きな割合のAl23を含み、さらに、少ない割合の酸化クロムを含む。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によると、装飾性の物は、大きな割合の炭化チタンを含む炭化物相を含み、前記炭化物相は、大きな割合の炭化チタンを含み、体積比で、55~90%、好ましくは60~85%、の割合で存在し、前記酸化物相は、体積比で、10~45%、好ましくは15~40%、の割合で存在する。この実施形態の代替的形態によると、前記炭化物相は、少ない割合の炭化ニオブを含むことができる。
【0008】
本発明に係る装飾性の物の別の実施形態によると、この装飾性の物は、大きな割合の炭化モリブデンを含む炭化物相を含み、大きな割合の炭化モリブデンを含む前記炭化物相は、体積比で、50~75%、好ましくは51~75%、の割合で存在し、前記酸化物相は、体積比で、25~50%、好ましくは25~49%、の割合で存在する。
【0009】
本発明に係る装飾性の物の別の実施形態によると、前記炭化物相は、炭化チタンによって構成しており、前記酸化物相は、酸化アルミニウムによって構成しており、前記炭化物相は、体積比で、65~85、好ましくは70~80%、の割合で存在し、前記酸化物相は、体積比で、15~35%、好ましくは20~30%、の割合で存在する。
【0010】
本発明に係る装飾性の物の別の実施形態によると、前記炭化物相は、炭化チタンによって構成しており、前記酸化物相は、大きな割合の酸化アルミニウムを含み、さらに、少ない割合の酸化クロムを含み、前記炭化物相は、体積比で、55~75%、好ましくは60~70%、の割合で存在し、前記酸化物相は、体積比で、25~45%、好ましくは30~40%、の割合で存在する。
【0011】
このようにして開発された複合材料は、研磨後に、金属性のバインダーとしてニッケル又はコバルトを用いるステンレス鋼又はサーメットにおいて観察されるものと同様な金属的な光沢を有する。このような複合材料には、Niのようなアレルゲンとなる元素を含まず、耐腐食性があり、また、磁性がないというような他の利点もある。このような複合材料には、さらに、外側要素の作成のための高い硬度及び十分な靱性(タフネス)を有する。また、このような複合材料は、「網に近い」部品を得るために、プレス成形又は射出成形のような伝統的な粉末冶金的な方法によって成形することができる。
【0012】
例として与えられる好ましい実施形態についての下記の説明を図面を参照しながら読むことによって、他の特徴や利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るセラミックス材料を用いて作られたケースミドル部を備える計時器について示している。
図2】本発明に係るセラミックス材料についての電子顕微鏡画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、セラミックス複合材料によって作られた装飾性の物に関する。この装飾性の物は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、宝飾品、ブレスレットなどのコンポーネントであることができ、より一般的には、移動体電話のような携行可能な要素の外側部分であることができる。携行型時計の製造の分野においては、この装飾性の物は、ケースミドル部、ケース裏部、ベゼル、押しボタン、ブレスレットのリンク、表盤、針、表盤インデックスのような外側部品であることができる。図1には、本発明に係る、セラミックス材料によって作られたケースミドル部1を示している。
【0015】
セラミックス材料は、マトリックスを構成している炭化物タイプの相と、マトリックス内にて分布している酸化物タイプの相を含む。炭化物相は、セラミックス材料において、体積比で、50~95%存在しており、相補的な酸化物相は、体積比で、5~50%存在している。好ましくは、炭化物相は、セラミックス材料において、体積比で、51~85%存在しており、相補的な酸化物相は、体積比で、15~49%存在している。炭化物相は、一又は複数の種類の炭化物を含む。例として、この炭化物は、TiC、Mo2C、NbC、WCなどから選択される一又は複数の種類の炭化物であることができる。好ましくは、炭化物相は、TiC、Mo2C及びNbCから選択される一又は複数の種類の炭化物を含む。より好ましくは、炭化物相は、大きな割合で、TiC又はMo2Cを含む。酸化物相は、例えば、Al23、ZrO2、Cr23、Y23など、から選択される一又は複数の種類の酸化物を含むことができる。好ましくは、酸化物相は、Al23、ZrO2及びCr23から選択される一又は複数の種類の酸化物を含む。より好ましくは、酸化物相は、大きな割合で、Al23又はZrO2を含む。
【0016】
セラミックスの物は、炭化物と酸化物の混合粉末を焼結して作られる。したがって、本発明は、セラミックス繊維のような荷重の方向に方向性があるように補強されるセラミックスマトリックスを含む複合材料には関連しない。この製造方法は、以下のステップを備える。
