(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】トレース支援装置およびトレース支援方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20220922BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/02 Z
(21)【出願番号】P 2021545016
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2019035605
(87)【国際公開番号】W WO2021048933
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 健二
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-310582(JP,A)
【文献】特開2009-289152(JP,A)
【文献】特開2005-327909(JP,A)
【文献】特開2006-165127(JP,A)
【文献】特開2016-18830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機を備える基板生産ラインに対するオペレータの複数の操作履歴を記録した操作ログ、および、前記オペレータの操作に起因して作動する前記基板生産ラインの複数の動作履歴を記録した動作ログを関連付けて記憶装置に記憶させる記憶部と、
前記対基板作業において所定のトリガー事象が発生したときに、前記トリガー事象に関連する少なくとも一つの前記操作履歴である対象操作履歴、前記対象操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である対象動作履歴、前記対象操作履歴と同一または類似の少なくとも一つの前記操作履歴である比較操作履歴、および、前記比較操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である比較動作履歴を、前記記憶装置に記憶されている前記操作ログおよび前記動作ログから取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記対象動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作、および、前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作を対比可能に出力する出力部と、
を備えるトレース支援装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記オペレータに複数の前記対象操作履歴を提示して、前記オペレータによって選択された少なくとも一つの前記対象操作履歴を取得する請求項1に記載のトレース支援装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記トリガー事象が発生した時刻の直前に前記オペレータが前記基板生産ラインに対して行った操作が記録されている前記操作履歴を前記対象操作履歴として取得する請求項1に記載のトレース支援装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記トリガー事象が発生した時刻の直前に前記オペレータが前記基板生産ラインに対して行った操作が記録されている前記操作履歴から順に遡って複数の前記対象操作履歴を取得する請求項1に記載のトレース支援装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記オペレータに複数の前記比較操作履歴を提示して、前記オペレータによって選択された少なくとも一つの前記比較操作履歴を取得する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記対象操作履歴に記録されている前記オペレータの操作の順序、間隔および種類について、一致度が高い前記操作履歴ほど前記比較操作履歴として取得する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項7】
前記比較操作履歴は、前記対象操作履歴に記録されている前記オペレータの操作を全て含む前記操作履歴である請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項8】
前記対象動作履歴および前記比較動作履歴には、前記対基板作業機に着脱可能に設けられる機器の装着状態、取り外し状態または動作状態を検出する検出器の検出信号が記録されており、
前記出力部は、前記対象動作履歴および前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作として、前記検出信号の経時変化を対比可能に表示する請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項9】
前記トリガー事象は、前記対基板作業機による前記対基板作業の実行中に検出された作業エラーであり、
前記対象動作履歴および前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作の差異に基づいて、前記作業エラーの要因解析を行う解析部をさらに備える請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項10】
前記作業エラーが検出されたときの前記動作履歴および前記作業エラーの要因を関連付けて収集する収集部をさらに備え、
前記解析部は、今回、前記要因解析を行う前記対象動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作と、前記収集部によって収集された過去の前記動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作とが同一または類似するときに、前記収集部によって収集された当該動作履歴に関連付けられている前記作業エラーの要因を出力する請求項9に記載のトレース支援装置。
【請求項11】
前記基板生産ラインは、
前記対基板作業機による基板製品の生産に必要な物品を保管する保管装置と、
前記保管装置に保管されている前記物品を前記対基板作業機に供給し、前記対基板作業機で不要になった前記物品を前記保管装置に回収する物品移動装置と、
をさらに備え、
前記動作ログには、前記対基板作業機、前記保管装置および前記物品移動装置の前記動作履歴が記録されている請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のトレース支援装置。
【請求項12】
前記対基板作業機は、
前記基板製品の生産に必要な前記物品を交換可能に保持する第一スロットと、
前記物品を予備的に保持可能、または、回収する前記物品を一時的に保持可能な第二スロットと、
を備え、
前記物品移動装置は、前記第一スロットと前記第二スロットとの間で前記物品の交換作業を行い、
前記動作ログには、前記物品移動装置による前記物品の前記交換作業の前記動作履歴が記録されている請求項11に記載のトレース支援装置。
【請求項13】
基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機を備える基板生産ラインに対するオペレータの複数の操作履歴を記録した操作ログ、および、前記オペレータの操作に起因して作動する前記基板生産ラインの複数の動作履歴を記録した動作ログを関連付けて記憶装置に記憶させる記憶工程と、
前記対基板作業において所定のトリガー事象が発生したときに、前記トリガー事象に関連する少なくとも一つの前記操作履歴である対象操作履歴、前記対象操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である対象動作履歴、前記対象操作履歴と同一または類似の少なくとも一つの前記操作履歴である比較操作履歴、および、前記比較操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である比較動作履歴を、前記記憶装置に記憶されている前記操作ログおよび前記動作ログから取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記対象動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作、および、前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作を対比可能に出力する出力工程と、
