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特許7145346マルチポートエネルギールータ及びその制御システム並びに制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】マルチポートエネルギールータ及びその制御システム並びに制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220922BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220922BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220922BHJP
【FI】
H02M7/12 W
H02M3/28 W
H02M7/48 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021570502
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2020100624
(87)【国際公開番号】W WO2021027441
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】201910748368.9
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517377536
【氏名又は名称】エヌアール エレクトリック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NR ELECTRIC CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 69 Suyuan Avenue, Jiangning, Nanjing, Jiangsu 211102, China
(73)【特許権者】
【識別番号】517377547
【氏名又は名称】エヌアール エンジニアリング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NR ENGINEERING CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 69 Suyuan Avenue, Jiangning, Nanjing, Jiangsu 211102, China
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジュンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユー
(72)【発明者】
【氏名】シェー,イェーユェン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ジェー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ハイイン
(72)【発明者】
【氏名】チー,チー
(72)【発明者】
【氏名】グー,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ドンミン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077114(JP,A)
【文献】特開2016-127645(JP,A)
【文献】特開2016-140126(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151889(WO,A1)
【文献】特開2018-074692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個のマルチポートモジュールを含み、Nが2以上の整数であるマルチポートエネルギールータであって、
各マルチポートモジュールは1つの第1の電力モジュール、1つの第2の電力モジュール、及び1つの電気絶縁リンクを少なくとも含み、第1の電力モジュールは少なくとも2つのポートを含み、そのうちの1つは交流ポートであり、第2の電力モジュールは1つの直流ポート及び1つの交流ポートを少なくとも含み、前記直流ポートは1つの直流正極及び1つの直流負極を含み、前記直流ポートは前記マルチポートモジュールの第1のポートとされ、電気絶縁リンクは少なくとも2つのポートを含み、電気絶縁リンクの全てのポートの間は電気絶縁機能を有し、第1の電力モジュールの交流ポートは電気絶縁リンクの第1のポートに接続され、第1の電力モジュールの他方のポートは前記マルチポートモジュールの第2のポートとされ、第2の電力モジュールの交流ポートは電気絶縁リンクの第2のポートに接続され、第1、第2の電力モジュールの他のポートはそれぞれマルチポートモジュールの第3のポート、第4のポートなどとされ、
全てのN個のマルチポートモジュールの第1のポートの正極は同じポイントに接続され、負極は別のポイントに接続され、前記2つのポイントはマルチポートエネルギールータの第1の共通ポートを構成し、前記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは順次直列又は並列に接続され、マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記N個のマルチポートモジュールの第3のポート、第4のポートなどはともにマルチポートエネルギールータの他のポートを構成
前記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/ACコンバータを少なくとも含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、前記第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、DC/ACコンバータのDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、ACポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成し、
前記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/DCコンバータを少なくとも含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、前記第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、DC/DCコンバータの一方のDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、他方のDCポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成し、
