(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】文書作成システム
(51)【国際特許分類】
G06F 40/166 20200101AFI20220926BHJP
G06F 40/134 20200101ALI20220926BHJP
G06F 40/169 20200101ALI20220926BHJP
G06F 40/151 20200101ALI20220926BHJP
【FI】
G06F40/166
G06F40/134
G06F40/169
G06F40/151
(21)【出願番号】P 2020197737
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2019176055の分割
【原出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502351659
【氏名又は名称】株式会社医療情報技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100196760
【氏名又は名称】大野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】姫野 信吉
【審査官】成瀬 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-139312(JP,A)
【文献】特開2010-073185(JP,A)
【文献】古崎晃司,ドメインオントロジーの構築と利用,情報知識学会誌,日本,情報知識学会,2010年02月15日,第19巻4号,296-305頁,ISSN0917-1436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 40/00-40/58
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
語彙とその属性を一体化した語彙オブジェクトを作成する語彙オブジェクト作成手段、
作成された語彙オブジェクトを記録、管理する語彙オブジェクト管理手段、
前記語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オジェクトの中から必要な語彙オブジェクトを選択する語彙オブジェクト選択手段、
選択された語彙オブジェクトを編集中の文書内に配置する語彙オブジェクト配置手段を備え、
語彙オブジェクトを参照リンクとして語彙オブジェクト管理手段に登録する参照リンク手段を備えたことを特徴とする文書作成システム。
【請求項2】
前記語彙オブジェクトにおいて、実行すべき動作を記述したスクリプトを記録するスクリプト組込み手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の文書作成システム。
【請求項3】
前記語彙オブジェクトにおいて、前記文書に表示する自由記載のコメントを記録するコメント組込み手段を備えたことを特徴とする請求項1~2いずれか記載の文書作成システム。
【請求項4】
語彙オブジェクト間の
共通属性を親語彙オブジェクトに括り出して語彙オブジェクト群をツリー状に整理し、親の語彙オブジェクトの属性を子の語彙オブジェクトの属性に継承する語彙オブジェクト属性継承手段を備えたことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の文書作成システム。
【請求項5】
語彙オブジェクトを含む文書を、プレーンテキスト化し軽量化を図った文書として記録する語彙オブジェクト/プレーンテキスト化手段を備えたことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の文書作成システム。
【請求項6】
語彙オブジェクト管理手段を検索し、プレーンテキスト化された文書に付加された目印に基づいてプレーンテキスト化された文書に該当する語彙オブジェクトを復活させるプレーンテキスト/語彙オブジェクト化手段を備えたことを特徴とする請求項5記載の文書作成システム。
【請求項7】
実行すべき
検査や処置を時間軸で展開し、実行すべき
検査や処置を語彙オブジェクトで実装した
計画表を備えたことを特徴とする請求項1~6いずれか記載の文書作成システム。
【請求項8】
特定の語彙オブジェクトの存在位置のリストを表示する計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の文書作成システム。
【請求項9】
前記計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段において、当該変更された語彙オブジェクトで前記計画表内特定語彙オブジェクトリスト内の語彙オブジェクトを更新する計画表内特定語彙オブジェクト更新手段を備えたことを特徴とする請求項8記載の文書作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書作成において用いられる語彙をオブジェクト化し 表現の揺らぎをなくして標準化された記述を行うとともに、当該語彙に関して実行すべきスクリプトを埋め込み、語彙オブジェクトと当該文書/案件との間の参照リンクを備えることで、論理判断を自動化し、かつ自動的に索引を生成する文書作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場などでは医療文書の作成にPCを用いること(電子カルテ)が普通となってきている。医師や看護師の記録や、検査や処置の指示書(オーダー)などが電子化されつつある。蓄積された大量の電子データ(ビッグデータ)を用いて、医療や介護の分析を行い、治療方法の改善を行おうとする動きが出てきている。