を備えるトレース支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、トレース支援装置およびトレース支援方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の部品実装情報の収集方法は、部品実装情報収集ステップと、記憶ステップとを備えている。部品実装情報収集ステップは、部品実装装置による部品の実装工程において生じる部品実装情報(ロギング情報)を収集する。記憶ステップは、収集された部品実装情報(ロギング情報)をメモリに記憶する。これにより、特許文献1に記載の部品実装情報の収集方法は、部品の実装工程において生じた問題を容易に解析しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロギング情報には、基板の番号、部品の実装位置、部品の部品名、部品の実装条件、部品実装時の所定の実測値、取得画像などの種々の情報が含まれる。また、部品の実装条件には、部品の実装時に使用されるボンディングヘッドのヘッド位置の設定値、ヘッド圧力の設定値、ヘッド温度の設定値などの種々の条件が含まれる。このように、ロギング情報の種類は多く、メモリが記憶しているロギング情報の情報量は増加し易い。そのため、例えば、作業エラーなどのトリガー事象が発生したときに、取集した種々のロギング情報から、トリガー事象に関連するロギング情報を取得して比較することは、困難である。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、基板生産ラインの複数の動作履歴が記録されている動作ログから、トリガー事象に関連する基板生産ラインの動作と、比較すべき基板生産ラインの動作とを対比可能に出力するトレース支援装置およびトレース支援方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、記憶部と、取得部と、出力部とを備えるトレース支援装置を開示する。前記記憶部は、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機を備える基板生産ラインに対するオペレータの複数の操作履歴を記録した操作ログ、および、前記オペレータの操作に起因して作動する前記基板生産ラインの複数の動作履歴を記録した動作ログを関連付けて記憶装置に記憶させる。前記取得部は、前記対基板作業において所定のトリガー事象が発生したときに、対象操作履歴、対象動作履歴、比較操作履歴および比較動作履歴を、前記記憶装置に記憶されている前記操作ログおよび前記動作ログから取得する。前記対象操作履歴は、前記トリガー事象に関連する少なくとも一つの前記操作履歴である。前記対象動作履歴は、前記対象操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である。前記比較操作履歴は、前記対象操作履歴と同一または類似の少なくとも一つの前記操作履歴である。前記比較動作履歴は、前記比較操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である。前記出力部は、前記取得部によって取得された前記対象動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作、および、前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作を対比可能に出力する。
【0007】
また、本明細書は、記憶工程と、取得工程と、出力工程とを備えるトレース支援方法を開示する。前記記憶工程は、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機を備える基板生産ラインに対するオペレータの複数の操作履歴を記録した操作ログ、および、前記オペレータの操作に起因して作動する前記基板生産ラインの複数の動作履歴を記録した動作ログを関連付けて記憶装置に記憶させる。前記取得工程は、前記対基板作業において所定のトリガー事象が発生したときに、対象操作履歴、対象動作履歴、比較操作履歴および比較動作履歴を、前記記憶装置に記憶されている前記操作ログおよび前記動作ログから取得する。前記対象操作履歴は、前記トリガー事象に関連する少なくとも一つの前記操作履歴である。前記対象動作履歴は、前記対象操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である。前記比較操作履歴は、前記対象操作履歴と同一または類似の少なくとも一つの前記操作履歴である。前記比較動作履歴は、前記比較操作履歴に関連付けられている少なくとも一つの前記動作履歴である。前記出力工程は、前記取得工程によって取得された前記対象動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作、および、前記比較動作履歴に記録されている前記基板生産ラインの動作を対比可能に出力する。
【発明の効果】
【0008】
トレース支援装置は、記憶部、取得部および出力部を備える。よって、トレース支援装置は、トリガー事象に関連する対象操作履歴に関連付けられている対象動作履歴に記録されている基板生産ラインの動作と、対象操作履歴と同一または類似の比較操作履歴に関連付けられている比較動作履歴に記録されている基板生産ラインの動作とを対比可能に出力することができる。トレース支援装置について上述したことは、トレース支援方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】基板生産ラインの構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1の交換システムおよび部品装着機の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】物品移動装置と部品装着機の部品供給装置との間におけるフィーダの交換作業の一例を示す平面図である。
【
図5】トレース支援装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図6】トレース支援装置による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】操作ログおよび動作ログの一例を示す模式図である。
【
図7B】対象操作履歴の取得方法の一例を示す模式図である。
【
図7D】比較操作履歴の取得方法の一例を示す模式図である。
【
図8A】機器(装着ヘッド)の動作状態を検出する検出器の検出信号の経時変化の一例を示す模式図である。
【
図8B】機器(フィーダ)の装着状態または取り外し状態を検出する検出器の検出信号の経時変化の一例を示す模式図である。
【
図8C】ライン制御コンピュータと部品装着機との間の通信状態の経時変化の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.基板生産ライン1の構成例
図1に示すように、基板生産ライン1は、少なくとも一つ(同図では、4つ)の部品装着機10と、交換システム30と、物品移動装置40と、保管装置5と、ライン制御コンピュータ6とを備えている。4つの部品装着機10は、
図2に示す基板90の搬送方向に沿って設置されている。部品装着機10は、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WMに含まれる。部品装着機10による対基板作業には、基板90の搬入作業および搬出作業、部品の採取作業および装着作業などが含まれる。部品装着機10には、例えば、カセット式のフィーダ20が着脱可能に設けられる。
【0011】
基板生産ライン1の基板搬入側(
図1の紙面左側)には、例えば、フィーダ20の保管に用いられる保管装置5が設置されている。また、基板生産ライン1には、交換システム30および物品移動装置40が設けられており、フィーダ20の補給作業、交換作業および回収作業を行う。なお、基板生産ライン1は、例えば、生産する基板製品の種別などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、基板生産ライン1には、例えば、はんだ印刷機、検査機、リフロー炉などの対基板作業機WMが適宜設置され得る。
【0012】
基板生産ライン1を構成する各装置は、ネットワークを介してライン制御コンピュータ6と種々のデータを入出力可能に構成されている。例えば、保管装置5は、複数のスロットを備えている。保管装置5は、複数のスロットに装備されたフィーダ20をストックする。保管装置5のスロットに装備されたフィーダ20は、ライン制御コンピュータ6との間で通信可能な状態になる。これにより、保管装置5のスロットと当該スロットに装備されたフィーダ20の識別符号が関連付けられて、ライン制御コンピュータ6に記録される。