前記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路のみを含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、直流コンデンサの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、2つのアームの中点が再び引き出され、それぞれスムージングリアクトルに接続された後に並列に接続され、アームの両端のいずれかの端とともに、DC/DCコンバータの他方のDCポートを構成する、
ことを特徴とするマルチポートエネルギールータ。
【請求項2】
前記第2のポートとそれが位置するマルチポートモジュールの全ての他のポートとの間にいずれも電気絶縁リンクが接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項3】
前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の直流バスに接続され、前記マルチポートエネルギールータの他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項4】
前記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは2つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、2つのチェーンリンクを形成し、2つのチェーンリンクは真のバイポーラ接続を用い、マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の真のバイポーラ形態の直流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項5】
前記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはスター接続を用い、スター接続に基づくマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のスター接続を用いる三相交流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項6】
前記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはデルタ接続を用い、デルタ接続に基づくマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のデルタ接続を用いる三相交流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項7】
前記第1の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路により実現される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項8】
前記第1の電力モジュールは、ハーフブリッジ回路及びフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項9】
前記第1の電力モジュールは、2つのフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項10】
前記電気絶縁リンクは、少なくとも2つの巻線を含む絶縁変圧器を用い、q番目の巻線は前記絶縁変圧器のq番目のポートであり、q=1、2、…、Qであり、Qは巻線の数である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項11】
前記マルチポートモジュールは1つのバイパススイッチを更に含み、バイパススイッチは全てのマルチポートモジュールの第2のポートに並列に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項12】
前記マルチポートモジュールは1つのヒューズを更に含み、ヒューズは全てのマルチポートモジュールの第1のポートに直列に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータ。
【請求項13】
制御装置と、各マルチポートモジュールに対応する少なくとも1つのコントローラ及び少なくとも1つの通信インタフェースとを含み、制御装置は、マルチポートモジュールの通信インタフェースの総数以上の通信インタフェースを含み、マルチポートモジュールのコントローラと制御装置は両側の通信インタフェースを介してデータを交換し、コントローラは、対応するマルチポートモジュールのパラメータを収集し、制御装置に送信するために用いられ、制御装置は、コントローラによって収集したパラメータに基づいて制御命令を生成し、各コントローラに送信する、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチポートエネルギールータの制御システム。
【請求項14】
マルチポートエネルギールータは、
コントローラはマルチポートエネルギールータの第1、第2の共通ポートの電流及び電圧をリアルタイムで検出するステップa1と、
コントローラは通信インタフェースを介して検出データを制御装置に送信するステップa2と、
制御装置は検出データに対して計算し、各マルチポートモジュールの制御調節量を生成し、通信インタフェースを介して全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信するステップa3と、
マルチポートモジュールのコントローラは送信された制御調節量に基づき、対応するマルチポートモジュールの第1のポート及び第2のポートの電圧と電流を制御するステップa4と、により、第1の共通ポート及び第2の共通ポートの動作を制御する、ことを特徴とする請求項13に記載のマルチポートエネルギールータの制御システムに基づく制御方法。
【請求項15】
マルチポートエネルギールータは、以下のステップし、
制御装置はマルチポートエネルギールータの全ての他のポートの定格電圧及び電流基準をそれぞれ所定の値に整定し、各ポートの電力を各ポートの位置するマルチポートモジュールの定格電力以下にするステップb1と、
制御装置は整定パラメータを全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信するステップb2と、
各マルチポートモジュールのコントローラは対応するマルチポートモジュールの他のポートの電流と電圧をリアルタイムで検出するステップb3と、
各マルチポートモジュールのコントローラは検出された電流及び電圧データに対して計算し、制御装置の送信した整定パラメータに基づき、対応する制御調節量を生成するステップb4と、
マルチポートモジュールは生成された制御調節量により、他のポートの電圧と電流を制御するステップb5と、