この出願に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6485164号公報
【文献】特許第477994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者の状態などを自由な文体で記述すると、例えば発熱、高熱、微熱、あるいは-、+-、++、または0~5度などと語彙やその程度表現に揺らぎが生じる。
後で統計処理をしようとしても、同じような内容であるにも関わらず同一項目への集計が困難である。
また例えば発熱の症状が観察された案件(カルテ)の一覧が必要な際、案件の文書類を一から検索していては膨大な時間がかかり実用に耐えない。事前の汎用的な索引の構築が必要である。
統制語彙(シソーラス)で記述に用いる語彙を制限する方法もある。
しかし、例えば薬剤の処方などでは、語彙のみならず、一日の錠数、服用回数、服用時期などが一定の書式で記述されることが求められる。
また、その薬剤に対応する病名が既に当該案件に登録されているか、肝臓や腎臓の機能が低下していて当該薬剤の処方は禁忌ではないかなどの確認が必要な場合も多い。
このように単なる辞書的な語彙の統制では不十分である。
【0005】
語彙には共通属性を持つ場合も多くあり、すべて繰り返して属性を記録してゆくと、記録容量が増加するだけでなく、変更が必要になった際にすべての共通属性で繰り返し変更が必要となり、保守作業が膨大なものとなる。
統制語彙だけの羅列では文書が読みにくくなる。
自然な文章の中に統制語彙が埋め込まれている形が望ましい。
統制語彙に種々の属性を一体化した語彙オブジェクトを使用すると、作成された文書の記憶容量が巨大化する危険がある。
医療の現場では疾患ごとに実行すべき検査や処置を時間軸で展開したクリニカルパスが用いられている。
検査や処置の仕様が変更された際、医療機関によっては1000を超えるクリニカルパスが用いられており、埋め込まれている検査や処置の仕様を更新する作業は大変であり、しばしばミスの原因となっている。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、文書で用いられる多数の語彙を各々の属性とともにオブジェクト化し、語彙オブジェクトを管理しているリストから選択された語彙オブジェクトを文書中に配置することで文書を作成し、読み易い、表現や書式の揺らぎのない文書作成を可能とすること、配置された語彙オブジェクトごとに当該文書/案件への参照リンクを作成することにより、当該語彙オブジェクトからから文書/案件への索引を自動作成に後の検検索に備えること、語彙オブジェクトの属性に実行の際にチェックすべきスクリプトを埋め込むことで半自動化し安全性を向上させること、語彙オブジェクト間の共通属性を親語彙オブジェクトに括り出して親子のツリー構造とすることで、少ない記録容量で見通しのよい保守性に優れた語彙オブジェクト管理手段を提供すること、編集の終了した語彙オブジェクトを含む文書をプレーンテキスト化する、また必要に応じて語彙オブジェクトを含む文書を復元する手段を備えることで少ない記録容量で大量の文書記録を可能とすること、クリニカルパスに埋め込まれた検査や処置の更新を容易にすることで、高機能かつ保守性に優れた文書作成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための手段として請求項1記載の文書作成システムでは、語彙とその属性を一体化した語彙オブジェクトを作成する語彙オブジェクト作成手段、
作成された語彙オブジェクトを記録、管理する語彙オブジェクト管理手段、
前記語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オジェクトの中から必要な語彙オブジェクトを選択する語彙オブジェクト選択手段、
選択された語彙オブジェクトを編集中の文書内に配置する語彙オブジェクト配置手段を備え、
語彙オブジェクトを参照リンクとして語彙オブジェクト管理手段に登録する参照リンク手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の文書作成システムでは、請求項1記載の文書作成システムにおいて、前記語彙オブジェクトにおいて、実行すべき動作を記述したスクリプトを記録するスクリプト組込み手段を備えたことを特徴とする
【0009】
請求項3記載の文書作成システムでは、請求項1~2いずれか記載の文書作成システムにおいて、前記語彙オブジェクトにおいて、前記文書に表示する自由記載のコメントを記録するコメント組込み手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の文書作成システムでは、請求項1~3いずれか記載の文書作成システム