【0013】
また、ライン制御コンピュータ6は、基板生産ライン1の動作状況を監視し、部品装着機10などの対基板作業機WM、交換システム30、物品移動装置40および保管装置5を統括制御する。ライン制御コンピュータ6には、対基板作業機WM、交換システム30、物品移動装置40および保管装置5を制御するための各種データが記憶されている。ライン制御コンピュータ6は、例えば、部品装着機10による部品の装着処理の実行に際して、制御プログラムなどの各種データを送出する。
【0014】
1-2.部品装着機10の構成例
図2に示すように、4つの部品装着機10の各々は、基板搬送装置11と、部品供給装置12と、ヘッド駆動装置13とを備えている。以下の説明において、部品装着機10の水平幅方向であり基板90の搬送方向をX方向とし、部品装着機10の水平奥行き方向をY方向とし、X方向およびY方向に垂直な鉛直方向(
図2の紙面上下方向)をZ方向とする。
【0015】
基板搬送装置11は、例えば、ベルトコンベアおよび位置決め装置などによって構成されている。基板搬送装置11は、基板90を搬送方向へ順次搬送するとともに、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置12は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、複数のフィーダ20を装備可能な第一スロット121および第二スロット122を備えている。本実施形態では、第一スロット121は、部品装着機10の前部側の上部に配置され、装備されたフィーダ20を動作可能に保持する。第一スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による装着処理において動作を制御され、当該フィーダ20の上部の規定位置に設けられた取り出し部において部品を供給する。
【0017】
本実施形態では、第二スロット122は、第一スロット121の下方に配置され、装備されたフィーダ20をストックする。つまり、第二スロット122は、生産に用いられるフィーダ20を予備的に保持し、または、生産に用いられた使用済みのフィーダ20を一時的に保持する。なお、第一スロット121と第二スロット122との間におけるフィーダ20の交換作業は、物品移動装置40によって行われる。
【0018】
また、フィーダ20は、部品供給装置12の第一スロット121または第二スロット122に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力が供給される。そして、フィーダ20は、部品装着機10との間で通信可能な状態となる。第一スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による制御指令などに基づいて、部品を収容するキャリアテープの送り動作が制御される。これにより、フィーダ20は、フィーダ20の上部に設けられた取り出し部において、装着ヘッド132の保持部材によって部品を採取可能に供給する。
【0019】
ヘッド駆動装置13は、直動機構によって移動台131を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台131には、クランプ部材によって装着ヘッド132が交換可能(着脱可能)に固定されている。装着ヘッド132は、ヘッド駆動装置13の直動機構によって移動台131と一体的にXY方向に移動される。装着ヘッド132は、部品供給装置12によって供給された部品を保持部材によって採取する。保持部材は、例えば、供給される負圧エアによって部品を吸着する吸着ノズル、部品を把持するチャックなどを用いることができる。
【0020】
装着ヘッド132は、保持部材をZ方向に移動可能に、且つ、Z軸に平行なQ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド132は、採取した部品の姿勢に応じて保持部材の位置および角度を調整する。そして、装着ヘッド132は、制御プログラムによって指令される基板90の装着位置に部品を装着する。上記の部品のピックアンドプレースサイクルの所定サイクル数分の所要時間と、基板90の搬入および搬出に要する所要時間との合計時間は、基板90一枚当たりのサイクルタイムである。
【0021】
なお、装着ヘッド132に設けられる保持部材は、基板90に部品を装着する装着処理において部品の種別に応じて適宜変更され得る。部品装着機10は、例えば、実行する装着処理にて用いる吸着ノズルが装着ヘッド132に取り付けられていない場合に、ノズルステーションに収容されている吸着ノズルを、装着ヘッド132に取り付ける。ノズルステーションは、部品装着機10の機内の所定位置に着脱可能に装備される。
【0022】
1-3.フィーダ20の構成例
図3に示すように、フィーダ20は、フィーダ本体21と、駆動装置22とを備えている。本実施形態のフィーダ本体21は、扁平な箱形状に形成されている。フィーダ本体21は、多数の部品を収容するキャリアテープが巻回されたリールを着脱可能(交換可能)に保持する。駆動装置22は、キャリアテープに設けられた送り穴に係合するスプロケットを備えている。駆動装置22は、スプロケットを回転させてキャリアテープを送り移動させる。
【0023】
フィーダ20は、制御装置(図示略)によって駆動装置22の動作が制御される。フィーダ20は、部品装着機10の第一スロット121に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力の供給を受ける。これにより、フィーダ20の制御装置は、部品装着機10との間で通信可能な状態になる。第一スロット121について上述したことは、第二スロット122についても同様に言える。これにより、部品装着機10は、第一スロット121および第二スロット122におけるフィーダ20の補給および回収を検出することができる。
【0024】
1-4.交換システム30および物品移動装置40の構成例
図1および
図2に示すように、交換システム30は、第一レール31と、第二レール32とを備えている。第一レール31および第二レール32は、物品移動装置40の走行路を形成する。第一レール31は、4つの部品装着機10の配置方向に沿って設けられ、上下方向(Z方向)において、第一スロット121と、第二スロット122との間に設けられている。第二レール32は、4つの部品装着機10の配置方向に沿って設けられ、上下方向(Z方向)において、第二スロット122の下方に設けられている。第一レール31および第二レール32は、基板生産ライン1において、基板90の搬送方向の概ね全域に亘って延伸している。
【0025】
物品移動装置40は、第一レール31および第二レール32によって形成される走行路に沿って走行可能に設けられている。物品移動装置40は、例えば、第一レール31に設けられる送電部と対向して設けられる受電部を介して、非接触給電によって送電部から電力の供給を受ける。受電部が受け取った電力は、受電回路を介して物品移動装置40の走行、所定作業などに用いられる。なお、物品移動装置40は、例えば、位置検出装置によって走行路上の位置(現在位置)を検出する。位置検出装置には、例えば、光学的な検出方式、電磁誘導を用いた検出方式などを適用できる。
【0026】
上記の「所定作業」には、部品装着機10などの対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0を、対基板作業機WMとの間で交換する交換作業が含まれる。本実施形態では、物品移動装置40は、基板90に装着される部品を供給するフィーダ20を機器DD0として、対基板作業機WMである部品装着機10との間、および、保管装置5との間でフィーダ20の交換作業を行う。
【0027】
本実施形態では、物品移動装置40は、保管装置5から部品装着機10の第一スロット121または第二スロット122にフィーダ20を搬送して、フィーダ20の補給作業を行う。また、物品移動装置40は、部品装着機10の第一スロット121と第二スロット122との間で、フィーダ20の交換作業を行う。さらに、物品移動装置40は、不要になったフィーダ20を部品装着機10から保管装置5に搬送して、フィーダ20の回収作業を行う。
【0028】
図4に示すように、物品移動装置40は、少なくとも一つ(同図では、2つ)の保持部41と、制御装置42とを備えている。本実施形態では、2つの保持部41の各々は、複数(同図では、2つ)のフィーダ20を同時にクランプ可能であり、複数(2つ)のフィーダ20を同時に保持することができる。また、2つの保持部41の各々は、例えば、直動機構などによって、フィーダ20の着脱方向(本実施形態ではY方向)に沿って独立して移動可能であり、複数(2つ)のフィーダ20を同時にY方向に沿って移動させることができる。