マルチポートモジュールは通信インタフェースを介して他のポートの電圧及び電流データを制御装置にアップロードするステップb6と、により他のポートの動作を制御することを特徴とする請求項13に記載のマルチポートエネルギールータの制御システムに基づく制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーエレクトロニクス応用の分野に属し、交流/直流配電網、二方向コンバータ及びエネルギールータに関し、特に複数のポートを含むエネルギールータ及びその制御システム並びに制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギールータは、将来の交流/直流配電網で電力システムの電気エネルギー交換を実現するための機器として、電気エネルギー形態の異なる配電システムの最適化作動を実現する上で、重要な役割と意味を有する。エネルギールータのコアはパワーエレクトロニクス変圧器であり、パワーエレクトロニクス変圧器は、電力潮流分配、電圧改善、電力網監視及び障害分離などの機能を実現できる、パワーエレクトロニクス技術に基づいて設計されたスマート機器である。中高圧電気エネルギーの形態により、パワーエレクトロニクス変圧器はさらに、交流パワーエレクトロニクス変圧器と直流パワーエレクトロニクス変圧器に分類され、直流パワーエレクトロニクス変圧器は直流変圧器とも略称される。
【0003】
電力システムにおいて、スイッチングチューブデバイスの応力とコストの影響により、中/高圧から低圧への変換を実現するために、パワーエレクトロニクス変圧器は主に複数のモジュールの入力直列、出力並列の構造、即ちISOP構造により実現される。この場合、パワーエレクトロニクス変圧器は2ポートコンバータしかなく、低圧側電圧は低圧直流バスに接続される電圧形態の電気エネルギーインタフェースしか構成できない。
【0004】
エネルギールータを、一般的に用いられる三相380V交流、375V直流、220V直流二次電源、110V直流二次電源などの、より多くの電圧レベルと形態の電気エネルギーを出力できるようにするために、エネルギールータはISOP構造のパワーエレクトロニクス変圧器に加え、低圧直流バスに追加のDC/DC、DC/ACなどのコンバータ機器を更に設ける必要がある。これらの追加のDC/DC又はDC/AC機器には、一般的に独自の始動回路、遮断回路ブレーカー、ホール検出手段などの機器が含まれる。システムの複雑さとコストを削減するために、一般的に、設けられるDC/DC及びDC/AC機器の数が限られているので、エネルギールータの出力ポート数は制限され、給電形態は比較的に集中している。
【0005】
同時に、外部DC/DC又はDC/AC機器は、やはり対応する電圧レベルの直流又は交流バスを再び構築する。システムに光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、及びスイッチング電源に基づく他の低圧電気機器が含まれる場合、これらの機器には一般的に、システムにアクセスするための、対応するDC/DC又はDC/AC機器を更に追加する必要がある。この概念は、既存の分散型給電システムの応用上の意味を制限し、配電システムへのエネルギー貯蔵及び再生可能エネルギー機器などの機器のアクセスに不利である。
【0006】
一方、中国特許CN201710544441は、中/高圧バスを異なる電圧レベルと電気エネルギー形態の複数のポートに変換できるチェーンタイプのマルチポートグリッド接続インタフェース装置を提供したが、この方案では、異なるポート間の電力バランスの問題を解決できないという固有の欠陥があるので、各ポートの給電電力が不均一である場合、先端に接続される各モジュールの電圧が不均衡になり、一部のモジュールの電力が失われることもある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、マルチポートエネルギールータ及びその制御システム並びに制御方法を提供することである。一方で、ISOP構造のパワーエレクトロニクス変圧器をコアとし、一部のDC/DC及びDC/AC機器を外部に設ける従来のエネルギールータの場合に、構築されたエネルギールータシステムに設けられる給電ポートが比較的に集中しているという問題に対し、本発明は、分散特性を有するマルチポート給電方案を提供することができ、様々な異なる電圧レベルの電気エネルギー形態の応用を満たすことができる。他方で、従来の特許技術に存在する電圧バランスの問題を好適に解決することができ、本発明の実施方案の応用上の価値を向上させることができる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段は以下のとおりである。
【0009】
N個のマルチポートモジュールを含み、Nが2以上の整数であるマルチポートエネルギールータであって、
各マルチポートモジュールは1つの第1の電力モジュール、1つの第2の電力モジュール、及び1つの電気絶縁リンクを少なくとも含み、第1の電力モジュールは少なくとも2つのポートを含み、そのうちの1つは交流ポートであり、第2の電力モジュールは1つの直流ポート及び1つの交流ポートを少なくとも含み、前記直流ポートは1つの直流正極及び1つの直流負極を含み、前記直流ポートは前記マルチポートモジュールの第1のポートとされ、電気絶縁リンクは少なくとも2つのポートを含み、電気絶縁リンクの全てのポートの間は電気絶縁機能を有し、第1の電力モジュールの交流ポートは電気絶縁リンクの第1のポートに接続され、第1の電力モジュールの他方のポートは前記マルチポートモジュールの第2のポートとされ、第2の電力モジュールの交流ポートは電気絶縁リンクの第2のポートに接続され、第1、第2の電力モジュールの他のポートはそれぞれマルチポートモジュールの第3のポート、第4のポートなどとされ、
全てのN個のマルチポートモジュールの第1のポートの正極は同じポイントに接続され、負極は別のポイントに接続され、前記2つのポイントはマルチポートエネルギールータの第1の共通ポートを構成し、前記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは順次直列又は並列に接続され、マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記N個のマルチポートモジュールの第3のポート、第4のポートなどはともにマルチポートエネルギールータの他のポートを構成する、マルチポートエネルギールータ。
【0010】
上記第2のポートとそれが位置するマルチポートモジュールの全ての他のポートとの間にいずれも電気絶縁リンクが接続される。
【0011】
上記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の直流バスに接続され、前記マルチポートエネルギールータの他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0012】