において、語彙オブジェクト間の共通属性を親語彙オブジェクトに括り出して語彙オブジェクト群をツリー状に整理し、親の語彙オブジェクトの属性を子の語彙オブジェクトの属性に継承する語彙オブジェクト属性継承手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の文書作成システムでは、請求項1~4いずれか記載の文書作成システム
において、語彙オブジェクトを含む文書を、プレーンテキスト化し軽量化を図った文書として記録する語彙オブジェクト/プレーンテキスト化手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の文書作成システムでは、請求項5記載の文書作成システムにおいて、語彙オブジェクト管理手段を検索し、プレーンテキスト化された文書に付加された目印に基づいてプレーンテキスト化された文書に該当する語彙オブジェクトを復活させるプレーンテキスト/語彙オブジェクト化手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の文書作成システムでは、請求項1~6いずれか記載の文書作成システムにおいて、実行すべき検査や処置を時間軸で展開し、実行すべき検査や処置を語彙オブジェクトで実装した計画表を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の文書作成システムでは、請求項7記載の文書作成システムにおいて、特定の語彙オブジェクトの存在位置のリストを表示する計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の文書作成システムでは、請求項8記載の文書作成システムにおいて、前記計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段において、当該変更された語彙オブジェクトで前記計画表内特定語彙オブジェクトリスト内の語彙オブジェクトを更新する計画表内特定語彙オブジェクト更新手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の文書作成システムでは、語彙オブジェクト作成手段を備えるので、語彙とその属性を一体化した語彙オブジェクトを作成する。
語彙オブジェクト管理手段を備えるので、作成された語彙オブジェクトを記録、管理する。
語彙オブジェクト選択手段を備えるので、語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オジェクトの中から必要な語彙オブジェクトを選択する。
語彙オブジェクト配置手段を備えるので、選択された語彙オブジェクトを編集中の文書内に配置する。
【0017】
請求項1記載の文書作成システムでは、語彙オブジェクト管理手段は、文書内に配置された語彙オブジェクトに関し、(i)前記文書、または(ii)前記文書の属する案件、の少なくともいずれかに対する参照リンク手段を有している。
【0018】
請求項2記載の文書作成システムでは、スクリプト組込み手段を備えるので、語彙オブジェクトにおいて、実行すべき動作を記述したスクリプトを記録する。
【0019】
請求項3記載の文書作成システムでは、コメント組込み手段を備えるので、語彙オブジェクトにおいて、文書に表示する自由記載のコメントを記録する。
【0020】
請求項4記載の文書作成システムでは、語彙オブジェクト属性継承手段を備えるので、語彙オブジェクト間の内容の親子関係を用いて語彙オブジェクト群をツリー状に整理し、親の語彙オブジェクトの属性を子の語彙オブジェクトの属性に継承する。
【0021】
請求項5記載の文書作成システムでは、語彙オブジェクト/プレーンテキスト化手段を備えるので、語彙オブジェクトを配置した文書において、オブジェクト要素を除外したプレーンテキストに変換し当該文書の記録容量の削減を可能とする。
【0022】
請求項6記載の文書作成システムでは、プレーンテキスト/語彙オブジェクト化手段を備えるので、プレーンテキスト化された文書から語彙オブジェクトを配置した文書に復元する。
【0023】
請求項7記載の文書作成システムでは、計画表作成手段を備えるので、特定の目的を達成するために実行すべき事項を時間軸で展開した計画表において、実行すべき事項を語彙オブジェクトで実装する。
【0024】
請求項8記載の文書作成システムでは、計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段を備えるので、計画表作成手段において、特定の語彙オブジェクトに変更が生じた際に、当該語彙オブジェクトの存在位置のリストを表示する。
【0025】
請求項9記載の文書作成システムでは、計画表内特定語彙オブジェクト更新手段を備えるので、計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段において、当該変更された語彙オブジェクトで前記計画表内特定語彙オブジェクトリスト内の語彙オブジェクトを更新する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図1の語彙オブジェクトの、スクリプト属性項目の内容を例示したものである。
【
図3】本発明の語彙オブジェクトのもう一つの例である。
【