【0029】
さらに、2つの保持部41は、例えば、直動機構などによって、上下方向(Z方向)に一体的に移動可能であり、複数(4つ)のフィーダ20を同時にZ方向に移動させることもできる。なお、物品移動装置40は、例えば、複数(4つ)の保持部41を備えることもできる。この場合、複数(4つ)の保持部41の各々が一つのフィーダ20をクランプして、複数(4つ)のフィーダ20を独立にY方向およびZ方向に移動させることができる。また、保持部41の形態は、クランプ機構、直動機構に限定されるものではなく、種々の形態をとり得る。例えば、保持部41は、フィーダ20に設けられる穴部と嵌合可能な突出部を備えることもできる。この場合、保持部41の突出部がフィーダ20の穴部と嵌合することにより、フィーダ20が保持される。
【0030】
制御装置42は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている(いずれも図示略)。制御装置42は、4つの部品装着機10、交換システム30、保管装置5およびライン制御コンピュータ6と通信可能に接続されている。制御装置42は、物品移動装置40の走行、2つの保持部41の動作などを制御する。上記の構成により、物品移動装置40は、第一レール31および第二レール32に沿って所定位置まで移動するとともに、停止位置においてフィーダ20の交換作業を行うことができる。
【0031】
1-5.トレース支援装置50の構成例
基板生産ライン1は、対基板作業機WM、物品移動装置40および保管装置5の各々において、基板製品の生産に関する種々の動作履歴を取得している。取得した基板生産ライン1の動作履歴は、
図5に示す記憶装置6DSにおいて記憶される。そして、例えば、作業エラーなどのトリガー事象が発生すると、基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアは、トリガー事象に関連する基板生産ライン1の動作履歴を記憶装置6DSから取得して、取得した動作履歴に基づいて、トリガー事象の要因解析を行う。
【0032】
しかしながら、基板生産ライン1の動作履歴の種類は多く、記憶装置6DSが記憶している動作履歴の情報量は増加し易い。そのため、トリガー事象が発生したときに、記憶している種々の動作履歴からトリガー事象に関連する動作履歴を取得して比較することは困難である。そこで、本実施形態の基板生産ライン1には、トレース支援装置50が設けられている。トレース支援装置50は、基板生産ライン1の複数の動作履歴が記録されている動作ログML0から、トリガー事象に関連する基板生産ライン1の動作と、比較すべき基板生産ライン1の動作とを対比可能に出力する。
【0033】
図5に示すように、トレース支援装置50は、制御ブロックとして捉えると、記憶部51と、取得部52と、出力部53とを備えている。トレース支援装置50は、解析部54をさらに備えることができ、解析部54および収集部55の両方を備えることもできる。本実施形態のトレース支援装置50は、記憶部51と、取得部52と、出力部53と、解析部54と、収集部55とを備えている。
【0034】
トレース支援装置50は、種々の制御装置、演算装置に設けることができる。本実施形態のトレース支援装置50は、ライン制御コンピュータ6に設けられており、ライン制御コンピュータ6には、記憶装置6DSが設けられている。トレース支援装置50は、例えば、複数の基板生産ライン1を管理する管理装置(図示略)に設けることもできる。また、トレース支援装置50は、クラウド上に形成することもできる。
【0035】
トレース支援装置50は、
図6に示すフローチャートに従って、制御を実行する。記憶部51は、ステップS11に示す処理を行う。取得部52は、ステップS12に示す処理を行う。出力部53は、ステップS13に示す処理を行う。解析部54は、ステップS14に示す処理を行う。収集部55は、ステップS15に示す処理を行う。
【0036】
1-5-1.記憶部51
記憶部51は、基板生産ライン1に対するオペレータの複数の操作履歴を記録した操作ログHL0、および、オペレータの操作に起因して作動する基板生産ライン1の複数の動作履歴を記録した動作ログML0を関連付けて記憶装置6DSに記憶させる(
図6に示すステップS11)。
【0037】
操作ログHL0は、基板生産ライン1に対するオペレータの操作履歴を記録したものであれば良く、オペレータの操作は、限定されない。例えば、オペレータは、
図5に示す基板生産ライン1に設けられる表示装置6DPを用いて、基板生産ライン1に種々の指示を行うことができる。例えば、オペレータは、基板製品の生産の開始および停止を基板生産ライン1に指示することができる。
【0038】
また、オペレータは、対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0の装着作業または取り外し作業の開始または終了を基板生産ライン1に指示することもできる。対基板作業機WMが部品装着機10の場合、例えば、フィーダ20、複数の部品を収容するリールまたは部品トレイ、装着ヘッド132、保持部材(吸着ノズル、チャックなど)、ノズルステーションなどは、機器DD0に含まれる。対基板作業機WMが、はんだ印刷機の場合、例えば、マスク、スキージ、ディスペンスヘッドなどは、機器DD0に含まれる。対基板作業機WMが検査機の場合、例えば、検査ヘッドなどは、機器DD0に含まれる。
【0039】
さらに、オペレータは、基板生産ライン1を駆動させる制御プログラムの変更などの基板生産ライン1の動作条件の変更を基板生産ライン1に指示することもできる。このように、オペレータの操作には、基板生産ライン1の構成を変更する指示、基板生産ライン1の動作条件を変更する指示などが含まれる。オペレータによって行われた操作(操作内容)は、操作された日時と共に操作履歴として操作ログHL0に記録される。
【0040】
動作ログML0は、オペレータの操作に起因して作動する基板生産ライン1の動作履歴を記録したものであれば良く、基板生産ライン1の動作は、限定されない。上述した例では、オペレータの基板製品の生産開始の指示に起因して、基板生産ライン1における基板製品の生産が開始される。また、オペレータの基板製品の生産停止の指示に起因して、基板生産ライン1における基板製品の生産が停止される。
【0041】
さらに、オペレータによる基板生産ライン1の構成を変更する指示に起因して、基板生産ライン1の構成が変更されて、構成が変更された基板生産ライン1が作動する。また、オペレータによる基板生産ライン1の動作条件を変更する指示に起因して、基板生産ライン1の動作条件が変更されて、動作条件が変更された基板生産ライン1が作動する。
【0042】
例えば、対基板作業機WMが部品装着機10の場合、対基板作業として部品の装着作業が行われるときに、各装置の動作履歴が実行された日時と共に動作ログML0に記録される。例えば、
図2に示す基板搬送装置11、部品供給装置12およびヘッド駆動装置13の各々の動作履歴が動作ログML0に記録される。なお、動作ログML0には、各装置の使用機器を特定する識別情報が併せて記録される。
【0043】
記憶装置6DSは、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置などを用いることができる。記憶装置6DSには、操作ログHL0および動作ログML0が関連付けられて記憶される。記憶部51は、例えば、事象が生じた日時に基づいて、操作ログHL0および動作ログML0を関連付けて記憶装置6DSに記憶させることができる。具体的には、記憶部51は、オペレータによる操作が行われた日時と、基板生産ライン1の動作が生じた日時に基づいて、操作ログHL0および動作ログML0を関連付けることができる。
【0044】
図7Aは、操作ログHL0および動作ログML0の一例を示している。例えば、日時T11において、オペレータによる所定の操作が行われて、操作履歴H11が記録される。日時T12において、オペレータによる当該操作に起因して基板生産ライン1が作動して、動作履歴M11が記録される。動作履歴M11は、例えば、部品装着機10の各装置の動作履歴の集合を示している。以下、同様にして、操作履歴H12~操作履歴H15が記録される。また、同様にして、動作履歴M12~動作履歴M15、動作履歴M21~動作履歴M24および動作履歴M31~動作履歴M33が記録される。
【0045】
なお、操作ログHL0および動作ログML0は、