a)可能性としては湿度の高い環境で、様々なセラミックス粉末を混合する。出発粉末は、好ましくは、d50が45μm未満である。前記混合は、随意的に、ミル又はボールミル内にて行うことができ、これによって、粉砕後に粉末の粒子のd50が数μmのオーダー(<5μm)の大きさまで小さくなる。この混合物は、体積比で50~95%の炭化物粉末と、5~50%の酸化物粉末を含み、各粉末はそれぞれ、上述のように一又は複数の種類の炭化物と一又は複数の種類の酸化物を含む。好ましくは、炭化物粉末は、大きな割合の炭化チタン(TiC)又は炭化モリブデン(Mo2C)を含む。炭化物粉末は、不純物を除いて、完全にTiC又はMo2Cによって構成していることができる。代わりに、炭化物粉末は、TiC又はMo2Cと、NbCやWCのような他の炭化物を含むことができる。この後者の他の炭化物は、コバルトバインダーを用いたWCボールを用いるミル内にて粉末を混合する場合に、炭化物粉末中に小さい割合で存在する。追加の炭化物を添加する目的は、焼結温度のようなこの方法のパラメーターを変えること、及び/又は得られる性質を変えることである。好ましくは、酸化物粉末は、大きな割合で、酸化アルミニウム(Al23)又は酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む。酸化物粉末は、不純物を除いて、完全にAl23又はZrO2によって構成していることができる。代わりに、酸化物粉末は、Al23やZrO2、そして、Cr23のような他の酸化物を含むことができる。この後者の他の酸化物は、少ない割合で酸化物粉末中に存在し、これには得られる性質を変える目的がある。例として、粉体の混合物は、体積比で、以下の組成のうちの1つを合計100%に対して含むことができる。
- 65~85%のTiC、及び15~35%のAl23
- 60~80%のTiC、2~10%のNbC、及び15~35%のAl23
- 55~75%のTiC、2~10%のCr23、及び20~40%のAl23
- 70~90%のTiC、及び10~30%のZrO2
- 60~80%のMo2C、20~40%のAl23
- 50~60%、好ましくは51~60%、のMo2C、及び40~50%、好ましくは40~59%、のAl23
- 65~85%のTiC、1~5%のCr23、及び10~30%のAl23
b)随意的に、上記混合物と有機バインダー系(パラフィン、ポリエチレンなど)によって構成している第2の混合物を作ることができる。
c)射出成形やプレス成形などによって混合物を所望の形状にすることでブランクを形成する。
d)1300~2100℃の温度の不活性雰囲気下で、15分~20時間の時間、ブランクを焼結する。混合物がバインダー系を含む場合、このステップの前に、200~800℃の温度範囲で有機バインダーを脱脂するステップを実行することができる。
【0017】
このようにして得たブランクを冷却して研磨する。焼結の前及び/又は研磨の前に、このブランクを加工して所望の物を得ることができる。
【0018】
この製造方法によって得られる物は、出発粉末の体積比に近い体積比で、炭化物を含む相と酸化物を含む相を含む。実際に、先験的に、焼結中に新たな相を形成せずに炭化物相と酸化物相が共存することがわかっている。しかし、汚染などに起因して、ベース粉末と焼結後の材料の間の組成と割合においてわずかなばらつきが発生する可能性を排除することができない。
【0019】
この物は、物質がどのように光を反射するかを表す明度成分L*が、60~85、好ましくは65~80、であるようなCIELAB色空間(CIE n°15、lSO 7724/1、DIN 5033 Teil 7、ASTM E-1164の規格に準拠)を有する。酸化物の選択に応じて、所望であれば、成分a*(赤色成分)とb*(黄色成分)を調整することができる。好ましいことに、これらの成分a*とb*はそれぞれ、-1~5及び-2~5である。好ましくは、成分a*は-0.5~2であり、成分b*は-0.5~3である。白色の金属的な外観を有するセラミックス材料が好ましいことがある。この場合、成分a*と成分b*は、0である。
【0020】
セラミックス材料は、構成成分のタイプと割合に応じて、硬度HV30が1200~1950である。セラミックス材料は、2~8.5MPa・m1/2の靭性Kicを有する。この靭性は、以下の式にしたがって、硬さの刻み目の対角線の4つの端におけるクラックの長さの測定に基づいて判断される。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、Pは荷重(N)、aは半対角(m)、lは測定されるクラックの長さ(m)である。
【0023】
特に、不純物を除いて、TiCによって構成している炭化物相と、Al23によって構成している酸化物相を含むセラミックス材料は、靱性と硬度の間で非常に良好に両立している。したがって、Al23の相補的な相とともに、この炭化物相が、体積比で、65~85%、好ましくは70~80%、含まれているときに、値HV30は、1800以上、さらには1900以上、であり、値Kicは、3.5MPa・m1/2以上である。
【0024】
同様に、不純物を除いて、TiCによって構成している炭化物相と、Al23とCr23によって構成している酸化物相を含むセラミックス材料は、靱性と硬度の間で非常に良好に両立している。したがって、Al23とCr23の相補的な相とともに、この炭化物相が、体積比で、55~75%、好ましくは60~70%、含まれているときに、値HV30は、1800以上であり、値Kicは、4.5以上、さらには5MPa・m1/2以上である。
【0025】
下記の例は、本発明に係る方法及びこれによって得られる材料について示している。
【0026】