上記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは2つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、2つのチェーンリンクを形成し、2つのチェーンリンクは真のバイポーラ接続を用い、マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の真のバイポーラ形態の直流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0013】
上記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはスター接続を用い、スター接続に基づくマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のスター接続を用いる三相交流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0014】
上記N個のマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはデルタ接続を用い、デルタ接続に基づくマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成し、前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のデルタ接続を用いる三相交流バスに接続され、他のポートはそれぞれ他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0015】
上記第1の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路により実現される。
【0016】
上記第1の電力モジュールは、ハーフブリッジ回路及びフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される。
【0017】
上記第1の電力モジュールは、2つのフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される。
【0018】
上記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/ACコンバータを少なくとも含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、前記第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、DC/ACコンバータのDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、ACポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成する。
【0019】
上記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/DCコンバータを少なくとも含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、前記第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、DC/DCコンバータの一方のDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、他方のDCポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成する。
【0020】
上記第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路のみを含み、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、第2の電力モジュールの交流ポートを構成し、直流コンデンサの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成し、2つのアームの中点が再び引き出され、それぞれスムージングリアクトルに接続された後に並列に接続され、アームの両端のいずれかの端とともに、DC/DCコンバータの他方のDCポートを構成する。
【0021】
上記電気絶縁リンクは少なくとも2つの巻線を含む絶縁変圧器を用い、これらの巻線は第1の巻線、第2の巻線……として定義され、即ち、前記絶縁変圧器の第1のポートは第1の巻線であり、第2のポートは第2の巻線であり、……である。
【0022】
上記マルチポートモジュールは1つのバイパススイッチを更に含み、バイパススイッチは全てのマルチポートモジュールの第2のポートに並列に接続される。
【0023】
上記マルチポートモジュールは1つのヒューズを更に含み、ヒューズは全てのマルチポートモジュールの第1のポートに直列に接続される。
【0024】
制御装置と、各マルチポートモジュールに対応する少なくとも1つのコントローラ及び少なくとも1つの通信インタフェースとを含み、制御装置は、マルチポートモジュールの通信インタフェースの総数以上の通信インタフェースを含み、マルチポートモジュールのコントローラと制御装置は両側の通信インタフェースを介してデータを交換し、コントローラは、対応するマルチポートモジュールのパラメータを収集し、制御装置に送信するために用いられ、制御装置は、コントローラによって収集したパラメータに基づいて制御命令を生成し、各コントローラに送信する、以上に記載のマルチポートエネルギールータの制御システム。
【0025】
マルチポートエネルギールータは、
コントローラはマルチポートエネルギールータの第1、第2の共通ポートの電流及び電圧をリアルタイムで検出するステップa1と、
コントローラは通信インタフェースを介して検出データを制御装置に送信するステップa2と、
制御装置は検出データに対して計算し、各マルチポートモジュールの制御調節量を生成し、通信インタフェースを介して全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信するステップa3と、
マルチポートモジュールのコントローラは送信された制御調節量に基づき、対応するマルチポートモジュールの第1のポート及び第2のポートの電圧と電流を制御するステップa4と、により、第1の共通ポート及び第2の共通ポートの動作を制御する、以上に記載のマルチポートエネルギールータの制御システムに基づく制御方法。
【0026】
マルチポートエネルギールータは、
制御装置はマルチポートエネルギールータの全ての他のポートの定格電圧及び電流基準をそれぞれ所定の値に整定し、各ポートの電力を各ポートの位置するマルチポートモジュールの定格電力以下にするステップb1と、