図7Aに示すように一つのファイルで記憶しても良く、複数のファイルに分けて記憶しても良い。例えば、基板生産ライン1ごとに記憶装置6DSを設けて、基板生産ライン1ごとにファイルを用意しても良い。また、記憶装置6DSは、操作ログHL0を記録するファイルと、動作ログML0を記録するファイルを個別に用意しても良い。いずれの場合も、操作ログHL0および動作ログML0は、事象が生じた日時に基づいて関連付けられる。
【0046】
1-5-2.取得部52
取得部52は、対基板作業において所定のトリガー事象が発生したときに、対象操作履歴TH0、対象動作履歴TM0、比較操作履歴CH0および比較動作履歴CM0を、記憶装置6DSに記憶されている操作ログHL0および動作ログML0から取得する(
図6に示すステップS12)。対象操作履歴TH0および比較操作履歴CH0は、操作ログHL0から取得され、対象動作履歴TM0および比較動作履歴CM0は、動作ログML0から取得される。
【0047】
対象操作履歴TH0は、トリガー事象に関連する少なくとも一つの操作履歴である。トリガー事象は、対基板作業において発生する事象であれば良く、限定されない。例えば、対基板作業機WMによる対基板作業の実行中に検出された作業エラーは、トリガー事象に含まれる。例えば、対基板作業機WMが部品装着機10であり、作業エラーが部品の装着エラーの場合を想定する。
【0048】
この場合、部品の装着作業に用いられるフィーダ20、リール、部品トレイ、装着ヘッド132、保持部材、ノズルステーションなどの着脱に関する操作履歴は、対象操作履歴TH0に含まれる。また、部品装着機10を駆動させる制御プログラムの変更などの部品装着機10の動作条件を変更する指示に関する操作履歴は、対象操作履歴TH0に含まれる。上述したことは、既述した機器DD0の他の部材、はんだ印刷機などの他の対基板作業機WMについても同様に言える。つまり、既述した機器DD0の着脱に関する操作履歴は、対象操作履歴TH0に含まれる。対基板作業機WMの動作条件を変更する指示に関する操作履歴は、対象操作履歴TH0に含まれる。
【0049】
なお、トリガー事象は、作業エラーが検出される場合に限定されない。例えば、対基板作業機WMの動作状態が許容範囲に含まれなくなったことは、トリガー事象に含まれる。例えば、対基板作業機WMの動作状態を示す物理量(例えば、電圧、電流、電力、温度、圧力など)が許容範囲に含まれなくなった場合が想定される。この場合も、作業エラーが検出される場合と同様の操作履歴が対象操作履歴TH0に含まれる。
【0050】
取得部52は、オペレータに複数の対象操作履歴TH0を提示して、オペレータによって選択された少なくとも一つの対象操作履歴TH0を取得することができる。
図7Bは、対象操作履歴TH0の取得方法の一例を示している。同図は、基板生産ライン1に設けられる表示装置6DPに表示される情報の一例を示している。なお、説明の便宜上、同図では操作履歴が図示されているが、実際は、操作履歴に記録されているオペレータの操作内容が表示される。また、同図に示す日時および操作履歴(対象操作履歴TH0)は、
図7Aに示す日時および操作履歴に対応している。
【0051】
例えば、
図7Aに示す操作履歴H11~操作履歴H15のうち、操作履歴H11、操作履歴H12および操作履歴H13が対象操作履歴TH0の候補である場合を想定する。この場合、取得部52は、記憶装置6DSから
図7Bに示す7つの対象操作履歴TH0を取得する。そして、取得部52は、オペレータによる選択が可能なチェックボックスと、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作が行われた日時と、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作内容とを時系列に表示する。
【0052】
オペレータは、取得部52によって提示された複数(7つ)の対象操作履歴TH0から、少なくとも一つの対象操作履歴TH0を任意に選択することができる。
図7Bは、日時T31に操作された操作履歴H11と、日時T34に操作された操作履歴H12がオペレータによって選択され、取得部52が2つの操作履歴を対象操作履歴TH0として取得することを示している。
【0053】
また、トリガー事象が発生した時刻に近いオペレータの操作ほど、トリガー事象の発生に関与している可能性が高い。そこで、取得部52は、トリガー事象が発生した時刻の直前にオペレータが基板生産ライン1に対して行った操作が記録されている操作履歴を対象操作履歴TH0として取得することができる。この場合、オペレータによる選択は不要である。例えば、
図7Aに示す日時T36において、トリガー事象が発生したとする。この場合、取得部52は、日時T34に操作された操作履歴H12を対象操作履歴TH0として取得する。
【0054】
また、取得部52は、トリガー事象が発生した時刻の直前にオペレータが基板生産ライン1に対して行った操作が記録されている操作履歴から順に遡って複数の対象操作履歴TH0を取得することもできる。取得部52は、例えば、日時T34に操作された操作履歴H12と、日時T31に操作された操作履歴H11とを、対象操作履歴TH0として取得することができる。なお、取得部52が取得する対象操作履歴TH0の数は、限定されない。
【0055】
対象動作履歴TM0は、対象操作履歴TH0に関連付けられている少なくとも一つの動作履歴である。例えば、取得部52が、日時T31に操作された操作履歴H11と、日時T34に操作された操作履歴H12を対象操作履歴TH0として取得した場合を想定する。
図7Aに示すように、動作履歴M31は、日時T31のオペレータの操作に起因して、日時T32において基板生産ライン1が作動して記録された動作履歴である。
【0056】
また、動作履歴M32は、日時T31のオペレータの操作に起因して、日時T33において基板生産ライン1が作動して記録された動作履歴である。このように、動作履歴M31および動作履歴M32は、日時T31のオペレータの操作に起因して作動した動作履歴であり、日時T31に操作された操作履歴H11(対象操作履歴TH0)に関連付けられる。
【0057】
同様に、
図7Aに示す動作履歴M33は、日時T34に操作された操作履歴H12(対象操作履歴TH0)に関連付けられる。
図7Cは、対象動作履歴TM0の一例を示している。同図では、日時T32に作動した動作履歴M31と、日時T33に作動した動作履歴M32と、日時T35に作動した動作履歴M33とが、対象動作履歴TM0として図示されている。
【0058】
このように、一つの対象操作履歴TH0に複数の対象動作履歴TM0が関連付けられる場合があり、一つの対象操作履歴TH0に一つの対象動作履歴TM0が関連付けられる場合もある。また、オペレータによる複数の操作が行われた後に、当該複数の操作に起因して基板生産ライン1が作動する場合もある。よって、複数の対象操作履歴TH0に一つの対象動作履歴TM0が関連付けられる場合もあり、複数の対象操作履歴TH0に複数の対象動作履歴TM0が関連付けられる場合もある。なお、既述したように、対象操作履歴TH0および対象動作履歴TM0の関連付けは、記憶部51によって行われる。
【0059】
比較操作履歴CH0は、対象操作履歴TH0と同一または類似の少なくとも一つの操作履歴である。比較操作履歴CH0に記録されているオペレータの操作(例えば、操作の順序、間隔および種類)と、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作(例えば、操作の順序、間隔および種類)とが一致する場合、比較操作履歴CH0は、対象操作履歴TH0と同一の操作履歴である。対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作を全て含み、他の操作を含む比較操作履歴CH0は、対象操作履歴TH0と類似する操作履歴に含まれる。
【0060】
いずれの場合も、比較操作履歴CH0は、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作を全て含む操作履歴である。このように、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作を全て含む操作履歴は、関連付けられる動作履歴に記録されている基板生産ライン1の動作が一致または類似し易い。そこで、取得部52は、記憶装置6DSに記憶されている操作ログHL0から比較操作履歴CH0を取得する。
【0061】
取得部52は、オペレータに複数の比較操作履歴CH0を提示して、オペレータによって選択された少なくとも一つの比較操作履歴CH0を取得することができる。