7種類の粉末混合物を溶媒の存在下でミル内にて用意した。これらの混合物をバインダーを使わずに作った。これらの混合物を粉末の組成に応じた温度にてアルゴンを60mbarにて流しながらプレス成形して焼結した。焼結後、サンプルを被覆して平面研磨した。
【0027】
上記のように、サンプルの面に対して硬度測定HV30を行い、硬度測定に基づいて靱性を判断した。
【0028】
以下の条件の下で、分光光度計KONICA MINOLTA CM-5を用いて、Lab測色値を測定した。すなわち、SCI(鏡面反射を含む)とSCE(鏡面反射を含まない)の測定、傾き8°、直径8mmの測定エリアMAVである。
【0029】
例1(重量比で、80%のTiC、及び20%のAl 2 3
粉末混合物は、重量比で、80%のTiC、及び20%のAl23(α相で)を含み、すなわち、体積比で、それぞれ76%及び24%である。ブランクを2000°Cで20分焼結した。サンプルの平均硬度は1932HV30、靭性は4MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、66.3、0.44、及び0.73である。
【0030】
例2(重量比で、70%のTiC、10%のNbC、及び20%のAl 2 3
粉末混合物は、重量比で、70%のTiC、10%のNbC、及び20%のAl23(α相で)を含み、すなわち、体積比で、それぞれ69%、6%、及び25%である。ブランクを1800℃で30分焼結した。サンプルの平均硬度は1255HV30、靭性は3.8MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、63.3、0.00、及び0.09である。NbCを添加することで、焼結温度を200℃下げることができるが、硬度を低下させる影響がある。
【0031】
例3(重量比で、70%のTiC、25%のAl 2 3 、5%のCr 2 3
粉末混合物は、重量比で、70%のTiC、25%のAl23(α相で)を含み、すなわち、体積比で、それぞれ66%、29.5%、及び4.5%である。ブランクを1750°Cで90分焼結した。サンプルの平均硬度は1830HV30、靭性は5.2MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、64.5、0.34、及び0.92である。5%のCr23を添加することで、高い硬度を得て、靱性を向上させることが可能になる。図2に、このサンプルの電子顕微鏡画像を示している。灰色の相は、TiCマトリックスを表しており、白色の相は、酸化物相を表している。
【0032】
例4(重量比で、80%のTiC、及び20%のZrO 2
粉末混合物は、重量比で、80%のTiCと20%のZrO2(3mol%のY23を含む安定化ジルコニア)を含み、すなわち、それぞれ体積比で、82%と18%を含む。ブランクを1750°Cで90分焼結した。サンプルの平均硬度は1617HV30、靭性は2.5MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、66.5、-0.39、及び-1.14である。酸化アルミニウムをジルコニアに置き換えることで、成分a*とb*を減らすことができるが、靭性を低下させる影響も発生する。
【0033】
例5(重量比で、85%のMo 2 C、及び15%のAl 2 3
粉末混合物は、重量比で、85%のMo2C、及び15%のAl23(α相で)を含み、すなわち、体積比で、それぞれ72%及び28%である。ブランクを1450°Cで90分焼結した。サンプルの平均硬度は1319HV30、靭性は5.3MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、72.5、0.21、及び2である。炭化チタンをモリブデンに置き換えることで、明度インデックスL*の値を増加させつつ、焼結温度を大きく減らすことができる。
【0034】
例6(重量比で、70%のMo 2 C、及び30%のAl 2 3
粉末混合物は、重量比で、70%のMo2C、及び30%のAl23(α相で)を含み、すなわち、体積比で、それぞれ51%及び49%である。ブランクを1450°Cで90分焼結した。サンプルの平均硬度は1417HV30、靭性は5.0MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、63.8、0.13、及び1.49である。酸化アルミニウムの割合を増やすと、硬度を高くすることができるが、明度インデックスL*の低下をもたらす。
【0035】
例7(重量比で、80%のTiC、18%のAl 2 3 、及び2%のCr 2 3
粉末混合物は、重量比で、80%のTiC、18%のAl23(α相で)、及び2%のCr23を含み、すなわち体積比で、76.5%、21.5%及び2%である。ブランクを1650°Cで90分焼結した。サンプルの平均硬度は1219HV30、靭性は7.8MPa・m1/2である。Lab成分はそれぞれ、65、0.06、及び0.4である。少量の酸化クロムを添加することで、靱性を向上させることができる。
【0036】
要約すると、サンプル1とサンプル3は、硬度と靭性の値がそれぞれ1800HV30と3.5MPa・m1/2よりも高く、非常に良好な靭性と硬度の両立を実現しており、サンプル7は、7MPa・m1/2よりも大きい値で、非常に良好な靭性を実現していることを確認した。
図1
図2