制御装置は整定パラメータを全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信するステップb2と、
各マルチポートモジュールのコントローラは対応するマルチポートモジュールの他のポートの電流と電圧をリアルタイムで検出するステップb3と、
各マルチポートモジュールのコントローラは検出された電流及び電圧データに対して計算し、制御装置の送信した整定パラメータに基づき、対応する制御調節量を生成するステップb4と、
マルチポートモジュールは生成された制御調節量により、他のポートの電圧と電流を制御するステップb5と、
マルチポートモジュールは通信インタフェースを介して他のポートの電圧及び電流データを制御装置にアップロードするステップb6と、により、他のポートの動作を制御する、以上に記載のマルチポートエネルギールータの制御システムに基づく制御方法。
【0027】
上記方案を用いると、本発明により提供されるマルチポートエネルギールータは2つ以上のマルチポートモジュールで構成される。構成されたマルチポートエネルギールータは、第1の共通ポートと第2の共通ポートとして定義される2つの共通ポート、及び少なくとも1つの他のポートを含む。本発明のマルチポートエネルギールータでは、マルチポートモジュールの構成形態によって、第1の共通ポートは直流ポートであり、直流バスに接続されるか、未接続とされてもよく、第2の共通ポートは交流バス又は直流バスに接続され、全ての他のポートは、様々な異なる電圧レベルの交流又は直流電圧を出力し、異なる実際の使用要求を満たすように実際の使用要求に応じてカスタマイズすることができる。本発明はさらに、カスタマイズされたポート電圧及び電流の要求に基づき、このポートに対して必要な電力及び電圧調節を行うことができる制御方法に関する。
【0028】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0029】
(1)ISOP構造のパワーエレクトロニクス変圧器をコアとして、一部のDC/DC及びDC/AC機器を外部に設ける既存の従来のエネルギールータと比較し、本発明のエネルギールータは、給電形態と電圧レベルがより柔軟で多様である給電ポートを提供することができ、エネルギールータシステム全体をより集中させる。
【0030】
(2)ISOP構造のパワーエレクトロニクス変圧器をコアとして、一部のDC/DC及びDC/AC機器を外部に設ける既存の従来のエネルギールータと比較し、本発明のエネルギールータは、従来の方案では後に構築される直流又は交流バスのグレーディング数を低減することができ、接続される機器のエネルギー変換プロセスを減少させ、システム全体の作動効率を向上させることができる。
【0031】
(3)本発明により提供されるエネルギールータは、互いに独立して制御可能な変換ポートを提供することができ、明らかな分散型給電特徴を有し、即ち、光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギー機器、及びスイッチング電源に基づく電気機器に単独の制御方案を提供することができる。
【0032】
(4)従来の特許技術方案と比較し、本発明は、チェーン構造応用における電圧バランスの問題がないので、既存の数千ボルト以上の中高圧交流/直流バスなどに直接良好に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明により提供されるマルチポートエネルギールータの構造模式図である。
図2】マルチポートモジュールの第2のポートを直列に接続したマルチポートエネルギールータの構造模式図である。
図3】真のバイポーラの直流バスに接続されるマルチポートエネルギールータの構造模式図である。
図4】スター三相交流バスに接続されるマルチポートエネルギールータの構造模式図である。
図5】デルタ三相交流バスに接続されるマルチポートエネルギールータの構造模式図である。
図6】フルブリッジ回路の構造模式図である。
図7】ハーフブリッジ回路とフルブリッジ回路とのカスケード接続の構造模式図である。
図8】2つのフルブリッジ回路のカスケード接続の構造模式図である。
図9】フルブリッジ回路とAC/DC回路をカスケード接続した第2の電力モジュールの構造模式図である。
図10】I型フルブリッジ回路とDC/DC回路をカスケード接続した第2の電力モジュールの構造模式図である。
図11】II型フルブリッジ回路とDC/DC回路をカスケード接続した第2の電力モジュールの構造模式図である。
図12】1つのフルブリッジ回路のみを含む第2の電力モジュールの構造模式図である。
図13】バイパススイッチ及びヒューズを含むマルチポートモジュールの模式図である。
図14】制御装置を含むマルチポートエネルギールータの制御ポリシー模式図である。
図15】中高圧直流システムに用いられるマルチポートエネルギールータの応用例の図である。
図16】中高圧交流システムに用いられるマルチポートエネルギールータの応用例の図である。
図17】ポート数の異なるマルチポートモジュールを含むマルチポートエネルギールータの応用例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、マルチポートエネルギールータ及びその制御システム並びに制御方法を提供する。本発明の目的、技術方案及び効果をより明らかで明確にするために、以下に図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【0035】
ここで説明される具体的な実施例が、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないと理解すべきである。
【0036】
前記マルチポートエネルギールータは、N個のマルチポートモジュールで構成され、Nが2以上の整数である。各マルチポートモジュールは少なくとも3つのポートを含み、少なくとも1つのポートは直流ポートであり、即ち、このポートは1つの直流正極及び1つの直流負極を含み、この直流ポートはこのマルチポートモジュールの第1のポートとして定義される。各マルチポートモジュールはさらに、第1のポートとの間に電気絶縁リンクを有するポートを少なくとも含み、このポートは第2のポートとして定義される。各マルチポートモジュールの他のポートは、順次第3のポート、第4のポート……第Mのポートとして定義される。全てのN個のマルチポートモジュールの第1のポートの正極は同じポイントに接続され、負極は別のポイントに接続され、これらの2つのポイントは前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートを構成する。全てのマルチポートモジュールの他のポートはともに前記マルチポートエネルギールータの他のポートを構成する。
【0037】