図7Dは、比較操作履歴CH0の取得方法の一例を示している。同図は、基板生産ライン1に設けられる表示装置6DPに表示される情報の一例を示している。なお、説明の便宜上、同図では操作履歴が図示されているが、実際は、オペレータによる選択が可能なチェックボックスと、日時のみが表示される。また、同図に示す日時および操作履歴(比較操作履歴CH0)は、
図7Aに示す日時および操作履歴に対応している。
【0062】
例えば、取得部52が、
図7Aに示す日時T31に操作された操作履歴H11を対象操作履歴TH0として取得する場合を想定する。日時T31に操作された操作履歴H11(対象操作履歴TH0)は、記録されているオペレータの操作(操作の種類)が、日時T11に操作された操作履歴H11、および、日時T21に操作された操作履歴H11と同一であるとする。
【0063】
この場合、取得部52は、日時T11に操作された操作履歴H11と、日時T21に操作された操作履歴H11を比較操作履歴CH0の候補とすることができる。取得部52は、記憶装置6DSから
図7Dに示す2つの比較操作履歴CH0を取得する。そして、取得部52は、オペレータによる選択が可能なチェックボックスと、比較操作履歴CH0に記録されているオペレータの操作が行われた日時とを時系列に表示する。
【0064】
オペレータは、取得部52によって提示された複数(2つ)の比較操作履歴CH0から、少なくとも一つの比較操作履歴CH0を任意に選択することができる。
図7Dは、日時T21(日時T21に操作された操作履歴H11)がオペレータによって選択され、取得部52が一つの操作履歴H11を比較操作履歴CH0として取得することを示している。
【0065】
なお、取得部52が複数の対象操作履歴TH0を取得する場合、取得部52は、取得した複数の対象操作履歴TH0のうち、オペレータによって操作された日時が最も早い対象操作履歴TH0に対する比較操作履歴CH0をオペレータに提示することができる。例えば、取得部52が、
図7Aに示す日時T31に操作された操作履歴H11と、日時T34に操作された操作履歴H12を対象操作履歴TH0として取得する場合を想定する。日時T31に操作された操作履歴H11(対象操作履歴TH0)は、記録されているオペレータの操作(操作の種類)が、日時T11に操作された操作履歴H11、および、日時T21に操作された操作履歴H11と同一であるとする。また、日時T34に操作された操作履歴H12(対象操作履歴TH0)は、記録されているオペレータの操作(操作の種類)が、日時T13に操作された操作履歴H12、および、日時T24に操作された操作履歴H12と同一であるとする。
【0066】
この場合、取得部52は、複数(2つ)の対象操作履歴TH0のうち、オペレータによって操作された日時が最も早い日時T31に操作された操作履歴H11に対する比較操作履歴CH0の候補をオペレータに提示することができる。例えば、
図7Dに示すように、オペレータが日時T21(日時T21に操作された操作履歴H11)を選択した場合、取得部52は、日時T21に操作された操作履歴H11と、日時T24に操作された操作履歴H12を比較操作履歴CH0として取得する。仮に、オペレータが日時T11(日時T11に操作された操作履歴H11)を選択した場合、取得部52は、日時T11に操作された操作履歴H11と、日時T13に操作された操作履歴H12を比較操作履歴CH0として取得する。
【0067】
また、上述した取得部52が複数(2つ)の対象操作履歴TH0を取得する場合において、
図7Aに示す日時T34に操作された操作履歴が、操作履歴H12ではなく操作履歴H13である場合を仮定する。仮定した日時T34に操作された操作履歴H13(対象操作履歴TH0)は、記録されているオペレータの操作(操作の種類)が、日時T16に操作された操作履歴H13と同一であるとする。
【0068】
この場合、取得部52は、比較操作履歴CH0の候補として、日時T11(日時T11に操作された操作履歴H11)をオペレータに提示することができる。取得部52は、日時T11から日時T16までの操作履歴(日時T11に操作された操作履歴H11と、日時T13に操作された操作履歴H12と、日時T16に操作された操作履歴H13)を、比較操作履歴CH0として取得する。
【0069】
取得部52は、対象操作履歴TH0に記録されているオペレータの操作の順序、間隔および種類について、一致度が高い操作履歴ほど比較操作履歴CH0として取得することもできる。この場合、オペレータによる選択は不要である。例えば、所定の第一日時に操作(種類は第一種類)された操作履歴と、第一日時より遅い第二日時に操作(種類は第二種類)された操作履歴と、第二日時より遅い第三日時に操作(種類は第三種類)された操作履歴を対象操作履歴TH0として想定する。
【0070】
取得部52は、例えば、複数(3つ)の操作履歴に記録されているオペレータの操作の順序が、第一種類の操作、第二種類の操作、第三種類の操作の順序に近いほど、比較操作履歴CH0として取得する。また、取得部52は、複数(3つ)の操作履歴に記録されているオペレータの操作の間隔が、第一日時と第二日時との間隔、第二日時と第三日時との間隔に近いほど、比較操作履歴CH0として取得する。さらに、取得部52は、複数(3つ)の操作履歴に記録されているオペレータの操作の種類が、第一種類、第二種類および第三種類以外の操作を含まないほど、比較操作履歴CH0として取得する。
【0071】
また、取得部52は、上述したオペレータの操作の順序、間隔および種類の3つの要素について、一致する要素の数が多いほど、比較操作履歴CH0として取得することができる。さらに、取得部52は、上述したオペレータの操作の順序、間隔および種類の各要素に重み付けを行うこともできる。この場合、重み付けが大きい要素について一致度が高い操作履歴ほど比較操作履歴CH0として取得され易くなる。重み付けは、例えば、基板製品の種類によって変更することもでき、オペレータによって設定および変更することもできる。また、オペレータによって比較操作履歴CH0が選択される場合に、上記の一致度を表示して、オペレータが比較操作履歴CH0を選択する際に上記の一致度を考慮することもできる。
【0072】
比較動作履歴CM0は、比較操作履歴CH0に関連付けられている少なくとも一つの動作履歴である。例えば、取得部52が、
図7Aに示す日時T21に操作された操作履歴H11と、日時T24に操作された操作履歴H12を比較操作履歴CH0として取得した場合を想定する。動作履歴M21は、日時T21のオペレータの操作に起因して、日時T22において基板生産ライン1が作動して記録された動作履歴である。
【0073】
また、動作履歴M22は、日時T21のオペレータの操作に起因して、日時T23において基板生産ライン1が作動して記録された動作履歴である。このように、動作履歴M21および動作履歴M22は、日時T21のオペレータの操作に起因して作動した動作履歴であり、日時T21に操作された操作履歴H11(比較操作履歴CH0)に関連付けられる。
【0074】
同様に、動作履歴M23は、日時T24に操作された操作履歴H12(比較操作履歴CH0)に関連付けられる。
図7Eは、比較動作履歴CM0の一例を示している。同図では、日時T22に作動した動作履歴M21と、日時T23に作動した動作履歴M22と、日時T25に作動した動作履歴M23とが、比較動作履歴CM0として図示されている。
【0075】
このように、一つの比較操作履歴CH0に複数の比較動作履歴CM0が関連付けられる場合があり、一つの比較操作履歴CH0に一つの比較動作履歴CM0が関連付けられる場合もある。また、対象動作履歴TM0の場合と同様に、複数の比較操作履歴CH0に一つの比較動作履歴CM0が関連付けられる場合があり、複数の比較操作履歴CH0に複数の比較動作履歴CM0が関連付けられる場合もある。なお、既述したように、比較操作履歴CH0および比較動作履歴CM0の関連付けは、記憶部51によって行われる。
【0076】
1-5-3.出力部53
出力部53は、取得部52によって取得された対象動作履歴TM0に記録されている基板生産ライン1の動作、および、比較動作履歴CM0に記録されている基板生産ライン1の動作を対比可能に出力する(
図6に示すステップS13)。
【0077】
図7Cに示す例では、取得部52は、日時T32に作動した動作履歴M31と、日時T33に作動した動作履歴M32と、日時T35に作動した動作履歴M33を対象動作履歴TM0として取得する。
図7Aに示す動作履歴M31は、日時T32から日時T33までの基板生産ライン1の動作が記録されている。動作履歴M32は、日時T33から日時T35までの基板生産ライン1の動作が記録されている。動作履歴M33は、日時T35から日時T36までの基板生産ライン1の動作が記録されている。
【0078】
また、