図4】語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オブジェクト群から必要な語彙オブジェクトを選択し(語彙オブジェクト選択手段)、文書内に配置すること(語彙オブジェクト配置手段)、前記文書の文書ID、前記文書を含む案件IDの少なくともいずれかを、参照リンクとして語彙オブジェクト管理手段の当該語彙オブジェクトに登録する参照リンク手段の説明図である。
【
図5】
図4で示された語彙オブジェクト管理手段の当該語彙オブジェクトに登録された参照リンクのリストの説明図である。
【
図6】語彙オブジェクトの属性の共通部分を親語彙プロジェクトに括りだし、記録量の軽減を図った例である。
【
図7】語彙オブジェクトを含む記録容量を要する文書を、プレーンテキスト化し軽量化を図った文書として記録する、あるいは逆にプレーンテキスト化し軽量化を図った文書を、語彙オブジェクトを含む記録容量を要する文書に相互変換する説明図である。
【
図8】クリニカルパスの中に埋め込まれている語彙オブジェクトを語彙オブジェクト管理手段にリスト化しておき、語彙オブジェクトの変更が生じた際に、もれなく更新箇所をリストアップする説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の語彙オブジェクトの一例である。
語彙としては薬剤の「ロキソニン錠」を取り上げている。
属性としては、処方する錠数(1~6)、処方された錠数の分割数(1x~)、服用時期(屯用、朝食後、など等)といった用法用量、処方する日数、自由入力のコメントテキスト、処方を発行する際に実行すべきことを記録したスクリプトなどの属性項目を図示している。
用法用量、日数などは、診療報酬請求のためのソフトウェアに受け渡しための書式が厳密に定められているので、自由記載を許すと受け渡しが困難となる。
図1に示すように、必ず受け取られるための書式制御が不可欠である。
語彙オブジェクト化しておいて、文書内に配置された後、各々の属性項目をクリックしてプルダウンメニューを展開し選択するなどの操作で、厳密な書式制御が可能となる。
前属性項目の選択で後属性の展開範囲(例えば 錠数2で分割数3x以上はあり得ない)を変化させることも重要である。
厳密な書式では表現できない内容は、コメント属性項目にまとめて、テキストで自由に記載することとなる。
【0028】
図2は、
図1の語彙オブジェクトで、スクリプト属性項目の内容を例示したものである。
処方箋文書に基づき実際に調剤し患者に手渡すまでには、様々な医療安全上の事前チェックが必要である。
例にある「既往歴に胃、十二指腸潰瘍があるか?」に関して電子カルテの当該患者の案件文書(カルテ)を検索し、もしあれば、胃、十二指腸潰瘍を再燃、悪化させる危険があるので、処方医に、処方画面上で警告する必要がある。
同様に、高齢者には副作用が起きやすく、特に腎機能障害がある場合は危険である。
電子カルテから年齢、腎機能の検査データを検索し、該当するなら、処方医に、処方画面上で再考を促す必要がある。
【0029】
また、当該薬剤の適応病名(当該薬剤の処方が認められる疾患名)が電子カルテに登録されているかを検索し、もし未だなら、適応病名のリストを表示し、案件文書(カルテ)に病名の登録を促す。
もしアスピリン喘息の既往があったならば、当該薬剤の処方は禁忌であることを警告する。
このようにすることで、患者が当該薬剤を服用した後で副作用が発生する危険を低下させることができる。
また、病名の登録漏れを未然に防ぐことで、診療報酬請求後の査定(支払い拒否)を予防することができる。
【0030】
なお、
図2では、スクリプトの実行タイミングは、全て処方箋文書の確定時か、確定前の仮実行命令時となるので、敢えて図示していないが、文書の種類や語彙オブジェクトによっては、医師以外の担当職種が当該文書を参照した時など、状況によって変化する場合があるので、その際は実行タイミングを登録する手段を設けてもよい。
スクリプトの実装に関しては、スクリプト言語で記述する、ジャワスクリプトやPYTHONなどで記述された実行モジュールを多数登録しておいて、必要な実行モジュールを指定するなど等、任意の方法で実装してよい(スクリプト組込み手段)。
【0031】
図3は、本発明の語彙オブジェクトのもう一つの例である。
医師などが患者の症状や所見を記載する文書で、語彙の揺らぎや記載漏れを無くし、後での統計分析に耐えられるように属性項目を設定し語彙オブジェクトを構成している。
体温という語彙に関して、体温の数値自由入力(例では38.2(℃))を行い、同数値に対して分類基準に基づき「3 高熱」という分類を割り当てている。
熱型をリストから選択させ、また、必要に応じたコメントテキストの自由入力を可能としている。
「体温 38.2℃ 高熱 弛張熱」といった表示の羅列ではカルテの文書が読みにくいので、コメントテキストの自由入力を活用して、「体温 38.2℃ 高熱 弛張熱 あるが、あまり苦しがっていない。」といった自然な文章に語彙オブジェクトを埋め込むやりかたも有用である。
【0032】
図4は、語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オブジェクト群から必要な語彙オブジェクトを選択し(語彙オブジェクト選択手段)、文書内に配置すること(語彙オブジェクト配置手段)、前記文書の文書ID、前記文書を含む案件IDの少なくともいずれかを、参照リンクとして語彙オブジェクト管理手段の当該語彙オブジェクトに登録する参照リンク手段の説明図である。