図1は、マルチポートエネルギールータの構造模式図であり、アセンブリ100~N00はN個のマルチポートモジュールであり、アセンブリ10は電気絶縁リンクを示し、アセンブリ103、104はそれぞれ直流ポートの正極と負極であり、即ち、アセンブリ103、104は第1のポートを構成し、全てのマルチポートモジュールの第1のポートは並列に接続され、即ち、アセンブリ103、104はマルチポートエネルギールータの第1の共通ポートも構成する。アセンブリ101、102は直流ポートとの間に電気絶縁リンクを有するポート、即ち第2のポートである。アセンブリ105、106……10(m+m-1)、10(m+m)は他のポートであり、順次第3のポート……第Mのポートとして定義される。
【0038】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールにおいて、第2のポートは、このマルチポートモジュールの全ての他のポートとの間に電気絶縁リンクを有する。図1に示されるように、アセンブリ10(m+2)~アセンブリ10(m+m)が存在しない場合、アセンブリ101、102で構成されるポートは全ての他のポートとの間にいずれも電気絶縁リンクを有する。
【0039】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールの第2のポートは順次直列又は並列に接続され、前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成する。前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の直流バスに接続される。他のポートはそれぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0040】
図2に示されるように、全てのマルチポートモジュールが3つのポートのみを有することを例にとると、その第2のポートは全てのポートとの間にいずれも電気絶縁機能を有する。全てのマルチポートモジュールの第2のポートを直列に接続し、アセンブリ2a、2bを形成することにより、前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。同様に、全てのマルチポートモジュールの第2のポートを並列に接続することにより、前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。第2の共通ポートは外部の単相交流バス又は疑似バイポーラ形態の直流バスに接続されてもよい。第1の共通ポートは外部の直流バスに接続されてもよく、未接続とされてもよい。他のポートは異なる応用要求に応じて、それぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続される。
【0041】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールの第2のポートは2つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、2つのチェーンリンクを形成し、2つのチェーンリンクは真のバイポーラ接続を用い、前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成する。前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部の真のバイポーラ形態の直流バスに接続される。他のポートはそれぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0042】
図3に示されるように、全てのマルチポートモジュールが3つのポートのみを有することを例にとると、その第2のポートは全てのポートとの間にいずれも電気絶縁機能を有する。全てのマルチポートモジュールの第2のポートを2つのグループに分け、各グループを順次直列に接続し、アセンブリ3a、3b、3cを形成することにより、真のバイポーラ接続形態を有するマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。同様に、全てのマルチポートモジュールの第2のポートを2つのグループに分け、各グループを並列に接続することにより、真のバイポーラ接続形態を有する前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。第2の共通ポートは外部の真のバイポーラ接続形態の直流バスに接続される。第1の共通ポートは外部の直流バスに接続されてもよく、未接続とされてもよい。他のポートは異なる応用要求に応じて、それぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続される。
【0043】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはスター接続を用い、スター接続に基づく前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成する。前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のスター接続を用いる三相交流バスに接続される。他のポートはそれぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0044】
図4に示されるように、全てのマルチポートモジュールが3つのポートのみを有することを例にとると、その第2のポートは全てのポートとの間にいずれも電気絶縁機能を有する。全てのマルチポートモジュールの第2のポートを3つのグループに分け、各グループを順次直列に接続し、アセンブリ4a、4b、4c、4d、4e、4fを形成し、アセンブリ4d、4e、4fを同じポイントに接続することにより、スター接続形態を有するマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。同様に、全てのマルチポートモジュールの第2のポートを3つのグループに分け、各グループを並列に接続することにより、スター接続形態を有する前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。第2の共通ポートは外部のスター接続形態を用いる三相交流バスに接続される。第1の共通ポートは外部の直流バスに接続されてもよく、未接続とされてもよい。他のポートは異なる応用要求に応じて、それぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続される。
【0045】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールの第2のポートは3つのグループに分けられ、各グループは順次直列又は並列に接続され、3つのチェーンリンクを形成し、3つのチェーンリンクはデルタ接続を用い、デルタ接続に基づく前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成する。前記マルチポートエネルギールータの第1の共通ポートは未接続であるか、外部の直流バスに接続され、第2の共通ポートは外部のデルタ接続を用いる三相交流バスに接続される。他のポートはそれぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続されるか、未接続である。