図7Eに示す例では、取得部52は、日時T22に作動した動作履歴M21と、日時T23に作動した動作履歴M22と、日時T25に作動した動作履歴M23を比較動作履歴CM0として取得する。
図7Aに示す動作履歴M21は、日時T22から日時T23までの基板生産ライン1の動作が記録されている。動作履歴M22は、日時T23から日時T25までの基板生産ライン1の動作が記録されている。動作履歴M23は、日時T25から日時T27までの基板生産ライン1の動作が記録されている。
【0079】
出力部53は、動作履歴M31、動作履歴M32および動作履歴M33に記録されている基板生産ライン1の動作(対象動作)と、動作履歴M21、動作履歴M22および動作履歴M23に記録されている基板生産ライン1の動作(比較動作)とを対比可能に出力する。つまり、出力部53は、日時T32からトリガー事象が発生した日時T36までの基板生産ライン1の動作(対象動作)と、日時T22から日時T27までの基板生産ライン1の動作(比較動作)とを対比可能に出力する。これにより、例えば、基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアは、対象動作と、比較動作を対比することができ、例えば、トリガー事象の要因解析を行うことができる。
【0080】
出力部53は、基板生産ライン1の動作を対比可能に出力することができれば良く、出力方法は、限定されない。例えば、対象動作履歴TM0および比較動作履歴CM0には、対基板作業機WMに着脱可能に設けられる機器DD0の装着状態、取り外し状態または動作状態を検出する検出器SS0の検出信号が記録されている。この場合、出力部53は、対象動作履歴TM0および比較動作履歴CM0に記録されている基板生産ライン1の動作として、検出信号の経時変化を対比可能に表示することができる。
【0081】
図2に示す装着ヘッド132は、ヘッド駆動装置13の直動機構によって移動台131と一体的にXY方向に移動される。直動機構は、例えば、サーボモータなどの電動機を備えており、電動機には、エンコーダなどの位置検出器SS11が設けられている。これにより、部品装着機10を制御する制御装置は、移動台131および装着ヘッド132の位置を認識することができる。つまり、位置検出器SS11は、装着ヘッド132の動作状態を検出する検出器SS0に含まれる。
【0082】
図8Aは、機器DD0(装着ヘッド132)の動作状態を検出する検出器SS0(位置検出器SS11)の検出信号の経時変化の一例を示している。曲線L11は、比較動作履歴CM0に記録されている位置検出器SS11の検出信号の経時変化の一例を示している。曲線L11は、動作履歴M21、動作履歴M22および動作履歴M23に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、装着ヘッド132の動作履歴を、位置検出器SS11の検出信号の経時変化で示したものである。
【0083】
曲線L12は、対象動作履歴TM0に記録されている位置検出器SS11の検出信号の経時変化の一例を示している。曲線L12は、動作履歴M31、動作履歴M32および動作履歴M33に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、装着ヘッド132の動作履歴を、位置検出器SS11の検出信号の経時変化で示したものである。いずれも、横軸は、時刻を示し、縦軸は、装着ヘッド132のX方向位置を示している。
【0084】
曲線L12によって表される装着ヘッド132の動作(対象動作)は、曲線L11によって表される装着ヘッド132の動作(比較動作)と比べて、装着ヘッド132のX方向位置のゼロクロスのタイミングが異なっている。例えば、基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアは、
図8Aに示す表示に基づいて、対象動作と、比較動作を対比することができ、例えば、トリガー事象の要因解析を行うことができる。この場合、例えば、装着ヘッド132の動作がトリガー事象の一因になった可能性がある。
【0085】
図2に示すフィーダ20は、対基板作業機WMである部品装着機10に着脱可能に設けられ、機器DD0に含まれる。部品装着機10の第一スロット121または第二スロット122には、フィーダ20の装着状態または取り外し状態を検出する着脱検出器SS12を設けることができる。これにより、部品装着機10を制御する制御装置は、フィーダ20の制御装置との間の通信の可否以外の方法で、フィーダ20の装着状態または取り外し状態を認識することができる。つまり、着脱検出器SS12は、フィーダ20の装着状態または取り外し状態を検出する検出器SS0に含まれる。
【0086】
図8Bは、機器DD0(フィーダ20)の装着状態または取り外し状態を検出する検出器SS0(着脱検出器SS12)の検出信号の経時変化の一例を示している。折れ線L13は、比較動作履歴CM0に記録されている着脱検出器SS12の検出信号の経時変化の一例を示している。折れ線L13は、動作履歴M21、動作履歴M22および動作履歴M23に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、フィーダ20の着脱動作の動作履歴を、位置検出器SS12の検出信号の経時変化で示したものである。
【0087】
折れ線L14は、対象動作履歴TM0に記録されている着脱検出器SS12の検出信号の経時変化の一例を示している。折れ線L14は、動作履歴M31、動作履歴M32および動作履歴M33に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、フィーダ20の着脱動作の動作履歴を、位置検出器SS12の検出信号の経時変化で示したものである。いずれも、横軸は、時刻を示し、縦軸は、フィーダ20の装着状態(ON)または取り外し状態(OFF)を示している。
【0088】
折れ線L14によって表されるフィーダ20を着脱する動作(対象動作)は、折れ線L13によって表されるフィーダ20を着脱する動作(比較動作)と比べて、装着状態(ON)から取り外し状態(OFF)への遷移が早い箇所が存在する。つまり、対象動作は、比較動作と比べて、フィーダ20の取り外しが早い箇所がある。基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアは、
図8Bに示す表示に基づいて、対象動作と、比較動作を対比することができ、例えば、トリガー事象の要因解析を行うことができる。なお、機器DD0の動作状態を検出する検出器SS0には、近接センサ、リミットスイッチなどの検出器が含まれる。これらの検出器は、検出状態(ON)または非検出状態(OFF)が出力され、検出信号は、
図8Bに示す経時変化と同様に変化する。
【0089】
既述したように、
図1に示す基板生産ライン1を構成する各装置は、ネットワークを介してライン制御コンピュータ6との間で通信可能に構成されている。
図8Cは、ライン制御コンピュータ6と部品装着機10との間の通信状態の経時変化の一例を示している。同図の紙面左側の通信履歴は、比較動作履歴CM0に記録されているライン制御コンピュータ6と部品装着機10との間の通信(比較動作)である。紙面左側の通信履歴は、動作履歴M21、動作履歴M22および動作履歴M23に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、ライン制御コンピュータ6との間の通信履歴(動作履歴)を通信内容で示したものである。
【0090】
同図の紙面右側の通信履歴は、対象動作履歴TM0に記録されているライン制御コンピュータ6と部品装着機10との間の通信(対象動作)である。紙面右側の通信履歴は、動作履歴M31、動作履歴M32および動作履歴M33に記録されている部品装着機10の各装置の動作履歴の集合のうち、ライン制御コンピュータ6との間の通信履歴(動作履歴)を通信内容で示したものである。
【0091】
いずれの場合も、通信方向における「WM→6」は、対基板作業機WMである部品装着機10からライン制御コンピュータ6への送信を示し、「6→WM」は、部品装着機10のライン制御コンピュータ6からの受信を示している。通信内容は、例えば、通信コマンドによって模式的に図示されている。比較動作の通信内容は、コマンドCD11~コマンドCD18で示され、対象動作の通信内容は、コマンドCD21~コマンドCD28で示されている。この場合も、基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアは、
図8Cに示す表示に基づいて、対象動作と、比較動作を対比することができ、例えば、トリガー事象の要因解析を行うことができる。
【0092】
1-5-4.解析部54