語彙オブジェクト管理手段は、語彙とその属性を一体化した語彙オブジェクトをリストとして管理する。
語彙オブジェクトは薬剤名や血液検査名などのように厳密な書式管理が必要な処方用の語彙オブジェクトと、症状や所見を記述するための記述用語彙オブジェクトがある。
図4に示すように、処方用の語彙オブジェクトと記述用語彙オブジェクトのリストを一緒に管理してもよいし、別個に管理してもよい。
【0033】
語彙オブジェクト選択手段ならびに語彙オブジェクト配置手段は、前記語彙オブジェクトのリストから適切な語彙オブジェクトをハイライトし、編集中の文書のしかるべき位置へドラグ&ドロップして当該文書の指定位置に語彙オブジェクトを埋め込むものである。
ハイライトとドラグ&ドロップ操作は、マウスによる操作、タッチパネルでの指先での操作いずれでも良い。
またキーボードの矢印ボタン、カーソルを用いるやり方でも良い。
あるいは、当該文書の指定位置にキーボードなどで語彙を入力し、当該語彙を語彙オブジェクト管理手段から検索、選択し文書内に埋め込むやり方でも良い。
【0034】
文書内に配置された語彙オブジェクトは、同時に当該文書の文書ID(全案件の全文書を記録する文書データベース上のレコード番号など)、当該文書の属する案件ID(カルテ番号など)の少なくともいずれかを参照リンク手段として、語彙オブジェクト管理手段内の当該語彙オブジェクトに記録する。
これにより、当該オブジェクトが配置されている案件や文書のリストが容易に得られる。症例レベルの検索であれば案件IDで十分であるが、その中の文書レベルの検索もとなれば、文書IDが必要となる。
【0035】
図5は、
図4で示された語彙オブジェクト管理手段の当該語彙オブジェクトに登録された参照リンク手段の参照リンクリストの説明図である。
ここでは、語彙オブジェクトごとに、当該オブジェクトが配置された文書の案件ID、文書IDを記録している。
【0036】
図6は、語彙オブジェクトの属性の共通部分を親語彙プロジェクトに括りだし、記録量の軽減を図り、語彙オブジェクト間の論理関係の見通しをよくした例である。
まず「非ステロイド系鎮痛剤」の共通スクリプトとして、
図2に示したようなスクリプトを括り出している。「ロキソニン錠」に関しては、「非ステロイド系鎮痛剤」のスクリプトをそのまま継承する。
「セレコックス錠」では、一部、「既往歴に胃、十二指腸潰瘍があるか」を検索するが、潰瘍への悪影響は少ないことが知られているので軽い警告に留める。
また、循環器系の合併症が知られているので、「循環器系の既往があるか?」を検索し、あれば警告する。
【0037】
「ナパノール錠」に関しては、胃、十二指腸潰瘍やヒスタミン喘息への悪影響がないことが知られているので、「非ステロイド系鎮痛剤」から継承してきたスクリプトから当該部分を削除する。
このようにすることで、語彙オブジェクト管理手段に管理されている語彙オブジェクトの記録容量を削減し、相互の相違点などの関係が分かりやすくなること、また、変更が生じた際は、当該箇所を変更するだけで、子の語彙オブジェクトに継承されるので、保守管理が容易となる。
【0038】
図7は、語彙オブジェクトを含む記録容量を要する文書を、プレーンテキスト化し軽量化を図った文書として記録する、あるいは逆にプレーンテキスト化し軽量化を図った文書を、語彙オブジェクトを含む記録容量を要する文書に相互変換する説明図である。
語彙オブジェクトは選択肢やスクリプトなど、編集補助の付加的情報を大量に含むため、そのままでは文書の記録容量を大量に消費する。
このため、編集が済んだ結果のみをプレーンテキストとして記録することで記録容量の大幅な圧縮が可能となる。
もし、プレーンテキスト化した後で当該文書の再編集が必要になったならば、再度語彙オブジェクトを復活させる必要がある。
当該文書内の語彙で語彙オブジェクト管理手段を検索し、該当する語彙オブジェクトを復活させる。プレーンテキスト化する際に、語彙オブジェクト部分に、アンダーラインを引いておく、「」で括っておくなどの目印をつけておくことも有用であろう。
【0039】
図8は、計画表作成手段でクリニカルパスの中に埋め込まれている語彙オブジェクトを語彙オブジェクト管理手段にリスト化しておき、語彙オブジェクトの変更が生じた際に、もれなく更新箇所をリストアップする説明図である。
疾患ごとに治療を標準化して検査や治療の工程表(クリニカルパス)が用いられるが、大規模な医療機関となると1000を超えるクリニカルパスがある。
クリニカルパス内の検査や処置の項目が更新された場合は、目視で更新箇所を探し、一つ一つ更新する必要があった。更新漏れも多発していた。
本図のように、クリニカルパスに用いられている語彙オブジェクトごとに、当該語彙オブジェクトが用いられているクリニカルパスIDや文書IDを参照リンク手段によって一元的に記録しておくことで、容易に漏れなく更新箇所が明らかになる(計画表内特定語彙オブジェクトリスト表示手段)。
更新を自動化すれば、さらに有用である(計画表内特定語彙オブジェクト更新手段)。
【0040】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、医療分野の電子カルテを例にとって説明したが、統制語彙を用いた案件ごとの文書管理が適した領域では同様の機序が有効であり、本発明に含まれる。また、語彙オブジェクト管理手段の一部または全部を、他医療機関などと共用することも有用である。