【0046】
図5に示されるように、全てのマルチポートモジュールが3つのポートのみを有することを例にとると、その第2のポートは全てのポートとの間にいずれも電気絶縁機能を有する。全てのマルチポートモジュールの第2のポートを3つのグループに分け、各グループを順次直列に接続し、アセンブリ5a、5b、5c、5d、5e、5fを形成し、アセンブリ5a~5fの首尾を順次接続することにより、デルタ接続形態を有するマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。同様に、全てのマルチポートモジュールの第2のポートを3つのグループに分け、各グループを並列に接続することにより、デルタ接続形態を有する前記マルチポートエネルギールータの第2の共通ポートを構成してもよい。第2の共通ポートは外部のデルタ接続形態を用いる三相交流バスに接続される。第1の共通ポートは外部の直流バスに接続されてもよく、未接続とされてもよい。他のポートは異なる応用要求に応じて、それぞれ光起電力、風力発電、エネルギー貯蔵、スイッチング電源などの他のタイプの機器に接続される。
【0047】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールは1つの第1の電力モジュール、1つの第2の電力モジュール、及び1つの絶縁変圧器を少なくとも含む。ここで、第1の電力モジュールは1つの交流ポートを少なくとも含み、第2の電力モジュールは1つの直流ポート及び1つの交流ポートを少なくとも含み、この直流ポートは即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートであり、絶縁変圧器は少なくとも2つの巻線を含む。第1の電力モジュールの交流ポートは絶縁変圧器の一方の巻線に接続され、他方のポートは即ち前記マルチポートモジュールの第2のポートである。第2の電力モジュールの交流ポートは、第1の電力モジュールが接続される前記巻線とは同一ではない絶縁変圧器の他方の巻線に接続される。
【0048】
図2に示されるように、アセンブリ1a1は絶縁変圧器、即ち図1におけるアセンブリ10の内部構成部材であり、アセンブリ1a2は第1の電力モジュールであり、アセンブリ1a3は第2の電力モジュールである。
【0049】
前記マルチポートモジュールの第1の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路により実現される。図6は、フルブリッジ回路の模式図であり、ここで、アセンブリ6aはフルブリッジ回路である。
【0050】
前記マルチポートモジュールの第1の電力モジュールは、ハーフブリッジ回路及びフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される。図7は、ハーフブリッジ回路とフルブリッジ回路とのカスケード接続の模式図であり、ここで、アセンブリ7aはハーフブリッジ回路であり、アセンブリ7bはフルブリッジ回路である。
【0051】
前記マルチポートモジュールの第1の電力モジュールは、2つのフルブリッジ回路を直流コンデンサによりカスケード接続することで実現される。図8は、2つのフルブリッジ回路のカスケード接続の模式図であり、ここで、アセンブリ8a、8bはいずれもフルブリッジ回路である。
【0052】
前記マルチポートモジュールの第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/ACコンバータを少なくとも含む。ここで、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、この第2の電力モジュールの交流ポートを構成する。フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成する。DC/ACコンバータのDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、ACポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成する。
【0053】
図9は、フルブリッジ回路とDC/AC回路とのカスケード接続の構造模式図であり、ここで、アセンブリ9aはフルブリッジ回路であり、アセンブリ9bはマルチアームブリッジ回路で構築されたDC/AC回路である。接続されるアームの数によっては、単相、三相三線又は三相四線の交流システムに接続されてもよい。
【0054】
前記マルチポートモジュールの第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路及び1つのDC/DCコンバータを少なくとも含む。ここで、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、この第2の電力モジュールの交流ポートを構成する。フルブリッジ回路のアームの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成する。DC/DCコンバータの一方のDCポートは前記フルブリッジ回路の直流ポートに接続され、他方のDCポートは第2の電力モジュールの3番目のポート、即ち前記マルチポートモジュールの第3のポートを構成する。
【0055】
図10図11は、二種類のフルブリッジ回路とDC/DC回路とのカスケード接続の構造模式図であり、図10に示される回路を、I型フルブリッジ回路とDC/DC回路をカスケード接続した第2の電力モジュールとして定義し、図11に示される回路を、II型フルブリッジ回路とDC/DC回路をカスケード接続した第2の電力モジュールとして定義する。
【0056】
図10において、アセンブリ10aはフルブリッジ回路であり、アセンブリ10bはマルチアームブリッジ回路で構築されたDC/DC回路である。接地点によっては、図におけるアセンブリ10c、アセンブリ10d、及びアセンブリ10e、アセンブリ10dはいずれもDC/DCポートを構成してもよい。
【0057】
図11において、アセンブリ11aはフルブリッジ回路であり、アセンブリ11bはマルチアームブリッジ回路で構築されたDC/DC回路であり、ここで、アセンブリ11c、11dはDC/DCポートを構成する。
【0058】