トリガー事象が対基板作業機WMによる対基板作業の実行中に検出された作業エラーのときに、解析部54は、対象動作履歴TM0および比較動作履歴CM0に記録されている基板生産ライン1の動作の差異に基づいて、作業エラーの要因解析を行う(
図6に示すステップS14)。
【0093】
例えば、
図8Aに示す曲線L12によって表される装着ヘッド132の動作(対象動作)は、曲線L11によって表される装着ヘッド132の動作(比較動作)と比べて、装着ヘッド132のX方向位置のゼロクロスのタイミングが異なっている。この場合、解析部54は、対象動作と比較動作の差異(ゼロクロスのタイミングの相違)に基づいて、例えば、装着ヘッド132の動作を作業エラー(例えば、部品の保持エラー)の一因として挙げることができる。解析部54は、
図8Bおよび
図8Cに示す例についても同様にして、作業エラーの要因を挙げることができる。
【0094】
なお、作業エラーは、例えば、対基板作業が行われた対基板作業機WMにおいて検出される。対基板作業機WMは、種々の撮像装置を備えている。例えば、対基板作業機WMが部品装着機10の場合、部品装着機10は、保持部材に保持されている部品を撮像可能な撮像装置を備えている。部品装着機10は、撮像装置によって撮像された画像を画像処理して、保持部材による部品の保持状態を認識する。部品装着機10は、部品の保持状態が所定状態に含まれないときに作業エラー(部品の保持エラー)を検出する。なお、作業エラーの種類は、限定されない。
【0095】
1-5-5.収集部55
収集部55は、作業エラーが検出されたときの動作履歴および作業エラーの要因を関連付けて収集する(
図6に示すステップS15)。
【0096】
収集部55は、例えば、基板生産ライン1の製造者または使用者のエンジニアによって、作業エラーの要因解析が行われると、作業エラーが検出されたときの動作履歴および作業エラーの要因を関連付けて記憶装置6DSに記憶させる。また、収集部55は、解析部54によって、作業エラーの要因解析が行われると、作業エラーが検出されたときの動作履歴および作業エラーの要因を関連付けて記憶装置6DSに記憶させる。
【0097】
このように、作業エラーが検出されたときの動作履歴および作業エラーの要因が蓄積されていくと、動作履歴に記録されている基板生産ライン1の動作と、作業エラーの要因との間の相関関係を把握できる場合がある。相関関係は、例えば、統計的手法によって把握することができ、例えば、ニューラルネットワーク、ディープラーニングなどの人工知能的な手法によって把握することもできる。
【0098】
例えば、装着ヘッド132の移動時の加速度が所定値より大きくなると、保持部材によって保持されている部品の保持状態が安定しない場合がある。例えば、部品の保持エラーが検出された学習データにおいて、装着ヘッド132の移動時の加速度が所定値より大きい学習データが多く含まれている場合、装着ヘッド132の移動時の加速度の超過が、部品の保持エラーの一因になっている可能性がある。
【0099】
解析部54は、今回、要因解析を行う対象動作履歴TM0に記録されている基板生産ライン1の動作と、収集部55によって収集された過去の動作履歴に記録されている基板生産ライン1の動作とが同一または類似するときに、収集部55によって収集された当該動作履歴に関連付けられている作業エラーの要因を出力する。
【0100】
通常、基板生産ライン1の動作が完全に一致することは少ないので、解析部54は、基板生産ライン1の動作のうち、主要部分が近似するときに、基板生産ライン1の動作が類似していると判断することができる。
図8Aに示す例では、曲線L12に示す装着ヘッド132のX方向位置の変動パターン(X方向位置の増減が繰り返されている)、X方向位置のゼロクロスのタイミングなどは、主要部分に含まれる。曲線L12に示す装着ヘッド132の動作と同一または類似する動作が、収集部55によって収集された過去の動作履歴に記録されている場合、解析部54は、収集部55によって収集された当該動作履歴に関連付けられている作業エラーの要因を出力する。
【0101】
2.その他
本実施形態の基板生産ライン1は、対基板作業機WMと、保管装置5と、物品移動装置40とを備えている。保管装置5は、フィーダ20に限らず、対基板作業機WMによる基板製品の生産に必要な物品AR0を保管することができる。例えば、既述した機器DD0は、物品AR0に含まれる。同様に、物品移動装置40は、フィーダ20に限らず、保管装置5に保管されている物品AR0を対基板作業機WMに供給し、対基板作業機WMで不要になった物品AR0を保管装置5に回収することができる。
【0102】
操作ログHL0には、対基板作業機WMに対するオペレータの操作履歴だけではなく、保管装置5および物品移動装置40に対するオペレータの操作履歴を記録することができる。また、動作ログML0には、対基板作業機WMの動作履歴だけではなく、保管装置5および物品移動装置40の動作履歴を記録することができる。動作ログML0に、対基板作業機WM、保管装置5および物品移動装置40の動作履歴が記録されていると、対基板作業機WMのみの動作履歴が記録されている場合と比べて、動作履歴の種類は多くなり、記憶装置6DSが記憶している動作履歴の情報量は増加し易い。そのため、本実施形態のトレース支援装置50を適用すると有益である。
【0103】
また、本実施形態では、対基板作業機WMである部品装着機10は、第一スロット121および第二スロット122を備えている。他の対基板作業機WMにおいても第一スロット121および第二スロット122を備えることができ、保持する物品AR0もフィーダ20に限定されない。つまり、対基板作業機WMは、基板製品の生産に必要な物品AR0を交換可能に保持する第一スロット121と、物品AR0を予備的に保持可能、または、回収する物品AR0を一時的に保持可能な第二スロット122とを備えることができる。また、物品移動装置40は、第一スロット121と第二スロット122との間で物品AR0の交換作業を行うことができる。
【0104】
この場合、動作ログML0には、物品移動装置40による物品AR0の交換作業の動作履歴を記録することができる。動作ログML0に、物品移動装置40による物品AR0の交換作業の動作履歴が記録されていると、物品移動装置40の動作履歴として保管装置5と対基板作業機WMとの間の移動履歴のみが記録される場合と比べて、動作履歴の種類は多くなり、記憶装置6DSが記憶している動作履歴の情報量は増加し易い。そのため、本実施形態のトレース支援装置50を適用すると有益である。
【0105】
3.トレース支援方法
トレース支援装置50について既述したことは、トレース支援方法についても同様に言える。具体的には、トレース支援方法は、記憶工程と、取得工程と、出力工程とを備えている。記憶工程は、記憶部51が行う制御に相当する。取得工程は、取得部52が行う制御に相当する。出力工程は、出力部53が行う制御に相当する。また、トレース支援方法は、解析工程をさらに備えることができる。トレース支援方法は、解析工程および収集工程をさらに備えることもできる。解析工程は、解析部54が行う制御に相当する。収集工程は、収集部55が行う制御に相当する。
【0106】
なお、取得工程は、対象操作履歴TH0、対象動作履歴TM0、比較操作履歴CH0および比較動作履歴CM0を任意の順序で取得することができる。但し、対象動作履歴TM0は、対象操作履歴TH0と同時または対象操作履歴TH0を取得した後に取得され、比較動作履歴CM0は、比較操作履歴CH0と同時または比較操作履歴CH0を取得した後に取得される。
【0107】
4.実施形態の効果の一例
トレース支援装置50は、記憶部51、取得部52および出力部53を備える。よって、トレース支援装置50は、トリガー事象に関連する対象操作履歴TH0に関連付けられている対象動作履歴TM0に記録されている基板生産ライン1の動作と、対象操作履歴TH0と同一または類似の比較操作履歴CH0に関連付けられている比較動作履歴CM0に記録されている基板生産ライン1の動作とを対比可能に出力することができる。トレース支援装置50について上述したことは、トレース支援方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0108】
1:基板生産ライン、121:第一スロット、122:第二スロット、
5:保管装置、40:物品移動装置、50:トレース支援装置、
51:記憶部、52:取得部、53:出力部、54:解析部、
55:収集部、6DS:記憶装置、90:基板、AR0:物品、
HL0:操作ログ、ML0:動作ログ、TH0:対象操作履歴、
TM0:対象動作履歴、CH0:比較操作履歴、CM0:比較動作履歴、
DD0:機器、SS0:検出器、WM:対基板作業機。