前記マルチポートモジュールの第2の電力モジュールは1つのフルブリッジ回路のみを含む。ここで、フルブリッジ回路の2つのアームの中点は引き出され、第2の電力モジュールの交流ポートを構成する。直流コンデンサの両端は第2の電力モジュールの直流ポート、即ち前記マルチポートモジュールの第1のポートを構成する。2つのアームの中点を再び引き出し、それぞれスムージングリアクトルに接続した後に並列に接続し、アームの両端のいずれかの端とともに、DC/DCコンバータの他方のDCポートを構成する。図12は、1つのフルブリッジ回路で構築された第2の電力モジュールであり、ここで、アセンブリ12aはフルブリッジ回路であり、アセンブリ12b、12cは交流ポートを構成し、接地点によっては、アセンブリ12d、12e、又はアセンブリ12f、12eからいずれか一組を選択してDC/DCポートを構成してもよく、アセンブリ12g、12hは直流ポート、即ちそれらの位置するマルチポートモジュールの第1のポートを構成する。
【0059】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールは1つのバイパススイッチを更に含む。バイパススイッチは全てのマルチポートモジュールの第2のポートに並列に接続される。
【0060】
前記マルチポートエネルギールータのマルチポートモジュールは1つのヒューズを更に含む。ヒューズは全てのマルチポートモジュールの第1のポートに直列に接続される。
【0061】
図13は、マルチポートモジュールの構造模式図であり、ここで、アセンブリ1a6はバイパススイッチであり、アセンブリ1a7はヒューズである。
【0062】
前記マルチポートエネルギールータは制御装置と、各マルチポートモジュールに対応する少なくとも1つのコントローラ及び少なくとも1つの通信インタフェースとを更に含む。制御装置は、マルチポートモジュールの通信インタフェースの総数以上の通信インタフェースを含む。マルチポートモジュールのコントローラと制御装置は両側の通信インタフェースを介してデータを交換する。
【0063】
本発明はマルチポートエネルギールータの制御方法を提供する。マルチポートエネルギールータは以下のステップにより第1の共通ポート及び第2の共通ポートの動作を制御する。
【0064】
ステップ1:マルチポートモジュールのコントローラはマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートの電流と電圧をリアルタイムで検出する。
【0065】
ステップ2:マルチポートモジュールのコントローラは通信インタフェースを介して検出データを制御装置に送信する。
【0066】
ステップ3:制御装置はデータに対して計算し、各マルチポートモジュールの制御調節量を生成し、通信インタフェースを介して全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信する。
【0067】
ステップ4:マルチポートモジュールのコントローラは送信された調節量に基づき、モジュールの第1のポート及び第2のポートの電圧と電流を制御し、即ち、マルチポートエネルギールータの第1の共通ポート及び第2の共通ポートを作動させるように制御する。
【0068】
マルチポートエネルギールータは以下のステップにより他のポートの動作を制御する。
【0069】
ステップ1:制御装置は全てのマルチポートエネルギールータの他のポートの定格電圧及び電流基準をそれぞれ所定の値に整定し、各ポートの電力を各ポートの位置するマルチポートモジュールの定格電力以下にする。
【0070】
ステップ2:制御装置は整定パラメータを全てのマルチポートモジュールのコントローラに送信する。
【0071】
ステップ3:各マルチポートモジュールのコントローラは対応するマルチポートモジュールの他のポートの電流と電圧をリアルタイムで検出する。
【0072】
ステップ4:各マルチポートモジュールのコントローラは検出された電流及び電圧データに対して計算し、制御装置から送信された整定パラメータに基づき、対応する制御調節量を生成する。
【0073】
ステップ5:マルチポートモジュールは生成された制御調節量により、他のポートの電圧と電流を制御する。
【0074】
ステップ6:マルチポートモジュールは通信インタフェースを介して他のポートの電圧及び電流データを制御装置にアップロードする。
【0075】
図14に示されるように、アセンブリ14tは制御装置を示し、アセンブリ14t1~アセンブリ14tkは制御装置の通信インタフェースを示し、アセンブリ1a6はマルチポートモジュール100の通信インタフェースを示し、アセンブリ1a7はマルチポートモジュール100のコントローラを示し、アセンブリ14tc1は制御装置とマルチポートモジュール100との通信経路を示す。同様に、アセンブリ14t2~アセンブリ14tkは全てのマルチポートモジュールとの間にいずれも通信経路がある。アセンブリ1a7であるコントローラは他のポートの電圧、電流情報を取得し、通信ポートを介して制御装置にアップロードする。制御装置はマルチポートエネルギールータの第1の共通ポート及び第2の共通ポートの電圧、電流情報をリアルタイムで検出し、マルチポートエネルギールータ全体を制御し、調節する。
【0076】
本発明の具体的な応用状況を説明するために、上記説明によれば、図15図17は本発明に基づいて構築されたハイブリッドマルチポートエネルギールータの構造模式図を示す。ここで、図15に示されるマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートは中高圧直流バスである。図16に示されるマルチポートエネルギールータの第2の共通ポートは中高圧交流バスである。各マルチポートモジュールは、異なる配置により、共通グランドの異なる直流、単相交流及び三相交流を出力することができる。図17に示されるマルチポートエネルギールータはポート数の異なるマルチポートモジュールを用い、図において、アセンブリ100~x00は3つのポートを有するモジュールであり、アセンブリ(x+1)00~アセンブリN00はマルチポートモジュールである。
【0077】
以下に図2に示される回路を例として、この回路の構成原理を定量的に説明する。
【0078】
図2に示されるように、マルチポートエネルギールータはN個のマルチポートモジュールを含む。マルチポートエネルギールータの定格電力をP、第2の共通ポートの電圧をU、第1の共通ポートの電圧をUとすると、各マルチポートモジュールの定格電力がP/Nであり、第1のポートの電圧がUであり、第2のポートの電圧がU/Nである。各マルチポートモジュールの第3のポート電圧をUとすると、第3のポートの位置するハーフブリッジ回路又はフルブリッジ回路のフルコントロールデバイスのデューティサイクルを調節することにより、U電圧を調節することができる。
【0079】
同様に、他のタイプの第3のポートを設計することができる。
【0080】
当業者であれば、本発明の技術方案及びその発明構想に基づいて均等の置換又は変更を行うことができ、全てのこれらの変更又は置換がいずれも本発明の特許請求の範囲の保護範囲に属すべきであることが、理解され得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17